ソフトウェア工学の最前線 〜ソフトウェアが社会のすべてを定義する時代〜:[未来に向かって]9.アジリティを追求したソフトウェア開発
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(2) 〜 ア ェ 線 る時代 ウ 前 義す ト 最 を定 フ の すべて ソ 学 の 工 社会. 特. 集. が ア ェ ウ ト 後者における最も著名な フ ソ 〜. リリース. 理論は PDCA/PDSAサイ クルであり,それを実直に 用いた歴史上初(1976 年. 発表)のアジャイル開発手. 要求提案. 開発. 機能要求 機能要求. 顧客. 非機能要求 非機能要求. 成果物 非機能要求 提示. 未開発要求. 選択. 要求. トヨタ生産方式・リーン思. 要求. 要求. 要求. 考がある.これは顧客へ. 開発する要求. 要求. 要求. 要求. 要求. イテレーション. リリース. レビュー,リリース. 未開発要求リストへ 要求. 要求. 要求. 成果物. 要求. 開発者. 開発スコープ決定. の価値を生み出す各工程. 未開発要求. 追加要求. タスク実行. イテレーション計画. で成功をおさめた考え方に. 未開発要求. 未開発要求. リリース計画 イテレーション イテレーション. え方をベースとして製造業. 成果物. 選択. :要求. る. さらに Deming の考. 成果物. 開発者. 要求立案(リリース計画). 法として Evo が知られてい. における無駄や遅れを取. 成果物. 開発. 要求. 要求追加・変更 顧客. 要求. フィードバック. 要求. 図 -1 アジャイル開発プロセスの共通モデル(文献 1)より). り除き,価値を最大化する 流れ(バリューストリーム)を作り管理する考え方であり,. を現代風に見直して「モダンアジャイル」と称し,集団. Scrum やリーンソフトウェア開発の源流となっている.. 心理学などを参考に以下の 4 点に価値を置くと再定義. 論文における名称としての「アジャイルソフトウェアプ. している. ロセス」の初出は,富士通(株)における開発とプロセス. •人々を尊重し輝かせること. 進化をまとめた青山教授の ICSE'98 におけるものである.. • 心理的安全性を前提とすること. 「すること」や手法の制度化(たとえば Scrum マス. • 素早く実験し学習すること. ターの認定制度)によりアジャイル開発は今日の隆盛. • 価値を継続的に届けること. を見ているが,結果として皮肉にもマインドが見失われ. アジャイル開発のコミュニティにおいて, 「アジャイル」. がちである.これらの源流に触れることでソフトウェア. そのものを絶えず見直しその時々の状況に適応させよう. 開発におけるアジリティを再考することの意義は大きい.. という動きは自然なものであり,それこそがアジャイル開. ☆3. .. 発が今後も生き残り,主流であり続ける要因といえる.. アジャイル再定義 アジャイル開発と研究. アジャイル宣言から時間が長く経過しツールやプロセ スが成熟する中で,他分野の理論を応用してアジャイ. Research for Agility としては,前述のような理論. ル開発の価値を再検証・再定義する動きが活発である.. 的枠組みによる再考に加えて,アジリティを発揮する. たとえば意思決定の状況を整理した Cynefin フレーム. うえで有用であると経験的に知られるプラクティスに対. 2). してデータにより実証するものや ,モデル化やシミュ. 反復的・漸増的な開発とフィードバックは「複雑」な場. レーションさらには大規模サーベイを通じて個々のプラ. 合に適すると捉えられ,逆に言うと「複合的」 「単純」. クティスおよびアジャイル開発全体の成功要因および. な状況下ではその必然性がない.しかし「複雑」な状. 留意点を明らかにするものがある.たとえば筆者らは,. 況についても,プロセスそのものを反復的に改善し続. シミュレーションを通じて,要求の不確実性や関係の. ける仕組みが未確立であるため,アジャイル開発も含. 複雑さに応じて最適なイテレーション期間が異なるこ. 2). 700. 3). ワーク (図 -2)に基づくと,アジャイル開発における. 1). め実は十分ではないという指摘がある .. とを明らかとした .さらに,源流であるパターンやパ. また Joshua Kerievsky は 2016 年にアジャイル宣言. ☆3. 情報処理 Vol.58 No.8 Aug. 2017. http://modernagile.org/.
(3) 9 アジリティを追求したソフトウェア開発. 6). 複雑 ・因果関係を事前に は把握不可 ・プラクティスの 気づき. エンタープライズ」 の 2 つがある.前者は,アジャイ. 複合的 ・因果関係は明快ながら 解決策が複数 ・グッドプラクティス の選択適用. ルソフトウェア開発のプラクティスの適用を組織レベル へと拡大する流れであり,Scaled Agile Framework や Disciplined Agile Delivery 等のフレームワークが 用いられつつある.一方の後者は製造業を中心として,. 無秩序. リーン思考やリーンマネジメントを起点に市場などの環 混沌 ・因果関係なし ・新プラクティスの 発見. 単純 ・因果関係が明快 ・ベストプラクティス の適用. 境変化に適応的な組織レベルのアジリティを探求する. 1990 年代から歴史ある流れである.両者は異なるコ ミュニティで研究実 践され今日に至るが,変化への 組 織的な適応といった点は当然ながら共通である.. 図 -2 Cynefin フレームワーク(文献 2)より). リーンという共通の源流を持つこともあり,今後のコ ターンランゲージに回帰して,プラクティスや関連する取 ☆4. ミュニティや領域を超えた議論と発展を期待したい.. .たとえば. 加えて,組織におけるプロセス改善の指針をまとめた. 筆者らは,アジャイル開発における品質保証の取り組. CMMI についても,その共通プラクティスをアジャイル. みをパターン群として記述し「アジャイル品質」として. 開発へ適用することに繋がる問いかけ. り組みをパターン化する動きも活発である. 4). ☆5. が認知され,. 提唱している .. また CMMI Institute から『A Guide to Scrum and. Agility for Research については,ソフトウェア工学に. CMMI』が 2017 年に発行されるなど,特に海外では. 限らず研究活動全般が本来的に探索的であることを考え. 融合が当たり前となり,日本でも進展が期待される.. ると,それへのアジャイル開発の適用は自然なものとい える.事実,大学や企業においてソフトウェアやハード ウェア等の研究活動へ多く適用され,コミュニケーション の効率化や,無数のアプローチの高速な適用・検証の ) . 繰り返しの効果が報告されている(たとえば文献 5). アジリティの行方 本稿ではソフトウェア開発におけるアジリティを,マイ ンドや手法,研究などのさまざまな角度から取り上げた. ソフトウェア開発においてアジャイル開発が定着し評価 され再考されてきた今日,さらなる進展の方向性として 適用対象や規模の拡大が挙げられる.. 参考文献 1) Shiohama,R., Wa shizak i, H. et al. : Investigating the Relationship between Project Constraints and Appropriate Iteration Length in Agile Development through Simulations, I nte r n a t io n a l Jo u r n a l of C o mpute r Appl ic a t io n s i n Technology, 54(4) (2016). 2) O'Connor, R. V. and Lepmets, M. : Exploring the Use of the Cynefin Framework to Inform Software Development Approach Decisions, International Conference on Software and System Process (ICSSP) (2015). 3) Dybå, T. and Dingsøyr, T. : Empirical Studies of Agile Software Development : A Systematic Review, Information and Software Technology, 50(9 -10) (2008). 4) Yoder, J., Wirfs-Brock, R. and Washizaki, H. : QA to AQ Part Five : Being Agile at Quality, 6th Asian Conference on Pattern Languages of Programs (AsianPLoP) (2016). 5) Huang, P. M. : Agile Hardware and Software System Engineering for Innovation, IEEE Aerospace Conference (2012). 6 ) R a g i n - Sk o re c k a , K . : A g i le Ente r p r i s e : A Hu m a n Factors Perspective, Human Factors and Ergonomics in Manufacturing & Service Industries, 26(1) (2016). (2017 年 6 月 8 日受付). 具体的には,前述のようにソフトウェアに限らず, ハードウェアを含むシステムの研究開発に対してアジャ イル開発を適用するアジャイル・システムズエンジニアリ ング. 5). が 1 つの流れであり,今後の進展とシステムズ. エンジニアリング特有の課題識別や拡張が期待される. もう 1 つは,組織全体とアジャイルの関係の進展で あり, 「エンタープライズ・アジャイル」と「アジャイル・ ☆4. http://www.scrumplop.org/. ☆5. http://xpjug.com/xp2016-session-c6-2/. 鷲崎弘宜(正会員) [email protected] 博士(情報科学) .早稲田大学教授・グローバルソフトウェアエンジ ニアリング研究所所長,国立情報学研究所 客員教授, (株)システム 情報 取締役(監査等委員) .ISO/IEC/JTC1 SC7/WG20 Convenor, IEEE Computer Society Japan Chapter Vice-Chair, IEEE Computer Society Membership at Large for the Professional and Educational Activities Board, SEMAT Japan Chapter Chair, IPSJ SamurAI Coding Director, CSEE&T'17 PC Co-Chair, APSEC'18 PC Co-Chair, Int. J. of Agile and Extreme Software Development Editor-in-Chief. 本会シニア会員.. 情報処理 Vol.58 No.8 Aug. 2017. 701.
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