障害者を対象とした余暇学習(活動)に関する文献レビュー
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第71巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 71, No.2. 令 和 3 年 2 月 February, 2021. 障害者を対象とした余暇学習(活動)に関する文献レビュー 中村 龍平・細谷 一博* 北海道教育大学大学院教育学研究科 *. 北海道教育大学函館校障害児教育研究室. Literature Review of Leisure Learning and Activities for People with Disabilities NAKAMURA Ryuhei and HOSOYA Kazuhiro* Graduate School of Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education *. Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 障害児(者)を対象とした余暇の研究は,これまで数多く行われており,余暇の支援の必要 性が指摘されているが,学校の教育活動における余暇学習について,これまでの研究の成果と 課題を整理した論文は少ない。本研究は,学校の教育活動として行われている余暇学習の実践 的な取り組みと保護者の余暇学習(活動)のニーズに関する報告から,余暇学習の成果と今後 の課題を明らかにすることを目的とした。余暇学習の実態としては,知的障害や発達障害の児 童生徒を対象に行われていることが明らかになった。また,保護者は,地域の施設等での余暇 活動を行うこと,友人やボランティア等と関わることを望んでいるため,余暇学習において, 施設の利用方法の指導や余暇支援に関する情報提供を行っていくことが求められている。今後 は,それぞれの障害種の余暇の実態把握をもとに,余暇学習や余暇支援の検討を行っていくこ とが必要であることが示唆された。. Ⅰ.はじめに. 害者が円滑に文化芸術活動,スポーツ又はレクリ エーションを行うことができるようにするため,. 障害児(者)の余暇については,これまで多く. 施設,設備その他の諸条件の整備,文化芸術,ス. の研究が行われており,余暇の支援の必要性が指. ポーツ等に関する活動の助成,その他必要な施策. 摘されている。障害者の権利に関する条約(2008). を講じなければならない」と示されている。以上. において, 障害者が文化的な生活,レクリエーショ. のことから,障害者が社会活動やレクリエーショ. ン,観光,余暇及びスポーツ活動への参加の機会. ン活動等に参加するために,体制の充実や余暇活. を確保するように示されている。また,障害者基. 動の確保,環境整備を行うことの重要性が高まっ. 本法(1993)では, 「国及び地方公共団体は,障. ている。. 55.
(3) 中村 龍平・細谷 一博. そもそも 「余暇」 とは,J. デュマズディエ (1972) が「個人が職場や家庭,社会から課せられた義務. り,余暇を充実させることは,QOLを高めると 考えられる。. から解放されたときに,休息のため,気晴らしの. しかしながら,学校での余暇学習が家庭や卒業. ため,あるいは利得とは無関係な知識や能力の養. 後の余暇に繋がっていないことが指摘されてい. 成,自発的な社会的参加,自由な創造力の発揮の. る。岸田(2010)は,余暇指導において,獲得し. ために,まったく随意に行う活動の総体である」. た余暇活動が維持できるかどうかが課題であると. と定義している。また,鈴木・細谷(2016a)は,. 述べており,栗林・野崎・和田(2018)は,卒業. 「余暇は仕事や家庭と離れた自由な時間であり,. 後の豊かな余暇のために,学校教育に望まれるこ. 現代の社会において大切なものと認識されてい. とやできることについて検討していくことの必要. る」と述べている。さらに,Yalon-Chamovitz,. 性を指摘している。さらに,学校の教育活動にお. Mano, Jarus, & Weinblatt, (2006) は, 「余暇とは,. ける余暇学習について,これまでの研究の成果と. 自由時間に個人が選択した活動であり,義務的な. 課題を整理したものは見られず,卒業後の余暇活. ものではなく,仕事とは異なり,食事や睡眠など. 動の充実に向けた余暇学習を展開するために,特. の生物学的機能を果たさないもの」と述べている。. 別支援教育に関する学習指導要領を概観し,余暇. このように,余暇とは,仕事や家族等の社会から. 学習の位置付けを整理する必要がある。本研究の. 課せられた義務や食事や睡眠等の生きるために必. 目的は,学校の教育活動として行われている余暇. 要な義務から離れた自由な時間であり,個人や社. 学習の実践的な取り組みと保護者の余暇学習(活. 会にとって重要なものだと認識されている。学校. 動)のニーズに関する報告から,余暇学習の成果. 完全週5日制が始まって以降,子どもたちが家庭. と今後の課題を明らかにすることである。. や地域で過ごす時間が増え,余暇の充実が求めら れている。山田(1990)は,人間がより豊かで文 化的な生活を送ることは,基本的人権であり,余 暇活動が活発に行われ,楽しみを味わうことは重 要なことであると指摘している。. Ⅱ.方 法 学校完全週5日制が2002年から始まり,余暇へ の関心が高まっていることから,本稿で扱う学習. 余暇の充実は,生活の質(QOL:Quality-of-. 指導要領は,制度が始まる以前の盲学校・聾学校. Life)に影響を与えることも指摘されている。. 及び養護学校学習指導要領(文部省,1989)から. シャーロック(2000)は,QOLの概念は適切な. 現行の特別支援学校学習指導要領(文部科学省,. 食事や住居の安全といった生活の基本的条件と,. 2019)までを概観する。また,学校の教育活動で. 包括的社会活動,余暇活動,地域活動,生活を豊. 行われている取り組みについては,国立情報学研. かにする活動で合意が進んできていると述べてい. 究所が運営しているCiNiiを用いて,「障害児 余. る。また,QOLを測定するための要素は,一般. 暇」, 「障害者 余暇」, 「特別支援学校 余暇」, 「特. 的には健康,社会福祉,友情,生活水準,教育,. 別支援学級 余暇」「知的障害 余暇」,「発達障. 公共の安全,住居,近隣,余暇など環境に基づい. 害 余暇」, 「自閉症 余暇」, 「視覚障害 余暇」,. た外部条件であると述べている。さらに,李・仲. 「聴覚障害 余暇」,「肢体不自由 余暇」をキー. 野(2016)は,経済の発展と時代の変化に伴い,. ワードにして検索し,特別支援学校と特別支援学. 人々が求める生活の質(QOL)も多様化していっ. 級での実践を報告している論文を分析の対象とし. たと述べており,生活の質を高める上で重要とな. た。保護者のニーズについては,上記のキーワー. るのが,余暇生活の充実であるとも述べている。. ドに加え,「保護者 余暇」をキーワードにして. 以 上 の こ と か ら,QOLに 影 響 を 与 え る 要 素 は. 検索したものを分析の対象とした。. 様々であるが,その中の一つとして「余暇」があ. 56.
(4) 障害者を対象とした余暇学習(活動)に関する文献研究. Ⅲ.学習指導要領上の余暇の位置付け. 関する指導では,職場では休憩時間などの自由時 間を,人それぞれが工夫して使っていること,家. 盲学校・聾学校及び養護学校小学部・中学部学. 庭では家族一人一人が様々な時間の過ごし方をし. 習指導要領(文部省,1989b)では,第2章「各. ており,個人が自由に使える時間だけではなく,. 教科」 ,第2節「中学部」の「職業・家庭」の項. 食事や団らんなど家族と過ごす時間や,手伝いを. 目において, 「余暇を有効に過ごすための方法を. する時間があることに気付くようにすることが重. 知り,生活に生かす」と示されている。また,盲. 要である」と記されている。また,盲学校・聾学. 学校・聾学校及び養護学校高等部学習指導要領. 校及び養護学校高等部学習指導要領(文部省,. (文部省,1989a)では,第2章「各教科」,第2. 1999)では,第2章「各教科」,第2節「知的障. 節「精神薄弱者を教育する養護学校」の「職業」. 害者を教育する養護学校」の「職業」の項目にお. の項目において, 「職業生活に必要な健康管理や. いて,「職業生活に必要な健康管理や余暇利用の. 余暇利用の方法を知り,生活に生かす」と示され. 方法を知り,生活に生かす」「職業生活に必要な. ている。このことについて,特殊教育諸学校小学. 健康管理や余暇利用の方法についての理解を深. 部・中学部学習指導要領解説養護学校(精神薄弱. め,生活に積極的に生かす」と示されている。こ. 教育)編(文部省,1991)では,資料「各教科の. のことについて,盲学校・聾学校及び養護学校学. 具体的内容」の項目において, 「余暇や休日を楽. 習指導要領(平成11年3月)解説各教科,道徳及. しく過ごす」 「余暇や休日を,計画を立てて有効. び特別活動編(文部省,2000)では,「『職業生活. に過ごす」と記されている。また,特殊教育諸学. に必要な健康管理や余暇利用の方法を知り』とは,. 校高等部学習指導要領解説養護学校(精神薄弱教. 職場で働くことを中心とした生活をする上で求め. 育)編(文部省,1992)では,資料「各教科の具. られている自らの健康を守る方法や職場での休憩. 体的内容」の項目において, 「余暇や休日を楽し. 時間や休日の有効な生かし方が分かることであ. く過ごす」 「余暇や休日を,計画を立てて有効に. る」と記されている。また,「『職業生活に必要な. 過ごす」と記されている。. 健康管理や余暇利用の方法についての理解を深. 以上のことから,障害児の職業生活や家庭生活. め』とは,健康な状態で職場に継続的に勤める方. における余暇を充実させることは,重要であると. 法や職場での休憩等の時間を積極的に生かす方法. いう視点がもたれており,学校教育の中で進めら. を知ることである。」と記されている。. れている。. 以上のことから,1989年に出された学習指導要. その後,盲学校・聾学校及び養護学校小学部・. 領以降,継続して障害児の余暇を充実させること. 中学部学習指導要領(文部省,1998)では,第2. の重要性が述べられている。また,「職場での休. 章「各教科」 , 第2節「中学部」の「職業・家庭」. 憩時間」や「休日」,「自分の趣味や家庭の団らん. の項目において, 「余暇を有効に過ごすための方. で自由になる時間」など余暇の場面が具体的に示. 法を知り,生活に生かす。」と示されている。こ. されるようになった。さらに,障害児だけではな. のことについて,盲学校・聾学校及び養護学校学. く,職場の人や家族などの,他者の余暇の過ごし. 習指導要領(平成11年3月)解説各教科,道徳及. 方を把握することの必要性も示され,障害児個人. び特別活動編(文部省,2000)では,「『余暇を有. だけではなく,家族などの他者と過ごす余暇も重. 効に過ごすため』とは,職業生活における職場で. 要視されるようになったと言える。. の休憩時間の意味が分かり次の仕事が効率よくで. 学校教育法等の一部を改正する法律(文部科学. きるように休むことや,家庭生活においては,自. 省,2006)において,2007年から盲学校,聾学校,. 分の趣味や家庭の団らんで自由になる時間を使う. 養護学校の区別をなくし特別支援学校として,特. ことである」と記されている。また,「『余暇』に. 別支援教育がはじまった。それに伴い,学習指導. 57.
(5) 中村 龍平・細谷 一博. 要領も「盲学校・聾学校及び養護学校学習指導要. このように,学校で学んだ余暇活動を自分の日. 領」から「特別支援学校学習指導要領」に名称が. 常生活を通して実践し,家庭生活に生かすように. 変更した。. 示された。このことから,余暇の有効な過ごし方. 特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(文. を日常生活に取り入れていくが重要であり,余暇. 部科学省,2009d)では,第2章「各教科」,第. を有効に過ごす力を育むことの必要性は以前より. 2節「中学部」の「職業・家庭」の項目において,. も高まったと言える。. 「家庭生活における余暇の過ごし方が分かる」と. その後の特別支援学校小学部・中学部学習指導. 示されている。このことについて,特別支援学校. 要領(文部科学省,2017)では,第2章「各教科」,. 学習指導要領解説総則等編(幼稚部・小学部・中. 第2節「中学部」において,余暇の位置付けは,. 学部) (文部科学省,2009b)では,「『家庭生活. 「職業・家庭」の項目の目標と内容が職業分野と. における余暇の過ごし方が分かる』とは,余暇の. 家庭分野に分けられた。余暇に関しては,家庭分. 有効な過ごし方を自分の日常生活を通して実践す. 野の内容に「健康や様々な余暇の過ごし方につい. ることで,家庭生活に生かすことである。『家庭. て知り,実践しようとすること」「望ましい生活. 生活』とは,家族や施設の仲間など,一緒に暮ら. 環境や健康及び様々な余暇の過ごし方について気. す他人との生活であり, 『余暇の過ごし方が分か. 付き,工夫すること」「健康管理や余暇の過ごし. る。 』とは,その中で自分の趣味や家庭での団ら. 方について理解し,実践すること」「望ましい生. んで自由になる時間を有効に使うことである。」. 活環境や健康管理及び自分に合った余暇の過ごし. と示されている。また,「『余暇』に関する指導で. 方について考え,表現すること」と示されている。. は,家庭などでは,それぞれが様々な時間の過ご. このことについて,特別支援学校学習指導要領解. し方をしているが,それぞれが自由に過ごす時間. 説各教科等編(小学部・中学部)(文部科学省,. だけではなく,食事や団らんなど共に過ごす時間. 2019a)では,「家庭での食事や睡眠等,生活習慣. や,互いに手伝いをする時間があることに気付く. や生活リズム,余暇の過ごし方等の日常生活が健. ことなど,一緒に暮らす者にとっても,大切な共. 康に大きく影響をしていることを知ることであ. 有する時間のあることが分かるようにすることが. る。『余暇』は,生活を豊かにするとともに,学. 大切である」と記されている。また,特別支援学. 校生活や将来の職業生活を健やかに過ごす上でも. 校高等部学習指導要領(文部科学省,2009c)では,. 重要な活動である。」と余暇の重要性について記. 第2章「各教科」,第2節「知的障害者である生. されている。また,「友達と共に楽しむことや,. 徒に対する教育を行う特別支援学校」の「職業」. 地域の公共施設等を利用したり,地域行事に参加. の項目において, 「職業生活に必要な健康管理や. したりする体験などを通して,他者との関わりや. 余暇の有効な過ごし方が分かる」 「職業生活に必. 活動の幅が広がるよう指導することも大切であ. 要な健康管理や余暇の計画的な過ごし方について. る。指導に当たっては,生徒が主体的に余暇を選. の理解を深める」と示されている。このことにつ. 択できるよう有益で多様な余暇活動を体験させな. いて, 特別支援学校学習指導要領解説総則等編(高. がら興味・関心を広げること,実際に余暇活動を. 等部) (文部科学省,2009a)では, 「職場で働く. 選択する経験を積むことなどが大切である」と記. ことを中心とした生活をする上で求められる自ら. されている。特別支援学校高等部学習指導要領(文. の健康を守る方法や職場での休憩時間,休日の有. 部科学省,2019c)では,第2章「各教科」,第2. 効な生かし方などが分かり実践することである」. 節「知的障害者である生徒に対する教育を行う特. 「健康な状態で職場に継続的に勤める方法や職場. 別支援学校」の「家庭」の項目において,「健康. での休憩等の時間を積極的に生かす方法を知るこ. 管理や余暇の有効な過ごし方について理解し,実. とである」と示されている。. 践すること」「健康管理や余暇の有効な過ごし方. 58.
(6) 障害者を対象とした余暇学習(活動)に関する文献研究. について考え,表現すること」 「健康管理や余暇. 障害や聴覚障害,肢体不自由の項目に記述は見ら. の有効な過ごし方について理解を深め,実践する. れなかった。. こと」 「健康管理や余暇の有効な過ごし方につい て考え,工夫すること」と示されている。このこ とについて,特別支援学校学習指導要領解説知的. Ⅳ.学校の教育活動における取り組み. 障害者教科等編(下) (文部科学省,2019b)では,. 高畑・武藏・安達(2000)は,知的障害養護学. 「家庭等において,スポーツや音楽鑑賞,ペット. 校高等部に在籍している生徒9名を対象に,教. の飼育,植物の栽培などを行うことなどにより,. 科・領域を合わせた指導の授業において,一人又. 生活を楽しむことができることを理解できるよう. は対象生徒同士でボウリング場を利用するスキル. にする」 「家庭生活の中で個人が自由に使える時. の形成を目的とした実地指導を行った。また,ボ. 間や休日を自分の趣味に有効に活用することや,. ウリング場の利用についてのアンケート調査を. 家族などと有意義に余暇を過ごしたりすることに. 行った。その結果,休日に対象生徒同士で,ボウ. ついて理解を深め,実践できるようにする」と記. リング場に行く姿が見られ,他の余暇活動への関. されており,家庭生活の中で趣味を見つけ,それ. 心も高まった。このことから,生徒同士の行動に. を楽しむことができるようになることとしている。. 積極的な影響を及ぼし合うため,仲間を媒介とし. このように,余暇を充実させることは重要であ. た指導が有効であると指摘している。また,子ど. り,余暇の場面として「公共施設」や「地域行事. ものニーズに合わせて,保護者や社会の協力も必. への参加」が新たに示された。家庭内での余暇の. 要であると述べている。その一方で,現在の学校. 他に,外の施設の利用や友人などの他者との関わ. 教育では,実地指導が単発的,部分的に展開され. り等も余暇で取り扱うべき内容に含まれ,これら. る場合が多く,継続した実地指導を中核とした指. を体験させることが重要だと言える。また,余暇. 導計画を編成するための,学校教育における教育. の有効な過ごし方を日常生活に取り入れると共. システムのあり方を,今後さらに検討していくこ. に,余暇の選択肢を増やし,自ら余暇を選択でき. とが求められると述べている。また,安川・小林. るように指導を行うことが必要だと言える。. (2004)は,小学校情緒障害通級指導学級に在籍. 以上のように,盲学校・聾学校及び養護学校学. する自閉症の男子1名を対象に,個別教育計画を. 習指導要領(文部省,1989)から特別支援学校学. もとに,余暇施設(プール)を利用するスキルの. 習指導要領 (文部科学省,2019)までのすべてに,. 習得を目指した指導を行った。その結果,移動や. 余暇の指導が位置付けられており,現行のものに. 電話,バスに乗車する等のスキルが向上し,一人. 近づくにつれて,具体的に記載されるようになっ. でプールに行くことが可能になったと報告してい. ていることから,学校教育における余暇指導の重. る。このことから,小学校段階の余暇指導として. 要性は高まっていると言える。また,余暇の場面. は,余暇活動に必要なスキルを獲得するための学. が具体的に示されるようになり,家庭外での余暇. 習を段階的に行うことが重要であると指摘してい. についても記されるようになったことから,障害. る。また,中学校進学後や将来のライフスタイル. 児(者)が社会に出て,余暇活動を行うことが重. を想定した目標を設定することが,必要であると. 要視されてきていると言える。そのため,障害児. 述べている。さらに,学習した余暇活動を休日の. (者)が選択できる余暇を増やしていくことが重. 余暇に般化することが必要であり,保護者と連携. 要であり,学校教育においても様々な余暇指導を. して家庭でも実行できるようにすることが必要で. 行う必要があると言える。しかし,学習指導要領. あると指摘している。さらに,岡部・渡部(2006). において余暇について記されているは,各教科の. は,知的障害養護学校中学部に在籍する生徒3名. 精神薄弱児や知的障害児の部分のみであり,視覚. を対象に,昼休みの時間を用いて,複数の選択肢. 59.
(7) 中村 龍平・細谷 一博. から好みの活動を表出する選択機会を設定し,自. 付けが高められたと述べている。また,障害が重. 発的に余暇活動を開始する支援を行った。その結. 度であり,自らの力で余暇活動を行うことが困難. 果,すべての生徒が教室場面において,自発的に. な場合は,各個人のニーズに合わせたアセスメン. 余暇活動を開始することが可能になった。このこ. トを行い,家族の負担が重くならないような活動. とから,自発的に余暇活動を開始していくために. 内容や方法を検討する必要性があると指摘してお. は,物理的余暇環境の整備,本人の興味や関心に. り,対象者の意向を考慮した余暇活動は,生活環. 基づく活動の提示,指導でのプロンプト個別化,. 境が変化しても維持されやすく,本人なりに楽し. 自分で活動を参加したことへの強化子の提示と. みを見つけながら活動を行うことができると述べ. いった,個別的な指導が必要だと述べている。ま. ている。内田・伊藤(2011)は,特別支援学校中. た,課題として,学校で実施している指導と家庭. 学部に在籍するダウン症児1名,自閉症児1名を. での余暇の充実が保護者の意識の中で別のものと. 対象に,昼休みに卓球やTボール等の余暇支援を. して捉えられているため,学校での余暇指導を家. 実践し,特別支援学校における余暇支援の内容や. 庭へつなげることが重要であると述べている。大. 方法についての検討を行った。その中で,知的障. 谷(2006)は,知的障害養護学校高等部2年に在. 害に直接アプローチしなくても,個の特性や興味,. 籍する男児3名を対象に,進路学習の授業を用い. 関心に応じた環境への支援を行うことで,活動へ. て,卒業生の余暇の過ごし方を知る,自分が取り. の参加が実現し,余暇活動を十分に楽しめるよう. 組んでみたい興味のある活動について考える等の. にすることが重要であると述べている。また,特. 指導を行った。その結果,授業開始時には,余暇. 別支援学校における余暇支援の在り方は,生徒の. の過ごし方に関して意識することがなかったが,. 個別のニーズに応じた余暇活動の紹介,好きな活. 授業で情報の提供を受けると,自分の余暇の充実. 動の発見や開発,活動の場の提供,活動の支援ツー. や卒業後の余暇に関して考えるようになったこと. ルの開発・提供等の直接的支援と,個別の教育支. を報告している。このことから,卒業生の余暇や. 援計画の策定による家庭・地域・関係機関と連携. 地域で行われている余暇活動について知ること. 協力した支援を行える体制づくりや余暇支援の内. は,余暇に関する知識を深めるために有用である. 容の含まれた教育課程や個別指導計画の作成によ. と述べている。また,余暇の情報を提供する場合. る学校組織全体での取り組み等の間接的支援であ. は,スポーツや資格等の多様な情報を提供するこ. ると述べている。和田(2018)は,知的障害特別. とで,生徒が興味を抱き,自分の余暇を充実させ. 支援学校高等部に在籍する男子生徒1名を対象. た い と い う 思 い に 繋 が る と 述 べ て い る。 岸 田. に,数学科と教科・領域を合わせた指導の時間に. (2010)は,知的障害養護学校高等部に在籍する. おいて,ナンプレを用いて自宅や職場の休憩時間. 女子生徒1名を対象に,対象者が好みである塗り. の適切な過ごし方につながる余暇活動をどのよう. 絵の活動を踏まえて,塗り絵のスキルの向上と家. に身に付けていくことが求められるのか,学校の. 庭での定着を目標に余暇指導を行った。その結果,. 教育活動にどのように位置付け,どのように育て. 塗り絵のスキルの向上が認められ,一時的に家庭. ていけばよいか検討した。その結果,学校や家庭. においての活動が見られなくなったものの,対象. での余暇の過ごし方にナンプレが追加され,学校. 者が家庭での自由時間において一人で行う余暇活. 卒業後の職場の休憩時間でもナンプレを行う姿が. 動の選択肢として,塗り絵活動が維持されたと報. 見られたことを報告している。このことから,本. 告している。これらのことから,スキルが向上し. 人と家族の好みやライフスタイルをもとに余暇活. たことによって,今までの絵の描き方に変化が起. 動の選択肢を選定すること,状況と条件に応じた. こり,周囲から褒められる機会が増え,本人の活. 余暇活動の選択肢の充実を図ること,卒業後の職. 動が他者から認められ,再び絵を描く活動の動機. 場での過ごし方を見据えた上で,学校生活時代か. 60.
(8) 障害者を対象とした余暇学習(活動)に関する文献研究. らの余暇活動の充実と余暇活動に関する学習を教. が高かったことを報告している。また,保護者の. 育課程に位置付けて実施することが重要であると. ほとんどが学校で余暇指導を行ってほしいと回答. 述べている。また,状況や条件に応じた余暇活動. していると報告している。これらのことから,知. の選択肢を増やすように,余暇の充実を志向した. 的障害児の教育においては,学校で学習したこと. 教育内容を,より多くの学校において教育活動に. や習得したスキルが,日常の生活場面に般化して. 位置付けていくことが,今後の課題であると指摘. いくことが最も重要なことであると述べている。. している。. また,渡部・野波・海塚・南出(2000)は,学校. 以上のように,特別支援学校や特別支援学級に. 週5日制が障害児や障害児の抱える家庭に対しど. おいて,知的障害や自閉症,ダウン症をもつ児童. のように影響しているかを明らかにするために,. 生徒を対象に余暇学習が行われていることが明ら. 幼稚園,小学校,中学校,養護学校,聾学校に在. かになった。余暇学習を行う際は,児童生徒の興. 籍する子どもの保護者を対象にアンケート調査を. 味や関心に基づいた余暇学習や余暇の提供を行う. 行った。その結果,子どもの余暇に対する評価に. ことの重要性が指摘されている。また,児童生徒. ついて,健常児の保護者は,「地域の子どもと遊. の家庭での生活や,卒業後を見据えて学習,般化. ぶ時間が増え,社会性が出てきた」「子どもの生. を行っていくことの必要性が指摘され,教育活動. 活に活気が出てきた」と回答しているのに対し,. への位置付けを検討することが必要であるといえ. 障害児の保護者は,「自分一人で過ごすことが多. る。しかし,学校の余暇学習の取り組みにおいて. く,寂しそうである」「家庭で時間を持て余すよ. も,知的障害や発達障害のものが多く,視覚障害. うになった」という回答が多かったことを報告し. や聴覚障害,肢体不自由をもつ児童生徒を対象と. ている。また,学校や地域社会に対して,障害児. した研究は見られなかった。. の保護者は「子どもの世話をする指導員やボラン ティアの確保」「子ども対象の社会教育活動の充. Ⅴ.余暇学習(活動)の保護者のニーズ. 実」を希望していると報告している。これらのこ とから,障害児の保護者は余暇の際に,子どもを. 保護者を対象とした余暇のニーズについては,. レジャー施設等へ連れて行くことを希望してお. 休日の過ごし方,長期休業,卒業後のニーズに分. り,それらに対する支援方法を検討しなければな. けて整理する。. らないと述べている。さらに,障害児が家の中だ. まず,休日に焦点を当てたものとして,関戸. けでなく,友人と過ごす機会を増やすために,交. (1998)は,中学校の知的障害特殊学級の担任と. 流教育を行い,地域の子どもと接する機会を作っ. その学級に在籍している生徒の保護者を対象にア. ていくことが重要であると指摘している。さらに,. ンケート調査を行い,特殊学級に在籍している生. 武田・我妻(2006)は,小学校と中学校,知的障. 徒が家庭で余暇をどのように過ごしているか,特. 害養護学校に在籍する児童生徒の保護者390名を. 殊学級担任が余暇指導をどのような意向をもって. 対象にアンケート調査を行い,健常児と知的障害. いるか,保護者は学校での余暇指導に対してどの. 児の余暇生活の実態の違いと知的障害児における. ような意識や要望をもっているかを検討した。そ. 課題を明らかにする研究を行った。その結果,知. の結果,アンケートに回答した多くの学級が余暇. 的障害児は,健常児と比べ,家庭で過ごす時間が. 指導を行っており,教師は生徒たちが友人ととも. 長く,テレビを見る等の単調な過ごし方をしてい. に公共施設等の外で余暇を過ごしてほしいと願っ. る児童生徒が多いことを報告している。また,そ. ていると報告している。しかし,生徒の余暇は,. のような状況に保護者は,家庭だけではなく,レ. 一人や家族と余暇を過ごすことが多く,その内容. ジャー施設やショッピング等の地域社会で過ごし. もテレビやラジオの視聴,テレビゲームなど割合. てほしいと考えていることを報告している。これ. 61.
(9) 中村 龍平・細谷 一博. らのことから,学校や地域は,知的障害児が将来. 害への理解と実際的なかかわり合いの技量に対す. 的に余暇の時間を持て余してしまうような状態を. るニーズが含まれていると言えると述べている。. 改善するために,余暇教育の一環として,様々な. 黒山・高島・豊島(2011)は,自閉症児を子に持. 経験を増やしていく中で子どもが主体的に楽しめ. つ保護者を対象に,余暇支援において保護者がど. る余暇活動につながるような個別的,集団的取り. のような支援ニーズを持っているかについて調査. 組みを充実させることが必要であると指摘してい. を行った。その結果,子どもたちは放課後や休日. る。また,知的障害児の余暇は,家族が同伴する. に療育センターや生活介護施設,デイサービス等. ことが多く,家族の自由時間が奪われてしまうた. に通うことが多いことを報告している。また,保. め,福祉サービスやボランティアの受け入れ態勢. 護者はそれらのよい面として,何か身に付けても. を充実させることが重要であると述べている。こ. らえる,友達と関わる時間を持てる,親が用事を. の他にも,中村・川住(2007)は,盲聾児の保護. 済ませられる等をあげている。さらに,希望する. 者を対象に,盲聾児の余暇の過ごし方及び余暇に. 支援として,運動施設や遊び場,夜間・緊急時の. 関する保護者の要望についてアンケート調査を. 預かり先があげられており,室内で遊べたり,運. 行った。その結果,コミュニケーションの初歩的. 動したりできる施設が切望されている現状を報告. な段階にある児童は, 「家族の身体を触っている」. している。これらのことから,子どものための余. 「ドライブや散歩に行く」が多く見られ,数種の. 暇活動の場は,保護者のゆとりの確保や用事を済. コミュニケーション手段を持つ児童は, 「学童保. ませるためなどに重要であり,保護者は子どもの. 育」 「フリースクール」「公園に行って遊ぶ」等が. 将来を考えソーシャルスキルや就労を意識したス. 多く見られたことを報告している。また,余暇を. キルの獲得への希望が強いと述べている。また,. 一緒に過ごしている相手は,親やボランティアが. 年齢が上がり将来の子どもたちの自立の可能性へ. 最も多く,友人等の家族以外の者と接する機会が. の意識がより明確になることから,友人関係の重. 乏しいことを報告している。保護者の要望につい. 視は子どもたちにとって特に重要と捉えられてお. ては, 「ボランティアを利用したいがどのように. り,余暇支援の提供側にはこうした年齢に応じた. して利用すればよいかわからない」 「ボランティ. 柔軟な支援の在り方が求められていると指摘して. アにもっと頻繁に来てもらい,子どもと関わる機. いる。松山(2015)は,自閉症児者を有する家族. 会を作ってあげたい」「地域のサークルや習い事. を対象に質問紙調査を行い,自閉症児者への学校. の教室,スポーツクラブなどで,子どもの障害を. や福祉施設等の余暇支援に対する意識を明らかに. 理解して参加を快く許可してほしい」という回答. する研究を行った。その結果,自閉症児者の家族. が多く見られたことを報告している。これらのこ. は, 「余暇の楽しい過ごし方を見つけること」, 「楽. とから, コミュニケーション方法の違いによって,. しい余暇活動については継続すること」を望んで. 活動内容に違いが生じ,コミュニケーションの困. いると報告している。このことから,自閉症児者. 難性が高ければ,活動のレパートリーが広がりに. を有する家族は,社会的行動が求められる成人期. くいことを指摘している。また,ボランティアが. になる前に,余暇を過ごす技能,余暇活動に関す. 子どもの外出の機会を支える役割の一つを担って. る個人に応じた楽しみ方,さまざまな体験,本人. おり,感覚重複障害によって自力移動に多大な制. の意思に応じたもの,場所の確保,個々に応じた. 限を課せられる盲聾児にとっての外出の意義は大. 内容,楽しい過ごし方を見つけること,及び種類. きいといえると述べている。さらに,保護者の子. を増やすことを学校等の地域社会に求めていると. どもの余暇を支援する人材に関する要望の中に,. 述べている。中澤(2019)は,知的障害又は発達. 感覚重複障害への配慮,及び対象児のコミュニ. 障害のある小中学生8人を対象にアンケート調査. ケーションモードの理解とその使用など,盲聾障. を行い,子どもたちの休日の実態と保護者のニー. 62.
(10) 障害者を対象とした余暇学習(活動)に関する文献研究. ズを把握する研究を行った。その結果,ほとんど. の施設を活用したり,スポーツをしたりして余暇. の対象児は,テレビを見て過ごすことが多く,ス. を過ごして欲しいと考えており,保護者の負担を. ポーツをしている子どもも少数であったことを報. 軽減するために,一人での外出や友人,ボランティ. 告している。また,保護者は,このような休日の. アとの外出の機会を増やしてほしいと考えている. 過ごし方に対して,不満を示している割合が高く,. といえる。さらに,子どもたちが,地域の施設を. その理由として運動不足や遊びが単調になってし. 活用したり,一人で外出したり等の余暇を過ごす. まっていることをあげていると報告している。こ. ためのスキルを身に付けることを望んでいること. れらのことから,保護者は何らかの身体を動かす. が明らかになった。. 活動を余暇の中で行うことの必要性を感じている. 次に長期休業に焦点を当てたものとして,中山. ことが考えられると述べている。また,スポーツ. (2000)は,長期休業中の余暇の過ごし方につい. の機会への参加の要求が多く見られるが,そのよ. て調査を行った。その結果,長期休業においても. うな場が地域に少ないため,それらの活動に十分. テレビや音楽,ビデオの割合が高く,保護者や一. に参加できていないことを指摘している。中山. 人で過ごすことが多いことを報告している。この. (2000)は,高等養護学校に在籍する生徒を対象. ことから,保護者はどのようにして長期休業の余. に,余暇の実態と保護者のニーズについてのアン. 暇を充実したものにするか悩みを抱えており,学. ケート調査を行った。また,回答した保護者数名. 校教育は障害をもつ子どもたちの長期休業中の生. に対し,余暇の実態並びに地域での過ごし方を中. 活を家庭での生活から地域生活での充実したもの. 心に面接調査を行った。その結果,余暇の過ごし. にするための努力をしなければならないと述べて. 方として,平日,土曜,休日のすべてで,テレビ. いる。. や音楽,ビデオの割合が高く,土曜,休日では,. 長期休業中の余暇のニーズについての調査は,. 友人との関わりが少なくなり,保護者を中心とし. 他の研究にも見られた。今福・外舘(1997)は,. た家族との関わりや一人で過ごすことが多くなっ. 障害児が主体的に楽しめる余暇活動の在り方につ. ていることを報告している。保護者の評価として. いて考察することを目的として,中学校特殊学級. は, 「よくない」と評価する理由としては,興味,. に在籍している生徒を対象に,長期休暇の余暇の. 関心があるものが限られている,気軽に参加でき. 過ごし方についてアンケート調査を行った。また,. るサークルや施設がない等を報告している。また,. 子どもの生活の様子や学校への要求など実態を明. 「よい」と評価していても,障害児の行動する範. らかにするために,保護者との意見交流会を行っ. 囲が狭い,子どもが暇なときにどうしたらいいか. た。その結果,子どもたちの余暇は,家の中では. わからないなどの回答が得られたことも報告して. ゲームやテレビ,読書が多く見られ,外出する際. いる。これらのことから,学校教育の中に,図書. は家族と共に行動することが多く見られたことを. 館の利用や買い物を取り入れて,子どもたちの地. 報告している。これらのことから,子どもたちの. 域での余暇活動の場を広げ,放課後活動の充実に. 外出による余暇は,家族の同伴や協力があってで. つなげることが重要であると指摘している。. きている活動が多いことを指摘している,さらに,. 以上のことから,障害児の余暇は,一人で過ご. 子どもが自ら楽しみを見つけて,それを行う力も. していることがほとんどであり,家庭でのテレビ. 身に付けることが必要であり,それを育成するた. やゲームなどの活動をしていることが多いといえ. めに地域や家庭と連携し,余暇教育を行っていく. る。また,外出をして地域の施設を活用したりす. こ と が 重 要 で あ る と 述 べ て い る。 由 谷・ 渡 部. ることは少なく,外出する際も保護者と共に行動. (2007)は,公立知的障害養護学校5校に在籍す. することが多いことが明らかになった。このよう. る児童生徒の保護者を対象にアンケート調査を行. な余暇の状況に対して,保護者は外出をして地域. い,夏期休業に対する意識と余暇支援のニーズに. 63.
(11) 中村 龍平・細谷 一博. ついて明らかにした。また,知的障害養護学校が. 流になり,運動不足や外出が少なくなっているこ. 関与した余暇支援活動に参加した保護者の事後評. とが伺える。また,保護者はこのような余暇の過. 価から,保護者の満足度を左右する要因について. ごし方に不満を抱えており,活動の単調さや外出. も検討した。その中で,余暇支援のニーズについ. の不自由さから,長期休業中の余暇の過ごし方に. ては,夏期休業中は家庭での単調な生活で運動不. ストレスや困難さを感じているといえる。そのた. 足になり,外出にも不自由を感じ,親子でストレ. め,児童生徒と保護者のニーズに沿った長期休業. スがたまるという割合が多く見られ,障害の程度. 中の余暇支援が必要だと考えられる。. が重いほど割合が高かったと報告している。また,. 最後に,卒業生の保護者を対象とした調査につ. 福祉関係の施設や学校で,ボランティアなどと一. いて,吉松(1997)は,生活年齢13歳から36歳の. 緒に屋外遊びを中心とした活動を希望する傾向が. 自閉症児者の保護者を対象に,余暇活動の実態調. 見られたと報告している。保護者の満足度を左右. 査を行った。その結果,生活年齢に関係なく,テ. する要因については,余暇支援活動の内容が少人. レビやビデオ,ラジオ,音楽鑑賞等の室内のもの. 数又は個別の対応であったこと,保護者の参加が. が多く,運動を伴わないものが多く見られたこと. 不要であったことが保護者の満足を左右する要因. を報告している。また,郊外での余暇活動をする. であると述べている。さらに,知的障害養護学校. 場合,同伴者を伴うことが多く,そのほとんどが. は,夏季休業中の余暇支援活動の選択肢の一部を. 保護者であることを報告しており,それにより保. 担っていく必要があると述べており,児童生徒の. 護者の時間的,心理的負担が大きいことを指摘し. 年齢や障害を踏まえた上で活動を企画すること. ている。これらのことから,保護者の負担を軽減. で,児童生徒と保護者のニーズに沿った余暇支援. することが,自閉症児者の余暇活動の場を広げる. が行えると述べている。細谷(2011)は,長期休. ためには必要であり,そのためには余暇活動の支. 暇支援プログラムに参加した知的障害児の保護者. 援を行う指導者や介助者の支援のあり方について. を対象にアンケート調査を行い,長期休業中にお. の検討が必要であると述べている。また,鈴木・. ける余暇実態と保護者のニーズを明らかにする研. 細谷(2016b)は,特別支援学校に在籍する児童. 究を行った。その結果,長期休業中の余暇の過ご. 生徒と特別支援学校OBの保護者を対象に質問紙. し方は, 「テレビ/ビデオ」 「外出」 「ゲーム/PC」. 調査を行い,知的障害児・者の余暇の現状と保護. に集中していることを報告しており,習い事や公. 者の負担及び余暇支援におけるニーズを明らかに. 共施設,福祉施設の利用も少ないことを報告して. する研究を行った。その結果,余暇の現状として,. いる。また,保護者は,長期休業中の余暇の過ご. 年齢が上がるにつれて,余暇支援団体への参加率. し方に対して困っており,その理由として,運動. が減少している傾向が見られ,卒業後に余暇支援. 不足や活動の単調,場所の制約が多く見られたこ. 団体や福祉関係の情報が少ないことから利用に結. とを報告している。これらのことから,知的障害. び付いていないと指摘している。また,主な趣味. 児の余暇の過ごし方は,マスメディアへの活動が. の内容は「ゲーム」「DVD・ビデオ鑑賞」が日常. 多く,休日,長期休業ともに同様の傾向が見られ. 的に多く見られ,日常的に運動する機会が少ない. ることを指摘している。また,長期休業中におけ. ことを指摘している。さらに,保護者の養育負担. る知的障害児の余暇活動においては,他者とのコ. については,保護者にとって日常的な負担は多く. ミュニケーションを必要としない特定の活動に集. 存在しており,特に親がいなくなったときの援助. 中してしまう結果,活動の選択肢が少なくなって. や障害に関する周りの理解を必要としていると述. いることが大きな課題であると述べている。. べている。これらのことから,知的障害児・者の. 以上のことから,障害児の余暇は長期休業中に. 余暇生活においては,地域と交流し,親から自立. おいても,家庭でのテレビやゲーム等の活動が主. した生活を送ることで日々の充実に繋がると指摘. 64.
(12) 障害者を対象とした余暇学習(活動)に関する文献研究. している。また,そのような余暇生活を実現する. えられる。このような余暇の状況に対し,保護者. ためには,余暇活動における地域の理解や親の負. は,子どもたちの余暇活動の種類を増やすことや. 担を軽減できる余暇活動を教えていく必要性が示. 家族以外の人と過ごすこと,地域との交流等を増. 唆されると述べている。さらに,栗林・野崎・和. やしてほしいと考えており,学校教育の中で,余. 田(2018)は,特別支援学校の卒業生の就労,生. 暇を過ごすスキルの獲得や余暇に関する情報の提. 活,余暇の実態や課題を把握することを目的とし. 供を求めているといえる。. て,高等部を卒業した知的障害者の保護者を対象 にアンケート調査を行った。その結果,休日の主 な過ごし方は,テレビやゲーム,パソコンの使用. Ⅵ.まとめ. が多く,家族と一緒に過ごすことが多いことを報. 本研究では,特別支援教育に関する学習指導要. 告している。また,保護者は余暇のレパートリー. 領を概観し,その上で学校の教育活動として行わ. を増やすことや家族以外と一緒に過ごす余暇の充. れている余暇学習の実践的な取り組みと保護者の. 実を求めていることを報告している。これらのこ. 余暇学習(活動)のニーズに関する報告から,余. とから,学校在学中から生徒本人と保護者に情報. 暇学習の成果と今後の課題を明らかにすることを. を提供し,グループホームを見学することや余暇. 目的とした。. 活動の選択肢を増やすなど経験を通した教育活動. 学習指導要領上の位置付けとしては,盲学校・. の充実が求められていると指摘している。この他. 聾 学 校 及 び 養 護 学 校 学 習 指 導 要 領( 文 部 省,. にも,野崎・栗林・和田(2018)は,知的障害特. 1989)から現在の特別支援学校学習指導要領(文. 別支援学校の卒業生と保護者を対象にアンケート. 部科学省,2019)に至るまで,余暇に関する記述. 調査を行い, 学校教育の成果と課題を明らかにし,. の具体性が増していることから,学校教育におけ. 学校教育に求められている取組や卒業後の就労・. る余暇の指導の重要性が年々高まってきていると. 生活・余暇を支えるために学校にできることや必. 考えられる。しかし,学習指導要領上の余暇に関. 要とされている具体的な学習内容や教育課程につ. する記述は,精神薄弱児や知的障害児の項目には. いて検討する研究を行った。その結果,余暇につ. 見られたものの,視覚障害,聴覚障害,肢体不自. いて,卒業生本人の満足度は高く,特にバスや電. 由の項目には記述が見られなかった。障害種に関. 車の利用,時刻表の利用の「交通機関の利用」の. 係なく,余暇を充実させることは,生活の質の向. 項目において満足度が高かったことを報告してい. 上などに影響を与えることから必要であると考え. る。また,保護者についても,満足度は高く, 「施. られる。. 設の利用」 「交通機関の利用」「余暇活動」の項目. また,学校の教育活動として行われている余暇. において満足度が高かったことを報告している。. 学習の実態としては,特別支援学校や特別支援学. これらのことから,在学中の学習が本人の卒業後. 級において,知的障害や自閉症,ダウン症の児童. の安心できる生活や生活の幅を広げることにつな. 生徒を対象に行われており,ボウリング場やプー. がる可能性があると考えられるため,卒業後の生. ル等の施設を利用するスキルの指導や塗り絵,ナ. 活を考慮した学習活動を教育課程に位置付ける視. ンプレ等の余暇が提供されており,家庭内外に問. 点が重要であると指摘している。. わず余暇学習が行われていることが明らかになっ. 以上のことから,障害児の卒業後の余暇は,家. た。また,余暇学習を行う際には,子どもたちの. でのテレビやゲーム,パソコン等の活動が多く,. 興味,関心に基づいた個別的,段階的な指導の重. 運動や外出を行うことは少ないといえる。また,. 要性が報告された。さらに,保護者や地域との連. 外出する際も保護者が同伴することが多く,それ. 携,家庭環境や将来を想定した指導を行い,家庭. による保護者の時間的,心理的負担も大きいと考. や卒業後に余暇が維持されるように取り組みを行. 65.
(13) 中村 龍平・細谷 一博. うことが重要であると示された。 余暇学習の課題としては,子どもたち一人一人 の家庭や職場の状況,条件に応じた余暇が行える ように,部分的な指導ではなく,教育課程に位置 付けた継続的な指導が求められていることが明ら かになった。また,学校の余暇学習の取り組みに おいても,知的障害や発達障害のものが多く,視 覚障害や聴覚障害,肢体不自由をもつ児童生徒を 対象とした研究は見られなかった。障害者基本法 (1993)や障害者の権利に関する条約(2008)が 示しているように,視覚障害や聴覚障害,肢体不 自由等の障害児・者の余暇の充実も必要であると 考えられる。永松(1992)は,視覚障害は,行動 の自由を著しく制限しており,身体的活動を誘発 する刺激を少なくしていると指摘している。また, それによって生活行動の範囲は狭く,行動する時. 由児の社会生活能力の発達と学校卒業後の進路.和歌 山大学教育学部紀要教育科学,57,33-41. 2) 外務省(2008)障害者の権利に関する条約. 3) 細谷一博(2011)長期休業中における知的障害児の 余暇実態と保護者ニーズに関する調査研究.発達障害 支援システム学研究,10⑴,11-17. 4) 今福裕美・外舘郁子(1997)障害児の余暇活動のあ り方に関する一考察―子どもたちが主体的に楽しめる 活動を求めて.北海道教育大学コミュニケーション障 害研究,4,181-190. 5) J. デュマズディエ(1972)余暇文明に向かって,東 京創元社. 6) 岸田朋子(2010)知的障害者への「大人の塗り絵」 を用いた余暇指導とそのスキルの向上が対象者とその 家族に与える影響の検討.摂南大学教育学研究,6, 47-64. 7) 栗林睦美・野崎美保・和田充紀(2018)特別支援学 校卒業後における知的障害者の就労・生活・余暇に関 する現状と課題―保護者を対象とした質問紙調査から ―.富山大学人間発達科学部紀要,12⑵,135-149.. 間も種類も少ないというのが実状であると述べて. 8) 黒山竜太・高島恭子・豊島律(2011)自閉症児の余. いる。さらに,江田・田川・石本(2006)は,肢. 暇活動における保護者の支援ニーズに関する研究.長. 体不自由児者は運動障害による活動の制限を伴 い,日常生活動作やコミュニケーション,余暇活 動の能力などの社会生活能力の全般に困難を生じ ると指摘している。このように,視覚障害や聴覚 障害,肢体不自由等の障害児・者は,余暇活動を 行う時の困難として,身体機能などがあげられ, それぞれの障害児・者の余暇の実態把握をもと に,余暇学習や余暇支援の検討を行っていくこと が必要であると考えられる。 また,保護者のニーズからは,在校生の休日や 長期休業,卒業生に問わず,テレビやゲーム等の 家庭での余暇が多く見られ,一人や家族と過ごす ことが多いことが明らかになった。保護者は,地 域の施設やスポーツ等の余暇活動を行うこと,友 人やボランティア等と関わることを望んでいるた め,余暇学習において,施設の利用方法の指導や 地域のスポーツ団体,余暇支援団体等の情報提供 を行っていくことが求められていると考えられる。. 崎国際大学論叢,11,67-73. 9) 松山郁夫(2015)自閉症児者への余暇支援に対する 家族の捉え方.佐賀大学教育学部研究論文集,1⑴, 133-141. 10) 文部科学省(2009a)特別支援学校学習指導要領解説 総則等編(高等部) . 11) 文部科学省(2009b)特別支援学校学習指導要領解説 総則等編(幼稚部・小学部・中学部) . 12) 文部科学省(2009c)特別支援学校高等部学習指導要 領. 13) 文部科学省(2009d)特別支援学校小学部・中学部学 習指導要領. 14) 文部科学省(2017)特別支援学校小学部・中学部学 習指導要領. 15) 文部科学省(2019a)特別支援学校学習指導要領解説 各教科等編(小学部・中学部) . 16) 文部科学省(2019b)特別支援学校学習指導要領解説 知的障害者教科等編(下) . 17) 文部科学省(2019c)特別支援学校高等部学習指導要 領. 18) 文部省(1989a)盲学校・聾学校及び養護学校高等部 学習指導要領. 19) 文部省(1989b)盲学校・聾学校及び養護学校小学部・ 中学部学習指導要領.. 文 献 1) 江田裕介・田川元康・石本真佐子(2006)肢体不自. 66. 20) 文部省(1991)特殊教育諸学校小学部・中学部学習 指導要領解説養護学校(精神薄弱教育)編. 21) 文部省(1992)特殊教育諸学校高等部学習指導要領.
(14) 障害者を対象とした余暇学習(活動)に関する文献研究. 解説養護学校(精神薄弱教育)編. 22) 文部省(1998)盲学校・聾学校及び養護学校小学部・ 中学部学習指導要領. 23) 文部省(1999)盲学校・聾学校及び養護学校高等部 学習指導要領. 24) 文部省(2000)盲学校・聾学校及び養護学校学習指 導要領(平成11年3月)解説各教科,道徳及び特別活 動編. 25) 永松義博(1992)盲学校生徒の余暇活動に関する研究. 造園雑誌,49⑴,1-9.. お助けブック」を活用した養護学校での余暇指導.特 殊教育学研究,37⑸,129-139. 39) 武田美穂・我妻則明(2006)学校週5日制における 知的障害児の余暇生活に関する調査研究―盛岡市とそ の近郊地域の実態調査―.岩手大学教育学部附属教育 実践総合センター研究紀要,5,163-182. 40) 内田浩二・伊藤良子(2011)特別支援学校における 余暇活動への支援のあり方.東京学芸大学教育実践研 究支援センター紀要,7,141-145. 41) 和田充紀(2018)自宅や職場で気軽にできる余暇活. 26) 内閣府(1993)障害者基本法.. 動に関する研究―知的障害特別支援学校における「ナ. 27) 中村保和・川住隆一(2007)盲ろう児の余暇の過ご. ンプレ」を活用した実践から―.富山大学人間発達科. し方―保護者に対する質問紙調査を通して―.特殊教 育学研究,44⑸,301-313.. 学部紀要,13⑴,51-58. 42) 渡部信一・野波千代・海塚敏郎・南出好史(2000). 28) 中山孝之(2000)知的障害児の余暇と地域生活―余. 学校週5日制における障害児の余暇利用に関する調査. 暇の実態調査より―.情緒障害教育研究紀要,19,. 研究―福岡県・熊本県の現状と問題点―.特殊教育学. 239-246. 29) 中澤幸子(2019)知的障害あるいは発達障害のある. 研究,38⑵,73-82. 43) Yalon-Chamovitz, S., Mano, T., Jarus, T., &. 子どもの余暇活動についての検討.山梨障害児教育学. Weinblatt, N. (2006) Leisure activities during school. 研究紀要,13,81-89.. break among children with learning disabilities:. 30) 野崎美保・栗林暁美・和田充紀(2018)知的障害特 別支援学校に求められる教育課程編成の視点の検討― 卒業生と保護者を対象とした質問紙調査の結果から―. 富山大学人間発達科学部紀要,13⑵,319-333. 31) 岡部一郎・渡部匡隆(2006)発達障害のある生徒の. preference vs. performance. British Journal of Learning Disabilities, 34⑴, 42-48. 44) 山田信子(1990)精神遅滞者の余暇の実態とよりよ いあり方について.情緒障害教育研究紀要,9,111114.. 余暇活動の自発的開始の指導―知的障害養護学校にお. 45) 安川直史・小林重雄(2004)自閉性障害児の余暇指. ける休み時間の変容を通して―.特殊教育学研究,44. 導の実践―個別教育計画による「一人で水泳に行く」. ⑷,229-242.. の指導―.特殊教育学研究,42⑵,123-132.. 32) 大谷博俊(2006)知的障害養護学校における「進路」. 46) 吉松靖文(1997)自閉性障害児者の余暇活動に関す. に関する授業研究.特殊教育学研究,43⑸,363-372.. る研究―余暇活動の実態調査―.愛媛大学教育学部障. 33) 李瑩・仲野隆士(2016)QOLに及ぼす余暇活動の影. 害児教育研究室研究紀要,21,105-108.. 響に関する研究―中国における広場ダンスの事例―.. 47) 由谷るみ子・渡部匡隆(2007)知的障害養護学校に. 仙台大学大学院スポーツ科学研究科修士論文集,17,. おける夏期休業中の余暇支援に関する検討―保護者へ. 51-58.. のニーズ調査と余暇支援活動の事後評価から―.特殊. 34) Schalock R, L. (2000) ク オ リ テ ィ・ オ ブ・ ラ イ フ. 教育学研究,45⑷,195-203.. (QOL)―その概念化,測定,適用―(岩崎正子 指 定発言・監訳).発達障害研究,24⑵,106-120. 35) 関戸英紀(1998)中学校特殊学級における知的障害 児に対する余暇指導―教師の意向と保護者の要望との. . (中村 龍平 函館校大学院生). . (細谷 一博 函館校教授) . 比較を通して―.横浜国立大学教育人間科学部紀要教 育科学⑴,35-48. 36) 鈴木洸平・細谷一博(2016a)成人知的障害者の余暇 生活における現状と課題.北海道教育大学紀要(教育 科学編),67⑴,181-190. 37) 鈴木洸平・細谷一博(2016b)知的障害児・者の余暇 支援における保護者のニーズ―北海道H市を中心とし たアンケートを通して―.北海道教育大学紀要(教育 科学編),66⑵,77-88. 38) 高畑庄蔵・武藏博文・安達勇作(2000)「ボウリング. 67.
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