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乳児肝硬変症の一剖検例

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Academic year: 2021

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28 (東京女医大誌・第23巻 第4号頁114一一一116昭和28年11月) 緒

〔臨 床 実 瞼〕

乳児肝硬変症の一一一’一i剖検例

東京女子医科大学小児科学教室 (主任 磯田仙三郎教授) 言

モワ

ウエ

モ} 山 ヤマ

タエ

ショウ (受付昭和28年8月10日) 小児肝硬変症は比較的稀とされてみる疾患で私 の探し得tc本邦報告例は第一表の如く37例で内1 年未満のものは19例であった。然もその大部分は 胆道閉塞乃至狭窄を伴ったものである。1昨年当 教室から高田氏が報告したのも胆道閉塞を伴った 胆汁欝滞性肝硬変症の一例であったQ私は本年2 月乳児肝硬変症と思はれる患児を観察し剖検の結 果それが胆道欠損並に胆嚢欠損を伴った肝硬変症 である事を知り興味ある例と思ひ鼓に報告する次 第である。 症: 例 患者井○カ0 2’山月男子 昭和28年2月19日入院 昭和28年3月2日死亡 第/表 本邦小児肝硬変症報告例

「鉢胸原因不明韓羅

1年未満1

=…ri

I∼5才l

L−1一一

5∼10才1

1 5 18 2 10∼14才 1・ 9 2 o o 19 7 9 2 家族歴:父母系に癌.脾腫,貧」血,黄疸,結核,Vラ リャの罹患者なく,血族結婚なく,1毎毒否定す,父 は健康母は妊娠8ケ月にW氏反応陰性,妊娠8ケ月 に妊娠腎といわれ現在筒食事制限を行っていると云 う。三児1ま第一子である。 既往歴:妊娠8ヵ月で横位となり9ヵ月で骨盤位とな り満期安産。骨盤位労娩であった。生下時体重 25sOg, 母乳栄養で胎便の船出を見たという。 現病歴 生後1週より全身皮膚の淡黄色に気付いたが漸次薄 くなって行く様に思われた。生後1カ月位より全身 皮膚黄色が増強したのに気付き,糞便は1日7∼8、 回で少量の粘液を混じでいたが色調は普通の黄色で 悪臭は無かったという。 生後1カ月半より糞便が緑色を呈し褐色穎粒を混 じる様になった。そして前額皮膚に点状の町営守旧 が現れ少量の鼻出血が1日1∼2回あった。生後2 カ月より機嫌が悪く吐乳頻発し顔色蒼白となりチア ノPゼを起し呼吸困難を{半って2月19日入院した。 入院時所見 体温36.80C,体格栄養…中等,脈搏頻速且微弱, 呼吸促迫,不機嫌疲労様顔貌を呈し,全身皮膚は 黄染し前額部に点状皮膚浴血.あり,眼球結膜及瞼 結膜は強度に黄色を呈し,口腔粘膜も亦黄色であ る。舌は瀧潤にして白苔あり,咽頭発赤なく,口 唇にチアノーゼがある。心臓肺臓に異常なく,腹 部tt著しく膨満して腹壁は緊張し腹壁静脈が怒張 してみる。波動は認められない。肝臓は右季肋下 に3横指硬く触れ,鼻詰は左季肋下に,2横指触 れる。脊柱四肢に異常はない。 検査事項 1)尿は黄色を呈して酸性,ビリルビン反応強 陽性でウロビリンは経過中陽性を呈し,ウPビリ ノーゲンは終始陰性であった。其他正常。 (第二表) 一一 114 一

(2)

29 2) 糞便は淡黄色の色調を常に呈した軟便であ るがビリルビン,ウロビリン及ウロビリノーゲン 反応常に陰性であった。潜血反応亦陰性。

第2表尿所見

「豪識1・91・

・・副・7/・

色調三色補色障色

濯 三 士 ± ±

反応手性酸性醸性

出離第

ビ リノレビン 一層

・・ビ・・1

十 十 .Yロビリゴーゲンノ1 一

アセ・判

一lL

糖 1..一

ヂ ア ゾ1

沈 渣 1

1 」一 塩 基

ol

o エ オ ジ.ン 白’ 中 日 性 好 球 嗜 白 百 血 球 分 率 一一. 1.0 1 1.5 骨 。 1’ o 幼 o o 桿 1.5 o 分 ・釧 ・2・・ 巴

eTi−

?rvsL,.o モノチe・テン i.5 i o プ ラ ス マ il’ o 凝 固 時 押 出 血 時 間

赤血球抵 抗

27分 18分 最大0.32 最ノJ、0,42 8分 4分

比重27/1全血1.042

血清 1,018 血清蛋白濃度 4.Og/dl

血灘3

x嘩

3)Hepatosulfa1ein試験19/置は30分後の残

存率20%で,27/ll lcは40分後も猶20%の残存率 を示した。 4) 血清ビリノ1ンビ;/ Meulengracht氏法に依る指数は19/ll 60,26ノ

皿70を示した。叉Hijmans van den Bergh氏

法では直接及間接反応共に陽性。(20/ll 27/∬)

5)血液所見

第3表に示す如く軽度の貧通しある他,入院時に 凝固及び出血時間が延長していたが之もやがて正 常値IC復した。其他格別の事は無V・。

第3表 血液所見

覇F=コ建こ・9/・26/・

赤 血 球

332万1…万1

白 血 球 ll,600 P 13,200 血 色 素 76% 1 70%

血色素 係 数

1.i 1 i.1 血 小 板 11万 ・ユ

i

6) 」血清高田反応は弱陽性(27/11) 7) ワ氏反応陰性 8) ツ反応(1:2000)陰性 経過

入院後4∼5B間は黄疸が1時減退せる観があ

り,体温は360q台にして吐乳少くなり顔貌も機嫌 も良好となって笑ふ事あ19よく睡る様になったQ 入院時の血液所見に於て凝固及出血時間が延長し

ている為ビタミンC,K,及メチオニン注射施行

し,20%葡萄糖1日20cc藩儒注したところ前額皮 膚盗血は漸次減退入院4日目に全く消失した。糞 便色調は黄色を呈し1見黄疸は滅退せる襟であっ たが肝機能検査では回復の兆なく却って増強を示 した。腹部膨隆は益々強く肝臓は硬度を増し腹壁 静脈怒張は続き腹水は依然として認められなv・。

回るに入院8日目より咳鍬現れ,翌入院9H目発

熱37.8。C,入院10日目に前胸部両側に又後部左 側に小水泡性ラ音を聴取し,ペニシリン注射の効 なく3月2日死亡した。 病理解剖所見概要1 1)栄養良好,全身皮膚は帯黒黄疸色を呈し出血を 認めない。2)胸腺は小胡桃大で実質性小数点状出血 を認る。3)心臓に異常なし。4)肺は両側共内側部 はやや拡張不全の状態を呈し両下葉(特に右)の肋膜 一115一’

(3)

30 下及実質内に出血がある。5)腹腔内には強い黄色透 明の旧約20ccあり,後腹膜特に肝周囲に多数の網状の 血.管怒張が認められた。騰静脈は閉鎖している。腸間 膜やや浮腫を呈している。6)肝臓は腫大し硬度増加 し表面には稻々凹凸がある,割薗よやや腫脹し高度の 黄疸を認め小葉模様のみだはれ少いがグyソン選挙の 結締織増加が著明である。胆嚢は痕跡状でその内容は 無色透明な少量の粘液である。肝黒部と十ご指腸蔀の フア・一テル氏乳頭の間を精細に調べたが肝管,胆嚢 管,総輸胆管は何れも欠損して居り,十二指腸のプア ・・テル氏乳頭の小陥凹を認めた丈であった。8)脾隊1 腫大し重量100gを示し硬度を増し割面は腫脹し血管に 富み暗紫赤色を呈す。9)腎は皮質の腫脹著明である。 10)腸ぽ空腸高度に膨満し内容は旧く軽度に黄色を帯 びた灰色であり,空腸上部では粘膜に点状出血の多数 を認む。胃粘膜に2∼3の小出血を認め,内容昧褐色 を帯びた多量液状物である。 組織学的所見 1)肝臓 ゲリソン下鞘は多核白血 球及円形細胞の浸潤を伴う結締織繊維の増加及その中 に増進拡張した胆管のため拡張が著しい,肝実質は小一 葉構造の発達不充分の時期に高度の胆汁欝滞が起つた 為か肝細胞の排列の乱れが強く肝選考及クツベル氏星 細胞は多量の胆汁色i素願粒を含み毛細胆管には胆汁円 柱がつまっている。特に欝滞の高度であったと思われ る小葉では巨細胞状濃染体あり胆汁色素願粒で充満し た多核の肝細胞の不規則な集団の様に見える。2)肺 臓全体に可成四脚な気管支周壁と欄包壁の肥厚が 目立ち,肺胞内への滲出ぽ一般に軽度である,叉聞費 の浮腫と出」血が認められる。 考 按 以上の如く本門は病理解剖所見に依て肝硬変症 たる事を確め得允もので然も胆汁欝滞性肝硬変症 忙属するものである事が知られ%,其症状発現ぱ 薪生児黄疸の消退頃再び黄疸の増強に依て始まり 皮膚等の点状出血と肝脾腫脹に基く腹部膨隆を現 はし腹水を認める事なく生後2ヵ月にして死の転 帰を取った。剖見上肝管,胆嚢管,総輸胆管の何 れも欠損していたにも拘らすメコこウムの排出が あったと家人云い,又入院後の糞便は黄色を帯び てV、た事は注目に値する事であるが,胆汁色素反 応は常に陰性であっft。 他の乳児肝硬変症と同様に本例も家族的遣伝的 関係は認められ,なかった。 結 び 本例ぽ生後2ヵ月の男子に見た肝硬変症で,剖 見上肝管,胆嚢管,総輸胆管の欠損,痕跡状の胆 嚢及び胆汁欝滞性肝硬変症の像を呈したものであ る。薪生児黄疸消退の頃即ち生後1ヵ月頃から黄 疸の増強と皮膚出血鼻出i1と共.に腹部膨隆を来た し肝脾腫脹と一般状態の重篤に次で肺炎を併回し 入院12日にして死亡したもり℃ある。 本論文は東京女子医科大学町会第61回例会に湿て発 表した。 稿を終るに臨み当教室磯田教授並びに病理学教室今 井助教授の御教示と御厚意を深謝する。 :文 献 1) く}、山 王蔓:叡彦 ; 児科雑誌 第309号 (大15年) 2)柏崎 晃:児科雑誌 第322号 (昭2年) 3)坂内 益蔵:児科雑誌 第352号 (昭4年) 4)安川 八重,東京女医学会雑誌第1巻(昭6)

5)長屋訟雄:児科雑誌第404号(昭9)

6) 三川 訟:日本内科学会雑誌第21巻(昭9) 7)有坂‘雷夫:児科診療 第405号 (昭g) 8)飯島 孝:児科診療 第5巻第1号(昭14) 9)齋藤 淑:児科雑誌第46巻下 (昭15) 10)坂口.竹馬:児科雑誌第46巻 (昭15} 11)申都野龍一:臨床小児科雑誌 第14巻(昭15) 12)生沢長次:児科雑誌第47巻 (昭16) 13)里見 正義:児科雑誌 第47巻 (昭16) 14)末広 栄:児科雑誌 第47巻 (昭16) 15)荒木 節鄭:児科雑誌 第47巻 (昭16) 16)ISI ’申 勲:児科雑誌 第48巻12号 (昭17) 17)原弘毅他隠名:児科雑誌 第51巻 (昭22)

・8)錨籔・臨床内秘児科第・巻(昭22)

・9)譜籔・児彬騨13巻・号(昭25)

20)麺野 治和::東京医大雑誌第6暑2号(昭23) ・・)難、春痛・臨床内小滴第・巻・・号(昭・5)’ 22)高田 恭子:児科診療 第15巻 (昭27) 24)小松幹司他5名:児科診療2巻 (昭26) 24)鈴木 一郭:児科診療 第15巻 (昭27) 25)山田・野郎:信州医学雑誌第1巻1号(昭27) 26)ヨ木 泰治:逓信海路第2巻2号 (昭25) 一 116 一

参照

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