教授 ・学習形態 と子 どもの社会化
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アプローチによる考察
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(2007年3月31日受理)高 旗
正
人
MasatoTakahata Keywords:アイ ソモルフイズム,社会化, ヒ ドゥン ・カ リキュラム,役割期待,要求傾向,一斉教授, 自主協同学習要
ヒ
日
エ
教授 ・学習形態は主に学習効果,学力,学習意欲な どとの相関で議論 されてきた。講義式 とグループ ・ディスカ ッシ ンとを比較 した結果,グループ ・ディスカ ッシ ョンの方が学習効果が高かったことを最初に示 したのは,グループダイ ナ ミックス,アクシ ョンリサーチの創始者K.Lewinであった。その後,同様の変数による実験が繰 り返 されたが,両変 数の背後に教師の指導技術や教材の質や量など多様な変数が支配 してお り決定的な結果 を得 ることは困難であった。本 稿では,従属変数を子 どもの社会化に取 り,自主協同学習形態 と一斉教授形態を比較考察 した。その際,アイソモル フイ ズム ・アプローチ ともい うべき方法論に依拠 した。教授 ・学習形態 とい う授業集団の役割期待 (role-expectation)が学 習者に欲求傾向(need-disposition)として内面化 され るとするパー ソンズ行為理論の方法論である。学習形態が生起する学習場面の競争 と協同,防衛 と支持の風土,力の優位 と劣位などが長期にわたって子 どもたちを 社会化 している状況を明 らかにした。
問 題 の 所 在
教授 ・学習過程の構造は,はた して子 どものたちの社 会化にどのような影響を及ぼすであろ うか。 ここで,社 会化 とは,子 どもたちが集団活動をすることを通 してそ の社会特有の価値態度を身につける社会的行動様式であ る。価値 ・規範,社会関係の在 り方,役割構造,他者-の動機づけな どの社会的活動 を通 して子 どもたちは行 動様式を身につけてい く。教科指導の過程に於いて起 こ るそのような社会化は,一種のヒ ドゥン ・カ リキュラム (hidden curriculum)として子 どものパー ソナ リティ形 式に大きな影響を及ぼす。教科の指導法は学力形成 との 関連で語 られ,協同学習 とい う学習指導も学力形成や学 習意欲,学習-の動機づけなどとの関係で話題 にされて きた。(1)けれ ども子 どものパー ソナ リティ形成 に どの ように機能 しているかについてはあま り問題にされてい ないように思われる。 しか し,競争的関係や個人学習の 形態に対 して協同学習は明らかに違った集団過程 に同調 し適応することで展開可能 となるか ら,子 どもた ちの社 会性の形成にも独 自の影響を与えるに違いない。 その社 会性は,単にある時期の授業場面における学習形 態 とし て子 どもたちに認識 され,その授業が終われば,消却 さ れて しま うものではなく将来の人間 としての生き方にま で影響を及ぼすのであれば,それは,学習指導形 態によ る子 どもの社会化 と呼んでよいであろ う。(2)本 稿では 教科指導過程の社会化についてパー ソンズ流の社 会構造 とパー ソナ リティのアイ ソモルフイズム観の立場 か ら検 討 してみたい。(3)アイソモルフイズム ・アプローチ
アイ ソモル フイズムisomorphismとは,Baldwin,A.L.が パー ソンズ批判の中で使用 した言葉であるo(3) コ-ネル大学の研究者達によって,ハーバー ド大学の パー ソンズ研究が行われ,1961年,その集大成 として, 哲学教授のBlack,M.の編集 によるThe Social Theories ofTalcottParsonsが発刊 された。それにアルフレッ ド L.ボール ドウインは心理学の立場か ら 「パー ソンズ 派のパー ソナ リティ理論」とい う38頁の論文を寄稿 した。 その中で,彼がパー ソンズ批判の一環 として使用 したの が他 な らぬisomorphismとい う概念であった。パー ソン ズは本書の全体を読み,53頁に及ぶ 「著者の見解 (The PointofViewoftheAuther)」を最終章 として寄稿 し ている。その中で,isomorphismが気 になって数頁を割 いて反論ない しは解題 を寄せている。アイ ソモルフイズ ムとは,同型主義 とか異種同一構造論 と訳 されるであろ う。要す るに,この文脈では,子 どものパー ソナ リティ 構造 と彼が所属する集団の構造 とが同 じ構造になるとで もい うことである。パー ソンズはパー ソナ リティを社会 体系の視点か ら考える。ボール ドウインは心理学者 とし てパー ソナ リティそのもの として考えようとする。そこ に,両者の見解の違いが生まれていると思われる。 パー ソンズは行為の具体的体系 として,パー ソナ リ ティ体系・文化体系・社会体系をあげる。パー ソナ リティ 体系は欲求傾 向 (need-disposition),社会体系は役割 期待 (role-expectation)よって構成 される。その発想 はボール ドウインによればアイ ソモル フイズム (同型主 義)だ とい うのである。つま り,幼児期の子 どもは,家 族集団 とい う社会体系の役割構造を内面化 し家族集団に 適応するようになる。家族 と自分 との関係 を内面化 しそ れを基礎 として,家族内でどう行動するかを子 どもは判 断す る。だか ら,家族体系 と子 どものパー ソナ リティは 異種同型であるとい うのである。(4) パー ソンズは,この批判 に対 して反論 しisomorphism ではな く体系問のinterpenetrationである と説明 して いる。文化体系である価値 ・規範 はパー ソナ リテ ィ体 系に内面化 (internalization)され,社会体系に制度 化 (institutlonallzatlon)され ることによって両体系 に相互浸透 (interpenetration)する。適応的社会行動のメカニズムはパー ソンズによって,そのように説明さ れ る。 パー ソンズのパー ソナ リティ論は,フロイ トの 自我論における超 自我,G.Hミー ドの 自我論における ミ- (me)の分析か ら構想 されていると考えられ るo 自 戟 (ego)の無制限の欲求充足を社会規範の基準で押 さ えるメカニズムを,フロイ ドは 「父親の声」, ミー ドは 自我内自我 「アイ (Ⅰ)」に対する自我内他者 「ミ- (me)」 を位置づ けて説 明 した。パー ソンズの欲求傾 向(need -desposition)はそれ らの延長線上にある。その原型は社 会集団の文化体系 として存在 し社会体系に形成 された役 割一期待 (role-expectation)として存在する。
子 どもたちは, 日々の授業過程に適応 し,学習活動の 効果を上げるようになる。その過程は,各教科の学習 と い う課題活動であると同時に授業 とい う集団構造-の同 調であ り,その集団に制度化する価値規範の内面化であ る。ボール ドウインのい うアイ ソモルフイズムは授業過 程が子 どもをどのように社会化するかをを見る授業分析 の方法論 として有効であると考える。 1.学習形態の革新 と評価 1)学習指導過程の主体 と客体 公教育制度化の学級教授 は普通一般には,教師主体, 学習者客体の関係で展開 され るであろ う。その関係 は, 学校の存立構造に依拠 している。学校 とりわけ義務教育 学校は民衆の要望をもって設立 された側面を否定するこ とはできないけれ ども,国や国家の存続 と発展を期 して 構想 されたことは事実である。 したがって,「すべてを 学習者か ら (AllesYonKindeaus)」ではなくして 「す べてを学習者- (AlleszumKindehim)」の方向で教育 内容 ・授業時間数 ・学級の定員等教育環境は準備 された。 教師は,定められた教育内容を定められた時間内に複数 の児童生徒に教授することが義務づけられた。そのため には,明治5年学制の下,学校の授業が始まって以来, 一斉教授 と称 される教授体制が採用 されてきた。 一斉教授は,教師が意図的計画的に創 り上げた とい う よりは,教材が与えられ,それを学習者に理解 させ伝達 しようとすると,必然的に生まれてくる教授形態である と言える。明治20年代に-ルバル ト派の五段階教授法が 導入 され,普及 していったためとい うよりは,それが学 級教授の存立構造によく適合する形 として生まれた教授
形態であった。-ルバル ト派の とりわけRein,W.の五段 階教授法は,現実の伝達型の教授によくマ ッチ して,現 実の教授を方法 として理論的に裏付けしたものといえる であろ う。 このようにして,以後展開 された教授法は,予備 一提 示一比較一概括一応用 とい うラインの教授段階の用語か らは離れていったが,導入 -展開一終結 とい うような教 授段階 として,教員養成段階の教育実習では,ごく一般 的な授業法 として指導 されている。その授業過程では, 教師が主体で学習者は客体,の役割構造が生まれる。 と ころが学習者-子 ども一人ひ とりは全体 としての人間で あ り,主体的存在である。 一斉教授の学習指導過程を展開するためには,子 ども たちは,教師の授業を 「受ける」 とい う役割を身につけ なければならない。-ルバル トが教授 (unterricht)の 前提 として管理 (regierung)を置いたのは,教授 を 「受 ける学習者」であることを 日々毎授業時間に,子 どもた ちに意識 させ る必要があるか らである。そのようにして, 学校 とい うところで行われ る教授はすべて 「受動的」地 位 ・役割において行われ ることを子 どもたちは認識する ようになる。 これが,一斉教授の学習集団形成である。 明治以降 日本の公教育において学校が制度化 しようとし た教師主体 ・子 ども客体の地位役割関係である。 ところが,一斉教授は必ず と言っていいほど,学習者 全員-の教育内容の教授 とい う点で,問題 を生む。 意 識的な教師は,この点において教授形態の変革を試みよ うとしてきた。ル ソーやペスタロツチーも子 どもの学習 の本質からして学校教育-の批判を行い独 自の教育論を 展開 した。 しかし,学校教育-もっとも大きな影響を及 ぼしたのは,デューィ,
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である。彼の経験主義の教 育哲学か ら生まれた問題解決学習やプロジェク トメソッ ドは,世界的規模 において学校教育を変革 した。教師 と 学習者 との関係構造を逆転 しようとした といえるのであ る。そのために,彼は,学習者の学習意欲を喚起するた めに図1授業改善の投入 と産出によれば 「(投入)」にお ける 「目的 ・内容」 と 「授業の方法」に焦点化 された改 善を行った。 「授業の方法」については,近代科学の方 法をモデル とする授業の過程 を組織 した。「経験的事態一 問題の感得一資料の収集一仮説の構成一仮説の検証一結 論の成立」は科学理論の成立過程であり,子 どもの学習 の成立も同 じ経過 をた どると して,問題解決学習の過程 が構想 された。アメ リカや 日本で実践 されたプロジェク トメソッドの学習過程はその問題解決モデルに依拠 して 展開された。 図1 授業改善の投入と産出 機 能 (過程) (産出) 授業の方法 目的 .内容 課題 達成機能 集 団維持機能 集団 レベル 個 人 レベル 2.自主協同学習形態 デューイの問題解決学習は子 どもたちが経験的事態で 疑問を感 じたな らば,それを解決 したい とい う意欲 を必 然的にもつようになることを前提 として,組織 された授 業過程である。授業の構成要因の変革によって,知識 ・ 理解の教授 ・伝達の授業か ら学習者が求める学習指導-の転換を図ろ うとした。デューイの問題解決学習論には, 集団規範や授業の役割 ・組織の変革 とい う要因-のアプ ローチは認 め られない。結果 として授業者によっては, 小集団学習の形態が とられた り,司会 ・記録な どの役割 が生まれ る場合 もあったかもしれない。 しか し,問題解 決学習には授業の集団過程つま り集団規範,役割 ・組織 などの変革 とい う視点は明確には導入 されていない 。 授 業過程を集団過程 と観 るな らば,集団過程その ものを独 自の視点か ら組織編成す る必要があると考えな ければな らない。 自主協同学習論は,一方では,デューイ流の学習者の 主体化を学習 目標 ・内容の変革によって導入 し,他方で は協同学習論の集団過程の変革を行 う。パー ソンズのA G IL図式の独 白の解釈か ら,それ ら授業の4つの構成 要因は授業過程の4つの行為空間を形成す るといえる。 授業の4つの構成要因の変革ない しは4次元空 間それぞ れ-の新 しい視点による変革の投入が学習指導過程の変 革には必要であると考える。1)授業改善の導入 図2 授業の構成要因 A
授業の方法
目的 .内容
自主協同学習 は,教室授業 を学習者 自身が 自主的に展 開す るとい うもの。 わか らない ところが出てきた らお互 いに教 え合い考 え合 う協 同活動 として組織 しよ うとす る 学習指導である。 そのためには,教師だけではな く,学 習者 が 自主協同学習の理念 を理解 し多 くの学習技術 を習 得 しなけれ ばな らない。技術論 か ら述べ る。 図2 授業の構成要因は,パー ソンズのAG IL図式 に よって授業 の構成 要 因 を分類 して図示 した ものであ る。Aは授業の 目的達成 のための手段,Gは授業の 目的 その ものを, Ⅰは集 団過程 としての授業の組織 を,Lは 集 団過程 としての授 業場 面 の集 団規範 をそれ ぞれ分類 し,各授業形態 はそれぞれの要 因が どの よ うな属性 を有 す るかによって,独 自の形態 をなす と考 える。 自主協 同 学習の場合 は次の よ うになる。 A 授業の方法 :学習 (授業)の しかた 自主協同学習の場合 は,授業 は学習者 によって展開 さ れ る。 したがってそ こには,一斉指導 とは異 なる独 自の 学習形態が生まれ る。 まず,授業時間以外 の場 で,授業 時間に先立って学習 内容 に関す る疑問点が学習者 に認知 されねばな らない。そのための指導書 として教師は 「学 習 の手 引 き」 を用意す る。 学習指 導案 は教 師用 で あ る が, 「学習 の手 引き」 は子 ども用 であ る。子 どもた ちは それ を見て,教科書 を中心に予習 を して登校す る。 自分 が疑問に思った ことをノー トにメモ して,授業開始 と同 時にグループで相互点検 を行 う。そのグループでの話 し 合いが始まる と同時に発表係 が小黒板か前 に出て教室の 黒板 に回答 を書 く。各班か ら別 の代表が出て,同 じ問題 を解説す る。 その際,解答 の方法や 内容 は各 グループで 異なることがある。誤 りもある し,解 き方考 え方 の独 自 性 がでる。それが,後の全体学習の時の集 団思考 につな が る。 できるだけ異質の回答例が出 ることが集 団思考 を 深 める。 これが授業の中心をなす全体発表 ・質疑の段階 である。 ま とめの段階にはい る と,全員が理解 できたか どうかを,小 グループで確 かめ,残 された問題 について も各 グループで整理す る。再び全体 に各小 グループの疑 問点 を出 して,次時の課題 を決定す る。以上 を図式化す ると次の通 りである。 ・授業の過程 :「本時の課題確認 一発表準備 ・相互点 検 一全体発表 .質疑 -まとめ 一次時の課題」
この授業の段階 を学習者 が頭 に入れて, 自分たちで展 開す るよ うになれ ば 自主協 同学習が実現す る。 学習の仕方のサブカテ ゴ リー として,技術的な問題 が 解決 されなけれ ばな らない。その一つは,授業 を展開す るための 「発表 の仕方」
「司会 の仕方」
「質問の仕方」な どである。それぞれ において,心構 え と発言 の技術 を具 体的に学習者 が身 につ けるまで指導 され なけれ ばな らな い。以上,学習の仕方 の学習は, 自主協同学習 を成 立 さ せ るための重要 な要素である。1960年代 に始 ま り1980年 代まで,実践 を通 して これ らの技術 開発 が数多 く行 われ た (5)0
G 学習内容 ・学習の手引 学習の手引きは教科書 によって編成す る。学習者 が予 習 として,あるいは授業 として取 り組むべ き課題や学習 形態 (一人で考 える,ペ アーで話 し合 う,小 グループで 話 し合 う,全体の場で話 し合 う, ノー トす るな ど) を加 える(6)。 学習の手引きの中心 をなす のは,学習課題 である。学 習課題 の善 し悪 しが授業の質 を規定す る。教科 によって 学習課題 の構成方法 は異なるが,教師の方で設定す る場 令,学習者 の話 し合いの中か ら作 ってい く場合 な ど多様 である。例 えば,国語の物語文 の場合は,1単元16時間 分の学習課題 を第1時間 目に,教科書 を通読 してみんな で作 り上げる作業 を行 う場合 がある。 これはかな りなれ た中学生段階の学級 で可能である。 ・学習内容の集団化 学習の集 団化 は 自主協同学習論特有 の用語 である。一 人で学習す ることもできるが,集 団で学習す ることもできる学習の内容がある。例えば,九九をおぼえる場合 と か英語の単語をおぼえる際に,一人でノー トに何回も書 いた り,カー ドに書いたものを隠 して,一人ひ とりで言 いなが らおぼえる方法が とられる。 しか し,複数の学習 者が協力 し合って一人が質問 して他の一人が答えると言 うような相互作用の中で学習することができる。数学の 問題 を自分でノー トに解いて正解 と照 らし合わせてみる こともできるし,複数の子 どもたちによって,回答の仕 方を比較 した り話 し合った りなど答え合わせによって理 解 を広げ深めることもできる。後者を学習の集団化 と呼 ぶ。 t 役割 ・組織 自主協同学習の授業づ くりは,集団アプローチである。 ここで言 う集団アプローチ とは,授業の集団過程を変革 す ることによって授業過程 自体を変えようとする接近方 法である。授業過程の変革のためには授業過程を構成す る構成要因を変革す る必要がある。授業過程の構成要因 は,大きくは学習者,学習内容,集団構造である。したがっ て,学習者に合わせて学習内容や授業形態を変える方法, 学習内容に合わせて授業形態を変える方法,集団構造に 合わせて学習内容を変える方法,が考えあれ る。前2者 は,すでに,授業研究の歴史の中で中心をな した授業改 善研究の主要なアプローチである。 しか し,集団構造か ら授業過程の変革を考えるとい うアプローチは歴史の主 流 とはな り得ていない と思われる。それは,亜流であ り, 付随的処置であり派生的な部分であると見なされ る場合 がほとん どであった。 確かに,集団構造を変えれば,算数がよくわかるよう になるとか,漢字がよく読めるようになるとか,英語が よく訳せ るようになるとか, と言 う風に直線的に学習効 果にはつなが らない。個人の思考様式に合わせて,学習 内容 を編成 し学習プログラムを組むいわゆるプログラム 学習や教材の検討か ら範例を見つけて学ばせ る範例方式 の授業な どでは,学習内容 と学習者の学習活動が直結す る。教材がかわると学習者の学習のメカニズムが働 くよ うになった り,働かなくなった りする。 したがって,授 業の効率 を高めるための授業改善研究は,教材研究で あった り,こどもの思考過程に合致する教材構成研究で あった りする。 その関連か らすると集団構造 とい う授業の構成要因へ のアプローチは授業の効率化 に対 して間接的 と考えられ ても仕方がない。 しか し,他者の働 きかけ・態度 ・意欲 ・ 持続力が学習行動を促進する大きな要素であることを考 えるならば,学級における集団場面での意欲や動機づけ は,集団構造によって大きく左右 されるか ら,集団構造 -のアプローチは重要である。例えば,い くら教材の難 易度が学習者にとって適切なものであっても,学習行動 -の動機づけが不十分であれば,学習は起こらないであ ろ う。教材-の興味 ・関心 とともに,学習行動-の動機 づけこそが学習- と子 どもたちを向かわせる。そのこと が集団構造によって左右 され ることは言 うまで もない。 集団の規模の大きさ,人間関係,役割の配分,な どが ど うなっているかで,子 どもたちの学習-の動機づ けはか わってくる。学級の全員 の子 どもたちを学習- と駆 り立 てる集団の編成が求められる。 ・1人一役 学級の子 どもたちが,全員学級での課題遂行に関す る 何 らかの役割を持っていることは,チ ビもたち一人ひ と りを学級の主人公にする。少なくともその役割に関 して は彼は リーダーである。授業 も全員が リーダになった り フォロワーになった り役割を交代する組織であれ ば一人 ひ とりが主体 となる授業が生まれる。そのために1人一 役を学級組織づ くりの原則 とす る。 ・小集団の編成 (2/ 3/4/5/) 自主協同学習は課題解決方法の学習過程であ るか ら, 一人で考え,ノー トし, 自分の考えを確かめるた めに他 者 と話 し合 う過程が必要である。そのために,少 人数か らなるサブ集団を学級内に編成する。それが学級 内小集 団の編成である。小集団を何人で編成するかは, 目的に よって異なるが,2人のペアー,3人,4人,5人,6 人 くらいまでであろ う。 中学校では,男女3名ず っの6 人で編成 し男女のペアーにもなれるサブグループ の編成 で効果を上げたところがある。奇数の5人をよい とい う 実践家 もいる。そのサブグループの人数を何人にす るか, 誰 と誰を一緒にするかな どは,学級の状態や学習 の内容, 形成 しようと考える集団や人間関係によって異な る。担 任は一人ひ とりの子 どもの状態を見て学習-の参加が十 分でない子 どもには,気配 りのできる子 どもをつ けると か,開放的な雰囲気のグループに所属 させるとか考慮す
ることになるであろう。一定の期間を経過すると,他の 目的のために,適切な集団に編成替えが行われ る。 ・学級全体の係 (各教科,生活の係,学級会の司会, 記録等) 学級は子 どもたちの学校生活の単位 として機能するた めに 「当番」や 「係」をつ くって子 どもたちに積極的主 体的に学級の運営をさせる。 とりわけ,自主協同学習は 学習の場面での活動が子 ども主体になるので,そのため に有効に働 く役割 と組織を創 る必要がある。全員が役割 を持って,その部分では自分が学級の主体であることを 認識す る。まず,係 としては,各教科別の学習係が必要 である。一般的には,教師の下請けにな りがちであるが, 自主協同学習の学習係は,朝の短学浩の時か ら活躍する。 今 日の各教科 の授業をどのよ うに展開す るかを報告 し, 今 日の各班の 目標 を明 らかにする。注意事項 も前 日の反 省に立って整理 しておき発表する。朝の短学活は,今 日 行われ る全授業の係がそれぞれの授業計画等を発表す る ので時間不足 になるほどである。 他方,生活係は,児童生徒会か らの注意事項や学級の 前 日あった出来事の反省,今 日の 目的などについて朝の 短学活で説明 し,帰 りの終学活で各班 ごとの 目標が達成 できたか, 自己点検を行 う。 さらに,次の 日の各教科の 授業の予定,家庭学習の範囲と課題などについて説明を する。生活係 も各教科の係 も短学活では大活躍する。複 数の子 どもたちが輪番制を敷き,各教科グループや生活 グループで検討 した内容 を学級全体に報告する。 ・グループ内の係 数名か らなる各小グループ内でも,司会,発表,連絡, 発表準備 な どの役割分担がなされてお り,一定の期間の 後交代 して全員がいろいろな役割を経験する。司会が上 手でない場合 は,他の者が助ける。上手な者ばか りが受 け持っのでな く全員が責任 を持って小グループの運営の 役割を遂行す る。発表係は,全体の場面での発表準備 と 発表を行 うが,小 グループで十分検討 した後の発表であ るか ら,ほとん どの者がその役割を遂行できる。 発表 中に失敗や混乱に陥 る場合 も他者 はバカに した り 笑った りしないことが学級の約束 として守 られる。 自分 が失敗 し,みんなに笑われることのつ らさをみんな知っ ている。 「明 日は我が身」だか ら,誰 もそのよ うな軽率 な行為は しな くなる。他人の失敗を笑った りバカにする ことはよくない こととい う規範が 自ず と学級 に出来上 がってくる。 L 学習の約束 (学習集団の規範) 自主協同学習の授業を創っていこうとするとき,実際 は,全員が参加できるような,自主的協同的な学習が進 展する学級集団の約束を取 り付ける必要がある。小学校 高学年か ら中学生の場合は説明によって,理想 とする学 習集団の状況は理解できる。本来授業 とはそ うものであ り,そ うい うものとしてやっていこう,とい う事にする。 授業時間を必要以上に授業の集団づ くりに使 うことは出 来ない。決まった授業時間ないに決められた内容を消化 しなければな らないか らである。 したがって,一つ一つ 体験 させなが ら集団のあるべき状況をつ くるとい うや り 方は現実的ではない。ある種の学習のあ り方や学習集団 の価値 ・規範をア ・プ リオ リーに準備 し学習者に説明 し て,「授業の形」か らはいることが効率的である。その 際最 も重要な内容は,「学習の約束」 としてま とめ られ たものである。学習集団が自主協同の学習過程を展開で きたか どうかはこの約束が実現できたが どうかである。 その, 自己点検評価のためのに,これ らの約束は次のよ うに測定項 目として再編成 された。(7) 測定用具 ① このクラスの人は,授業のチャイムが鳴ると, 自分た ちで直ちに学習に入 りますか。 (はい,いいえ) ② このクラスでは,発言の機会を,今まであま り発言 し ていない人にゆずるようにしていますか。 ③ このクラスでは,本を読みちがえた り,とちゅうでわ か らなくなった りした とき,助けますか。 ④ このクラスでは,授業を先生にたよらず,みんなでやっ ていますか。 ⑤ このクラスの人は,宿題がなくとも,予習をよくやっ てきますか。 ⑥ このクラスの人は,授業中,自分の思っていることを, どんどん発表 しますか。 ⑦ このクラスの人は,授業中,他の人の発表をよく聞き ますか。 ⑧ このクラスの人は,まだ理解できていない ともだちの ために, 自分のわかっていることをどんどん発表 しま すか。
⑨ このクラスの人は,なにか, 自分の問題 をもって授業 にのぞみますか。 ⑩ このクラスでは,授業中自分の思っていることを気楽 に発表できますか。 ⑪ このクラスでは,授業中,勉強のよくできる人だけが 活躍 していますか。 ⑫ このクラスには,授業中の発言をひ とりじめするよう な人がいますか。 ⑬ このクラスには,まちがった り失敗すると笑 う人がい ますか。 学習の約束の内容であ り,また,集団形成度の測定 評価項 目でもあるこれ らの13項 目は,適切な時期にアン ケー ト調査 として学級の状況を測定 し学習者 と教師の間 で検討する。 そこか ら次の実践課題 を発見す る。例 えば,「④ この クラスでは,授業を先生にたよらず,みんなでやってい ますか。 (はい,いいえ)」について,(いいえ)が多い 場合,このことが学級会の議題 とな り,学習者によって だけではなく,将来にわたる人間の生き方を造 り上げる 点を,重視 しなければならない。かつて, 自主協同学習 の洗礼を受けて佐藤記念病院の院長になられた佐藤医師 と中学校時代の恩師高橋典男氏 との対談の中で,佐藤医 師は何度 も,「今の私があるのは,勝央中学校 の 自主協 同学習のお陰だ」といってお られ る(9)0 「今の私」とは, 患者 さんに慕われ,温かい人 として認知 される自分の生 方である。それを形成 したのが勝央中学校時代の自主協 同学習だ とい うのである。純粋な感性 を有する青年期前 期に体験する授業過程や学級の構造は中学生に とって大 きな刺激 となる。人間形成を左右する体験 となるのであ る。授業形態は単に,狭義の学力づ くりのための手段で あるだけではなく,人間の社会性育成の重要な契機 とな る。そのような授業の人間形成機能を授業の隠れたカ リ キュラムとして分析す ることが本節の 目的である。 その際,アイ ソモル フイズム(isomorphlsm)といわれ るパー ソンズ行為理論の方法に依拠 して考察を行 う。 1) 学習集団の構造 :規範的パ ラダイム 改善のための色々な工夫が提案 され実行に移 される。 i一斉教授 と自主協同学習 L次元は, 自主協同学習においては,重心を成す と考 えてよい。授業 と個人学習に関す る各学習者の行動を創 り上げる内容である。 G次元の学力づ くりの測定 を学力テス トによって行 い,L次元の授業の規範意識の定着をこの13項 目で測 定することで,授業づ くりの一般的な完成度を説明する ことが出来る。 さらに,A次元の評価は,集団思考で あ り,相互作用の回数 といったかつてのアメ リカの実験 に見 られるような形式的な面だけではなく,発言の内容 分析 による意味解釈的方法が適用 されなければな らな い。教育実践の現場では,む しろ授業研究 といえばこの 視点が重視 された。斉藤喜博の島小の授業 (とりわけ国 請)や東井義雄の授業分析は思考の深ま りが重要な視点 として取 り上げられている(8)。 3.学習集 団の構造 と子 どもの社会化 の問題 :hidden curriculumを探 る これまで, 自主協同学習論の構造 と形成過程につい て見てきたが, 自主協同学習の展開が,子 どもたちの学 習意欲 を増 し,学力づ くりに対 して効果的であるとい う 図3-1 一斉教授 M
F
T 図3-2 一斉教授 MF
T 図4-1自主協 同学習 MF
P
P
図4-2自主協 同学習 MF
P
P
上記の4つの枠は授業過程の役割構造を性別 と力の優 位 ・劣位 とによって分類 したものである。図中の上 ・下 は力の上下,
M ・F
は男性 と女性,T
は教師, pは生徒 を表す。 一斉教授の場合は,教師はいずれの場合 も力の上位 に ある。 自主協同学習の場合は,授業展開の主導権は先の 説明のよ うに生徒にある。学習者は授業の過程では,一 斉教授 の形態 と自主協同学習形態,それぞれにおいて図 1- 1 (一斉教授),図3- 2 (自主協同学習形態)の よ うな教師 ・学習者の役割構造を内面化 し授業に適応 し てい く。 一斉教授が形成す る師弟関係は,教師が教 え学習者 は それ を受け身的に受容す るとい う関係である。明治期以 莱, 日本でお こなわれてきた-ルバル ト流の一斉教授形 態 の授業 は, 「知識 は高きよ り低 きに流れ る」つま り, 高い文化 ・知識 ・文化の導入においては有効なパー ソナ リティを形成 した。 学級経営ない しは学級づ くりは,学習者の受け身的学 習態度 の形成であった。先生は偉 く,学習者は教えを受 け入れ理解す る。 このような師弟関係の役割構造の内面 化が授業を通 しておこなわれた。 それ に対 して, 自主協同学習は学習者 に全 く別の役割 構造を内面化 させ る。 自主協同学習の場合は学習過程の 主体は学習者にある。学習者が学ぼ うとす る行為 を教師 は支援す るとい う関係である。学習主体は,学習す るこ とを自分の問題 として捉え,教師を支援者 として位置づ け教 えてもらう,評価 してもらう関係 をつ くる。学習者 を力の上位,教師を力の劣位 に図示 したが,これは必ず しも正確 とは言えない。学習集団にとっては教師 も学習 者 も同等であ り,教授 と学習 とい う役割の分化で しかな い。 自主協同学習の過程では,学習者はそのよ うな関係 構造 を内面化 し,他の学習者 との関係 を学習のための協 力者,教師は主 として教授 をす る協力者 として,あま り 力の優位 にある者 として認知 しないであろ う。師弟の役 割構造は,一斉教授の場合 と明 らかに異な り,学習者の 動機づけの構造 も異なる。 自主協同学習は 「教えを受け る」ではな くして 「教 えを請 う」主体である。 ii協同と競争 学習集団の組織づ くりには,競争 と協同がつねに関連 し,いずれ も個人の学習を動機づける機能があるとして, 意図的に動機づけの手段 として授業過程の編成 に使われ てきた。学習テス トの結果を公表す ること,順位 を公表 す ること,公表 しないまでも各 自に通知す るな ど。授業 中 「できる人 ? 読める人 ? わかる人?」と挙手を求 め教師が指名 し発言 ・発表をさせ ること,が授業中 日常 的に行われてきた。 これ らは,すべて,授業の過程 に競 争事態をつ くったことになる。 これによって,教師は学 習者 に,学習-の動機づけを行 っている。問答 と説話 と を中心 とす る一斉教授 (一斉指導)においては,このよ うな過程は 日常的である。 自主協 同学習では,「できない者,読 めない者,わか らない者」の学習参加 を促 し,学習-の動機づけを高め るために,全員参加 と協同活動を意図的に授業過程に取 り入れ る。授業 とはできない者のために存在す る,わか らない者のためにそれがある,読めないか ら読んで学ぶ のだ, とい う前提に立ち,できない,わか らない,読め ない者 を主役に しよ うとす る。学級の学習者が共通 して いることは,他な らぬ 自分が一層できる,読める,わか るよ うになることである。そ して,みんながその 目的を 達成す るように協力 し合 うのである。 同 じ目的を目指 している学級の仲間を競争相手 とし て認識す るか,協同す る学習者 として認知す るか,学習 集団の運営過程によって,異なる社会関係 の内面化が起 こる。いずれ も,個人の学習行動に対 して動機づけとし て内面化 され る。 しか し,学習-の動機づ けは一方 は, 他者 に対 して優位 に立っための学習の動機づ けであ り, 他方は, 自分の課題解決のための動機づけであると言 え る。 図5 授業と人間関係競争
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図 6 分化と統合 人 間関係 分化 統合