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博士学位論文 新規マトリックス成分として第一リン酸アルミニウムを 配合した FCC 触媒の開発およびその応用展開 Development of FCC catalyst containing monoaluminum phosphate as a new matrix component and i

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博士学位論文

新規マトリックス成分として第一リン酸アルミニウムを

配合した

FCC 触媒の開発およびその応用展開

Development of FCC catalyst containing monoaluminum

phosphate as a new matrix component and its application.

横浜国立大学大学院

工学府

坂 祐司

Yuji Saka

2016 年 3 月

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新規マトリックス成分として第一リン酸アルミニウムを配合したFCC 触媒の開発およびそ の応用展開

Development of FCC catalyst containing monoaluminum phosphate as a new matrix component and its application. ○本論文の目次 目次 第一章 FCC 装置および FCC 触媒の概要 P.1 1-1 石油精製におけるFCC プロセス P.1 1-2 FCC 触媒の構成 P.11 1-3 USY ゼオライトの特徴と FCC プロセスへの応用 P.15 1-4 FCC 触媒の劣化要因およびその対応策 P.19 1-4-1 水熱劣化に伴うUSY ゼオライトの結晶構造崩壊および その対応方法 P.19 1-4-2 バナジウムによるゼオライト分解活性点の脱離および その対応方法 P.20 1-4-3 従来技術での課題 P.20 1-5 引用文献 P.23 第二章 新規マトリックス成分の探索およびその添加効果 P.25 2-1 触媒設計 P.25 2-2 新規マトリックス成分の探索 P.30 2-3 触媒調製方法 P.34

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2-4 キャラクタリゼーション P.35 2-4-1 触媒活性評価 P.35 2-4-1-1 模擬平衡化処理 P.35 2-4-1-2 触媒活性評価 P.35 2-4-2 キャラクタリゼーション P.38 2-4-2-1 磨耗強度 P.38 2-4-2-2 N2吸着 P.38 2-4-2-3 XRD P.38 2-4-2-4 29Si-NMR P.39 2-5 実験結果および考察 P.39 2-5-1 リン源添加効果 P.39 2-5-2 Al-P 添加によるゼオライト安定性向上効果の検討 P.48 2-5-3 希土類金属とAl-P の添加効果の比較 P.53 2-6 結論 P.58 2-7 引用文献 P.59 第三章 商業FCC 装置における開発触媒の性能 P.60 3-1 商業FCC 装置における性能確認方法 P.60 3-2 ベンチプラントの概要 P.61 3-3 触媒運用 -循環性、触媒飛散 P.63 3-4 触媒性能の検証 P.65 3-5 結論 P.73 3-6 引用文献 P.74

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4 章 開発触媒の石油化学基礎原料増産への応用 P.75 4-1 背景 P.75 4-2 従来型FCC 装置におけるプロピレン増産方法 P.78 4-2-1 装置面からのプロピレン増産 P.78 4-2-2 触媒面からのプロピレン増産 P.82 4-2-2-1 アディティブの構成 P.82 4-2-2-2 ZSM-5 ゼオライト P.83 4-3 実験方法 P.85 4-3-1 触媒調製 P.85 4-3-2 触媒活性評価 P.85 4-3-2-1 FCC 触媒の強制劣化処理 P.86 4-3-2-2 アディティブの強制劣化処理 P.86 4-3-2-3 触媒性能評価 P.86 4-4 実験結果および考察 P.87 4-4-1 FCC 触媒、アディティブ、FCC 触媒とアディティブ 混合時の性能 P.87 4-4-2 アディティブの添加効果 P.89 4-4-3 FCC 触媒とアディティブの組み合わせによる 生成物得率へ及ぼす影響 P.93 4-5 結論 P.98 4-6 引用文献 P.99 第五章 総括 P.100

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Appendix> 本研究に関する研究発表 (1)本論文を構成する報文 (2)その他参考となる報文 (3) 特許 (4) 学会プロシーディング(査読付き) (5)解説・総説 (6)その他 謝辞

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1 第一章 FCC 装置および FCC 触媒の概要 1-1.石油精製における FCC プロセス 一般的に原油(Crude Oil)は、黒褐色で粘性があり、沸点-42oC のプロパンに代表され る軽質留分から分子量数千の複雑な高分子までを含む炭化水素系混合物である。19 世紀ま での石油精製プロセスはランプ用の灯油製造を目的とした精製が主であったが、20 世紀に 入り、電灯の普及および自動車の発達により、ガソリン留分の製造が求められるようにな り、様々な技術開発がなされてきた。現在の石油精製プロセスは、原油を蒸留によって分 離した後、硫黄化合物や金属分などの不純物を脱硫、吸着などの処理によって除去し、ガ ソリン、軽油などの石油製品を生産している。Fig. 1-1 に代表的な石油精製プロセスの流れ を示す。 まず、原油はNa イオンなどのアルカリ金属イオンや水分が Desalter と呼ばれる脱塩処 理装置によって除去された後、約350~400oC に予備加熱され、常圧蒸留装置(Topper)にて

蒸留される。常圧蒸留装置では、原油が液化石油ガス(Liquid Petroleum Gas;LPG、沸点 約30oC 以下)、ライトナフサ(Light Naphtha、沸点約 30~80oC)、ヘビーナフサ(Heavy

Naphtha、沸点約 80~145 oC)、灯油(Kerosene、沸点約 170~240oC)、軽質軽油(Light Gas

Oil、沸点約 260~350oC)、重質軽油(Heavy Gas Oil、沸点約 350~370oC)、および常圧残

渣(Atmospheric Residue;AR、沸点 370oC 以上)などの各留分に沸点分留される。これらの

うち、特にAR はそれ自体製品としての付加価値が極めて低く、また、分留仕切れなかった 軽質留分を含有しているため、減圧蒸留装置(Vacuum Distillation Unit、圧力約 30~ 150torr)にて更に分離処理される。この処理により、減圧軽油(Vacuum Gas Oil;VGO)と減 圧残渣(Vacuum Residue;VR)の主に 2 種類の留分が得られる。このうち、VGO は間接脱硫 装置において、硫黄分約 0.3%まで水素化脱硫処理された後、流動接触分解装置(Fluid Catalytic Cracking;FCC)にて更に分解され、軽質化され、LPG、ガソリン、分解軽油(Light

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2 Cycle Oil;LCO)などの各留分に分解される。これらのうち、ガソリン留分はオレフィンを 多く含むため、リサーチオクタン価が90 以上と高く、現在レギュラーガソリンの主要な基 材として用いられている。このように、石油精製における FCC プロセスは、1940 年代に 実証化されてから現在に至るまで『ガソリン製造プロセス』、『重質油の軽質化プロセス』 として重要な役割を担っている。

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4 FCC プロセスの始まりは 1915 年頃、McAfee による研究である。Friedel-Crafts 反応用 の触媒として知られる塩化アルミニウム(AlCl3)が重油の分解にも活性があることを見出し、 重質油からガソリン留分を20~30vol%得ることに成功したものの、コーク生成による活性 の急激な失活および泥状になった生成油と触媒の分離が困難な課題があり、実用化には至 らなかった。更なるガソリン収率の向上を目的に1920 年頃に Thiele が天然の粘土鉱物を 用いた検討を実施し、ガソリン収率は約40vol%程度と増加したものの、McAfee と同様、 活性低下および生成物の分離が困難であり、実用化には至らなかった。その後も軽石 (Pumice)や懸濁白土触媒等様々な検討がなされたものの、生成物との分離、触媒の劣化 の課題解決には至らなかった。一方で1914 年より第 1 次世界大戦が始まったことで航空用 ガソリンの需要が増大し、国家政策として高品質なガソリン生産は重要な課題であった。 これに対し、重質油から接触分解技術を用い、高品質なガソリンを高収率で得られる生産 プロセスとして、Houdry 社が開発した固定床で半連続触媒再生方式の Houdry プロセスが 唯一稼動していた1)。Houdry プロセスは、それ以前に行われていた高温高圧下での炭化水 素の熱分解方法から固体触媒による接触分解法に移行し、合成シリカ-アルミナ触媒の開発 および商業プロセスでの製造を可能にした点で極めて画期的であった。しかしながら、 Houdry プロセスは、触媒の半連続的な再生工程において必要となる熱源の確保などの熱効 率の問題があり、技術的な課題があった。更に、Houdry 社は当該プロセスに関する特許を 100 近く取得しており、高額なライセンス料を要求していたため、投資面からも課題があっ た。そこで欧米の石油各社は Houdry プロセスの特許に全く抵触しない、流動床での接触 分解という新たなガソリン製造プロセスの研究開発に鋭意取り組んだ。この流動床での接 触分解という概念は、反応工学的に有効であると認識されていたものの、技術的なハード ルは極めて高く、1930 年代までは実証化されるまでには至っていなかった。しかし、 Standard Oil(New Jersey)社、N.W.Kellogg 社、Universal Oil Products 社、BP(British Petroleum)社ら欧米の有力な石油会社およびエンジニアリング会社が協力して精力的に研

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究開発を行った。その中でもUniversal Oil Products 社では、Fischer-Tropsh で有名な Dr. Hans Tropsh の元、粘土鉱物をはじめとする天然ケイ酸塩鉱物をはじめ、無定形シリカ-ア ルミナ触媒の合成などFCC プロセスに固体酸の概念を持ち込んだ。また、同時期に Mobil 社ではゼオライトに着目した触媒開発を実施していた。これらプロセスおよび触媒面の研 究を集約し、1942 年に現在の原型となる FCC プロセスが米国の Standard Oil 社の系列製 油所に3 基導入された2)。その結果、固定床よりも触媒粒子と原料油との接触効率が高く、 分解反応に適したFCC プロセスが実証化された。その後、触媒との接触効率を高めるべく、 原料油供給ライン(フィードインジェクター)の改良、触媒再生方法の改良(再生塔にお ける再生Air の分散性工場)や生成物蒸留セクション(フラクショネーター)などの機構が 大幅に改良され、現在のFCC プロセスの形態へ至っている。 Fig. 1-2 に現在の典型的な FCC プロセスの概要を示す。FCC 装置は大別して、ライザー (反応塔)、再生塔、蒸留セクションから構成されている。原料油は約200~300oC に予熱 された後、微粒子状の触媒とライザー下部で接触し、リフトスチームによってライザー内 を1~3 秒間で通過し、その間に分解反応が進行する。反応によって得られた分解生成物は、 反応塔上部から分留塔(メインカラム)、スタビライザーなどの分離設備に順次送られ、ガ ソリン留分やLPG 留分に分離される。一方、触媒に付着した炭化水素油は反応塔内でスト リッピングスチームにより除去される。また、触媒から除去しきれなかった未脱炭化水素 (Coke)を含んだ反応後の触媒は再生塔へ持ち込まれる。Coke 分は再生塔において空気によ る燃焼反応により除去される。この際、再生塔内はCoke の燃焼反応により生じたスチーム (H2O)と前述のストリッパー由来のスチームが存在する(全圧:0.1~0.2MPa、スチーム分 圧:約20%)し、かつ、再生塔内は約 700 oC 程度であり、触媒は過酷な水熱条件下に曝され る。その後、触媒はCoke 燃焼時に生じた熱をライザー内へ持ち込み、再び分解反応に用い られる。すなわち、FCC プロセスでは、触媒の再生工程によって生じた熱が再び反応に利 用しており、前述の Houdry プロセスに比べ、著しく熱効率が改善されている。また、触

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6 媒は過酷な水熱劣化雰囲気下に曝されているため、経時的に触媒活性が低下する。そこで 再生塔下部から反応後の触媒を一定量抜き出し、未使用の触媒を同等量投入(Make UP;M/U)することで、装置内の触媒の活性レベルを一定に保ちながら運転している。この 触媒の抜き出し量、添加量は、装置規模にもよるが、1 基あたり数トン/日程度である。な お、抜き出された廃触媒はセメント原料などとして利活用されている。現在、FCC プロセ スにはUOP 法3)、Texaco 法4)、Flexicracking5)などいくつかのプロセスが存在するが、そ

れらの基本的な装置構成には大きな違いはない。2014 年 8 月現在、国内で稼動している FCC プロセスは、28 基稼動している6)

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Fig. 1-2 Constitution of FCC process

Dry gas

LCO

SLO

Gasoline

Debutanizer

Depropanizer

C3

C4

LPG

Reg

en

erator

Ris

er

Main

Co

lu

m

n

New catalyst

Equillibrium

catalyst

Deethanizer

Stripping

steam

Combustion gas

(CO, CO

2

, H

2

O)

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8 経済産業省が実施している燃料油ワーキンググループにて報告された日本の近年の燃料 油需要の将来予測をFig. 1-3 に示す。ガソリン、灯油、重油(A 重油および C 重油)の需 要は減退する傾向にあるが、その中でも重油は2012 年度には 12.5%あったのに対し、2019 年度では7.5%になると想定されており、最も需要の減退が著しい。このような背景から、 FCC プロセスにおいても更なる重質な原料油への対応が求められている。実際、1980 年代 以降、日本のFCC プロセスでは、HDS-VGO だけでなく、重油直接脱硫装置によって水素 化脱硫されたAR(Direct Desulfurized AR;DS-AR)を HDS-VGO と混合した原料油が処理 され始めた。

更に、1990 年代に入り、輸入原油がより重質化してきたことから、DS-AR を HDS-VGO に混合することなく、DS-AR を単独で処理することが出来る、残油流動接触分解(Residue Fluid Catalytic Cracking;RFCC)プロセスが建設され、現在の主流となっている。DS-AR はHDS-VGO に比べ、Coke 前駆体である残留炭素分(Conradson Carbon Residue;CCR) をより多く含有するため、RFCC は従来の FCC に比べ、Coke 分が増加する傾向にある。 そのため、より高効率にCoke 分を燃焼すべく、再生塔において、二段再生方法が採用され ている7)。二段再生法では一段目において再生Air 導入量を減量し、大まかな Coke 分を除 去した後、二段目ではCoke 分の完全除去を目的に Air 導入量を増加させる。このようにす ることで生成するスチーム量を減量し、触媒劣化の抑制を指向している。RFCC プロセス は欧米において開発されたHOC 法8)RCC 法9)などが実証化されている。また、最近では、 過分解によるCoke 分の生成を抑制するため、原料油と触媒の接触時間を従来の 1/10 に短 縮したMSCC 法10)なども開発されている。更にDS-AR には CCR に加え、触媒被毒金属 であるNi、V、Fe や塩分(Na イオン)も多く含まれている。これらは直接脱硫装置など のFCC プロセスの前段工程で大部分除去されているものの、完全には除去しきれないため、 DS-AR 中には残存しており、反応・再生を繰り返す触媒上に徐々に堆積していく。その結 果、FCC 触媒の主活性成分であるゼオライトの崩壊や細孔閉塞に伴う原料油の拡散性低下

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に伴い、触媒性能の低下を引き起こす。従って、現在のFCC プロセスにおいて重要な研究 課題のひとつとして、触媒被毒金属を含むDS-AR のような原料油を処理する際、より触媒 活性の低下を抑制可能な安定性の高い触媒の開発が挙げられる。

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Fig. 1-3 Relative demands of petroleum products in recent years

Base:Demand for fuel oil in 2012

0

20

40

60

80

100

120

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

C fuel Oil

A fuel oil

Diesel

Kerosene

JET

Naphtha

Gasoline

The

Prop

ortion

o

f the

prod

uct

(%

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11 また、Fig. 1-3 で記したように、今後より C 重油などの重質な燃料油の需要は減退する傾 向にあり、AR などの重質留分を大量かつ高効率に軽質化することは、石油精製産業のコス ト競争力向上にも繋がる命題である。特に日本の場合、輸入原油の多くは比較的重質な中 東原油であることから、FCC プロセスなどの石油精製プロセスの重質油への対応は今後も 重要度を増していくと考えられる。加えて、FCC 装置はいずれも処理量が大きく、生成物 収率を数%改善することで経済性が飛躍的に向上することから、より付加価値の高いガソリ ンやLPG などの軽質留分の増産が求められている。 1-2.FCC 触媒の構成 FCC プロセスで用いられる触媒の主活性成分は、固体酸が一般的である。FCC プロセス が登場した1940 年代当初、触媒の固体酸成分は固定床の Houdry プロセスと同様に酸性活 性白土が用いられていたが、その後、より安定な性能を示す無定形の合成シリカーアルミ ナに置き換わった。更に1950 年代前半、Union Carbide 社により合成ゼオライトである Y ゼオライトが開発され、1960 年代に FCC プロセスの触媒として用いられるようになり、 分解活性やガソリンの選択性、生成物の収率が大幅に向上した11)。その後、1962 年 Mobil 社から、より触媒の安定性を向上させた希土類金属イオン交換Y 型ゼオライト、1964 年に Union Carbide 社から超安定化 Y 型ゼオライト(Ultra Stable Y;USY)が開発され、実証 化に至った12,13)。現在FCC 触媒の構成成分として一般的に用いられている USY について

は次節1-3 で述べるが、USY ゼオライトが触媒として用いられた結果、Coke 分の生成を抑 制し、かつ、触媒の耐水熱性などが改善され、DS-AR などの残油分解が可能となり、FCC プロセスが重油削減対策としての役割を担うようになった。

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Fig. 1-4 Outline of FCC catalyst

Zeolite(USY)

Clay

Ni / V trap

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13 FCC プロセスのライザーでは原料油と触媒が一体となって流動することを前提に設計さ れている。このため、触媒は原料油と十分に混合される必要があり、触媒粒子径は約 20μ m~120μm、平均粒子径約 70μm に整形された微粒子かつ球形の形状をしている。また、 FCC 触媒の構成成分としては主活性成分である USY ゼオライトが 20~40wt%、カオリン などの天然の粘土鉱物が30~50wt%、触媒構成成分をひとつの粒子としてまとめるバイン ダーとしてシリカが20~40wt%、そして後述のマトリックス成分が配合されている。 触媒構成成分のひとつである粘土鉱物は、触媒の強度やかさ比重を適正化すべく、触媒 比重調整および物理的強度を改善しており、装置での循環性の確保を目的に配合している。 触媒のかさ比重が小さすぎる場合、ライザー内での触媒の上昇速度が増加するため、原料 油との接触効率が低下し、その結果、分解活性が低下する。また、かさ比重が大きすぎる 場合、ライザー内での触媒流動性が低下する。従って、FCC プロセスにおいて、原料油と 触媒が理想的に流動するためには、触媒のかさ比重を適切に調整する必要がある。更に流 動床では触媒同士および装置管壁との磨耗、接触が頻繁に起こる。これによって、触媒形 状が物理的に崩壊し、FCC 装置系外へ触媒が飛散する可能性がある。従って、触媒はある 程度のかさ密度および物理的強度を有することが望ましい。これらの問題を解決する物質 として粘土鉱物が一般的に用いられている。 一方、前述のようにFCC 触媒は再生塔での再生処理において過酷な水熱雰囲気下に曝さ れることから、優れた耐水熱性が求められる。具体的には、主活性成分であるUSY ゼオラ イトの結晶崩壊や分解活性点の脱離等の構造変化を極力抑制することが望ましい。また、 触媒の分解活性が著しく高い場合、原料油が過分解されるため、ガソリン収率の低下、軽 質ガス分の増加、Coke 生成量の増大などを招くため、経済性が低下する。従って、FCC 触 媒の分解活性は運用前提に対し、適正に制御する必要がある。更に、AR などの残油に含ま れる、Ni、V、Fe に代表される触媒被毒金属や塩分(Na イオン)に対しても十分な耐久性 を有する必要がある。例えばNi は触媒活性には影響を及ぼさないものの、生成物選択性に

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14 大きな影響を及ぼす。FCC プロセスの運転条件下において、Ni は脱水素活性を示すため、 炭化水素同士の縮合を促進し、結果としてCoke 分や水素の生成量が増加する14)。一方、V やNa イオンは USY の構造破壊、分解活性点の脱離を著しく促進し、分解活性の低下を引 き起こすことが知られている15)。また、Fe の堆積に伴い、FCC 触媒上に金平糖状のスケー ルが形成され、細孔容積が低下し、原料油の拡散性の悪化に伴い、主活性成分であるゼオ ライトとの接触効率が悪化することで分解活性が低下することが弊社の知見として得られ ている。これらの課題に対しては、様々な対応方法が検討され、実用化に至っている。一 例としてはNi によるコーク生成量を抑制すべく、触媒構成成分として Ni を不動態化する Nitrap 剤の配合16)Phillip 社が開発した Sb 系化合物の Ni パッシベーターなどが挙げら れる。また、V に対する触媒被毒に対しては、塩基性物質であるアルカリ土類金属や希土類 金属の酸化物を触媒構成成分として配合し、V を不動態化させる Vtrap 剤が挙げられる17) FCC 触媒の触媒性能を補填、改善する目的で配合する Ni trap 剤、Vtrap 剤などをマトリ ックス成分と呼ばれている。マトリックス成分の増配合によって触媒劣化は抑制されるも のの、原料油の重質化など運用環境がより過酷になっているため、更なる技術革新が求め られている。 また、詳細には第四章にて詳述するが、ZSM-5 を配合したアディティブと呼ばれる触媒 をFCC 触媒と物理混合し、運用することで、リサーチオクタン価の高いガソリン留分が得 られることが知られている 18)。アディティブを配合した場合、ガソリン留分の低オクタン 価成分をプロピレンに代表される LPG へ変換されるため、ガソリン留分の収率が低下し、 リサーチオクタン価が向上する。Fig. 1-2 で述べたように、将来的にガソリンの需要は低 減していくため、アディティブを配合することでプロピレンなどの石油化学基礎原料の増 産を指向した運用も多くなされている。 以上のように、FCC プロセスで用いられる触媒には、時代のニーズとともに様々な性能 や耐久性が要求されており、日米欧の触媒メーカー、石油会社、エンジニアリング会社に

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15 おいて、現在も触媒の研究開発が鋭意行われている。最近では、世界的な環境問題への関 心の高まりから、FCC プロセスから製造されるガソリン留分中の硫黄分の除去に関する触 媒開発が多くなされている19)すなわち、光化学スモッグなどの大気汚染の原因となるNOx は排ガス用の後処理触媒によって除去されるが、ガソリン、軽油などの燃料油に含まれて いる硫黄は排ガス中に SOx として排出され、NOx 後処理触媒を被毒する。従って、FCC プロセスの触媒には、より重質な原料油の分解性向上および対応可能な触媒安定性の向上 だけではなく、生成油中の硫黄化合物の低減などの環境保全を目的とした性能改善、石油 化学基礎原料の増産など様々な触媒性能が要求されていくと推測される。 1-3.USY ゼオライトの特徴と FCC プロセスへの応用

USY ゼオライトは、広義には高 Si/Al 比の Y ゼオライトである。Fig. 1-5 に、Y 型ゼオ ライトの構造を模式的に示す。Y ゼオライトは天然の faujasite と同様のトポロジーを有す る立方晶の合成ゼオライトであり、ソーダライト(sodalite)ケージで形成されたスーパーケ ージ(supercage)と呼ばれる直径約 1.3nm の大きな細孔を有する。スーパーケージは単 位ユニットセルあたりに8 個存在しており、その入り口は円形の酸素 12 員環(直径約 0.7nm) である。 Y 型ゼオライトの単位ユニットセルあたりの組成は、AlnSi192-nO384・xH2O である(n: イオン交換サイト数、m:チャージバランスに必要なカチオン種)。一般に、上記組成式に おいてn=48~76(代表的には n=56、Si/Al 比(mol/mol)=2.4)の場合を Y ゼオライトと呼び、 n=77~96(代表的には n=86、Si/Al=1.2)の場合には X ゼオライトと呼ばれている。n が小 さくなるに伴い、ゼオライトの疎水性が増すことから、通常市販されているUSY ゼオライ トはn が 30 以下であることが多いことから、極めて疎水性が強く、水熱安定性が高い要因 のひとつである。

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また、前述のようにFCC 装置は装置規模にもよるが一日数 ton の触媒を使用しているこ とから、使用するゼオライトも安価、かつ、大量に入手することが条件となる。これまで 分解活性の更なる向上を目的に、USY に比べ酸強度の強い BEA ゼオライトの適用なども 検討されてきたが、実用には至っていない。

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Fig. 1-5 Structure of FAU type zeolite

Supercage

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USY ゼオライトを Y 型ゼオライトから製造する方法には、塩酸などによる酸処理法や、 SiCl4などのケイ素化合物に接触させるケイ素置換法などがあるが、現在工業的に最も広く

用いられている方法は、1960 年代後半に McDaniel と Maher(Grace Davison 社)より開発 された水熱処理法である20)。水熱処理法とは、Si/Al 比=2~3 の Na 型の Y 型ゼオライトを NH4型もしくはH 型にイオン交換した後、スチーム雰囲気中で高温焼成する処理方法であ る。このとき、骨格中の一部のAl が脱離し、格子外 Al(Extraframework Al)が生じる。な お、Na 型から H 型へのイオン交換は、Y 型ゼオライトを NH4+を含む水溶液中で攪拌し、 Na+NH4+にイオン交換した後、大気中で焼成することで、1-1 式に示す反応により、NH3 を除去する方法が一般的である。 NH4+(-zeolite) → NH3(↑) + H+(-zeolite)・・・(1-1) このイオン交換により、Y 型ゼオライトに導入された H+は固体酸性を示すため、炭化水 素の分解反応の活性点として機能する。従って、H 型の Y 型ゼオライトにおいて、n が大 きくなるに伴い、活性点が増加し、分解活性が向上する。ただし、前述のようにFCC プロ セスにおいては、過分解によるガソリン収率の低減などを避けるため、分解活性が高すぎ る触媒は好ましくない。よって、n を通常の Y 型ゼオライトよりも小さくすることによっ て、その分解活性を適切な範囲に制御する必要がある。このような概念に基づき、USY ゼ オライトは設計された。USY ゼオライトは通常の Y 型ゼオライトに比べ、脱アルミニウム しやすい骨格中のAl の相対数が少ないことから、FCC プロセス内でも脱アルミニウムがさ ほど進行せず、急激な活性低下が起こりにくい。また、前述のようにSi/Al 比を高めている ことから、疎水性が増すため水熱安定が高く、結晶構造の崩壊を抑制することができる。 更には、残油中のNi、V などの触媒被毒金属に対して耐性が高く、また、USY ゼオライト 製造時の水熱処理法により形成されたメソ孔やマクロ孔が重質分の拡散・分解に適してい ることなど、通常の Y 型ゼオライトに比べ、多くの特徴を有することから、現在世界中の FCC 触媒に適用されている。

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19 ただし、前述のように、FCC プロセスにおいて、近年および将来にわたって余剰重質油 の高付加価値留分への変換が求められている。その際、再生塔の温度上昇に伴う水熱劣化 のシビアリティー向上や、原料油中の触媒被毒金属量増加などが想定されるため、更なる 耐久性向上が必要不可欠である。 1-4.FCC 触媒の劣化要因およびその対応策 1-2、1-3 項で述べたように重質な原料油処理に伴い、FCC 触媒は様々な劣化因子に伴い、 分解活性が低下する。本項ではFCC 触媒の劣化要因およびその対応策について詳述する。 FCC 触媒は主に再生塔において劣化し、その要因は大きく①水熱劣化に伴う USY ゼオ ライトの結晶構造崩壊、②バナジウムによるゼオライト分解活性点の脱離の 2 つが挙げら れる。 1-4-1.水熱劣化に伴う USY ゼオライトの結晶構造崩壊およびその対応方法 1-1 項で述べたように、FCC 触媒は再生、反応を繰り返し、運用されている。ライザー で反応した後、生成物とFCC 触媒を分離すべく、ストリッピングスチームを導入している。 その際、脱離できなかった炭化水素分は再生塔に持ち込まれ、炭素分は空気による燃焼反 応によって除去される。一方、水素分は酸素と接触し、スチームとなる。1-3 項で述べたよ うに、USY ゼオライトは通常の Y 型ゼオライトに比べ、安定性は向上しているものの、再 生塔雰囲気下は高温であるため、スチームによる水熱劣化が進行し、ゼオライトの結晶構 造が崩壊し、分解活性の低下を招く21) そこで、ランタンに代表される希土類金属をイオン交換処理することで、USY ゼオライト の水熱安定性が向上し、再生塔雰囲気下でのゼオライトの結晶構造の崩壊を抑制できるこ

(25)

20 とが知られている22),23)USY ゼオライトへの希土類金属の導入効果については様々な検討 がなされているが、Falabella らは、希土類金属はソーダライトケージ内を移動し、フレー ムワークの酸素原子と架橋し、支柱のような役割をすることでゼオライトの安定が向上す ると報告している 24)。また、希土類金属を導入することで酸強度が高まり、重質留分の分 解が促進されることが知られている 25)。その結果、再生塔雰囲気下でのゼオライト結晶構 造の崩壊を抑制し、かつ、酸強度が高まることで、分解活性を維持し、SLO に代表される 重質な燃料油の生産量低減が可能となる。 1-4-2.バナジウムによるゼオライト分解活性点の脱離およびその対応方法 原料油中には前段の直接脱硫装置では除去しきれないバナジウムが含まれており、再生 塔において下記のスキームでゼオライトの分解活性点であるAl を引き抜くことが知られて いる26)。バナジウムは再生塔において、1-4-1 項で述べた再生塔に持ち込まれた炭化水素分 の燃焼反応によって生じたスチームと反応し、バナジン酸となる。その後、ゼオライト骨 格中のAl と反応し、バナジン酸アルミニウムとなり、ゼオライト骨格中の Al が引き抜か れる。 従来の技術では、マグネシウム、マンガンに代表されるアルカリ土類金属を Vtrap 剤と して導入し、酸塩基反応によりバナジン酸を不動態化し、V による触媒被毒を抑制すること でゼオライトの分解活性点であるAl の脱離を抑制している。 1-4-3.従来技術での対応方法および課題 1-4-1、1-4-2 項で述べたように、FCC 触媒の分解活性の抑制を目的に、現状では希土類 金属の増配合やアルカリ土類金属の導入などの対応方法がなされている。

(26)

21 しかしながら、近年、経済的な観点から、より安価な原油を購入する傾向にあり、その 結果、原油が重質化する傾向にあり、FCC 原料油中の触媒被毒金属の含有量が増加してい る。触媒被毒金属の増量に対応すべく、アルカリ土類金属の配合量を増加させた場合、ゼ オライトの酸点が中和され、分解活性の低下を招く 27)。従って、原料油が更に重質化した 場合には従来のアルカリ土類金属の増配合では対応が極めて困難である。 一方、CO2排出に伴う地球温暖化問題解決のため、自動車のエンジン効率の向上、すな わち燃費向上が求められている。燃費向上のためには高圧縮比においてもノッキングがし にくいオクタン価の高いガソリンの製造が求められている。サルファーフリーガソリンの 供給のためには得られたガソリン留分の水素化脱硫処理を行うことで硫黄分を除去してい るが、その際にオクタン価の高いオレフィン分がパラフィン分へ変換され、オクタン価が 低下してしまう課題がある。また、FCC ガソリンは、レギュラーガソリン(RG)へ約 50%配 合されており、FCC ガソリンの性状が RG 製品性状に及ぼす影響は極めて大きい。そこで、 FCC 装置から得られるガソリン留分(FCC ガソリン)のオクタン価を可能な限り高めてお くことで水素化脱硫工程後も高いオクタン価を維持することができる。 FCC 触媒を構成する触媒原料として、希土類金属がオクタン価へ影響することが知られ ている。希土類金属を増配合させた場合、副反応として水素移行反応が進行することが知 られている。水素移行反応は、パラフィンの生成と同時にアロマ分が生成され、一般的に は次式で示される。

4C

n

H2

n

3C

n

H2

n

+ C

m

H

2m

3C

m

H

2m-2

3C

n

H

2n+2

+ C

n

H

2n-6

3C

n

H

2n+2

+ C

m

H

2m-6

2C

m

H

2m

+ C

m

H

2m-6

Olefins Paraffins Aromatics

Olefins Naphtenes Paraffins Aromatics

(27)

22 希土類金属を配合した場合、酸強度が高まり、オレフィンとの親和性が増すため、水素 移行反応が進行し 25)、その結果、オクタン価の高いオレフィン分がオクタン価の低いパラ フィン分へ変換される課題がある28),29)。また、上記式において、オレフィンとナフテンが 相互作用した場合、ナフテンは水素を引き抜かれ、アロマに変換されるが、オレフィンが パラフィンへ変換されることによるオクタン価の低下が著しいため、オクタン価は低下傾 向にある。なお、各成分のオクタン価については次章で述べる。 以上のことから、従来のFCC 触媒の分解活性低下の抑制技術である希土類金属を配合し た場合、高分解活性(重質な燃料油の生産量抑制)は達成できるものの、ガソリン留分の オクタン価が低下するため、現在のFCC 装置に求められるニーズを満たすことは難しい。 そこで本研究では高オクタン価なガソリン留分が得られ、かつ、高分解活性(重質燃料 油の生産量低減)を指向した触媒開発を実施すべく、触媒設計の見直しに着手した。

(28)

23 1-5. 引用文献

1) E. J. Houdry, W. F. Burt, A. E. Pew, W. A. Peters, Oil & Gas; 石油学会編, “改訂新版 石油精製プロセス” 幸書房, P.55, 1974 年

2) J. L. Eneos, “石油産業と技術革新“ (訳:加藤 房之助, 北村 美都穂), 幸書房, P.215, 1972 年

3) D. Read, Petorol. Refiner, 30, 130 (1951) 4) J. J. Blazek, Oil & Gas, 45, 1973

5) Y. Hosokawa, Jpn. Petr. Inst., 16, 11 (1973)

6) 日本の石油化学工業 2015 年度版, 重化学工業通信社, 26

7) K. Sakakura, Japanese J. Multiphase Flow, 29 3 (2014) 444-448 8) J. R. Murphy, Proc 11th World Petrol. Congress, 4, 15 (1983)

9) O. J. Zandora, L. E. Busch, W. P. J, Hettinger, Proc. Am. Pet. Inst. Refin. Dep., 61, 207-215 (1982)

10) D. A. Kauff, D. B. Bartholic, C. A. Steves, M. R. Keim, NPRA Annual Meeting,

AM-96-27 (1996)

11) J. A. Rabo, P. E. Pickert, D. N. Stamires, J. E. Boyle, Proc, 2nd Int. Cong. Catal., 2005

(1960)

12) V. J. Frilette, C. J. Plank, R. J. Rosinski, P. B. Weisz, BE Patent, 612, 553 (1962) 13) D. W. Breck, US Patent, 3, 130, 007 (1964)

14) J. E. Otterstedt, S. B. Gevert et al., Appl. Catal. 22, 159 (1986) 15) W. S. Letzsch, D. N. Wallace, Oil & Gas, 58 (1982)

16) T. Horie, 触媒化成技報, 14, 1 (1997) 29-40

17) F.Wang, R. Zhuo, J. Qian, Z. Sun, S. Zhou, Prepr Am Chem Soc Div Pet Chem, 43 2 (1998) 324-327

(29)

24

18) S. J. Yanik, E. J. Demmel, A. P. Humphries, Oil & Gas, 108 (1985)

19) G. J. Greenwood, D. Kidd, L. Reed, NPRA Annual Meeting, AM-00-12 (2000) 20) C. V. McDaniel, P. K. Maher, US Patent, 3,293,292 (1966)

21) D. J. Rawlence, Catal Today., 11 1 (1991) 47-59

22) P. O'connor, Prepr Am Chem Soc Div Pet Chem., 42 2 (1997) 437-440 23) S. Nonaka, 触媒化成技報, 35 11 (2012) 835-839

24) F. Eduardo et al., Catal Today, 218−219 (2013) 115-122 25) Z. Guoliang et al, J. Catal, 248, 29 (2007)

26) M. Xu, X. Liu, R. J. Madon, Prepr Am Chem Soc Div Pet Chem., 45 2 (2000) 307-309 27) K. Wakui, Zeolite, 20 2 (2003) 47-54

28) W. J. Reagan, G. M. Wolterman, S. M. Brown, Prepr Am Chem Soc Div Pet Chem., 28 4 (1983) 884-893

(30)

25 第二章 新規マトリックス成分の探索およびその添加効果 第一章で述べた高オクタン価なガソリン留分の製造、高分解活性、重質燃料油の削減を 達成すべく、本章では触媒設計の方針および新規マトリックス成分としてリン源に着目し、 各リン源の添加効果を検討した結果について述べる。 2-1.触媒設計 1-4 項で述べたように、現在の FCC 装置運用環境において生成物の収率改善及び性状改 善を同時に満たすには、従来技術の対応では極めて困難である。 重質留分の分解を促進、すなわち分解活性を向上させるには、希土類金属以外に主活性 成分である USY ゼオライトの増量での対応も可能である。しかしながら、USY ゼオライ トの増量に伴い、比重調整剤である粘土鉱物の含有量が低下する。その結果、かさ密度が 低下し、装置内でのFCC 触媒の循環性が低下する課題がある。更には、ゼオライト含有量 増加に伴い、機械的強度を意味する磨耗強度が悪化し、触媒形状が崩壊しやすくなるため、 FCC 装置系外への触媒飛散や装置管壁のエロージョンが促進される課題がある。その結果、 触媒投入量の増加、整備期間の長期化に繋がり、経済的な損失を招く可能性がある。 一方、ガソリン留分のオクタン価向上のためには、オクタン価の高いオレフィンや芳香 族分の割合の増加が重要である。オレフィン分の割合を増加させるには、1-4 項で述べた水 素移行反応に伴う低オクタン価なパラフィンへの転換を抑制する必要がある。Table2-1 に 一例としてFCC ガソリンに含まれる炭素数 6 の炭化水素種とそのオクタン価について示す。

(31)

26

Table2-1 Octane number of each hydrocarbon(carbon number=6)

Compound name

Structural formula

RON

Hexane

24.8

2-methyl pentane

73.4

2-hexene

92.7

2-methyl 2-pentene

97.8

Cyclohexane

83.1

Benzene

125.0

(32)

27 n-parafin であるヘキサンや、i-parafin である 2-メチルペンタンのオクタン価は低いも のの、オレフィンである2-ヘキセンや 2-メチルペンテン、芳香族であるベンゼンはオクタ ン価が高い傾向を示す。このような傾向はいずれの炭素数でも同様であり、水素移行反応 を抑制することはオクタン価向上に極めて有効である。また、低オクタン価な炭化水素を 分解し、高オクタン価な留分の割合を高めることでもオクタン価の改善は可能である。Fig. 2-1 に FCC ガソリンの沸点留分とオクタン価の関係を示す。FCC ガソリンは運用方法によ っても異なるが、常温から 200oC 程度の沸点範囲のナフサ留分であり、沸点留分によって オクタン価に分布がある。沸点150oC 以上の留分を基準に考えた場合、75oC 以下の低沸点 留分は、炭素数5 および 6 のオレフィン濃度が高いため、オクタン価が高い傾向にある。 一方、75~150oC の沸点範囲には高オクタン価なトルエンやキシレンが含まれているものの、 低オクタン価なパラフィン分が高濃度で含まれているため、オクタン価が低下する傾向に ある。 低オクタン価な留分の割合の低減のためには、更に分解活性を高めることでよりガソリ ン留分の軽質化が進行し、オクタン価の改善が見込まれる。FCC 装置運用面での分解活性 向上のためには、反応温度の上昇が有効であることが知られている1)Fig. 2-2 に弊社にお いて反応温度を変更した際のオクタン価および生成物の推移を示す。 反応温度を高めた場合、重質な芳香族の側鎖が切断され、軽質化されるため、芳香族濃 度が上昇する。また、反応温度の上昇に伴い熱分解が進行するため、低沸点留分の炭化水 素の収率が増加し、かつ、オレフィン分の濃度が上昇する。以上の理由から、反応温度の 上昇により、オクタン価が向上する。しかしながら、反応温度の上昇に伴い、副生成物で あるCoke 生成量の増大により、再生塔への負荷が上昇し、その結果、触媒の劣化が進行し、 かつ、処理量や残渣処理量に制約が生じる課題がある。

(33)

28

Fig. 2-1 Relationship of boiling point and octane number in FCC gasoline

IBP

40

40

75

75

100

100

125

125

150

150

175

175

FBP

Base

-10

-5

+5

+10

Octa

ne

num

ber

(RON

) /

(34)

29

Fig. 2-2 The gasoline properties change with respect to reaction temperature

Evaluation apparatus = ACE-MAT, Catalyst / Oil ratio = 6

10

15

20

25

30

35

40

0

1

2

3

4

5

6

490

500

510

Octane number

Olefin

Aroma

Reaction Temperture /

o

C

O

ctane

number

/

-O

le

fin

and

ar

oma content /

vol

%

Base

+1

+2

-1

-2

-3

-4

(35)

30 以上の理由から、ガソリン留分のオクタン価向上のため、水素移行反応の抑制および分 解活性向上の両面からのアプローチが有効である。 前述のように分解活性の向上のためには、USY ゼオライトのゼオライトでも対応できる ものの、触媒物性が悪化する課題がある。また、希土類金属の増配合によりゼオライトの 安定性を向上させることで分解活性が向上するものの、前述のように水素移行反応の促進 に伴い、ガソリン留分のオクタン価が低下する課題がある。このように触媒物性、活性、 生成物の性状はそれぞれトレードオフの関係にあり、現状の技術で対応することは極めて 難しい。 そこで、本研究においては『ゼオライトの安定性向上』、『水素移行反応の抑制』をキー コンセプトとし、希土類金属と同等以上のゼオライト安定性向上効果を有し、かつ、水素 移行反応に伴うオクタン価低下を抑制可能な新規触媒原料(新規マトリックス成分)の探 索を行った。 2-2.新規マトリックス成分の探索 1-4 項で述べたように、FCC 触媒は主に再生塔において、水蒸気による劣化、原料油中 に含まれるバナジウムによる劣化が因子である。各劣化因子に伴い、主活性成分のゼオラ イトの結晶構造の崩壊および分解活性点であるアルミニウムの脱離によって分解活性が低 下する。バナジウムによる劣化は、再生塔にて水蒸気と接触し、バナジン酸となることか ら、いずれの因子も水蒸気が寄与している。以上のことから水蒸気の耐性(水熱安定性) を向上させるべく、新規マトリックス成分の探索を行った。 ゼオライトの水熱安定性を向上させるには、希土類金属以外ではリン源が多く用いられ ている。XUE らは31P・27Al NMR、NH3-TPD および触媒性能比較から、リンはゼオライ ト格子欠陥中に架橋し新しい酸点を発現するとともに、T-O-T アングルの緩和により安定性

(36)

31 が向上すると結論付けている 2)。また、Zhuang らは、XUE らと同様に、リン源を添加す ることにより、水熱劣化時における T-O-T アングルの歪みを緩和することでゼオライトの 安定性が向上すると報告している3)。また、リンを導入することにより、酸強度が弱まるこ とが知られている4),5)。すなわち、リンを添加することにより、ゼオライトの安定性が向上 するとともに、酸強度の低下に伴う水素移行反応の抑制により、分解活性の向上およびオ クタン価の向上が達成できると考えた。 なお、1-1 項で述べたように、1 日あたり数 ton の新触媒を導入するため、触媒費用の観 点からできるだけ安価、大量かつ安定的に入手可能な原料であることが必須条件となる。 以上の作業仮説および条件に基づき、新規マトリックス成分として、リンもしくはアル ミニウムおよび両元素を含む化合物の選定を行った。本検討で選定した新規マトリックス 成分をTable2-2 に示す。

リン源として、Phosphoric acid(リン酸)、Phosphoric aluminum(リン酸アルミニウム)、 Monoaluminum phosphate(第一リン酸アルミニウム;[Al-P])に着目した。[Al-P]の化学式は Al2O3・3P2O5・6H2O であり、水溶性の酸性リン酸塩である。Fig. 2-3 に[Al-P]の構造を示 す。Al 四面体と P 八面体が交互に結合しており、Fig. 2-3 に示した単位ユニットが連結し ている。また、加熱時には脱水縮合することで硬化結合性を示す特徴を有している。これ らの特徴を活かし、耐火物などのバインダー、モーターなどの絶縁塗料や高炉の耐熱剤(ラ イニング剤)などに用いられている。なお、いずれのリン源も安価かつ安定的に供給され ており、経済的な観点およびFCC 触媒の製造面におけるニーズを満たしている。

(37)

32

Table 2-2 Catalyst samples

Phosphoric compounds

Base

-Sample 1

Phosphoric acid

Sample 2

Phosphoric aluminum

(38)

33

Fig. 2-3 Crystal structure of [Al-P]

Al

Al

OH

OH

P

(39)

34 2-3.触媒調製方法

2-2 項で述べたリン源を添加した際の触媒性能を評価すべく、下記の手順に則り、触媒調 製を行った。水ガラス 144.8g(Loss Of Ignition (LOI);71.0mass%、JIS3 号)に対し、純 水 184.7g 添加し、十分に攪拌した後、50℃一定の恒温槽において 25wt%硫酸溶液 98.7g(LOI:7.8mass%)へ攪拌しながら添加した(バインダースラリー)。一方、Y ゼオライ ト 86.8g に対し、純水を 173.6g 添加し、十分に攪拌した(ゼオライトスラリー)。その後、 バインダースラリー中へ攪拌しながらゼオライトスラリーおよびリン源を添加した(混合 スラリー)。リン源としては、リン酸(LOI:15.0mass%、昭和化学株式会社製)、リン酸アル ミ ニ ウ ム(LOI:1.7massmass% 、 純 正 化 学 株 式 会 社 ) 、 第 一 リ ン 酸 ア ル ミ ニ ウ ム (LOI:46.2mass%、多木化学株式会社製)を用い、それぞれ触媒中に各リン源が 3mass% となるように配合した。混合スラリーを十分攪拌した後、噴霧乾燥器(大川原化工機株式 会社製FOC-20)を用い、乾燥処理を行った。乾燥処理後、触媒中に残存する Na 除去を目 的に、噴霧乾燥後の触媒を5%硫安水溶液に添加し、60oC、30 分攪拌した後、60oC 温水に て洗浄・ろ過を行い、120℃乾燥機中で 12h 乾燥させることで各サンプルを調製した。また、 従来技術である希土類金属添加とリン源添加効果比較を目的に、洗浄乾燥後のサンプルに 対し、所定量の希土類金属を含有するよう、イオン交換処理を行った。希土類金属源とし て硝酸ランタン6水和物(純正化学株式会社製)を用い、所定濃度の硝酸ランタン水溶液 中に触媒を添加し、60 oC、30 分間イオン交換処理を行った後、十分に温水洗浄し、乾燥処 理を行った。

(40)

35 2-4.キャラクタリゼーション 2-4-1.触媒活性評価 2-4-1-1.模擬平衡化処理 商業FCC 装置(以降、実機)において、FCC 触媒は触媒被毒金属およびスチームによっ て触媒活性が劣化した状態で運用されている。本検討で調製した触媒の活性を実機で運用 されている触媒と同等にするため、強制劣化(模擬平衡化)処理を実施した。 各サンプルを600 oC、2 時間乾燥処理した後、所定量のナフテン酸ニッケル(日本化学産 業株式会社製)およびナフテン酸バナジウム(日本化学産業株式会社製)をシクロヘキサンへ 添加した溶液中に乾燥させた触媒混合し、十分に攪拌した後、100oC にてシクロヘキサンを 蒸発させ、更に再度600 oC、2 時間乾燥処理を行うことで触媒被毒金属を担持させた6) 触媒被毒金属を担持した触媒は、800 oC、6 時間、100%スチーム流通下でスチーム劣化さ せることで、模擬平衡化処理を行った。 2-4-1-2.触媒活性評価 模擬平衡化した触媒は触媒活性評価装置を用いて触媒性能を評価した。接触分解反応に は Fig. 2-4 に示す沸騰床型触媒活性評価装置(Advanced Cracking Evaluation Micro Activity Test; ACE-MAT、Kayser 社)にて反応温度 510℃、再生温度 700℃、触媒/炭化 水素油比(Cat/Oil 比)3、4、5、6 の計 4 点、接触時間 2.37 秒の試験条件の下、製油所よ り採取したFCC 原料油を用い、FCC 触媒の分解活性および生成物選択性・性状の評価を実 施した。液生成物はAgilent Technologies 社製ガスクロマトグラフィー(7890A)を用い、 GC 蒸留により 190℃-350 oC を LCO、350 oC 以上の留分を SLO とし、分解活性(Conversion)

(41)

36

Packard 社製ガスクロマトグラフィー(6890)を用い、全組成分析を行い、GC-RON を算 出した。

(42)

37

Fig. 2-3 Outline of ACE-MAT unit

&DWKRSSHU

1



$LU

5HDFWRU

)LOWHU

6\ULQJH

)HHG

&2

FRQYHUWHU

3URGXFW

UHFHLYHU

*DV

UHFHLYHU

1



$LU

&2



$QDO\]HU

2QOLQH*&

(43)

38 2-4-2.キャラクタリゼーション 2-4-2-1.磨耗強度 第一章で述べたように、FCC 触媒は装置内を循環し、再生、反応を繰り返しているため、 装置管壁および触媒同士との磨耗が生じる。その際、機械的強度を意味する磨耗強度が優 れない場合、触媒形状の崩壊に伴い、装置系外へ触媒が飛散し、触媒投入量が増加する懸 念がある。また、生成物の蒸留セクションであるフラクショネーターに持ち込まれた触媒 はSLO などの重質な生成物へ混入し、製品規格に抵触する懸念も想定される。そこで、ラ イザー移動時を想定し、規定量の触媒を 15m/sec 加湿窒素の流通下で触媒同士および管壁 と接触させ、その際の飛散した触媒量を回収することで、飛散した触媒割合を元に磨耗強 度を算出した7)。磨耗強度は値が低いほど飛散した触媒量が少ない、すなわち機械的強度が 高いことを意味する。 2-4-2-2.N2吸着 本検討ではFCC 触媒の主活性成分であるゼオライトを安定化させることで、分解活性向 上を図った。ゼオライトの安定性が向上した場合、ゼオライト結晶構造が残存し、強制劣 化処理後も表面積が維持されると考えられる。 そこで、新触媒および強制劣化処理後のサンプルを用い、日本ベル株式会社製 Bellsorp miniⅡにて測定を行った。飽和蒸気圧は実測とし、吸着ガス非理想性補正を実施し、第二 ビリアル係数を-4.328×10-7Pa-1とし、吸着量を測定し、t-plot 法にて表面積を算出した。 2-4-2-3.XRD ゼオライトの安定性向上に伴い、強制劣化処理後もゼオライト結晶構造および分解活性

(44)

39 点が残存していると考えられる。 そこで残存しているゼオライト量の指標として結晶化度、分解活性点であるAl の数の指標 として格子定数に着目した。結晶化度および格子定数は、ASTM D 3942-97 に準拠し、 Rigaku 社製 UltimaⅣを用い測定、解析を行った。 2-4-2-4.29Si MAS NMR 本検討ではリン源の添加によるゼオライトの水熱劣化の抑制を指向していることから、 調製したサンプルを 2-4-1-1 項で延べた水熱劣化処理のみを行ったモデル触媒を調製した。 各 水 熱 劣 化 処 理 後 の サ ン プ ル を 用 い 、29Si MAS NMR ( 日 本 電 子 株 式 会 社 製 JNM-ECA-400) 測定を行い、ゼオライト結晶構造の詳細解析を行った。測定方法はシング ルパルス測定、プローブは7.5mmφMAS プローブ、MAS 速度は 5kHz、測定温度は室温、 外部標準はポリジメチルシラン、パルス幅は33o、繰り返し時間は200 秒、積算回数は 360 回として測定を行った。また、スペクトルの波形分離解析を行い、各成分のシグナル面積 比を算出するとともに下式を元にSi/Al 比を算出した8) (Si/Al)NMR = ( ) 4 0 4 0 ) (

4

/

nAl n n Si nAl Si

n

A

A

 

 

2-5.実験結果および考察 2-5-1.リン源添加効果 リン源の添加効果を検討するため、Table2-2 に示したサンプルを用い、同一触媒/原料油 比において活性評価を行った結果をFig. 2-4 に示す。Fig. 2-4 より、リン酸、リン酸アルミ ニウムを添加した場合、基準触媒に比べ、Conversion が低下した。一方、第一リン酸アル ミニウムを添加した場合は、基準触媒よりもConversion が向上した。なお、触媒/油 比を

(45)

40 変更した場合においても同様の傾向を確認した。 一方、Fig. 2-5 に弊社製油所より採取した平衡触媒において、結晶化度及び格子定数が Conversion に及ぼす影響について整理した結果を示す。同一格子定数において結晶化度が 高いほど、同一結晶化度において格子定数が高いほど分解活性が高い傾向にあることを見 出している。Fig. 2-4 および 2-5 より、[Al-P]を配合することにより、ゼオライトの安定性 が向上し、結晶化度、格子定数が強制劣化処理後も維持されていると考えられる。また、 結晶化度が高い場合、ゼオライトの結晶構造が残存していることから、表面積にも変化が みられると考えられる。そこで、N2吸着およびXRD を用い、相対表面積を Fig. 2-6、結晶

化度をFig. 2-7、格子定数を Fig. 2-8 に示す。なお、相対表面積は新触媒の Base(基準触 媒)の表面積を100 とした際の表面積を意味する。 また、リン源を添加した際には触媒としての物理性状へ影響を及ぼすと考えられること から、本検討では摩耗指数測定を行い、その結果をTable2-3 に示す。 Fig. 2-6 より、新触媒における表面積はいずれのリン源を用いた場合でもほぼ同等である ものの、強制劣化処理後はリン酸およびリン酸アルミニウムを用いた場合は基準触媒に比 べ、表面積が低下し、[Al-P]を添加した場合のみ基準触媒以上の表面積を示すことを確認し た。一方、Fig. 2-7 より、表面積同様にいずれのリン源を用いた場合でも新触媒においては ほぼ同等の結晶化度を有しているが、リン酸およびリン酸アルミニウムを添加した場合は 結晶化度が基準触媒に比べ低下しているのに対し、[Al-P]を添加した場合は結晶化度が高く なることが分かった。また、Fig. 2-8 より格子定数は、基準触媒に比べ、[Al-P]を添加した 場合のみ、基準触媒よりも格子定数が高く、強制劣化処理後もゼオライト骨格構造中に分 解活性点となるAl がより多く残存している。新触媒において表面積および結晶化度が同等 であることから、いずれのリン源添加時においてもゼオライト結晶構造の溶解はないと考 えられる。しかしながら、リン酸、リン酸アルミニウムは[Al-P]に対し、FCC 触媒調製条

(46)

41 件下においてはゼオライトとの相互作用が弱く、十分にゼオライト安定性向上効果が得ら れないため、分解活性の向上効果が得られなかったと考えられる。 Table2-3 に示した各リン源を添加した際の摩耗強度測定結果より、リン酸およびリン酸 アルミニウムを添加した場合、基準触媒に比べ、摩耗強度の値が高く、物理的強度が弱か った。リン酸、リン酸アルミニウムを添加した場合、バインダーの結合力を阻害したため、 摩耗強度が悪化したと推察される。一方、第一リン酸アルミニウムは、前述のように従来 高炉補修剤や歯科鋳造などの結合材に用いられていることから、リン酸、リン酸アルミニ ウム結合力が高く、その結果、基準触媒と同等の摩耗強度が得られたと考えられる。 以上の結果より、[Al-P]を配合した場合のみ、分解活性向上効果が得られ、かつ、磨耗強 度が維持されることを見出し、[Al-P]を新規マトリックス成分として採用した。

(47)

43

Fig.2-4 Comparison of Catalytic Activities with Various Phosphoric Compounds

Cat/Oil ratio : 5

Base

Sample2 Sample3

Con

ver

sion

/ mas

s%

Base

+5

-5

-10

Sample1

42

(48)

43

Fig. 2-5 Relationship of (a) crystalline and conversion, (b) unit cell dimension and conversion Conversion was evaluated at catalyst / oil ratio = 6

(a) The same unit cell dimension samples were evaluated (b) The same crystallinity samples were evaluated

&RQYHUVLRQP

DVV

8QLW&HOO'LPHQVLRQ ύ

%DVH







%DVH









E

&RQYHUVLRQP

DVV

&U\VWDOOLQH 

%DVH







%DVH







D

(49)

45

Fig. 2-6 Comparison of Relative Surface Area

(a)fresh condition, (b)deactivated condition

90

95

100

105

Base

Sample1 Sample2 Sample3

R

el

ati

ve

surfa

ce

ar

ea

/ %

(a)

65

70

75

80

Base

Sample1 Sample2 Sample3

Rela

tiv

e s

urfa

ce

ar

ea

/ %

(b)

44

(50)

45

Fig. 2-7 Comparison of Relative Zeolite Crystallinity

(a)fresh condition, (b)deactivated condition

90

95

100

105

Base

Sample1 Sample2 Sample3

Rela

tiv

e zeo

lite

cry

sta

lli

ni

ty

/ %

(a)

Base

+2

-2

-4

60

70

80

90

100

Base

Sample1 Sample2 Sample3

R

el

ati

ve

zeo

lite

cry

sta

lli

ni

ty

/ %

(b)

Base

-20

-10

-40

-30

(51)

46

Fig. 2-8 Comparison of Unit Cell Dimension

(a)fresh condition, (b)deactivated condition

0.96

0.98

1

1.02

1.04

Base Sample1 Sample2 Sample3

-0.20

-0.21

-0.22

-0.19

-0.18

U

nit

C

el

l D

im

ensi

on

/

(b)

90

95

100

105

110

Base

Sample1 Sample2 Sample3

Unit

Cell

Dim

ens

io

n

/

(a)

Base

+0.02

+0.04

-0.02

-0.04

(52)

47

Table2-3 Attrition Strength of Each Sample

Attrition strength

Base

2.3

Sample 1

7.9

Sample 2

8.2

(53)

48 2-5-2.[Al-P]添加によるゼオライト安定性向上効果の検討 2-5-1 項で述べたように[Al-P]の配合に伴い、模擬平衡化処理後もゼオライト結晶構造お よび分解活性点がより多く残存していたため、分解活性が向上した。[Al-P]によるゼオライ ト安定性向上効果を検証するため、Base および Sample3 を用い、水熱劣化処理時間を変 更した際の結晶化度および格子定数の変化を検討し、Fig. 2-9 に結果を示す。基準触媒に比 べ、[Al-P]を配合した触媒は水熱劣化処理時間が 24 時間の場合においても、結晶化度及び 格子定数の劣化が緩やかであり、水熱劣化耐久性が高いことが明らかである。

(54)

49

Fig. 2-9 Changes in Relative Crystallinity and Relative U.C.D.

(a): Relative crystallinity, (b): Relative lattice constant

The crystallinity and U.C.D. of each catalyst were the same values before hydrothermal treatment.

Deactivation condition : 800oC×6h hydrothermal treatment

50

60

70

80

90

100

0

4

8

12

16

20

24

Base

Sample3

Steaming treatment /h

Re

lat

ive

c

ry

stal

line

/ %

98.5

98.8

99.1

99.4

99.7

100

0

4

8

12

16

20

24

Base

Sample3

Steaming treatment /h

Re

lat

ive

U.

C.

D.

/

-(a)

(b)

(55)

50 更に水熱劣化時のゼオライトの状況を詳細に検討すべく29Si MAS NMR を用い、ゼオラ イトの構成元素の結合状況を観察した。なお、本検討では、[Al-P]とゼオライトの相互作用 を検証するため、ゼオライト単独およびゼオライトに[Al-P]を sample3 と同じ割合で物理 混合したのち、120oC で乾燥処理を行い、粉砕処理を行うことでモデルサンプルを調製した。 調整したモデルサンプルに対し、触媒被毒金属の担持処理を行わず、800oC、6h 水熱劣化 処理のみ実施した。これらのサンプルおよび参照として強制劣化処理を行わず、ゼオライ ト単独と同一の USY ゼオライトを用い、29Si MAS NMR 測定を実施し、Fig. 2-10 に 29Si-NMR のスペクトル、Table2-4 に29Si MAS NMR で得られた各スペクトルの面積比を

示す。各スペクトルの帰属は既報 9)に従い、-95ppm を Q(2Al)、-102ppm を Q4(1Al)、

(56)

51

Fig. 2-10 29Si MAS NMR measurement results

(a)Spectra with chemical shift of –90 to –110 ppm

(b)Spectra with chemical shift of –90 to –105 ppm

Model samples underwent only hydrothermal treatment (800oC×6h)

Measurement conditions: probe=7.5mmφMAS probe, MAS velocity=5kHz, temperature=room temperature, external standard=polydimethylsilane, pulse

wideth=33o, repetition time=200 s, cumulative number=360.

22

-110

-100

-90

Zeolite only after steam treatment Zeolite + Al-P after steam treatment <reference>Zeolite (fresh condition)

Chemical shift/ppm

-105

-100

-95

-90

Zeolite only after steam treatment

Zeolite + Al-P after steam treatment

<reference>Zeolite (fresh condition)

Chemical shift/ppm

Fig. 1-1 Typical petroleum refining scheme
Fig. 1-2 Constitution of FCC process
Fig. 1-3 Relative demands of petroleum products in recent years
Fig. 1-4 Outline of FCC catalyst
+7

参照

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