博 士 ( 医 学 ) 陶 恵 栄
学 位論文題名
FK506 Inhibits Severe Graft‑versus‑Host Disease without Mediating the Involvement of PerbrinandGranZymeB
(FK506はperfodnおよびgranzymeBとは無関係 に重篤なGVHDを抑制する)
学位論文内容の要旨
緒言
FK506は同種骨髄移植後の移植片対宿主病抑制に有効であることが示されている。従 来 、FK506はIL‑2の産生抑制を介してT細胞数の減少と機能低下を誘導するとされて いるが、本研究では細胞障害性T細胞の機能的分子としてのperformnおよびgranzyme BがFK506によってど のような影 響を受ける かを明らか にすること を目的とした。
材料と方法
6週 令 の 雄 のBALB/c (H―2d)、C3H/He (H−2k)お よ びC57BL/6 (H−2b) SPF マ ウ スを 実 験動 物 とし て 用い た 。骨 髄 移 植はC3H/Heマ ウスに致死 線量の875 cGy
(60〜70 cGy/min) の放射線照 射後、同種であるBALB/cマウスあるいは同系である C3H/Heマウ ス のlXl07個 骨髄 細 胞を 尾 静脈 よ り注 入して 行った(BMキ ヌラ)。重 篤な 移植片対宿主病(graftーversus―host disease: GVHD)を誘導する目的で、4X 106個のBALB/cマウス 脾細胞を同 時に移植し た(BM/Splキメラ) 。レシピェントマ ウスには、移植後三週間は抗生物質(ミノサイクリン100 ng/ml)含有水を投与した。
FK506を りン 酸 緩衝 食 塩水 (PBS) で溶 解 し、 移 植後3日目より5mg/kgの 用量で連 日皮下注射した。対照群は5 mg/kgのvehicleを同様に連日皮下注射した。生存の確認 を毎 日行い、生 存率を算出 した。リンバ球混合培養試験(MLR)は5xios個脾細胞を 反応細胞とし、2,000 cGy放射線照射した刺激細胞と96穴マイク口カルチャープレート に 入 れ 、200ル1のRPMI‑1640培 養 液 (10% ウシ 胎 児血 清 、5mM Hepes buffer、 2 mMLーglutamin、100 units/ml penicillin、100ルg/ml streptomycinと5xioーsM 2−MEを含む)中で、37℃炭酸ガス培養器で5日間培養して行った。培養終了6時間前 に37.5 kBqの3I‑I―チミジンを加えた。培養終了後、細胞をグラスファイバー濾紙に取り 込み、液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定した。細胞障害性T細胞の活性
(CTL) は5xios個 脾細胞を2,OOO cGy放 射線照射し た刺激細胞 で96穴マイク 口カ ルチャープレートにて5日間培養して得たェフウクター細胞を用いて検討した5ルg/ml のC01Aに よっ て 二日 問 刺激 さ れた 標 的細 胞 (BALB/c、C3H/Heあるい はC57BL/6) をsiCrで標識し、工フウクター細胞と標的細胞の細胞比を25:1として、96穴マイク口
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カルチャープレートにて4時間培養し、遊離slCrをァーカウンターで測定し、次式によ り 溶解 率 を計 算 した。 溶解率=( 実験群のdpmー自然解 離のdpm) /(最大解 離の dpmー 自 然 解 離 のdpm)Xi00。Mitogen刺 激 に よ る 増 殖 反 応 は5Xl05個 脾細 胞 を 反 応 細 胞 と し 、5ルg/inlのConA、 10仏 g/mlの PHA、 10ルg/mlのLPSと10 ルg/mlのPWMを96穴 マ イク 口 カ ルチ ャ ープ レ ート にて200ル1培 養液中で、37℃炭 酸ガス培養器で2日間培養して行った。37.5kBqの3H―チミジンを加え6時間培養後、
細胞をグラスファイバー濾紙に取り込み、液体シンチレーションカウンターで放射活性を 測 定 し た 。Perforinお よ びgranZymeBm尉 乢A発 現 の 検 索 は1X107の 脾細 胞 より RNAを 抽 出 し 、cDNAに 変 換 後 、perforinお よ びgranzymeBの プ ラ イ マー を 用い RTーPCR法により、半定量し、各群間の差を比較検討した。25,30,35サイクルの増幅 の後、ゲル電気泳動にて解析し、エチジウムブ口マイドにより発色させて検討した。
B―actinをコント口ールとした。
結果
FK506投 与 によ り 、重 篤 なGVHDを 有 する 同 種BM/Splキ ヌラの生存 率は著明に 上 昇 し 、移 植 後60日 目で91% で あっ た 。一 方 、FK506非投与 同種BM/Splキヌラ の生 存 率は0% で、43日 を 越え て 生存 す るこ と はな か っ た。 同 種BMキヌ ラ ではFK506 投与の有無に拘わらず、100%の生存率を示した。移植後8週目の脾細胞を用いたりン バ球混合培養では、全ての群でdonor、host、third party抗原に対する低反応性を認め た 。12週 日で は 、FK506投 与同 種BMキ メラ お よび 同 系BMキ メラ で はthird party に対する低反応性が回復する傾向にあった。時に非特異的な細胞障害性T細胞の活性を認 め たが 、mitogen刺 激反 応 では 、LPSおよ びPWMに 対し て では な く、Conへ お よび PHAに対して低反応性を認め。FK506がT細胞の機能を抑制していることが明かとなっ た 。RT―PCR法に よ りperforinお よ びgranZymeBmRNA発現 量 を検 討 した と ころ 、 FK506投与同種BM/Splキ メラおよびBMキヌラでそ れらの発現 は対照群に比ぺて低下 しておらず、FK506の免疫抑制はこれらの分子を介したものではないことが示唆された。
考察
FK506は移植後3日目より投与しても重篤なGVHDを抑制することが明らかになった。
そ の機 序 はり ン バ球 混 合培 養 の低 反応性 、ConAおよびPHAに対するmitogen刺激の 低下より、非特異的なT細胞の機能低下が主なものであると考えられるが、T細胞の分 化と増殖に関係する種々のサイトカインの産生抑制が基盤にあると推察される。このこと は 、成熟T細胞の数 的減少とも 密接に関連 していると 考えられる 。performnおよび granzymeBは 主 要組 織 適合 抗 原のclassIの異 なるdonorとhostにおけるマ ウス急性 GVHDでその重要性が示されてきているが、今回の研究では、これらの関与が乏しいと の結論が得られた。その差を認めた理由として、@用いたマウスが異なったため、◎
FK506がperformnとgranzymeBの 主な 産 生細 胞 であ るCD8陽 性T細 胞の 減 少を 誘 導 したため、◎performnとgranzymeB以外の因子の関与があるための3っが挙げられる。
逗)に関しては、むしろFK506投与群でtnRNA発現の亢進が認められることより否定的 で@と◎の可能性にっき今後の解析が必要とされている。
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結論
FK506はT細胞の機能を非特異的に抑制することにより、免疫学的寛容状態を誘導す るが、perforilおよびgranzymeBの関与 を介するものではないことが示唆された。
学位論文審査の要旨
学 位 論文 題 名
FK506 Inhibits Severe Grafヒ ‐VerSuS―HOStDiSeaSeM五thout MediadngtheInVOlVementofPerbrinandGranZymeB
(FK506はperfodnお よびgranzymeBとは無関係 に重篤なamDを抑制す る)
FK506は同種骨髄移植後の移植片対宿主病(graft―versus−host disease: GVHD)の 抑制に有効であることが示されている。FK506はIL‑2の産生抑制を介してT細胞数の減少 と機能低下を誘導するが、不明な点も残されている。一方、T細胞やNK細胞における細 胞障害活 性の主役を担うperforin/granzymeBはclassIMHCのみ異なるマウス同種骨髄 移植後の 急性GVHDの80%に関 与し、残り の20%の機序はまだ不明である。Class II MHCのみ 異なるマウ ス同種骨髄 移植後の急 性GVHDではperforin/granzymeBのほかに Fas、Fas一Lが関与しているが、全て明らかにされている訳ではない。細胞障害性T細胞 の機能的 分子として重要な働きをするperforin/granzymeBがFK506によってどのよう な 影 響 を 受 け る か を 検 討 し 、 そ の 成 果 を ま と め た の が 本 研 究 で あ る 。 骨髄移植 はC3H/Heマウスに致 死線量の875cGyの放射線照射後、同種であるBALB/c マウスあ るいは同系であるC3H/HeマウスのlXl07個骨髄細胞を尾静脈より注入して行 った(BMキ ヌ ラ) 。 重篤 なGVHDを 誘導する目 的で、4Xl06個のBALB/cマウス 脾細胞 を同時に移植した(BM/Splキヌラ)。
FK506投 与に よ り、 重 篤なGVHDを 有す る 同種BM/Splキ メラ の生存率は 著明に上 昇し、移植後60日目で91%であった。一方、FK506非投与同種BM/Splキメラの生存率は 0%で 、43日を越え て生存する ことはなか った。同種BMキメラではFK506投与の有無 に拘わらず、100%の生存率を示した。脾細胞を用いたりンバ球混合培養(MLR)では、
全ての群でdonor、host、third party抗原に対する低反応性を認めた。細胞障害活性試 験では、 時に非特異 的な細胞障 害活性を認 めた。Mitogen刺激反応では、LPSおよび ‑ 365ー
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PWMに 対 し て で は な く 、ConAお よ びPHAに 対 し て 低 反応 性 を認 め た 。以 上 より 、 FK506カ 汀 細 胞 の 機 能 を 抑 制 し て い る こ と が 明 か と な っ た 。RT‑PCR法 に よ り perforin/granzymeBmRNA発 現量 を 検 討し た とこ ろ 、FK506投 与同 種BM/Splキ メラ およびB1¥4キヌラでそれらの発現は対照群に比べて低下しておらず、FK506の免疫抑制は これらの分 子を介したものではないことが示唆された。従って、FK506はT細胞の機能 を 非 特 異 的 に 抑 制 する こ とに よ り、 免 疫 学的 寛 容状 態 を誘 導 する が 、performn/
granzymeBを介するものではないことが示唆された。
公開発表に あたって、 副査の第一 外科藤堂教 授から、perforin/granzymeBとFK506 の関係およ びFK506の作 用機序につ いて質問が あった。申請者はperforin/granzymeB は急 性GVHDと密 接 に関 連 して いるこ と、FK506の 作用機序はFKBPと結合した 後、カ ルシニューリンに作用して細胞内情報伝達を阻害することでILー2等の産生を抑制するが、
それ以上に関しては不明であると回答した。次いで副査の加齢制御医学講座今村教授から、
ヒトに比べ 、実験動物 においてFK506が高用量 である理由や、FKBPの濃度が動物種で 違う可能性 、また細胞障害活性試験とMLRとの矛盾、NK活性と(ゴゾHDの関係、Fas、 Fas―Iぷよびサイ卜カインの関与について質問があった。申請者はFKBPの濃度が動物種 で違う可能 性、NK活性があってもGVHDの発症とは直接結びっかない可能性について述 ぺ、他の質問に関しては今後検討予定であると回答した。さらに癌研究施設病理部門小林 助教授から、FK506がFas、FasーLに対して抑制的に作用した可能性、MLRの経時的回復 の有無、骨髄細胞での検討について質問があった。申請者はFK506とFas、Fas―Lの関係 はまだ不明であること、MLRの反応は時間と共に回復傾向があること、骨髄細胞での検 討はサイト カインmRNA発現においてのみ行ったと回答した。最後に主査第三内科浅香 教授からCyAとperforin/granzymeBの関わり およびCyAの作用機序 について質 問があ った。申請 者はCyAはシク口フィリンと結合しカルシニューリンに作用して、FK506と 同じ作用機序で、IL−2産生を抑制するので、今回と同様の結果が得られるものと回答し た。このように学位申請者は、いずれの質問に対しても豊富な医学的基礎知識から概ね妥 当な回答を行った。
本研究は、FK506のGVHDの抑 制機序につ いて新たな 知見を多く 含むもので 、FK506 の 臨 床 応 用 上 高 く 評 価 さ れ 、 今 後 の さ ら な る 機 序 解 析 が 期 待 さ れ る 。 審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ申請者 が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。