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Key Words:TKA,ショック体位,血圧低下

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38 函館五稜郭病院医誌第17巻(2009)

看護部活動      人工膝関節全置換術後の

一血L圧低下に対するショック体位の有効性

永谷 紀子,岸田佳世子,南  久美,松井 一幸,松田 夕奈

Key Words:TKA,ショック体位,血圧低下

       は じ め に

 整形外科病棟では年間約120例の人工膝関節全 置換術(以後TKA)が行われている. TKAは手 術中の出血を抑えるために駆血を行っているが,

手術後は駆血を解除するため出血量が多くなる.

そのため,術前に自己血貯血を行うとともに,術 後6時間以内に術中オーソパッドシステムを使用 し,手術後関節内に出血した血液を返血している.

血液回収時には循環動態が変動しやすく,一時的 な血圧低下がみられることが多い.そのため,術 後疹旧時に速やかな鎮痛剤の使用ができず,患者 が苦痛を強いられていた現状がある.先行研究で

「手術直後から返血開始までの間は血圧低下を予 測して下肢挙上のショック体位をとり,血液回収 量とバイタルサイン・水分出納の観察を十分に行 い,医師と連携して輸液や輸血,薬剤投与を行う 必要がある。1)」と考察している.しかし,手術 直後に下肢挙上することで,血圧・出血量に変化 があると実証されてはいない.そこで,術直後か ら下肢挙上することで,出血量の減少と血圧低下 を予防でき,速やかに鎮痛剤投与につなげること が出来るのではないかと考えた.

 今回下肢挙上前・挙上後のデータを比較し,ショッ ク体位が術後の血圧低下に有効であるかどうかを 分析した結果を報告する.

       用語の定義

血圧低下:TKA術後に収縮期血圧が90mmHg以下 の血圧低下を5分以上認め,何らかの対処が必要

であるもの.

1,研究期間:

研 究 方 法

 平成19年12月19日〜平成20年10月24日 2.研究対象:

 平成17年4月12日〜平成20年10月24日の間に 術中にオーソパットシステムを使用したTKA

患者.

3.調査内容:

 手術日・性別・年齢・身長・体重・術前ヘモ  グロビン値・術後ヘモグロビン値(1日目早朝 採血)・現病歴・ディスプレイ量(術後出血総 量)・リザーバー量(貯血槽)・回収血・疹痛の 有無・バイタルサインの変動・高血圧の既往・

持続硬膜外注入の有無・麻酔の種類 4.分析方法:

  非下肢挙上群130例(平成17年4月〜平成19 年11月)と下肢挙上群75例(平成19年12月〜H 20年10月)に分けて比較し,両下肢挙上の有効 性について分析した.

 下肢挙上の方法は,同型のギャッジベッドの 下肢側をハンドル14回転させて角度を測定し,

30度とした.

5.倫理的配慮:

 本研究に使用したデータは全て個人が特定さ  れないように配慮し本研究以外に使用しない.

函館五稜郭病院南5病棟

      結     果 1)平均年齢(図1)

 対象者の平均は非挙上群72.1歳で男性16例

(平均70.5歳)女性114例(平均71.9歳),挙上 群74歳で男性9例(平均76.9歳)女性66例(平 均73.9歳)であった.

2)血圧低下例(図2)

 男女あわせて収縮期血圧が90mmHg以下になっ た人は非挙上群130人中32人で24.61%,挙上群

は75人中9人で12%であった.挙上することで

収縮期血圧が90mmHg以下になった人は約半数

(2)

函館五稜郭病院医誌第17巻(2009) 39

男 性 女 性 全 体

非挙上群

i平均年齢)

16例

i70.5歳)

114例

i71.9歳) 72.1歳

挙上 群

i平均年齢)

 9例

i76.5歳)

66例

i73.9歳) 74歳

図1 平均年齢

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   l       ∈     i

挙瑠繹灘羅搬翻

   1 !  8s%{  2461嬉  蜷低下なし

羅群羅灘難一面噺

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図2 血圧低下率

       平均出血量

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 〔}ゲ     一T一一    …/

   挙上群     藷挙上群

難平均鰭血量

に減少した.(図1)

3)出血量(図3)

 非挙上群の出血量は平均830.55ml,挙上群は 平均659.09皿1で,約21%の減少となった.また,

 t=一2.8426(t>t分布表)であきらかに有意 差が認められた.

4)ヘモグロビン値(図4)

 非挙上群のヘモグロビンの平均値は,手術前 12.15g/dl,手術後(術後1日目早朝採血)

9.76g/dlで,2.39 g/dl下降している.挙上群 は手術前11.95g/dl,手術後(術後1日目早朝 採血)9.55g/dlで2.4g/dl下降していた.

5)疹痛

 持続硬膜外注入挿入患者は,挙上群は100%,

非挙上群が98%であった.下肢挙上による疹痛 を訴えた患者8例と術中より収縮期血圧が200 m皿Hgと上昇した患者1例は,下肢挙上を中断  し研究対象外とした.

図3 平均出血乱

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手術前 手術後

       考     察

 TKAは術後出血量が多く,術前自己血貯血や 輸血の準備が必要であり,術後の自己血輸血が有 用である.看護師は血圧低下を予測して,下肢挙

.ヒのショック体位をとり,血液回収量とバイタル

図4 ヘモグロビン値の変化

サイン・水分出納の観察を十分に行う必要がある.

本研究では,手術直後から下肢挙上することで,

血圧低下が防げるのではないかと考え実施した.

 対象者の年齢・男女比ともに,挙上群・非挙上 群に差は認められず,年齢・性別においては出血 量・血圧変動の影響はないと考える.

 術後ヘモグロビンの下降平均値は,挙上群・非 挙上群共に大差なかった.

 出血量は,挙上群と素面上面を比較して21%減 少し,有意差が認められた.また,収縮期血圧が 90mmHg以下になった患者の血圧低下率は約半数

に減少した.

 これらのことにより,術後の下肢挙上は,出血 量を減少させ,血圧低下の予防に有効であること が実証された.

 さらに,血圧低下率が減少したことで,血圧低 下に伴う嘔気・気分不快症状が減少し,患者に疹 痛を我慢させることなく鎮痛剤を速やかに使用す

ることができ,患者の安楽に繋がったと考える.

 持続硬膜外注入も血圧の変動に大きく影響を与

えるが,今回の研究では持続硬膜外注入の有無に

(3)

40 函館五稜郭病院医誌第17巻(2009)

よる血圧低下の影響は不明であった.持続硬膜外 注入が血圧に与える影響としての条件は同等であ り,今後も追跡調査して行く必要があると考える.

 今回の研究では,下肢挙上による癒痛が出現し た例が8例(約10%),手術中より収縮期血圧200 mmHgを超えたたあ下肢挙上出来なかった例が1 例あった.下肢挙上による二二の割合が高かった

ことから,方法に問題がなかったか検証する必要 もあると考える.下肢挙上が血圧に与える影響を 考え,対象者全員に実施できるように,より安楽

な挙上方法を考え実施していくことが今後の課題

と考える.

5)富士 武史:編著 整形外科看護  出版 2006年春季増刊

メディカ

      結     語

1.術後の下肢挙上によるショック体位は,出血 量を減少させ,血圧低下の予防に有効である.

2.下肢挙上群では,鎮痛剤を投与できる条件を 整えることが出来た.

       お わ り に

 下肢挙上が有効であったことから,今後はパス 委員と連携しTKAパスに組み込み,バリアンス 分析していくことで,下肢挙上が出来なかった患 者にも安楽な環境を提供出来るよう考えていきた

い.

 今後も下肢挙上で血圧低下を予防し,術後の癒 痛に対し速やかに鎮痛剤を使用して患者の苦痛を 軽減できるよう,より良い看護の提供をしていき

たい.

      参 考 文 献

1)吉田 美香,西村将吾他:人工膝関節全  置換術後の血圧低下を予測した看護.

 第36回 老年看護:P63−64,2005

2)看護学大辞典 第四版:P544, P1018, P526 3)北村 公一 他:人工膝関節置換術の術後回  収式自己血輸血についての検討.

 北海道整形災害外科学会雑誌 48:2−1−

  3−2 2006

4)大谷  茂 他:人工膝関節置換術後に対す   る術後出血対策.自己血輸血

 P241−244 1998

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