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Table4-1 Propylene production type FCC unit

Licenser

- UOP Lummus SINOPEC

SW

KBR

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○Petro FCC

Petro FCC は触媒循環システムと反応条件を最適化することでプロピレン収率の改善を

指向したプロセスである。特徴としてはFCC触媒の循環量を増加させることで、接触分解 が行われる反応領域を拡大し、より接触分解を進行させることでプロピレンを含むLPG留 分の増産を指向している。また、接触時間を短縮することでオレフィンの二量化を低減し、

オレフィンの低減を抑制している4)。その結果、従来型のFCC装置に比べ、プロピレン収 率が向上する。

○DCC

SinopecはStone & Websterとともに本プロセスを開発し、工業化した。Table 4-1に示 したように、DCC プロセスは従来型のFCC装置に比べ、反応温度は約40oC 高く、触媒/

原料油比率も高いことから、苛酷な条件下での反応を行っている。また、プロピレン収率 を向上させるため,Y 型ゼオライトの代わりに ZSM-5 ゼオライトをベースとした触媒が 用いられている。また、プロピレン増産を指向したTypeⅠ、イソブテン増産を指向したType

Ⅱの大きく2つの運用モードがあり、運転条件および触媒を制御し、運用されている5)。な お、本プロセスは2014年1月時点において中国で4基以上、タイで1基、サウジアラビア、

インドなど、延べ9基が導入され、稼動している。

上記プロセスの共通点として、反応条件のシビアリティーを向上させていることから、

従来型のFCC装置においてプロピレン増産を指向するには、生成物の軽質化を促進するこ とを目的とした高分解を指向した運用が有効である。プロピレン増産指向FCC装置と同様 に、反応温度を上昇させることにより、より軽質化が促進され、SLO などの重質留分収率 が低下し、ガソリンやプロピレンを含む LPG 収率が向上する。しかしながら、従来型の

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FCC装置で高分解を指向した場合、Dry gas留分が増加すると同時に触媒上のコーク堆積 量も増加する課題があるため、現状のFCCプロセスでは反応温度上昇による高分解を指向 した運転は、ガスコンプレッサーの冷却能力や再生塔エア供給装置(エアブロワー)の能 力など多くの制約を受けることになる。

そのため、従来型のFCC装置において、高分解を指向した運転によるプロピレン増産を 図った場合、設備増強が必要となる。代表的な装置改良項目としてはフィードインジェク ション、接触時間、FCC装置内における原料油分圧が挙げられる。

フィードインジェクションとは、Riser入口において、FCC触媒にFCC原料油が接触す る部分を示す。特に重質な原料油を処理する場合、FCC触媒とFCC原料油の接触効率が低 下するため、分解活性低下によりLPG収率が減少する。そこで、これまでにノズル形状の 改良、FCC 原料油の注入位置及び方法等多くの改良が行われ、特に重質な原料油を処理し た場合でもFCC触媒と FCC 原料油の接触効率低下抑制が可能となる6)。その結果、従来 型のFCC 装置において重質な原料油を処理した場合でも分解活性低下によるLPG 収率減 少を抑制し、ドライガス、コーク生成量の許容範囲内でプロピレン増産が可能となる。

接触時間とは、ライザー内におけるFCC触媒とFCC原料油の接触時間を意味する。ラ イザー温度が高く(反応温度が高い)、接触時間が長い場合、接触分解反応に加え、熱分解 反応が進行するため、LPG収率が低下し、Dry gas収率が増加することが課題となる。こ のような非選択的な熱分解反応を抑制するため、ライザー上部のリアクター容積を小さく し、接触分解反応のみを選択的に進行させる装置設計及び改造がなされている。例えば、

Mobil-Kellogg に よ っ て 開 発 さ れ た Closed Cyclon シ ス テ ム 7)、Esso Research &

EngineeringのClosed Coupled Cyclonシステム8)など設備増強することにより、ライ ザー内におけるFCC触媒とFCC原料油のContact Timeが短くなり、熱分解反応を抑制し つつ、接触分解反応が促進されるため、LPG留分増産が可能となる。

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また、FCC装置内における原料油炭化水素の分圧が低いほど、副反応が抑制され、LPG 中のオレフィン濃度が高まる。原料油炭化水素の分圧は、原料油を分散させるディスパー ジョンスチーム量を増加することでも変更可能であるが、従来型のFCC装置においてディ スパージョンスチーム量を増加させた場合、FCC 触媒の循環性が低下する等の課題が生じ る。従って、プロピレン増産を指向する運用を行う場合、FCC 装置を建設、設備増強する 段階でディスパージョンスチーム量及び原料油炭化水素の分圧を考慮する必要がある。

なお、上記設備増強を行った場合、ライトオレフィンの増産を指向しているため、ガソ リン留分の収率は従来型のFCC装置に比べ低下することから、ガソリン・ライトオレフィ ンのフレキシブルな製造は難しい。

4-2-2.触媒面からのプロピレン増産

触媒面では、ZSM-5を含有する触媒粒子(以後、アディティブ)をFCC触媒と物理混合 することでプロピレンを増産することができる。4-2-2-1項に詳細に記すが、アディティブ はFCC触媒によって分解されて生成したガソリン留分を更に過分解し、プロピレンを含む LPG 留分へ変換する。すなわち、アディティブ添加量の増減および投入有無により、任意 にガソリンとプロピレンを含むLPG留分の収率を制御することができるため、フレキシブ ルな生産が可能となる。

4-2-2-1.アディティブの構成

アディティブは、1-2項で述べたFCC触媒と触媒構成はほぼ同じであり、ゼオライトに ZSM-5、比重調整剤である粘土鉱物、分解活性を補填するマトリックス成分、触媒構成成 分をひとつの粒子にまとめるバインダー(結合剤)から構成され、触媒形状、粒子径等は

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FCC触媒と同等である。以下にアディティブの特徴であるZSM-5ゼオライトについて詳述 する。

4-2-2-2. ZSM-5ゼオライト

ZSM-5の特徴をFCC触媒に使用されるUSYと比較し、Table4-2に記す。

USY は比較的大きい約 7.6Åの細孔径に加え、約 13Åのスーパーケージを持つ。一方

ZSM-5はUSYよりも小さい直径(約5.5Å)の細孔径を持ち、これらがほぼ垂直に交差して

3次元ネットワークを形成している。また、一般的にゼオライトを構成している Si と Al の比率であるSiO2/Al2O3比が低いほど、親水性が高く、分解活性点を多く有する。しかし、

前述のようにFCC装置では、反応後の触媒は再生塔において水熱劣化条件下に曝されるた め、親水性が高い場合、より水熱劣化が促進され、分解活性の低下を招く。アディティブ に用いられるZSM-5ゼオライトは、分解活性及び耐水熱性の観点から、通常20~50程度 のSiO2/Al2O3比を有するZSM-5が使用される9)。また、ZSM-5ゼオライトはUSYに比べ、

骨格構造の違いにより、ひとつの酸点あたりの酸強度が強いため、FCC 触媒によって生成 したガソリン留分を逐次的に分解する過分解反応が進行し、プロピレン留分を含むLPG留 分が増産される。

なお、耐水熱性向上を目的にFCC触媒では、主に希土類金属を添加するが、アディティ ブではリンによるゼオライト修飾が広く用いられている10),11),12)

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Table4-2 Comparison of USY and ZSM-5

USY ZSM-5

Framework structure

Pore size 7.4 Å、 13 Å 5.5 Å

85 4-3.実験方法

4-3-1.触媒調製

水ガラス 144.8g(Loss Of Ignition (LOI);71.0mass%、JIS3号)に対し、純水184.7g 添 加 し 、 十 分 に 攪 拌 し た 後 、50℃ 一 定 の 恒 温 槽 に お い て 25wt%硫 酸 溶 液

98.7g(LOI:7.8mass%)へ攪拌しながら添加した(バインダースラリー)。一方Yゼオライト

86.8gに対し、純水を173.6g添加し、十分に攪拌した(ゼオライトスラリー)。バインダー

スラリー中へ攪拌しながらゼオライトスラリーを添加した(混合スラリー)。混合スラリー を十分攪拌した後、噴霧乾燥器(大川原化工機株式会社製FOC-20)を用い、乾燥処理を行 った。なお、リン源として第一リン酸アルミニウム(LOI:46.2mass%)を添加する場合、

乾燥基準で1mass%となるよう、混合スラリーへ添加した。

乾燥処理後、触媒中に残存するNa除去を目的に、噴霧乾燥後の触媒を5%硫安水溶液に 添加し、60℃、30 分攪拌した後、60℃温水にて洗浄・ろ過を行い、120℃乾燥機中で 12h 乾燥させた。

Na除去後、硝酸ランタン6水和物(関東科学社製)を用い、触媒中に1mass%(以降RE1%)、

5mass%(以降RE5%)となるよう、イオン交換処理を実施した。

4-3-2.触媒活性評価

FCC装置において、FCC触媒は触媒被毒金属およびスチームによって触媒活性が劣化し た状態で運用されている。本検討で調製した触媒の活性を商業装置で運用されている触媒 と同等にするため、強制劣化処理を実施した。なお、アディティブは日揮触媒化成株式会

社製OCTUP-11Sを用い、添加効果を検証した。

86 4-3-2-1.FCC触媒の強制劣化処理

調製したFCC触媒を600℃、2時間乾燥処理した後、所定量のナフテン酸ニッケル(日本

化学産業株式会社製)およびナフテン酸バナジウム(日本化学産業株式会社製)をシクロヘキ サンへ添加した溶液中に乾燥させた触媒混合し、十分に攪拌した後、100℃にてシクロヘキ サンを蒸発させ、更に再度600℃、2時間乾燥処理を行うことで触媒被毒金属を担持させた

13)

触媒被毒金属を担持した触媒は、800℃、6時間、100%スチーム流通下で水熱劣化させる ことで、強制劣化処理を行った。

4-3-2-2.アディティブの強制劣化処理

4-3-2-1.項に記載した触媒被毒金属を担持せずに、800℃、100%スチーム流通下で6時間

水熱劣化させることで水熱劣化処理のみを行った。

4-3-2-3.触媒性能評価

強制劣化したFCC触媒とアディティブを任意の量で物理混合し、Kayser社製ACE-MAT にて触媒性能評価を実施した。原料油は弊社製油所よりした減圧軽油を用い、反応温度 510℃、触媒/油比を任意に変更したデータを採取した。なお、生成油はアジレント社製ガス クロマトグラフィー 7890Aで分析し、分解活性は100-(LCO収率(190℃~350℃) + SLO 収率(350℃以上))として算出した。また、生成物中の成分の同定はHP社製ガスクロマトグ ラフィー 6890を用い、行った。

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