第14章
通常「光」と呼んでいる可視光線は,電磁波の一 種です。一種と言うより,周波数・波長の違いに よって性格の異なる電磁波のある領域を差す概念 です。 電磁波を一言で説明すると,「電気と磁気が相互 に作用して発生するエネルギーの波」と言うことに なります。つまり光とはエネルギーそのものです。 電磁波は周波数が低い(波長が長い)方から順 に,電波,赤外線,可視光線,紫外線,X線,線 に分類されます。可視光線はこの幅広い周波数帯 の,ほんの僅かな帯域,およそ760nmから380nm の波長域だけを指しています。 ただし,光には波としての性質と,粒子としての 性質を合わせ持っているため,昔から多くの研究 者が注目し,様々な説を唱えてきました。
電磁波
光をめぐる諸説
ニュートン(17世紀)は,光はまっすぐ進み,ものに当たると影を作ることから, 発光体は絶えず周囲に向かって光粒子を放射すると主張した。 ホイヘンス(17世紀)は,光は交差しても素通りすることから,宇宙に一様に 存在する媒質(エーテル)の中で起こる波動であると主張した。 干渉現象(ヤング:1801年,フレネル:1816年)や回折現象,偏向現象から, 光の波は横波であることが判明した。 マックスウェル(1861年)は光も電磁波であることを純理論的立場から主張 し,媒質中でおこる現象的波動であると提唱し,ヘルツ(1887年)がこれを実 証した。 フィゾー(1849年)の回転歯車の実験より,光が有限速度であることを実証 した。物質中における光の速さは物質の屈折率に反比例することから,光も 波であることが確認された。 プランクのエネルギー量子説から論を発し,アインシュタイン(1905年)が光 電効果やコンプトン効果から光量子仮説を主張した。光の性質
正反射 乱反射 反射 屈折 入射光線 反射光線 入射角 反射角 i r 入射光線 反射光線 i r r i 屈折光線 空気 ガラス i = r 光が透明な媒質に直角でない角 度で入射すると,境界面で屈折し て進路が曲がる。また,入射光の 一部は,境界面で反射する。3本のビームが空気中から 三角形のガラス片に出入る するとき,屈折をする。一番 下のビームはガラスから空 気への1回目の境界面に当 たるとき,入射角は臨界角 を超えているので内面で全 反射が起こる。 ダイアモンドは屈折と内面での全反射によっ て輝きを生じる。ブリリアントカットでは屈折と 全反射が適切に起こるように,決まった数の 大小面が適当な厚みで カットされている。この ような全反射の性質を 利用して,長距離の光 伝播を可能とした物が 光ファイバーである。
全反射
光の性質
物質はそれぞれ固有の波長の光 を入射すると,その一部が吸収され, より高いエネルギ状態に励起される。 吸収によって励起された物質は, 保持したエネルギを光として放出す る。発光は蛍光とりん光に分けられ, 発光寿命は蛍光が短く,りん光は長 い。 光が物質と衝突あるいは相互作 用を起こすことで方向や性質が変化 することを散乱という。 ・レイリー散乱 光の波長よりも小さ いサイズの粒子による光の散乱で ある。波長の短い色ほど散乱される ので,青は赤よりも多く散乱される。 ・ミー散乱 光の波長よりも大きいサ イズの粒子による散乱である。雲が 白く見える原因となっている。 吸収と発光 散乱分散 波長によって屈折率が異な るため,プリズムを通すことに より,様々な波長の光に分散 させることができる。 光の3原色 青 赤 緑 黄 シアン マゼンタ 光の3原色は赤緑青(RGB)の3つで,テ レビの画面はこの3色で作られてるいるの がわかります。光の3原色を組み合わせる と白となります。また,この補色(正反対の 色)は印刷物などに使われている3原色と なり,この3色を組み合わせると黒となりま す。
光の性質
ヤングの実験
ヤングの干渉実験は光の波動性 を明らかにしたことで有名である。点 光源からの光を1つ目のスリットを 通して線光源に変換し,これを2つ のスリットを通してスクリーンに投影 すると,スクリーン上に明暗の縞模 様ができるというものである。 光源の波長を,スリット間距離を d,スリットとスクリーンの距離をと すると,それぞれの光路長S1P,S2P は三平方の定理より, となる。がx,dに比べて充分に大き いと光路差は, と近似できる。E1,E2がほぼ同じだと 考えると,2つのスリットの2等分点 からスクリーンへの垂線から距離x のところの光強度Iは, となり,k = 2 / より, となる。すなわち,干渉縞の間隔は / d で与えられることがわかる。光源
d
x
P
S
1S
2 2 2 1 ( 2) S P x d 2 2 2 ( 2) S P x d 2 1 S P S P xd 1 ( ) cos ( ) I x k xd 2 1 ( ) cos xd I x
回折格子
回折格子とは,ガラスの表面に細 かな傷をつけることで狭い間隔のス リットをつけたものである。 1000本/cm m 0 1 2 3 1 2 3 回折格子 mdsin
m=
m
d:回折格子の溝の間隔(1/1000 cm) m = 1, 2, 3, ... :光の波長 平面波 回折格子 回折光 d d sinm m d sinmが 波長の 整数倍 強め合う 回折格子 平面波 回折光 d d sinm m d sinmが 波長の 整数倍 +半波長 弱め合う回折格子
回折格子の作る干渉縞の間隔は, dsinm = m より,波長の影響を受ける。例えば, 同じ実験を赤レーザ(650nm)と緑 レーザ(532nm)で行うと,波長の長 い赤レーザの方が干渉縞の間隔は 広くなり,その比は波長の比となる。 白色光を回折格子を通してみると, 白色光に含まれる様々な波長の光 に応じて干渉縞が現れるため,写真 のような虹のような干渉縞ができる。油膜の上面と下面で反射した光の波の位相が そろっていると,強め合う干渉が起こり,観測者 にはある角度と油膜の厚さに対して,決まった色 の光だけが見える,2つの反射波の位相がずれ ていると弱め合う干渉が起こる。油膜の厚さは場 所によって変わるので,様々な波長の光がカラフ ルな色で見える。
薄膜による干渉
760[nm] 380[nm] 450[nm] 550[nm] 650[nm] 太陽光のスペクトル 残りの光はどこへ? 拡散(乱反射) 吸収 透過 反射 だから,黒いものは暖まりやすく,白い ものは暖まりにくい
なぜ色が見えるか
400 500 600 700 0 20 40 60 80 Chlorophyll a Chlorophyll b 吸収率 [%] 葉身中のクロロフィルが青と赤の波 長の光を吸収し,緑の波長の光を反 射するため 400 800 1200 1600 2000 24000 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 葉の反射率 [%] 水の吸光率 [%] 波長 [nm] 波長 [nm] 0 20 40 60 80 葉の反射率 [%] 500 600 700 800 900 波長 [nm]