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知的障害教育におけるキャリア教育の現状と課題

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Academic year: 2021

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(1)Title. 知的障害教育におけるキャリア教育の現状と課題. Author(s). 北村, 博幸. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 67(1): 107-115. Issue Date. 2016-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/8014. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. 知的障害教育におけるキャリア教育の現状と課題 北 村 博 幸 北海道教育大学函館校障害児臨床教室. Trends and Issues on Career Education for Intellectual Disabilities Education KITAMURA Hiroyuki Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究では知的障害教育におけるキャリア教育の教育実践と研究の動向を概観し,現状と課 題を明らかにすることを目的とした。知的障害教育におけるキャリア教育に関しては,「キャ リアプランニング・マトリックス(試案)」(国立特別支援教育総合研究所,2010)が提案され て以降に,急速かつ多様な形で実践と研究が取り組まれてきていることが明らかとなった。多 様な実践と研究に関しては,①学校の教育実践,②支援の方法,③教員の意識,④教育課程, ⑤職業・就労の五つの枠組みにに分けることができた。今後の実践及び研究の課題として以下 の三点を取り上げることができた。第一は,キャリア教育の視点に基づく教育課程改善にとど まらず,新たに教育課程を構築すること。第二は,キャリア教育に関する適切な評価基準と方 法を開発し,授業改善につながる評価を行うこと。第三は,児童生徒の将来の家庭や社会の生 活における自分の在り方と生き方を見通した指導を行うこと。. Ⅰ.はじめに. や「今後の専門高校における教育の在り方等につ いて」(理科教育および産業教育審議会,1998). 我が国では,経済不況や雇用形態の変化といっ. 等において,高等学校における進路指導や職業教. た社会経済状況の変化が進む中,若年層の無業者. 育の見直しが必要であるとの問題提起がなされた。. の増加,新規学卒者の非正規雇用の増加や就職後. これに応じ,「初等中等教育と高等教育の接続. 3年以内の離職率の増加が問題となってきた。こ. の改善について」(中央教育審議会,1999)にお. れは単に若年層における問題だけではなく,我が. いて,学校間および学校と社会の円滑な接続を図. 国の社会経済の持続的発展に関わる大きな問題で. るために小学校段階から教育課程に位置づけて. もあった。. キャリア教育を段階的に実施することが提言され. この様な状況下,「21世紀を展望した我が国の. た。. 教育の在り方について」 (中央教育審議会,1997). キャリア教育の定義は,「児童生徒一人一人の. 107.

(3) 北 村 博 幸. キャリア発達を支援し,それぞれにふさわしい. 指導研究センター,2002)をもとに「キャリア発. キャリアを形成していくために必要な意欲・態度. 達段階・内容表(試案)」(木村,2007:国立特別. や能力を育てる教育」 (キャリア教育の推進に関. 支援教育総合研究所,2008)が作成された。さら. する総合的調査協力者会議,2004)とされ,その. に,この試案の検証と改善がなされ「キャリアプ. 後「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要. ランニング・マトリックス(試案)」(国立特別支. な基盤となる能力や態度を育てることを通して,. 援教育総合研究所,2010)が新たに作成された。. キャリア発達を促す教育」 (中央教育審議会,. キャリア教育ではその目標を達成するために能力. 2011)とされた。. を「competency(ある課題への対処能力)」とと. 学校教育におけるキャリア教育の段階的実施の. らえ,従来の能力観とは区別している(渡辺,. ために,小学校,中学校,高等学校の各学校段階. 2013a:2013b)。この能力観に基づき,キャリア. におけるキャリア教育の進め方についても具体的. プランニング・マトリックス(試案)では「人間. に示された。 (文部科学省,2006:文部科学省,. 関係形成能力」, 「情報活用能力」, 「将来設計能力」,. 2008:文部科学省,2009a:文部科学省,2010:. 「意志決定能力」の4つの能力領域に分けられ,. 文部科学省,2011a:文部科学省,2011b:文部. さらに各能力領域には発達段階に応じた詳細な観. 科学省,2011c). 点が明示された。「キャリアプランニング・マト. 更なるキャリア教育の充実に向けて,学校や教. リックス(試案)」の活用に関する留意事項として,. 育委員会及び地域・社会や企業の役割と協働のあ. ①指導の在り方や授業等を見直すためのツールで. り方も示された。 (キャリア教育における外部人. ある,②連携・協働のためのツールである,③で. 材活用等に関する調査研究協力者会議,2011). きる・できないだけではなく「育成」の姿勢が重. 特別支援教育においては,平成21年告示の特別. 要である,④各観点にはつながりがある,⑤各観. 支 援 学 校 高 等 部 学 習 指 導 要 領( 文 部 科 学 省,. 点は4能力領域のいずれかに基づくものとして構. 2009b)の総則の中に,「生徒の実態や地域の特. 成されている,⑥各観点解説に示した指導内容. 性に応じ,関係機関と連携し,産業現場等におけ. (例)はあくまでも一例であるの6点が示された。. る長期的な実習」によりキャリア教育の推進を図. (木村・菊地,2011). ることが示された。. その後,このキャリアプランニング・マトリッ. 学習指導要領の告示後,特別支援学校において. クス(試案)に基づく教育実践を中心としたキャ. はキャリア教育への注目が高まり,研究課題に取. リア教育の取り組みが全国の知的障害特別支援学. り上げる学校が増加してきた。(菊地,2011a;. 校でなされてきている(菊地,2012:2013a:全. 2013b)その後,特別支援教育におけるキャリア. 国特別支援学校知的障害教育校長会,2013)。. 教育のより一層の充実が「共生社会の形成に向け. そこで,本研究では知的障害教育におけるキャ. たインクルーシブ教育システム構築のための特別. リア教育の実践と研究の動向を概観し,現状と課. 支援教育の推進」において求められた。 (中央教. 題を明らかにすることを目的とする。. 育審議会,2012) 知的障害教育においては,教育委員会を中心に キャリア教育に関する取り組みが始まった(岩手. Ⅱ.知的障害教育におけるキャリア教育. 県立総合教育センター特別支援教育室,2008;東. 1.定 義. 京都教育委員会,2009)。. 涌井(2011)は,米国における知的障害のある. 知的障害児童生徒のキャリア発達支援の枠組み. 子どものキャリア教育の動向について概観した上. として, 「職業観・勤労観を育むための学習プロ. で, 「キャリ教育(広義のキャリア教育)」 「移行(狭. グラムの枠組み(例)」(国立教育政策研究所生徒. 義のキャリア教育)」「職業教育(最も狭義のキャ. 108.

(4) 知的障害教育におけるキャリア教育の現状と課題. リア教育) 」の用語の整理を行った上で,キャリ. ア教育の視点に基づき考え方の整理を行った。そ. ア教育(広義のキャリア教育)とは「将来の自立. の上で,運動内容についても,小学校,中学校及. や社会参加を目指した取り組みを,低年齢から高. び特別支援学校学習指導要領を参考にしながら知. 等部,さらには成人以降も,一貫性,系統性,連. 的障害特別支援学校の小学部から高等部までの12. 続性を持ってみていくこと。」と定義した。. 年間の系統性を図り,スモールステップで子ども. 知的障害特別支援学校におけるキャリア教育に. が主体的に取り組める運動プログラムを作成し. ついては「児童・生徒の実態に応じて,労働や就. た。体育・運動に関わっては,畠山・久野(2012). 職・就労のみにとらわれず,自分でやれることを. が,知的障害特別支援学校小学部の児童を対象と. 増やしていこうとする態度・意欲(勤労観)をは. した学校外の地域教育であるサッカーの取り組み. ぐくみ,自らの生き方を主体的に考え,進路を適. について,キャリアプランニング・マトリックス. 切に選択できる能力・態度(職業観)を障害の特. の4能力領域の枠組みで分析を行った。結果,活. 性や発達段階に応じて育成する教育のこと。」と. 動内容が4能力領域に位置づけられること,支援. 定義されている(東京都教育委員会,2009). のねらいが明確化されること,評価項目となるこ. また,教職員用と保護者向説明用に分けて定義. と,そして「生きる力」の中の豊かな心と健やか. しているものも見られる。教職員用については,. な体と関連があることを報告している。. キャリア教育とは「自己有能感や自信,意欲,向. 教科・領域を合わせた指導では,渡邉・新井. 上心や夢・希望・目標を抱かせ,自分の人生をよ. (2011)が,キャリア発達と遊びを関連づけ,知. りよく生きるための努力や工夫を自ら続けられる. 的障害特別支援学校小学部の生活単元学習の遊び. 心と体,スキルを身につけさせること。その一要. の授業において児童の認識・行動・感情が変容し. 素として,進路指導・進路決定があり,進路を決. た事例について報告している。また,渡邉(2012). めさせることだけではない。そうして身につけた. は,中学校の知的障害特別支援学級の生活単元学. 知識や技術,価値観や考え方は,この厳しい世の. 習の実践を通して,キャリア発達における勤労. 中をたくましく “生きる力”になる。」と定義した。. 観・職業観の形成には「生徒の意欲」と「生徒に. 保護者向説明用としては,キャリア教育というの. とっての必要性」の二つの意識が基盤となること. は「車に乗っているお子様がいます。お子様一人. を指摘している。作業学習においては,畠山ら. 一人が自分の得意・不得意にあった車(生き方). (2014)は,農耕作業を授業を通して「キャリア. を周りの大人と一緒に探して,それに乗りこんで,. 教育」 「ICF活用」 「TEACCHプログラム」 「SCERTS」. 自分にあった進路(すなわち就労先であったり,. の視点から検証し,農耕作業にキャリア教育の視. 趣味であったり)を周りの大人と相談しながら最. 点を取り入れることの必要性を指摘している。. 終的には自分で選び,夢や希望や目標といった目. 児童生徒の感情に注目した授業実践として,阿. 的地を自分で見つけながら進んでいく・・・とい. 部ら(2014)は,児童福祉施設併設特別支援学校. う力を身につけさせることです。 」と例示を含む. 中学部の知的障害のある生徒を対象に,役割を果. 平易な言葉であらわした。 (北海道今金高等養護. たし自己有用感が高まることを目指し,①「成果. 学校,2013;2014a;2014b;2015:北村,2015). のイメージつくり→役割の実践→実践に対する自 己評価→役割の価値理解」の学習サイクル,②グ. 2.学校の教育実践. ループでの学習,③「自己評価シート」の活用,. 知的障害特別支援学級や知的障害特別支援学校. ④「グループの仲間」「見える他者」「見えない他. のキャリア教育に関する教育実践は多様な視点か. 者」の3つの相手の設定の4点からなる授業を. ら行われている。. 行った。結果,自ら役割を果たす行動が見られる. 川本ら(2013)は,体育・保健体育科をキャリ. ようになり,キャリア力の裏付けとなる自己有用. 109.

(5) 北 村 博 幸. 感が高まったことを報告している。. 会議)を用いた取り組み(干川,2013)も報告さ. 北村(2015)は,知的障害高等養護学校のキャ. れている。個別の教育支援計画の中に本人の思い. リア教育をテーマとした学校研究を, 計画 (Plan) ・. を生かすためには,①本人が支援ミーティングな. 実 践(Do) ・ 評 価(Check)・ 改 善(Action) の. どに参加して選択し,決定しているプロセスがあ. プロセスを通して検討した。学校研究の成果とし. ること,②保護者が,支援ミーティングに参加し. て,①知的障害教育におけるキャリア教育の用語. て,チームの一員として意見を述べて意見を聞き,. と概念の明確化,②「地域の特性に応じた知的障. 選択していること,③上述のために,担任が間に. 害高等養護学校版キャリアプランニングマトリッ. 入って意見を聞いてあげるような「やってあげる. クス」の作成,③研究成果の多様な情報発信の在. 人」と「やってもらう人」の関係性を極力排除す. り方,④キャリア教育の視点による授業改善と教. ることの支援が重要であるとしている。. 育課程改善,⑤学校研究のプロセスの明確化が. 藤原(2013)は,キャリア教育で重視される主. あったことを報告している。. 体的な行動を育成する教育的支援の在り方を知的 障害特別支援学校の授業を通して検討した。主体. 3.支援の方法. 的行動の育成のための授業づくりには,①授業目. 支援方法をテーマとした取り組みには,支援. 的・内容に沿って,子どもが理解しやすく学びや. ツールを活用したものと,キャリア形成の基盤と. すい,動きやすく活動しやすい支援環境を整える,. なる力の育成に関するものが報告されている。. ②個のニーズに応じるために,子どもの弱点を補. 菊地(2011b)は,知的障害児童生徒の教育課. い,本人の持てる力を充分に発揮できるための支. 程の分析及び改善を目的とした「単元における観. 援ツールを含めた援助手段を用いる,③子どもに. 点位置付けシート」 ,授業の充実・改善を目的と. 授業のねらいを伝え,学習の機会を用意し,ポイ. した「授業における観点位置付け・授業改善シー. ントを指導し,成果に気づかせ,価値を抱かせる. ト」を開発し,特別支援学校及び特別支援学級に. ことができるような教師のポジションや役割を明. おいて試行し,教員の意識を調査した。結果,こ. 確にする,④授業目的に応じ教師の役割を子ども. の様なシートの導入にあたっては,教員にとって. に委ね,子ども同士の協同的活動機会を設け参加. 身近な授業を切り口とすることが比較的取り組み. の機会を増やし,結果の確認・評価を行い,授業. やすく,その後の教育課程の改善にもつながりや. を振り返ることが必要であるとしている。. すいことを示唆している。. 新井(2013)は,キャリア発達の基盤となる人. 大崎(2011)は,キャリア教育の中核である「本. 間関係形成能力を育てるため指導について知的障. 人の願い」を基にした支援目標や支援内容を検討. 害特別支援学校小学部の授業を通して検討した。. するためのツールである「本人の願いを支える. 小学部児童は,夢中になれるものが用意された「遊. シート」を開発し,特別支援学校において試行し. び」の中で,自分の好きな物を確認しながら(自. た。本シートの活用の意義として,①「本人の願. 己理解),他者の遊びを知り(他者理解)他者の. い」を把握することの大切さ,②個別の教育支援. 影響を与えながら自分の遊びを変化させていく. 計画との組合せによる効果,③「本人の願い」へ. (人間関係の形成)ことができるが,高学年にな. の支援の共有化,④キャリア教育における「本人. るにつれて社会的価値のある作業や活動を協働し. の生き方」への支援の再考,⑤「本人の生き方」. てすすめる形へ発展させることが大切であること. を経年的にみていくことの重要性の五点を指摘し. を報告している。. ている。本人の思いを生かした個別の教育支援計. 小島(2013)は,知的障害のある児童生徒の自. 画の作成のためにPATH(Planning Alternative. 己決定力に関して我が国の学校教育現場における. Tomorrow with Hope:希望に満ちた未来の作戦. 実践研究を概観し,教育実践上の課題について検. 110.

(6) 知的障害教育におけるキャリア教育の現状と課題. 討した。課題として,①特別支援学校などで自己. 果,生徒のキャリア形成のためには,その能力の. 決定力を育てるさらなる教育実践の蓄積が必要,. 獲得を促す指導方法や評価方法の確立が不十分で. ②自己決定力を測定する尺度の開発が必要,③知. あること,保護者と教員との意見の不一致や保護. 的な発達水準と生活年齢を考慮した体系的なプロ. 者の意識形成ができていないこと,進路指導担当. グラムの開発が必要,④学校教育場面で育てた自. 教員を支援する体制が不十分であることを報告し. 己決定力を家庭や社会生活などでの場面で活用で. ている。. きるかどうかの検証が必要と指摘している。. キャリア教育及び就労支援に関して教員が求め ている研修のニーズを把握することを目的に藤井. 4.教員の意識. ら(2013)は,全国の知的障害特別支援学校高等. 教員の意識に関しては,アンケート調査による. 部の進路指導担当教員に対して質問紙調査を行っ. 研究が多く見られる。. た。その結果,求められている研修内容は,組織. 磯野・佐藤(2012)は,知的障害特別支援学校. 対応及び連携,生徒の能力開発,教員の支援技術. におけるキャリア教育に関する意識を明らかにす. 向上,資源開発,動向の把握と支援制度の活用,. ることを目的に,千葉県内の知的障害特別支援学. に関する内容であった。求められている研修形態. 校のすべての学部主事を対象にアンケート調査を. は,ディスカッションや事例検討,情報交換や実. 行った。結果,①キャリア教育に関する詳細情報. 技というものであった。また,求められている研. は周知段階にある,②高等部はキャリア教育を意. 修機会や体制は,地域差是正,研修参加の支援体. 識した実践を行っている,③小学部・中学部は教. 制構築,受講者を一般教員や保護者に拡充するこ. 育を意識した実践が不十分である,④キャリア教. とであった。. 育を推進するための教育課程の系統性が不十分で. 加藤・内海(2010)は,知的障害特別支援学校. あると考えていることを明らかとした。その上で,. 高等部の生徒の自己理解はキャリア教育の重要な. 教育課程の系統性を高めるためには,授業研究会. 内容の一つとしてとらえ,教師のインタビュー調. 等の活用が必要であることを指摘している。. 査を通して自己理解支援の現状と課題を整理し,. 知的障害特別支援学校におけるキャリア教育の. 次の3点を明らかとした。第一は,自己に関する. 2年間の研究実践に取り組んだ教員の意識につい. 意識が低く,自己を否定的にとらえる傾向にある. て石川ら(2013)は,キャリア教育導入当初はキャ. ため支援が必要である。第二に,対人関係や社会. リア教育に取り組むべき内容があまりにも幅広い. 的経験が生徒の自己理解を促すことになる。第三. ために教員は見通しを持ちづらい状況にあった. に,課題として①障害理解の難しさという生徒の. が,①キャリア教育について一致したイメージを. 課題,②教師の自己理解に関する共通理解という. 持つこと,②具体的でわかりやすい言葉で説明し. 学校の課題,③障害のある人たちに対する地域社. キャリア教育の方向性について共通理解を図るこ. 会の課題をあげている。. と,③キャリア教育に取り組んでいる実感を持て るように授業実践に基づいて検討を重ねることの. 5.教育課程. 取り組みを行った結果,2年後にはキャリア教育. キャリア教育と教育課程改善について,名古屋. の取り組みに関して教員の意識が肯定的に変化し. (2013)は知的障害教育課程及び実践動向を歴史. たことを報告している。. 的に概観しながら,キャリア教育の充実発展のた. 藤井ら(2014)は,知的障害特別支援学校高等. めにはこれまでの知的障害教育課程と教育実践に. 部の就労移行支援で生じている課題を明らかにす. 学び,部分的な能力習得に特化されないトータル. るために全国の知的障害特別支援学校高等部の進. な教育課程編成が必要であると述べている。同様. 路指導担当教員に対して質問紙調査を行った。結. に,鶴田(2013)も,知的障害特別支援学校の小. 111.

(7) 北 村 博 幸. 学部のキャリア教育について,知識やスキルに代. 用に関する研究を行った。障害のない職員13名に. 表されるような目の前にある可視的な能力だけを. よる非常に手厚い職業指導により,知的障害のあ. みたり,障害特性や数値的な評価だけを考えたり. る職員21名を雇用することにつながったが,雇用. するのではなく,コンピテンシーを育成し高める. の継続のためには,職業指導だけではなく,生活. ことによって内面からの豊でたくましい生きる力. 支援や余暇支援が必要であると述べている。水内. を育てるための教育課程の編成が必要であると指. ら(2014)も,知的障害高等部生徒のキャリア発. 摘している。. 達を促すために,国立大学附属学校という特性を. 徳永(2014)も,これまでの知的障害教育の教. 生かし,大学と連携した,作業学習と就業体験の. 育課程を取り上げ,キャリア教育の視点を活用し,. 取り組みを行った。大学という社会的な場を活用. 教育活動や授業を改善していく方法について検討. することで外部からの評価を受けることになり,. した。知的障害教育は,働くための力を高める教. 生徒が仕事に対するやりがいや喜び,責任感,社. 育であり, キャリア教育は重要であるとした上で,. 会での適切な振る舞い方の芽生えを得ることがで. 教育課程の改善のためには,次の二点が必要であ. きたとし,国立大学附属特別支援学校のキャリア. るとした。一点目は,授業における教科・領域を. 教育実践の在り方の一つとして報告している。. 合わせた指導の目標や内容が,学習指導要領に示. 尾高(2010)は,知的障害教育におけるキャリ. されている教科や領域のどの目標や内容にあたる. ア教育について,技術・職業教育の立場からその. のかを明確にすることが大前提となる。二点目は,. 目的,内容を批判的に検討し,次の問題点を明ら. これまでの授業の内容をキャリア教育の視点で確認. かにした。キャリア教育の目的は,子ども・青年. するだけではなく,キャリア教育の視点で見直し,. に「勤労観,職業観」を育成することであるが,. その視点からつけたい力を特定し,授業の活動や. ①問題の責任をもっぱら子ども・青年に求めてい. 展開を変更していくことが授業改善につながる。. る,②「勤労観,職業観」には「望ましさ」の要. 若林(2014)は,知的障害児童生徒のキャリア. 件がある,③「勤労観,職業観」は,その後の人. 教育で取り上げられる具体的な学習内容を整理す. 生を切り開く力として働くか,④職業に関する知. ることを目的として,特別支援教育の教師を対象. 識・技能なしに「勤労観,職業観」は身に付くか. に質問紙調査を行った。結果,キャリア教育で扱. という点が問題であると指摘している。. われる学習内容として,①卒業後の暮らしを支え. 平野(2007)は,知的障害者の職場と生活環境. る力, ②生活の基本的技能,③文字や数量の認識,. に関する事業を行っている社会福祉法人の六つの. ④体を動かす力,⑤人とかかわる力,⑥意思を伝. 事業所の実践を報告している。その中で,知的障. える力, ⑦感性の7つの因子が想定されるとした。. 害者のキャリア形成に必要な点として,一点目は 得意・不得意を見極めて, 「弱み」ではなく「強み」. 6.職業・就労. を生かすこと,二点目は意欲と適性を見極めて,. 特別支援学校高等部職業学科の取り組みとし. キャリアの幅を広げ,安定度の高いビジネスによ. て,森脇(2007)は, 「キャリアプラン(個別の. り経済的自立の可能性を広げること,三点目は,. 包括支援プラン) 」に基づき,学校における授業. 「人権を尊重される」べき人間,ないしは生活者,. と企業における実習を互いに連動させながら高等. あるいは社会人としてのノーマルな扱われ方が基. 部の3年間の教育を進めていく総合支援学校版. 本となっていることの三点を明らかにしている。. デュアルシステムを報告している。 落合ら(2011)は,国立大学のキャンパスを利 用し附属中学校特別支援学級を対象に,キャリア 教育と職業訓練教育等による障害のある生徒の雇. 112. Ⅲ.おわりに 知的障害教育におけるキャリア教育に関して.

(8) 知的障害教育におけるキャリア教育の現状と課題. は, 「キャリアプランニング・マトリックス(試. 目標は,社会において自分の役割の価値を見つけ,. 案) 」 (国立特別支援教育総合研究所,2010)が提. 役割をやりがいを持って果たしていくことにある. 案されて以降に,急速かつ多様な形で実践と研究. ため,学校教育活動においても,現在の児童生徒. が取り組まれてきていることが明らかとなった. の課題解決をしながら,将来の家庭や社会での生. (菊地,2012:2013a:全国特別支援学校知的障. 活を見通しながら指導していくことが必要である。. 害教育校長会,2013)。. 以上のことから,今後の実践及び研究の課題と. 多様な実践と研究に関しては,①学校の教育実. して以下の三点を取り上げることができた。. 践,②支援の方法,③教員の意識,④教育課程,. 第一は,キャリア教育の視点に基づく教育課程. ⑤職業・就労の五つの枠組みにに分けることがで. 改善にとどまらず,新たに教育課程を構築するこ. きた。. と。. 学校の実践に関しては, 「キャリアプランニン. 第二は,キャリア教育に関する適切な評価基準. グ・マトリックス(試案)」を基に,日常の教育. と方法を開発し,授業改善につながる評価を行う. 活動を分析しているものが多くみられた。教育活. こと。. 動はP(計画)-D(実践)-C(評価)-A(改. 第三は,児童生徒の将来の家庭や社会の生活に. 善)サイクルで展開される訳であるが,PとDに. おける自分の在り方と生き方を見通した指導を行. は言及されているものの,CとAに関しては検討. うこと。. されていなかった。キャリア教育の推進にあたっ ては,根拠に基づく評価基準と実施方法の開発が 必要であると考えられる(藤井ら,2014)。. Ⅳ.文 献. 支援の方法に関しては,支援ツールを活用した. 阿部美穂子・吉田彩子・山川俊幸・森光康(2014):児童. 取り組みと,キャリア形成の基盤となる能力であ. 福祉施設併設特別支援学校知的障害生徒のキャリア力. る主体的行動力,自己決定力や人間関係形成能力. を育てる授業実践-役割を果たし,自己有能観を高め ることを目指して-.とやま発達福祉学年報,5,3-13.. を育成するための方法が報告されていた。これら. 新井英晴(2013):キャリア発達の基盤となる人間関係形. 能力は,ともすると具体的な技能に集約されがち. 成能力の指導-自己理解・他者理解の成長をめぐって. であるが,合わせて意欲や興味・関心といった情. -.発達障害研究,35⑷,313-319.. 動面も含めて指導されることが重要である。 教員の意識に関しては,キャリア教育の実施が 求め始められた頃の,当然ながらキャリア教育に ついての理解や知識の不十分さや不安に関して報 告しているものが多くみられた。 教育課程に関しては,キャリア教育の視点に基 づいた教育課程の改善・編成が必要であるとの指 摘がなされたいた。その際には,単にこれまでの 教育活動をキャリア教育の視点から再構成するの. 中央教育審議会(1997) :21世紀を展望した我が国の教育 の在り方について(答申) . 中央教育審議会(1999):初等中等教育と高等教育の接続 の改善について. 中央教育審議会(2011):今後の学校におけるキャリア教 育・職業教育の在り方について(答申) . 中央教育審議会(2012):共生社会の形成に向けたインク ルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推 進. 畠山富士雄・久野建夫(2013) :附属特別支援学校小学部 の土曜日キッズサッカーの試みⅡ-キャリア教育の視 点から-.佐賀大学教育実践研究,29,323-342.. ではなく,①キャリア教育の視点から育てたい力. 畠山富士雄・日吉照彦・水落剛宏・久野建夫(2014) :知. を明確化し,②個別の教育的ニーズを考慮し,③. 的障害特別支援学校における農耕作業学習に関する考. 学校のおかれている特性に基づき新たに教育課程. 察-キャリア教育とICFの観点から-.佐賀大学文化. を編成することが必要である。 職業・就職に関しては,作業学習,現場実習と の関連での報告が多くみられた。キャリア教育の. 教育学部研究論文集,18⑵,17-39. 平野文彦(2007):障害者雇用とキャリア形成-障害者雇 用の理論的枠組みの確立のための考察-.発達障害研 究,29⑸,337-343.. 113.

(9) 北 村 博 幸. 北海道今金高等養護学校(2013):平成24年度北海道今金 高等養護学校研究紀要. 北海道今金高等養護学校(2014a):いまようからのキャ. 及び授業の改善・充実を図るためのツールの開発と試 行.国立特別支援教育総合研究所,38,31-46. 菊地一文(2012):特別支援教育のためのキャリア教育. リア教育のすすめ-障がいを持つ児童・生徒を指導・. ケースブック-事例から学ぶキャリア教育の考え方-.. 支援されている学校の皆様へ-.. ジアース教育新社.. 北海道今金高等養護学校(2014b):平成25年度北海道今 金高等養護学校研究紀要. 北海道今金高等養護学校(2015):平成26年度北海道今金 高等養護学校研究紀要. 干川隆(2013):本人の思いを生かした支援計画の作成. 発達障害研究,35⑷,320-326. 藤井明日香・川合紀宗・落合俊郎(2013):特別支援学校 (知的障害)高等部進路指導担当教員の専門性向上に. 菊地一文(2013a):特集の企画趣旨.発達障害研究,35 ⑷,267-268. 菊地一文(2013b):特別支援学校におけるキャリア教育 の推進状況と課題-特別支援学校を対象とした悉皆調 査の結果から-.発達障害研究,35⑷,269-278. 木村宣孝(2007):特別支援学校とキャリア教育-知的障 害のある児童生徒の「キャリア発達段階・内容表」作 成の試み-.発達障害研究,29⑸,322-330.. 関する望ましい研修内容及び研修形態-受講者の研修. 木村宣孝・菊地一文(2011) :特別支援学校におけるキャ. 課題及び改善点に関する自由記述の分析から-.広島. リア教育の意義と知的障害のある児童生徒の「キャリ. 大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践セン. アプランニング・マトリックス(試案)」作成の経緯.. ター研究紀要,11,101-110.. 国立特別支援教育総合研究所,38,3-17.. 藤井明日香・川合紀宗・落合俊郎(2014):特別支援学校. 北村博幸(2015):知的障害高等養護学校におけるキャリ. (知的障害)高等部進路指導担当教員の就労移行支援. ア教育の開発-北海道今金高等養護学校モデル-.北. に対する困り感-指導法及び教員支援に関する自由記. 海道教育大学研究紀要(教育科学編) ,66⑴,41-49.. 述から-.高松大学研究紀要,60・61,111-128. 藤原義博(2013):児童生徒の「わかる・できる」主体的 行動を育成する教育的支援.発達障害研究,35⑷, 304-312.. 小島道生(2013):知的障害のある児童生徒の意思決定支 援-日本における現状と課題-.発達障害研究,35⑷, 296-303. キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究. 石 川 則 子・ 田 淵 健・ 稗 貫 真 理 子・ 中 村 昭 彦・ 宮 﨑 眞. 協力者会議(2011) :学校が社会と協働して一日も早く. (2013) :知的障害特別支援学校におけるキャリア教育. すべての児童生徒に充実したキャリア教育をおこなう. の取り組みに関する検討-キャリア教育の研究実践に. ために.. 取り組んだ教員の意識の変化を通して-.岩手大学教. キャリア教育の推進に関する総合的調査協力者会議. 育学部附属教育実践総合センター研究紀要,12,235-. (2004) :児童生徒一人一人の勤労観,職業観を育む教. 251. 磯野浩二・佐藤愼二(2012):知的障害特別支援学校にお けるキャリア教育に関する意識調査-千葉県内の特別 支援学校全学部主事への質問紙調査を通して-.植草 学園短期大学研究紀要,13,33-38. 岩手県立総合教育センター特別支援教育室(2008):特別 支援学校(知的)キャリア教育推進ガイドブック. 加藤秀幸・内海淳(2010):知的障害特別支援学校高等部 の「自己理解」支援に関する研究-教師へのインタ ビュー調査を手がかりに-.秋田大学教育文化学部教 育実践研究紀要,32,51-60.. 育の推進について(調査研究報告書) . 国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2002) :児童 生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について. 国立特別支援教育総合研究所(2008):知的障害者の確か な就労を目指した指導方法・指導内容に関する研究. 平成18・19年度課題別研究報告書. 国立特別支援教育総合研究所(2010):知的障害教育にお けるキャリア教育の在り方に関する研究.研究成果報 告書. 水内豊和・和田充紀・池崎理恵子・栗林陸美(2014) :知 的障害者の雇用促進に関する富山大学人間発達科学部. 川本孝・日野克博・糸岡有里(2013):知的障害のある子. と附属特別支援学校の有機的連携によるキャリア教育. どものキャリア教育の視点に基づいた体力・運動能力. のモデルプランの開発と評価に関する研究.日本教育. を育てる運動プログラムの検討-特別支援学校小・ 中・高等部での「朝の運動」の実践から-.日本体育 学会予稿集,64,402. 菊地一文(2011a):知的障害教育におけるキャリア教育 のあり方に関する研究.国立特別支援教育総合研究所, 38,1-2. 菊地一文(2011b):キャリア教育の視点による教育課程. 114. 大学協会研究年報,32,145-155. 文部科学省(2006) :小学校・中学校・高等学校における キャリア教育推進の手引き. 文部科学省(2008) :キャリア教育体験活動事例集(第1 分冊)-家庭や地域との連携・協力-. 文部科学省(2009a) :キャリア教育体験活動事例集(第 2分冊)-家庭や地域との連携・協力-..

(10) 知的障害教育におけるキャリア教育の現状と課題. 文部科学省(2009b):特別支援教育高等部学習指導要領. 文部科学省(2010):小学校キャリア教育の手引き. 文部科学省(2011a):中学校キャリア教育の手引き. 文部科学省(2011b):小学校キャリア教育の手引き(改 訂版).. 渡辺三枝子(2013b):キャリア教育の理念と特別支援教 育における今後の展望.発達障害研究,35,279-286. 全国特別支援学校知的障害教育校長会(2013):知的障害 特別支援学校のキャリア教育の手引きと実践編.ジアー ス教育新社.. 文部科学省(2011c):高等学校キャリア教育の手引き. 森脇勤(2007) :特別支援教育におけるキャリア教育-高 等部職業学科の取り組み-.発達障害研究,29⑸,. (函館校教授). 331-336. 名古屋恒彦(2013):キャリア教育と教育課程-知的障害 教育を中心に-.発達障害研究,35⑷,327-333. 落合俊郎・小舩憲幸・川合紀宗・船津守久・牟田口辰 己・谷本忠明・若松昭彦・林田真志・林武広・神原一 之・檜和田祐介・奥野正二・松浦由紀・小田原麻衣 (2011) :大学の機能を活用した障害のある人々の就労 支援・継続的雇用に向けての研究-キャリア教育,職 業実習そして継続雇用への一貫した取り組みに向けて -.広島大学学部・附属学校共同研究機構研究紀要, 39,33-38. 尾高進(2010) :知的障害教育におけるキャリア教育と職 業教育.障害者問題研究,38,20-27. 大崎博史(2011) :キャリア教育の視点による個別の教育 支援計画における「本人の願い」の把握及び支援の充 実を図るためのツールの開発と試行.国立特別支援教 育総合研究所,38,47-64. 理科教育および産業教育審議会(1998):今後の専門高校 における教育の在り方等について. 徳永豊(2014) :知的障害教育に教育課程におけるキャリ ア教育の課題-教育活動全体を通じて行う指導をめ ぐって-.福岡大学人文論叢,45⑷,389-408. 鶴田菜穂子(2013):知的障害特別支援学校小学部におけ るキャリア教育について.障害児教育実践の研究, 23,47-64. 東京都教育委員会(2009):知的障害特別支援学校におけ るキャリア教育の推進. 若林上総(2014) :知的障害児童生徒へのキャリア教育で 取り上げられる学習内容の調査.埼玉大学教育学部附 属教育実践総合センター紀要,13,63-69. 涌井恵(2011) :米国における知的障害のある子どもの キャリ教育の動向と日本への示唆.国立特別支援教育 総合研究所,38,19-30. 渡邉鮎美・新井英晴(2011):知的障害児に対する造形・ 表現遊びとキャリア教育.障害児教育実践の研究, 22,29-37. 渡邉和幸(2012) :生徒の思いを大切にして進めるキャリ ア教育-中学校知的障害特別支援学級の実践-.特別 支援教育,46,36-39. 渡辺三枝子(2013a):「いま」と「つなぐ」はキャリア教 育のキーワード.特別支援教育研究,673,6-9.. 115.

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参照

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