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(1)

水産県山口の再活性化を目指して

水産山口チャレンジ計画

改定版

平成 18 年 3 月

(2)

は じ め に

私たちの毎日の食卓に上る食材は、世界各地から集められた海の幸、 山の幸です。 飽食の時代といわれる今日、我が国の食料自給率は40%まで落ち込み、 世界有数の食料輸入国となっています。 一方、魚は、近年の高まる健康志向の中で、血液の粘り気を抑え心臓 病予防に効果のある成分を多く含む「ヘルシー食品」として高く評価される ようになり、輸入食品やファーストフードに偏った食生活が見直されつつあ ります。 本県は、1,500km に及ぶ全国で 6 番目に長い海岸線を持ち、四季を通じて多彩な魚介類が水 揚げされる特性を背景に、古くから水産業が栄えてきましたが、近年は水産資源の減少や魚価の 低迷等、本県水産業を取り巻く環境は一層厳しさを増し、漁業後継者の減少と高齢化が全国を上 回るペースで進行しています。 このような状況の中で、県では、平成12 年 3 月に本県水産業の振興施策の指針となる「水産山 口チャレンジ計画」を策定し、県民に食料を安定供給する重要な産業である水産業が、若い担い 手が将来に夢を持って打ち込める魅力ある産業となるよう、「儲かる漁業の振興」を重点プロジェク トとして漁家の所得向上に取り組んで参りました。 計画策定後 5 年が経過し、この間、市町村合併による行政組織の再編や、漁業者の母体組織 である漁協及び漁協系統団体による1 県 1 漁協に向けた取組みの中で山口県漁協が誕生するな ど、水産業振興の推進体制が大きく変化してきました。 また、食の安心・安全に対する県民の関心が高まるとともに、森・川・海を一体的にとらえた環 境・生態系の保全や、都市と漁村の共生・対流など、水産業・漁村の持つ多面的機能を活かした 取組み等にも県民の関心が寄せられるようになってきました。 このたびの計画改定に当たっては、こうした情勢の変化に的確に対応するため、「収益性の高 い漁業への転換(漁業構造改革の推進)」等の新たな視点を織り込み、平成 22 年度目標の達成 に向けて主要施策の加速化・重点化を図ることとしました。 本県の水産業が、将来にわたって私たちの食卓に新鮮で安全な山口県産の水産物を供給して いくためには、水産業界と市町、県の密接な連携の下、本計画の推進に向けてのたゆまざる「チャ レンジ」が何より重要でありますが、県民の皆様には、日常の食生活を通じて県産水産物の魅力 を実感していただき、本県水産業の良き応援団として、消費拡大や漁場環境の保全に積極的に 御協力いただきますことを心から期待しております。 平成18 年(2006 年)3 月 山口県知事

二 井 関 成

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Ⅰ 改定に当たって...1 1 計画改定の趣旨 2 計画の性格 3 計画の期間 4 計画の構成 Ⅱ 山口県水産業の現状 ...3 1 漁業就業者 2 漁業生産 3 漁家経営・漁協経営 4 食の安心・安全と県産魚の販路拡大 Ⅲ 山口県水産業の課題 ...12 1 若年・中堅・高齢層の均衡がとれた就業構造への転換 2 持続的利用が可能な資源管理による漁業生産性の向上 3 県産水産物の販路拡大と水産加工業の振興 4 漁場環境と生態系の保全・修復 5 水産基盤整備と漁村地域の活性化 6 漁協経営の安定化 7 試験研究と普及指導体制の拡充 Ⅳ チャレンジ目標...21 Ⅴ 7 つのチャレンジ(施策体系) ...25 Ⅵ 施策体系ごとの振興方向 ...27 1 次代を担う就業者の確保・育成と漁業経営の安定 2 水産資源の管理・回復と持続的利用の推進 3 安心・安全で豊かな県産水産物の安定供給 4 魚が育つ漁場環境と生態系の保全・修復 5 水産基盤の総合的な整備と漁村地域の活性化 6 漁協経営の安定化 7 水産技術の研究と普及体制の強化 Ⅶ 重点プロジェクト...43 1 当初計画における考え方 2 新たな重点プロジェクト

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Ⅷ 実施計画 ...49 1 重点プロジェクトの実施計画 2 主要な施策展開 Ⅸ 地区別計画 ...64 1 地区設定の考え方 2 地区別振興計画 Ⅹ 推進体制と進行管理...83 1 推進体制 2 進行管理 表紙の写真...「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」 左上(沖家室の漁村集落)、右上(下関漁港閘門)、中央(祝島の神舞)、左下(牛島漁港藤田の波止)、 左下(青海島鯨墓)

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1 計画改定の趣旨 本県では、漁業就業者の減少・高齢化、水産資源状態の悪化等による漁業生産の減少等、 依然として漁業を取り巻く厳しい状況が続く中で、国連海洋法条約1の発効や国による水産 基本政策大綱及び水産基本政策改革プログラムの策定等、新たな局面に的確に対応し、本 県水産業の再活性化を図るため、平成 12 年に、水産業振興施策の指針となる、「水産山口 チャレンジ計画」を策定しました。 しかしながらその後も、漁業就業者の減少・高齢化は一層進行し、漁業生産の減少、魚価 の低迷が続く中で、山口県漁協の発足や市町村合併の進展など、本県漁業を取り巻く環境 は大きく変化し、また、食の安心・安全対策や「住み良さ」志向の高まりなど、県民の視点に立 った水産業のあり方が問われるようになってきました。 今回の見直しでは、計画期間前半(平成12 年度∼17 年度)の実績と課題を踏まえ、こうし た情勢の変化に的確に対応することにより、計画期間後半(平成 18 年度∼22 年度)におけ る施策の加速化・重点化を図り、平成22 年度目標に向かって着実に推進することを目的とし て、計画の改定を行いました。 2 計画の性格 水産山口チャレンジ計画は、平成10 年 2 月に策定された県政運営の長期指針である「や まぐち未来デザイン21」の部門別構想として、県における水産行政の具体的指針であるととも に、市町、水産業界においては水産業振興に対する県と一体となった取組みを期待するもの です。 3 計画の期間 水産山口チャレンジ計画の計画期間は、初年度を平成 12 年度(2000 年度)とし、目標年 度を平成22 年度(2010 年度)としています。 計画期間の中間年である平成17 年度(2005 年度)に改定を行い、目標年度の平成 22 年 度に向け、計画期間後半(平成18 年度∼22 年度)の振興施策とその実施計画を策定しまし た。 1国連海洋法条約】 領海、排他的経済水域2、大陸棚、深海底の鉱物資源、海洋環境の保護等、海洋に関する諸問題を網羅し て規律した海洋に関する最も基本的な条約。平成6 年(1994 年)に発効し、我が国は平成 6 年 6 月 20 日に 批准して、同年7 月 20 日に国内関連法が施行された。 2 【排他的経済水域】 国連海洋法条約の規定により、沿岸国は基線から 200 海里を超えない範囲において設定することができ、 鉱物資源や水産資源のような天然資源の探査・開発、人工島、施設及び工作物の設置、海洋の科学的調査 等についての沿岸国の主権的権利が認められている水域。

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4 計画の構成 この計画は、次の章で構成されています。 構 成 内 容 Ⅰ 改定に当たって 計画改定の趣旨、計画の性格、計画の期間及び計画の 構成を記述 Ⅱ 山口県水産業の現状 水産山口チャレンジ計画の基準年である平成 10 年と平 成15 年の数値を比較するとともに、計画期間前半での主 な取組みと成果、今後の見通しを記述 Ⅲ 山口県水産業の課題 山口県水産業全般に渡る課題を記述 Ⅳ チャレンジ目標 この計画で目指す目標と具体的な数値目標を記述 Ⅴ 7 つのチャレンジ(施策体系) 山口県水産業の課題に対応した形で、水産業振興全般 に係る施策を体系化して記述 Ⅵ 施策体系ごとの振興方向 施策体系ごとの振興方向について記述 Ⅶ 重点プロジェクト チャレンジ目標を実現するための重点プロジェクトを設定 するとともに、重点プロジェクトを構成する3 つの柱につい て記述 また、それぞれの柱に係る数値目標及び予測数値を記 述 Ⅷ 実施計画 重点プロジェクトを構成する3 つの柱ごとの平成 18 年度 から平成22 年度までの実施計画と、7 つのチャレンジのう ち、複数の施策の組み合わせや他部局との連携により展 開する8 つの主要な施策について記述 Ⅸ 地区別計画 県内を5 地区に分けて地区別の振興計画を記述 Ⅹ 推進体制と進行管理 計画推進のための役割分担と進行管理の方法等を記述

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1 漁業就業者 (1) 現 状 漁業就業者数は、計画策定時の平成10 年には 9,779 人であったものが、平成 15 年に は 8,084 人と 82.7%に減少しており、うち男子就業者6,815 人中、65 歳以上は 3,081 人 と 45.2%を占め、漁業就業者の減少・高齢化が一層進んだ状況となっています。 (2) 施策と実績 主な施策内容 実 績 (H12∼H17) ○ ニューフィッシャーの確保 育成 ・ U、J、I ターン者への情報提供から独立に至るまでの支援 〔延べ人数;短期研修125 人、長期研修 38 人、着業 16 人〕 ○ 新規就業者への支援 ・ 漁船リース事業、住宅確保支援事業 〔各延べ実績;漁船リース17 件、住宅 2 件〕 ○ 漁業の魅力発信 ・ 少年水産教室、漁業おもしろ塾(高校生、社会人) 〔延べ人数;少年575 人、高校生 31 人、社会人 123 人〕 ○ 中核的漁業者協業体2 の支援 ・ 中核漁業者グループの儲かる漁業への取組支援 〔計8 グループを支援〕 ○ 海鳴りネットワークによる 情報発信 ・ 山口県水産情報システム「海鳴りネットワーク」の整備と情報 発信の開始 ○ 女性の地位の明確化と向 上 ・ 漁村女性の組織づくりと起業化支援〔9 グループ〕 ・ 漁村生活改善士3の認定〔42 名〕 ・ 家族経営協定4の締結〔44 件〕 (3) 今後の見通し 30 歳以下の新規就業者が毎年 20∼30 人程度で推移している中で、漁業就業者数及 び漁業経営体数は今後も高齢化に伴う離職等により大幅な減少が続くものと予測されま す。 2 【中核的漁業者協業体】 青年漁業者が中心となって漁業経営改善のための意欲的な取組みを行う漁業者のグループ、団体又は法 人であり、これらが作成した漁業共同改善計画について山口県の認定を受けたものをいう。 3 【漁村生活改善士】 魅力ある漁村づくりを総合的に推進するため、リーダーの発掘と養成を目的として知事が認定する漁村女 性。 4 【家族経営協定】 家族内での漁業経営において、経営主と配偶者・後継者・その他の家族が自由な意志に基づいて営漁計 画・就業条件・役割分担・収益配分・その他生活の色々な事項について話し合いを行い、その結果合意され 取り決められたルール。

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●  うち65歳以上 63 15,478 2,573 6,337 3,519 1,947 3,049 5 12,016 1,225 4,379 4,179 2,437 2,233 10 9,779 747 2,892 4,394 2,982 1,746 11 9,220 610 2,510 4,430 3,140 1,670 12 8,120 490 2,030 3,990 2,940 1,600 13 7,690 380 2,030 3,740 2,900 1,530 14 7,330 350 1,970 3,610 2,900 1,400 15 8,084 602 2,157 4,056 3,081 1,269 年齢階層別漁業就業者数の推移 (農林水産統計年報、漁業センサス及び漁業動態統計年報) (単位;人) 年 総  数 40歳未満 40∼59歳 男    子 60歳以上 女 子 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 63 5 10 15 年 人 -60% -40% -20% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 40歳未満 40∼59歳 60歳以上 女 子 男子就業者のうち65歳以上の割合 2 漁業生産 (1) 現 状 海面漁業・養殖業の生産量、生産額はともに減少が続いており、平成10 年には 89,163 トン、36,186 百万円であったものが、平成 15 年には 60,093 トン(対平成 10 年比 67.4%)、 27,594 百万円(同 76.3%)と、量で約 2/3、額で約 3/4 にまで減少しています。 この要因としては、いわし類・あじ類・さば類の大幅な減少(約 18,300 トン減少)や沖合 底びき網漁業・小型機船底びき網漁業の経営体数の減少に伴う生産量の減少(約 4,200 トン減少)等が挙げられます。 また、内水面漁業・養殖業生産量は、平成13 年の 182 トンから、平成 15 年には 163 ト ンへ減少しています。特にあゆ漁業生産量は、平成13 年の 81 トンから平成 15 年には 42 トンと大きく減少しました。 年 計 沿岸漁業 中小漁業 大規模 漁業 養殖業 63 8,437 7,399 513 6 519 5 7,530 6,682 473 2 373 10 6,391 5,750 373 1 267 11 5,901 5,289 353 1 258 12 5,646 5,073 327 1 245 13 5,417 4,853 330 1 233 14 5,385 4,838 322 0 225 15 5,476 4,946 316 0 214 沿岸漁業・・・・漁船非使用、無動力船、0∼10トン未満漁船、大型定置網、小型定置網 中小漁業・・・・10∼1,000トン未満漁船 大規模漁業・・1,000トン以上漁船 別漁業経営体数の推移 (単位;体) (農林水産統計年報及び漁業センサス) ● 階層 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 63 5 年 10 15 体 養殖業 大規模漁業 中小漁業 沿岸漁業 注)

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(2) 施策と実績 主な施策内容 実 績 (H12∼H17) ○ TAC5対象種など重要魚種の 資源評価 ・ マイワシほか 12 魚種(外海)、カタクチイワシほか 8 魚種 (内海)、あわび類ほか2 魚種(全県) ○ 資源回復計画6の策定 ・ 広域種・・・・外海;トラフグ、内海;サワラ、小型底びき網対 象7 種(マコガレイ等) ・ 地先種・・・・アサリ(内海) あまだい類(外海);H18 策定予定 ・ 包括的・・・・沖合底びき網;H18 策定予定 ○ 栽培漁業拠点施設の整備 ・ 下関市、光熊毛、吉佐(3 箇所) ○ 放流効果(経済効果)の実証 ・ 外海のヒラメで約1,700∼2,800 万円、トラフグで約 2,800 万円、マダイで約1,000∼2,500 万円の経済効果あり(1 年 間あたり) ○ 新規栽培対象種の技術開発 ・ イシガレイ、キジハタ、アカアマダイの技術開発に着手 ○ 漁場の整備と保全創造 ・ 沖合漁場整備計画樹立、ガラモ場造成 ・ アマモ場造成指針の策定 (3) 今後の見通し 今後も、沿岸域における漁場環境の変化や資源の減少、さらには操業隻数や就業者の 減少・高齢化による漁業生産の低下が見込まれます。 また、依然として生産額も減少しており、これは、生産量の減少に加え、近年の輸入水産 物の増大や国内経済の停滞、消費形態の変化等による魚価の低迷が大きな要因と考えら れ、今後もその傾向が続くものと思われます。 年 6 遠洋漁業 沖合漁業 沿岸漁業 養殖業 計 3 10,918 159,765 56,045 17,834 244,562 5 0 81,615 40,776 13,153 135,544 0 0 47,063 32,824 9,275 89,163 1 0 37,452 31,082 10,702 79,236 2 0 32,325 28,018 8,722 69,065 3 0 33,636 24,974 10,605 69,215 4 0 29,336 25,778 8,498 63,612 5 0 28,403 24,724 6,966 60,093 (単位;トン) ● 海面漁業・養殖業生産量の推移 (農林水産統計年報) 1 1 1 1 1 1 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 63 5 年 10 15 トン 養殖業 沿岸漁業 沖合漁業 遠洋漁業

5 【TAC;Total Allowable Catch 漁獲可能量】

海洋生物資源の保存及び管理に関する法律に基づき、魚種ごとに漁獲できる総量を定めることにより資源 の維持または回復を図ろうとする制度で、平成9 年 1 月 1 日から実施している。

6 【資源回復計画】

緊急に資源の回復を図ることが必要な魚種を対象とし、減船、休漁等のほか、積極的な資源培養、漁場環 境保全等を内容とする計画であり、対象魚種の分布範囲により国又は都道府県が作成主体となる。

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3 漁家経営・漁協経営 (1) 現 状 10 トン未満の沿岸漁船漁家の漁業所得は、日本海側では、平成 10 年には 2,935 千円 であったものが平成 15 年には 3,169 千円と、やや上向いてきています。しかし、瀬戸内海 側では、平成10 年には 2,567 千円であったものが平成 15 年には 1,792 千円と減少傾向 に歯止めがかかっていない状況です。ただし、遊漁案内による収入等の漁業外所得も加 えた漁家所得で見た場合、瀬戸内海側では、年変動はあるものの、概ね横ばいかやや増 加傾向にあります。 また、漁業支出面では、平成16 年から急騰した燃油価格問題は、漁家経営を逼迫する 要因となっています。 一方、漁業生産活動の中核となるべき漁協は、漁業生産力の低下等による各種経済活 動の停滞、水産業協同組合法改正等による漁協信用事業の規制強化への対応等、厳し い状況にあることに加え、本県においては、信漁連再建問題という課題を抱えていました。 こうした課題に対応し、本県水産業の持続的発展を確実なものとするために、1 県 1 漁 協の構築が進められ、平成 17 年 8 月 1 日に、県下 58 漁協中 39 漁協が合併して、山口 県漁協が発足しました。なお、その後も合併参加漁協は増加し、平成18 年 3 月末現在で、 今後合併を予定している漁協を含め45 漁協が合併に参加しています。 年 遠洋漁業 沖合漁業 沿岸漁業 養殖業 計 63 3,701 32,670 26,478 9,204 72,053 5 0 21,328 26,291 6,051 53,670 0 13,029 19,074 4,083 36,186 0 12,125 17,904 4,002 34,031 0 12,074 18,261 3,877 34,212 0 12,116 17,165 3,678 32,959 0 11,528 16,644 3,009 31,180 0 10,265 14,636 2,692 27,594 (単位;百万円) 漁業・養殖業生産額の推移 (農林水産統計年報) ● 海面 10 11 12 13 14 15 0 20,000 40,000 60,000 80,000 63 5 年 10 15 百万円 養殖業 沿岸漁業 沖合漁業 遠洋漁業 あゆ こい・ふな 貝類 その他 63 297 158 181 28 42 46 5 254 130 148 21 38 47 218 121 132 16 15 55 221 100 145 20 10 46 180 78 120 19 2 39 111 71 81 6 2 22 114 62 66 4 20 24 81 82 42 4 20 15 注1) 2) 内水面漁業については、平成13年調査から、小瀬川・錦 川・佐波川・椹野川の4河川のみの調査結果を記載。 内水面養殖業については、平成13年調査から、ます類・あ ゆ・こい・うなぎの4種類に限定した調査結果を記載。 内水面漁業・養殖業生産量の推移 (単位;トン) (農林水産統計年報) 内水面 漁業 内水面 養殖業 内水面漁業魚種別生産量 ●  年 10 11 12 13 14 15 注 0 100 200 300 400 500 600 63 5 年 10 15 トン 内水面養殖業 内水面漁業

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(2) 施策と実績 主な施策内容 実 績 (H12∼H17) ○ 中核的漁業者協業体へ の支援 ・ 中核漁業者グループの儲かる漁業への取組支援 〔計8 グループを支援〕 ・ 各水産事務所(振興局)単位で「儲かる漁業推進会議」を設 置し、優良漁家の経営内容等を調査 ○ 海鳴りネットワークによる 情報発信 ・ 山口県水産情報システム「海鳴りネットワーク」の整備と情報 発信の開始 ○ 女性の起業化支援 ・ 漁村女性の組織づくりと起業化支援〔9 グループ〕 (3) 今後の見通し 漁家経営は、近年の燃油価格の高騰等の影響を受け、今後も厳しい状況が続くものと 見られており、このまま推移すれば、漁業所得は減少傾向をたどるものと予測されます。 漁協経営に関しては、県漁連・信漁連の事業を承継した後の山口県漁協について、経 営基盤の安定化と機能の強化を進めていくこととされています。 ● 沿岸漁 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 63 5 年 10 千円 15 事業外所得 その他の事業所得 漁業所得 年 漁家所得 漁業所得 漁業外所得 63 5,798 2,712 3,085 5 6,856 3,290 3,566 10 5,620 2,935 2,685 11 5,661 2,499 3,161 12 5,689 2,273 3,416 13 5,508 3,358 2,150 14 5,194 2,760 2,434 15 5,729 3,169 2,559 家所得の推移(日本海) (単位;千円) (農林水産統計年報) ● 沿岸漁家 年 漁家所得 漁業所得 漁業外所得 63 4,714 2,987 1,726 5 6,720 3,285 3,435 10 4,031 2,567 1,464 11 3,758 1,930 1,828 12 5,107 1,959 3,148 13 3,950 1,715 2,235 14 4,258 1,656 2,602 15 5,316 1,792 3,524 所得の推移(瀬戸内海) (単位;千円) (農林水産統計年報) 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 63 5 年 10 15 千円 事業外所得 その他の事業所得 漁業所得

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4 食の安心・安全と県産魚の販路拡大 (1) 現 状 食品の偽装表示問題や BSE・鳥インフルエンザの発生などを背景に、食の安心・安全 に対する消費者の関心が増大し、水産物の衛生対策・鮮度保持対策を前提として、販路 拡大や消費拡大を進めていくことが求められています。 水産物市場は、平成10 年には 56 市場であったものが、漁協合併に伴う市場統合が進 み、平成 15 年には 36 市場までに統合再編されています。 (2) 施策と実績 主な施策内容 実 績 (H12∼H17) ○ 水産物の安全衛生 対策 ・ 衛生管理講習会の開催〔延べ4 回開催〕 ・ 市場衛生管理マニュアルの作成と普及 ・ 衛生管理に対応した新市場の整備(下関漁港、唐戸、山口はぎ) ○ 販路拡大対策 ・ ブランド化〔瀬つきあじ等5 魚種〕 ・ 大消費地での販売促進〔フェア延べ回数;東京15 回、大阪 14 回〕 ・ 食の達人の招へい〔延べ9 回開催〕 ○ 拠点市場の整備と機 能強化 ・ 下関漁港市場、唐戸市場、山口はぎ市場の整備 ・ 下関地区水産業活性化特区の認定 ○ 加工対策 ・ 新たな加工品ブランド「山口海物語7」の認定制度創設 〔8 品目 92 製品を認定〕 ○ 消費の拡大 ・ 観光客を対象とした消費拡大対策 〔萩地域;旬の地魚7 魚種を活用した定番料理〕 〔下関地域;アンコウを活用した定番料理〕 ・ 県内量販店に県産魚コーナーを設置〔23 店舗〕 (3) 今後の見通し 食の安心・安全に対する消費者の関心は今後ますます高まってくるものと思われ、食肉 や一部農産物で取り組まれているトレーサビリティ8の導入が水産物でも必要になっていま す。 また、消費者ニーズは一層多様化しており、販路拡大対策では、水産物単独でのブラン ド化から、農畜産物・商工産品とも一体感を持たせ「山口県という地域のブランド力」を高め ていくなどの新たな取組みが必要になるものと思われます。 拠点市場の整備と機能強化については、第8 次山口県卸売市場整備計画に基づき、計 画的に市場の統合と機能強化を進めることとしています。 7 【山口海物語】 原材料や、品質・衛生管理・添加物等の一定の基準を満たした水産加工品で、山口県水産加工業連合会 が認定したもの。蒲鉾等のねり製品や、うに製品など代表的な 10 品目から認定された製品を、独自のロゴマ ークを付して販売している。 8 【トレーサビリティ】 英語の「トレース(Trace:足跡をたどる)」と「アビリティ(Ability:できること)」の合成語。生産・処理・加工・流 通・販売の各段階で、食品の仕入れ先や生産・製造方法等の記録を保管し、消費者等が食品とその情報を追 跡し遡及できること。

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● 県内産地地方卸売市場における生鮮水産物の流れ(平成15年度) 地域内」の「地域」とは、山口県卸売市場整備計画における流通圏をいう。 (単位;トン) (各市場開設者からの聴取調査) 飲食店・ホテル等 4,410 その他(加工場等) 5,936 市場出荷 138 スーパー 2,596 飲食店・ホテル等 633 その他(店舗販売等) 952 市場出荷 3,522 スーパー 2,733 飲食店・ホテル等 1,886 その他(加工場等) 5,366 県外搬出 34,265 地域内搬出 13,080 地域外(県内)搬出 7,840 市場出荷 25,341 スーパー 1,672 県外搬入 12,984 市場上場 55,185 地域外搬入 1,981 市場水揚げ 36,926 地域内搬入 3,294 注) 「

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● 魚種別漁業生産量の全国ランキング 魚 種 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位 山口 長崎 島根 福井 石川 386 トン 376 トン 185 トン 123 トン 103 トン 山口(下関) 島根(浜田) 福島(相馬原釜)茨城(平潟) − 645 トン 284 トン 190 トン 46 トン − 愛媛 山口 徳島 兵庫 大分 469 トン 458 トン 388 トン 316 トン 198 トン 長崎 山口 島根 福岡 鹿児島 1,802 トン 1,328 トン 944 トン 551 トン 388 トン 長崎 山口 福岡 三重 高知 1,722 トン 447 トン 398 トン 345 トン 334 トン 長崎 山口 新潟 石川 島根 1,846 トン 1,073 トン 745 トン 659 トン 612 トン 愛媛 福岡 山口 長崎 大分 1,672 トン 753 トン 739 トン 524 トン 461 トン 愛媛 大分 山口 福岡 長崎 1,356 トン 937 トン 582 トン 549 トン 437 トン 北海道 青森 山口 三重 兵庫 2,079 トン 1,416 トン 1,086 トン 541 トン 451 トン 愛媛 長崎 福岡 山口 石川 2,159 トン 1,447 トン 1,185 トン 1,122 トン 921 トン 宮崎 島根 長崎 高知 山口 5,792 トン 4,656 トン 2,409 トン 2,355 トン 2,326 トン 北海道 宮城 島根 兵庫 山口 24,829 トン 4,112 トン 3,275 トン 3,131 トン 2,259 トン 北海道 長崎 福岡 愛媛 山口 2,884 トン 262 トン 217 トン 191 トン 160 トン 北海道 愛媛 静岡 広島 山口 3,865 トン 2,077 トン 1,994 トン 1,802 トン 1,598 トン 岩手 宮城 長崎 千葉 山口 389 トン 247 トン 223 トン 175 トン 151 トン 第6位 第7位 第8位 第9位 第10位 あなご ぶり類 まあじ − すずき類 ふぐ類 くろだい・へだい さわら類 がざみ類 その他の魚類 その他の貝類 くるまえび その他のいか類 うに類 わかめ類 (平成15年 漁業・養殖業生産統計年報) (ただし、「あんこう」のみ、平成16年の数値で、下関水産振興局調べ) あまだい類 うるめいわし えそ類 なまこ類 きだい・ちだい さざえ こういか類 まだい あんこう (参考) 山口県が6∼10位 にランキングされる 魚種 はも いさき その他のえび類 あわび類 えい類 かれい類 ● 水産加工品生産量の全国ランキング 品 目 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位 山口 長崎 北海道 大阪 兵庫 425 トン 184 トン 136 トン 95 トン 60 トン 山口 三重 茨城 静岡 千葉 4,750 トン 3,633 トン 2,604 トン 2,375 トン 1,638 トン 山口 − − − − 2,362 トン − − − − 宮城 山口 新潟 兵庫 愛知 78,774 トン 57,103 トン 56,488 トン 55,291 トン 49,042 トン 福岡 山口 北海道 宮城 佐賀 16,808 トン 1,513 トン 1,183 トン 858 トン 455 トン (平成12年 水産物流通統計年報及び農林水産統計年報)  生産が少量であることから、「その他」の項で一括りにされているため、数量等は不明。 注2)平成13年以降の水産物流通統計年報では、調査対象品目が大幅に変更されているため、平成12年の統計  数値を用いた。 うに塩辛 みりん干し ふぐ製品 ねり製品 からしめんたいこ 注1)「ふぐ製品」については、その生産量の多さから、本県のみが統計品目として設定されており、他都道府県は

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● 魚種別種苗放流数の推移 魚種  年 10 11 12 13 14 15 クロダイ 504 429 276 158 419 331 マダイ 1,718 1,694 1,797 1,974 2,125 1,716 カサゴ 166 319 390 223 161 357 オニオコゼ 10 15 36 21 70 48 アカアマダイ 0 0 0 0 1 1 ヒラメ 758 1,027 995 1,151 866 1,066 マコガレイ 66 44 56 78 92 77 トラフグ 309 314 318 502 488 608 キュウセン 617 0 489 95 57 103 キジハタ 0 0 1 0 0 4 クルマエビ 23,873 21,670 19,426 23,140 22,385 20,587 ガザミ 2,549 1,431 2,234 1,529 1,906 1,619 アサリ 35,824 44,439 9,734 44,160 126,408 20,690 アカガイ 1,000 400 0 9 7 9 アワビ類 888 635 964 896 712 769 アカウニ 28 42 98 115 68 121 (社団法人日本栽培漁業協会「栽培漁業種苗生産、入手・放流実績」) (単位;千尾、千個) 魚類放流尾数の推移 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 年 千尾 注)甲殻類・貝類等の放流尾数を除く

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1 若年・中堅・高齢層の均衡がとれた就業構造への転換 (1) 新規就業者の確保・育成 漁業への新規就業者が減少し、高齢化が進行していることは、本県の漁業生産の減少 と漁村地域の活力低下の大きな要因となっています。このため、今後の漁業振興策の主体 である水産資源回復や栽培漁業、流通対策等への積極的な取組みもできず、一層漁業の 衰退を招くという悪循環に陥っています。 こうした状態を改善するためには、若い新規就業者を安定的に確保・育成し、若年層か ら高齢層まで、均衡がとれた就業構造を再構築することが必要です。 特に、漁家の子弟が進んで親の後を継ぎ、漁家子弟を含めた新規就業者が安心して漁 業に専念できるような支援の充実や各種操業規制の見直しが必要です。 また、2007 年からは、いわゆる「団塊の世代」の大量退職が始まるという状況の中で、漁 村での受け皿を整備することにより、漁業生産から流通・加工までの各段階で幅広い人的 資源を蓄積し、漁村地域社会を維持していくという観点から、「団塊の世代」の U・J・I ター ン対策を検討していく必要があります。 このように、新規就業者対策としては若い就業者の確保・育成に重点を置きつつ、漁村 地域の維持・活性化対策という観点からは、定年退職者等を迎え入れた地域づくりをも視 野に入れた施策の展開が必要となっています。 ● 新規就業者の加入状況 (2) 中堅漁業者対策 漁業生産の中核を担う意欲のある中堅層グループによる「儲かる漁業」への取組みを継 続して支援するとともに、経営面・技術面からの事前・事後の指導・支援体制を充実強化し、 こうした取組みを県下各地に展開していくことが必要です。 さらに、今後においては、資源回復や省エネ対策等の経営改善に積極的に取り組む意 欲のある漁業者個人を対象とした施策展開を検討していく必要があります。 年齢階層別の新規加入状況 0 20 40 60 80 100 12 13 14 15 16 年 人 30歳未満 30歳以上40歳未満 40歳以上50歳未満 50歳以上60歳未満 60歳以上 (山口県漁連資料) 30歳以下の新規漁業就業者数の推移 0 平成 17 年 7 月水産課調査 58 漁協(当時)中 36 漁協が回答 (従って、左のグラフの数値とは一致しない) 10 20 63 5 10 15 年 人 30 40

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また、高齢化に伴い活力が低下しつつある青壮年部活動については、組織の広域化や 青年漁業士・指導漁業士9の組織化と役割の明確化が求められています。 (3) 女性対策 女性が重要な水産業の担い手であるという認識のもとで、家族経営協定10の締結を促進 し、女性の経営管理能力向上による漁家の共同経営の確立を支援するとともに、水産加 工及び販売分野における起業化支援を進めていく必要があります。 (4) 漁業経営の改善・安定化対策 近年の燃油価格の高騰等に対応し、省エネ化や省人・省力化を図るなど、漁家の経営 基盤を強化し、零細経営や燃料多消費型漁業から収益性の高い漁業への転換による漁 業構造改革に結びつく取組みを進めていく必要があります。 2 持続的利用が可能な資源管理による漁業生産性の向上 (1) 資源の管理・回復 近年の漁業は、漁業就業者数の減少に伴い操業隻数も減少していますが、一方では推 進機関の高馬力化、漁具資材の耐久性向上、ネットローラー等の漁労機器をはじめ魚群 探知機やスキャニングソナー、レーダー、GPS プロッター等の発達により、漁獲努力量の 増大や漁獲効率の向上が見られます。こうした現状においても、一漁労体当たりの漁業生 産量は減少(又は低位安定)しており、積極的な資源回復策を講じなければ今後も水産資 源の持続的利用は望めない状況にあります。 このため、本県にとって重要な魚種を主体に資源調査を充実強化して的確な資源評価 を行い、科学的知見に基づく資源の管理方策を確立し、これを着実に実施しつつ、その効 果を検証し関係漁業者に示していく必要があります。 とりわけ、日本海のトラフグ、あまだい類、瀬戸内海のサワラ、かれい類等の小型機船底 びき網漁業対象種、アサリなど、資源の減少が著しい魚種については、資源回復計画を策 定・実施し、漁獲努力可能量(TAE)11を制限するかたわら、種苗放流や海水シャワー設備、 ナルトビエイ等食害生物の駆除・防除などの各種支援措置を盛り込み、対象資源の早急 な回復を図っていく必要があります。 同時に、各種操業規制については、対象とする資源状況を勘案して網目を変更するな ど必要に応じた規制措置を講じる一方で、現在の漁業情勢に即したものとなるよう積極的 に各種規制の見直しを進めていくことが重要です。 9 【青年漁業士・指導漁業士】 漁村青壮年の自主的活動を助長するため、青壮年グループのリーダーとして青年漁業士を、また指導助言 を行う模範的漁業者として指導漁業士を、それぞれ知事が認定している。 10 【家族経営協定】(3 ページの脚注を参照) 11 【漁獲努力可能量(TAE);Total Allowable Effort】

資源の悪化が著しく、早急な回復が必要な水産資源(魚種)について、この資源を採捕する漁業種類ごとに、 期間、海域を定めて設定される漁獲努力量(例えば操業隻数、操業日数など)の上限。

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沖合底びき網漁業については、多様な魚種を漁獲対象としている実態から、これら資源 の包括的な回復を図るための資源回復計画を策定し、これを実行していく必要がありま す。 ● 瀬戸内海の小型機船底びき網(手繰第二種)漁業の動向 (農林水産統計年報) 小型底びき網(手繰二種)漁業の漁労体数と出漁日数の推移 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 63 3 6 9 12 15 年 漁 労 体 数 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 出 漁 日 数 ︵ 延 べ 日 数 ︶ 漁労体数(統) 出漁日数(日) 小型底びき網(手繰二種)漁業の漁獲量の推移 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 63 3 6 9 12 15 年 トン 小型底びき網(手繰二種)漁業の漁労体当たり出漁日数の推移 0 20 40 60 80 100 120 63 3 6 9 12 15 年 日/体 小型底びき網(手繰二種)漁業の出漁日数当たり漁獲量の推移 0 20 40 60 80 100 120 63 3 6 9 12 15 年 kg/日 (2) 栽培漁業の推進 栽培漁業については、魚種ごと、地域ごとに栽培漁業の経済効果を見極め、より低コス トで高い効果の上げられるシステム(資源回復計画と連携した栽培漁業、種苗生産体制 の効率化と技術の向上による安価で健全な種苗の確保等)を構築していく一方、イシガレ イやキジハタ、アカアマダイなど漁業者ニーズの高い新規魚種については積極的に技術 開発を行い、さらには市町村合併や 1 県 1 漁協体制を見据えた施設の整備・拡充を実施 していく必要があります。 (3) 養殖業の振興 のり養殖については、近年、海域の栄養塩濃度が低下傾向にあることから、色落ちや生 長不良などの影響が顕著となっており、こうした漁場環境下でも養殖可能な新たな品種の 開発等が必要となっています。 また、県内の多くののり養殖漁家では、種網の確保を県外業者に依存していますが、最 近では、県外業者が供給を停止する動きが見られるなど、種網の安定確保が困難な状況 となっています。このため、県内における採苗や育苗の技術指導を行うとともに、採苗等の 実施体制を確立していく必要があります。 さらに、のり養殖経営の協業化については、一部の地区においては積極的に取り入れて 経営が好転した事例がみられているものの、全体的には進展していないことから、引き続き

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促進し、収益性の高い経営を目指していく必要があります。 魚類養殖については、とらふぐ養殖におけるホルマリン問題等、消費者から養殖生産物 の安心・安全への対応が求められています。 (4) 内水面振興対策 近年、アユ等の内水面漁業の生産量は減少の一途をたどっており、この生物的な要因と しては、河川におけるアユ冷水病12の発生や、ブラックバス等の外来魚・カワウ・ナルトビ エイ13による食害が考えられることから、これら疾病対策・食害防止対策を実施する必要が あります。 また、疾病対策については、コイヘルペスウィルス病14など、特定疾病の発生・まん延 防止対策を徹底することが必要です。 3 県産水産物の販路拡大と水産加工業の振興 長引く景気の低迷や魚介類の消費動向の変化、また流通経路の変化等により、水産物の 生産者価格の低下は一過性のものではなく、もはや構造的なものとなり、これが漁家の経営 や漁業者の就業に対して大きなマイナス要因として働いています。 このため、万全の衛生管理体制に努めながら付加価値向上対策や販路拡大対策を進め る必要がありますが、今後における県産水産物の販売戦略としては、農畜産物や商工産品と も一体感を持たせ、さらには本県の持つ自然や歴史などの資源も活用して「山口県という地 域のブランド力」を高めていく戦略を推進し、県内外にアピールしていくことが重要です。 また、水揚量が減少する中で、新たに発足した山口県漁協の販売事業計画とも整合した 産地市場の統廃合による拠点市場の整備や、合併のメリットを活かし、電子商取引を活用し た効率的な販売先の開拓、農畜産物と連携した地産・地消の取組みの推進など、多様な販 売戦略を展開していく必要があります。 水産加工業では、原料や衛生管理、添加物等の一定の基準を 満たした製品を「山口海物語」として認定し、積極的にこれらの商品 のPR と販売を促進していくことが必要です。 また、漁協自らによる水産加工として、最近の消費形態の変化に対応した高品質総菜15 12 【アユ冷水病】 低水温時にアユ等が被害を受ける細菌性疾病。症状は、体表の穴あきや尾鰭の欠落が特徴だが、症状が 見られないこともある。また、大量斃死を招くこともある。 13 【ナルトビエイ】 熱帯から亜熱帯の沿岸域に生息するエイの一種であるが、近年、本州沿岸でも多く見られるようになった (本県では平成14 年 8 月に確認)。専らアサリやタイラギ、シジミ等の二枚貝を捕食することから、大きな漁業 被害を生じている。 14 【コイヘルペスウィルス病】 コイヘルペスウィルスというウィルスにより感染するコイ特有の病気。発病水温は 13∼28℃で、感染したコイ は、行動緩慢・摂餌不良になるが、目立った外部症状はない。死亡率が95%と非常に高いのが特徴。 15 【高品質総菜】 低価格を実現するために海外で製造した輸入加工品等との差別化を図るため、「旬」を意識し、鮮魚として 提供しても何ら問題ないような高品質の県産魚を原料に使用した総菜。

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開発、販売を行い、県民に新たな商品を提供するとともに、漁家の所得向上や地域内雇用の 確保に繋がる取組みも求められています。 年 計 ねり製品 冷凍食品 塩干品 煮干品 冷凍水産物 その他 63 106,505 48,885 12,049 5,172 4,461 21,328 14,610 1 110,725 50,447 11,853 5,665 4,031 24,336 14,393 2 114,442 50,278 12,163 6,619 4,669 24,785 15,928 3 109,145 47,052 8,901 6,984 4,617 25,192 16,399 4 107,587 47,885 5,734 9,663 3,993 25,821 14,491 5 114,008 49,674 5,741 4,834 4,923 27,768 21,068 6 107,970 47,394 4,492 5,443 4,221 25,764 20,656 7 126,278 55,383 7,762 4,915 3,596 22,561 32,061 8 115,233 55,426 6,239 4,272 3,127 23,802 22,367 9 126,414 55,398 7,056 5,313 4,672 21,653 32,322 10 120,887 63,455 6,861 5,008 2,578 20,934 22,051 11 106,673 56,271 5,009 4,639 2,030 20,991 17,733 12 107,193 57,103 5,837 4,636 1,809 20,974 16,834 13 106,609 58,791 5,173 4,658 1,562 20,098 16,327 14 106,250 62,231 8,032 4,403 1,327 14,991 15,266 15 98,629 61,408 7,381 3,755 1,808 10,576 13,701 (単位;トン) ● 水産加工品生産量の推移 (農林水産統計年報) 水産加工品生産量の推移 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 63 2 4 6 8 10 12 14 年 トン ねり製品 冷凍食品 塩干品 煮干品 冷凍水産物 その他 4 漁場環境と生態系の保全・修復 沿岸域の漁場環境は、各種の開発行為により自然海岸の多くが消失したり、干潟や藻場 が減少したりするなどにより、その本来の機能が低下しています。 また、かつては富栄養化が大きな課題となっていた瀬戸内海では、溶存酸素量は増加傾 向を示し、貧酸素を観測する頻度が大幅に減少したほか、栄養塩類、特に溶存無機態窒素 の減少傾向が顕著となるなど、水質の改善が進んできています。 その一方で、アサリやアカエビ等小型えび類の生産は極端に減少し、のり養殖業では色落 ちが顕在化するなど、海域の生産力の低下が問題視されるようになってきました。 このため、今後においては、水産業にとって適切な栄養塩レベル等について、各種の調

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査結果を踏まえつつ、対策の具体化に向けてさらに詳しく議論していくとともに、漁場環境の 改善・修復に積極的に取り組んでいく必要があります。 また、漁場環境の改善・修復のための事業の実施に当たっては、石炭灰や鉄鋼スラグ等 のリサイクル素材の活用を検討するなど、循環型社会16の構築を意識して進める必要があり ます。 河川流域では、近年その工法が見直されつつあるものの、河川工事やダム建設の影響等 により、水産生物の生息に適した漁場が減少するとともに、河口や海面漁場の底質悪化等も 生じています。 このため、継続的な調査・監視により水産生物の生息に適した環境を把握するとともに、関 係部局と連携しながら、多自然型川づくりを進めていく必要があります。 さらに、森・川・海をつなぐ環境改善に向け、農林水産業者が連携し、植樹活動やアマモ 場造成など、地域住民(流域住民、沿岸住民)と協働した活動の展開が求められています。 ● 周防灘海域における窒素、リン等の推移 (水産研究センター資料) (いずれも山口県周防灘海域における12ヶ月移動平均値    表層   底層) DIN ( µM ) DIP ( µ M ) C OD ( p pm ) 0 2 4 6 S49 S51 S53 S55 S57 S59 S61 S63 H2 H4 H6 H8 H10 H12 H14 H16 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 S49 S51 S53 S55 S57 S59 S61 S63 H2 H4 H6 H8 H10 H12 H14 H16 0.0 0.5 1.0 1.5 S49 S51 S53 S55 S57 S59 S61 S63 H2 H4 H6 H8 H10 H12 H14 H16 DIN(溶存無機態窒素)の推移 DIP(溶存無機態リン)の推移 COD(化学的酸素要求量)の推移 16 【循環型社会】 生産・流通・消費・廃棄の全段階を通じて、不用物の発生抑制や製品の再利用・再資源化などを進めること により天然資源の消費を抑制し、環境への負荷をできる限り低減する社会。

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5 水産基盤整備と漁村地域の活性化 漁業就業者や生産量が減少する中で、漁村地域全体の活力が低下し、地域経済にも大き な影響を与えています。 このため、平成17 年 8 月に誕生した山口県漁協という組織体制に即した広域的かつ計画 的な水産基盤整備を実施することで、漁港をはじめ周辺の生活環境の改善を図り、また、漁 場や流通加工等を含めた水産関連施設等を充実させるなど、漁村地域全体の活性化に繋 がる総合的な地域振興を図る必要があります。 さらに、本県の漁村地域は、美しい自然や景観、文化・伝統、多種多様の新鮮な魚介類な どに恵まれており、ブルー・ツーリズム17を推進するための潜在力は極めて大きいものがありま すが、その取組みは漁協支店や漁家単位でのスポット的なものに止まっている状況にありま す。 このため、平成17 年 3 月に策定した「やまぐちブルー・ツーリズム推進計画」により、今後は、 グリーン・ツーリズム(都市と農村の交流)とも連携し、地域を挙げて取り組むことができるよう なブルー・ツーリズムの基盤づくりや、体験・滞在プログラムづくりを進め、漁村地域の活性 化を図る必要があります。 「やまぐちブルー・ツーリズム推進計画」(平成17 年 3 月策定) ブルー・ツーリズム産業 の基盤づくりを支援 魅力的な体験・滞在プ ログラムの開発を支援 地域ぐるみのブルー・ツ ーリズムを推進 ブルー・ツーリズムの需 要の拡大 都市と漁村の協働によ るブルー・ツーリズムの 推進を支援 開業から経営までをサポート 法規制等の適切な運用の確保 ブルー・ツーリズム産業の基盤づくりへの 支援(補助・融資制度の活用) 地域資源を活用した体験・滞在プログラム の開発を支援 他産業とも連携した地域で取り組むブル ー・ツーリズムを推進 ブルー・ツーリズムの啓発と効果的な情報 発信の展開 ブルー・ツーリズムの定着を促すゆとり休 暇の啓発 実践者等によるネットワークづくりを支援 ブルー・ツーリズムの推進に必要な人材 育成 ブ ル ー・ ツ ー リ ズ ム に よ る 賑 わ い の ある浜づ く り ブルー・ツーリズムの推進に係る施策体系図 17 【ブルー・ツーリズム】 漁業体験や遊漁、鮮魚朝市、海洋レジャーなどの目的で漁村を訪れ、その自然や文化、人々との交流を深 めながら、心と体をリフレッシュさせる余暇活動。「都市と漁村の交流」と同義で用いている。

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6 漁協経営の安定化 組合員の減少と高齢化、漁業生産量・生産額の減少等による漁協の経済事業の低迷、水 産業協同組合法の改正等による漁協信用事業の規制強化への対応や、信漁連再建という 大きな課題を抱える一方で、資源管理や栽培漁業等の推進における漁協の役割は一層重 要になっており、このまま放置すれば大部分の漁協が組合員の負託に対応し得ない状況に 陥ることが懸念されました。 このため、昭和 63 年に「山口県漁協合併推進協議会」が設立され、行政、漁協系統団体 が一体となって合併推進に取り組んできた結果、平成17 年 8 月 1 日に、県下の沿海 58 漁 協のうち39 漁協が合併し、山口県漁協が発足しました。その後も合併参加漁協数は増加し、 平成18 年 3 月末現在で、今後合併を予定している漁協を含め、45 漁協が合併に参加して います。 今後は、山口県漁協を核として、山口県水産業・漁村の再構築を図るとともに、漁協経営 の安定化を促進し、組合員に対するサービスの充実強化等に努めていく必要があります。 7 試験研究と普及指導体制の拡充 儲かる漁業の振興を図っていく上で、水産海洋研究や水産資源研究、また水産増養殖研 究など、水産業に関する試験研究はその重要性が一層増してきています。 特に、専門化、多様化する漁業関係者のニーズのみならず、広く県民ニーズに応えていく ことも必要となっており、平成 14 年度から本格的にスタートした外部評価の結果を的確に反 映していくことが求められています。 また、研究テーマに応じて、県の他研究機関をはじめ、(社)山口県栽培漁業公社、国、大 学、独立行政法人、民間の研究機関等との共同研究により、効率的に研究を推進していく 必要があります。 さらに、近隣県の水産研究機関等との広域連携を考慮した取組みも必要です。 普及指導については、水産研究センターとの緊密な連携を可能とする業務体制の確立と、 漁業者ニーズに即応できる指導体制の強化が不可欠となっています。 水産研究センター(外海研究部) 水産研究センター(内海研究部)

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● 水産施策に対するアンケート調査結果 ・ 平成16 年 12 月に県内漁協を対象に実施しました。 ・ 調査は、7 施策体系の中項目ごとに、「よくやっている」、「まあまあ」、「努力が足りない」 の三段階で評価するものです。 ・ さらに、「特に力を入れてほしい」項目を選択する調査を加えました。 ・ アンケート配布数は308、回収数が 196 で、回答率は 63.6%でした。 ・ 以下に、「よくやっている」、「努力が足りない」、「特に力を入れてほしい」施策の上位 10 位までを抜粋しました。 よくやっている施策(上位10施策) 14 14 14 15 15 16 17 19 19 21 27 27 0 5 10 15 20 25 30 新規就業者の確保と総合支援 本県の特性に応じた養殖業の振興 水産加工業の振興 意欲ある若い漁業者の確保・育成 普及指導体制の整備 県水産物の消費拡大 水産金融の充実 女性の地位の明確化と向上 漁業経営基盤の強化 資源管理実践体制の整備 栽培漁業の拡充 食品衛生管理体制の整備 回答数(人) 努力が足りない施策(上位10施策) 75 76 77 80 81 83 83 86 86 91 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 10 良好な水域環境の確保 河川流域の環境保全 多様な流通形態への対応 拠点市場の整備 水産加工業の振興 高齢者対策の推進 藻場・干潟の保全・修復 漁業の秩序維持と漁業調整 県水産物の消費拡大 漁村地域の活性化 回答数(人) 0 特に力を入れてほしい施策(上位10施策) 47 48 48 49 50 51 51 52 55 70 0 10 20 30 40 50 60 70 8 漁港漁村・海岸の整備 多様な流通形態への対応 漁業経営基盤の強化 新規就業者の確保と総合支援 拠点市場の整備 藻場・干潟の保全・修復 良好な水域環境の確保 意欲ある若い漁業者の確保・育成 県水産物の消費拡大 漁業の秩序維持と漁業調整 回答数(人) 0

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∼ 漁家の所得向上 ∼

山口県は古くから水産業が発達し、「水産県」として、国民(県民)への水産物の安定的な供 給に大きな役割を果たしてきました。 近年の国内漁業生産量の減少や輸入水産物の増大に伴い、平成 15 年の我が国の食用魚 介類自給率は 57%と 10 年前(平成 5 年:64%)と比較すると低下しており、今後も資源状況の 悪化等によりこの傾向が続くものと予測されています。 このような状況の中で、世界的な人口の増加に伴い、食料安全保障の観点から、水産業は 一段と重要性が増しており、食料産業として一層の振興を図っていくことが強く求められていま す。 本県水産業が将来にわたって、国民(県民)に安定的に水産物を供給していくためには、そ の担い手である漁業就業者が意欲を持って打ち込める、働きがいのある産業への転換が不可 欠です。 水産山口チャレンジ計画では、漁家の所得向上を第一の目標として掲げ、これを達成するた め、7 つのチャレンジを着実に推進するとともに、とりわけ漁業就業者、水産資源及び水産流通 加工の各対策に視点を当て、これらを総合的に実施することにより「儲かる漁業の振興」に重点 的に取り組みます。 年 国内生産量 輸入量 魚介類の 自給率 60 7,268 1,880 86.4% 61 7,305 2,155 85.8% 62 7,183 2,362 82.0% 63 7,124 2,587 80.1% 1 6,961 2,494 78.2% 2 6,311 2,714 71.7% 3 5,857 2,938 70.8% 4 5,779 3,098 69.9% 5 5,417 3,309 64.0% 6 5,232 3,776 59.0% 7 5,255 3,872 58.9% 8 5,061 3,922 57.7% 9 5,009 3,881 59.8% 10 4,622 3,667 56.8% 11 4,612 4,061 55.5% 12 4,515 4,249 52.9% 13 4,688 4,409 53.2% 14 4,545 4,419 52.9% 15 4,804 3,922 57.3% (農林水産省 食料需給表から出典) 15年の数値は、概算値 (単位;千トン) 用魚介類の自給率等 ●食 魚介類の自給率等の推移 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 60 2 7 12 年 国 内 生 産 量 と 輸 入 量 国内生産量 輸入量 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 6 11 16 千トン 魚 介 類 の 自 給 率 魚介類の自給率 注)

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漁 家 の 所 得 向 上

沿岸漁家の漁業所得は、生産量の減少や魚価の低迷、さらには漁業就業者の高齢化に伴 う生産性の低下等により、近年減少傾向にあります。 今後、沿岸漁家全般の所得水準の向上を図るとともに、意欲のある経営体の育成により、 漁家所得 1,000 万円を超える漁家の増加をめざします。 【沿岸漁家の所得と目標値】 基準年 中間実績 目標値 区 分 指 標 項 目 H10 H15 H22 日本海 2,935 3,169 3,600 漁業所得(千円) 瀬戸内海 2,567 1,792 2,600 日本海 5,620 5,729 6,600 漁家の総平均 (農林水産統計年報) 漁家所得(千円) 瀬戸内海 4,031 5,316 5,500 意欲のある経営体 (海鳴りネットワーク) 漁家所得 1,000 万円以上の漁家 の割合※ − 9.0% 18.0% ※年間水揚金額100 万円以上の漁家を母数とする。 ※この計画では、H10 の県民一世帯当たりの所得(8,146 千円)が 2.5%の経済成長率で伸びていくと見込 み、H22 には 10,960 千円となることから、儲かる漁家の基準を 1,000 万円と設定しています。 【海域別の漁業所得、漁家所得の実績(●)と目標(■)】 日本海側の漁業所得 0 500 1,000 500 000 2,500 000 500 000 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22年 千円 4, 3, 3, 2, 1, 瀬戸内海側の漁業所得 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22年 千円 日本海側の漁家所得 0 ,000 ,000 ,000 ,000 ,000 6,000 ,000 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22年 千円 7 5 4 3 2 1 瀬戸内海側の漁家所得 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22年 千円

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水産山口チャレンジ計画では、『漁業関係者が、地域的な連携の下で協調して、水産資 源の持続的利用を図りながら、新たな収入源対策や経費節減対策、生産者価格の安定向 上対策等に、意欲的に取り組むことにより、漁家の所得向上が図られる形態の漁業』を「儲か る漁業」として定義していました。 今回の改定に当たっては、こうした漁業者レベルでの取組みのみならず、山口県漁協の 設立による新たな体制下での流通対策等、スケールメリットを活かした取組みや、燃油価格 の高騰等に対応した省エネ、省人・省力型漁業への転換等、国や大学等により開発された 新技術も取り入れた取組みを含めました。 【具体例】 ◆ 新たな収入源対策 単一漁業から複数漁業の組み合わせによる経営改善 資源管理や鮮度保持に対応した漁具・漁法の開発 都市と漁村の交流の拡大による所得機会の向上 ◆ 経費節減対策 水揚のプール制による集団操業化 漁船・漁具・漁法の改良による低コスト化 省エネ、省人・省力型漁業への転換 ◆ 生産者価格の安定 農畜産物・商工産品とも一体感を持たせた「地域ブランド」戦略 向上対策 山口県漁協を核とした県内流通ルートの構築 高品質総菜の開発・販売 「儲かる漁業」とは 【参 考】現状における高額所得漁家のモデル事例 ① 瀬戸内海地区 総トン数 (トン) 従事者数 (人) 主な漁業種類 水揚額 (千円) 経費総額 (千円) 漁業所得 (千円) 備 考 − 6 のり養殖 32,000 14,000 18,000 共同経営 − 3 のり養殖 20,000 14,000 6,000 単独経営 4 1 一本釣、遊漁案内 8,500 3,500 5,000 4 1 小型底びき網(2種、3種) 9,000 5,000 4,000 4 1 小型底びき網(2種)、潜水器 6,000 2,000 4,000 ② 日本海地区 総トン数 (トン) 従事者数 (人) 主な漁業種類 水揚額 (千円) 経費総額 (千円) 漁業所得 (千円) 備 考 4(2隻) 3 いかつり、青物づり、素潜り 25,000 14,000 11,000 共同経営 12 1 あまだいはえなわ 22,000 12,000 10,000 6 2 いかつり、青物づり 17,000 7,000 10,000 11 2 棒受網 15,000 10,000 5,000 11 3 棒受網、すくい網 24,500 20,000 4,500 (漁協抽出調査結果をもとに作成) 注)「従事者数」は、経営者(及び共同経営者)と被雇用従事者を合算した人数。

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チャレンジ目標

『漁家の所得向上』

これまでの意欲のある漁業者グルー プを主体とした先駆的な取組みに対し、 引き続き集中的に支援 【支援・指導の拡充強化】 例 ) 新 た な 収 入 源 対 策 、 経 費 削 減 対 策、生産者価格安定向上対策 漁家(漁業者グループ)等の取組み ①漁業就業者対策 ②水産資源対策 ③水産流通加工対策 水産業界・行政の連携した取組み 山口県漁協を核とした新 体制下における水産振興 策の推進 【漁業の構造改革】 ∼収益性の高い漁業への転換∼ 漁業関係者の自主的な対応 ①経営の多角化・協業化 ②省エネ型操業の推進 高度な技術・統一的な推進を 要する事項への対応 ①産学公による省エネ、省人・省力型 漁業への新技術導入 ②資源管理型漁具・漁法の開発 ③水産物付加価値向上対策 等

県民の視点に立った水産業の振興

水産業・漁村の多面的機能の発揮

チャレンジ 1 次代を担う就業者の確保・育成と漁業経営の安定 チャレンジ 2 水産資源の管理・回復と持続的利用の推進 チャレンジ 3 安心・安全で豊かな県産水産物の安定供給 チャレンジ 4 魚が育つ漁場環境と生態系の保全・修復 チャレンジ 5 水産基盤の総合的な整備と漁村地域の活性化 チャレンジ 6 漁協経営の安定化 チャレンジ 7 水産技術の研究と普及体制の強化 7 つのチャレンジ 加速化・重点化 重点プロジェクト

『儲かる漁業の振興』

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∼ 水産県山口 再活性化へのチャレンジ ∼

魅力ある水産業の振興をめざして

チャレンジ 1 次代を担う就業者の確保・育成と漁業経営の安定 今後の山口県漁業の中核となりうる意欲のある就業者の確保・育成を進めるとともに、新規就業者に対 する融資や漁業許可等総合的な支援を行います。 また、省エネ、省人・省力型漁業への転換に向けた新技術の導入など、収益性の高い漁業の実現を 目指す「漁業構造改革」を推進します。 チャレンジ 2 水産資源の管理・回復と持続的利用の推進 科学的に水産資源を把握・評価し、現行の許可制度の見直しや遊漁調整を図りつつ、効果的な資源 回復措置を講ずるとともに、つくり育てる漁業の拡充強化を図り、水産資源の持続的な利用を推進しま す。 チャレンジ 3 安心・安全で豊かな県産水産物の安定供給 拠点市場の整備を進めるとともに、水産物の衛生管理対策を推進し、安心・安全な県産水産物の安定 的な供給を確保します。また、電子商取引の導入や農畜産物における地産・地消の取組みとの連携など 多様な販売戦略を展開します。 水産加工業においては、「山口海物語」製品等の販路拡大と、漁協による高品質総菜の開発、供給を 推進します。 チャレンジ 4 魚が育つ漁場環境と生態系の保全・修復 沿岸域の藻場・干潟や河川流域の環境保全・修復を関係部局とも連携して推進するとともに、海浜の 環境美化をはじめ「森・川・海をつなぐ環境保全運動」による植林活動等への支援や PR 等により、県民 全体の漁場環境保全意識の高揚を図り、地域住民との協働による環境保全活動を推進します。 チャレンジ 5 水産基盤の総合的な整備と漁村地域の活性化 新たな手法を導入した沖合漁場の整備開発等を進めるとともに、広域化した市町村や漁協系統再編 後の新体制下における漁港・漁場・漁村の総合的な整備を計画的に推進します。 また、グリーン・ツーリズムと連携してブルー・ツーリズムを推進し、都市と漁村の交流による漁村地域の 活性化を図ります。 チャレンジ 6 漁協経営の安定化 認定漁協である山口県漁協を核として、本県水産業・漁村の再構築を進めるとともに、漁協経営の安 定化を図り、組合員に対するサービスの充実強化を促進します。 チャレンジ 7 水産技術の研究と普及体制の強化 専門化、高度化する漁業関係者のニーズのみならず、広く県民ニーズに的確に応えていくため、試験 研究、普及指導体制を拡充強化するとともに、各種の施策を推進する上で、業界・行政・研究機関さらに は他産業の関連団体等が連携して取り組む体制を確立します。

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《施策体系》 次代を担う就業者の確保・ 育成と漁業経営の安定 水産資源の管理・回復と 持続的利用の推進 安心・安全で豊かな県産 水産物の安定供給 魚が育つ漁場環境と 生態系の保全・修復 水産基盤の総合的な整備 と漁村地域の活性化 漁協経営の安定化 水産技術の研究と普及 体制の強化 意欲のある漁業者の確保・育成 新規就業者の確保と総合的支援 操業コストの縮減と多角的経営の促進 女性の経営参画の促進 高齢者対策の推進 水産金融の充実 資源回復計画の推進 漁業秩序の維持と漁業調整 栽培漁業の効果的な展開 養殖業の振興 内水面振興対策の推進 拠点市場の整備と機能強化 多様な販売戦略の展開 水産加工業の振興 水産物の衛生管理・鮮度保持対策の推進 藻場・干潟の保全・修復 良好な水域環境の確保 漁港・漁場・漁村整備長期計画の策定 漁場の整備開発 漁港・漁村・海岸の整備 漁村地域の活性化 (ブルー・ツーリズムの推進) 山口県漁協の経営安定と機能強化 水産研究体制の強化 普及指導体制の強化 国際技術交流の推進 水 産 県 山 口 の 再 活 性 化 を 目 指 し て

(31)

1 次代を担う就業者の確保・育成と漁業経営の安定 (1) 意欲のある漁業者の確保・育成 ① 意欲のある漁業者への支援 意欲のある漁業者が、優良な漁業経営により他産業に見合う所得を上げ、資源管理・ 回復や漁場環境保全等にも積極的に取り組む中核的担い手となるよう、若い漁業者を 主体とするグループを育成するとともに、先駆的な取組みに対しては企画段階から効果 の検証に至るまで集中的な支援・指導を行います。 また、こうした活動を先進事例として、他地域への展開を促進します。 さらに、グループの育成・支援から一歩踏み込んで、資源回復や省エネ等の経営改 善、多角的経営等に積極的に取り組む意欲のある漁業者個人が行う経営基盤強化のた めの取組みに対して、集中的な支援を行うシステムについても検討を進めます。 ② 漁協青壮年部活動の支援と意見の反映 若い担い手の組織である漁協青壮年部については、これまでの各地区での活動に加 え、漁協合併による広域化を生かした新たな活動の展開など活性化を図るとともに、漁 協内部で若い漁業者の意見が反映されるような体制の整備を促進します。 ③ 漁業士の育成指導 青年漁業士、指導漁業士18が若い担い手の 中核的存在として、また漁業者全体の規範とし て、その役割が発揮できるよう組織化を進め、新 規就業者の指導や漁労技術の伝承等、積極的 な活動を支援します。 (2) 新規就業者の確保と総合的支援 ① 漁業の魅力発信 漁業は気象、海象等の自然条件の影響を受ける産業であり、収入が不安定であること から最近の若い年齢層から敬遠されがちですが、定年がなく、生涯を通じて現役で働け る産業です。自然志向が高まる中で、都市での就労とは違ったこうしたメリットや漁業の 魅力を、多様な媒体により、広く県内外に発信していきます。 ② 学校教育との連携 学校教育と連携して、ビデオや冊子の配布による漁業情報の提供や漁業体験等の実 施を通じて、子供の頃から漁村や漁業に対する理解の促進を図ります。 また、水産高校との連携によりインターンシップ制19を継続実施して生徒の漁業への 18 【青年漁業士、指導漁業士】 (13 ページの脚注を参照) 19 【インターンシップ制】 学生が在学中に、教育の一環として企業等で一定の期間行う職業体験およびその機会を与える仕組み。 本県では、水産高校生が行う職業体験の選択肢の一つに漁業操業体験を取り入れている。

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関心を高め、新規就業へと繋げます。 ③ 新規漁業就業者の受け入れ相談窓口の拡充 新規就業希望者を対象に、漁業制度や融資制度等の情報提供と、新規就業に至るま での各種研修制度や支援制度等の相談窓口を拡充し、若年層から高齢層まで幅広い 新規漁業就業者の地域への定着を図ります。 ④ 新規就業者への支援 短期研修から長期研修を経て独立に至るまで、 各段階に応じた支援を行います。 また、漁業者の子弟を含め、新規就業者の独 立時には、初期投資の負担軽減を図るとともに 漁業許可等にも配慮し、漁業経営の安定と自立 を促進します。 さらに、新規就業者間の交流や漁業士による 研修などにより、相互の研鑽を図り、アフターフォロー体制の充実を図ります。 一方、「団塊の世代」の大量退職に伴い、漁村への U・J・I ターンが加速することが予 想されることから、漁業への就業も視野に入れ、情報提供や研修対象の拡大により受け 皿づくりを進めます。 (3) 操業コストの縮減と多角的経営の促進 ① 省エネ・省人・省力型漁業への転換、資源管理型漁具・漁法の導入 燃油価格の高騰に対応した省エネ型漁業への転換や、漁具の網目の拡大による小 型魚介類の保護と選別作業の簡略化、近代的漁労機器の装備による省人・省力化等、 操業コストの縮減と収益性の高い漁業への転換に向けた技術開発と導入を進めます。 ② 漁場の有効利用と資源の適正管理に基づく経営の多角化 漁業所得の向上と資源の適正な管理を考えるとき、季節的な資源生態や好不漁に応 じていくつかの漁業種類を組み合わせて、旬の魚をバランスよく漁獲することが求められ ます。 このため、地域における各種漁業の円滑な操業調整を図り、経営の多角化を促進しま す。 ③ 遊漁案内業等の導入 漁業操業との調整のもとに、遊漁やダイビングスポット案内業等との兼業による漁家所 得の向上を図ります。 ④ 漁業構造改革への展開 中長期的な視点から、水揚量重視の経営から収益や労働環境を重視する経営へと体 質を転換する「漁業構造改革」を推進します。 (4) 女性の経営参画の促進 ① 働きがいのある環境づくり 水産物の選別・出荷や作業日誌、営漁簿の記帳による経営管理等、漁家経営の担い 手としての能力向上を図ります。

参照

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