芦田恵之助の読み方教授 における問いの技芸 ( 1)
‑ 教壇記録 「乃木大将の幼年時代」か ら ‑
桑 原 哲 朗
1
問題の所在芦 田恵之助の読み方教授 は、「七変化の数式」 として知 られている。先行研究 にお いて垣内松三、古 田拡 をは じめ数多 くの研究者が論 じているのは、数式の成立過程や 数式の仕組 に関する内容で大半 を占めている。 しか し、数式が運用 された実際の授業 自体 を対象 とした研究 は、管見では少数 に とどまる。教壇 の実際は、青 山贋志
*1
の 速記や芦田自身の想起 によって、記録 としてかな りの量が残 されている。 この教壇記 録 を資料 として用いた研究では、野地潤家氏の 「芦田恵之助の実践過程」 (
『芦田恵之 助研究』 第2
巻読み方指導編1983. 1
0 明治図書)、庵造巌氏 の 「芦 田恵之助研究序説 (‑)」
「芦田恵之助研究序説 (二)」(
『国語科教育学の性格』1981 . 1
0 明治図書)、村 井万里子氏の 「読み方教授の考察一芦田恵之助 『松阪の一夜』 を手がか りに‑」 (『国 語 ・日本語教育基礎論研究』2006. 11
渓水社) などがある。野地氏 は 「源氏物語」 を 例 に、引用者注 を入れなが ら話法 について論 じている。庵遊民 は 「ヒノマルノハ タ」
「乃木大将の幼年時代」 を例 に、表現主体の確定、理解主体の生活化、「書 く」 ことの 意味、「読み」の視覚化 ・聴覚化 について論 じている。村井氏 は、松尾禎書の授業 と 対照 させ なが ら内容 と発間に着 目して論 じている。そ して、芦 田自身は 「私 は自分の 教壇記録 を整理 して、問答 について深 く考へてみなければならない事 を痛切▲に感 じま した。私 は小 閑を得た ら、私の記録か ら問答 について研究 をしてみたい と考へてゐま す。 さしづめ問答研究 についての好適の材料 といつた ら、青山君の筆録 にかかる私及 び同志の教壇記録 にまさるものはあ ります まい。」*2と述べている
0
先行研究の傾向 としては、一つの教材 を取 り上げ授業の全体 を分析 し、特質 を描 き 出そ うとしている。 しか し、名人芸 と云われる芦田の授業 を分析するのは、至難の技 である。それは、徹底 した教材解釈 とそれに基づ く教授案、重要語句の選択 と板書計 画、繰 り返 し児童の実態や応答 によって変化 させ る問いの技芸、補説や着語等の話法、
そ してこれ らによって教室内の空気 をもコン トロールする総合的なものであるか らで ある。そこで、いずれ も関連 していることを前提 としなが ら、芦田自身が述べている ように、中核的な内容である問答 に焦点 を当てて詳細 に分析することを通 して、芦田 の読み方授業 における特質に関 して知見 を得 ようと考 える。
本研究の目的は、芦田恵之助の読み方教授 について、教壇記録 をもとに問いの技芸 の特徴 を明 らかにすることである
。
‑1 3 8 ‑
2
研究方法( 1 )資料
青山贋志や他の速記者及 び芦 田恵之助 自身による膨大 な教壇記録の中か らどの授業 を取 り上 げるのか。芦 田は、「乃木大将の幼年時代
」
「釈迦」
「文天祥」 な ど、数多 く 授業 している。それは芦 田の好 んだ教材 だったのか、それ とも同志が要望 した教材 だ ったのかは明確 ではないが、授業回数 自体が多い とい うことは、指導 自体 も変容 、洗 練 されていった もの と考 え られる。本研究では、 1回の授業 を分析す るのではな く実 施年が離れた実践 も視野 に入れ、その変容 も考察 してい きたい。そこで、3
回8
時間分 の記録がある 「乃木大将の幼年時代」 を取 り上げる。取 り上 げた3回の授業 は、昭和7年 、11年、1
4
年の教壇記録 である*3
。野地氏 は芦 田の生涯 を国語教育実践史の立場か ら分 けてお り、それによればⅢ教壇行脚期 (大正き上うだん
1 4
年 ・9‑昭和26年)の (1)第一教壇行脚期 (大正14
・9‑昭和 10年) と( 2)第二教壇
行脚期 (昭和1
1年 〜昭和20年) にあたる。野地氏 は七変化の数式の成立 を昭和6
年頃 と考 えてお り、それ を踏 まえる と、‑昭和7年 は数式成立直後であ り、その後11年、1 4
年の記録 を分析す ることで、数式が どの ように実践 され洗練 されていったのか実相 をとらえることが可能である
。
七変化の数式の基本形 は、昭和7年当時の1時間目は 「‑ よむ 二 はな しあひ 三 よ む 四か く 五 よむ 六意議 七 よむ」である。芦 田が考 えていた授業時間の 目安 は、
二 ・三で1
5
分、四で10分 、五 ・六 ・七で15
分 、出入 り5
分 を含 めて45分 であ る。時 間配分 について、実際 の教壇記録 か らい くつかの授 業 を抽 出 して調べ てみ る と、
25‑5‑1 5、1 8‑6‑26、22‑ll‑1
3とい うように、 目安 にこだわ らず柔軟 に対応 して いる。その中で、 よむ箇所 はほぼ一定( 1
分30秒〜3
分)でそれほ ど時 間はかか らず、二 ・四 ・六 に時間をかけている。四の善 くは、七変化の数式の最大の特徴 であ り、重 要語句 を黒板 に書 き、児童 に書 き写 させてい く。二 と六 は、児童 と問答 を しなが ら復 習 を した り、読み を深めた りす る箇所である。授業のね らいに応 じてそれぞれの時間 配分 は変 わるが、おお よそ授業時間の5割 〜6割 を割いている。従 って、授業の2つの 山 といえよう。教壇記録では、 この二 (話 しあひ、復習、お さらへ) と六 (意議、 と
く) における問い を分析す る
。
( 2)分析法
まず、教師が どの ように問いを作 ってい くのか考 えてみる。教 師はテキス トを熟読 し、内容理解 を深めた結果、い くつかの解釈内容 を導 き出す。次 に、単元 目標や本時 の授業のね らいが達成で きるように、解釈 内容か ら選択 した答 えを決める。そ して、
児童生徒 に何 をどの ように問えば よいか試行錯誤 して作 る。その結果適切 だ と判断 した問いが、授業で発せ られる。その流れは次の ようである。
・解釈内容の集合
・関連する既有知識
児童 に答 えさせたい 解釈内容や知識
‑
137‑「何 を」「どの ように」問 うかは、問いの種類 と応答条件の組み合わせ と仮定す る
。
は じめ に、「何 を」 (問いの種類) について整理す る。問いの分類 は研究者 によって 様 々あるが、井上尚美氏
*4
は次の ような分け方 を提案 している。A 知識 を問 う発間 (情報収集)
B
解釈 を問 う発間 (内容理解 ・解釈お よびそれに基づ く推論)C
評価 ・批判 に関する発間 (一定基準に基づき妥当性や審議を判断する。鑑賞も含む) これは、pISA
の読解 プロセス を踏 まえた分 け方 を してお り、 この分 け方 を基本 に 考 えることとするが、授業 における問いを分類するにはまだ抽象的である。なぜ なら ば、実際 に繰 り出す発間は、前 もって考 えておいた問いだけではな く、児童の誤答や 無答の場合 に対応するため種類 と数が増 えるか らである。そ、こで、教壇記録 にある芦 田の問いを概観す ると、児童が既 に記憶 している語句の意味や経験 した知識 を尋ねる ことが多 く、 これ をAlとす る。
また、テキス トに書いてあることをその まま抜 き出 して答 えるような問いをA2として、Aを2
つ に分 ける。現代 は、論理性 を重視す る点 か ら理由や根拠 を問 うことが重視 されている。
それが、当時 どの ように行 われていた のか知 る意味か ら、理由を問 う発 間 をBlとす る。 また、テキス トの内容か ら解釈 ・ 推測 した ことを問 う発 間 をB2として、Bを2
つ に分 ける。Cは、評価 、批判す ること自体が、 これ までの国語教育で積極的には取 り上げてこなかった内容であ り小学校段 階では難 しいため、児童の感想程度 と考 えることにする。 この ようなことか ら、問い の分類 を次の ようにする。
Al
:語句、意味、既有知識 を問 うA2:
テキス トに書いてあること自体 を問 うBl
:理由を問 うB2:テキス トの解釈や推測す ることを問 う
C:
児童の感想や考 えを問 う次 に、「どの ように」問 うかである
。
どの ようにとい う意味 を、 ここでは児童生徒 の応答の仕方 に条件 を加 えることとする。同 じく芦 田の問いを概観 し、次の三つに整 理 した。①簡単 な語句で応答がで き、明確 な正答が参る. (閉 じた問い) (∋選択肢 を設けて選ばせた り正答数 を示 した りする。
③正答が一つ とは限 らず、適切 な答 えがい くつかある。 (開かれた問い)
3
芦田は何 をどのように問 うているか昭和7年の2時間分の授業、昭和11年の3時間分の授業、昭和1
4
年の3時間分の教壇記 録 における、二話 しあひ (お さらへ) と大意議 (とく)で発せ られた問いについて、時系列 にその種類 と応答条件で分類 して並べ た ものが表1である。各年 について、平 均発間数、各時間の発間数の比、各時間に5回以上発 しだ問いの種類、時系列 に串け
る二 と六の傾向、問いの種類 と応答条件の組み合 わせ についてまとめた。
‑1 3 6‑
表
1
「問いの種類 ・応答条件別時系列表」昭和
7
年1
時間 目2
時間 目A A a B C
1
2 1 2
請あひし① (D
③ (D (D
①
③
①
六意
義 10
① (丑
(∋
① (丑
② (丑
② (丑
③
@
①
① 7
5 1 1 1
②
1 1
3
1 3
8 16 1 5 1
14 6 1
A A B B C 1 2 1 2
復習 ①
③ (D (D
③
③ (∋ (丑
①
意六
義 ③
①
①
①
(∋ (D
① (丑
①
2 5 5 1
②
③
1 1 1 1 2 6 1 6 2
8 7 2
ー‡
応答条件別の数
‑ A
l, A2, B
l,B2, C
別の数‑ A、B、C 別
の数‑問いの総数
・授業2時間の平均発間数
1 9
間・発間数の比
1
時間目A :B:C‑1 4 . :6:1 2
時間目A :B : C‑ 8:7:2
・1
時間に5
回以上発 した問いの種類 (敬)1
時間目Al( 8)、A2 ( 6)、B2 ( 5) 2
時間 目A2 ( 6)、B2 ( 6)
・時系列 における二 と六の傾向
1
時 間 目 二 で はAlが ほ とん ど を 占 め 、六 で は前 半 にA2とAl、 後 半 でB2 が多い。2
時間目 一二は問いが散在 してお り、六はA2
とB2
を交互 に展開 している。・種類 と応答条件 の組み合 わせ について、Alは①
、A2
は① が多 く、B2
は① と③ が ある。Bl、C
は特徴的なことは見 られない。‑1 3 5‑
昭 和
11
年1
時 間 目A A B B C
1
2
12
請あひし ③
①
①
③
①
①
①
① (》 (ら (》
六とく ①
①
①
③
①
①
③
①
③ (∋
①
①
①
① (D
①
6 ll 1 3
②
③
1 2 2
7 1 3 1 5 20 6 0
2
時 間 目A A B B C
12 1 2
おさら へ ①
(D (∋
① (D (∋
① (D
(ら
①
①
①
③
①
(D (D
② (D
① (ら
五とく ③ (∋
(D
③ (∋
③ (》
③
①
①
③
①
1 2 6 3 2 1
②
1
③
1 1 2 2 1 3
73 4 4 20
74
3
時 間 日A A B B C
12 1 2
おへさら ① (D
①
①
①
①
①
①
③ (臥
①
① (∋
玉と
‑く ①
③
③
①
③
①
①
①
①
①
①
(∋
(∋ 7
5 9
②
③ 4
7
5 1 3 12 13
0・授業 3
時間の平均発間数27
間・一発間数の比
1
・時間目A :B :C‑2 0: 6: 0 2
時間冒A :B :C‑2 0:7:4 3
時間目A :B:C‑1 2:1 3:0
・1
時間に5
回以上発 した問いの種類 (敬)1
時間目A2 ( 1 3)、Al
(7)、B2
(5)2
時間目Al ( 1 3)、A2 ( 7)
‑1 3 4‑
3
時間日B2 ( 1 3)、Al ( 7)、A2 ( 5)
・時系列 における二 と六 (五)の傾向
1
時間目 二ではAlとA2
のみで交互展開 し、六ではA2
とB2
が中心。2
時間目 二ではAl
か らA2
へ、五ではA2
からBl 、B2、C
へ と展開 している。
3
時間目 二ではB2、Alを交互に出 し、五ではB2
か らA2、Al
へ。・種類 と応答条件の組み合わせ について、Al
、A2
ともに①が多い。B2はやや①が多 い。Bl、C
は特徴的なことは見 られない。Al〜Cを通 して②がほとんどなかった。昭和
14
年1
時間 目A A B B C 1 2 1 2
と
く ③
②
①
③
③ 〜
①
六とく ①
① (》
(D
③
①
③
③
①
③
① (
∋ 3 1 5
②
1
③
2 5 5
6 10 1
2
時間 目A A B B C
12 1 2
おさら ひ (∋
①
③
③
①
(D (丑
①
③
①
①
(∋
六
と( ①
③
①
2 2 6
②
③
1 1 2
2 3 1 8 0
5. 9 0
3
時間 目A A B B C 1 2 1 2
おさら ひ ①
③
③
①
①
①
①
(∋
(D
六とく ①
(D
①
①
(∋ (∋ (∋
①
③ (D (∋ (∋ (∋
(
D 8 4 7
②
8 14 o l1 0 0
12 10 0
・授業 3
時間の平均発間数1 8
間・発間数の比
1
時間冒A :B :C‑ 6:1 0:1
2時間目 A :ち :C‑ 5: 9:0 3
時間目A :B :C‑1 2:
10:0
‑1 3 3 ‑
・1
時間に5回以上発 した問いの種類 (敬)1
時間目B2 ( 1 0)、Al ( 5)
2
時間目B2 ( 8)
3
時間目B2 ( 1 0)、Al ( 8)
・時系列 におけるこ と六の傾向
1時間目 二ではB2か ら始 ま り
、C、Al
へ展開。六ではB2中心。2
時間目 二ではAとB2
を交互 に、六ではB2
のみ。3
時間目 二ではB2が中心、六ではAl
が中心。・種類 と応答条件の組み合わせ について、Al
、A2
ともに①が多い。B2はやや①が多 い。Bl、C
は特徴的なことは見 られない。Al〜Cを通 して(参がほとん どなかった。昭和
7
年、1
1年、1 4
年の概要が分かった ところで、経年変化 を追 ってみる。平均発間数 について、その変化 をみる と
1 9 ‑27 ‑1 8
とな り、昭和1
1年の発間数が多 いが1 4
年 には もとにもどっている。昭和1 1
年の授業 は、Al、A2
といった簡単 な問い を立て続 けに出 して授業 にリズムを作 ると共 に、繰 り返 し問 うことで定着 させ ようと 意図 したことが、発 間数の増加 につ なが った と考 え られる。 しか し、昭和1 4
年ではB2
を主 として問いを組み立て、考 えさせている。発間数 自体 も少ない。発 間数の比 をみると、昭和7年、
1
1年 において1時間目はAがBの倍以上あるが、時 間が進むにつれてAとBは同 じくらいになる。1 4
年は1
時間目で もAよりBが多 く、3時 間目で同 じくらいになっている。そこで、各年の各時間について、1時間に5回以上発 した問いの種類 を多い順 に並べ て比較 したのが、表2である。
表
2 5
回以上発 した問いの種類昭和
7
年 昭和1
1年 昭和1 4
年2
時間 目A 1、B 2
(同封A
l、A2 B 2
冬時間の一番多い もの (全角文字) を1時間目か ら順 に‑で示す と、昭和7年 はAl
‑Al・ . B2
、昭和 1年 はA2‑Al ‑B2
、暗和1 4
年はB2‑B2‑B2
となる。7
年、11年 はA
‑B2
t‑い う流れだが、1 4
年は仝時間B2を中心 に問いを組み立てている。問いの種類 と応 答条件の組み合わせ について、Al
、A2
は答 えが単純 なので(∋が多 い。B2は① と③ があ り、やや① が多い。BlとCは、応答条件 を多様 に組み合 わせ て
いるが少数である。全体的に、選択肢 をあげて問 うことが少ない。昭和7年
、1
1年、1 4
年の各授業時間におけるこ と六 (五)の傾向を、二か ら六 (i. 五) への問いの数の増減 に着 目して、種類別、応答条件別 にまとめたのが表3である。一 13 2 ‑
表
3
二 (復習 ・お さらへ)か ら六 (とく)への問いの増減 (種類別 、応答条件別)【昭和
7
年1
時 間 目】 ※ 二 の発 間数 一 五 及 び 六 の発 間数Al A2 B 1 B2 C 計
① 4ー 3 J 2‑ 3 I 0→ 1 T 0‑→1 I 0‑ 1 'T 15
② 0ー 1 I 0→ 1 I 2
③ 1→ 0
1
1ー 2I
4【昭和7年 2時 間 目】
A 1 A2 B1 B2 C 計
① 2‑う0 1 1‑う4 I 2‑ 3 T 1‑う0 1 13
②
0
③ 0→ 1 T 1‑一0 1 1→ 0 1 1‑ 0 1 4
【昭和 1 1年 1時 間 目】
(ら 4→ 2 1 5‑ 6 T 0→ 1 T 0ー 3 T 2 1
②
0
③ 1→ 0 J 1→ 1 → 0‑ 2 T 5
【昭和
11
年2
時 間 目】A 1 A2 Bl B2 C 計
(》 11→ 1 1 4→ 2 1 2→ 1 1 1→ 1 → 0‑ 1 T 24
② 1→ 0 1 1
③ 1ー 0 1 0→ 1
T
1.→ 1 → 0‑→2 T 6①〜③ 12‑ 1 1 4‑ 3
l
2‑ 1 1 2‑ 2 ー i‑‑ 3 I 3 1【昭和
11
年3
時 間 目】Al A2 B l B2 C 計
(∋ 4ー 3 1 2→ 3 T 6‑→ 3 J 2 1
②
0
③ 1‑ 3 I 、4
①〜③ 4‑ 3 1 2‑ 3 I 7‑ 6 1 2 5
【昭和
14
年1
時 間 目】Al A2 B l B2 C 計
(D 1ー 2 T 1→ 0 1 0→ 5 I 9
② 1→ 0 1 1
@ 2→ 0
J
1→ 4T
7【昭和
14
年2
時 間 目】A l A2 Bl B2 C 計
① 2→ 0 1 2→ 0 1 5‑ 1 '1 10
② 0′
③ 1ー 0 J 1ー 0 1 1→ 1 → 4
【昭和
14
年3
時 間 目】A1 A2 B 1 B2
C
計① 1→ 7 T 1ー 3 I 5‑ 2
1
19② 0
③ 2‑ 1 J 3
‑1 31‑
二か ら六への増減で、昭和
1 4
年の3時間日を除 きすべて減少 しているのが、Alであ る。B2は、増加あるいは並行 していることが多い。A2、Cは増減が同数であること か ら、各時間の 目的や児童の実態、他の問い との関係で変えていると考 えられる。Bl
も増減するが、 どちらか といえば二で問 うことが多い。授業の始 まりや前時の復習では、言葉の意味や既有知識、前時の学習内容 を問 うこ とで、児童 の実態 を把撞 しつつ読み取 りを進めてい き、後半 の 「とく」 においては
B2
を中心 とした問いを行い、読み を広 げた り深めた りした もの と考 えられる。4
芦田は重要語旬か らどう問いを作 って発 したか「乃木大将の幼年時代」の解釈内容 を踏 まえて、 どう問いを作 ったか考 えてみたい。
児童 に答 えさせたい解釈内容や既有知識 とは重要語句であ り、いわば答 えである
。
芦 田の解釈の基本的枠組 は、育てる 「父 ・母
」
「家 (祖先)」 に対 し、育つ 「自分」がある。乃木大将は幼い とき、心身共に強 くはなからた。父は、水浴びや四十七士の 墓参 りをさせ、母は好 き嫌いのない よう食事 に気 を配 り、精神 (忠誠) と身体 を鍛 え る
。
また、質素 な実家であるが、刀や槍 は光 を放 ち、「武士の魂」が宿 っている。そ こには、守 り通 して きた祖先がいた。 これ らのおかげ と乃木大将 自身の努力の結果、「武人の手本」 となるまでになった。
そ こで、重要語句 を 「父 ・母
」
「自分」
「家 (祖先)」
「武人の手本 (忠誠、質素)」「武士の魂」 の5つ とす る。 これ らの重要語句及び関連 した内容 を答 えさせ るために、
どq)問いの種類 と応答条件で作 られたのか、 まとめた ものが表
4
である.
重要語句 の問いの総数 は69、問いの全数の
40. 1%にあたる。各年 についてみる と、
昭和7年 は
36. 8%、昭和 1
1年は39. 5%、昭和1 4
年 は43
.4% とな り、重要語句 について問 う割合 は、全体の約4割で、年 を経 るにつれて割合は増加 していた。重要語句の問いは
、1
時間の授業の中で5
項 目すべてに触れている。 (昭和7
年2
時間 目、昭和11
年仝時間、昭和14
年1時間目)特 に、「父 ・母」
「自分」
「家 (祖先)」につ いては、ほぼ毎時間、問いを発 している。つ まり、問いを多様 に変化 させた り言い直した りして繰 り返 し、学習 を徹底 させ ようとしているのである。
語句それぞれに日を向けてみる と、「父 ・■母」 に関す る問いは他 の語句の2‑3倍 あ り、中心 をなす。次いで 「家 ・祖先」 に関する問いが 「父 J母」の約半数あ り、その 他 は10以下である。
問いの種類 としてはB2、A2が多 く
。B2
に着 目して、昭和7年〜14
年の経年変化 を みる と、5‑ 16二 1 6
である。昭和14
年の平均発間数が少 ないことを踏 まえると、昭和1
1年 との比較 で相対 的 にB2が多 くなっている。Blは少数で、当然 なが らCはない。
重要語句 に関 して も問い全体の傾向 と同様である。
それ ぞれの重要語句 とそれを作 る問いの種類や応答条件 について詳 しく調べ た もの が、表5である。
‑1 3 0‑
表
4
「重要語句別発間数 (種類別 ・応答条件別)」昭 時 過 程 父 .母 自分 家 武 人 の 武 士 の魂
和 (言動を含む) ・祖 先 手 本
7
午 時間1 話しあひ.B2@ 1 A2(1ら
六 2 1 1
目 意議 A2② A2① A2(ら B2③
時間2 繭 1 1 1
B2③
六 1 1 1 2
目 意義 A2(D 82(D A2(D A2@ B2@
午
ll
時間1 話しあひ A2①1六
6
1 1 1目 とく B2③ B2(B1(DA2① A2①D A2③ A2① A2(D B2③
2
‑
1 1 1 1時
間 おさら五へ 白1①
4
B2(D1 A2① A2(丑 目 とく 父 Bl父母自分① B2③A2① B 2③ B2①3 ‑
2 1 1 2時
間目 ら‑五お さ B2① B2①1 B2①1 B2③
3
B2①A2①1 1 とく B2(卦 . A2① B2① B2③B2① †2① A2①14
午 時間1 とく
六 1 1 1 1 1
目 と く B2③ B2Q) 82③ B2③
2 ‑
3
2 2 1時
間目 らひお さ Bl③ A2③ A畠① B2③A2(ら B2①B2① B2(∋
六
と く B2③1
3
‑5
1 1時
間目 お さらひ B2③ B2③ B2①A2(D B2① B2① B2(》
表
5
重要語句の問いの種類 ・応答条件※ (
)内は数「父 .母
」
B 2、 A 2、 B lで作 られ てい る. B‑2 (13) の うち、9
個 が③ o A 2 (10) の うち、① が 7個 O B 1 (4) の うち① が 3個○
「自分
」
A 2、 B 2で 作 られ て い る○ A 2① が 5個 , B 2③ が 3個 ○「家 (祖 先 ) B 2、 A 2で作 られ て い るo B 2が 13個 の うち 12個ーを 占め る.
「武 人 の手本」 A 2、.B 2で作 られ て い るo A 2① (6)、 B 2(2)
「武 士 の魂
」
B 2, A 2で作 られ て い るO B 2( 7)
の うち、③ が 5個○‑129‑
表
5
の特徴 的 な内容 につ いて述べ る。 「父 ・母」 において、B2③ が多 いの は、 「誰 の おか げか」
「育 て なす ったの は、 ‑・」 とい う問いで は答 えが複 数 になるので、③ を組 み合 わせ る こ とになる。A2① が多 い の は、父 ・母 それぞ れの言動 をテキス トか ら取 り出す 問 いだか らで あ る。
「家 (祖 先)」 に関す る問 い は、 「育 て る」 こ とに間接 的 に 関与 してい る こ とが児童 には想像 しに くい。 そのため、父 ・母 に関す る問い を発 した 後 にその関連 で問 うこ とが多 い。 となる と、B2が多 くな らざる を得 ない。 「武 人 の手 本」 も児童 には、分 か りに くい問いであ る。忠誠 ・質素 を答 え させ たいが ため、 テキ ス トの どの箇所 か ら読 み取 れば よいか とい うこ とでA2にす る こ とが多 い。5
今後 の課題芦 田恵之助 の読 み方教授 にお け る問いの技芸 の特徴 について、教壇記録 か ら分析 す る こ とを試 み た。分析 方法 自体 、 まだ試論 の域 を出てい ないが、 さらに特徴 を明示 で きる ように研 究 を進 め、膨大 な教壇記録 を研 究資料 と して活用 していける ように した
い。
芦 田は他 に 「釈迦
」
「文夫祥」 な どの授 業 も何 十 回 と扱 い、多数 の教 壇記録 が残 さ れてい る。
今後 は、 同年代 に実践 された これ らの作 品 にお いて も、本研 究 で明 らか に した特徴 と共通点 や相違点が あ るのか調べ 、客観性 を確保 してい くこ とが課題 であ る。また、個 別 に検討す え必 要が あ る問い と して、 「ぴか っ と光 った言葉
」
「まとめてい った ら何 だ」 とい うような総称化 す る問い、児童 の内省 を促 す問い、児童 の生活経験 に重 ね る問い、学習課題 の ようなメ タな問いが あ り、 さらなる研 究が必 要であ る。注
1 垣 内松 三 は、教 壇 事 実 を捉 え る際 、事 象 状 態 (教 室 の姿 )、事 象 論 理 (教授 の 筋 )、事 象聯 関 (陶冶 の力 ) の三別 に沿 い 、 中で も事 象論 理 の記 述 に関 して は記 録者 の鍛錬 と理解 に負 うと し、青 山贋志 を認 めてい る。
2
芦 田恵之助( 1 98 7)
『恵雨諌 方教 壇 』 同志 同行 社(
『芦 田恵 之助 国語教 育全 集l l j p. 3 71
、明治図書)3 ・昭和7年2・3月 東 京市外 千駄 ヶ谷 尋常 高等小 学校 で の授 業 記録 (『垣 内先生 の ご指 導 を仰 ぐ記』 昭和7年7月 同志 同行社 全 集第8巻 よ り)
・昭和
1
1年8月 宮 城 県 野蒜小 学校 で の授 業記 録 (『意 両頭 方教壇 』 昭和1 2
年5月 同志 同行社 全 集第1
1巻 よ り)・昭和
1 4
年9月 小 樽市緑小 学校 で の授 業記録(
「同志 同行」 昭和1 4
年1
1月号 全 集 第10 巻より)
4
井 上 尚美( 2005)F国語 教 師 の力 量 を高 め る一 発 間 ・評価 ・文 章分 析 の基礎 ‑J
p. 5 3
明治図書も うち
十日町
市立孟地
小学校‑1 28‑
平
成 5
年度修了平成1