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原産国表示物の取り去りの規制

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原産国表示物の取り去りの規制

内  田  耕  作

1 はじめに  経済の国際化,消費者ニーズの多様化に伴い,今日,世界各国から製品が輸        1) 入されるようになってきた。しかし,輸入品の中には,わが国に輸入されたの ちに原産国表示物が取り去られ,国産品としてわが国市場に流通されるものも 見受けられるようになってきた。  こういつた場合,国産品である旨の表示(たとえば「原産国 国産品」)また は国産品と誤認されるその他の表示(たとえば製造業者としての国内事業者名 の表示)が行われておれば,それは不当表示として規制されうる。しかし,こ れらの表示がなされず,無表示のまま販売されているものについては,不当表 示規制を行うことができるかいなか,疑問が残る。  この点,原産国表示問題研究会は,原産国表示規制のあり方全般について検        2) 討を行ってきたが,1989年9月,次のようなまとめを行った。  「原産国表示を取り去ることは,原産国について一般消費者を誤認させよう という意図をもって行われるものと一般的に認められる。また,こういつた取 り去る行為が行われる商品は一般消費者が原産国を重視する商品であると考え られ,当該行為によって,本来,当該商品の原産国を一般消費者が判別可能で あったものを判別不可能とするものである。そして,場合によっては同じ商品 について,表示を取り去ったものと取り去られていないものが併存することと 1)以下,問題状況の叙述は,公正取引委員会事務局・原産国表示と景品表示法一一原産国 表示問題研究会における検討状況   (1989年)1,3,41頁に依拠した。 2)公正取引委員会事務局・前掲(注1)65−66頁。

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62  彦根論叢 第282号 なる。  したがって,原産国表示を取り去ることについては,取り去った後の表示が 一般消費者を誤認させないことが明らかな場合を除き,規制するための有効な 措置を検討する必要がある。」  そこで,本稿において,原産国表示問題研究会の検討状況を踏まえながら, 景品表示法に基づいて,原産国表解物を取り去る行為それ自体を規制すること        3) ができるかいなか,考えてみることにする。まず,取り去りが問題となった事 件を紹介する。続いて,取り去り規制が景品表示法上どのように行われてきた のかを整理するとともに,取り去り行為それ自体の規制の意義を明らかにする。 そして,最後に,取り去り行為それ自体を景品表示法に基づいて規制すること ができるかいなかの検討に及ぶ。 II取り去りが問題となった事件  原産国表当物の取り去りが問題となった事件としては,①関絹織物事件(昭 和51・10・16,排除命令集11巻22頁),②フック商事事件(昭和62・12・24,排 除命令集16巻51頁),③ナップ事件(昭和62・12・24,排除命令集16巻54頁), ④エンゼルレザー事件(昭和62・12・24,排除命令集16巻57頁),⑤マキ事件(平 成元・3・17,排除命令集17巻27頁),⑥日本電池事件(平成4・8・5)があ4︶ る。  これらのうち,③④事件は②事件に類似しているので,以下,①②⑤⑥事件 を取り上げ,紹介することにする。なお,紹介に際しては,原産国表示物の取 り去りがどういつだ扱いを受けているのかに焦点を当てることにする。 3)なお,原産国表示物の取り去りの規制は,無表示規制の一環として行うこともできる。 この点については,ここでは触れないこととする。 4)なお,原産国表示が問題となった事件としては,他に,①ゴールドスター事件(昭和43 ・8・29,排除命令集3巻214頁),②後藤被服事件(昭和47・3・22,排除命令集6巻103 頁),③松石事件(昭和47・3・22,排除命令集6巻107頁),④栄光商事事件(昭和47・3 ・22,排除命令集6巻11頂),⑤高橋絹織・西日本繊維事件(昭和50・10・9,排除命令 集10巻31頁)がある。

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       原産国表示物の取り去りの規制   63  (a)関絹織物事件  本件では,絹織物の製造販売業者である関絹織物が, 次のことを行ったのが問題にされた。すなわち,1っは,国内の輸入業者から 仕入れた韓国製つむぎの女物経緯緋のうち「MADE IN KOREA」等の表示の あるものおよび無表示のもの約1,000反について,表示のあるものはその部分を 切り取り,それぞれの口紅部分に「本場大島」の文字および日の丸の図柄また は「本場奄美大島」の文字を補織したということである。  そして,もう1つは,口織部分を補織した当該韓国製つむぎのうち約700反に ついて,国内産つむぎの事業者団体の検査に合格したかのようにみせかけるた め,これらの韓国製つむぎに,自己の作製した「鹿児島縣織物工業協同組合」 の表示のある証紙およびシールを貼付し,また,自己の作製した「鹿児島縣織 物工業共同組合合格」の印を当該証紙に押印したということである。  排除措置としては,次のことが命じられた。すなわち,1つは,関絹織物が, 販売した大島つむぎについて一般消費者の誤認を排除するために,速やかに, 販売した女物経緯緋の大部分は,韓国製つむぎであって,わが国において製織 されたつむぎではなかった旨を公示しなければならないということである。  そして,もう1つは,関絹織物が,今後,その供給する韓国製つむぎについ て,本件において問題とされた方法により,わが国において製織されたつむぎ であると一般消費者に誤認されるおそれのあ.る表示をしてはならないというこ とである。  ここで着目しなければならないのは,次のことである。すなわち,韓国製つ むぎのうち,「MADE IN KOREA」等の表示のあるものは,その部分が切り取 られたということが事実として認定されているものの,その旨公示することは 求められていないということである。  このことは,次のことを意味する。すなわち,原産国表示物の切り取りそれ 自体にはほとんど全く意味は与えられておらず,国産品と誤認される表示を積 極的に行ったことに決定的な意味が与えられているということである。  もっとも,本件が問題とされた当時,公正取引委員会は,次のような認識を

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    5) もっていた。すなわち,韓国製つむぎの中には,「MADE IN KOREA」の表示 を消して売られているものがあるといった風評が,関連業界および一般消費者 の間に伝わっていたということである。  (b)フック商事事件  本件では,レザーウエアの製造販売業者であるフッ ク商事が,韓国から輸入したレザーウエアについて,当該製品に付されていた 「MADE IN KOREA」の表示物を取り去った上,当該製品に「原産国 国産        6) 品」との記載があるタッグを添付したことが問題にされた。  排除措置としては,次のことが命じられた。すなわち,1つは,フック商事 が,韓国において生産されたレザーウエアについて,当該製品に付されていた 「MADE IN KOREA」の表示物を取り去った上,「原産国 国産品」との記載 があるタッグを添付することにより,当該製品の原産国に関して一般消費者に 誤認されるおそれのある表示を行った旨を,速やかに,公示しなければならな いということである。  そして,もう1つは,フック商事が,今後,その供給する外国において生産 されたレザーウエアについて,本件において問題にされたのと同様の表示によ り,当該製品の原産国に関して一般消費者に誤認されるおそれのある表示をし てはならないということである。  ところで,本件は,排除措置において原産国表示物を取り去った旨の公示を 命じられているという点で,関絹織物事件とは異なっており,原産国表示物の 取り去りそれ自体にもある程度積極的な意味が与えられている。しかし,本 件もあくまで,原産国表示物の取り去り後に「原産国 国産品」との記載があ るタッグを添付したことが問題とされたものであることに留意しなければなら ない。 5)立野善雄「つむぎの原産国に関する不当表示事件をめぐる諸問題一不当景表法及び商 標法違反をめぐって一」公正取引314号29,30頁(1976年)参照。 6)なお,原産国表示物を取り去った上,社名等を和文で記載したタッグを添付した東京毛 皮貿易に対しては,文書による厳重警告がなされているにすぎない。高久弘一=石川勝美  「レザーウエア製造販売業者によるレザーウエアの原産国に関する不当表示について」公 正取引448号86,88頁(1988年)参照。

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      原産国表示物の取り去りの規制  65        7)  もっとも,本件の解説においては,次のように記述されている。すなわち, 「本来,正しい原産国表示を取り去るということは,その段階で,その商品が どこの国で製造されたものであるのか判別できなくするものであり,その行為 は,一般消費者の正しい商品選択を妨げ,極めて悪質である。」 (c)マキ事件  本件では,次のことが問題にされた。すなわち,婦人二等

の小売業者であるマキが,製品それ自体またはそのタッグに,「MISS

Takao」,「Olivier Montagut」等わが国またはフランスの事業者の有する商標 および「株式会社三貴」とのわが国の事業者名が表示され,これにあわせて, その原産国を示す「MADE IN KOREA」,「MADE IN HONG KONG」,「韓 国製」または「香港製」との表示物が付されていた三貴の輸入製品(三貴が韓 国または香港の事業者に生産を委託し輸入したもの)について,その原産国表 示物を取り去り,これによりこれらの製品が韓国または香港で生産されたもの であると一般消費者が判別することが困難な表示を行った,ということである。  排除措置としては,次のことが命じられた。すなわち,1つは,マキが,韓 国または香港において生産された婦人服について,当該製品に付されていた 「MADE IN KOREA」,「MADE IN HONG KONG」,「韓国製」または「香 港製」の表示物を取り去ることにより,当該製品の原産国に関して一般消費者 が判別することが困難な表示を行った旨を,速やかに公示しなければならない ということである。  そして,もう1つは,マキ・が,今後,その販売する外国において生産された 婦人服について,本件において問題とされたのと同様に,その原産国に関して 一般消費者が判別することが困難な表示をしてはならないということである。  ところで,本件は,フック商事事件とは次の点で異なっている。すなわち, フック商事事件では,原産国表示物を取り去った上,別の原産国表示のタッグ が添付されている。それに対し,本件では,別の原産国表示物が添付されてい るわけではない。本件では,原産国表示物の取り去り後の残りの表示が,原産 国について判別が困難な表示となるということが問題にされているにすぎない。 7)高久==石川・前掲(注6)88頁。

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66  彦根論叢第282号 そこで,フック商事事件が積極的表示による不当表示を問題としているのに対 し,本件は,いわゆる不表示による不当表示を問題にしているということがで きる。  また,フック商事事件では,国産品である旨の表示が問題にされているのに 対し,本件では,それ以外の国産品と誤認されるその他の表示が問題にされて       8) いるにすぎない。  その限りで,本件においては,フック商事事件におけるのと同程度に,また はそれ以上に,原産国表示物の取り去りそれ自体に,積極的な意味が与えられ ているように思われる。        9)  もっとも,本件の解説では,次のように述べられている。すなわち,「ここで 注意すべきは,本件が問題となるのは,直接的には原産国表示物の取り去り行 為それ自体にあるのではなく,取り去り後の……商標及び事業者名のみの表示 にある点である。もちろん,取り去りは,当該製品の原産国を隠蔽し,あたか も他国製に見せかけようとする行為であるから,道義的にも悪性は強く,また, 景品表示法上も,当該行為により一般消費者の誤認を招き,同法違反を生ぜし めるものであるから,厳しく糾弾されねばならぬことは言うまでもない。しか し,法の適用の面からみれば,一般消費者を誤認させ不当に顧客を誘引してい るのは,……商標及び事業者名の表示であるから,当該表示が問題とされるこ とは注意すべき点である。」  (d)日本電池事件  本件では,次のことが問題とされた。すなわち,二輪 自動車用鉛蓄電池の製造販売業者である日本電池が,台湾の事業者から輸入し た二輪自動車用鉛蓄電池(日本電池が生産を委託したもの)のうち補修用向け のものについて,「MADE IN TAIWAN」と表示されている箇所に当該製品の 取扱い上の注意を記載したラベルを貼付し原産国表示を見えないようにすると 8)もっとも,本件のような場合,国産品である旨の表示が問題になる余地はほとんどない ということができるかもしれない。なお,国産品である旨の表示以外の国産品と誤認され るその他の表示の従前の規制については,注6参照。 9)中山武憲「衣料品についての原産国不当表示事件」公正取引463号43,46頁(1989年)。

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      原産国表示物の取り去りの規制  67 ともに,日本電池の商標である「GS」または同社の事業者名を示す「日本電池」 との表示がなされている包装箱に封入することにより,当該製品が台湾で生産 されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められる        10) 表示を行った,ということである。  排除措置としては,次のことが命じられた。すなわち,1日目,日本電池が, 台湾において生産された二輪自動車用鉛蓄電池のうち補修用向けのものについ て,当該製品にその原産国を示す「MADE IN TAIWAN」との表示がなされ ている箇所に当該製品の取扱い上の注意を記載したラベルを貼付するとともに, 「GS」または「日本電池」との表示がなされている包装箱に封入することによ り,当該製品の原産国に関して一般消費者が判別することが困難な表示を行っ た旨を,速やかに公示しなければならないということである。  そして,もう1つは,日本電池が,今後,その販売する外国において生産さ れた二輪自動車用鉛蓄電池について,本件において問題にされたのと同様の表 示をすることにより,その原産国に関して一般消費者が判別することが困難な 表示をしてはならないということである。  確かに,ここでも,究極的には,原産国について判断が困難な表示を行った ことが問題にされており,原産国表示の隠蔽それ自体が問題とされているわけ ではない。       11)  しかし,本件は,関絹織物事件,フック商事事件とは次の点で違っている。 すなわち,両事件では,国産品である旨の表示が添付されていたのに対し,本 件では,不当表示に導く要因として,取扱い上の注意を記載したラベルの貼付 10)なお,当該製品の前面には,「GS」との表示がなされており,しかも,日本電池は,包装  箱として,不透明な段ボールケースだけでなく,透明なプラスチックケースも使用してい  る。そこで,当該製品の前面になされた「GS」との表示が不当表示となるかいなかも問題  になる余地がある。しかし,本件では,この点は問題にされていない。事実関係について  は,行武紀雄=一冨光生「二輪自動車用鉛蓄電池に関する原産国不当表示事件について」  公正取引504号57,59頁(1992年)参照。 11)なお,本件は,マキ事件とは,原産国表示物の取り去り後の残りの表示が存在するかい  なかという点では違いがあるが,国産品である旨の表示以外の国産品と誤認されるその他  の表示が問題となっているという点で類似している。

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68  彦根論叢 第282号 を別にすれば,商標または事業者名が表示されている包装箱への封入があげら れているにすぎないということである。  しかも,原産国表示物を取り去った上,社名等を和文で記載したタッグを添 付したにすぎない事件に対しては,従来,文書による厳重警告がなされたにす     12) ぎなかった。 III取り去り規制の問題状況  まず,取り去り規制の現状について述べる。そして,その後,取り去り行為 それ自体を規制する意義について述べる。  (1)取り去り規制の現状  まず,取り去り規制の類型としてどのようなものがあるのかを整理する。次 に,取り去りが問題となった具体的事件がどの類型に入るのか,分類する。  (a)取り去り規制の類型  取り去り規制の類型としては,次の2つがある ように思われる。すなわち,1つは,取り去り後の表示に着目し,それが不当 表示となるかいなかを判断するというものである。そして,もう1つは,取り 去り行為それ.自体に着目し,それが不当表示となるかいなかを判断するという ものである。  (7)取り去り後の表示に着目するもの  これは,原産国表示物を取り去る 行為にも目を向けるが,究極的には,取り去り後の表示に着目することによっ て,当該表示が不当表示となるかいなかを判断するというものである。  この点,取り去り後の表示が問題となる状況は,2つ考えられる。すなわち, 1つは,取り去りに引き続き,新たに表示物が加えられる場合である。たとえ ば,外国品について,外国製であることを示す表示物が切り取られた後に,日 本製であることを示す表示物が新たに加えられるという場合をあげることがで きる。  この場合,切り取り行為それ自体を直接的に問題にするのではなく,日本製 であることを示す新たな表示物に着目し,表示が不当表示となるかいなかを判 12)注6参照。

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       原産国表示物の取り去りの規制   69 断ずるということになる。  なお,新たな表示物は,原産国を直接的に示すもの(典型的には,原産国○ ○)の場合もあるし,原産国を間接的に示すにすぎないもの(商標,事業者名 など)の場合もある。  そして,もう1つは,取り去りによって,もともと存在していた表示が不当 表示性を帯びてくる場合である。たとえば,外国品について,わが国の事業者 の有する商標またはわが国の事業者名が表示され,これにあわせて外国製であ ることを示す表示が付されていたものが,外国製であることを示す表示物が切 り取られ,わが国の事業者の有する商標またはわが国の事業者名の表示のみが 残ったという場合をあげることができる。  この場合,切り取りそれ自体を直接的に問題にするのではなく,残りの表示 に着目し,当該の表示が不当表示となるかいなかを判断するということになる。  (イ)取り去り行為それ自体に着目するもの  これは,原産国表示物を取り 去る行為それ自体に着目し,それが不当表示となるかいなかを判断するという ものである。外国品について,外国製であることを示す表示物が切り取られた という場合を例にとれば,外国製であることを示す表示物の切り取りそれ自体 が,不当表示となるかいなかを判断するということになる。  (b)具体的事件の分類  原産国表示物の取り去りが問題となった具体的事 件はすべて,「取り去り後の表示に着目するもの」に分類することができる。  しかし,詳細にみれば,それらは,取り去りに引き続き新たに加えられた表 示面に着目するものと,取り去り後の残りの表示に着目するものに細分類する ことができる。この点,関絹織物事件,フック商事事件および日本電池事件は 前者に該当し,マキ事件は後者に該当するということができる。  また,取り去りに引き続き新たに加えられた表示物に着目するものとして分 類された事件は,さらに,新たに加えられた表示物が原産国を直接的に示すも のと間接的に示すにすぎないものに細々分類することができる。関絹織物事件 およびフック商事事件は前者に該当し,日本電池事件は後者に該当するという ことができる。

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70  彦根論叢 第282号  なお,取り去り後の残りの表示に着目するものとして細分類されたマキ事件 は,原産国を問接的に示すに過ぎない表示が問題にされたものに該当する。  (2)取り去り行為それ自体の規制の意義  原産国表示物の取り去りが問題となった具体的事件はすべて,取り去り後の 表示に着目するものに分類することができる。  また,取り去りが問題となる事件のほとんどは,取り去り後の表示に着目す ることによって規制することができるので,取り去り行為それ自体に着目して 規制を行う必要はあまりないということができるようにも思われる。  けだし,ほとんどの場合,原産国表示物の取り去り後,不真正の原産国を直 接的に示す表示物や,間接的に示す表示物が加えられるか,不真正の原産国を 間接的に示す表示が残存するということができるからである。また,原産国表 示物が取り去ちれた外国品が国産品と並べて陳列される場合のように,原産国 について何らかの印象を与える表示が存在するということができる場合もある     13) からである。  しかし,原産国表示物が取り去られた場合,取り去り後に常に,原産国につ いて何らかの印象を与える表示が存在するということはできない。原産国表示 物が取り去られたまま,販売されるということも考えられる。この場合,原産 国に関する表示は存在しないのであるから,取り去り後の表示に着目して不当 表示規制を行うことはできない。  また,原産国表示物の取り去り後の表示に着目して不当表示規制を行うこと が,常に,率直な規制態度であるということもできない。原産国を間接的に示 すにすぎないところの,残存する表示や新たに加えられた表示物等に着目して 不当表示規制を行うことは,着目する表示(表示物)のいかんによっては,必 ずしも率直な規制態度とはいえなくなってくるように思われる。  それゆえ,取り去り行為それ自体を規制することには,大きな意義があると いうことができる。このことは,従来から認識されてきたところであり,取り 13)この点については,利部脩二「実務家のための景品表示法基礎講座  十入  」公正  取引485号36,39頁(1991年)参照。

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       原産国表示物の取り去りの規制   71        14) 去りが問題となった事件の解説にも端的に表明されている。  なお,原産国表示物の取り去り規制に対しては,次のような異議が提起され る余地がある。すなわち,原産国表示物の取り去りそれ自体を規制することは, 過度に及び,外国からの輸入を阻害する機能を果たす。  しかし,それに対しては,次のような反論が可能である。  第1は,原産国表示物の取り去りによって,一般消費者が誤認されるか,そ のおそれがあるということであれば,それは規制されてしかるべきであるとい うことである。しかも,原産国表示物の取り去りを行い,当該輸入品を国産品 として流通させているのは,わが国の流通業者である。  そこで,原産国表示物の取り去りを規制することによって,たとえ外国から の輸入が影響を受けるとしても,それは,本来,非難される筋合ではない。こ ういつた理由で原産国表示物の取り去り規制を問題卜するのであれば,原産国 表示の規制それ自体をも問題青しなければならなくなってくる。  第2は,原産国表示物が,輸入時には現存していたということである。この 点で,原産国表甘物の取り去り規制は,輸入時に無表示であった商品に原産国 表示を義務づけることとは大きく評価を異にする。しかも,台湾のように,輸       15) 出品に原産国表示を義務づけているケースさえある。ここに,原産国表示物の 取り去り規制が,外国からの輸入を阻害するとして,一方的に非難されるいわ れはないということができる。  第3は,原産国表示物の取り去り規制が,次のことに役立つということであ る。すなわち,原産国表示があれば,生産技術の進歩の結果として輸入品の品 質が国産品と同一レベルになっているか,なりつつあるということを一般消費 者が知り,輸入品の品質が国産品よりも劣っているという固定した意識・観念 を変えるということである。その結果は,製品の輸入を促進することとなる。 14)前述II(b)および(c)参照。 15)商品表示法11条参照。「輸出商品は商品本体,あるいは内外の包装に中文もしくは規定の  外国文により産地を表示しなければならない。但し,特別な事情があり,中央主管機関あ  るいは指定機関の許可があるときはこの限りでない。」

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72  彦根論叢 第282号       ユ6)  実際にも,日本電池事件の解説では,次のように述べられている。すなわち, 「生産委託した製品が品質の上で全く問題がないとすれば,NIES製品につい て一般消費者に正しい認識を持ってもらう上からも,日本電池のように我が国 を代表するような大企業から率先して正しい原産国表示をすることが望まれ る。」  第4は,輸出国側がすべて,自国の製品が輸出できればそれでよく,そのた めには原産国表示物が取り去られてもかまわないと考えているわけではないと いうことである。輸出国側には少なからず,自国の製品がそれと識別された上 で販売されることを望むという考えもあるように思われる。  このように,原産国表示物の取り去り規制に対する異議には,充分な根拠が ない。  そこで,章を改め,原産国表忌物の取り去り行為それ自体を景品表示法に基 づいて規制することができるかいなか,検討を進めることにする。 IV 取り去り行為それ自体の規制  まず,米国において取り去り規制がどのように行われているのか,簡単に紹 介する。次に,わが国の景品表示法に基づいて取り去り行為それ自体を規制す ることができるかいなか,検討する。  (1)米国における取り去り規制  ここでは,適用対象が一般的である連邦取引委員会法と繊維製品識別法とを 代表として取り上げ,米国連邦取引委員会による原産国表示物の取り去りの規       17) 制を紹介することにする。  (a)連邦取引委員会法  連邦取引委員会法5条(a)(1)は,次のように規定す る。すなわち,「商業におけるまたは商業に影響を及ぼす不公正な競争方法およ び不公正または欺隔的な行為または慣行は,これを違法と宣言する」。 16)行武=一冨・前掲(注10)59頁。 17)なお,連邦取引委員会による原産国表示規制一般については,拙稿「連邦取引委二会に  よる原産国表示規制」彦根論叢268号75頁(1991年)参照。

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       原産国表示物の取り去りの規制   73  連邦取引委員会による原産国表示物の取り去り規制は,一般に,この規定に       18) 基づいて行われている。すなわち,外国原産の表示の隠蔽・抹消・除去は,こ の規定のもとで,不公正な慣行として規制されている。  そこで,ここでは,次のことに留意する必要がある。すなわち,原産国表解 物の取り去り行為それ自体が,違法な行為類型に該当するかいなかをめぐって は,何ら問題が生じないということである。けだし,不公正な慣行は法文上特 定されていないからである。  (b)繊維製品識別法  繊維製品識別法5条(a)は,次のように規定する。す なわち,「繊維製品が州際商業に置かれたあとに,繊維製品につけられることが 本法によって要求されるスタンプ,タッグ,ラベルまたはその他の識別手段を, 繊維製品が最:終消費者に販売されるか引き渡される前に除去するか切り取るか, またはそうさせるかそうすることに参与することは,本法において規定される 場合を除いて違法であり,本条に違反する者は,連邦取引委員会法のもとで不 公正な競争方法および不公正または欺隔的な行為または慣行の罪がある」。  この点,繊維製品識別法は,その4条(b)(4),(5)において,繊維製品に関して はっきりと読むことができることばおよび図形でもって,次のことを表示する スタンプ,タッグ,ラベルまたはその他の識別手段が,製品上または製品につ けられることを要求している。すなわち,繊維製品力輸入されたものである場 合には,加工されたか製造された国の名称,繊維製品が米国で加工されたもの である場合には,その旨である。  それゆえ,原産国表示が示されたスタンプ,タッグ,ラベルまたはその他の 識別手段を除去したり切り取ったりすることは,それ自体が,繊維製品識別法 のもとで違法となるということができる。その限りで,取り去り行為それ自体 が違法な行為類型に該当するかいなかをめぐっては,疑問が生じる余地はない。  (2)景品表示法に基づく取り去り行為それ自体の規制  まず,規制上の問題点がどこにあるのか検討をする。そして,その後,個別 18)なお,連邦取引委員会法5条(a)(1)のもとでは,外国品についてのみ,原産国の表示が要  求されるにすぎない。

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74  彦根論叢第282号 の問題点の検討に及ぶ。  (a)規制上の問題点  わが国において原産国表示物の取り去り行為それ自 体を規制する場合の根拠規定となるのは,さしあたり,景品表示法4条である。 それは,次のように規定する。すなわち,「事業者は,自己の供給する商品又は 役務の取引について,次の各号に掲げる表示をしてはならない。」そして,第1 号として,「商品又は役務の品質,規格その他の内容について,実際のもの又は 当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると 一般消費者に誤認されるため,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するお それがあると認められる表示」を,第2号として,「商品又は役務の価格その他 の取引条件について,実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者 に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される ため,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる 表示」を,第3号として,「前2号に掲げるもののほか,商品又は役務の取引に 関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって,不当 に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会 が指定するもの」を掲げている。  そこで,わが国において原産国表示物の取り去り行為それ自体を景品表示法 4条違反として規制するためには,原産国表示物を取り去る行為それ自体が, 4条各号に掲げる表示をするということに該当しなければならない。この点で, 景品表示法の規定の仕方は,米国の連邦取引委員会法または繊維製品識別法の いずれの規定の仕方とも異なっているということができる。  したがって,米国の連邦取引委二会法または繊維製品識別法に基づいて取り 去り行為それ自体の規制が行われているからといって,直ちに,景品表示法の もとで取り去り行為それ自体の規制が行われうるということにはならない。改 めて,景品表示法のもとで取り去り行為それ自体の規制が行われうるかいなか, 検討をしなければならない。  この点,問題となるのは,大きく分けて次の3つのことである。すなわち, 第1は,取り去られる原産国表示物が景品表示法にいう「表示」に該当するか

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       原産国表示物の取り去りの規制  75 いなかである。第2は,原産国表示物を取り去る行為それ自体が,「表示をする」 ということに該当するかいなかである。そして,第3は,原産国表示物が取り 去られることによって,4条各号の事態が生じるかいなかである。以下,項を 改め,これらについて検討することにする。  (b)取り去られる原産国表曲物は景品表示法にいう「表示」に該当するか  取り去られる原産国表示物が景品表示法にいう「表示」に該当するというこ とについては,疑問の余地はほとんどないように思われる。というのは,取り 去られる原産国表示物は,「景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品 類及び表示を指定する件」2号(1)にいう「商品……による広告その他の表示」 または「これら〔商品……〕に添付した物による広告その他の表示」に該当す るということができるからである。  たとえば,衣料品に縫いつけられた織りネームや織物の口塞部分に製織され た表示は,「商品……による広告その他の表示」に,衣料品に添付されたラベル やタッグは,「これら〔商品……〕に添付した物による広告その他の表示」に該   19) 当する。  (c)取り去り行為それ自体が「表示をする」ということに該当するか  こ こでは,まず,通説的見解を紹介することにする。そして,その後,私見を述 べることにする。  (7)通説的見解  「表示をする」とは,一般に,次のように解されている。 すなわち,「広告その他の表示を行うという行為は,その内容を決定する行為 と,その広告や表示を表現し伝達する等の現実に人目に触れるようにする行為       20)とに分けられる。この2種の行為がなければ表示行為は成立しない」。  したがって,現実に人目に触れるようにする何らかの積極的行為が存在しな い限り,不当表示としての規制も存在しえないということになる。       21)  このことを原産国表示物の取り去り行為に即していえば,次のようになる。 19)黒田武=本城昇(編著)・事例詳解:景品表示法(1987年)102−03頁参照。 20)黒田=本城・前掲(注19)100−01頁。なお,吉田文剛(編)・景品表示法の実務(1970年)  190頁をも参照。 21)利部・前掲(注13)39頁。

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76  彦根論叢 第282号 「『韓国製』などの表示を取り去った後,その商品の原産国について何らかの印 象を与える表示が全く存在しなくなった場合,……原産国に関する不当表示に ならない。原産国に関して何らの印象をも与えないのであるから,誤認も生じ ないはずである。」  (イ)私見  通説的見解が要求する「現実に人目に触れるようにする行為」 という要件は,何らかの積極的な行為が存在しなければならないということと, それが現実に人目に触れるようにする行為でなければならないということに分 けてみることができる。  これを当面の問題に当てはめれば,次のようになる。すなわち,原産国表示 物の取り去り行為それ自体は,何らかの積極的な行為ということはできるが, 現実に人目に触れるようにする行為ということはできず,したがって,「表示を する」ということには該当しない。  しかし,問題は,そもそも,積極的な行為が,現実に人目に触れるようにす        22) る行為に限定されるかいなかである。この点,私見によれば,それは,現実に 入目に触れるようにする行為に限定されるわけではないように思われる。  取り去りが行われなければなされたであろう表示が存在するという前提のも とに,最終的に表示がなされる途中で取り去りによりその表示が行われなくな った場合も,「表示をする」ということに該当するように思われる。  通説的見解によれば,取り去り行為それ自体は,事実行為にすぎないという ことになろう。しかし,「表示をする」という文言の解釈を,「表示内容決定行 為」と「表現・伝達行為」に分断して行う態度は,必ずしも適切とはいえない であろう。表示を手段とする一般消費者の誤認を防止し,合理的な選択を助け るという法の趣旨に照せば,表示がかかわりをもつ事業過程を一体としてとら え,「表示をする」という文言の解釈をすることが必要になってくる。 22)より根本的には,積極的な行為が存在しなければ,「表示をする」ということに該当しな  いのかということが問題になる。このことは,とりわけ,無表示(当初から何らの表示も  行われていない場合)の規制に際して顕在化する。しかし,本稿では,取り去りという積  極的な行為が存在するので,この根本的な問題には立ち入ることなく,議論を進めること  とする。したがって,根本的な問題についての結論は,留保することになる。

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       原産国表示物の取り去りの規制   77  (d)原産国表示物の取り去りによって4条各号の事態が生じるか  原産国 表示物が取り去られることによって,次のいずれかの事態が生じなければ,不 当表示規制は行われえない。すなわち,第1は,一般消費者が,商品の内容に ついて著しく優良であると誤認されるということである。第2は,一般消費者 が,商品の取引条件について著しく有利であると誤認されるということである。 第1の場合は景品表示法4条1号違反となり,第2の場合は4条2号違反とな る。  この点,原産国表示物の取り去りによって4条1号または2号に規定する事 態が生じるということは,大いに考えられることである。というのは,原産国 表示物の取り去りは,一般に,原産国について一般消費者を誤認させるという 意図のもとに行われると考えられるからである。また,原産国表示物の取り去 りが行われる商品は,一般消費者が原産国を重視する商品であると考えられる からである。実際のところ,原産国表示が4条1号違反とされた事件も存在す 23> る。  ところで,原産国表示に関しては,現在,「商品の原産国に関する不当な表示」 (以下,「原産国告示」という)が,景品表示法4条3号に基づいて制定されて いる。それは,次のような表示を不当表示として指定している。  「1 国内で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であって,    その商品が国内で生産されたものであることを一般消費者が判別するこ    とが困難であると認められるもの    一 外国の国名,地名,国旗,紋章その他これらに類するものの表示    二 外国の事業者又はデザイナーの氏名,名称又は商標の表示    三 文字による表示の全部又は主要部分が外国の文字で示されている表     示  2 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であって,    その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別    することが困難であると認められるもの 23)注4の①ないし④事件がそうである。

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78  そこで, 不当表示に該当するといっことであれば, れる。 れた不当表示には該当しないように思われる。  このことを,ここでかかわりがあると考えられる2項に即してみれば,次の ようにいうことができる。すなわち,原産国表示物を取り去ることそれ自体が, 2項各号に特定された表示を行うということになれば,それは不当表示となり うる。たとえば,原産国表示物を取り去ることそれ自体が,その商品の原産国 以外の国の国名,地名,国旗,紋章その他これらに類するものの表示をすると いうことになれば,それは,2項1号に該当し,不当表示となりうる。  しかし,取り去りによって原産国表示物は存在しなくなるのであるから,そ れは,商品の原産国を誤認させるおそれがあるということはできても,2項各 号に特定された表示を行うということはできない。したがって,原産国表示物 の取り去り行為それ自体は,原産国告示で指定された不当表示には該当しない ということができる。その結果,それは,現在のところ,4条3号違反として 規制することはできない。  そこで,原産国表嘗物の取り去り行為それ自体を景品表示法4条3号違反と して規制するためには,原産国告示に追加指定をしなければならないことにな る。この点,現行の原産国告示を前提とすれば,次のような内容を3項として 追加指定することが考えられる。  「3 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であって,    その商品がその国で生産されたものであることを一般消費者が判別する    ことが容易と認められるものを取り去ること(ただし,取り去りによっ 彦根論叢 第282号 一 その商品の原産国以外の国の国名,地名,国旗,紋章その他これら  に類するものの表示 二 その商品の原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名,名称又  は商標の表示 三 文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示」   原産国表示物の取り去り行為それ自体が,原産国告示で指定された         ’      それは,4条3号違反として規制さ しかし,原産国表示物の取り去り行為それ自体は,原産国告示で指定さ

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       原産国表示物の取り去りの規制   79    ても,その商品がその国で生産されたものであることを一般消費者が判    話することが容易と認められる場合を除く。)    一 外国の国名,地名,国旗,紋章その他これらに類するものの表示    二 外国の事業者又はデザイナーの氏名,名称又は商標の表示」  問題は,こういつた内容の不当表示を景品表示法4条3号のもとで指定する ことができるかいなかである。この点,表示がかかわりをもつ事業過程を一体 としてとらえる本稿の立場によれば,原産国表示物が取り去られることによっ て,一般消費者が商品の取引に関係する事項について誤認されるおそれがある 限りで,それも指定することができる。 V むすび  本稿の結論の第1は,原産国表示物の取り去り行為それ自体を,景品表示法 に基づいて規制することは可能であるということである。もっとも,この結論 を導き出すためには,「表示をする」という文言の解釈を変更しなければならな い。  この点,通説的見解は,「表示をする」という文言の解釈を,「表示内容決定 行為」と「表現・伝達行為」に分断して行うという態度をとっている。この解 釈態度は,確かに,表示が積極的に行われる場合を念頭に置く限りで,適切で ある。しかし,表示が取り去られる場合をも考慮に入れると,この解釈態度は 適切とはいえなくなってくる。改めて,表示がかかわりをもつ事業過程を一体 としてとらえることによって,「表示をする」という文言を解釈する態度が必要 になってくるように思われる。  本稿の結論の第2は,原産国告示を改正し,原産国表示面の取り去り行為そ れ自体を不当表示として指定することが是非とも必要であるということである。  確かに,本稿の立場によれば,原産国表示域の取り去り行為それ自体を,景 品表示法4条1号違反または2号違反として規制することは可能である。むし ろ,規制することができる場合が多いということができるかもしれない。しか し,4条1号違反または2号違反に問えない場合もあるように思われる。この

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80  彦根論叢第282号 ことは,4条3号に基づいて原産国告示が現に制定されていることからも推察 することができる。そこで,原産国表示物の取り去り行為それ自体を有効に規 制するためには,迫加指定をしなければならない。  また,追加指定は,原産国表示規制を体系的に行うという観点からも要求さ れるように思われる。というのは,今日,原産国表示規制のすべてが,実際上, 原産国告示に基づいて行われているからである。  なお,原産国表示物の取り去り行為それ自体を規制するためには,立法的解 決を待たなければならないということであれば,原産国表示物の取り去り行為 それ自体の規制だけではなく,当初から何らの表示も行われていない無表示の 規制も含めて,改めて,トータルな規制のあり方を模索することが必要になつ          24) てくるように思われる。 24)なお,立法論に触れたものとして,渋谷達紀「原産国の不当表示」独禁法審決・判例百  選(第4版)218頁(1991年)がある。

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