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周期性騒音のアクティブ制御アルゴリズムに関する研究

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Title

周期性騒音のアクティブ制御アルゴリズムに関する研究( 本

文(FULLTEXT) )

Author(s)

中村, 満

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(工学) 甲第077号

Issue Date

1997-09-03

Type

博士論文

Version

publisher

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/1798

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

周期性騒音のアクティブ制御

アルゴリズムに関する研究

学位論文:博士(工学)甲7r7

平成9年

1月

(3)

第1章

序論

1.1研究の背景と目的 1.2 従来の研究 1.3 周期音-の適用 1.4 制御対象騒音の特徴 1.5

制御アルゴリズム構築の目標と適用対象

1.6 本論文の構成

第2章

騒音制御アルゴリズムとその定式化

2.1緒言 2.2 フィルタードⅩ型LMSアルゴリズム 2.3 適応ノッチフィルタの導出 2.4 適応ノッチフィルタによる同定 2.5 安定限界式の導入 2.6 制御パルス数の最小化 2.7 複数次数-の制御の拡張 2.8 結言

第3章

制御アルゴリズムの基本特性評価

3.1緒言 3.2 収束性と安定限界の検討 3.3 モデル化誤差の検討 3.4 次数2個制御時の特性 3.5 結言 ・---・1 -・---・1 ---3 -・----・-・-・5 --・---・-・-・7 ・-・---・-・8 ・----・-・-・-9 --・----・12 ・----・----12 ---・-・12 -・--・---14 -・---・-18 ---・-・-・--・19 ---21 ・---・22 ・-・---・---・23 ----29 ・----・----29 --・---・-30 ---33 ---35 ---・---・--36

第4章

実測データを用いたシミュレーション検討

---48 4.1緒言 ----・---・48 1

(4)

4..2 シミュレーション条件 4.3 制御次数1個の場合の検討 4.4 制御次数5個の場合の検討 4.5 スペクトル整形による性能向上 4.6 結言

第5章

演算圭低減効果の検討

5.1緒言 5.2 演算負荷の評価項目 5.3 LMSアルゴリズムによるシミュレーション 5.4 演算量低減の定量評価 5.5 結言 ---・48 ・-・---・-49 ●---50 --・--・---・50 ---・52 ●---・---61 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・61 ---・61 ---・-63 -・--・----・64 =●----・--・65

第6章

実システムへの応用に関する課題と解決法

----69 6.1緒言 6.2 帯域分割と制御次数の選択 6.3 同定周波数のゾーン設定 6・4

フィルタ更新式の演算量削減

6・5 マルチチャンネルシステム-の適用 6.6 結言 --・---・69 =・-・---69 ・∴---・70 =---・--・72 ●--・---75 =・----・---76

第7牽

制御アルゴリズムの効果に関する実験的検証---82

7.1緒言 7・2 実験装置の概要と実現した機能 7.3 走行実験結果と考察 7.4 結言

第8章

結論

●==---・-82 ●=●---82 =●--・-・---・85 =----・---・86 ・---94

(5)

謝辞

参考文献

・---95

---・96

(6)

第1章

1.1研究の背景と目的 近年,振動や騒音の有力な低減手法として,アクティブ制御が注目を集める ようになってきている・具体的な応用例として,振動の分野では,車両のアク ティブサスペンション(1)や空調用圧縮機の振動低減(2),高層ビルのアクティブ制 振(3)など,騒音の分野ではビル内のダクト(4),家庭用冷蔵庫(5),自動車の室内騒 音等`6'などをあげることができる.また,毎年提出される関連論文の多さには, 目を見張るものがあるといえる.これは,最近のエレクトロニクス技術の急速

な発展によりディジタルシグナルプロセッサPSP ‥Digital Signal Processer)など

の高速演算素子が登場し,当初実用的でないと考えられていた高度な制御理論 の応用が可能になり,高精度の低振動低騒音レベルを達成できるようになって きたことが背景にある. アクティブ制御の考えは古くからあり,振動制御の分野における最も古い試 みは19世紀末から20世紀初頭にかけて発表された船のローリング振動の制御(7) に遡ることができる.一方,騒音制御-の適用はこれより新しく1930年代のダ クト騒音-の試み(8)が最初の例であるが,これについても既に半世紀以上の歴史 がある. アクティブ騒音制御の原理は,基本的には単純で,騒音波形をマイクロフォ ンで取り込み,その波形に対して逆位相,同振幅の制御波形をコントローラ内 部に生成する・そして,スピーカから制御音を放射して干渉させ,マイクロフ ォン位置での騒音の音圧レベルを低下させるというものである.図1.1に示すよ うなフィードフォワード方式のアクティブ騒音制御では次のように制御される. まず■,制御点(control point)に1次音源伊rirnary source)からの騒音が1次系路

(Primary path)を伝搬して達する間に, 1次音源からの参照信号Oiefwence sigd)を

もとに2次音ml(Secondarysource)を生成して制御点で干渉させる.そして, 2次音 は,制御点においたマイクロフォンの音圧が最小になるようにコントローラに より調整されるというものである. 騒音が複雑な波形であってもそれを構成するすべての周波数成分の位相を逆 にした制御音を生成して干渉させればよい.しかしながら,波の干渉という原 理上の単純さに比して,時々刻々と変化する騒音波形に対して制御音の位相を 調整するのはかなり高度な技術が必要となり,従来のアナログ回路による調整 では実用化できるレベルには達しなかった.しかしながら,前述したディジタ

(7)

ルシグナルプロセッサPSP)の出現が高度なディジタル信号処理技術を用いた 制御理論の適用を可能にさせるに至り状況を一変させた. 一方,発生する騒音に対する従来のパッシブな対策としては,吸音材や遮音 材を用いて騒音源を箱のようなもので覆う方法や,騒音源をなるべく遠ざけ, 騒音の経路に吸音素子をおいて騒音を吸収する方法などが一般的である.これ らの方法は地味ではあるが,基本的に安価であり現在でも騒音対策の主流であ る・これに対して,電子回路で構成されるコントローラを必要とするアクティ ブ騒音制御は,基本的に高価な騒音低減方法であるといえる.それにもかかわ らずアクティブ騒音制御が必要とされる主な理由は次の3点に集約できる. 1・吸音材や遮音材を利用する従来のパッシブな方法は,高周波成分には有効で あるが,低周波成分,特に500【Ⅲz】以下の騒音についてはあまり効果がない(9) 2.低周波成分をパッシブな方法で対策しようとすると,大きな消音器が必要に なり装置全体が大型化したり,使用される遮音材のために重量が増加する. 自動車など移動体の場合,遮音材の重量増大は燃費の低下を招く. 3・環境問題に対する意識の高まりとともに,騒音に対する苦情が多くなり,今 までより高いレベルの騒音対低減が求められている. しかしながら,発表される論文数に比べ実際の製品にアクティブ騒音制御が 適用された例はまだ少ないといえる.これには,大きくわけて2つの理由があ る・一つには,路線の騒音公害など比較的コストがかかっても対策が必要とさ れる分野-の適用は,極めて高度な技術が必要でありまだまだ研究途上段階に ある・他方,実用可能な分野,例えば,自動車の車室内など密閉空間内に発生 する騒音-の適用は,騒音対策のコスト的制約がかなり厳しいために,コスト に見合う十分な騒音低減効果が得られないと採用に至らないという現実がある. したがって,このような実用分野では,低コスト化が開発のキーポイントにな る・システムの低コスト化にはさまざまなアプローチが考えられるが,ローエ ンドのマイコンで処理可能な,小演算量でかつ制御効果に優れるアルゴリズム の開発が特に重要なポイントと考えられる. 本研究では,自動車車室内に発生する騒音,特にディーゼルエンジン搭載車 の騒音低減を狙いとしたアクティブ騒音制御システム用の確立を目指している. ディーゼルエンジンは熱効率に優れ, CO 2の排出削減に効果的であることから, 欧州を中心に見直され(10)搭載車が増加傾向にある.その反面,高圧縮比である ため燃焼加振力が大きく,振動の固体伝搬により発生する振動放射騒音が大き い・そして,このような騒音は,エンジン回転に同期した周期性の騒音成分が 2

(8)

特に顕著であるという特徴を有している.したがって,周期性騒音を少ない演 算量で効率的に低減できる制御アルゴリズムが開発できれば,アクティブ騒音 制御の実現可能性は増大すると考える.そこで,本論文では,周期性騒音に対 象を限定して大幅に演算量低減を図ることができる制御アルゴリズムの開発と 実証を主な目的とした. 1.2 従来の研究 騒音のアクティブ騒音制御の試みは古く, 1936年に公表されたLuegの米国特 許まで遡ることができる(ll)(12).Luegが考えたのは,ダクト内を伝搬する平面波 音圧をマイクロフォンにより上流で検知し,位相反転増幅とディレイ回路より なる簡単な回路により一定の遅延を与えて位相反転と振幅調整を行い,下流に 設置したラウドスピーカにより出力させて干渉させることにより正味の音圧を 減衰させることであった.このアイディアは単純であるが,騒音源の信号を参 照信号として用いる現在の主流であるフィードフォワード制御の原型をなすも のといえる. 参照信号の位相と振幅を調整することによって騒音制御を行う方式は,その 後Conoverによって実用化のための研究が行われた(13). conoverは,変圧器の 60Hz交流に含まれる高調波成分(120,240,360Hz)の騒音に対して,バンドパス フィルタと位相シフタ及び振幅調整アンプで構成した電気回路を用いて制御を 試みた. これらの参照信号を用いたオープンループの制御に対して, 01sonらはフィー ドバック制御を用いたアクティブ制御を検討した(14). olsonらのttElectric s.und absorber"は,スピーカとマイクロフォンを近接して配置した構成になっており, 比較的小空間の消音を目指すものであった.この着想は, 「-ツドセット」 -のアクティブ騒音制御の適用を示唆するもので,その後いくつかの研究を得て 現在では代表的な応用分野の一つとなっている(15)(16). 一方, Luegに始まるダクト音のアクティブ騒音制御は,スピーカの出力音が 上流のマイクロフォンに到達し,いわゆる音響帰還の発生によりシステムが発 振するという問題があった. 1970年代に入り, Swinbanksが複数のマイクロフォ ンとスピーカを用いて進行波のみを制御することで発振を回避する方式を提案 し(17),さらに, Leventhallやcanvetが,アナログ回路を用いた制御システムを実 現した(lS)・しかしながら,アナログ技術では,ダクトの温度変化による音響伝 搬特性の変化やスピーカの放射特性に対する位相補償などの調整が困難であり

(9)

適用には限界があった. これに対して,近年のエレクトロニクス技術の急速な進展は,コンピュータ を用いた高精度のディジタル制御の実現を可能にし,特性変化に対する制御系 の補償が容易になって状況は一変した.まず, Rossは,ディジタルフィルタを 用いたアクティブ騒音制御システムを初めて実現し(19),ついで, Rouseは, ‖self-adaptive--なディジタルフィルタによる制御システムを実現した(20).Rouseの 方法は,音響伝達系の特性を周波数領域の伝達関数として表現し,周波数領域 で伝達関数を逐次修正する方式であった.このために,エラーマイクロフォン の音圧信号はフーリエ変換してスペクトル信号として処理し,スピーカ-の信 号はフーリエ逆変換後出力する方式であった.このように制御のための更新演 算を周波数領域で行い,その後逆変換して時間領域に戻す方法は,現在でもい くつかの研究がなされてきている・しかしながら, FFT(高速フーリエ変換)を必 要とするため,演算量自体はあまり小さくはならないと思われる. 一方,現在の主流の制御アルゴリズムであるLMSアルゴリズム(Least Mean

Square 〟gorithm)は, 1960年にWidrowとHo飢こよって適応スイッチング回路

の研究を通じて初めて提唱された(21). LMSアルゴリズムは,未知のシステムの 入出力信号を用いて,ある評価量が最小になるように漸近的に出力修正して未

知システムを推定する,いわゆる適応アルゴリズム(Adaptivealgorithm) (22)の一

つに位置づけられる.適応アルゴリズムには,その他に学習同定法(23)やある条

件の元ではカルマンフィルタ(24)と等価であるRLS(Recursive Least Square)アルゴ

リズム(25)(26)(27)などいくつかの方式が存在する.しかしながら,演算量が少ない ことで現在でも最も代表的な適応アルゴリズムに位置づけられている. LMSアルゴリズムは,その後,指向性アンテナ(28)や通信系のエコーキヤンセ ラ(29),など種々の分野にて応用されることになった.一方,アクティブ騒音制 御-の初期の適用としてはWamakaらがあげられる(30).彼らは,ダクト騒音に 対して音響遅延などダクト騒音に固有な問題を考慮してWidrow-HoffのLMS アルゴリズムを修正して適用した.これは,ダクト上流で検出した騒音を参照 信号として用いてアダプティブフィルタに入力して,下流でスピーカにより相 殺音を発生させる.その際,さらに下流に位置するエラーマイクロフォンの信 号の2乗が最小になるようアダプティブフィルタの係数修正を行う方式であっ た. 一方,スピーカよりエラーマイクロフォンに至る音響伝達系をモデル化して, 参照信号xにフィルタリングして用いる方法は,フィルタードⅩ型LMSアルゴ 4

(10)

リズム(Filtered-XLMS algoritb皿)と呼ばれ,現在ではアクティブ騒音制御において 最も一般的に適用されているアルゴリズムである(31)(32)(33). さて,フィルタードⅩ型LMSアルゴリズムは,制御対象の騒音がランダムで あるか周期性の強い性質であるかによらず適用可能である.フィルタードⅩ型 LMSアルゴリズムの周期性騒音の初期の応用としては,例えば, Elliottらが自 動車のエンジン騒音(こもり音)に適用した例がある(34).彼らは,エンジンのク ランク回転信号を参照信号に用いて,システム内部で回転に同期した正弦波の

基準信号(Standard signal)を生成し,これをもとに2次音(secon血γ sound)を生

成し, 1次音(primarysound :騒音)に干渉させる方式を採用した.また,彼らの システムは複数のスピーカとマイクロフォンを車室内に配置したマルチチャン ネルシステムであり,車室内の各座席位置においてこもり音の大幅な低減を達 成している. 1. 3 周期馬裏書への適用 現在では,アクティブ騒音制御のアルゴリズムは,フィルタードⅩ型LMSや その修正方式以外にも,より高速に収束する他の適応アルゴリズムの採用(35)(36), あるいは,非線形な伝達系でも適用可能としたニューラルネットワークを用い る方式など,種々の方式が提案されてきている.そのなかで,対象を周期性騒 音に限定した制御アルゴリズムとして,主に以下のようなものが提案されてい る. (1)繰り返し制御 (2)フィードバックLMSアルゴリズム (3) H∞制御などのロバスト制御 (4)同期式適応フィルタ(SFX) (5)適応ノッチフィルタ (1)については,最も古い例としてChaplinらによる,ディーゼルエンジン の排気音の消音-の適用が挙げられる(37).論文では,エンジンのギヤホイール から電磁ピックアップにより回転同期パルス信号を得て,マフラー出口付近に 取り付けたスピーカとマイクロフォンで消音する構成が報告されている.エン ジン排気音のアクティブ消音については,車外騒音の低減の観点から他の制御 アルゴリズムの採用例も含めて現在でも重要な研究テーマの一つになっている (3音)(39).ここで, Chaplinらの論文のオリジナルな点は,排気音の周期性に着目し

(11)

て1周期前のマイクロフォン信号をもとに現在の相殺信号を調整することにあ った・これは現在「繰り返し制御」 (40)と呼ばれている方法であり,モータのサ

ーボ技術や振動制御分野などでも応用されている(41).しかしながら,構成が簡

単である反面,制御ループの中に本質的にむだ時間を含んでいることから収束 に時間がかかるという問題があり,高速の収束が求められる場合には適してい ない. (2)のフィードバックLMSアルゴリズム(42)(43)は, LMSアルゴリズムにおけ る参照信号にエラー信号そのものを用いる方式である.この方式ではスピーカ 出力の遅れのためランダム音に対する効果はないが,周期音には一定の効果が 期待できる・問題は,参照信号の中に騒音の他に制御出力の相殺音が含まれて いることであり,音響帰還によるシステムの発振が生じる問題がある.これを 回避するためには,スピーカとマイクロフォン間の伝達関数とスピーカ出力信 号からマイクロフォン位置での相殺音を求め,エラー信号のなかに含まれる自 身の制御出力を取り除くことが必要になる.しかしながら,新たな演算が必要 になり計算量はむしろ増加する結果になる. (3)のロバスト制御理論の適用研究についても,最近いくつかの報告がな されてきている(叫・既に,振動制御分野においては, LQ制御など現代制御や H∞制御などのロバスト制御の適用例がpID方式による古典的なフィードバッ ク制御に代わり急速に増加している(45).これに対して,音響伝達系の特性変動 が構造振動系と比較して大きく厳密なモデリングが難しいこともあり,報告例 は少なかったが,特性変動に対してロバストなH-制御の設計法が整備される に従い,排気音などの周期音を対象に適用研究が進んでいる(46).しかしながら, H∞制御はロバスト補償のためコントローラの次数が大きくなるために,プロ セッサの演算量自体はやはり大きくなる傾向にある. (2)及び(3)は参照信号などのフィードフォワード信号を用いないため に騒音源を特定する必要がなく,参照信号入力が不要なためコントローラのハ ードウエア設計自体は簡単になるという利点から,さらに適用研究は進むと考 えられる・一方,演算量低減の観点では,安定性の補償のため伝達系の内部モ デルを高精度のディジタルフィルタにより実現する必要性から,周期騒音の制 御といえども減少しないため適しているとは言い掛、. 次に, (4)及び(5)は,参照信号を用いるフィードフォワード制御に属 する方式であり,周期信号,例えば回転パルス信号を参照信号に利用する方式 である・いずれも, LMSアルゴリズムもしくはフィルタードⅩ型MSアルゴ 6

(12)

.リズムを周期信号の特性を利用して修正したアルゴリズムといえる.浜田の提 案による(4 )のSFX(SyncronizedBltered-x)(47)は,参照信号入力を周期的なイン パルス列としたとき,適応フィルタ及びフィルタードⅩ信号の積和演算が不要 になることを利用したもので,大幅な演算量低減が可能になるものあった. 一方, (5)の適応ノッチフィルタは,やはり, MSアルゴリズムの発案者 であるWidrowによって定式化された(48).その最大の特徴は,サンプリング周期 を参照信号周期の90度位相に合わせた可変サンプリング方式として, MSア ルゴリズムを修正したことである.その後,伊藤,浜田によりマルチチャンネ ルフィルタードⅩ型LMSアルゴリズムをベースとして修正され,周期性騒音-の適用が報告されている(49). (4)と(5)を比較すると,いずれも従来のIMSアルゴリズムに比べ大幅 な演算量低減が可能である.しかしながら, (4)は畳込み演算が事実上不要 になるが,固定サンプリング方式であるために参照信号の周期が変化した場合 には適応フィルタもしくはフィルタードⅩ信号の補間処理が必要になる.ある いは音響伝達系のモデル関数を非常に細かい時間間隔で同定しておくことで補 間処理を不要にできるが,この場合は必要なメモリの増大を招く.いずれにし ても,例えば,自動車のエンジン回転に伴う騒音のように,基本の周期が時間 と共に変化するような場合には,適用の際に何らかの追加の処理が必要である. 一方,適応ノッチフィルタは,前述したように可変サンプリングであること から,周波数変化に対する制御系の追従も容易に行うことができる.そして, 演算量は,基本的に1周期中の制御パルス数に依存し,少ないパルス数ほど低 演算化が可能である. 1.4 制御対象掻音の特徴 自動車の車室内に発生する騒音には,エンジン音,ロードノイズ音,エアコ ンフアン音,風切音などの各種の騒音が混在している(50).このなかで,エンジ ン音の特徴は,他の騒音が比較的ブロードバンドのランダム騒音であるのに対 して,エンジン回転に同期した周期性騒音の割合が大きいことである.特にデ ィーゼルエンジン騒音の場合には,周波数の異なる鋭いピークスペクトルを持 った正弦波騒音が多数含まれている.図1.2は,一例として,ある4気筒ディー ゼルエンジンを搭載した車両の一定車速走行時における500[Hz]以下の車室内 騒音の回転次数分析結果を示している.図に示されるように,発生しているピ ーク性の騒音は大部分がエンジン回転に同期した騒音,すなわち周波数比がェ

(13)

ンジンの回転周波数とある比例関係にある次数騒音である.これらのエンジン 騒音は,エンジン回転によって発生する加振力が車体に伝達されて,フロアパ ネルの一部を加振することによって発生する振動放射音である. ここで,エンジンが4気筒である場合には,エンジン回転数の2倍の周波数 を有する,回転2次成分とその高調波成分の4次, 8次などの騒音成分が大き い.これは,クランク軸の1/2回転ごとに起こるガス燃焼によるガストルク変 動(クランク軸系に対するトルクの変動)と,クランク軸系のモーメントのアン バランスによって発生する慣性トルク変動とによる加振振動が車室内に伝搬さ れて騒音として放射されることによって生じる.その他に,給排気系の管内脈 動や,後輪駆動車の場合には駆動軸系のねじり振動などが加振源になる場合も ある(51).この回転2次, 4次などの成分が,車体の空洞共鳴の1次, 2次周波 数と-敦した場合,特に大きな騒音が車室内に発生する.通常,このような騒 音は「こもり音」と称されている(51).ディーゼルエンジンの場合には,加振力 が大きいため,エンジン回転を1次として多くの高次成分(2,3,4,5,6-吹)が励起 されている. また,高速走行時には,大きなエンジン出力が必要であるために,燃焼ガス トルクの増大に伴って,各気筒間のトルク変動の大きさのバラツキも大きくな る.このとき,ハーフ次数成分,すなわち,回転o.5次成分及びその高調波成分 (1.5次, 2.5次, 3.5次, -)の振動が増大する.図1.2の場合では, 2.5次が大き く,他に3.5次, 6.5次などが励起されているが,この振動は,特に加速時など に多く発生しやすい.これらは,クランク軸系のフライホイールやクランクプ ーリなどの共振によっても増大し,加速時騒音,あるいはランブリングノイズ と称される騒音を発生する(52).したがって,ディーゼルエンジン騒音の特徴は, 回転数や加速/減速等の運転モードに応じて常に複数個の正弦波スペクトルが 励起されている,いわば「マルチスペクトル」騒音であることが特徴となって いる. 1.5 制御アルゴリズム構築の目標と適用対象 本研究で目指すものは,周期性騒音として自動車用エンジンの回転次数騒音 に対象を限定して大幅に演算量を低減したアルゴリズムの開発である.自動車 においては,クランク角センサの信号など回転に同期した信号が比較的簡単に 得られることから,参照信号を利用したフィードフォワード制御が選択できる. そこで,適応ノッチフィルタを制御アルゴリズムに採用し,これをベースとし 8

(14)

てさらに演算量の最小化を試みる.そして, 8ないし16ビット程度のローエン ドのマイクロコンピュータでの制御を可能とした制御アルゴリズムの開発を目 指す. 前述したように適応ノッチフィルタをアクティブ騒音制御に適用する試みは, 既に伊藤,浜田(49)により単一周波数を制御対象とした研究が進められている. 一方,ディーゼルエンジンでは,制御対象となる次数成分は多数個存在する. 一例として示した図1.2においても,次数ピークは,主なものでも4ないし5個, 小ピークも含めると10個以上存在している. さらに,これらの各次数ピークは,エンジン回転数の変化に同期して周波数 が変化するだけでなく,励起される次数成分も運転状態により大きく変化する. それゆえ,実用的に使用する全てのエンジン回転数領域においてアクティブ騒 音制御を実施することを想定したとき,各回転数で励起が予測されるすべての 次数成分に対して制御が必要になる.例えば,次数がo.5次刻みで,回転10次 まですべての制御を行うとすると, 20個の次数の制御を行わなければならない. したがって,従来の適応ノッチフィルタをそのまま適用するだけでは,演算 量やメモリ容量の大幅増大を抑制できず,システム実現の際にコスト増大につ ながるおそれがある.また,自動車用エンジンでは,通常の運転状態において も,加速,減速などエンジンの回転数は頻繁に変わるため,制御システムには 時々刻々の変化に対して高速に収束し,かつ安定であることも求められる.そ

こで,本論文では,適応ノッチフィルタの制御特性について,特に演算量低減

の立場から,制御の収束性,安定性及びロバスト性について検討を加えること にする.そして,演算量の最小化を維持しつつ,高速収束,高安定で,なおか つロバスト性に優れる制御アルゴリズムの構築を研究の大きな目標とする. また,本研究の適用対象は,回転次数騒音が特に大きいディーゼルエンジン 車であるが,ガソリンエンジン車についても回転次数騒音は存在することから 適用の対象とすることができる.さらに,モータなどで駆動される回転機械に おいても,回転に同期して発生する次数騒音が存在する場合には適用の対象と することができる. 1.6 本論文の構成 本論文は, 8章からなり各章の概要は次の通りである. 第1章は序論であり,本研究の背景,目的及び従来の研究を明確にした上で 周期騒音である制御対象のディーゼルエンジン騒音の特徴について触れている.

(15)

そして,ローエンドのマイクロコンピュータでの制御を可能とした,大幅な演 算量低減を図る制御アルゴリズムの構築を研究目標としたことについて述べる. 第2章では,基本となるフィルタードⅩ型LMSアルゴリズムをもとに,過 応ノッチフィルタの定式化を行っている.そして,適応ノッチフィルタの収束 の速さを規定する収束係数の安定限界の理論式の導出,さらに,制御パルス数 を最小化した簡易演算式について述べる. 第3章では,定式化した適応ノッチフィルタの収束特性,安定限界及び同定 した音響伝達ノッチフィルタに含まれるモデル化誤差に対するロバスト安定性 に関するシミュレーション検討について述べている.

第4章では,複数の次数成分の同時制御を行う際,より効果的な修正アルゴ

リズムとしてバンドパスフィルタを用いたスペクトル整形法を提案している. そして,車室内騒音実測データを用いたシミュレーションを行い,制御効果を 向上させる可能性があることを示す. 第5章では,提案した制御アルゴリズムと従来のアルゴリズムの演算量比較 を行っている.実測データを用いたシミュレーションを行った結果,演算量は

乗算回数,加算回数ともに大幅に削減できる見通しを得たことについて述べる.

第6章では,実際のアクティブ騒音制御システムに適用する際の課題と解決 方法について述べる.そして,エンジン回転数変化に伴う制御次数の周波数マ ッチングの方法,音響伝達ノッチフィルタの各係数の符号判定により同定する

周波数のゾーン分割設定方法,及びこれを基礎としてさらに演算量低減を図る

方法についての提案を行っている. 第7章では,提案した制御アルゴリズムの実証実験についての概要を述べる. そして,実車走行による制御実験では一定の消音効果を得ることができ,提案 した制御アルゴリズムの有効性を実証できたことを示す. 第8章は,本研究の各章で得られた成果を総括した結論について述べる. 10

(16)

図1.

1

アクティブ蚤音制御の原理

+J U q) a tカ ー 也) a Ee 0 2 4 6 8 10 12 14 16 Order

図1.

2

車室内騒音分析結果

(17)

第2章騒音制御アルゴリズムとその定式化

2.1緒言 本章では,周期性騒音のアクティブ制御アルゴリズム構築の基礎として,過 応ノッチフィルタの定式化を行う.定式化にあたっては,制御システムが1個 のスピーカと1個のマイクロフォンよりなるシステム(単一チャンネルシステ ム)について扱うことにする.ここで,低演算量アルゴリズムについて考えると, 複数個のスピーカとマイクロフォンで構成される制御システム(マルチチャン ネルシステム)に拡張した場合,例えばエラースキャニング法(53)などの適用が可

能になる.しかしながら,単一チャンネルシステムにおいて演算量低減が達成

できれば,マルチチャンネルシステムにおいてはより大きな演算量低減効果を 得ることができる.したがって,本研究では単一チャンネルシステムのみ検討 対象とし,マルチチャンネルシステムについては取り扱わないことにする. 2.2節では,基本となるフィルタードⅩ型LMSアルゴリズム(31).について 定式化を行い, 2.3節において適応ノッチフィルタを導入する.また,当初の 定式化では,制御対象となる次数成分が1個の場合を想定して進める.制御出 力及び適応のためのフィルタ更新式を定式化し,次に, 2.4節においてスピーカ とマイクロフォン間の音響伝達系を適応ノッチフィルタのアルゴリズムにより 同定する方法を述べる. 次に, 2.5節では,適応ノッチフィルタの収束の速さを規定する収束係数の安 定限界について, LMSアルゴリズムについての一般式をもとに,適応ノッチフ ィルタでの安定限界の理論式を導出する.次に, 2.6節では,制御パルス数の最 小化が適応ノッチフィルタでの演算量大幅低減のキーポイントであることに着 目し, 1周期4パルスもしくは8パルスとした場合の簡易演算化について述べ る.さらに, 2.7節では,制御次数を複数個に拡張した場合について述べる.最 後に, 2.8節において2章の結論を述べる. 2.2 フィルタードx型LMSアルゴリズム まず,基本となるフィルタードⅩ型LMSアルゴリズムについて定式化を 行う.制御出力と制御(消音)点を各1個とし, 〃サンプリング時の基準信号 をx(n),適応ディジタルフィルタのフィルタ係数をwi(n)とするとき,制御音 源の出力信号γ(〟)は,次式で表される. 12

(18)

)-1

y(n)-=w.A(n)・x(n

-i)

)'=0 ---・(2.1) ここで, 7'はフィルタのタップ番号を, Iはタップの個数を表す.適応フィ ルタ係数w,I(n)はFIR型のディジタルフィルタで,その更新式は評価点での エラー信号をe(n)としたとき,次式で示す評価関数J(n)が最小値となるよう に更新される.

J(n)=a・e2(n)+b・y2(n)

ただし, a, bは係数である. ここで,消音(評価)点でのエラー信号e(n)は,

e(n)

=

dc(n)

+

do(n)

ノー1 =

=cjy(n-j)+do(n)

ノ=0 --・-(2.2) ---・ (2.3) で与えられる・ただし, dc(n)は制御音, do(n)は被制御音であり, cjは制御音 顔(スピーカ)と評価点(マイクロフォン)間の音響伝達系のインパルスレスポ ンス関数で,タップJ個のFIRフィルタで表現されている. 次に, LMSアルゴリズムでの適応フィルタ係数wi(n)の更新式は,一般に 次式で得られる.

wi(n

1)-wi(n)-P(g)

ただし, 〃は収束係数である.式(2.4)の偏微分項は,

(g)

=2a・e(n,・(讐〕

・2・b・y(n,・(朝

となるので,式(2.1)-(2.3)を代入すると次式を得る. ---(2.4)

(19)

wi(n+1)-w,・(n)-a・e(n)・r(n-i)-P・q(n-t')

・・・・・・・・・・(2.5) ノー1 ただし,

r(n-i)-∑cj・X(n-i-j)

,

q(n-i)-y(n)・x(n-i)

ノ=O a=2aFL ,

P=2bFL

である・ここで, 〟(〟)がフィルタードⅩ信号である.また, α, βは係数であ

り,各々,収束係数(Convergence parameter),努力係数四fFort parameter)な

どとも呼ばれる(34).これらは,各項の影響の度合いを調整し,例えば, αが相 対的に大きい場合には適応の速度は速まり, βが相対的に大きい場合には制御 信号ア(〟)があまり大きくならないように調整される. ところで,更新式(2.5)を実行するためには,前述のインパルスレスポンス

関数cjをあらかじめ求めておく必要がある.これは,被制御音(騒音)がない

状態で基準信号x(n)を出力して制御と同様の手順で求めることができ,一般 的に「同定」 (Identi丘cation)と呼ばれている.同定は,式(2.5)において w(n)-c(n), r(n)-x(n), β-0として,次式で求められる.

c).(n+

1)=cj(n)+aD

・e(n)・X(n-j)

ただし, αβは同定時の収束係数である. ・----(2.6) 2.3適応ノッチフィルタの導出 前節で求めたフィルタードⅩ型LMSアルゴリズムの出力式(2.1)及びフィ ルタ更新式(2.5)を周期音対象の適応ノッチフィルタ(48)の式に変形する.音響 伝達系のモデル関数を含んでいるので,正式な名称は, 「フィルタードⅩ型

適応ノッチフィルタ」 (Filtered-xadaptive notchfi1ter)であるが(49),ここでは

特に区別しない限り, 「適応ノッチフィルタ」 (Adaptivenotch以ter)と呼ぶこ とにする.

まず,基準信号として振幅A,位相¢の余弦波(周期信号)を考える.

x(n)

= A

・co(27qn+4)

14 -・--(2.7)

(20)

この周期基準信号x(n)の1周期を4mパルスで検出し, l個(J≦m)離れた2 サンプル点に対し,フィルタ係数wo, wlを用いて畳み込み演算を行うと,

y(n)-

w.

・x(n)+wl・X(n-l)

- w.

・A・cos(27qn・4)・wl

・A・coヰ27q(n-I)・

4)

= A.

・co(22Pn+4+p)

ここで, A.=A・ w.2 +w12 +2・w. ・wl

・CO(27dTl)

p--tanー1 wl ・

Sin(27dTl)

w. + w.

coヰ27Pl)

---・(2.8) 基準信号の周波数fとしたとき,サンプリング周期T-1/叫/であるので,

y(n)-

A.

・cos(言芸.¢・p)

---(2・9' すなわち,係数wo,wlの値の調整により, x(n)を任意の位相p,振幅A.の出 力信号γ(〟)-の変換が可能になる. 次に, γ(〟)が制御音としてスピーカから出力されて,マイクロフォンにより制 御普d(n)として検出される場合を考える.今,スピーカとマイクロフォン間の 音響伝達系が線形の関係にあれば,制御出力γ(〟)が周期音のときは,評価点で の制御音dc(n)も周期音である. y(n)とdc(n)とは位相と振幅が異なるだけであり, 適応フィルタ同様2タップのフィルタ係数c^., c^.により次式で関係付けられる.

dc(n)=

cT.

・y(n)+c^l

・y(n-I)

したがって,エラー信号e(n)は,

e(n)

- c^.

・y(n)+c^.

・y(n-I)+d.(n)

・---・(2.10) ・---(2.ll) ここで,do(n)は被制御音すなわち騒音である.式(2.2)の評価関数J(n)に式(2.9), (2.ll)を代入し,式(2.4)を実行すると適応フィルタ更新式は次式で与えられ

(21)

る.

w.(n+1)-

w.(n)-a・e(n)・r(n)-P・q(n)

-w.(n)-a・e(n)・(c^.

・x(n)・c^.

・x(n-I))

-p・(w.

・x2(n)・w.

・x(n)・x(n-I))

w.(n+1)-wl(n)-a・e(n)・r(n-I)-P・q(n-I)

-w.(n)-ale(n)・(c^.

・x(n-I)・c^.

・x(n-21))

-p・(w.

・x(n)・x(n-I)・wl

・X2(n-I))

---・(2.12) 上式でJ=1とおくと,式(2.8)の1行目右辺の出力は,基準信号と適応フィ ルタを1パルスごとに積和演算する形となり,通常のLMS制御の出力式に 等しくなる.一方, I-mとおくと1周期4mパルスであり, 1/4周期(90度) ごとのサンプリングとなり適応ノッチフィルタとなる.また,

x(n)=

A・cos(7m/2m+4)

x(n-m)=

AISin(2m/2m+4)

を代入すると,制御出力γ(〟)は次式のようになる.

y(n)-

w.

・A・cos(言芸・4)

・wl

・A・sin(言芸・4)

-・---・--(2.13) 式(2.13)が適応ノッチフィルタの基本形になる.一方,フィルタ更新式の式 (2.12)において, β=0,すなわち,制御出力の大きさに制限を設けない場合 を考える.また,基準信号∫(〟)は,エンジンの回転信号などのタイミング信 号をもとにシステム内部で生成されるとすれば, A-1, め-0でよく,基準信 号,制御出力及び更新式は次式のように簡単化される.

x(n)

-co(;:)

16 ---・(2.14)

(22)

y(n)-w.

・co(書芸・4)

・wl

・Sin(言芝・

4)

w。(〟+1)-w。(〟)

-a ・

e(n)・

(c-o

・cos(;:)

I c-. ・

sin(;:))

w.(n+1)-wl(n)

-α ・

e(n)・(c-o

・sin(言:)

- ∂l

・COS(言:))

-・--(2.15) ---・(2.16) また・適応ノッチフィルタwo, wl及びc^., 61は90度離れた2点の信号に 対してフィルタリングを行っている.よって, w.,ん1の更新式もmパルスお きに行うとした場合,更新式は次式で示される.

w.(n+m)

-wo(n)

-a

・e(n)・(c-o

・co(;:)

I c-1

・Sin(;:))

wl(n+m)- W.(n)

・e(n)・(c-o

sin(言:)

- c-1

・CO(言:))

・---(2.17) 以上の式をもとに,導出したアクティブ騒音制御システムのブロック図が図 2・1である・ここで, H, Cは各々,騒音伝達系及びスピーカとマイクロフォン 間の音響伝達系の伝達関数である. D/A, ADは,各々,ディジタル/アナログ 変換器,アナログ/ディジタル変換器, LPFはアナログローバスフィルタを指 す・また, Z]は遅延を示しlパルス遅れることを意味する.また,図2.1でl-m とおいた場合が適応ノッチフィルタによる制御ブロック図となる. まず,騒音do(n)に対して制御信号y(n)をD/A, LPFを介して出力して干渉さ せる・一方,マイクロフォンからのエラー信号e(n)はLPF,.Wを介して点線 で囲んだコントローラ(Controner)内に入力され適応ノッチフィルタwo, w)のフ

(23)

イルタ更新を行っている.この結果,エラー信号e(n)のなかの基準信号の周波数 に等しい周期音成分のみ減衰される.また, Filterupldateの部分には,式(2.16) もしくは式(2.17)の更新式が用いられている. 2.4 適応ノッチフィルタによる同定 ところで,図2・1の制御ブロックを実行するためには,フィルタ係数c-., cl ′ヽ の値を同定によりあらかじめ求めておく必要がある.式(2.12)に対応する同定 更新式は次式で示される.

c^.(n

+

1)

=

a.(n)+

αD

・e(n)・X(n)

c^l(n+1)=

ど.(n)+αD

・e(n)・X(n-I

・---(2.18) ここで, I-mとおいた場合,フィルタ係数c^., a.はノッチ型フィルタ係数とな る.同定音には, LMSアルゴリズムとは異なり,単一周波数の余弦波信号が 用いられる・この物理的意味を考えると,ノッチ型フィルタ係数c^., c^lは, スピーカとマイクロフォン間の伝達関数cu)の各同定周波数でのフーリエ係 数とみなすこともできる・ここでは,便宜的に,フィルタ係数c^., a.で構成さ れる∂を音響伝達ノッチフィルタと呼ぶことにする. さて,基準信号x(n)を余弦波信号にとり,式(2. 16)に対する音響伝達ノッチフ ィルタのフィルタ係数の同定更新式を求めると,

a.(n・1)

-c-.(n)・αD

・e(n)・CO(言:)

a.(n・.)

-el(n)・αD

・e(n)・Sin(言:)

---・-(2.19) 一方,式(2.17)に対する音響伝達ノッチフィルタの係数の同定更新式は,

ど.(n・m)

-c-.(n)I

αD

・e(n)・CO(言:)

c-.(n

I

m)

-c-.(n)I

aD

・e(n)・Sin(;:)

18 ---(2.20)

(24)

で表される. 図2.2は,音響伝達ノッチフィルタの同定ブロック函を示している.余弦波基 準信号をそのまま出力して同定音d(n)とし,エラー信号e(n)が最小になるように, 音響伝達ノッチフィルタの係数c^o, Elを更新する・ここで,コントローラ (Controller)内のFilter updateの部分には式(2.19)もしくは式(2.20)が用いら れている. 2.5.安定限界式の導入 一般に, LMS適応アルゴリズムにおける収束係数FLの安定条件は,次式で 規定される(54) 1

o'p`〒両

・-・---(2.21) ここで, Rはシステム-の入力である基準信号∫(〟)の相関行列であり,

Tr【R】は,トレースを示す・式(2・19)をフィルタードⅩ型適応ノッチフィルタ

の場合について導出すると,適応フィルタは2タップであるので,入力相関 行列R.はフィルタードx信号r(〟)を用いて2行2列の行列で表される. Rr

-[,(n)r.2,((nn)_

I)

r(n,!inr(_n;)

l)]

したがって,行列R.のトレースは定義より,

Tr[R,]

-E[r2(n)・r2(n-I)]

で与えられる.但し, E[・】は期待値を表す.

r(n)

= c^.

・x(n)+c^l

・X(n-I)

r(n-I)-

c^.

・x(n-I)+c^.

・x(n-21)

---・(2.22) ----・-・--(2.23)

(25)

r2(n)・r2(n-I)-

∼.2

・x2(n)

1(c^.2

I

a12)・x2(n

-I)・c^12

・x2(n-21)

・2・c^. ・c^1 ・

(x(n)・X(n-I)・x(n-I)・x(n-21))

となるので,これを整理して,

r2(n)+r2(n-I)-+ど.2+c^.2 +2・e. ・c^1 ・COS ---・---・(2.24) ここで, Ar

-喜・(c-o2

I(c-o2

I

c・.2)・co(〟;)

I C-.2

・cos(2方i)

・4 ・c-o ・c-.

・cos(言;)

・co(〟;))

Br

-H(c-o1

I

e12)・sin(n;)

I ∼.2

・sin(2方;)

・8・eo ;c-.

・sin(号;)

・cos2(言i))

(--tan-.i

r よって,

・r【Rr】

-E[

・co(方芸・()

+c^.2

+c7

+2・∂. ・c^l ・COS --・-・(2.25) E[・】は期待値であるので平均をとると,第1項は0となり,次式が得られる.

・r[R,]

-cT.2・c-.2 ・2・c-. ・c-.

・co(言;)

20 ----(2.26)

(26)

ところで,トレースTr【R】は,

「入力電力の総和」を意味している`54'・本 論文におけるアルゴリズムでは基準信号に同期して制御を行っているために, 入力電力の総和は1周期中の基準信号のサンプリング回数に依存することに 注意する必要がある.すなわち,

(入力電力の総和)-

4m・Tr[R,]

であり,これより安定限界の式は次式で与えられる. 0<α<

4m・(c-o2

・c-.2 ・2・c-o ・c-.

・cos(;;))

ここで, I-mの場合分母の第3項が0になるので, 0<α< --・-・(2.27) ---・-(2.28) 同様に同定を行う際の収束係数の安定限界式も求めることができる.この 場合は入力信号が基準信号x(D)そのものであり,

Tr[R]=

E[x2(n)+x2(n-I)]

- 1 であることから以下の式で表される. 1

0'αD'茄

----(2.29) 2.6制御パルス数の最小化 1周期の制御パルス数を4mとしたとき,最小パルス数はm-1とした4パル スの場合である.これは, 1周期を27[としたとき, 0-冗/2(90度)ごとの角度で

(27)

の制御になる.このとき,式(2.14)の基準信号∬(〟)は,±1, 0の3値を時系列 的に+1, 0, -1, 0, +1, -と繰り返すのみとなる.この結果,例えば, 制御出力の式(2.15)では乗算が不要になるなど,演算を大幅に簡単化できる.ま た, m-2とした8パルスの場合では, 0-7t/4(45度)ごとの制御になるが,この場 合でも

co(功-sin(功-±去

であり正弦波と余弦波の絶対値が同一であるので,演算はある程度簡易化さ れる.これに対して,例えばm-1.5とした6パルス, m-3とした12パルスな

どでは,正弦波と余弦波の値が毎回異なるため演算は簡易化されない.

表2.1は,

8パルスでの角度ごとの適応ノッチフィルタの演算式の変化を

表にまとめたものである.ただし, こiコ こJ go=α●Co, gl=α●Cl とおいた・これは,同定時にc^., a.の値は定まるのでその時点で収束係数αを

予め乗じることにより,さらに演算量を削減できるからである.ここで,

4 パルスの場合,表中のNO-1,3,5,7の値のみ実行される.表からわかるように, 制御出力y(n)については適応ノッチフィルタwo ,wlの符号を変化させて出力 するのみになる.また,係数更新についても係数1個について乗算1回/加

減算1回で済み大幅な演算量低減を達成できることがわかる.

また,表2.2は8パルス同定についてまとめたものである.同定の場合も同 様であり演算量は極めて少ない.しかしながら,適応ノッチフィルタによる同 定は,余弦波による同定であることから1回の同定で特定の周波数のc^., a.し か求めることができない.したがって,異なる周波数での同定値を求めるた めに複数回の同定が必要になる.この同定回数の削減方法については6章で 述べる. 2.7 複数次数の制御への拡張 図2.3は,複数の次数成分に対して制御を行う場合に拡張したアクティブ騒音 制御システムのブロック図を示している.図に示すように,適応ノッチフィル タでは,制御したい次数成分に対する制御ループを並列に接続していけばよい. 今,各制御次数をk-i,・・・,k,-Nとし, k次に対応する適応ノッチフィルタに入力

するk次基準信号には余弦波xk(n)=COヰ7m/2m)を用いる・一方,

k次適応ノッ チフィルタの各係数は, k次基準信号に同期してサンプリングしているエラー信 22

(28)

号b(n)が最小となるように適応的に修正更新される.これらは以下のように定式 化できる. 〃

y(n)

=

Eyk(n)

k=1 ただし

yk(n)

- Wk.

COS(言:)

・ wkl

Sin(言i)

w-(n

1)

-who(n)

-αk ・

e(n)(6k.

CO(;:)

・ C-kl

Sin(言:))

wkl(n

I

,.)

=

Wk-(n)

-αk ・

e(n)(c-A.

Sin(言:)

-

c-k-CO(言:))

・-・・-(2.30) --・・・(2.31) ここで, yk(n)は, nサンプリング時のk次フィルタ出力であり, 1周期4mパル スでサンプリングされている. who, Wklは, k次に対応した適応ノッチフィルタ のフィルタ係数である・また, c^k.,C^k.はk次高調波次数に対応する周波数での 特性を適応ノッチフィルタで表現したものである.これらの係数は,制御同様, 適応ノッチフィルタを用いた同定によりあらかじめ求められる.また, αbはk 次に対する収束係数であり, k次フィルタの適応修正速度を調整している. 図2.3の制御ブロック図に示すように,各適応ノッチフィルタ出力の総和が制 御出力となる・制御出力は,ローパスフィルタ仏PF),音響伝達系Cを経て,刺 御音dc(n)として評価点(マイクロフォン位置)において騒音d(n)と合成され,エ ラー信号e(n)として検出される・ k次フィルタ出力yk(n)は,エラー信号〆n)が最 小となるように適応修正される.基本的に,各次数の適応ノッチフィルタは, 対象次数に同期した単一周波数のフィルタ出力を生成するよう設計され,エラ ー信号e(n)中の対応する次数騒音と逆位相になるように動作する.しかしながら, 更新式(2)におけるエラー信号e(n)には他の次数騒音成分も含まれており,これ らがフィルタ係数の更新に影響し,制御効果を低下させる可能性がある.この ような次数間の干渉に関する議論は,第4章において展開される. 2.8

(29)

本章では,制御システムが1個のスピーカと1個のマイクロフォンよりなる 単一チャンネルシステムについての適応ノッチフィルタの定式化について述 べた・基本となるフィルタードⅩ型LMSアルゴリズムをもとに,制御次数を 1個とした場合の制御出力,フィルタ更新式ならびに同定時のフィルタ更新式 を導出した.また,適応ノッチフィルタの収束の速さを規定する収束係数の安 定限界の理論式を導出した. さらに,制御演算量大幅低減のために, 1周期最小の4パルスもしくは8パ ルスとした場合の簡易演算式を示した,そして,制御次数を複数個に拡張した 場合について,ブロック図として定式化した. これらは,いずれも次章以降の検討の基礎となる事柄である. 24

(30)

s(D)

Controller

H, C :Acoustic transfer function

図2.

1適応ノッチフィルタ制御ブロック図

- I- - -■ l- - -一 - 一-l- I- - - 1- 1- - ■■■ _ _ IIb _ 一 一一

Contro11er

(31)

S(n) / d

(n)

ヽ■ t■- - -←■■ -- -■■■ ■■■■ ■■- ■■- - ■- ■一■■ 一■■■ - - _ _ ■■■

Contouer

図2.

3

複数次数制御時のブロック図

(32)

表2.1

1周期8パルス制御演算式

角度8 制御出力γ 係数Ⅳo更新 係数Ⅳ1更新

1 β=0 γ=Wo

w.=w.-e(n).g.

w.-w.+e(n).g.

2

e-;

EZZZZ]

w.=w.-e(n).gA

w1-W1-e(n).gS

3

e-;

γ=Wl

w.=w.-e(n).g.

w1-W1-e(n).g.

4

♂-普

y=-Ws

wo=w.+e(n).gs

w.-w.-e(n).gA

5 e=7T γ=ーWo

w.-w.+e(n).g.

w1=W1-e(n).g.

6

♂-普

γ= W」

w.=w.+e(n).gA

wl=W.+e(n).gs

7

♂-普

y=-W1

w.=w.+e(n).g1

w.-w.+e(n).g.

8

♂-筈

γ=W∫

w.=w.-e(n).gs

w1-Wl+e(n).gA

wA-去.(wo.wl)

gA-去(go.gl)

(33)

表2.2

1周期8パルス同定演算式

角度β 同定出力γ 係数c^.更新 係数∂1更新 1 β=0 γ=1

a.-c^.+αD.e(n)

′ヽノヽ Cl=Cl 2

e-;

y=万

1 ′ヽ′ヽ I-Co.=Co C1=C1 1

+万αD'e(n)

1

+万αD'e(n)

3

e-;

γ=0 ′ヽ′ヽ Co=Co

∂1-C^.+αD.e(n)

4

♂-普

y=-諺

1 ′ヽ′ヽ ′ヽ′ヽ Co=Co C1=C1 1

JiαD.e(n)

1

+万αD●e(n)

5 C=7r γニー1

c^.=c^o-aD.e(n)

′ヽ′ヽ C1=C1 6

♂-普

y=

1 ′ヽ′ヽ ′ヽ′ヽ Co=Co Cl=C1 1

-万αD'e(n)

1

-万αD'e(n)

7

♂-普

〟-0 ′ヽ′ヽ Co=Co

∂l-C^1-αD.e(n)

8

♂-普

y=万

1 ′ヽ′ゝ ′ヽ′ヽ Co=Co Cl=C1 1

+万αD'e(n)

1

一万αD●e(n)

28

(34)

第3章

制御アルゴリズムの基本特性評価

3.1緒言 制御対象に自動車のエンジン騒音を考えた場合,制御アルゴリズムには,次のこと を満足させることが要求される. (1)追従性に優れ,収束が速いこと. (2)音響伝達系のモデル誤差に対しロバストであること. (3)複数の次数成分の制御が容易であること. 第1の点については,運転中の自動車エンジンは回転数の変化が大きく,騒音次数 の周波数も絶えず変動する.その周波数変化に応じて騒音の位相や振幅も変化が激し いために,変化に追従して速やかに収束することが要求される.また,第2の点につ いては,車室内空間など実際の使用環境での音響伝達特性は,温度変化による特性変 化,騒音次数の周波数変化に対する位相の変化が存在する.特に,音響伝達系の共鳴 周波数付近では,周波数変化に対する位相の変化が大きいために同定時のモデル化誤 差が発生しやすい.したがって,実用的にはこのようなモデル化誤差に対してもでき る限りロバスト性を確保しておく必要がある. さらに,第3の点については,多くの次数ピーク成分に対して同時かつ十分に抑制 することが効果的な騒音低減を図るために要求される.複数の次数を制御したことに よって個々の次数に対する制御効果が減少するようでは実用性に欠ける.また,これ ら3点を満たした上でなおかつ小演算量のアルゴリズムでなければならない. 本章では,以上の点を考慮しながら, 2章にて定式化した適応ノッチフィルタの基 本特性についてシミュレーション評価を行う. まず, 3.2節では,アルゴリズムの収束の速さを,おもにフィルタ更新に用いる収 束係数の設定と制御パルス数の関係から評価する.制御出力式とフィルタ更新式につ いて導出した3タイプの演算方式について,収束性の比較,安定限界の理論式とシミ ュレーションでの安定限界結果の比較を行う.そして,最も収束性,安定性に優れ, 最小の演算量(制御パルス数)で制御できる演算方式を検討する. 次に, 3・3節では,同定した音響伝達ノッチフィルタ(c^., ∂l)に含まれるモデル化 誤差が,システムの安定性に与える影響について評価する.ここでは,その誤差の大 きさに対する評価方法として,位相誤差とゲイン誤差に分けて検討を行い,各誤差に 対するシステムの安定範囲を検討する. 次に, 3.4節では,同時に制御する次数成分を2個とした場合の,次数間の相互干 渉による収束係数の安定限界-の影響等を評価し,複数次数の制御を行う際の知見を

(35)

得る.最後に, 3.5節で本章の結論を述べる. 3.2 収束性と安定限界の検討 3.2.1シミュレーション条件 シミュレーションには,制御時に図2.1のブロック図,同定時に図2.2のブロック 図を用いた.シミュレーションの順序は,最初に同定を行って音響伝達ノッチフィル タc^.,

∂lを求め,次に求められたら,

∂1を用いて制御を実行する.表3.1はシミュレ ーションの設定条件を示している.表に示すように,騒音と制御音の音響伝達系の伝 達関数〟, C及びD/A, 〟D変換器の伝達関数は,すべて1とおき簡単化した. C-1である'ので,音響伝達ノッチフィルタc^., c^1は,出力LPFを通過した出力信 号がエラー信号の入力用LPFを介してフィルタ更新式に戻るまでの一巡伝達系の同 定周波数での特性を表現することになる・コントローラ内では,周波数′の参照信号 s(A)から1周期4mパルス(サンプリング間隔T-1/4mj)で基準信号x(n)を発生させ,サ ンプリング間隔rで同定,制御を行っている.したがって,参照信号の周期が変われ ば基準信号のサンプリング間隔も変化する・ここでは,騒音:参照信号∫(〟)は100, 200, 300及び400【Hz]の余弦波信号とし,これに同期して, 1周期4〝!パルスの基準信 号x(n)を発生させてシミュレーションを行うこととした.

一方,制御システ中の外側の物理系の計算のサンプリングについては,物理系の計

算モデルの量子化誤差が制御系の応答に影響しないように十分大きい周波数に設定し ているので(m-7,200とし1周期28,800パルスに設定),演算精度については問題はな いと思われる. 3.2.2 更新方式のタイプ比較 シミュレーションでは,図中の制御出力yとフィルタwの更新伊ilter update)に用 いた演算式の組み合わせを変えて次の3タイプ: Type I :毎回出力+毎回更新 Type Ⅱ :ノッチ型出力+90度位相差更新 TypeⅢ :ノッチ型出力+毎回更新 について比較を行った.表3.2及び表3.3に制御及び同定に用いた演算式のタイプを 比較して示す・ここで, Type Iの毎回出力とは式(2.8)でl=1とおいた場合であり,毎 回更新は式(2・16)を用いる場合である・また, Type Ⅱのノッチ型出力は式(2.15)に従 い, 90度位相差更新は式(2.17)従う場合であり,エラー検出からフィルタ更新まで90 30

(36)

度遅らせている.また, TypeⅢはType IとTypeⅡのハイブリッド方式である. 3.2.3 収束性に関するシミュレーション評価 図3.1(a)-(c)は,騒音周波数f-200[Hz]での3タイプの演算方式の収束性の比較を行 ったもので, 1周期の制御パルス数をパラメータとして,評価関数.I(n)の収束までの 時間変化を示している.ここで,収束係数αの値は各パラメータの条件での最適値を 試行錯誤的に求めた値を用いている・図に示されるように, tJ(n)の収束特性は(a):Type

Iではパルス数が多いほど収束に時間がかかるが,仲) :Type Ⅱ, (c) :TypeⅢの場合

ではパルス数に関係なく高速に収束する. 図3.1(a),仲)及び(りの場合での収束性の差異は,ひとつには基準信号のサンプリン グごとの変化量に影響されていることが考えられる.図3.2は,横軸を制御パルス数 とした1パルス分の変化量のA x(n)-

l

x(n)-x(n-I)

Fの1周期分の平均値,

AVE[Ax(n)]

-去=Ix(n)

-x(n

-I)I

を示している・

AVE[Ax(n)]は,図より1周期中の制御パルス数が少ないときに大きく

なることが示されている.これが毎回出力でのパルス数が少ないとき及び適応ノッチ フィルタの場合に収束が早くなることに影響していると思われる.

次に,図3.3(a)-(c)-Ej:,騒音周波数f:100[Hz]の場合での収束性の比較を示している.

まず(a) :Type Iでは, 200[Hz]の場合と同様にパルス数が多いと収束特性が悪化する

ことがわかる・ただし, 1周期のサンプルを4パルス(m-1)としたときは,評価関数

A(n)は完全には収束せずあるレベルで更新が停止する現象が認められた.さらに, 0) :

Type Ⅲの場合, 4パルス以外ではすべて発散する結果となった.また4パルスの場合

も(a):Type I同様,フィルタ更新が途中で停止し,ある一定レベル以下にはならな

かった・一方, (c): Type IIIの場合については, 200[Hz】同様に良好な収束特性が得ら れたが, 100【Hz】の4パルス制御の場合については他の方式と同様に収束は進まなくな った. ところで,ディジタルの制御出力は基本的には方形波出力の重ね合わせであり,制 御周期を基本次数とした奇数次の高調波成分を有している.これらはローパスフィル タにより減衰されるが・今回のシミュレーションではカットオフ周波数400【比】とし たため,例えば100[Hz】の制御では3次成分が300[Hz】で残るため減衰されない.そし て,この高調波の発生の程度は制御パルス数に依存していると考えられる.

(37)

そこで,図3・4(a)-(c)は, TypeⅢ,周波数100[Hz]での,制御パルス数4の,より

詳細な解析結果を示し七いる.図3.4(a)に示されるように,エラー信号の時間応答波

形は,制御開始後め時間が進むに従って高調波成分による歪みが発生する.図3.4(b) は2, 6, 12周期目のエラー信号の次数比分析を行った結果であり,制御が進むにつれ, 基本次数の1次は収束するが, 3次高調波成分が増大し, 1次成分と同程度の大きさ になって安定する・安定後の時間波形を拡大したのが図3.4(c)である.図に示される ように1次成分と3次成分の干渉により90度ごとの更新ポイントにおいてエラーがo になり不可観測状態となっている.このためフィルタの更新は止まる.これを1周期 8パルスで検出した場合は45度ごととなり,エラー信号がoでないポイントの値がフ ィードバックされるために,さらにフィルタ更新が進み,結果として制御効果が向上 することがわかる. また, Type Ⅱの90度遅れ更新の場合,エラー検出からフィルタ更新まで90度遅ら せたために,この遅れによる高調波成分の成長が著しく制御不能となり発散に至った と考えられる・これに対して200[Hz]の場合でも高調波成分は発生するが, 3次は 600[Hz]であり,カットオフ周波数400[Hz]のローパスフィルタにより減衰され影響さ れない. 以上の検討により,演算方式としては, TypeⅢのノッチ型出力+毎回更新の方式が 安定性,応答性の両面で優れている.また各周波数での1周期中の制御パルス数は, 制御出力の有する奇数次高調波成分の大きさとローバスフィルタの対周波数の減衰率 との関係で決定される・高調波次数が十分減衰できる最小の制御パルス数が望ましく, 特に, 3次高調波次数の発生が抑圧できる制御周波数においては, 90度ごとの1周期 4パルスにできることが示された. 3.2.4 安定限界の検討 次に,優れた制御方式であると結論されたType Ⅲの方式について,制御パルス数 と安定限界の関係を100, 200, 300及び400[fk]で評価した.式(2.28)から,収束係数 αの安定限界式は制御パルス数に反比例することが予想されている・図3.5(a)-(d)に 各周波数での理論式から求めた安定限界値とシミュレーションによって確認された安 定限界値を比較して示した. 図より(c):300[Hz]及び(d):400[Hz]では,収束係数αの限界値は図中に記した反比例 の線上にあり,かつ理論値にきわめて近い値となっていることが示された. 一方, (a):100[Hz]及び0):200[Hz]では,パルス数が少なくなると安走限界の値が, 理論式とシミュレーションで違っており, (a):100[Hz]の場合において特に顕著である 32

(38)

が,.理論値に比べシミュレーション結果の方が大きくなっている.これは,前述した 3次以上の高調波次数成分の影響によるフィルタの更新抑制効果が原因と思われる. しかしながら,このことは,基本的に安定化の方向に向かう現象であり問題にはなら ないと考える. 3.3 モデル化誤差の検討 前述したように,制御に先立ち同定された音響伝達ノッチフィルタには,その後の 音響伝達系の特性変化などにより,制御時には常にある程度のモデル化誤差が含まれ ている.この誤差の大きさに対してどの程度ロバストであるか,評価しておくことが 必要である・ここでは,誤差の与え方として,ゲイン誤差のみ存在する場合と位相誤 差のみ存在する場合に分けて評価することを試みる. 3.3.1モデル化誤差の与え方と影響特性

今,音響伝達ノッチフィルタの真値∂(∂。,∂l)に対し,誤差∂(∂。,∂l)を含む

c^6(c^6.,66.)を考える・適応ノッチフィルタ更新式(2・16)に,

∂6。=∂.+6. , ′ヽ ′ヽ c∂l -Cl+∂lを代入し変形すると次式が得られる.

wo(n・1)-wo(n)-a,・e(n)・(

w.(n・1)-wl(n)-a,・e(n)・(

ただし, α/=α・

E=

-tanー1 ∂l+∂1 ′ヽ c。 +∂。

・co(言芸・

i))

・sin(言芸・

i))

(αは収束係数) ′ヽ

(真の位相島--tan-1阜)

Co ここで,評価としてモデル化誤差の与え方として, (a)ゲインのみ誤差 (b)位相のみ誤差 の2つの場合に分けて考えることにする.

(39)

まず,ゲインのみ誤差とする場合は,

i--tan-I((c^l+6.)/(c^.+6.))-島

となるような場合である・これは,年.=k・c^.,

61-k・∂l(hは定数)となるような 場合で,このとき,

α′=α・(1+k)となる・これは,図3・6に示すようなc^.横軸,

6.を縦軸とした位相空間上において,原点0と真値6(6.

,c^l)とを結ぶ直線上を半径

方向に移動させた場合である. 一方,位相のみ誤差の場合は,式(3.1)において,

(c^.

+6.)2 +(c^.+6.)2

= c^.2+c^12

=fcl2

となるときで,これは,真値のゲインJc^恒半径とする円周上を移動させた場合に相当

する. 3.3.2 ゲイン誤差の影響特性 ゲイン誤差のみの場合は,フィルタ更新式の収束係数αはα′

-α・(1+k)であるの

で,ゲイン誤差はフィルタ更新式の見かけ上の収束係数α′が変化することに相当する. ゲイン誤差が原点に向かって移動する場合は,見かけ上の収束係数α′が小さくなり応 答性が悪化する・一方,原点に対して外側に向かう場合は,見かけ上の収束係数α′が 大きくなるために,式(2.28)の安定限界式による安定限界値を越えてしまい発散する 可能性がある・したがって,収束係数αの設定に際してはゲイン誤差による影響を 見積もった上で余裕を持って設定しておくことが望ましいと考えられる. 3.3.3 位相誤差に対する影響特性 位相誤差に対するロバスト安定性をシミュレーションを用いて検討する.設定条件 は,表3・1に従い, 1周期の同定及び制御パルス数は,最小の4パルス(m-1)とした. 以上の条件で,まず,騒音周波数100, 200, 300及び400[Hz]について図2.2の同定ブ ロック図を用いて同定を実行し,各周波数での音響伝達フィルタを求めた.表3.4に

同定で得られたフィルタ∂(∂。

,∂l)のゲインと位相をそれぞれ示す.また,図3.7にゲ

イン1c^恒用いて正規化した各周波数ごとの同定値を,単位円上の黒丸として示した.

ここで,同定値と原点0のなす角が位相である. 次に,この裏値に対して円周上を角度』β分移動するように誤差を与えた状態にお いて,図2・1の制御ブロック図を実行し,各誤差に対する収束係数αの安定限界の変 化を評価した・図3・8(a)-(d)は,騒音周波数100, 200, 300及び400[Hz]での収束係 34

参照

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