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八条院高倉について(二)-- 詠歌資料集成 --

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Academic year: 2021

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(1)

八条院高倉について

(二)

高木佳子

はじめに

八条院高倉について、その作品および八条院高倉に関する資料を収集整

理してきている中で、拙稿

注1

で勅



集に収められた作品を提示した。

本稿では、

既に掲げた資

注1

のほかに、

『定家八代抄』

、『歌枕名寄』

等、

新たに確認できた八条院高倉の歌を加えて、あらためて高倉の名がみえて

いる文献や作品を提示していきたい。

八条院高倉に関して確認し得た三十の資料から勅



集を除いた一覧

(便 宜上通し番号を付した。 )

を、次に提示する

注2

1 『春日社歌合 元久元年』 (三首) 一三 四三 七三 2 『内裏百番歌合 建保四年』 (十首) 一 三 三三 五三 七三 九三  一一三 一三三 一五三 一七 三 一九三 3 『冬題歌合 建保五年』 (七首) 八 二四 四〇 五六 七二  八八 一〇四 4 『名所月歌合 貞永元年』 (三首) 四 二六 四八 5 『新時代不同歌合』 (三首) 一六 一七 一八 6 『女房三十六人歌合』 (三首) 八八 八九 九〇 7 『新三十六人  正元二年』 (十首) 二 〇 一 二〇二 二〇三 二〇 四 二〇五 二〇六 二〇七  二〇八 二〇九 二一〇 8 『定家八代抄』 (六首) 五 六 四五一 九九九 一〇三 八 一三七一 一五七三 9 『万代和歌集』 (十四首) 一 〇 五 一九四 一二六七 一 五三一 一七一五 一八一四  二三八九 二五九九 二八〇〇  二九〇四 二九八六 三一三七  三一八八 三六七三  10 『雲葉和歌集』 (一首) 七八六  11 『夫木和歌抄』 (七首) 二 一 八 一 三五九九 六六〇八  学苑 日本文学紀要 第八六七号 二一~三一(二〇一三 一)



詠歌資料集成



(2)

九九二一 一四七九九 一六二 六五 一六三〇〇  12 『定家十体』 (一首) 一三八  13 『歌枕名寄』 (二首) 一五四六 六九六七  14 『二八要抄』 (一首) 『続群書類従 巻第三百七十四 和歌部九』第十四輯上 所収  15 『釣舟』 (一首) 『続群書類従 巻第四百六十六 和歌部百一』第拾七輯上 所収  16 『新百人一首』 (一首) 『続群書類従 巻第三百七十五 和歌部十』第十四輯上 所収

次に八条院高倉に関わる作品を掲げる。

1 『春日社歌合 元久元年』 (三首) 春日社歌合 題 落葉 暁月 松風 講師 読師 衆議判 作者 左方 御製 勝二持一 前大僧正慈円 勝二持一 前大納言藤原忠良 持一負二 左近大将藤原忠経 勝二持一 権中納言源通光 勝一負二 右衛門督源通具 勝持負 女房高倉 勝持負 俊成 女持 三 女房越前 持一負二 左近中将藤原定家 勝持負 散位藤原保季 勝三 左近少将藤原雅経 勝二負一 左近少将藤原忠定 勝二負一 散位藤原業清 持三 宮内権少輔藤原行能 負三 右方 摂政左大臣 持一負二 沙弥釈阿 持一負二 女房丹後 勝二持一 参議左近中将藤原良平 持一負二 左衛門督藤原公経 勝二負一 大蔵 藤原有家 勝持負 女房大納言 勝持負 女房宮内  持三 女房下野 勝二持一 前上総介藤原家隆 勝持負 散位藤原家衡 負三 左兵衛佐源具親 勝一負二 出雲守祝部成茂 勝一負二 右馬助源家良 持三 右衛門少尉藤原秀能 勝三 落葉 七 番 左 女房高倉 一三 木枯にちる紅葉ばの枝ごとにむかしをみするたつた山かな 右 勝 女房大納言 一四 はつ時雨しのぶの山の紅葉ばを嵐ふけとはぞそめずや有りけん 左歌させる事なきにや、右歌下句優にきこゆ、為勝 暁月 七番 左 勝 高倉 四三 たちわたる峰の朝霧まてしばしまだ有明のあかつきの空

(3)

右 大納言 四四 うきものといひしばかりの月影はわが身ひとつの有明の空 右歌下句めづらしからず、以左為勝 松風 七番 左 持 高倉 七三 跡たれしもとのこころは神さびてなほみどりなるまつのかぜかな 右 大納言 七四 かくてのみ世にもあらしの風ならばわれ何事をまつにふくかぜ 可為持 2 『内裏百番歌合 建保四年』 (十首) 歌合 建保四年閏六月九日 入新勅 歌共詞書建保六年内裏歌合云云 題 春二首 夏二首 秋二首 冬二首 恋二首 作者 左 御製 正二位行権大納言源朝臣通光 正二位行権大納言藤原朝臣公経 従二位行権中納言兼左衛門督藤原朝臣忠信 参議正三位行左近衛権中将兼近江権守藤原朝臣実氏 従三位藤原朝臣家衡 従三位行宮内 藤原朝臣家隆 八条院高倉 兵衛内侍 蔵人正六位上行左衛門権少尉藤原朝臣康光 右 右大臣正二位兼行左近衛大将藤原朝臣 参議従三位行治部 兼伊与権守藤原朝臣定家 二条院讃岐 女房越前 参議従三位行左近衛権中将兼備前権守藤原朝臣経通 前丹波守正四位下藤原朝臣知家 正四位下行右兵衛督兼伊与介藤原朝臣雅経 従四位上行丹後守藤原朝臣範宗 散位正五位下藤原朝臣行能 僧正行意 講師 判者 治部 藤原朝臣定家 或本衆議判後日付詞畢 春 七番 左 持 高倉 一三 うぐひすの古巣に誰かことづてし梅さくやどを分きてとへとは 右 右大臣 一四 青柳の春のけしきもたをやめのかざしの玉の露ぞみだるる 左右ともに優なり、各申無可難申事之由為持 十七番 左 高 倉 三三 これならで何を此よにしのばまし花にかすめる春の曙

(4)

右 勝 右大臣 三四 春きても雪とは花の降りしきぬあすよりさきにとふ人もなし 左歌上句ことに思ひいれず聞こゆとて以右為勝 夏 二十七番 左 高 倉 五三 ゆふまぐれ花たち花のにほはずは行く郭公なのりしもせじ 右 勝 右大臣 五四 待つ宵のやまひとこえよほととぎすうす雲まがふむら雨のそら 左歌無殊事、右可勝之由各申 三十七番 左 持 高倉 七三 たちよれば夏のよそなる柳かげこれよりにしや秋の通路 右 右大臣 七四 玉ぼこや露の道しば打ちなびきくもればすずむ夕立のそら 左右同体之由両方共申す 秋 四十七番 左 勝 高倉 九三 わが庵はをぐらの山の近ければうき世をしかとなかぬ日ぞなき 右 右大臣 九四 おのが秋に行 あひのわせをかりがねの鳴くなるなへ に露ぞ置きそふ 浮世をしかとなかぬ日ぞなき、 すこし述懐にはよりて侍れど、 かの山もとの秋のあはれ、 人 によりてふかかるべきよし満座申 して以左為勝 五十七番 左 勝 高倉 一一三 いざさらばこんよをかねてたのめおかむかぎりもしらぬ月の光に 右 右大臣 一一四 しろたへのしもの衣を打ちわたすをちかた人や袖にしるらむ 露の衣をうちわたす、 をかしく聞え侍るを、 限もしらぬ月のひ かり、心ふかしとて勝と定め申す 冬 六十七番 左 勝 高倉 一三三 たび衣すそのの尾花霜がれてやどりし秋の露をこふらし 右 右大臣 一三四 木がらしも時雨もしらじいほえさす神なみ山のときは木のかげ 左はことにえむに、 右は心たくみなるよし、 各申し侍りしを、 左なほ優に聞ゆとて勝ち侍りにき 七十七番 左 持 高倉 一五三 此ごろは雪をしるしとみわの山なみしろたへの杉のむら立 右 右大臣 一五四 しほぐもりしほ風あらき岩の上に妻木をりたち誰あかすらん 左右共無指難又無差事之由為持 恋 八十七番 左 高 倉 一七三 かたしきの涙にぬるるさよ衣よしさは朽ちね人にしられで 右 勝 右大臣 一七四 めのまへに風もふきあへずうつりゆく心の花も色はみえけり 左歌殊に思ひ入りたるさまにも侍らぬにや、 右歌えんにをかし きさまに聞え侍るよし各申して為勝 九十七番 左 高 倉

(5)

一九三 たづねこしふしみの里のなのみして草の枕に夢もむすばず 右 勝 右大臣 一九四 浪まよりそむきにみゆるおくのしま我をやなはの恨みはてつる 左歌思ひいれぬさまなる由各申す、 そむきにみゆるおくのしま の心たくみにをかしく聞え侍るよし申して為勝 3 『冬題歌合 建保五年』 (七首) 歌合 建保五年十一月四日 題 冬山霜 冬野霰 冬関月 冬河風 冬海雪 冬夕旅 冬夜恋 歌人 左方 御製 権大納言兼右近衛大将源朝臣道通光 参議左近衛権中将藤原朝臣実氏 参議治部 藤原朝臣定家 左近衛権中将藤原朝臣忠定 右兵衛督藤原朝臣雅経 中務権大輔藤原信実 兵衛内侍 右方 宮内 藤原朝臣家隆 俊成 女 丹後守藤原朝臣範宗 八条院高倉 前丹波守藤原朝臣知家 右大臣兼左近衛大将藤原朝臣 左衛門少尉藤原康光 権中納言兼左衛門督藤原朝臣忠信 講師 知家朝臣 判者 衆議 治部 定家 後日書詞畢 冬山霜 四番 左 勝 治部 定家  七 冬の日もよそにくれゆく山陰にあさしもけたぬ松の下柴 右高 倉 八 神無月たつたの山のやまひめもそめあへぬまに霜や置くらん 左歌、 おほかたの歌のさま卑下微少のすがたに侍る上に、 竜田 山の山姫、 いとよろしくきこえ侍るよし、 頻に申出で侍りしを、 宮内 藤原朝臣殊加詞、左可勝之由定申 冬野霰 十二番 左 勝 治部 定家  二三 あまつ空たがぬく玉にをだえして霰みだるる野べのささ原 右高 倉 二四 あだし野のをばなおしなみ吹く風に霰もなびく空の浮雲 右いとをかしくみえ侍るを、左可勝よし各定められ侍りき 冬関月 二十番 左 持 治部 定家  三九 わすれめやみがく氷はとぢそへていづる関戸の明くる月かげ 右高 倉 四〇 ふりつもる雪をさながらてらす月今夜なりけり白川の関 右の、 こよひなりけり白川の関、 いひしりてことによろしく侍 るうへに、 左の上句、 題のほかの氷、 詞くだけてききにくくや 侍らん、 又いづくの関ともきこえず侍るよししきりに申し侍り しかど、 当座の勝負をさだめられ侍らず、 定めて後輩の不審を

(6)

のこし侍らんか 冬河風 廿八番 左 持 治部 定家  五五 山風のいはせ吹きこすおとは川いそぐみなわにくるるとしなみ 右高 倉 五六 山川にかけし紅葉はあともなしこほりにかふる風のしがらみ 右又、 廿五番同心に侍れば、 いと宜しくきこえ侍るよし申し侍 りしを、 氷にかふる、 すこし耳にたつと申す人侍りて、 持にさ だめられ侍りき 冬海雪 卅六番 左 治 部 定家  七一 すみのえの浪にうつろふ松の雪ふらずはなにを花とかもみん 右 勝 高倉 七二 さとのあまのさだめぬやども埋もれぬよするなぎさの雪の白浪 すみの江の松、 遠海の浪などを、 花とみずともそのうらみ侍ら じ、 よするなぎさの雪の白浪、 いとをかしくきこえ侍れば、 お のおのかちと定め申す 冬夕旅 四十四番 左 勝 治部 定家  八七 ひきむすぶ草葉もしもの古郷はくるる日ごとにとほざかりつつ 右高 倉 八八 柴のいほの山風つらき冬の日をくれずはよそにみて過ぎなまし 右歌、心すがたいとをかしくみえ侍るを、依天気、以左為勝 冬夜恋 五十二番 左 治 部 定家  一〇三 ゆきもよのかねのおとこそつれなけれとはるばかりの契やはまつ 右 勝 高倉 一〇四 ながき夜に衣かたしきふしわびぬまどろむ程の涙ならねば かねのおとこそつれなけれ、 むげにただことばにこそ侍るめれ、 ゆきもよのききよからずや侍らん、 右、 詞甚美麗、 而首尾又不 停滞、尤勝とすべきのよしさだめ申し侍りき 4 『名所月歌合 貞永元年』 (三首) 歌合 貞永元年八月十五夜 題 名所月 三首 作者 左方 女房 権中納言定家 先宮内 家隆 行能朝臣 信実朝臣 頼氏朝臣 有長朝臣 親季朝臣 隆祐 知宗 三位侍従母 右方 民部 典侍 高倉 実持朝臣 資季朝臣 家長朝臣 中宮少将

(7)

下野 兼康 光俊朝臣 源家清 右衛門督為家 判者 権中納言定家 名所 月 二番 左 持 権中納言定家 三 神風やみもすそ川のきよければそらゆく月もひかりそへけり 右高 倉 四 見てもまたたれにかたらんあきの夜のうら風さゆるすみのえの月 みもすそ 川 の 月 のひかりそへける 由 、 歌 合 にかたんためによめる うたがひ侍りしを、 川 のなをよまんごとに勝つべきにも侍らず、 あきのさまのめづらしからず侍らん、 住の江の月をめでて、 た れにかたらんと侍るも、景気思ひやられ侍れば、可為持之由申 十三番 左 勝 権中納言定家 二五 代 をてらすみかさのやまのあきの 月 たかきむかしのあともおよばじ 右高 倉 二六 みづの 面 にてる 月 なみのいくかへりこよひにあひぬ 宇 治 のはしひめ 左歌、 偏に勝負の事を思ひてよめるによりて、 てる月浪になれ て年ふる宇治の橋姫、 心苦敷聞え侍りき、 但、 今より後今夜の 勝負よみならひて、詠社名仮神威事、殊可停止之由仰せらる 二十四番 左 権中納言定家 四七 月 かげはあきの 夜 ながらすみのえのいく 千 とせにかあひおひのまつ 右 勝 高倉 四八 さとはあれてふしみのあきを 来 てとへば 月 こそやどれあさぢふの 露 住江月、又雖募神社之威、伏見秋、殊入幽玄之境、仍為勝 5 『新時代不同歌合』 (三首) 新時代不同歌合上 作者 左自万葉集至金葉集 右自詞花集至続古今集 左右 大納言旅人 大納言忠良 天智天皇 光明峰寺摂政左大臣 道家公 坂上郎女 八条院高倉 惟高親王 惟明親王 (中略) 三番 左 坂上郎女 一三 こもりくの初瀬の山はいろづきぬ時雨の雨はふりにけらしも 一四 しがのあまのつりにとぼせるいさり 火 のほのかに 人 をみるよしもがな 一五 しほみてば 入 りぬる 磯 のくさなれや 見 らくすくなくこふらくのおほき 右 八条院高倉 一六 神南備のみむろの梢いかならんなべての山も時雨ふるころ 一七 くもれかしなむるからにかなしきは月に覚ゆる人の面かげ 一八 いかがふく身に入む色のかはるかなたのむる暮の松風のこゑ 6 『女房三十六人歌合』 (三首) 女三十六人  八条院高倉 八八 くもれかしながむるからにかなしきは月におぼゆる人のおもかげ

(8)

八九 わが宿はをぐらの山路遠ければうき世をしかとなかぬ日ぞなき 九〇 里 のあまのさだめぬやどもうづもれぬよするなぎさのゆきのしら 浪 7 『新三十六人  正元二年』 (十首) 新続歌仙 八條院高倉 二〇一 一こゑはおもひぞあへぬほととぎすたそかれ時の雲のまよひに 二〇二 すみはてぬいづく長月名のみしてみじかかりけるあきのほどかな 二〇三 いかがふく身にしむ色のかはるかなたのむるくれの松風のこゑ 二〇四 くもれかしながむるからに恋しきは月におぼゆる人のおもかげ 二〇五 ふ事を又はいつともなき物をあはれもしらぬとりのこゑかな 二〇六 わすれじのただ一こゑをかた見にてゆくもとまるもぬるる袖かな 二〇七 浮世をば出づる日ごとにいとへどもいつかは月のいるかたをみむ 二〇八 わが庵は小倉の山のちかければうき世をしかとなかぬ日ぞなき 二〇九 なべてよをかりのやどりと思はずはすみうかるべき草の庵かな 二一〇 とにかくに身のうき事のしげければ一よだにやはそでもぬれける 8 『定家八代抄』 (六首) 巻第一 春歌上 題しらず 八条院高倉 五六 ひ 同 と 注3 りのみながめて散りぬ梅の花しるばかりなる人はとひこず 巻第五 秋歌下 題しらず 八条院高倉 四五一 神 新 なびのみむろの梢いかならむなべての山も紅葉するころ 巻第十二 恋歌二 題不知 八条院高倉 九九九 つ 同 れもなき人の心はうつせみのむなしき恋に身をやかへてん 巻第十三 恋歌三 恋の歌とてよみ侍りける 八条院高倉 一〇三八 い 新 かが吹く身にしむ色のかはるかなたのむるくれの松風のこゑ 巻第十五 恋歌五 題不知 八条院高倉 一三七一 く 同 もれかしながむるからに悲しきは月におぼゆる人のおもかげ 巻第十六 雑歌上 題不知 八条院高倉 一五七三 う 同 き 世 をばいづる 日 ごとにいとへどもいつかは 月 のいるかたをみん 9 『万代和歌集』 (十四首) 巻第一 春歌上 建保内裏百番歌合のうた 八条院高倉 一〇五 うぐひすのふるすにたれかことづてしむめさくやどをわきてとへとは 卅首歌よみ侍りけるに 八条院高倉 一九四 ゆきて 見 むいまぞはるさめふるさとにはなのひもとくころもきにけり 巻第六 冬歌 題不知 八条院高倉 一二六七 をぐらやまふもとのにしきおりかへてこずゑにあきのすぎにけるかな 題不知 八条院高倉 一五三一 つもりゆくとしのおもはむことわりもはかなくくるるけふぞしらるる 巻第八 釈教歌

(9)

廿八品歌よみ侍りける中に、化城喩品を 八条院高倉 一七一五 いそぎたてここはかりねぞくさまくらなほおくふかしみよしののさと 巻第九 恋歌一 卅首歌よみ侍りけるに 八条院高倉 一八一四 いはぬまはひとこそしらねみちのくのしのぶのさとにしめはゆひてき 巻第十二 恋歌四 題しらず 八条院高倉 二三八九 とへかしなこのよばかりのなさけとてうきはむかしのむくひなりとも 巻第十三 恋歌五 恋のこころを 八条院高倉 二五九九 身 をかへてまたもこのよにめぐりあはばわれつらからむことさへぞうき 巻第十四 雑歌一 卅首歌よみ侍りけるに 八条院高倉 二八〇〇 世 をすつるひとには 見 せじやまざくらいろにうつろふこころつきけり 建保内裏百番歌合に 八条院高倉 二九〇四 いざさらばこむよをかねてちぎりおかむかぎりもしらぬ 月 のひかりに 巻第十五 雑歌二 題しらず 八条院高倉 二九八六 おもひいでてこひしかるべきみやこかはなにゆゑやどるそでの 月 ぞも 巻第十六 雑歌三 題しらず 八条院高倉 三一三七 ひにそへておもひぞしげるおほあらきのうきたのもりやわが 身 なるらむ 題しらず 八条院高倉 三一八八 なべて 世 をかりのやどりとおもはずはすみうかるべきくさのいほかな 巻第十九 雑歌六 題しらず 八条院高倉 三六七三 とにかくに 身 のうきことのしげければひとかたにやはそでもぬれける  10 『雲葉和歌集』 (一首) 巻第八 冬歌 建保四年内裏十首歌合侍りしに 八条院高倉 七八六 たびごろもすそののをばな霜がれてやどりし秋のつゆをこふらし  11 『夫木和歌抄』 (七首) 巻第六 春部六 藤花 百首歌 八条院高倉 二一八一 ふだらくのきしの藤波打ちよせてはや立ちこなんむらさきの雲 巻第九 夏部三  文集百首歌に、窓風雨天 声 八条院高倉 三五九九 小倉山岑の梢に啼く もこゑしほれぬる夕立の空 巻第十六 冬部一 寒草 建保四年内裏十首歌合 八条院高倉 六六〇八 旅ごろもすそ野のをばな霜がれてやどりし秋の露をこふらし 巻第二十二 雑部四 あだちの原、安達、陸奥 百首歌 八条院高倉

(10)

九九二一 冬 がれのあだちのはらになくきぎすたのむくさばもかくれなのよや 巻第卅一 雑部十三 しのぶのさと、陸奥 三十首歌よみ侍りけるに、 万代 八条院高倉 一四七九九 いはぬまは 人 こそしらねみちのくのしのぶのさとにしめはゆひてき 巻第卅四 雑部十六 釈教 誓仏智恵水、永洗煩悩塵 八条院高倉 一六二六五 のこらめや心のたまに水すまばよよにつもれるちりふかくとも 百首歌、釈教 八条院高倉 一六三〇〇 ふく風や七重宝樹にかよふらんこころすずしきこの夕かな  12 『定家十体』 (一首) 十体 事可然様 廿五 高倉 一三八 うき 身 をばいづる 日 ごとにいとへどもいつかは 月 のいるかたを 見 む  13 『歌枕名寄』 (二首) 歌枕名寄巻第五 幾 (ママ) 内部五 山城国五 浮田杜 二品法親王家五十首 八条院高倉 一五四六 日 にそへておもひぞしげる 大 あらきのうき 田 のもり や我が身 なるらん 歌枕名寄巻第廿七 東山部六 陸奥上 里 万代 八条院高倉 六九六七 いはぬまは人こそしらねみちのくのしのぶの里にしめはゆひてき  14 『二八要抄』 (一首) 二八要抄 自古今至 続後拾遺 恋歌三 八條院高倉 ことを又はまつ夜もなき物を哀もしらぬ鳥の声哉  15 『釣舟』 (一首) いそきたて爰はかりねの草枕猶奥ふかしみよしのゝ山 此歌は化城喩品の大意をよめる也。 此品の心は大通智勝佛の昔の因縁をあ かして。 一乗の心をうるほし。 化城寶處とて本覚の都有。 か しこへいたれ と。 二乗のたくひをすゝめし品也。 此 こゝろをこゝはかりねの草枕とよみ て。 化城の心をあらはし。 猶 奥ふかしみよしのゝ山とよみて。 本 覚のみや こをあらはす也。 い そきたてといふ五文字は。 釋 如来のとくしてもとの 都にかへれとすゝめたまふ事をかくよめる也。是は八條院高倉のうた也。  16 『新百人一首』 (一首) 八條院高倉 うき世をは出る日毎にいとへともいつかは月の入かたをみん

以上、現在までに確認し得た八条院高倉の歌を提示してきた。八条院高

倉の作品は、八代集最後の『新古今和歌集』以後『新続古今和歌集』まで

(11)

の、

『風雅和歌集』

を除く二十一代集に



入され、

また定家により

『定家

八代抄』に採られるなど、その作品が高く評価されていたことが窺われる。

今後、八条院高倉について、歌人としての活動ならびにその歌風について、

さらに研究を進めていく。

注 1 高木佳子『学苑』八百五十五号 (平成二十四年一月号) 参照。 注 2 1 ~  13 の引用は 『新編国歌大観』 に よる。  14 ~  16 の引用は 『続群書類従』により、適宜、新字体に改めた。 注 3 新編国歌大観『定家八代抄』の解説において、次のように記されている。 (略) 集付校異並合点一覧表 一 集付は歌右肩に底本通り記したが、校訂を必要とするもののみ、本 項において各歌番号の箇所においてこれを示した。 (略) 久曾神昇博 士編 「藤原定家筆 拾遺和歌集」 ( 古書院) においては歌頭に 「万 少 古今」 等 の注記がなされている。 (略) 五八番以下の八条 院高倉の歌の右肩に付された 「 同」 は、 各歌の前の歌によって 「 新」 であり、 「新古今和歌集」を示している。 (たかぎ かこ 文化創造学科)

参照

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