① 資源動向の的確な把握と評価
本県周辺海域における主要な水産資源について、水産研究センター等による定期調 査の拡充や水産情報システム「海鳴りネットワーク」データの活用等により的確に資源動 向を把握するとともに、資源の評価を行い、速やかに公表します。
20 【家族経営協定】 (3ページの脚注を参照)
21 【漁村生活改善士】 (3ページの脚注を参照)
② 資源回復計画の実施
本県周辺海域の主要資源のうち、特に資源状 況が悪化している魚種について、国や関係県と 連携して策定した資源回復計画22に基づき、漁 獲努力量の削減や資源の添加(種苗放流等)な どの計画の着実な実施を指導します。なお、計 画実施の効果を資源動向評価により検証し、計
画見直しに反映させるなどして資源の効率的な回復に繋げます。
③ 資源回復計画実施体制の整備
ア 資源回復計画の実施に当たっては、関係漁業者、県、研究機関等で構成する漁業 者協議会や行政・研究連絡会議などの場で漁獲努力量の削減や小型魚介類の保護 等、計画の履行状況や資源の管理効果について検討し、計画にフィードバックする体 制を整備します。
イ 資源回復計画の実施に当たっては、これによって生じる漁業経営への影響に配慮 し、必要な措置を講じます。
ウ 策定された資源回復計画の内容は、遊漁者 を含め広く一般県民に周知するとともに、実施 方法については、制限内容に応じて、漁業者 の自主的管理によるもの、漁業権行使規則や 許可漁業の制限条件に組み入れるもの等、効 果的な手法を組み合わせ、計画の実効性を 確保します。
(2)
漁業秩序の維持と漁業調整① 操業規制等の見直し
現行の操業規制は、関係する漁業種類間の操業調整の結果定められたものが多く、
水産資源に対する管理手法としての明確な根拠のあるものは必ずしも多いわけではあり ません。
一方、漁業者が減少、高齢化する中で操業形態や漁業勢力も変化し、また、漁船や 推進機関、漁具や各種漁労機器の発達によりいずれの漁業も漁獲効率は向上していま す。
さらに、瀬戸内海における小型機船底びき網漁業の漁具・漁法の制限等、資源回復 に繋がる規制のあり方や、発光ダイオードを使用した集魚灯等新技術の導入による水産 資源への影響など、新たに考慮すべき要因も生じてきています。
こうしたことから、漁業関係者の意向を踏まえつつ、水産資源の動向及び漁業調整等 の総合的な観点から、現状に即した各種操業規制の見直しを検討します。
22 【資源回復計画】 (5ページの脚注を参照)
② 漁業秩序の維持強化
実効ある資源管理・回復を進めるため、取締 関係機関との連携を密にし、取締体制の整備強 化を図るとともに、漁業者の自主的な違反監視 体制を強化します。
③ 遊漁等海洋性レクリエーションとの海面利 用調整
平成
14
年度に改定した山口県海面利用調整指針に基づき、県内優良漁場を中心に 当該海域に依存する漁業者と遊漁者、行政機関等で構成する「地区漁場利用調整協議 会(地区海面利用調整協議会)」の設置や、漁業調整委員会指示の発令等により漁業と 遊漁との調整を図ります。また、遊漁のみならず、ダイビングや水上バイク等の海洋性レクリエーションと漁業との 海面利用に係る調整を進めます。
(3)
栽培漁業の効果的な展開① 資源回復計画と連携した栽培漁業の推進
栽培漁業の効果を一層高めるため、放流後の種苗はもとより、天然魚を含めた漁業管 理を推進し、資源回復計画の実施との連携を図ります。
② 漁業者ニーズに応じた新規魚種の積極的な 技術開発
イシガレイ・キジハタ・アカアマダイなど、漁業 者ニーズが高く、資源の回復が求められている 魚種の種苗生産・中間育成・放流技術開発を積 極的に進めます。
③ 種苗生産の効率化と技術の向上による安価 で健全な種苗の確保
(社)山口県栽培漁業公社(以下「公社」という。)の生産体制を見直すとともに、独立 行政法人水産総合研究センターや他県栽培漁業公社等との連携を図り、生産効率の向 上を目指します。
特に、種苗の質的な向上を図り、生産技術の安定化や平易化、効率化を通じて経費 の低減に努めます。
④ 拠点的な中間育成施設の整備拡充
分散している中間育成施設を集約し、市町村合併や
1
県1
漁協体制に対応した中間 育成拠点の整備拡充を図るとともに、専従職員等を配置した効率的な推進体制の確立 に努めます。なお、拠点化が遅れている地域等については、当分の間、地域のニーズに応じて公 社で放流サイズまで育成した大型種苗を配布する等の検討を行います。
(4)
養殖業の振興① のり養殖業の振興
ア 低栄養塩条件への対応
近年の栄養塩濃度低下等による色落ち対策は、適地適作を基本として、のり網の 配列を改善して潮通しをよくするなど、漁場行使方法の見直しによる漁場の有効活用 を促進します。
また、栄養塩濃度が低い環境下でも養殖可能な品種の開発を進めます。
イ 種網の安定確保
現在は県外業者に依存している種網の確保について、県内における人工採苗技 術や育苗技術の指導・普及を通じ、県内での種網自給体制の整備を進めます。
ウ 経営の合理化
協業化による作業の効率化と経費節減を図り、経営の合理化を促進します。
また、燃油価格の高騰に対応した省エネ型機器の導入を進め、収益性を重視した 経営への転換を促進します。
さらに、中国産イワノリ「壇紫菜」を活用した新製品開発等を関係機関・業界と連携 して進めます。
② 魚類・貝類養殖業の振興 ア 安心・安全な生産物の供給
養殖過程における衛生管理に努めるとともに、水産用医薬品の使用基準等を遵守 し、安心・安全な生産物の供給体制を確立します。
また、これらの生産履歴を消費者の要求に応じて開示できるようトレーサビリティ23の 導入を促進します。
イ 養殖漁場の環境保全
持続的養殖生産確保法24に基づく漁場改善計画を作成し、漁場に応じた適正収容 量を遵守するとともに、適正量の投餌を行うことで環境への負荷を最小限に止め、漁 場環境の保全を促進します。
また、養殖漁場の環境を保全・維持することで、病害の発生を予防し、健康な養殖 魚の生産を促進します。
ウ 新規養殖対象種の開発
漁船漁業との兼業が可能な貝類養殖等、
新規養殖対象種の開発とその養殖技術の確 立・普及を図ります。
エ 疾病対策
ワクチンの使用等により疾病の発生を防ぐと ともに、疾病の発生時には一斉に投薬する等、
的確な対応を図ります。
23 【トレーサビリティ】 (8ページの脚注を参照)
24 【持続的養殖生産確保法】
養殖漁場の環境悪化防止と、養殖魚の特定の伝染性疾病のまん延を防止するための法律。
(5)
内水面振興対策の推進① 内水面漁業・養殖業の振興 ア 疾病対策の充実
大型種苗の放流や検査体制の整備を進めてきたアユ冷水病25対策については、ワ クチンの実用化や耐病性アユの選抜等、先進技術の情報を入手しつつ防除対策の 拡充を図ります。
また、コイヘルペスウィルス病26など、持続的養殖生産確保法に基づく特定疾病に ついては、その発生の未然防止に努めるとともに、万が一発生した場合においては、
まん延防止と被害の拡大防止などの措置を執りま す。
イ 外来魚の駆除とカワウ対策
ブラックバスやブルーギルなどの外来魚による食 害対策については、漁業者・遊漁者による捕獲の ほか、ブラックバスの産卵生態を利用した人工産卵 床27による駆除など、効率的な駆除手法の開発と 実施に対する支援を継続します。
また、カワウ対策については、漁業関係者や学識者で構成する「山口県カワウ対策 協議会」において有効な防除手法を検討し、具体策を講じます。
一方、近年、河口域の重要資源であるシジミがナルトビエイ28の食害を受けているこ とから、ナルトビエイの駆除、防除の取組みを進めます。
ウ 放流用種苗の安定確保
モクズガニ種苗を安定的に供給するため、採卵用の良質な親ガニを安定確保する ための養成技術について研究を進めます。
② 内水面漁場環境の保全
ア 関係部局と連携した河川環境保全の取組み
河川工事等の実施においては、水生生物の生息を考慮した工法の採用や、瀬・淵 の復元等により、河川が本来有している生物の良好な生育環境に配慮し、併せて美し い自然環境を保全・創出することを目指した「多自然型川づくり」を進めます。
また、魚道の整備・改修を進めるとともに、河川の正常な流量の確保や、要件を満 たすダムにおいてはフラッシュ放流29による河川環境の保全を図ります。
用地造成等に当たっては、工事等に伴う濁水流入防止策の徹底を図ります。
イ 森・川・海を通じた豊かな流域づくり
25 【アユ冷水病】 (15ページの脚注を参照)
26 【コイヘルペスウィルス病】 (15ページの脚注を参照)
27 【人工産卵床】
ブラックバスは、小石があるような場所を好んで産卵し、オスが卵や稚魚を守るという習性があることから、人 工的にそのような場所(産卵床)を作り、産み付けられた卵の段階で駆除する方法。
28 【ナルトビエイ】 (15ページの脚注を参照)
29 【フラッシュ放流】
活用容量(洪水調節に備えた空き容量の一部に貯めた水)の水を数時間放流し、河床を洗浄することで、
健全な河川環境を保全するための方法(フラッシュ(flush)とは、排砂・掃流のこと)。