呼吸鎖複合体酵素活性測定
酵素活性の測定には SPECTROstar Nano (BMG LABTECH)を用い、全ての測定 は 100 μL の反応系で行う。マルチウェルプレートは 96 well, half area UV-Star® Microplate (Greiner Bio One)を用いる。サンプルはヒトの組織(大動脈中膜平滑筋 層、心筋、脂肪組織)から調製したミトコンドリア画分を用いる。ミトコンド リア画分はミトコンドリア膜を破砕することで活性測定試薬を透過させるため に、凍結融解の処理を行う。
複合体 I の活性は 70 μM Decylubiquinone 、34 μg/mL Antimycin A、2.6 mM KCN、 6.7 mg/mL BSA (Bovine serum albumin) の 存 在 下 で 測 定 し 、 20 mM NADH (nicotinamide adenine dinucleotide)を 1 μL 添加することにより酵素反応を開始す る。NADH の吸光度変化 (ミリモル吸光係数 6.3 mM-1
cm-1)を 340 nm で測定する ことにより酵素活性を求める。緩衝液は 1mM MgCl2 を含む pH 7.5 の 30 mM リ
ン酸カリウム緩衝液を用いる。さらに複合体 I の特異的阻害剤である Rotenone 20 μM 存在下における Rotenone 非感受性の NADH 酸化反応の活性を求め、 Rotenone を添加しない場合の活性から差し引く。(Ma, Y.Y., et al., 2011, J. Child
Neurol.) 複 合 体 II の 活 性 は 50 μM Decylubiquinone 、 50 μM DCPIP (2,6-dichlorophenolindophenol)、2mM KCN の存在下で測定し、0.5 M コハク酸ナ トリウム1 μL の添加により、酵素反応を開始、DCPIP の吸光度変化 (ミリモル 吸光係数 19.1 mM-1 cm-1)を 600 nm で測定することにより酵素活性を求める。緩 衝液は pH 7.5 の 50 mM リン酸カリウム緩衝液を用いる。さらに複合体 II の特異 的阻害剤であるマロン酸 10mM 存在下で活性が完全に阻害されていることを確 認する。(Trounce, I.A., et al., 1996, Meth. Enzymol.)
複合体 III の活性は 83 μM Decylubiquinol 、0.8 mM KCN、25 mg/mL BSA、83 μM Rotenone 存在下で測定し、1 mM 酸化型チロクローム C を 2.5 μL 添加すること により酵素反応を開始する。酸化型チロクローム C の吸光度変化 (ミリモル吸 光係数 19.0 mM-1 cm-1)を 550 nm で測定することにより酵素活性を求める。緩衝 液は 1mM MgCl2 を含む pH 7.5 の 30 mM リン酸カリウム緩衝液を用いる。さら に複合体 III の特異的阻害剤である Antimycin A 35 μg/mL 存在下における Antimycin A 非感受性の活性を求め、Antimycin A を添加しない場合の活性から差 し引く。(Trounce, I.A., et al., 1996, Methods. Enzymol.)
複合体 IV の活性の緩衝液は pH 7.5 の 50 mM リン酸カリウム緩衝液を用い、 350 μM 還元型チトクローム C を 6.3 μL 添加することにより酵素反応を開始す る。還元型チロクローム C の吸光度変化 (ミリモル吸光係数 19.0 mM-1 cm-1)を 550 nm で測定することにより酵素活性を求める。さらに複合体 IV の特異的阻害剤 である KCN 2mM 存在下で活性が完全に阻害されていることを確認する。(Ma, Y.Y., et al., 2011, J. Child Neurol.)
複合体 V は 300 μM NADH、2.5 mM PEP (phosphoenol pyruvic acid)、50 μg/mL PK (Pyruvate Kinase)、50 μg/mL LDH (Lactate Dehydrogenase)、35 μg/mL Antimycin A 存在下で測定し、25 mM ATP を 10 μL 添加することにより酵素反応を開始する。 緩 衝 液 は 10 mM MgSO4 を 含 む pH 8.0 の 10 mM HEPES
(4-(2-HydroxyEthyl)-1-PiperazineEthaneSulfonic acid) 緩衝液を用いる。NADH の吸 光度変化 (ミリモル吸光係数 6.3 mM-1
cm-1)を 340 nm で測定することにより酵素 活性を求める。さらに複合体 V の特異的阻害剤である Oligomycin 50 μg/mL 存在 下で、Oligomycin 非感受性の NADH 酸化反応の活性を求め、Oligomycin を添加 しない場合の活性から差し引く。(Jonckheere, A.I., et al., 2008, J. Med. Genet.)
クエン酸シンターゼ活性は 0.3 mM Acetyl coA、0.1 mM DTNB (5,5’dithiobis (2-nitrobenzoic acid) )存在下で測定し、50 mM オキサロ酢酸を 1 μL 添加すること により酵素反応を開始する。酵素活性は DTNB の吸光度変化 (ミリモル吸光数 13.6 mM-1cm-1)を 412 nm で測定することにより酵素活性を求める。緩衝液は pH 8.0 の 100 mM Tris-HCl を用いる。(Trounce, I.A., et al., 1996, Methods. Enzymol.)
参考文献
Ma, Y.Y., Zhang, X.L., Wu, T.F., Liu, Y.P., Wang, Q., Zhang, Y., Song, J.Q., Wang, Y.J., Yang, Y.L. (2011) Analysis of the mitochondrial complex I-V enzyme activities of peripheral leukocytes in oxidative phosphorylation disorders. J. Child Neurol. 26:974-9.
Trounce, I.A., Kim, Y.L., Jun, A.S., (1996) Wallace DC.Assessment of mitochondrial oxidative
phosphorylation in patient muscle biopsies, lymphoblasts, and transmitochondrial cell lines.
Methods Enzymol. 264:484-509.
Jonckheere, A.I., Hogeveen, M., Nijtmans, L.G., van, den, Brand, M.A., Janssen, A.J., Diepstra, J.H., van, den, Brandt, F.C., van, den, Heuvel, L.P., Hol, F.A., Hofste, T.G., Kapusta, L., Dillmann , U., Shamdeen, M.G., Smeitink, J.A., Rodenburg, R.J. (2008) A novel mitochondrial ATP8 gene mutation in a patient with apical hypertrophic cardiomyopathy and neuropathy. J. Med. Genet. 45:129-33.
複合体 I 活性測定 調製後 3 度凍結融解したミトコンドリア画分 (3-5µg)を用いて測定。 手順 1 mM MgCl2, 30 mM Kpi (pH7.5) 83.6 -x μL 200 mM KCN 1.3 μL 500 μg/ml Antimycin A 6.7 μL 10%BSA 6.7 μL ミトコンドリア x μL よく混和する 10 mM Decylubiquinone 0.7 μL 1. ウェルに上記を順に加え、ピペッティングで混和する。 2. プレートリーダーに入れ、30℃で 3 分放置する。 3. 340 nm でベースラインを測定する (1 分程度、チャートが安定している事を確認)。 4. 20 mM の NADH を 1 μL 加えてピペッティングで混和する。 5. 340 nm で活性を測定する(3-4 分程度)
6. MARS software (BMG LABTECH)を用いて傾きを算出し、 酵素活性をもとめる。
複合体 II 活性測定 調製後 1 度凍結融解したミトコンドリア画分 (1-2 µg)を用いて測定。 手順 50 mM Kpi (pH7.5) 96.5 -x μL 200 mM KCN 1 μL 5 mM DCPIP 1 μL (用時調製) ミトコンドリア x μL 10 mM Decylubiquinone 0.5 μL 1. ウェルに上記を順に加え、ピペッティングで混和する。 2. プレートリーダーに入れ、30℃で 3 分放置する。 3. 600 nm でベースラインを測定する (1 分程度、チャートが安定している事を確認)。 4. 0.5 M コハク酸を 1 μL 加えてピペッティングで混和する。 5. 600 nm で活性を測定する(2 分程度)
6. MARS software (BMG LABTECH)を用いて傾きを算出し、 酵素活性をもとめる。
複合体 III 活性測定 調製後 1 度凍結融解したミトコンドリア画分 (1-2 µg)を用いて測定。 手順 1 mM MgCl2, 30 mM Kpi (pH7.5) 63 -x μL 200 mM KCN 0.4 μL 10% BSA 25 μL 1 mM ロテノン 8.3 μL ミトコンドリア x μL 10 mM Decylubiquinol 0.83 μL 1. ウェルに上記を順に加え、ピペッティングで混和する。 2. プレートリーダーに入れ、30℃で 3 分放置する。 3. 550 nm でベースラインを測定する。 (1 分程度、チャートが安定している事を確認)。 4. 1 mM の酸化型チトクローム C を 2.5 μL 加えてピペッティン グで混和する。 5. 550 nm で活性を測定する(2 分程度)
6. MARS software (BMG LABTECH)を用いて傾きを算出し、 酵素活性をもとめる。
複合体 IV 活性測定 調製後 1 度凍結融解したミトコンドリア画分 (1-2 µg)を用いて測定。 手順 50mM Kpi (pH7.5) 93.7 -x μL ミトコンドリア x μL 1. ウェルに上記を順に加え、ピペッティングで混和する。 2. プレートリーダーに入れ、30℃で 3 分放置する。 3. 550 nm でベースラインを測定する (1 分程度、チャートが安定している事を確認)。 4. 350 μM の還元型チトクローム C を 6.3 μL 加えてピペッティン グで混和する。 5. 550 nm で活性を測定する(2 分程度)
6. MARS software (BMG LABTECH)を用いて傾きを算出し、 酵素活性をもとめる。
複合体 V 活性測定 調製後 3 度凍結融解したミトコンドリア画分 (2-4 µg)を用いて測定。 手順 10 mM HEPES-MgSO4 buffer (pH7.5) 75.5 -x μL 30 mM NADH 1 μL 50 mM PEP 5 μL 10 mg/mL PK 0.5μL 5 mg/mL LDH 1 μL 500 μg/ml Antimycin A 7 μL ミトコンドリア x μL 1. ウェルに上記を順に加え、ピペッティングで混和する。 2. プレートリーダーに入れ、30℃で 3 分放置する。 3. 340 nm でベースラインを測定する (1 分程度、チャートが安定している事を確認)。 4. 25 mM の ATP を 10 μL 加えてピペッティングで混和する。 5. 340 nm で活性を測定する(3-4 分程度)
6. MARS software (BMG LABTECH)を用いて傾きを算出し、 酵素活性をもとめる。
クエン酸合成酵素活性測定 (CS 活性) 調製後 1 度凍結融解したミトコンドリア画分 (1-2 µg)を用いて測定。 手順 100 mM Tris-HCL (pH8.0) 89 -x μL 6 mM Acetyl CoA 5 μL 2 mM DTNB 5 μL ミトコンドリア x μL 1. ウェルに上記を加え、ピペッティングで混和する。 2. プレートリーダーに入れ、30℃で 3 分放置する。 3. 412 nm でベースラインを測定する (1 分程度、チャートが安定している事を確認)。 4. 50 mM オキサロ酢酸を 1 μL 加えてピペッティングで混和する。 5. 412 nm で活性を測定する(2 分程度)
6. MARS software (BMG LABTECH)を用いて傾きを算出し、酵素 活性をもとめる。
複合体 I, III 以外は阻害剤を入れるとほぼ傾きの変化はなくなる。傾きが低下す る活性だと、阻害剤添加で水平になるだけではなく上昇する場合があるが理由 は不明。完全阻害として扱う。
阻害剤添加 (100uL の系)
複合体 I…1mM ロテノン 6uL、複合体 II…1M マロン酸 1uL、複合体 III… 500ug/mL アンチマイシン 7uL、複合体 IV…200mM KCN 1uL、複合体 V… 500ug/mL オリゴマイシン 10uL