〔総説〕松本歯学29:143∼151,2003 ・
key words:破骨細胞一骨芽細胞一RANKL, RANK−OPG一シグナル伝達
破骨細胞の分化と機能を調節するシグナル伝達系
高橋直之
松本歯科大学 総合歯科医学研究所 硬組織疾患制御再建学部門
Signal transduction which regulates osteoclast differentiation and fUnction
NAOYUIKI TAKAHASHI
DivisionげH●∂m8μe.Reseαrch, lnstitute f()r Orα1 Scienc¢, Mats醐oto Dentα1 U励ers鋤Summary
The recen七discovery of receptor activator of NF−iCB ligand(RANKL)−RANK interaction confirms七he well−known hypothesis that osteoblasts play an essential role in osteoclast dif− feren七iation. Osteoblasts express RANKL, a tumor necrosis factorα(TNF一α)family mem− ber, as a membrane−associated factor. Osteoclast precursors that express RANK, a receptor for RANKL, recognize RANKL through the cell−cell interaction and differentiate into osteo− clasts. Recent studies have shown that lipopolysaccharide and inflammatory cytokines suchas TNF一αand interleukin l directly regulate osteoclast diffbren七iation and fUnction
through a mechanism independent of the RANKL−RANK interaction. Interferon一γ andβ
are also shown to be important negative regulators in osteoclastogenesis. These findings have opened new areas for exploring the regulatory meChanisms of osteoclast differentia一 七ion and fUnction. This review article describes the current㎞owledge of signal trallsduc− tion which regula七es osteoclast differentiation and fUnction. は じ め に骨は生体の支持組織として荷重を支えるととも
に,カルシウムとリン酸の貯蔵庫としての機能を
果たしている.これら2つの役割を果たすため
に,骨組織は一生涯を通じて骨吸収と骨形成を繰
り返し,この現象は骨リモデリングと呼ばれる.
骨形成は未分化間葉系細胞から分化した骨芽細胞
が,一方,骨吸収は造血系細胞から分化した破骨
細胞が担っている.近年の急激な高齢化社会への
移行に伴い社会問題化している骨粗霧症は,破骨
細胞による過剰な骨吸収あるいは骨芽細胞による
骨形成の低下により,骨リモデリングのバランス
が崩れ,骨量が減少することにより引き起こされ
る.また,慢性関節リウマチや歯周炎においても
骨吸収が骨形成を凌駕し,骨量が減少する.本稿
では,骨代謝疾患と深い関わりのある破骨細胞の
分化と活性がどのように制御されているか,シグ
ナル伝達系を中心に最近の知見を含めて概説した
い.1.破骨細胞の形態と機能
破骨細胞は,細胞内に複数の核をもち,骨組織
のみに存在する骨を吸収する唯一の細胞である.
(2003年3月26日受付)骨を吸収している破骨細胞は,骨表面に接した部
分に波状縁という刷毛状の膜構造とそれを取り囲
む明帯を形成している1).この明帯を介して骨表
面に接着した破骨細胞は,波状縁から水素イオン
やカテプシンなどのタンパク分解酵素を分泌し,
無機質の溶解と有機質の分解を効率よく行ってい
る.コラーゲンなどの分解産物は,エンドサイ
トーシスによって破骨細胞に取り込まれる.更
に,細胞内を輸送され(トランスサイトーシ
ス),骨表面とは逆側の膜領域からエキソサイ
トーシス機構で排出されると考えられている.
2.骨芽細胞による破骨細胞分化の調節
骨吸収は破骨細胞によって担われる.破骨細胞
は単球・マクロファージ系の前駆細胞より分化す
る.この破骨細胞の分化と機能発現は,骨形成を
司る骨芽細胞・骨髄細胞由来間質細胞(本稿では
両細胞群を骨芽細胞とする)により厳密に調節さ
れている1・2).1998年,骨芽細胞が発現する破骨細
胞の分化と機能を調節する破骨細胞分化因子
(Osteoclast differentiation factor, ODF)が クローニングされ,骨吸収の調節メカニズムの一端
が分子レベルで明らかにされた2).このODFは,
すでに報告されていたTRANCE(TNF−related
activation−induced cytokine)あるいはRANKL
と同一分子であった(図1).すなわち,骨芽細胞
は破骨細胞の分化に必須な因子であるM−CSF
(macrophage cololly−stimulating factor)と
RANKL(receptor activator of NF−kB)を産生
し,破骨細胞の形成を誘導する3−5).また骨芽細
胞は,RANKLのデコイレセプターである分泌型
タンパクのOPG(osteoprotegerin)も産生し,
破骨細胞の形成と機能を抑制する作用も有する.
骨芽細胞によるM−CSFの発現は恒常的である
リガンド
ODF
llOPGL
llTRANCE
llレセプター
RANKL
細胞外ドメイン 細胞タ 1 1 152 316隣
TNFfamily Cystei р盾高≠ homolOgOUS domain 1 401骨芽細胞/ストローマ細胞
RANK
細胞外ドメイン Cystelne−rich Cysteine−rich Death domain domains homologous regionsデコイレセプター
OPG
llOCIF
図1:破骨細胞の形成と機能を調節するRANKL, RANK, OPGの構造
破骨細胞前駆細胞/
破骨細胞
625破骨細胞分化因子はTNFリガンドファミリーに属する膜結合ドメインを持つサイトカインで,
ODF, OPGL, TRANCE, RANKLの4つの名前で呼ばれる.その受容体はRANKである. RANK
は4つのcysteine−rich domainを細胞外領域にもつ受容体である.また, OPGあるいはOCIFと
呼ばれるデコイ(おとり)受容体も存在する.OPGは4つのcysteine−rich domainと2つのdeath
domain−homologous regionを持つ分泌型の蛋白で, RAN−−RANKの結合を競合的に阻害する.
OPGのdea七h domain−homologous regionの機能は良くわかっていない.米国骨代謝学会は,こ
れら因子の名称の混乱を避けるために,リガンドは「RANKL」,受容体は「RANK」,デコイ受容
体は「OPG」を用いることを推奨している29).松本歯学 29(2)2003 Icr ,25(OH)2D3
u
VDR
PTH
受容体
回一IL蕊体
M−CSF
・叉ン分化
◎造血幹細胞
O単球/マクロファージ
癬_
図2:破骨細胞形成の分子機構
造血系の破骨細胞前駆細胞から破骨細胞が分化するとき,骨芽細胞が発現するM−CSFとRAN一の二
つの因子が必須である.1α,25(OH)2D3, PTH, IL−11等の骨吸収因子の刺激でRANKLの発現は上昇
する.さらに細胞内Ca++の増加もPKCを介してRANKLを誘導する.骨芽細胞はRANKLとともに
M−CSFを産生する. M−CSFは破骨細胞前駆の増殖と破骨細胞への分化に必須なサイトカインである.
一方,骨芽細胞はRAN一のデコイ受容体であるOPGも発現している. OPGがRANKLに結合する
と,破骨細胞前駆細胞はRANKLを認識できなくなり破骨細胞への分化は抑制される.
のに対し,RANKLの発現は1α,25(OH)2D3(1
α,25 一 dihydroxyvitamin D,), PTH(parathy− roid hormone), PGE2(prostaglandin E2), IL−11(interleukin 11)などの骨吸収因子により誘導
される4’5).1α,25(OH)2D3は1α,25(OH)2D3レセプター(VDR)を介し, IL−11やIL−6は共通の
シグナル伝達因子であるgp 130を介して
RANKLの発現を上昇させる.また, PTHや
PGE,のレセプターからのシグナルはcAMPを介
してRANKL発現を上昇させると考えられる(図
2).骨吸収を促進する1α,25(OH),D、, PT且,PGE,は,骨芽細胞によるOPGの産生も抑制し,
破骨細胞形成を促進する.さらに,骨芽細胞の細
胞内Caレベルが上昇するような薬物処理や培養
液のCa+’濃度を増加させるとRANKLの発現が
誘導される6’7).このRAKLの発現誘導は,細胞
内Ca濃度の上昇により活性化されたPKC(pro−
tein kinase C)が仲介すると考えられている.
一方,RANKLのレセプターであるRANKを発
現する破骨細胞前駆細胞は,骨芽細胞との細胞間
接触を介してRANKLを認識し, M−CSFの存在
下で破骨細胞に分化する.また,分化した成熟破
骨細胞もRANKを発現しており, RANKLから
の刺激により骨吸収活性が誘導される8).
3.破骨細胞分化と機能を調節するシグナル伝
達系
(1)RANKを介するシグナル
RANKにRANKLが結合すると,TNF(tumor
necrosis factor)受容体ファミリーメンバーのシ
グナル伝達因子であるTNF receptor associate
factors(TRAF)が活性化される4・5}. RANKの
細胞内ドメインには,TRAF 1, TRAF 2,
TRAF 3,TRAF 5そしてTRAF 6が会合する.
なかでもTRAF 6欠損マウスは典型的な大理石
骨病を呈することから,骨吸収において,TRA[F
6は重要な役割を持つ分子であると考えられ
る9’le). RANKからのシグナルは,これらの
TRAFを介してNF−iCl], JNK(c−Jun N−termi−
nal Kinase), p 38 MAPK(p38 mitogen−acti一TNFRl
(P55)/
lL−1…B(一JNK〕)
・RK⑧
↓
破骨細胞前駆細胞@1
…B(一JNK一)
EK Akt/PKB
破骨細胞前駆細胞 破骨細胞破骨細胞
活性化された破骨細胞
M−CSF
図3:破骨細胞の分化と機能を調節するシグナル伝達系
TNF一αは破骨細胞の分化を促進するが骨吸収活性を誘導しない.一方, RANKLと同様に,
IL−1とLPSそれぞれのレセプターを介して,破骨細胞の機能を促進する.以上の知見か
ら,TRAFi 2は破骨細胞分化, TRAF 6は破骨細胞活性化に関与すると予想される. vated protein kinase), ERK(extracellular sig−nal regulated kinase)などを活性化する(図
3).また,c−SrcとTRAF 6がRANKの細胞内
ドメインを介して結合し,AWPKB(…mti−apop一
七〇tic serine/threonine kinase/proteine kinaseB)を活性化する機序も提唱されている11).これ
らのシグナル伝達系を活性化することにより,破
骨細胞の分化や活性化が誘導されていると考えら
れる.最近,T細胞が発現する転写因子NFAT
2(nuclear factor of activated T cells, NFATc1)が破骨細胞の分化に決定的に重要であること
が報告された12・13).高柳らの報告13)によると,(1)NFAT 2はRANKLにより破骨細胞前駆細胞に
誘導されること,(2)NFAT 2を破骨細胞前駆細
胞に強制発現させるとRANKL刺激なしで破骨
細胞への分化が誘導されることより,(3)NFAT
2をノックアウトしたES細胞は破骨細胞に分化
できない、以上のことより,NFAT 2は破骨細胞
の分化に極めて重要な転写因子かもしれない(図
3).(2)㎜受容体とIL−1受容体を介するシグ
ナル
炎症性サイトカインであるTNF一αは破骨細胞
の前駆細胞である骨髄由来マクロファージに直接
作用し破骨細胞への分化を誘導する14).このTNF
一αによる破骨細胞形成促進作用はOPGの添加
によって抑制されず,TNF I型受容体並びにII
型受容体に対する中和抗体によって強力に抑制さ
れた.この知見は,TNF一αはRANKL−RANK
システムとは別の経路で破骨細胞の分化を誘導し
ていることを示している.一方,IL−1は破骨細
胞の分化を誘導しないが,成熟破骨細胞に直接作
用し,その骨吸収活性を誘導する15)(図3)、
TNF受容体のシグナルはTRAF 2を介して,下
流へ伝達されることが報告されており,TNF一α
誘導性の破骨細胞形成におけるTRAF 2の重要
性が示唆される.一方,IL−1受容体からのシグ
ナルはTRAIF 6が仲介する.以上の知見から,
破骨細胞の分化にはTRAF 2を介するシグナル
が,一方,破骨細胞の活性化にはTRAF 6を介
松本歯学 29(2)2003
するシグナルが重要であることを示唆する.しか
し,TRAF 6遺伝子欠損マウスから得られた破
骨細胞前駆細胞をTNF一α処理しても破骨細胞は
ほとんど形成されないことから,骨吸収に関与す
るサイトカイン間のクロストークの存在が示唆さ
れている’6).最近,TRA[F 6の受容体認識機i構が
他のTRAFと大きく異なること,そしてTRAF
6に結合する細胞透過性ペプチドは破骨細胞形成
を抑制することが示された17).このように,破骨
細胞の分化誘導にもTRAF 6を介するシグナル
が重要である可能性が指摘された.
(3)TI.R 4を介するシグナル
生体に炎症を誘起するグラム陰性菌の細胞壁成
分であるLPS(lipopolysaccharide)の受容体
が,TLR 4(To11−1ike∼receptor 4)であること
が示され,TLRを介するシグナル伝達系が注目
されている.TLRはファミリーを形成してお
り,現在マウスではTLR 1∼TLR 9まで知られ
ている18).興味深いことは,TLRの細胞内ドメ
インはIL−1受容体と類似しておりシグナル伝達
因子としてアダプター分子であるMyD 88,
1盟【(IL l receptor associated kinase),TRA[F6を介する18).LPSは成熟破骨細胞に直接作用
し,破骨細胞の延命や吸収窩形成能を誘導する19)
(図3).これらの反応は,TLR 4遺伝子に異常
が認められるC3且eJマウス由来の細胞では起
こらないことから,TLR 4を介するものと推察
される.LPSはマクロファージからのTNF一α,
IL−1, IL−6などの炎症性サイトカインを誘導す
る.これらのサイトカインは破骨細胞の分化や機
能を誘導する.以上のように,LPSは直接破骨
細胞に作用するのみならず多彩な作用を有してお
り,炎症性骨吸収に深く関与するものと推察され
る.4.破骨細胞分化におけるp38 MAPKシグナ
ルの重要性
前述したように,RANKLが破骨細胞前駆細胞
(骨髄由来マクロファージ)が発現するRANK
に結合すると,NF−iCl3, JNKとともにp38
MAPKが活性化される. p 38 MAPKは, JNKや
ERKとともにMAP kinaseに分類されるセリン
スレオニンキナーゼで,胚発生や細胞周期の制御
そして細胞の増殖に重要な役割をしている.p38
MAPKの特異的阻害剤であるSB 203580は,破
骨細胞前駆細胞であるRANKLが誘導する破骨
細胞前駆細胞から破骨細胞への分化を強力に抑制
することが報告された2°).しかし興味あること
サイトカイン産生
貧食能
樹状細胞への分化
破骨細胞前駆細胞
(骨髄マク゜ファージ) 癬
破骨細胞への分化
SB203580
図4:p38 MAPKは破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化を特異的に抑制する
破骨細胞の前駆細胞である骨髄マクロファージは,LPS刺激でIL−1やTNF一αなど炎症性サイト
カインを産生する.また,強い倉食能を持つ.一方,骨髄マクロファージはM−CSFの存在下で
RANKLの刺激で破骨細胞に分化する.さらに,骨髄マクロファージはGM−CSFの存在下でCD
40 LやLPSの刺激で樹状細胞に分化する. p 38 MAPKの特異的阻害剤であるSB 203580は,骨髄
マクロファージのサイトカイン産生,貧食能,樹状細胞への分化を全く抑制しないが,破骨細胞へ
の分化を特異的に抑制する.そのため,p38 MAPKのシグナルは破骨細胞分化にとってとりわけ
重要と思われる.RANKL
一
/
TRAF6
0therTRAFs
\
p38 MAPK以外 のシグナル(蓮) ・・A・・(?・
破骨細胞前駆細胞破骨細胞
破骨細胞前駆細胞 活性化した破骨細胞図5:破骨細胞の分化と機能を調節するp38 MAPKシグナル系
p38 MAPKの特異的阻害剤であるSB 203580は, RANKLあるいはTNF一αが誘導する破骨細胞の
分化を抑制するが,RANKLやIL− 1が誘導する破骨細胞の活性化は全く抑制しない.また,
RANKLやIL−1は破骨細胞のp38 MAPKを活性化しない.このように, p 38 MAPKシグナル系
は破骨細胞の分化にのみ必須なシグナルで,その下流にはNFAT 2が存在するものと考えられる.
一方,破骨細胞の活性化はp38 MAPK以外のシグナル系によって担われているものと考えられ
る.この活性化の過程にNFAT 2が関与するか否かは不明である.
に,RANKLが誘導する破骨細胞の延命と骨吸収
活性をSB 203580は全く抑制しなかった21).一
方,SB 203580は破骨細胞前駆細胞である骨髄マ
クロファージのサイトカイン産生や貧食能を阻害
しなかった22).また,SB 208530はLPSやTNF一
αが誘導する骨髄マクロファージから樹状細胞へ
の分化も全く抑制しなかったas)(図4).破骨細
胞前駆細胞と純化した破骨細胞におけるp38
MAPKのリン酸化が解析され,破骨細胞前駆細
胞のp38 MAPKはRANKLによりリン酸化され
るが,破骨細胞のp38 MAPKはRANKLによっ
て全くリン酸化されないことが明らかにされ
た21).すなわち,p38 MAPKのリン酸化は破骨細
胞の分化に必須なシグナルであるが,成熟破骨細
胞においては,p38 MAPKのシグナル系は作動
しないことが示された(図5).破骨細胞の分化
誘導においては,p38 MAPKの下流にNFAT 2
が存在すると考えられる.破骨細胞の活性化にp
38MAPKが関与しないということは,破骨細胞
の活性化にはNFAT 2以外の転写因子の関与が
示唆される.破骨細胞の活性化に必要なシグナル
系も今後の研究で明らかにされるであろう.
5.破骨細胞分化とTGF一βスーパーファミ
リーサイトカイン
TGF一β(transforming growth factor B)スー
パーファミリーに属するTGF一βやBMP(bone
皿orphogenetic protein)は骨基質に大量に存在
し,破骨細胞による骨吸収に伴い,骨組織から遊
離されると考えられている23).TGF一βは,
RANKLとM−CSFによって誘導される破骨細胞
形成を促進することが示された24).また,アクチ
ビンもRANKLによる破骨細胞分化を強力に促
進すること,この促進作用は可溶型のアクチビン
受容体IIAや可溶型TGF一β受容体IIAで完全に
抑制されることが示された25).これらの知見は,
松本歯学 29(2)2003
ぐ㊧⊇
TGF一β Activ|n ABMP
TGF一β ActiVIn A 破骨細胞 骨芽細胞ノストローマ細胞 骨細胞 M−CSFRANKL
図6:破骨細胞の分化と機能を調節するTGF一βスーパーファミリーサイトカインの作用
TGF一βスーパーファミリーに属するTGF一β,アクチビンおよびBMPは,破骨細胞前駆細胞や破
骨細胞に直接作用してRANKLの作用を増強させる.また,破骨細胞前駆細胞であるマクロファー
ジもTGF一βスーパーファミリーのサイトカインを産生している. RANK介するシグナル伝達に
TGF一βやBMPのシグナルがクロストークしている可能性が示唆される.
TGF一βやアクチビンが破骨細胞形成に重要な因
子であることを示唆している.さらに,我々も
BMP−2もRAN肌により誘導される破骨細胞
の分化を促進することを見出した26).BMP−2や
TGF一βは破骨細胞前駆細胞のc−fins(M−CSF
受容体)やRANKの発現に対して,効果を示さ
なかった.また,TGF一βスーパーファミリーサ
イトカイン単独では破骨細胞の形成を促進しな
い.RANKLとTGF一βスーパーファミリーサイ
トカインによる破骨細胞形成の相乗作用はOPG
の添加によって完全に抑制される.以上の結果よ
り,TGF−3スーパーファミリーに属するサイト
カインは,破骨細胞前駆細胞に直接作用して
RAN囚Lの作用を増強させるものと考えられる.
また,その効果が抗TGF一β抗体や可溶性BMP
受容体によっても抑制されたことから,RANK
介するシグナル伝達にTGF一βやBMPのシグナ
ルもクロストークしている可能性が示される.骨
組織に大量に存在するこれらのサイトカインによ
る破骨細胞形成促進メカニズムの解明は今後の重
要な研究課題である.
6.破骨細胞分化を抑制するシグナル
骨吸収は免疫系の細胞によっても制御されてい
る.実際,RANKLの発現は,骨組織のほかにも
多くの組織で認められる.胸腺もその1つであ
る.活性化丁細胞は,RANKLを発現しており,
歯周炎や慢性関節リウマチなどの病態における骨
吸収に関与している27).一方,活性化T細胞は,
強力な破骨細胞分化阻害サイトカインである
IFN一γ(interferon y)を産生する.高柳ら28)は,遺伝子欠損マウスを用いて,IFN一γによる破骨
細胞分化抑制機構を調べた.その結果,IFN一γ
は,ユビキチンープロテアソーム系を介して,
TRAF 6の分解を促進することで,破骨細胞分化
を抑制する事を報告した.さらに最近,IFN一β
はc−fosの発現をdown regulationする事によっ
て破骨細胞形成を抑制することが示された29).こ
のように,丁細胞は骨吸収を促進する一方で,ネ
ガティブフィードバック機構も有しており,炎症
性骨吸収を巧妙に調節しているものと考えられ
る.おわ り に
1997年のOPGの発見とそれに続く1998年の
RANKLの発見により,破骨細胞の形成を調節す
る骨芽細胞の役割の詳細が明らかになってきた.
さらに,分子レベルで,慢性関節リウマチや歯周
疾患の発症に関与する様々な炎症性サイトカイン
とRANKLの複雑なクロストークの存在が示さ
れ,現在それらの解析が著しい勢いで進んでい
る.これらの基礎研究が骨代謝疾患や歯周疾患の
発症機序の解明や創薬におおいに寄与することを
期待したい.文
献
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