原 著
〔書女肇奪、第篇6鋼言〕
悪性腫瘍肝転移における血清5ノーNucleotide phosphodiesterase
isoenzyme・Vの腫瘍マーカーとしての意義
東京女子医科大学 第2外科学教室(主任 ヤマ モト カズ コ 山 本 和 子 織畑秀夫教授) (受付 昭和61年10月24日)Evaluation of serum 5’一Nucleotide Phosphodiesterase Isoenzyme・V as a Tumor Marker in Metastatic Liver Cancer
Kazuko YAMAMOTO
The Second Department of Surgery(Director=Prof. Hideo ORIHATA)
Tokyo Women’s Medlcal College
5’一Nucleotide phosphodiesterase isoenzyme−V(5’一NPD−V)is an isoenzyme of 5’一NPD that splits nucleic acids to release 5’一nucleotide,. and moves farthest to the anodic end in polyacrylamide gel elec− trophoresis. The author determined serum 5’一NPD−V level in total 400 patients with malignant tumors who were divided into preoperative(or non−resected)and postoperative groups, and evaluated the diagnostic utility of 5’一NPD−V for liver metastases. The diagnostic utility of 5’一NPD−V was then compared with that of serum CEA,β2−microglobulin, ribonuclease, ferritin andα一fetoprotein. Patients with liver dysfunction or jaundice were excluded from the study because they exhibited a false positive response to
the test。 In the preoperative group, serum 5’一NPD−V test was positive in 64.3〔%of the patients with liver
metastasis false positive in 4.5〔%, and the predictive value of a positive assay, denoting the presence of
liver metastases, was 60(%. In the postoperative group, the figures were 84.6〔%and 3。9〔%, respectively,
and the predictive value was 64.7〔殆. When CEA was used in conjunction with 5「一NPD−V, a positive response to either of the tests was exhibited by 85.7〔殆(preoperative)and 92.3%(postoperative)of the patients with liver metastasis. From the above findings, serum 5’一NPD−V was considered to be a useful marker for the diagnosis of liver metastasis.
緒 言 目 的 対 象 方 法 1.測定法 1)5’一NPD−V 2)CEA 3)RNase 4)Ferritin 5)β2−MG 6)AFP 2.正常値 目 次 1)5ノーNPD−V 2)CEA 3)RNase 4)Ferritin 5)純一MG 6)AFP 3。転移性肝癌の判定指標 4.転移性肝癌の判定 結 果 1.術前および腫瘍非切除例 1)5〆一NPD−V 2)CEA 3)RNase 一42
4)Ferritin 5)β2・MG 6)AFP 2.術後および腫瘍切除例 1)5’一NPD−V 2)CEA 3)RNase 4)Ferritin 5)β2−MG 6)AFP 考 察 1.血清5ノーNPD・Vによる原発性肝癌の診断 2.血清5’一NPD−Vによる転移性肝癌の診断 3.各腫瘍マーカーによる転移性肝癌診断能の比 較 1)CEA 2)RNase 3)Ferritin 4)佐MG 5)AFP 結 論 文 献 緒 言 悪性腫瘍の診断方法としては,2つのアプロー チがあり,第1は,X線,超音波, CT,シンチグ ラム,内視鏡生検等の,形態的検査,病理組織 的検査であり,第2は,血液,尿,腹水等の体液 の生化学的検査による診断方法である.この両者 を組み合わせることにより,癌の診断がなされて いる.著者は第2の診断方法のうち,血液中の腫 瘍マーカーの測定を行ない,癌とその転移の診断 において,どのような役割をはたしているかにつ いて検討した. 目 的 腫瘍マーカーは2つに分類され,第1は悪性腫 瘍によって特異的に産生される物質,腫瘍特異物 質または抗原(tumor speci丘。 substance or antigen)であり,第2は正常ではごく痕跡量しか 存在しないが,悪性腫瘍では異常に高い値で存在 する物質,腫蕩関連物質または抗原(tumor as− sociated substance or antigen)であり,これま でに報ぜられている腫瘍マーカーは多くが後者で
ある.
術来,腫瘍マーカーとしては癌胎児性蛋白とし てCEA (carcinoembryonic antigen), AFP
(α一feto protein),腫瘍関連抗原として, Ferritin β一MG(焼一microglobulin),腫瘍関連酵素として RNase(Ribo nuclease)などカミあり,また近年 5ノーNPD−V (5!一Nucleotide phosphodiesterase isoenzyme−V)が,原発性肝癌および転移性肝癌の マーカーとして注目されている.そこで悪性腫瘍 臨床例において,CEA, AFP, Ferritin,今一MG, RNase,5’一NPD−Vを測定し,悪性腫瘍の存在また はその転移例において,どのような値を示してい るかを検討した.さらに肝転移を早期に予測する には,どのような腫瘍マーカーを調べればよいか, または,組み合わせて検査すれぽよいかについて 表1 腫瘍マーカーと検査症例数
5仁NPD−V CEA RNase Ferritin 焼・MG AFP 症例数
食道癌 9 8 8 7 9 3 9 胃 癌 86 88 85 79 77 58 88 結腸癌 68 68 64 65 66 26 68 直腸癌 49 51 49 47 49 24 51 膵 癌 17 17 17 15 14 13 17 胆のう癌 8 8 9 7 8 8 9 胆道癌 5 5 5 4 4 4 5 肝 癌 12 13 13 11 12 12 13 乳 癌 127 125 125 122 123 57 127 肺 癌 15 15 15 13 16 12 16 その他 20 14 20 20 20 12 20 416 412 410 390 398 229 423
検討した. 対 象(表1) 昭和57年3月より昭和60年12月までの悪性腫瘍 患者400人(術前および腫瘍非切除例178人,術後 例222人)性別では男性160人,女性240人について 6種の腫瘍マーカーを測定した. 内訳は,食道癌9例,胃癌88例,結腸癌68例, 直腸癌49例,膵臓癌17例,胆のう癌9例,胆道癌 5例,肝臓癌13例,乳癌127例,肺癌16例,その他 卵巣癌等20例であり,重複癌例を含めると検体数 は423例である.各腫瘍マーカーの検体数は,5ノー NPD・V 416例, CEA 412例, RNase 410例, Fer− ritin 390例,β2−MG 398例, AFP 229例である. 方 法 1.測定法 1)5’一NPD−V 血清20μgをポリアクリルアミドゲルを支持体 として電気泳動後,5ノーNPDの発色性基質である ammoni㎜5ノー(iodo−indol・3yl)thymidylateを加 え,インキューベートし,8%酢酸による脱色固 定し,固定されたゲルをisoenzymeの異動度の小 さい陰極側より順次分画を1∼Vと命名し,den・ sito meterにてisoenzyme−Vのピークの高さを 測定する(北里バイオケミカル・ラボラトリーズ に依頼).
2)CEA
Roche社製キットを用い, RIAによるZ一ゲル法 にて測定を行なう(北里バイオケミカル・ラボラ トーズに依頼).3)RNase
Reddi法に従い,合成RNAである
Pdycytidylic acid(・ミイオケミカル社)を基質と して測定(北里バイオケミカル・ラボラトリーズ に依頼). 4) Ferritin コーニングメディカル社製キットを用い,RIA によるサッドイッチ法により測定(東京女子医大 ラジオアッセイ検査科). 5)β2−MG Pharmacia社1製キットを用い, RIAによる固相 二抗体法によって測定する(東京女子医大ラジオ アッセイ検査科).6)AFP
栄研社製キットを用い,RIAによる第2抗体法 によって測定する(東京女子医大ラジオアッセイ 検査科). 2.正常値 1)5ノーNPD−V densito meterの高さ3.Omm以下を正常値と し,肝炎,肝硬変,閉塞性黄疸などの肝機能障害 などが血清5!一NPD−Vの上昇に影響をおよぼして いると考えられ,血清ビリルビン1.3mg/dl, GOT 70ku, GPT 70ku,のどれか1つでもこえる症例は 検索より除外した.2)CEA
正常値は5.Ong/ml以下であるが,今回正常上 限値を5.Ong/ml,7。5ng/m1,10.Ong/mlとして比 較した結果,7.5ng/mlが転移性肝癌の診断とし て優れており,7.5ng/ml以上を陽性とした.3)RNase
正常値は60∼120u/m1であるが,腎機能障害が RNaseの上昇に影響をおよぼすことから,クレア チニン1.3mg/dl以下を対象とし,転移性肝癌の 診断に関しては150u/ln1以上を陽性とした. 4)Ferritin 正常値は男性25∼200ng/ml,女性15∼120ng/ mlであり,鉄欠乏状態を反映することから,ヘモ グロブリン10。Og/d1以上のものを対象とし,転移 性肝癌の診断に関しては200ng/nll以上を陽性と した. 5)β2−MG 正常値は0.5∼2.0μg/mlであるが,腎機能に影 響されることにより,クレアチニン1.3mg/dl以 下を対象とし,転移性肝癌の診断に関しては2.5 μg/ml以上を陽性とした.6)AFP
20ng/ml以上を陽性とした. 3.転移性肝癌の判定指標 1)陽性率(各腫瘍マーカーの陽性数/肝転移の 証明された症例数),2)偽陽性率(各腫瘍マーカー の陽性数/肝転移陰性症例数),3)予測率(肝転移 陽性症例数/各腫瘍マーカーの陽性数)以上3者に一44一
ついて検討を行なった. 4.転移性肝癌の判定 CT, echo,選択的腹腔動脈造影法,術中確認, シンチグラム,で行なった。 結 果 1.術前および腫瘍非切除例 1)5〆一NPD・V(表2) 症例数は148例で,内訳は食道癌7例,胃癌40例, 結・直腸癌28例,膵・胆道癌7例,肺癌9例,そ の他13例である. 肝転移症例数は14例で,陽性率は64。3%,(9例/ 14例),偽陽性率は4.5%(6例/134例),予測率は 60%(9例/15例)であった. 血清5!一NPD−V陰性を示した肝転移症例は5例 で,胃癌2例,膵癌2例,後腹膜肉腫1例であり, CEAは5例中3例が陽性を示していたが,他の遠 隔転移も伴なっていた.どちらか一方か,両老と もに陽性を示す症例は12例(85.7%)となるが, CEA高値の場合には他の遠隔臓器への転移も疑 い,検査を進める必要があると思われた. 血清5ノーNPD・Vが陽性を示した肝転移陰性例は 6例で,胃癌4例,乳癌1例,皮膚癌1例であり, 全例他の腫瘍マーカーは陰性であり,このような 場合には5ノーNPD−Vを経過をおって測定すること は有用と思われた. 2)CEA(表3) 症例数は180例で内訳は食道癌8例,胃癌49例, 結・直腸癌35例,膵・胆道癌29例,乳癌46例,肺 癌10例,その他13例である. 肝転移症例は23例で,陽性率は65.2%(15例/23 例),偽陽性率は15.3%(24例/157例),予測率は 38.5%(15例/39例)であった. 肝転移CEA陰性症例は8例で,胃癌3例,胆の う癌1例,胆道癌1例,悪性胸腺腫1例,後腹膜 肉腫1例,原発巣不明癌1例であった.黄疸ある いは肝障害例3例を除くと5〆一NPD−V陽性は5例
中3例で,しかも10mm以上の高値を示してい
た. CEA陽性で肝転移が認められなかった症例は 24例で,食道癌2例,胃癌5例,結・直腸癌6例, 表2 5戸一NPD−V(術前および腫瘍非切除例) 肝転移(一)例 肝転移魁鰍:ll
表3 CEA(術前および腫瘍非切除例) 肝転移(+)例 陽性 陰性 食道癌 @胃 癌 求E直腸癌 X・胆道癌 @肺 癌 @乳 癌 @その他 3651 3023 計 15 8 肝転移(一)例 陽性 2 5 6 5 1 3 2 24 陰性 6 38 23 17 9 43 7 133 肝転移副:激:嬉1
膵癌4例,胆道癌1例,肺癌1例,乳癌3例,原 発不明癌1例,卵巣癌!例であった.うち重複癌 症例が4例,肝以外の他の遠隔転移で上昇したも のが6例であった.肝障害例を除くと5’一NPD・V は全例陰性であり,血清5ノーNPD−Vは他の遠隔転 移症例,重複癌,末期癌症例においても肝転移が 認められなけれぽ陽性を示さないと思われた. 3)RNase(表4) 症例数は!33例で,内訳は食道癌7例,胃癌33例, 結・直腸癌20例,膵癌10例,胆のう癌5例,肺癌 6例,乳癌43例,その他9例である. 肝転移症・例は6例で,その陽性率は68.8%(11 例/16例),偽陽性率は23.9%(28例/117例),予測 率は28.2%(11例/39例)であった. 肝転移RNase陰性症例は5例で,胃癌1例,胆 のう癌2例,肺癌1例,悪性胸腺腫1例で黄疸症 例1例を除くと5’一NPD−Vは4例中3例陽性で
あった.CEAは5例中3例測定したがいずれも
7.5ng/ml以下であった. RNase陽性で肝転移を認められなかった症例 は28例で,食道癌4例,胃癌7例,結・直腸癌8 例,胆道癌1例,肺癌1例,乳癌5例,甲状腺癌 1例,卵巣癌1例である.黄疸症例2例を除くと 5ノーNPD−Vは1例を除いてすべて陰性であった し,CEAは28例中22例が陰性であった.腫瘍非切 除例ではRNaseが陽性であっても5!一NPD−Vが』 陰性であれぽ肝転移をおおむね否定できると思わ れた. 4)Ferritin(表5) 症例数は124例で,内訳は食道癌5例,胃癌36例,結・直腸癌20例,膵癌7例,胆道癌4例,肺癌
8例,乳癌38例,その他6例である. 肝転移症例は12例で,陽性率は66.7%(8例/12 例),偽陽性率は18.8%(21例/112例),予測率は 27.6%(8例/29例)であった. 肝転移Ferritin陰性症例は4例で,胃癌3例, 原発巣不明癌1例であった.5!一NPD−Vは4例中 3・例が陽性であり,CEAは4例中2例が陽性を示 していたが,両者とも陰性を示した1例は他の マーカーもすべて陰性であったが,CT, echo,手 術で肝転移を確認している. Ferritinが陽性で肝転移を認められなかった症 表4 RNase(術前および腫蕩非切除例) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 4 3 胃 癌 3 1 7 22 結・直腸癌 1 0 8 11 膵・胆道癌 5 2 1 7 肺 癌 0 1 1 4 乳 癌 5 38 その他 2 1 2 4 計 11 5 28 89 肝転移副灘距i;i
表5 Ferritin(術前および腫瘍非切除例) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 1 4 胃 癌 0 3 3 30 結・直腸癌 3 0 5 12 膵・胆道癌 4 0 5 2 肺 癌 1 0 3 4 乳 癌 1 37 その他 0 1 3 2 計 8 4 21 91 肝転移副:::雛:解織
46例は2!例で,食道癌1例,胃癌3例,結・直腸癌
5例,膵癌3例,胆道癌2例,肺癌3例,乳癌1
例,卵巣癌2例,原発不明癌1例であった.5!一 NPD−Vは黄疸,肝障害症例を除く12例はすべて 陰性であった.CEAは21例中15例が陰性を示し, 陽性例6例は他の遠隔転移がみられたものが4 例,膵癌1例,卵巣癌1例であった. 膵癌によるFerritinの上昇報告は多いが,術前7例で測定を行ない,200ng/ml以上は6例
85.7%であったが,500ng/ml以上を示した3例 は肝転移が認められていた. 5)β2・MG(表6) 症例数は126例で,内訳は食道癌8例,胃癌32例, 結・直腸癌18例,膵・胆道癌12例,肺癌7例,乳 癌40例,その他9例である. 肝転移は15例に認められ,陽性率は40%(6例/ 15例),偽陽性率は6.3%(7例/111例),予測率は 46,2%(6例/13例)であった. 肝転移β2−MG陰性症例は9例で,胃癌4例,膵 癌2例,胆のう癌1例,肺癌1例,悪性胸腺腫1 例であった.5ノーNPD−Vは黄疸,肝障害症例を除く と6例中4例で陽性で,CEA陽性例は3例,どち らか一方か,両者がともに陽性を示す症例は6例 であった. 十一MG陽性で肝転移が認められない症例は7 例で,胃癌2例,結腸癌1例,胆道癌1例,肺癌 2例,乳癌1例である.5’一NPD−Vは黄疸例を除く 5例すべて陰性であったし,CEAは7例中5例が 陰性を示し,また,β2−MG 3.0μg/ml以上は肺癌 2例と癌性腹膜炎を呈している胃癌1例であっ た. 6)AFP(表7) 症例数は115例で,内訳は食道癌3例,胃癌37例, 結・直腸癌21例,膵・胆道癌15例,肺癌8例,乳 癌21例,その他10例である. 肝転移症例は21例で,陽性率は5%(1例/20 字目,偽陽性率は4.2%(4例/95例),予測率は20% (1例/5例)であった. 肝転移AFP陰性症例は9例で,胃癌4例,結・ 直腸癌6例,膵・胆道癌5例,肺癌1例,後腹膜 肉腫1例,悪性胸腺腫1例,原発不明癌1例で, 5ノ・NPD−Vは黄疸,肝障害症例を除くと陽性例は 表6 β2−MG(術前および腫瘍非切除例) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 0 8 胃 癌 0 4 2 26 結・直腸癌 1 0 1 16 膵・胆道癌 3 3 1 5 肺 癌 0 1 2 4 乳 癌 1 39 その他 2 1 0 6 計 6 9 7 1G4 肝転移_講繍{:∴
鵬一
翌ノ::
表7 AFP(術前および腫瘍非切除例) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 0 3 胃 癌 1 4 2 30 結・直腸癌 0 6 0 15 膵・胆道癌 0 5 0 10 肺 癌 0 1 1 6 乳 癌 1 20 その他 0 3 0 7 計 1 19 4 91 症例数 115 肝転移嚇血・{:∴1
講畑・{:二1
12例中7例(58.3%)で,CEAは17例で測定を行 ない,陽性例は17例中9例(52.9%)で,同じ様 な値を示していた.5’一NPD−VとCEAのどちらか 一方か,両者がともに陽性を示す症例は19日中14 例(73.7%)であった.
AFP陽性で肝転移が認められない症例は4例
で,胃癌2例,乳癌1例,肺癌1例である,5ノーNPD− Vは肝障害例を除く3例すべて陰性で,CEAは骨 転移を伴なった乳癌1例を除いてすべて陰性で あった. また,AFPは転移性肝癌の陽性率は5%(1例/ 20例)で他のマーカーに比べ低いが,肝癌におい ては陽性率は11例中8例(72。7%)であった. 2.術後例(腫瘍切除例) 1)5ノーNPD−V(表8) 症例数は166例で内訳は胃癌28例,結・直腸癌67 例,膵・胆道癌11例,肺癌3例,乳癌59・例,その 他3例である. 肝転移症例は13例で,陽性率は84.6%(11例/13 例),偽陽性率は3.9%(6例/153例),予測率は 64.7%(11例/17例)であった. 肝転移5ノーNPD−V陰性症例は,胃癌1例,結腸癌 1例であり,各々3ヵ月後の測定では,15,1mm, 3.9mmと上昇を認めている. 肝転移が認められず,陽性を示した症例は6例で,胃癌1例,結腸癌2例,膵癌1例,乳癌2例
であった.CEAは全例陰性を示しており,膵癌症例でRNase 234u/m1,β∋一MG 2.7μg/ml, Ferritin
990ng/mlと異常値を示していたが,その他の腫 瘍ではいずれのマーカーも陰性を示していた. 2)CEA(表9) 症例数は!94例で内訳は胃癌34例,結・直腸癌77 例,膵・胆道癌9例,肺癌4例,乳癌64例,その 他6例である. 肝転移症例は19例で,陽性率は52、6%(10例/19 例),偽陽性率は6.3%(11例/175例),予測率は 47.6%(10例/21例)である. 肝転移CEA陰性症例は9例で,胃癌5例,結・ 直腸癌3例,乳癌1例である.5’一NPD−Vは黄疸例 を除くと8例中7例が陽性を示し,術前例に比べ 5’一NPD−Vの方が信頼度が高いと思われた. CEA陽性で肝転移が認められない症例は11例 表8 5’一NPD・V(術後) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 胃 癌 4 1 1 22 結・直腸癌 4 1 2 60 膵・胆道癌 1 5 肺 癌 1 0 0 2 乳 癌 2 0 2 55 その他 0 3 計 正1 2 6 147 肝転移
魁鉦1
表9 CEA(術後) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 胃 癌 1 5 0 28 結・直腸癌 5 3 5 64 膵・胆道癌 1 8 肺 癌 1 0 2 1 乳 癌 3 1 2 58 その他 1 5 計 10 9 11 164副
肝転移 …讐・・1){(一)164 陽性 (≧7.5ng/ml) 21 (+) 9 (一) 11 (+) 10 一48で,結・直腸癌5例,膵癌1例,肺癌2例,乳癌 2例,卵巣癌1例である.うち重複癌11例,他の 遠隔転移(肺,胸膜,皮膚,骨,腹膜)症例は6 例で,肝転移以外で上昇する傾向にある.一方, 5〆一NPD−Vは他の遠隔転移では陽性を示していな: かった. 3)RNase(表10) 症例数は156例で,内訳は食道癌1例,胃癌28例, 結・直腸癌54例,膵・胆道癌8例,肺癌2例,乳 癌59例,その他4例である. 肝転移症例は!2例で,陽性率は58.3%(7例/12 例),偽陽性率は29。9%(43例/144例),予測率は 14%(7例/50例)であった. 肝転移RNase陰性症例は5例で,胃癌1例,結 腸癌1例,乳癌3例である.5〆一NPD−Vは肝障害症 例を除く3例はすべて陽性であり,CEAは5例中 3例が陽性であったが,うち2例は他の遠隔転移 を伴なっていた。 RNase陽性で肝転移が認められなかった症例 は43例で,食道癌1例,胃癌5例,結・直腸癌22 例,膵癌1例,乳癌12例,腎臓癌1例である, 5〆一NPD−Vは42例で測定を行ない,黄疸,肝障害症 例3例を除くと食道癌1例以外はすべて陰性であ り,食道癌症例は術後1ヵ月以内に測定したもの で,術後に肝障害を併発していた症例である. CEAは42例中1例を除いてすべて陰性であった. 4) Ferritin (表11) 症例数は157例で,食道癌1例,胃癌23例,結・ 直腸癌58例,膵癌4例,胆のう癌4例,肺癌3例, 乳癌58例,その他6例である. 肝転移症例は13例で,陽性率は38.5%(5例/13 例),偽陽性率は20.1%(29例/144例),予測率は 14.7%(5例/34例)である. 肝転移Ferr呈tin陰性症例は8例で,胃癌1例, 結・直腸癌5例,乳癌2例である.5’一NPD−Vは肝 障害症例1例を除く7一中4例が陽性で,CEAは 8例中5例が陽性であったが,うち2例は他の遠 隔転移を伴なっていた.5’一NPD−V, CEAのどちら か一方,あるいは両老がともに陽性を示していた ものは8例中7例であった. Ferritin陽性で肝転移が認められなかった症例 は29例で,食道癌1例,胃癌1例,結・直腸癌11 表10RNase(術後) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 1 0 胃 癌 4 1 5 18 結・直腸癌 2 1 22 29 膵・胆道癌 1 7 肺 癌 1 0 0 1 乳 癌 0 3 12 44 その他 2 2 計 7 5 43 101 肝転移
魁〔:1::1審
訊11Ferritin(術後) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 1 0 胃 癌 2 1 1 19 結・直腸癌 2 5 11 40 膵・胆道癌 7 1 肺 癌 1 2 乳 癌 1 2 6 49 その他 2 4 計 5 8 29 115 症例数 157 肝転移噸畑・に∴
倒讐・翻・{∵
例,膵癌4例,胆のう癌3例,乳癌1例,腎臓癌 1例,甲状腺癌ユ例であった.5’一NPD−Vは黄疽, 肝障害症例12例を除くと膵癌1例を除きすべて陰 性で,CEA測定は28例で末期乳癌1例を除いてす べて陰性であった. 5)β3・MG(表12) 症例数は155例で,食道癌1例,胃癌27例,結・ 直腸癌54例,膵・胆のう癌7例,肺癌2例,その 他4例である. 肝転移症例は11例で,陽性率は54.5%(6例/11 例),偽陽性率は11.1%(16例/144例),予測率は 27.3%(6例/22例)であった. 肝転移β2−MG陰性症例は5例で,胃癌1例, 結・直腸癌3例,乳癌1例であった.5〆一NPD・Vは 肝障害症例2例を除くとすべて陽性で,CEAは5 例中2例陽性であったが,他の遠隔転移を伴なっ ていた.全例,5’一NPD−VあるいはCEAのどちら か一方が陽性であった. 焼一MG陽性で肝転移を認めない症例は16例で, 食道癌1例,胃癌4例,結・直腸癌3例,膵癌2 例,乳癌4例,腎臓癌2例である.5〆一NPD・Vは黄 疸,肝障害症例4例を除くと,膵癌1例以外はす べて陰性であり,CEAは全例陰性であった. 6)AFP(表13) 症例数は71例で,胃癌16例,結・直腸癌23例, 膵・胆道癌7例,肺癌3例,乳癌21例,腎臓癌1 例であった. 肝転移症例は13例で,陽性率は23.1%(3例/13 例),偽陽性率は0%(0例/58例),予測率は100% (3例/3例)である. 肝転移AFP陰性症例は10例で,胃癌2例,結。 直腸癌6例,乳癌2例である.5■一NPD−Vは:黄疸症
例1例を除く9例中7例が陽性を示し,CEAは10
例中4例が陽性であった.AFP陽性で肝転移の認められない症例は1例
もなかったが,肝転移症例13例中AFP陽性は3 例のみで,肝転移の診断には有効とは思われな かった. 考 察 5ノ・Nucleotide−phosphodiesterase(5〆一NPD>V は5〆一NPDのisoenzmeで,この5’一NPDは哺乳類 の組織に幅広く分布し,phosphodiesteraseを 表12角一MG(術後) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 1 0 胃 癌 4 1 4 18 結・直腸癌 0 3 3 48 膵・胆道癌 2 5 肺 癌 1 0 0 1 乳 癌 1 1 4 54 その他 2 2 計 6 5 16 128 肝転移鮒:::1:::臨撲
表13AFP(術後) 肝転移 (+)例 肝転移 (一)例 陽性 陰性 陽性 陰性 食道癌 0 胃 癌 3 2 0 11 結・直腸癌 0 6 0 17 膵・胆道癌 0 7 肺 癌 0 3 乳 癌 0 2 0 19 その他 0 1 計 3 10 0 58 症例数 71 肝転移 ・・香E{:∴:
繊畑・に::
一50一
alcoholとnudeotideに加水分解するexonu−
cleaseであり,5ノーnucleotidaseとは異なるD.この 酵素の細胞内局在は,Tsouによると正常ラヅト 肝細胞においては1ゴルジ体,ラヅト再生肝細胞と ラット肝癌細胞においては核膜に存在し2),ラッ トの再生肝で増加し増殖速度と比例し増加することからgrowth marker enzymeであると推測し た3). 一方,Tsouら4)は5〆一NPDをポリアクリルアミ ドゲル電気泳動によるisoenzymeを検索し,肝細 胞癌と分離パターンとの関係を発見し,正常者の 血清では4つの分離パターンが,原発性あるいは 転移性肝癌では5つの分離パターンがあることが 解った.正常者ではIII, IVが大きいbandとして 現われ,一部1,IIが弱く出ることもあり, Band IVは黄疸症例や悪性腫瘍以外の肝疾患症例と関 係があり,最も陽極側に認められる易動度の大き いisoenzyme−Vは原発性および転移性肝癌で出 現すること認め,このIsoenzyme−Vを5’一NPD−V と命名した4). 1.血清5’一NPI)一Vによる原発性肝癌の診断 この診断についてはα一fetoprotein(AFP)が鋭 敏マーカーとして用いられているため,5!一NPD− VとAFP, CEAについても対比しつつその診断 的有用性を述べる. Tsouら1)の報告によると原発性肝癌患者126例 中5’・NPD−Vは99例(79%)に陽性であり,同時測 定したAFP(RIA:>20ng/ml)陽性例は68!例 (54%)であり,陽性率は5〆一NPD−Vの方が高くま た胆管癌,肝血管肉腫でも5〆一NPD−Vは全例陽性 を示している.一方,Lu5)の報告でも同様に原発性 肝癌での5’一NPD−Vの陽性率は83.2%(79例/95 例)であり,AFPのそれは73.7%(70例/95例)と 述べている.さらにAFP陰性例25例中5’・NPD−V 陽性は19例(76.0%)あり,5ノーNPD−VはAFPと 併せ測定することで診断能は向上し,特にAFP 陰性肝細胞癌の診断に有用であるという. しかし,血清5ノーNPD−Vは,肝,胆道系,膵の良 性疾患においても陽性になることが多く,Tsou ら1)によると,HBsAg陽性肝炎患者83%(30例/36 例),HBsAg陰性肝炎35%(6例/17例),肝硬変 59%(17例/29例),また胆道閉塞で100%(2例/ 2例)の陽性を示している.一方,高見ら6)の成績 では肝細胞癌症例14例中,5ノーNPD−V全例(!00%) に陽性で,CEA(RIA:>2.5ng/m1)は!3例中8 例(61.5%)に,AFPは13例中7例(53.8%)に 陽性を示した.しかし,これらの中には肝炎,肝 硬変,閉塞性黄疸な:どを合併した症例が含まれて おり,これらを除外すると,5二一NPD−Vの陽性率は 54.5%(6例/11例)となった.著者の成績では, 肝細胞癌12例中,5!一NPD−Vは66.7%(8例/12例) に陽性で,CEAは>5.Ong/lnlでは12打中4例 (33.3%)に陽性を示し,>7.5ng/mlでは1例も 陽性を示していなかった.AFP(>20。Ong/ml) は12例中9例(75%)に陽性を示していた.肝障 害例,黄疸例を除くと5ノーNPD−Vは4例中3例 (75%)に陽性で,AFP陰性例3例中2例(1例は 黄:疸例)で5■一NPD−Vが陽性であった.原発性肝癌 に対する血清5ノーNPD−Vの診断上の特異性は決し て高くなく,AFP陽性率とほとんど変りなく,従 来通りAFPが優れていると思われた.また,藤山 ら7),油野ら8)などは肝細胞癌と転移性肝癌に対す るCEAとAFPについて報告し,肝細胞癌では一 般にAFP高値, CEA低値の傾向を示し,転移性 肝癌では逆にAFP低値, CEA高値を示すと述べ ており,肝細胞癌診断におけるCEAの有用性は AFP,5ノーNPD−Vと比較して明らかな有用性は認 められないと思われた. 2.血清5’・NPD・Vによる転移性肝癌の診断 PollockとTsouら9)は122例の消化器癌手術症 例の検索で肝転移60例中59例(98.3%)が血清 5’一NPD−V陽性を示し,非肝転移62例中43例 (69.4%)が陰性であり,偽陽性率は62例中19例 (31%),予測率は78例中59例(75%)と報告し, CEA, AFP,総ビリルビン, CTと比較し,血清 5’一NPD−Vは転移性肝癌の診断に有用であると述 べている. また,高見ら6)は肝機能障害が5〆一NPD−Vの上昇 に影響を及ぼすため,肝機能検査のうち,総ビリ ルビン2。5ng/dl, GOT, GPT,50単位以上のどれ かひとつでも有する症例を除外し,術前の胃癌症 例(152例)と大腸癌症例(150例)を対象として
血清5ノーNPD−Vと肝転移について検討し報告して いる.その結果血清5■一NPD−Vの肝転移陽性率は 62.3% (48f 動/77イ 旺) 予演U率をよ68.7% (48f 旺/70イ U) であり,著者も術前(非根治手術例を含む)の陽 性率は64.3%,予測率は60%と,高見ら6>の報告と 同じ様な結果を得ている. 術後症例における」血清5■・NPD−Vの文献的報告 は少なく10)11),しかも報告の中での症例数もごく 少数例に限られている.著者の166例での結果では 陽性率84.6%,予測率64.7%,偽陽性率3.9%であ り,他の腫瘍マーカーに比べ,また術前のそれら より優れていた.このように血清5〆一NPD−Vは術 後経過観察中の肝転移発見に役立つと思われ,5ノ・ NPD・Vを指標とした肝切除術の可能性と限界に ついても今後さらに検討する必要があると思われ る. 3.各腫瘍マーカーによる転移性肝癌診断能の 比較(図1,図2)
1)CEA
CEAはそれ自身いまだ不明の部分の多い物質 でありながら,発見以来20年余を経た現在も最も 広く用いられつづけている腫瘍マーカーである. そして現在,CEAの臨床評価としては,癌のスク (%) 100 60 予測率 50 o 38.5 46.2 @0 o 28.2 @0 27.6@0 20.O @o O 100 偽陽性率 50 23.9 15.3 △ 18.8 4.5 △ △ 6.3 4.2 0 △ △ △ 100 64.3 65.2 68.5 66.7 o ● ● ● 陽性率 50 40 5.0 0 ●腫 瘍 5LNPD.V CEA RNase Ferridn β2−MG AFP マーカー ≧3.Omm≧7.5ng〆ml ≧/50u/m1≧200ng/m1≧2.5μ9/m[ ≧20.Ong/ml
図1 術前および腫瘍非切除術 (%) 100 100 64.7 予測率 1 T0. o 47.6 @0 27.3 14.0 14.7 o 0 0 o 100 偽陽性率 50 29.9 △ 20.ユ 3.9 6.3 △ 11.王 @△ 0 △ △ 0 100 84.6 ● 陽陛率 52.6 58.3@● 54.5 50 o 38.5 ● ● 23.1 @0 0
腫 瘍 5LNPD−V CEA RNase Ferritin β2−MG AFP マーカー ≧3.Omm ≧7,5ng〆m1 ≧150u/ml ≧200ng/mI ≧2.5μ9加1 ≧20.Ong/ml
図2 術後例 リーニングおよび早期診断というよりも,むしろ 手術効果,治療効果および再発,転移のモニタリ
ングマーカーとして高く評価されつつあ
る12)∼14). 森ら14)は肝転移症例で血漿CEA値が高くなる 理由として,CEAが血中に移行しやすいこと,肝 での代謝が悪くなること,の2点を挙げている.肝転移症例のCEA陽性率はPollockら9}は
(CEA>2.5ng/ml)71%,高見ら6)は56.6%(>2.5 ng/m1, cut offを10.Ong/mlとした場合),藤山 ら7)は76.5%(>2.5ng/ml)などの報告がある. 著者の成績では術前(腫瘍非切除)では,陽性 率は65.2%,術後のそれは52.6%で術前のほうが やや高く,一方術前の偽陽性率が術後のそれに比 べて高い結果を得たのは,原発巣そのものによる CEAの上昇と考えられる.また, CEAは他の遠隔 転移症例や末期癌症例で高値を示すことより,肝 転移診断については特異性はないが,5!一NPD−V と組み合わせることにより有用と思われた.2)RNase
ribonucleaseは膵癌のスクリーニングとして 古くから利用されている腫瘍マーカーである.藤 森ら15>はマウスの皮膚線維肉腫細胞の膵,肝への一52一
移植実験で血清RNase値を測定し,膵移植群で 単開腹群に比較し有意に上昇したが,肝移植群は 上昇傾向にあったが,単開腹群に比較し有意差は 認めなかったと報告している. 肝転移と血清RNase値の上昇についての臨床 報告は少なく15)16),肝転移症例においては高値を 示すが特異的でな:〈,むしろ膵浸潤で有意に上昇 していると述べている. 著者の成績では術前,術後ともに肝転移陽性率 はCEAとほぼ同じ値であるが,偽陽性率が高く, 予測率は低いため,血清RNaseは肝転移診断に 関しては有用と思われなかった。 3) Ferritin 悪性腫瘍における高ferritin血症の発現機序は いまだに不明の点が多いが,高後ら1ηは,(1)腫瘍 細胞の浸潤,転移による組織破壊,(2)腫瘍細胞 からの腫瘍特異ferritinの産生,(3)癌貧血に伴 う貯臓鉄の増加の反映等をあげている. そして悪性腫瘍のうち陽性率が高いものは,膵 癌,肝癌,肺癌,等の実質臓器の悪性腫瘍で,消 化管から発生した悪性腫瘍では肝転移がないかぎ り高値を示さないと報告されている17)18).肝転移 の際に上昇する血清ferritinは明らかに肝細胞の 崩壊によるものであるが,血清ferritinの悪性腫 瘍診断への応用において最も困難な問題は,偽陽 性を示す疾患が多く,特異性が少ないという点で ある. 著者の成績では,術前例では陽性率は5ノ・NPD− Vより高いが,予測率は低く,偽陽性率はRNase に次いで高く,術後例では陽性率,予測率ともに 低いため他のマーカーとの組み合わせによる診断 が有用と思われた. 4)β2−MG 悪性腫瘍とβ2−MGの関係について, Kinら19>は Multiple myelomaで66%, Hepatomaで41。6%,
胃癌で41.4%,大腸癌で41.6%とそれぞれ陽性率 が高いとし,β2−MGの高値は腫瘍細胞による産 生,あるいは浸潤を受けたり活性化された細胞に よって産生されるのではないかと推測している. 地曳ら20)は肺癌90%,食道癌57%,胃癌52%,膵癌 73%,大腸癌44%,肝癌88%,胆のう癌100%,卵 巣癌33%でその陽性率は非常に高率であるとして いる. 一方,坂本ら21)は遠隔臓器に転移のある例は異 常高値を示し,そうでない例は正常値を示す例が 多かったと報告している.また地曳ら20)はβ2−MG とCEAとの組み合わせにより,CEAとの相関は あまり見られなかったが,癌のスクリーニングと して有用と考え,肝転移症例では両者共に高値を 示したと報告している. 著者の成績では術前(腫瘍非切除例)例で陽性
率は5’一NPD−V, CEA, RNase, Ferritinに比べ低
いが,偽陽性率は低く,予測率はCEAより優れて おり,術後例においても,陽性率は5ノーNPD−V, RNaseに次いで良い成績を得ていることから,他 の腫瘍マーカーとの組み合おせによる診断に有用 と思われた.
5)AFP
血清AFPの測定が原発性肝癌の診断にとって 重要な検査法のひとつであることは周知の事実で ある. 転移性肝癌の場合は,癌自体のAFP産生と,腫 瘍による周辺の肝細胞障害と,それに続く再生が 関係すると考えられる.赤井ら22)は,肝転移例にお いて陽性例が多いが,転移の認められない例にお いてもAFP上昇例(主に胃癌例)がいくつか認め られたと述べている.一般に転移性肝癌ではAFP は寒暖であるが,胃癌の肝転移例で高値を示す例 が我が国の集計では多い. 著者の成績でも肝転移AFP陽性患者は,術前, 術後とも全例胃癌であった.陽性率は他のマー カーと比較すると最つとも低く,予測率も低いこ とからAFPは転移性肝癌の診断には有用と思え なかった.術後の予測率は100%(3例/3例)で あるが,全例胃癌例であった. 結 論 悪性腫瘍400例に対して,血清5ノーNPD−Vを測定 し転移性肝癌診断の有用を他の腫瘍マーカーと比 較し検討した. 1.術前例,腫瘍非切除例では血清5’一NPD−Vの 陽性率はCEA, RN ase, Ferritinと同様な値を示 すが,予測率,偽陽性率では最も優れていた.2.術後例では血清5ノーNPD−Vは,陽性率,予測 率,偽陽性率すべて他の腫瘍マーカーと比較し優 れていることより,術後経過観察における肝転移 診断により有用であると思われた. 3.血清5’一NPD・VとCEAは出現機序の異なる 独立した腫瘍マーカーと考えられ,これらを組み 合わせることは意義があると考えられた. 本稿を終わるにあたり,御指導と御校閲を賜りまし た織畑秀夫教授に深甚なる謝意を表します.また直接 御指導を頂いた木村恒人講師に深謝いたします.なお 腫瘍マーカーの測定は北里バイオケミカル・ラボラト リーズ,東京女子医大ラジオアッセイ検査科の御協力 によるものでここに深く感謝したします. 文 献
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