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成人知的障害者の余暇生活における現状と課題

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Academic year: 2021

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(1)Title. 成人知的障害者の余暇生活における現状と課題. Author(s). 鈴木, 洸平; 細谷, 一博. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 67(1): 181-190. Issue Date. 2016-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7998. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. 成人知的障害者の余暇生活における現状と課題 鈴木 洸平・細谷 一博* 北海道教育大学大学院教育学研究科 *. 北海道教育大学函館校障害児臨床研究室. The Current Situation and Problem for Leisure Activities of Intellectually Disabled Adults SUZUKI Kohei and HOSOYA Kazuhiro* Graduate School of Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education *. Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 知的障害者は近年増加傾向とされ,その中で成人を迎えた知的障害者も増加していることが 推察される。成人知的障害者の支援には4つの領域があるとされ,その中に余暇支援領域があ る。これまで余暇に関する研究を整理した論文は数少ない。本研究は,成人知的障害者の余暇 に関するこれまでの研究を概観し,成人知的障害者の余暇生活における現状と課題及び支援の 実際を明らかにすることを目的とした。知的障害者の余暇保障はノーマライゼーションの実現 のためにも重要であるのに対し,知的障害者の余暇実態としては,家の中にこもりがちである, 地域とのかかわりが乏しいなどの現状があり,余暇の充実に関して課題があることが明らかと なった。余暇に関する支援の実際では,生活支援プログラムの計画により,知的障害者自身の 地域参加スキルを育てたり,余暇支援団体を通して地域への参加を促したりするなど,余暇の 充実に向けた支援を行っていることが明らかとなった。余暇生活における課題では,親から離 れた活動やスポーツ活動が求められていることが示唆された。. Ⅰ はじめに. 289,600人と推計されており,在宅の成人知的障 害者の数も近年ますます増加していることが推察. 厚生労働省(2007)の実施した知的障害児(者). される。. 基礎調査結果の概要では,知的障害児(者)の数. 菅野(2006)は,日本発達障害学会と日本特殊. が平成2年では385,100人であったが,平成17年. 教育学会における障害児・者の研究件数をまと. には,419,000人に増加していると報告している。. め,我が国において18歳以降の成人期を対象とし. そ の 中 で, 在 宅 の 知 的 障 害 者(18歳 以 上 ) は. た研究は12.9%といまだ少数にとどまっており,. 181.

(3) 鈴木 洸平・細谷 一博. 心理や行動,老化といった基礎的な面については. 暇に関するこれまでの研究を概観し,成人知的障. 研究報告はなされていないと報告している。さら. 害者を対象とした余暇の現状と課題及び支援の実. に,健康で豊かな成人期を送るためにはどのよう. 際について明らかにすることを目的とする。. な支援が必要であるのか,これまで組織的,体系 的な取り組みがほとんどなされていないのが特徴 であると述べている。. Ⅱ 余暇とは. さらに,佐藤(2013)は,障害のある人の成人. 1.余暇の定義. 期における支援を文献的に考察し,知的障害者の. 伊藤・菅野・橋本・浮穴・勝野・片瀬(2007). 思春期から成人期に至る時期の心理的な変化とし. は,余暇研究の歴史として19世紀にマルクスが余. て,親からの心理的自立があると述べている。ま. 暇とは「人間的成長のための余暇」を意味してい. た,就労後も,学齢期に身につけた社会的適応ス. ると説いたと述べている。また,J.デュマズディ. キルを低下させないために,色々な人と関わり,. エ(1972)は,余暇とは,個人が職場や家庭,社. そのスキルを発揮する必要のある場面を継続的に. 会から課せられた義務から解放されたときに,休. 持つことが望ましいと考えられると述べている。. 息のため,気晴らしのため,あるいは利得とは無. このことから,成人知的障害者を対象とした. 関係な知識や能力の養成,自発的な社会的参加,. 様々な活動支援が求められているといえる。しか. 自由な創造力の発揮のために,まったく随意に行. し,柴山・蛯谷(2004)は,環境が大きく変化す. う活動の総体であると述べている。さらに渡辺. る移行期に着目した先行研究がないと指摘してい. (1983)は,余暇にはその語源から見て,ラテン. る。さらに西村(2008)は,知的障害者が学校を. 語のotium(オシム)と,ギリシャ語のschole(ス. 卒業した後の地域におけるインクルージョンが進. コレー)の二つがあると述べている。前者は「何. まないと指摘している。. も し な い 」 と い う 意 味 で あ り, 後 者 は 英 語 の. 以上のように,学校を卒業した成人知的障害者. schoolに相当する「学校・学問」と束縛されない. においては, 地域とのかかわりが希薄なことから,. 「自由な時間」という二つの意味があると報告し. 特に地域との繋がりが求められていると考えられ. ている。. る。. このように,余暇は仕事や家庭と離れた自由な. 成人知的障害者の生涯発達支援の中でも,特に,. 時間であり,現代の社会において大切なものと認. 菅野(2006)は,就労支援領域,自立生活支援領. 識されている。. 域,学習・余暇支援領域,またそれらの基礎とな るコミュニケーション領域の4つについて考えて. 2.知的障害者の余暇保障. いくことが大切であると述べている。さらに,武. まず,知的障害者の余暇保障は法律等で規定さ. 蔵・水内(2009)は,1979年に養護学校義務制へ. れている。国際連合(1975)は,障害者の権利宣. 移行して以後,特別支援学校で高等部まで教育を. 言で,障害者は,すべての社会的活動,創造的活. 受けて卒業し地域で生活する成人の知的障害者が. 動,またはレクリエーション活動に参加する権利. 増加しており,成人知的障害者の生活の質を向上. を有すると規定している。また,内閣府(1993). させる意味からも,生涯にわたる学習・余暇支援,. は,障害者基本法の中で,障害者自立と社会,経. 特に地域参加と余暇活用に関する支援の方向性を. 済,文化その他あらゆる分野の活動への参加の促. 見出していくことが求められると報告している。. 進,また,機会の確保を規定している。. しかし,知的障害者を対象とした余暇支援の領. さらに,余暇保障はQOLの観点から近年ます. 域について,これまでの研究を整理した論文は数. ます注目がされている。R.L.シャーロック(2000). 少ない。そこで本研究では,成人知的障害者の余. はQOLの定義について,適切な食事や安全といっ. 182.

(4) 成人知的障害者の余暇生活における現状と課題. た生活の基本的条件と,余暇活動,地域活動など,. マライゼーションの実現や知的障害者の自立のた. 生活を豊かにする活動とが含まれる,単一の「物」. めにも知的障害者の余暇保障は重要である。また,. に還元できない多面的概念構成体であると述べて. 余暇活動を行うサービスや社会制度が求められて. いる。さらにQOLは,すべての人にとって大切で,. いることが分かる。. すべての人に同じように捉えられるべきである が,障害のある人は普通ならば得られるはずの機 会や状況の多くから,排除される危険があると指. Ⅲ 知的障害者の余暇実態. 摘している。また,村中・笠原・五十嵐・斉藤・. 渡辺(1983)は,精神遅滞者に対する余暇実態. 宇田川・村木・吉沢(2001)は,養護学校などを. 調査を行っており,精神遅滞者の場合,友だちと. 卒業し,地域で生活している青年にとって,休日. の付き合いが少なく,常に家族によりかかってい. をいかに過ごすかは,質の高い生活を送る上で重. て家族以外の交際やスポーツを含めたレジャー活. 要であると述べている。. 動が際立って低調であることを報告している。さ. さらに, 「障害のある人々が社会の構成員とし. らに,テレビ漬けになっていたり,お金の使い方. て地域の中で共に生活を送ることができる」とい. が分からず移動能力が無かったりするという現状. う,ノーマライゼーションの理念の浸透により,. を指摘している。また,渡部・野波・海塚・南出. 地域社会における知的障害者の充実した生活の実. (2000)は,障害児と健常児の余暇生活の現状を. 現も求められている。於保(2004)は,デンマー. 調査し,障害児群では「自分ひとりで過ごすこと. クのバンク・ミッケルセンを紹介する中で, 「ノー. が多く,寂しそうである」という回答が有意に多. マリゼーションは知的障害者の住宅,教育,労働,. いこと,また「余暇の一部を地域社会や学校に任. 余暇条件をノーマルにすることである」とし,さ. せても良い」という回答が有意に多いことを明ら. らには「ノーマルな生活条件」として,①住居,. かにしている。由谷・渡部(2007)は,知的障害. ②仕事,③余暇の条件があることを述べ,知的障. 児の夏季休業中における余暇支援に関して,保護. 害者における余暇の重要性を指摘している。大. 者へニーズ調査を行い,夏季休業の過ごし方につ. 石・唐岩・高橋・馬場(1999)は,ノーマライゼー. いて,「困っている」の回答が半数以上であるこ. ション理念の本格的かつ広範な実現のためには,. とを報告している。さらに,細谷(2011)は,長. 一面において過不足のない専門支援サービスプロ. 期休業中における知的障害児の余暇実態調査を. グラムと,これを実行させ促進するための法律制. 行った結果,公共施設の利用頻度が低いなど地域. 定,社会資源及び制度の完備が肝要であると指摘. 活動への参加頻度が少ないこと,母親と過ごすこ. している。. とが多いため友だちと遊ぶ環境がないことを明ら. 福祉士養成講座編集委員会(2007)は,障害者. かにしている。. の日常生活は他の市民と同様に成り立ち,それぞ. また,これらの実態は学齢期の知的障害児のみ. れの支援があってこそ,当たり前のノーマライ. ならず,学校を卒業した知的障害者にも同様のこ. ゼーションである地域での自立生活が可能である. とが指摘されている。武蔵・高畑・平野・安達. と述べている。その中でも特に「ウィークエンド. (1997)は,知的障害者の地域生活援助のための. とアフターファイブ活動への支援」が明確に分化. 生活実態調査を行い,家庭生活についてまとめて. される必要があると述べている。. いる。その中で障害者本人の過ごし方では,受け. 以上のように,QOLの向上は障害の有無に関. 身的に目的性が低いまま時間を消費していること. わらず,全ての人にとって重要なことであり,知. が多いと指摘しており,余暇を前向きに過ごして. 的障害者にとって余暇保障はQOLの向上に向け. いくためには,本人の意欲・関心・好奇心を掻き. 重要な課題であるということができる。また,ノー. 立て,身体的活動性があり,日常の生活で容易に. 183.

(5) 鈴木 洸平・細谷 一博. 取り組める内容を用意することが求められると述. 後の課題としては,ハード面では地域の施設やス. べている。また,全日本手をつなぐ育成会(2004). ポーツ・文化施設へのアクセス,ソフト面として. は,知的障害児・者の余暇活動に関するアンケー. 家族以外のボランティア等の援助者の関わりを保. ト調査を行い,休日の余暇の多くが家族に委ねら. 障していく必要があると述べている。また,松本・. れていたり,テレビに集中し余暇の選択肢が限ら. 郷間(2013)は,軽度知的障害者の学校卒業後の. れていたりする現状を明らかにしている。さらに,. 余暇について実態調査を行い,地域のサークル・. 「障害のある人が参加しやすい事業(プログラム). スポーツクラブ・行事やイベントなどに「よく参. を増やす」ことや,仲間が少なく外出しないこと. 加する」人は4.9%, 「時々参加する」人は23.2%,. から「気軽に集まる場所や友達を作る機会を多く. 全く参加しない人は72.0%であったと報告してい. する」 ことが求められていることを報告している。. る。また,一か月にどの程度外出しているかとい. 細谷(2007)は,知的障害児・者を対象に余暇実. う外出の様子では「一人または家族で出かける」. 態調査を行い,学生群,社会人群共に平日,休日. ことが多く,「サークル活動への参加」や「友人. を問わず,テレビの頻度が最も多いことを明らか. との外出」が少なかったことを報告している。さ. にしている。また,余暇活動において,保護者の. らに今後の課題として,障害者に対して,各地域. 負担が増加したという回答がみられたことから,. で余暇活動への働きかけや,活動ができる条件・. 余暇の充実に対して負担と感じている保護者も存. 環境などを充実させていく必要性が感じられると. 在することを考慮する必要があると述べている。. 述べている。. 丸山(2004)は,重度知的障害者の余暇保障につ. 以上のことから,知的障害者の余暇実態として,. いて課題を整理し,母親が子どもの介護を担い余. 家にひきこもりがちであり,友だちが少なく,家. 暇支援もおこなうなど,母親の身体的・精神的負. 族とのかかわりに限定されている現状があり,そ. 担が大きい現状があることを指摘している。また,. の問題が学齢期から学校卒業後まで続いているこ. 武蔵・水内(2009)は,学校を卒業した知的障害. とがわかる。また,子どもの余暇に関して負担を. 者を対象に,生活実態アンケート調査を行い,地. 感じている保護者が多いことがわかる。. 域行事への参加の項目で, 「参加していない」が 7割を超える現状を明らかにしている。さらに, 休日に保護者以外で一緒に過ごす人では「いない」. Ⅳ 知的障害者の余暇支援. が全体の半数を越え,地域での人間関係及び生活. 1.余暇スキル獲得への支援. 範囲が限られ,保護者に依存している者が多い現. 笠原・村中(2003)は,障害者の場合は「障害. 状を報告している。南條・新沼(2009)は,知的. に基づく種々の困難」のために情報収集や資源の. 障がい児(者)を対象とした余暇活動に関する調. 活用が困難な状況にあり,より多様な余暇活動に. 査を行い,知的障がい児(者)では4割程度で余. 参加するためには様々な支援が必要となると述べ. 暇活動をする際の友人が「いない」と回答してい. ている。また服部(2002)は「家の外で,仲間と. ると報告している。また,地域における余暇活動. 動的に」活動する余暇を保障しなければならない. に参加する機会の有無が人間関係の形成に影響を. と考察している。. 及ぼし,逆に人間関係の形成が難しいことから,. しかし,精神遅滞者は仮に余暇手段があっても,. 余暇活動に参加する機会の有無に影響を及ぼすと. これをうまく使いこなせない実情がある(渡辺,. 指摘している。さらに,身近な支援組織の有無で. 1983)ことからも,知的障害者が自ら地域での余. は「ない」が約7割であり,保護者にとって知的. 暇活動を積極的に行うことは難しい現状があると. 障がい児(者)の余暇活動を支援する組織が少な. 考えられる。さらに,鈴木・片岡(1997)は知的. いと感じられていることを明らかにしている。今. 障害者の外出行動の実態把握と阻害要因の分析を. 184.

(6) 成人知的障害者の余暇生活における現状と課題. 行い,知的障害者の能力が外出行動に反映してい. 賞より,スポーツ,工芸などのより能動的なスキ. ない現状があり,地域の受容環境が未成熟である. ルを持つほうが望ましいとされている。また,ゲー. と報告している。. ムや集団で行うレジャーでは,最低限のルールを. このことから,「家の外で,仲間と」活動する. 学習すること,あるいは部分的参加ができること. 余暇を保障していくためには,公共施設などの地. が重要であると報告されている。. 域にある余暇資源を上手く活用できるように知的. 渡部・山本・小林(1990)は,発達障害児を対. 障害者の能力を活かす取り組みを行い,社会参加. 象とした買い物スキル形成の指導を行い,地域社. スキルを育てていくことが必要であるといえる。. 会での生活に関するサバイバルスキルでは,地域. また同時に,知的障害者が地域に参加していく際. の人々との直接的な接触が必要とされ,発達障害. の周りの理解を求めていくことも必要である。. 児・者自身が社会に対してより能動的に働きかけ. 余暇支援において,地域の中で知的障害者を対. ることが求められると述べている。また,①シミュ. 象としたスキル訓練が報告されている。Snell and. レーション場面での各行動レパートリーの形成,. Browder(1986)は,発達障害を持った人々が家. ②現実場面での遅延プロンプト法,③正の練習試. 庭内や地域社会で豊かな生活を営むために必要と. 行,④連鎖の最終環からの行動形成法を用いるこ. される地域生活技能について,様々な研究がなさ. とによって買い物スキルを形成したと報告してお. れてきていると報告している。また,Nietupski. り,訓練場面やスキルを教える際のプロンプトや. and Ayres and Nietupski(1983)は,余暇スキル. 指導の構成に言及している。また,渡部・山口・. についての研究について整理し,訓練研究におい. 上松・小林(1999)は自閉症児を対象に買い物ス. て,①環境先行介入フェーズ,②環境先行に加え. キル形成の指導を行い,その中で生活の場面に訓. て途中介入するフェーズ,③仕事分析的訓練アプ. 練されたスキルが般化することによって生活環境. ローチフェーズ,④調整と般化フェーズがあると. の種類や頻度を拡大することができると述べてい. 報告している。Hill and Wehman and Horst(1982). る。そのような般化を目指すスキル訓練法として,. は,知的障害のある人にピンボール機で遊ぶスキ. 「代表例教授法」というものがある。代表例教授. ルを教え,対象者の努力によるスキルの獲得によ. 法では,買い物スキルの他に料理スキル(井上・. り,地域で生じる不適切な社会反応が減少したと. 井上・小林,1996)の指導も行われている。この. 報告した。さらに,Bambara and Ager(1992). ように,生活場面の般化を目指した訓練により,. は,地域における知的障害者の余暇活動において. 知的障害者の地域参加を進めていることが分か. 「セルフスケジュール」を用いて支援を行った。. る。そのような指導や支援が知的障害者の余暇を. そこで, 「セルフスケジュール」が増大した選択. 充実するための手法として確立されている。. 機会に備える上で重要な役割を担うということを. 知的障害者の社会資源利用を支援するツールと. 明らかにしている。. して,「お助けブック」を活用した研究も行われ. このように,知的障害者の余暇に関して,地域. ている。武蔵・寺田・水巻・伊藤・小野・藤井. 資源を利用する指導のプログラムを開発し,その. (2003)は,知的障害者が地域で生活するための. 成果が多く報告されている。. 生活技能として「社会資源利用技能」を取り上げ,. さらに,社会参加に必要なものにサバイバルス. 知的障害者の社会資源の利用を支援し,地域生活. キルがある。角張(1985)によると,サバイバル. 支援教室として「あそぼっと教室」を試行してい. スキルとは,それが獲得されるとその人がほとん. る。その中で,出かける場所や活動に関する手順,. ど制限されることのない社会参加が可能となるも. 交通機関を利用する手順を絵・写真や短い文章で. のと定義されている。サバイバルスキルの中には,. 説明した「お助けブック」を活用し,その意義や. レジャーが含まれており,特に,テレビや音楽鑑. 課題を検討している。. 185.

(7) 鈴木 洸平・細谷 一博. これらのことから,知的障害者個人を対象とし. る試みや年齢相応の地域活動をにらんだ公共施設. た余暇支援の研究では,生活支援プログラムを計. の利用や郊外活動の展開を目指していたと報告し. 画し,社会参加スキルを身につけさせるものが主. ている。. 流であるといえる。また,生活場面への般化を最. 以上の取組のように,余暇支援団体を通じて知. 終目標として様々な指導法を用いて研究を進めて. 的障害者が地域とのかかわりを持つ機会を得るこ. いることが明らかとなっているといえる。. ともある。このことから,余暇支援団体の取組み が知的障害者の地域とのかかわりの乏しさを改善. 2.余暇支援団体による取り組み. する一助になっていることがわかる。. 余暇支援団体による活動は,全国各地で行われ ている。桜井(2003)は,障害者を支える福祉施 策の一つとして行政が障害者の余暇支援を目的と. Ⅴ 知的障害者の余暇における課題整理. した青年学級を組織していると報告しており,ま. 1.親以外との活動の保障. た,めだかふぁみりぃ(2002)のように住民が特. 東京都知的障害者育成会編(1996)は,知的障. 定非営利法人(NPO)を設立し,就労,生活,. 害者が地域で暮らすためには,親亡き後も自分の. 余暇の一連の支援を行う中で,カルチャースクー. 生まれ育った地域で,豊かな暮らしが保障されて. ル等の具体的活動を実施している場合もある。ま. いることこそがノーマライゼーションの理念にか. た大学のボランティアを通して行われている余暇. なうものであり重要であると報告している。さら. 支援活動もある。三原(2011)によると,学生達. に於保(2004)は,10代の知的障害児の保護者を. のボランティア活動が地域の人々の生活支援に貢. 対象に,子どもの余暇活動について調査した結果,. 献し,地域住民の福祉に貢献することとなると報. 卒業後の余暇活動について期待することで親以外. 告されており,さらに大学で開催したビーチバ. の人との活動をしてほしいことを挙げていると報. レーボール・食事交流会が障害者家族の余暇支援. 告している。西村(2008)は,安心して知的障害. の一部やストレスの軽減に貢献できたのではない. のある人が外に出る場所や,人とのつながりが少. かと述べている。また,交流会を通して,大学が. ないことを挙げ,地域で生きるということは, 「親. 地域から孤立した機関ではなく,地域住民の障害. が亡くなった後も」地域で生きていくということ. 者家族にとって身近な存在となり,かつ学生に対. であり,親や兄弟以外のサポートをいろいろな場. しては,地域の障害者家族の問題を考えるきっか. 所で受けることができる社会を理想とすると述べ. けの場となったことを示していると報告してい. ている。また,守田・七木田(2004)は,知的障. る。さらに,西村(2008)は「ちょこさぽ」とい. 害者のスポーツ活動に対するニーズ調査を行い,. う活動を報告している。「ちょこさぽ」とは,過. 保護者は親の付き添いがなくとも参加可能な活動. 剰なサポートをしすぎないような自然な関係で,. の機会を求めていることを明らかにしている。さ. 学生と障害のある人が活動を共にするというもの. らに武蔵・寺田・水巻ら(2003)は「あそぼっと. である。他にも,木村・志村・斎藤(1999)は,. 教室」を開き,その中で,保護者への事後アンケー. 障害のある子どもたちへの夏季休業中の余暇支援. トとして対象者が保護者以外の人と出かけること. であるサマースクールの活動を提供している。活. に対し,どの保護者からも肯定的な考えが示され. 動内容について,サマースクールは学校活動の延. たと報告している。. 長ではなく,学校から離れた地域活動であると述. これらのことから,親亡き後の知的障害者の地. べている。また,木村・渡邊・斎藤・志村(2000). 域での暮らしを見据えて,余暇活動を保障してい. も,サマースクールは,地域での余暇活動のひと. くことが求められているといえる。. つである意識を強く持ち,日常でも繰り返しでき. 柴山・蛯谷(2004)の研究では,余暇活動の場. 186.

(8) 成人知的障害者の余暇生活における現状と課題. において重要なポイントであることの一つに,親. アをその地域の住民から募るのが望ましいが,学. が安心して任せられること,子どもが安心してく. 生ボランティアと共に交流プログラムを意図的に. つろいでいられる場が必要であると指摘してい. 作り出すことによって,まずは地域の人々を対象. る。さらに,地域における余暇サービスが充実し. に障害者の理解を求めていくことが必要であると. ていないために,親と密着した生活を送ることに. 述べている。. なり, 自立の機会を奪うことへとつながると述べ,. 以上のように,支援者が友達として余暇活動を. 地域のサービスという第三者が間に入ることで余. 共にすることが期待されている場合も存在する。. 暇活動が家族の負担を軽減し,家族の時間を保証. そして,送迎など親の支援を借りずに将来を見据. することになると指摘している。また,余暇サー. えた活動作りをし,地域で交友を広げ,継続的に. クルや公共施設を利用する場合には,送迎の問題. 仲間と活動する余暇を保障していくことが求めら. を解決するガイドヘルプサービスにより,保護者. れている。. の負担を減らすことが求められていると報告して いる。さらに,平井(2006)は, 「交際の広がり」. 2.スポーツ活動の保障. が知的障害者には希薄であり,生きがいの生成の. 内閣府(2011)は,スポーツ基本法を制定して. ためにも「交際の広がり」をもたらす支援が必要. おり,スポーツは,障害者が自主的かつ積極的に. であると指摘している。. スポーツを行うことができるよう,障害の種類及. 以上のように,保護者以外との余暇活動を保障. び程度に応じて必要な配慮をしつつ推進されなけ. するためには,友人や支援者の存在が必要不可欠. ればならないと規定している。. となる。しかし,宮本・大野(1996)によると,. 金子・南條(2007)は,知的障害児・者のスポー. 養護学校の卒業生は,健常者に比べて友達関係が. ツ・レクリエーション活動と生活の質(QOL). かなり少ないことが報告されている。さらに,立. に関する実態を分析し,数多くのスポーツ・レク. 田・鈴木・郷間・中市・牛山・川合(2013)は,. リエーション活動を経験することがその後の活動. 成人知的障害者のQOL評価についての調査を行. への参加意欲に影響を及ぼし,スポーツ・レクリ. い,余暇において何らかの所属や友人等交流する. エーション活動がライフスタイルを確立すること. 相手をもつ人は限られていると報告している。渋. を報告し,スポーツ活動が知的障害者のQOL向. 谷・今野(2006)は,知的障害者と健常者の友達. 上に寄与することを明らかにしている。さらに,. 関係について調査し,保護者へのアンケート結果. QOLを向上するための活動は,知的障害児(者). において,ボランティアとして出会った人が活動. 自身のニーズに基づいたものでなければならない. での出会いを重ねるうちに友達関係へと発展する. と述べている。さらに,奥田・井上・松尾(2000). 可能性があると半数が考えていることを明らかに. は,学校を修了した障害者において,地域でのス. している。よって,保護者が友達関係の実現に期. ポーツ活動への参加は限られており,本人の動機. 待を抱いていることが反映されていると示唆して. づけを高めるような年齢相応のスポーツ活動の選. いる。また,友だちの存在は,知的障害者にも当. 択肢が保障されているか否かという点について考. 然必要であり,ノーマライゼーションの実現上も. えていく必要があると述べている。また,動機づ. 大切であると述べている。大山・増田・安藤 (2011). けを高めるような環境(年齢相応の活動参加機会. は,知的障害者のスポーツ活動における大学生ボ. の少なさ)を問題としており,学校教育を修了し. ランティアに対する保護者の意識をインタビュー. た障害者に対して,興味と関心を持てるスポーツ. 調査した結果,保護者は大学生ボランティアを,. 活動の機会を提供していくことが重要であると指. 友人的な関わりができる存在と認識していたと報. 摘している。奥住・國分・北島(2011)は,知的. 告している。服部(2002)は,本来はボランティ. 障害特別支援学校高等部生徒の現在および卒業後. 187.

(9) 鈴木 洸平・細谷 一博. の余暇活動について調査し,卒業後,有意に行い. している。. たいと考えている活動の中にスポーツがあると報. 以上のように,学校を卒業した知的障害者にお. 告している。このことから,学校卒業後の知的障. いて,地域でのスポーツ活動の保障が求められて. 害者自身のニーズや興味・関心に基づいたスポー. いる現状に対し,活動が実施されていない地域が. ツ活動の保障が余暇の充実やQOLの向上につな. 多くあったり,支援者がいないためスポーツ施設. がるといえる。. を利用できないといったりした課題があることが. 厚生労働省(2009)は政策レポートにおいて,. 明らかとなっている。. 障害のある人が安心してスポーツを行うには,身 近な地域でスポーツを自己選択できる環境とし て,特に公共体育施設の円滑な利用が重要である. Ⅵ おわりに. とし,すべての公共体育施設でハード面,ソフト. 本研究では,成人知的障害者の余暇に関するこ. 面が障害のある人に適した環境になること,障害. れまでの研究を概観し,成人知的障害者を対象と. 者スポーツに特化した用具が常備されていること. した余暇の現状と課題及び支援の実際を明らかに. 等,より身近な地域でスポーツに親しめる環境を. することを目的とした。余暇の実態としては,活. 整備することが重要であると報告している。この. 動がテレビなどに集中しているため,自宅にひき. ことから,知的障害者のスポーツ活動の実施にお. こもりがちであることや,友だちが少なく地域の. いては,彼らの居住環境にある公共体育施設の利. 行事等への参加が乏しいことが明らかとなった。. 用が重要であるといえる。また,文部科学省(2012). 知的障害者の余暇支援の実際としては,知的障害. はスポーツ基本計画の中で,年齢や性別,障害等. 者を対象とした生活支援プログラムを計画するこ. を問わず広く人々が関心,適正等に応じてスポー. とで,地域参加のスキルを身につけ,余暇を充実. ツに参画することができる環境を整備することと. させていることが多いと示唆された。また,知的. 規定しており,さらに平成26年度より,全国障害. 障害者の能力を生かすための支援や余暇支援団体. 者スポーツ大会などのスポーツ振興の観点が強い. の存在により,知的障害者の余暇において地域参. 障害者スポーツ事業が厚生労働省から文部科学省. 加が進むということが報告されている。知的障害. に移管され,スポーツ政策として一体的に推進し. 者の余暇における課題を整理したところ,「親亡. ていると報告している。. き後」を見据え,地域で仲間や支援者とともに活. しかし,文部科学省(2014a)が行った地域に. 動するような余暇の過ごし方が求められているこ. おける障害者のスポーツ・レクリエーション活動. とが明らかとなった。さらに,地域でのスポーツ. に関する調査では,大会,教室,講習会の3事業. 活動の乏しさが指摘されており,活動を実施する. をすべて実施しているのは都道府県4割,市区1. 団体や活動をサポートする支援者が求められてい. 割であるという現状を明らかにしている。また,. ることが明らかとなった。. 文部科学省(2014b)が行った障害者のスポーツ. 長年にわたる知的障害者の余暇に関する問題を. 参加における安全確保に関する調査では,地域ス. 解決し,知的障害者が地域の中でかかわりを増や. ポーツ施設で,障害者の利用が以前に比べて「増. していくためには,親以外とのかかわりがあり,. えている」と回答した施設が55%であり,「増え. 地域を拠点としている自立した余暇支援活動が求. ていない」と回答した施設が35%であったとし,. められているといえる。. さらに障害者の利用をやむを得ず断った事例とし て,地域スポーツ施設においては,「ある」が 30%であり,断った理由としては,「介助者がい ない」 , 「安全確保ができない」が主であると報告. 188.

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参照

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