波長可変レーザの
400 GHz (3.2 nm) 幅高速高安定波長切替
木村 凌河†a)(学生員) 久保木 猛†(正員) 加藤 和利†(正員:シニア会員)
Fast and Stable 400-GHz (3.2-nm) Wavelength-Switching with Wavelength Tunable Laser Ryoga KIMURA†a),Student Member, Takeshi KUBOKI†,Member,
and Kazutoshi KATO†,Senior Member
あらまし 波長可変分布活性DFB レーザの波長切替幅 400 GHz (3.2 nm) での高速高安定化を目指してレーザ モデルの高精度化を行った.モデルをもとに設計したフィードフォワード/フィードバック併用制御により 100 ns 以下の波長切替時間と切替後の波長安定性を実現した. キーワード 波長可変レーザ,高速波長切替,フィードフォワード制御,フィードバック制御
1.
ま え が き
波長多重ネットワークにおいて波長パスの切替を柔 軟に行う手段の一つとして波長可変光源の重要性が 増している.また,光バーストや光パケットを用いた 将来のネットワークでは波長可変光源における波長切 替が高速かつ高安定であることが求められており,そ の候補として波長可変分布活性(TDA: Tunable Dis-tributed Amplification) DFBレーザが開発されてい る[1].TDA-DFBレーザは共振器方向に沿って交互 に配置された活性層と波長制御層から成り,波長制御 層への電流注入量変化(キャリアプラズマ効果の変化) で屈折率を変化させ波長を数ナノ秒で高速に切り替え ることが可能である.しかしキャリアプラズマ効果の 他にこれよりも時定数の大きい電流注入量変化による 発熱量変化により実際の波長安定化に要する時間は数 ミリ秒となっている.以前我々は波長制御層への注入 電流量変化が5 mAと比較的小さく,かつ電流値に対 して波長がほぼ線形に変化する200 GHz (1.6 nm)幅 の波長切において,高速波長制御技術を開発し波長切 替後100 nsでの波長安定化を達成した[2].しかしレー ザ自身のもつ性能を十分引き出すためには,波長変化 の非線形性が顕著となる更に大きな注入電流変化にお いても短時間で波長安定化できることが課題である. 本論文ではTDA-DFBレーザの許容最大電流に近 い約15 mAの電流変化(400 GHz (3.2 nm)幅の波長 切替)においても短時間の波長安定化が可能かを検討 †九州大学大学院システム情報科学研究院,福岡市Graduate School of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University, 744 Motooka, Nishi-ku, Fukuoka-shi, 819–0395 Japan a) E-mail: [email protected] した.実験の結果,考案した高精度のレーザモデルを 用いることで,発熱量が大きくかつ波長変化の非線形 性が顕著な波長切替においても100 ns以下の波長切替 時間及び長期的安定性が実現できることが確認された.
2.
高速波長安定化システム
2. 1 短時間領域における波長安定化制御 波長制御層への注入電流変化によるキャリアプラズ マ効果の変化で波長切替を行い,切替後の発熱量変 化による温度変化で起こる波長の微小変化を,電流 (キャリアプラズマ効果)追加で補償して一定値に波 長安定化させる手法が我々の開発した短時間領域にお ける安定化制御法である.最適な電流変化波形すなわ ちフィードフォワード(FF)関数C(z)を求めるため, 図1に示す制御モデルを用いている.前回5 mAの電 流変化に対して,ある入力電圧波形u(z)に対するレー ザの出力波長変化y(z)の測定値をもとに波長切替伝 達関数P(z)を求めたが,今回のように電流変化量が 大きく波長変化の非線形性が顕著な場合は,求められ た伝達関数が誤差を多く含み結果的にC(z)の精度が 低くなって1µsたっても波長安定化が行えなかった. そこで測定結果y(z)をキャリアプラズマ効果による 図 1 制御モデルのブロック図Fig. 1 Block diagram of control model.
レ タ ー
図 2 波長安定化システムの構成図
Fig. 2 Configuration of wavelength stabilization system.
応答と熱効果による応答に分解しそれぞれの伝達関数 P1(z)とP2(z)を独立に求めた後これらの和をP(z)と することで誤差低減を試みた.その後,導出したP(z) をもとにC(z)を設計し,その出力波形u(z)の電流を レーザに注入するFF制御を行った. 2. 2 長時間領域における波長安定制御 長時間領域における波長変化は,数百マイクロ秒 の時定数をもつ温度緩和による波長変化(熱効果)が 支配的である.そこで我々は,熱効果の時定数よりも 小さい周期でレーザの波長を検出し,フィードバック (FB)制御を行うことで波長の長期間安定化を目指し た.図2に波長安定化システムの構成図を示す.レー ザモジュールに内蔵された波長ロッカ内の波長モニタ 用フォトダイオード(WL-PD)の出力電流値(ファブ リペロー(FP)エタロン透過強度に比例)をパワーモ ニタ用フォトダイオード(PW-PD)の出力電流値で規 格化することにより波長を測定している.この際,各 PDの出力値を電流電圧変換回路(IV回路)と対数変換 回路(LOG回路)を用いて対数に変換したのちField Programmable Gate Array (FPGA)に入力してその
差を求めることで規格化(除算)の高速化を図った.こ の高速規格化方式により,熱効果による波長変化の時 定数に対して十分小さい制御周期(約400 ns)でレー ザに対してFB制御を行うことを可能にした.
3.
波長切替実験
図 3 に 195.0 THz か ら 195.4 THz へ 400 GHz (3.2 nm)幅の波長切替を行ったときの実験結果を示 す.ここで,波長切替時間は目標波長からの乖離が ±1 GHz以内に収まる時間と定義した.なお図中縦軸 は収束値からの周波数偏差fを,横軸は波長を切り替 えた瞬間からの時間tを表している.また,本実験で 図 3 波長切替応答実験結果Fig. 3 Result of wavelength switching response.
はt = 0で波長を切り替えてFF制御を行い,t = 1µs でFF制御からFB制御に切り替えている.図3の短 時間領域(拡大図)では,波長切替直後に生じていた 30 GHz程度のオーバシュート量をFF制御によって 4 GHzまで抑制することで60 nsの波長切替時間が達 成されている.また,FF制御からFB制御に切り替え た後の領域では,FB制御によって長時間にわたり波 長が安定していることが確認された.以上の結果から, 波長切替間隔を200 GHzから400 GHzに拡張した場 合において,精度の高いレーザのモデル化(伝達関数 の導出)により,100 ns以下での高速波長切替及び切 替後の長時間波長安定化が達成できることが示された.
4.
む す び
発熱量が大きくかつ波長変化の非線形性が顕著な TDA-DFBレーザの400 GHz (3.2 nm)幅の波長切替 において,レーザモデルの高精度化によって100 ns以 下の波長切替時間及び長期的安定性が実現できること が確認された. 謝辞 本研究の一部はJSPS科研費26420308によ るものである.実験に際してNTT研究所から多大な 支援をいただいた. 文 献[1] N. Nunoya, H. Ishii, Y. Kawaguchi, Y. Kondo, R. Iga, R. Sato, T. Fujiwara, and H. Oohashi, “Tunable dis-tributed amplification (TDA-) DFB laser with asym-metric structure,” IEEE J. Sel. Top. Quantum. Elec-tron., vol.17, pp.1505–1512, 2011. [2] 木村凌河,立本雄大,佐熊一輝,恩地裕和,久保木猛,加藤 和利,“フィードフォワード/フィードバック併用型制御の 提案とこれを用いた波長可変レーザの高速波長切替の実 現,”平成 28 年度(第 69 回)電気・情報関係学会九州支 部連合大会,05-2P-11, Sept. 2016. (平成 29 年 1 月 17 日受付,3 月 13 日公開) 167