糖尿病を有するダウン症者への余暇支援
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 糖尿病を有するダウン症者への余暇支援 鈴木 洸平・細谷 一博* 北海道余市養護学校 *. 北海道教育大学函館校 障害児臨床研究室. Supporting Leisure Activities of Adults with Down Syndrome Who are Diabetic: Support for Sports Activities SUZUKI Kohei and HOSOYA Kazuhiro* Hokkaido Yoichi School for Handicapped *. Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 糖尿病を有する者に対する運動療法が指摘されており,またダウン症児において糖尿病の合 併症がみられることがあると報告されている。知的障害者において余暇生活の乏しさが課題と なっており,具体的に活動の少なさや家族に頼り切っている現状が挙げられている。そのため 知的障害者の余暇生活には,親亡き後における活動相手の保障や自己決定に基づいた活動が求 められている。本研究は,成人期知的障害者を対象に自主運営を目指した余暇支援活動に参加 した糖尿病を有するダウン症者の参加状態を整理し,成人期知的障害者を対象としたスポーツ 活動を通した余暇支援の必要性について検討することを目的とした。その結果,対象者におい て実践を重ねるごとに仲間へのかかわりが増え,他者を意識しながら活動を楽しむ様子が見ら れた。また,自発的な活動に関する意見や自己選択をする場面が見られた。以上のことから, 成人期知的障害者にとってスポーツ活動を通した余暇活動の機会は,コミュニケーションや定 期的な運動の機会,休日の充実等の促進につながり重要であることが明らかとなった。 Key Words:糖尿病 ダウン症 余暇支援. Ⅰ はじめに. が少なかったり,働きが悪かったりすることによ りおこる病気と示されている。また,様々な療法. 全国特別支援学校病弱教育校長会(2009)では,. がある中で,運動療法は1型,2型にかかわらず. 糖尿病は血糖をコントロールしているインスリン. 糖尿病の重要な療法であるとされている。このよ. が何らかの原因により,分泌されなかったり,量. うに,糖尿病を有する者に対する運動療法の有効. 183.
(3) 鈴木 洸平・細谷 一博. 性が指摘されている。しかしながら(山根(2003). サービスという第三者が間に入ることで余暇活動. は,ダウン症児において糖尿病を合併することが. が家族の負担を軽減し,家族の時間を保証するこ. 認められることを指摘している。. とになると指摘している。また,鈴木・細谷(2016). ダウン症は,短頭,偏平な顔,眼烈斜上,内眼. は,知的障害児・者の保護者を対象に余暇支援の. 角贅皮,鞍鼻などの特有な顔貌,皮膚,絞理,著. ニーズ調査を実施した。その結果,知的障害児・. 明な筋力低下などにより安易に診断ができる。さ. 者の趣味として運動があるものの,日常的に運動. らに,療育においては,長期的な生活の質の向上. をする機会が少ないことを明らかにした。さらに,. をめざして,合併症の治療と訓練や教育を考えて. 友人などと運動やスポーツといった体を動かすこ. いくことが重要である(松石,2010)。. とを通じて,日常生活及び余暇を充実させていく. さらにダウン症児においては,年齢の経過とと. ことは知的障害児・者にとって課題であることを. もに肥満傾向が指摘されており,12歳以上になる. 指摘している。余暇活動におけるスポーツ活動の. と肥満が顕著に認められると指摘されている(海. 実施において守田・七木田(2004)は,知的障害. 老子,2008) 。また,伊藤・武田(2013)は,ダ. 者のスポーツ活動に対するニーズ調査を行い,保. ウン症をもつ保護者を対象とした意識調査から,. 護者は親の付き添いがなくとも参加可能な活動の. 肥満を予防するためにもダウン症児童生徒の余暇. 機会を求めていることを明らかにしている。. 活動を今以上に充実させ,生涯にわたって体を動. 以上のように,保護者以外との地域での余暇活. かしたり,活動したりする場が必要であることを. 動を保障するためには,友人や支援者の存在が必. 指摘している。さらに関戸(1998)は,中学校特. 要不可欠であり,スポーツ活動に対する要望が高. 殊学級に在籍する知的障害児の余暇指導につい. いことが明らかとなった。. て,教師の意向と保護者の要望の比較から知的障. 知的障害者が充実した余暇を過ごすためには,. 害児は受け身的に目的のないまま,時間を過ごし. ボランティアなどの支援以外に知的障害者本人に. ていることを明らかにしている。. 対する自己決定の支援が重要であることが指摘さ. 全日本手をつなぐ育成会(2004)は,学校を卒. れている。西村(2005)は,知的障害者の自己決. 業した知的障害者の余暇活動に関するアンケート. 定が「障害者が地域で自立して暮らしていく」と. 調査を行い,学校卒業後の知的障害者では休日の. いう自立生活の前提条件としてあると述べてい. 過ごし方において,多くが家族に委ねられていた. る。また,知的障害児・者には,自分は何をした. り,テレビに集中し,余暇の選択肢が限られてい. いのか,それを実現するためには,どのように援. たりする現状を明らかにしている。また,仲間づ. 助してほしいかということを他者に伝えることが. くりが急務の課題であり,人とハードとソフトの. 苦手な人が少なくないため,周りに彼らの意思が. 問題があることを指摘している。このように,成. うまく伝わらず,結果的に周りからの一方的な解. 人期知的障害者の余暇生活には,活動の少なさや. 釈や過干渉,過保護から逃れることが難しくなる. 家族に頼りきっている問題があるといえる。. と指摘している。また,保積(2007)は,知的障. 柴山・蛯谷(2004)は,青年・成人期の障害を. 害者の本人活動について整理し,支援者には,知. 持った人の余暇活動を通して,余暇活動の場にお. 的障害を持つ人々の参加と自己決定を支え,当事. いて重要なポイントであることの一つに,親が安. 者主体の活動を進めていくことが求められ,自己. 心して任せられること,子どもが安心してくつろ. 決定の困難な人の場合には,それを支える人や周. いでいられる場が必要であると指摘している。ま. りの人が,いかに自己決定を支える支援ができる. た,地域における余暇サービスが充実していない. かが問われると述べている。. ために,親と密着した生活を送ることになり,自. 余暇活動における自己決定について, 坂口 (2003). 立の機会を奪うことへとつながると述べ,地域の. は, 生涯にわたる継続的な質の高い余暇活動を行っ. 184.
(4) 糖尿病を有するダウン症者への余暇支援. ていくためには,自己決定を十分に尊重しながら,. ることとした。. 適切な援助をしていく人々の継続が必要と指摘し. 親から離れたスポーツ活動を目標とし,参加者. ている。また,鈴木(2004)は,知的障害者の自. の自主運営によって活動を進行する中で,筆者. 己決定支援について考察し,生活に関する希望を. (MT)及び支援者(ST)が活動を支援した。自. 伝えられるような人間関係や表現の機会を作る必. 主運営支援とは,参加者による主体的な余暇活動. 要があると述べている。さらに,小笠原・菅野. (自ら活動を選び遂行し,振り返る)を筆者(MT). (2015)は,知的障害者の日常生活活動に関する. と支援者(ST)で支援することとした。また,. 研究の中で,支援者の在り方が知的障害者の自己. 実践の際に明らかとなった支援や課題をもとに次. 決定に大きな影響を及ぼすと報告している。. 回の活動を進行することとした。各活動の前には,. 以上のことから,知的障害者の自己決定は質の. 話し合いにより決定した活動の日時・持ち物・内. 高い余暇活動を行う上で重要であるといえる。し. 容等をまとめた「活動のお知らせ」を参加者の自. かし,自己決定は知的障害者自身では難しい場合. 宅へ郵送した。. があり,支援者のかかわりが求められる。. 評価は,①アイデアの発言/活動の達成,②活. そこで本研究では,成人期知的障害者を対象に. 動への参加,③活動の満足度,④集団の意識の指. 自主運営を目指した余暇支援活動に参加した糖尿. 標をもとに,参加者の自己評価,支援者による参. 病を有するダウン症者の参加状態を整理し,糖尿. 加者の個別評価を行った。自己評価の基準は, 「3:. 病を有するダウン症者に対するスポーツ活動を通. よくできた(すごく楽しかった)」 「2:できた(ま. した余暇支援の必要性について検討することを目. あまあ楽しかった)」1:「少しできた(少し楽し. 的とする。. かった)」の3段階とし,支援者による評価基準は, 「5:よくできている」 「4:少しできている」 「3:. Ⅱ 方 法. どちらでもない」「2:あまりできていない」「1: 全くできていない」の5段階である。. 1)対 象. 各活動で見られたI児の参加状態についてエピ. 糖尿病を有する30歳代のダウン症者(I児)と. ソードを記録して実践報告に記録した。. した。I児はスペシャルオリンピックス日本・北. また,各スポーツ活動の実施においては,参加. 海道函館プログラムに参加しているアスリート. 者の体力やその日の体調などを考慮し,適度な休. で,本実践の呼びかけに応じて参加を希望した知. 憩と水分補給を心掛けた。. 的障害者であった。保護者からの情報によると, 糖尿病の状態としては,毎月1回の通院及び1日 1回,食事後に服薬をしている。現在は低血糖状 態になることは殆ど見られず,医師からの運動制. Table1 活動スケジュール 回. 実施月. 限はない状態である。. 第1回. 6月. 2)期 間. 第2回. 7月. 第3回. 8月. 3)手続き. 第4回. 9月. 支援者はスペシャルオリンピックス日本・北海. 第5回. 10月. 第6回. 11月. 201×年6月から11月の間,月一回で実施した。 活動スケジュールをTable1に示す。. 道函館プログラムに参加しているボランティアに 声をかけた結果,5名の支援者が集まった。支援. 活動内容 活動の趣旨説明・団体名の決定・今後の計 画立案・振り返り 海水浴(ビーチバレー/水遊び/鬼ごっこ 等)・振り返り・次回の確認 登山・振り返り・次回の確認 サッカー・大縄跳び・振り返り・次回の確 認 野球(バッティングセンター)・振り返り・ 次回の確認 ボウリング・振り返り・次回の確認. 者の活動への参加は,支援者の都合により依頼す. 185.
(5) 鈴木 洸平・細谷 一博. 2)第2回実践. Ⅲ 結果と分析. ⑴ 方 法. 1)第1回実践. 日時は7月31日(日)の12時15分から14時15分. ⑴ 方 法. とし,N海水浴場で活動を行った。支援者は,. 日時は6月19日(日)の13時から15時とし,H. MT,ST2,ST3の3名であった。第2回実践で. 大 学 の 一 室 で 行 っ た。 支 援 者 は,MT,ST1,. は,大学に集合した後,バスに乗りN海水浴場ま. ST2の3名であった。第1回実践は,MTから参. で移動した。活動場所へ到着し荷物を整理したと. 加者へ活動の趣旨を伝え,参加者が活動に対する. ころで,活動を開始した(ビーチバレー,水遊び,. 意義を把握する目的のもと行った。まず,参加者. 鬼ごっこ,だるまさんが転んだ)。活動後,着替え,. 全員で活動を考えるという趣旨のもと,グループ. 活動の振り返りと役割の分担を行い解散した。. 名を話し合いにより決定した。次に,活動内容に. ⑵ 結 果. ついて参加者から意見を求め,多数決や話し合い. 第2回実践におけるI児は,活動開始の30分前. により全日程の活動を決定した。最後に,活動の. には集合場所へ到着しており,団体へ参加する積. 詳細について,持ち物や活動場所などを話し合い. 極性が見られた。ビーチバレーでは,強風のため. により決定した。. 活動が思うようにできず,不満である様子がうか. ⑵ 結 果. がえた。鬼ごっこの活動では「海に入るのは足ま. 第1回実践においてI児は「グループ名を考え. で」というルールで行ったが,肩までつかるほど. る」ことや「やりたい活動を提案する」ことなど. 深いところまで入っていた。また,今後の活動に. を行った。 I児は宿泊での活動を希望していたが,. おける役割の選択および決定を行ったときにI児. 行って帰ってくることができる活動であり,日曜. はプリントの配り係を選択した。第2回の活動評. 日の活動であるため断念することとなった。活動. 価をTable3に示す。その結果,I児は「活動へ. 案が多く出る中でI児は相手の意見を受け入れた. の参加」は「2:できた」,「活動への満足度」で. り,やりたい活動について何故やりたいのかの理. は「1:少しできた」と評価が下がったが,支援. 由を述べたりする場面が見られた。さらに,I児. 者2名はおおむね高評価であった。. は活動の詳細や日程に関して発言し,参加者同士 Table3 第2回の活動評価. の話し合いを進めるきっかけとなることもあっ た。第1回の活動評価をTable2に示す。その結果, I児は活動への参加は「2:できた」の評価であっ たが,支援者2名は「5:よくできている」と高 評価であった。. 発言/活動の達成 活動への参加 活動の満足度 集団意識. I児. ST1. ST2. 3 2 1 3. 2 5 5 5. 5 5 5 5. ※)自己評価は3段階,支援者評価は5段階で実施. Table2 第1回の活動評価. 発言/活動の達成 活動への参加 活動の満足度 集団意識. I児. ST1. ST2. 3 2 3 /. 5 5 5 /. 5 5 5 /. ※)自己評価は3段階,支援者評価は5段階で実施 ※)「/」は未実施. 3)第3回実践 ⑴ 方 法 日時は8月28日(日)の13時から17時とし,H 山で活動を行った。支援者はMT,ST3,ST4の 3名であった。第3回実践では,大学に集合した 後,電車でH山の麓まで移動し,体操をしてから 活動を開始した。山頂に到着し小休憩をとり,ロー プウェイで下山した。電車で大学まで戻り,活動. 186.
(6) 糖尿病を有するダウン症者への余暇支援. を振り返って解散した。. とりながら楽しむことができていた。活動の中で. ⑵ 結 果. S児に対して名前を呼ぶ様子も見られ,活動を継. 第3回実践におけるI児は,単独でのバス利用. 続していく上で参加者同士の交流が深まっている. による移動で,活動開始の30分前に集合場所へ到. 様子であった。第4回の活動評価をTable5に示. 着していた。活動内では,支援者と交流しながら. す。その結果,I児,支援者ともに高評価であり,. 登山を楽しんでおり,山の虫や植物を見ながら交. 活動状況に大きな問題はみられなかった。. 流していた。また,他の参加者とペアになって移 動する様子も見られ,コミュニケーションを楽し. Table5 第4回の活動評価. みながら活動に参加しているようであった。第3 回の活動評価をTable4に示す。その結果,I児, 支援者ともに高評価であり,活動状況に大きな問 題はみられなかった。. 発言/活動の達成 活動への参加 活動の満足度 集団意識. I児. ST3. ST4. 3 3 3 3. 5 5 5 5. 5 5 5 5. ※)自己評価は3段階,支援者評価は5段階で実施. Table4 第3回の活動評価. 発言/活動の達成 活動への参加 活動の満足度 集団意識. I児. ST3. ST4. 3 3 3 3. 5 5 5 5. 5 5 5 5. ※)自己評価は3段階,支援者評価は5段階で実施. 5)第5回実践 ⑴ 方 法 日時は10月23日(日)の13時から14時30分とし, Iバッティングセンターにて活動を行った。支援 者は,MT,ST4であった。第5回実践では,大 学へ集合し,バッティングセンターへ徒歩で移動. 4)第4回実践. して活動した。バッティングセンターでは回数券. ⑴ 方 法. を購入しブースを利用した。活動後は大学に戻り,. 日時は9月25日(日)の13時から14時45分とし,. 活動の振り返りを行い解散した。. H大学グラウンドにて活動を行った。支援者は,. ⑵ 結 果. MT,ST3,ST4の3名であった。. 第5回実践におけるI児は,午前中のSOに参. 第4回実践では,大学のグラウンドで活動を. 加していたため,昼食を大学で支援者らととって. 行った。準備体操の後に大縄跳びを行い,小休憩. からの活動になった。そのため,昼食を買いに行. をとった。サッカーのための会場準備をし,パス. く際,活動場所を下見しており,活動開始時には. 練習,シュート練習,ゲームを行った。活動後は. 率先して活動場所までの案内を行っていた。I児. 大学へ戻り,活動の振り返りをして解散した。. は昼食を買いすぎたため,バッティングカードを. ⑵ 結 果. 購入することができず,一回ごとの利用券を購入. 第4回実践におけるI児は,大繩跳びを行い,. した。初めは70kmの低速から始めたが,最後に. 数十回跳ぶことができていた。また,サッカーの. は110kmにも挑戦しており,自己決定して活動に. 活動に移る際,支援者が会場の準備をしていると. 取り組む様子が見られた。活動を終えて解散する. I児はボールを自ら取りに行き,参加者同士でパ. 際にはS児のトイレが終わるのを待っており,他. ス練習を始めた。このように,「自主的な活動の. 者を意識する様子が見られた。第5回の活動評価. 開始」が見られた。さらに,支援者に対してパス. をTable6に示す。その結果,I児,支援者とも. 回しの練習を行いたいと伝え,自ら練習メニュー. に高評価であり,活動状況に大きな問題はみられ. を考えることができていた。パス練習では,パス. なかった。. を出す相手の名前を呼び,コミュニケーションを. 187.
(7) 鈴木 洸平・細谷 一博. Table6 第5回の活動評価. 発言/活動の達成 活動への参加 活動の満足度 集団意識. I児. ST4. 3 3 3 3. 5 5 5 5. Ⅳ おわりに 本研究では,成人期知的障害者を対象に自主運 営を目指した余暇支援活動に参加した糖尿病を有 するダウン症者の参加状態を整理し,糖尿病を有. ※)自己評価は3段階,支援者評価は5段階で実施. するダウン症者を対象としたスポーツ活動を通し た余暇支援の必要性について検討することを目的. 6)第6回実践. とした。. ⑴ 方 法. 第1回実践では,I児は活動に対する意見を述. 日時は11月27日(日)13時30分から16時30分と. べ,積極的な参加をしていたと考えられる。また,. し, Sボウリング場にて活動を行った。支援者は,. 他者の意見を受け入れていたことから,集団を意. MT,ST1,ST2,ST3,ST4であった。第6回実. 識して活動に参加していたことが窺える。. 践では,大学に集合し,徒歩でボウリング場へ移. 第2回実践では,活動の30分前に集合場所へき. 動し活動を開始した。まず,各自が会計を済ませ. ていたことから,活動を楽しみにしていたことが. てから2ゲームを通して行った。ゲーム終了後,. 窺える。また,予定していたビーチバレーが思う. 小休憩を兼ねて軽食をとった。活動後には活動の. ようにできなかったことに不満を示していたが,. 振り返りをして大学へ移動し,解散した。. 活動の見通しを持っていたために,活動内容に対. ⑵ 結 果. して期待していたと考えられる。. 第6回実践におけるI児は,集合時間より早め. 第3回実践においても,集合時間より早く来て. に到着しており,参加者であるO児と談笑してい. おり活動を楽しみにしていたことが窺えた。また,. た。I児はもともと,会場の場所を知っていたた. これまでの活動では支援者へのかかわりが多かっ. め案内の支援は必要なく,自主的な移動により活. たものの,参加者同士で話をするなど関わり合い. 動が開始された。移動中にはチーム決めに関する. が見られた。. 希望がI児から出され,その通りにチームを編成. 第4回実践では,I児の発信から仲間同士で自. した。始球式では,I児とK児が前に出ることを. 発的に活動を開始することが見られた。また,練. 希望し,じゃんけんでI児が行うこととなった。. 習では相手の名前を呼びコミュニケーションをと. じゃんけんで決める方法も,I児らの話し合いか. りながら活動を楽しんでいた。このことから,活. ら生まれたものであった。ゲーム終了後はパー. 動を重ねるにつれ周りのメンバーへの信頼感が増. ティールームへ移動し,昼食をとった。そこでは. し,参加者同士での交流が見られるようになった. I児から支援者らに対して感謝の言葉を述べる場. と考えられる。. 面が見られた。第6回の活動評価をTable7に示. 第5回実践では,I児が球速を自己選択し,バッ. す。その結果, I児,支援者ともに高評価であり,. ティングする形式であった。そのため活動を自発. 活動状況に大きな問題はみられなかった。. 的に楽しみ,より速く難しい球に挑戦していく姿 が見られた。自己選択する場面を設けることに. Table7 第6回の活動評価. 発言/活動の達成 活動への参加 活動の満足度 集団意識. よって参加者自身が主体的に活動へ参加している. I児. ST1. ST2. ST3. ST4. 3 3 3 3. 5 5 5 5. 5 5 5 5. 5 5 5 5. 5 5 5 4. ※)自己評価は3段階,支援者評価は5段階で実施. 188. 意識を持てるようになったと考えられる。 第6回実践では,最後の活動ということもあり I児から支援者に対して感謝の言葉が述べられ た。このことからI児にとって,全活動を通して, 仲間との交流の楽しさや自分たちのやりたい内容.
(8) 糖尿病を有するダウン症者への余暇支援. を行ってきた達成感があったと考えられる。 本研究からI児にとって,集団とのかかわりや 日々の生活での楽しみが生まれ,結果として仲間 同士での交流や月一回の活動を楽しみに集合時間 より早く来るといったことにつながったと考えら れる。以上のことから,成人期知的障害者にとっ てスポーツ活動を通した余暇活動の機会は,コ ミュニケーションや定期的な運動の機会,休日の. 4)松石豊次郎(2010)ダウン症候群.茂木俊彦(編) 特別支援教育大辞典.旬報社,596-597. 5)守田香奈子・七木田敦(2004)知的障害児のスポー ツ活動への参加を規定する要因に関する調査研究―保 護者への調査を通じたニーズの把握―.障害者スポー ツ科学,2⑴,70-75. 6)西村愛(2005)知的障害児・者の自己決定の援助に 関する一考察―援助者との権力関係の観点から―. Journal of HealtH & social services,4,71-85. 7)小笠原拓・菅野敦(2015)知的障害者の日常生活活. 充実等の促進につながり重要であるといえる。. 動に関する研究―日常生活における自己決定支援の階. また,本研究では糖尿病を有するダウン症者の. 層構造の考察―.東京学芸大学教育実践研究支援セン. 参加状態を整理したが,活動全般において,活動 参加への意欲や健康面に大きな問題はみられな かった。さらに本研究においては,直接,糖尿病 に対する手立ての必要性はなかったが,生活の質 を向上させるためにも,継続的なスポーツ活動の 機会の確保や自ら余暇の充実に向けた取組を進め ていくことの必要性が示唆された。. ター紀要,11,101-106. 8)坂口正治(2003)障害児・者の余暇活動―横浜市の 知的障害児・者のレジャー・レクリエーション活動の 実際(そのⅡ)―.スポーツ健康科学紀要,3,1929. 9)関戸英紀(1998)中学校特殊学級における知的障害 児に対する余暇指導―教師の意向と保護者の要望との 比較を通して―.横浜国立大学教育人間科学部紀要Ⅰ 教育科学,1,35-48. 10)柴山直・蛯谷ひとみ(2004)青年期・成人期の障害 を持った人の余暇活動における実践的研究.新潟大学. 謝 辞. 教育人間科学部紀要,8⑴,19-34. 11)鈴木洸平・細谷一博(2016)知的障害児・者の余暇. 本実践の実施にあたり,I児とそのご家族より. 支援における保護者のニーズ―北海道H市を中心とし. 多大なるご協力を頂きました。また,本実践の支. たアンケートを通して―.北海道教育大学紀要(教育. 援者として4名の学生にもご協力を頂きました。 記して感謝申し上げます。. 科学編) ,66⑵,77-88. 12)鈴木良(2004)知的障害者の自己決定支援の思想と 方法に関する一考察.社会福祉学,45⑵,14-23. 13)山根希代子(2003)ダウン症の長期追跡と療育支援. 付 記 本実践は平成27年度北海道特別支援教育学会で 発表した内容の一部である。. の効果に関する研究 : 第1編 合併症,IQ,生活難易度 に関する長期追跡.広島大学医学雑誌,51,93-102. 14)全日本手をつなぐ育成会(2004)つどう,でかける, あそぶ,ハマる―知的障害児者余暇活動研究事業報告 書―.独立行政法人福祉医療機構(子育て支援基金) 助成事業. 15)全国特別支援学校病弱教育校長会(2009)病気の子. 引用文献 1)海老子里美(2008)ダウン症における肥満度の推移(予 備的研究) .豊田市子ども発達センター療育紀要,6166.. どもの理解のために―糖尿病(平成21年度刊行)―.. (鈴木 洸平 北海道余市養護学校教諭) (細谷 一博 函館校准教授) . 2)保積功一(2007)知的障害者の本人活動の歴史的発 展と機能について.社会福祉学部研究紀要,12,1122. 3)伊藤由紀子・武田篤(2013)ダウン症児童生徒の肥 満予防に関する保護者の意識調査.秋田大学教育文化 学部教育実践研究紀要,35,87-92.. 189.
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