同種造血細胞移植の激変
高松赤十字病院モーニングセミナー2018 2018.5.17(木曜日は臨床のコアレクチャー)高松赤十字病院
副院長
第一血液内科部長
大西宏明
移植後シクロフォスファミド(PTCY)によるHLA半合致移植2016年11月にクリーンルーム16室(全室個室、クリーンエリア内14室、エリア外2室)
高松赤十字病院血液内科病棟(本館10階)
写真5:デイルーム 患者さんのリハビ リのためエアロビ バイク・ウオーキン グマシンを設置し ています。景色を 見ながらのエクサ サイズは好評です。 写真1:入り口付近 クリーンエリアは廊 下を含めてクラス 100の清潔環境で あるため、自動ド アにより仕切られ ています。 写真2:西側入口 から 長い廊下の天井に もHEPAフィルター が設置され、クラス 100の環境なので 患者さんは歩行練 習ができます。 写真4:デイルーム もクラス100の環境 であり、瀬戸内海・ サンポートのシン ボルタワーをはじ め対岸の岡山県ま で見渡せます。
チーム医療
看護師 リハビリ 栄養士 口腔ケア HCTC 臨床工学士 医師 臨床心理士 専門看護師 MSW 薬剤師 臨床検査技師 研修医急性骨髄性白血病では、予後中間群でも余命1.3年
John C. Byrd et al. Blood 2002;100:4325-4336
長期生存が半分で 予後良好群?
6
移植後の骨髄
レシピエント血液細胞
ドナー血液細胞
白血病細胞
移植前
前処置にてほぼ絶滅
骨髄不全~輸注
生着・GVHD
どこやここ? 異物?造血細胞移植においては移植された免疫細胞が宿
主を傷害する(GVHD)
拒絶
GVHD
GVL
Graft vs Leukemia
拒絶
GVHD
Graft vs Host Disease
その一方で、移植された免疫細胞は宿主だけでな
く腫瘍細胞も傷害する(GVL)
PTCYはGVHD抑制効果、免疫回復に優れており、
非再発死
亡が少ないため安全に行える
同種造血細胞移植である。
宿主に対する免疫抑制が強力であるため
HLAが半分しか一
致しないドナーからも安全に移植
できる。ほとんどの患者に血
縁間
HLA半合致ドナーが存在する
ため、移植のタイミングも最
適化できる。さらに、
有用な免疫は維持できる
ため
移植担当医
の負担も軽減
できる。
このため近年急速に実施件数が増加している。(激変)
移植後シクロフォスファミド(P
TCY)によるHLA半合致移植
造血幹細胞が血液細胞に分化
末梢血
造血
幹細胞
骨髄
リンパ球 数年
Tリンパ球
ナチュラル
キラー細胞
Bリンパ球
網赤血球1日
赤血球120日
顆粒球2~3日
(好中球)
単球2~3日
血小板10日
Tリンパ球は胸腺で正と負の選択を受ける
Tリンパ球 前駆細胞 OK OK OK NG NG NG OK OK NG NG OK 胸腺髄質 で不の選択 を受ける。 自己のHLAへの 結合が強すぎて、 正常な細胞を攻撃 する可能性のある TCRを持ったTリン パ球も排除される。 胸腺でTリンパ球前駆細 胞は何十億ものTリンパ 球に分化する。それぞ れのTリンパ球はそれぞ れ異なるT細胞受容体 (TCR)を持つ。 Tリンパ球は、胸腺皮質 の上皮細胞によって正 の選択をうける。同種造血細胞移植後の患者さんのTリンパ球
1、患者さんの幹細胞から分化してきたTリンパ球が残存→移植前処置で死滅 2、ドナーの幹細胞から分化して、ドナーの胸腺で正および負の選択を受けた Tリンパ球が移植の時に混入=GVHDおよびGVLをおこす 3、ドナーの幹細胞から分化して、患者さんの胸腺で正および負の選択がなさ れたTリンパ球=患者に対しては免疫寛容、病原微生物には反応する day0 免疫抑制剤:上記の全Tリンパ球の免疫応答を弱める(無くす訳ではない)獲得免疫
HLA
class II
TCR
CD80
CD86
単球・マクロファージ
CD4+Tリンパ球
CD3
IL-1
IL-6
TNF
抗体産生
Bリンパ球
形質細胞
CD28
T細胞レセプターを介 して情報が伝達される T細胞レセプターを介したシグナル 以外に、co-stimulatory分子を介し たシグナルも必要HLA
すべての体細胞の表面にあって、細胞内で
作られた蛋白の一部分を抗原提示する
(ウイルス感染細胞の排除、および、自己
に対する免疫寛容に重要)
HLA class Ⅰ:HLA-A, B, Cw
HLA class Ⅱ:HLA-DR
単球とかマクロファージのような異物を貪
食する細胞表面にあって、貪食した異物の
一部分を抗原提示する
(抗原提示に重要)
Tリンパ球の応答
(GVHD)
CD28
IL-2
宿主細胞
CD4+Tリンパ球ドナー由来かつドナー胸腺で選択
CD8+Tリンパ球
細胞障害
サイトカイン
宿主の細胞
HLA
class I
TCR
同種造血細胞移植後の患者さんのTリンパ球
1、患者さんの幹細胞から分化してきたTリンパ球が残存→移植前処置で死滅 2、ドナーの幹細胞から分化して、ドナーの胸腺で正および負の選択を受けた Tリンパ球が移植の時に混入=GVHDおよびGVLをおこす 3、ドナーの幹細胞から分化して、患者さんの胸腺で正および負の選択がなさ れたTリンパ球=患者に対しては免疫寛容、病原微生物には反応する day0 免疫抑制剤:上記の全Tリンパ球の免疫応答を弱める(無くす訳ではない)免疫抑制剤
CD28
IL-2
宿主細胞
CD4+Tリンパ球ドナー由来かつドナー胸腺で選択
CD8+Tリンパ球
GVHDは減るけど
免疫能も低下する
宿主の細胞
HLA
class I
TCR
免疫抑制剤
細胞障害
サイトカイン
細胞膜における補助刺激・抑制分子
①細胞表面抗原は細 胞膜に浮かんでいる =自由に移動できる ②細胞外部分大きさ はいろいろ ③細胞内には酵素活 性がある(リン酸化酵 素=正シグナル、脱リ ン酸化酵素=負シグ ナル) 細胞外 細胞膜 細胞内細胞質内に抑制シグナルに関係する
脱リン酸化酵素を有するCD45(LCA)
は、MHC-Ag-TCR形成に伴い、端に
追いやられる
細胞膜 細胞内 (T細胞) 細胞内 (抗原提示細胞) 細胞膜 細胞外免疫チェックポイント
T細胞上には、複数の「補助刺激分子(受容体)」と「補助 抑制分子(受容体)」が存在し、抗原提示細胞などが発現す るリガンドと結合することにより、主刺激シグナルである MHC-TCR(主要組織適合性複合体-T細胞受容体)シグナ ル伝達経路を修飾する陽性(活性)及び陰性(抑制)シグナ ルを媒介する。これらのシグナルはそれぞれ、T細胞の生 存、増殖、分化、またはTCR上で認識された抗原に対する 応答を調整する。尚、狭義には、T細胞上の「補助抑制分 子(受容体)」のことを「免疫チェックポイント分子」と呼び、 代表的なものにCTLA-4、PD-1分子などがあり、T細胞上 の補助刺激分子と補助抑制分子からのシグナルの調整、 自己寛容の維持、免疫反応からの防御の役割を担う。広義 には免疫チェックポイント分子は、T細胞に限らず、他の免 疫系細胞に発現している「抑制シグナルが入る補助刺激分 子」も含まれる。 出典:北野滋久.臨床血液58:966-976,2017 表紙図説明適切に抗原提示を受けたT細胞は、
0時間.
HLA-抗原
がT細胞レセプターに結合する
同時に、補助刺激分子もリガンドと結合する
12時間後.細胞表面にIL-2レセプターを発現
24時間後.IL-2を分泌
48時間後.DNA合成が始る
72時間後.細胞分裂が始る
その後.
補助抑制分子を発現して、増殖を修了
Tリンパ球の免疫応答と移植後CPA
PTCY(posttransplant cyclophosphamide)
0時間.
Tリンパ球のT細胞レセプターに抗原が付く(抗原提示)
12時間後.細胞表面にIL-2レセプターが発現される
24時間後.IL-2が分泌される
48時間後.DNA合成が始る
72時間後.細胞分裂が始る
このため、48時間後位に、DNA合成に影響を与える抗がん剤(シクロ
フォスファミド)を投与すると、患者の細胞に反応して増殖しようとする
Tリンパ球(
アロ応答性Tリンパ球
)
のみ
が死滅する。
シクロフォスファミドは造血幹細胞には影響しないと言われている。
(ALDH:aldehyde dehydrogenase 1の発現の差)
同種造血細胞移植後の患者さんのTリンパ球
1、患者さんの幹細胞から分化してきたTリンパ球が残存→移植前処置で死滅 2、ドナーの幹細胞から分化して、ドナーの胸腺で正および負の選択を受けた Tリンパ球が移植の時に混入=GVHDおよびGVLをおこす 3、ドナーの幹細胞から分化して、患者さんの胸腺で正および負の選択がなさ れたTリンパ球=患者に対しては免疫寛容、病原微生物には反応する day0 免疫抑制剤:上記のTリンパ球の免疫応答を弱める(無くす訳ではない) PTCY移植前後処置(FluBu8TBI4:Haplo13RIC)
TBI 2 Gy
Tacrolimus
MMF
G-CSF
移植日
HLA3/6 一致同胞 末梢血幹細胞Day-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8
移植前治療
FLU 30mg/m
2CPA
40mg/kg/day
ivBUS 3.2mg/ kg
抗がん剤:シクロフォスファミド(CY)
ナイトロジェンマスタード類に分類されるアルキル化薬であ
るシクロフォスファミドは肝で代謝を受け,aldophosphamide
に変換される。 aldophosphamideはaldehyde dehydrogenase
1 (ALDH)によりcarboxyphosphamide に不可逆的に変換され不
活性型となり細胞毒性を示さなくなるため,ALDHが高発現し
ている
造血幹細胞ではCYによる傷害を受けにくい
とされる。一
方で,aldophosphamide はALDHが高発現していない
通常のリ
ンパ球
などで
は
活性型であるphosphoramide に分解され,
phosphoramide mustardがDNAをアルキル化することで
細胞毒
性を示す
。アルキル化薬は
急速に分裂している細胞に対して最
も毒性を発揮する
ため,血液悪性疾患を中心に抗がん剤として
使用されている。また,リンパ球への作用が強いことから免疫
抑制作用を期待して自己免疫疾患にも広く用いられている。
症例 2.5F BKV 生着 再発 急性GV 慢性GV 転帰(2017.11.11) 1
NO - + d11 d270 GradeⅠ ー Alive day477 with ALL relapse day270 2 RO + + d15 d59 ー ー Death day89 CML-BC relapse day59 3 SH + + d14 ー ー ー Alive day141 4 MO + ー d15 ー ー ? Alive day30