滋賀大学経済学部研究叢書第
4
号
情 報 会 計 の 基 礎
清 水 哲 雄 著
滋賀大学経済学部研究叢書第
4
号
情 報 会 計 の 基 礎
は し が き
企業会計に関する原則ないし基準はアメリカにおいては1930年以来のA A A の一貫Lたテーマである。それは時代の流れに沿い企業やそれを取り巻く環境 のニーズに応じて変化してきている。アメリカは1929年のパニックを契機とL て制度会計を確立しようと努力してきた。制度会計は取得原価主義と実現主義 を2大支柱とする費用と収益の期間対応によって損益計算を行うことを第lの 目的としている。 Lたがって,企業の構成員に対 Lて経営活動の成果を伝達す る手段としての財務諸表はその作成のプロセスにおける会計処理および測定が 公正でなければならなし、。そのような会計情報を伝達Lたことによって会計責 任を解除され情報利用者の意思決定への有用性は第二義的となる。 LかLながら第 2次大戦後の急激な経済環境の変化によって企業体質の改善 が余儀なくされ,また企業の内外の情報を得てそれぞれの意思決定ができるよ うに会計そのものの目的もまた変化してきた。 1950年代の後半になって情報理 論の発展に刺激され,会計が情報理論の一環とみられる方向をとると事情は一 変する。すなわち伝統会計における損益計算指向による公正性ないL真実性の 概念は後退しそれに代って有用性の概念が前面に押し出されてくる。このこと から会計情報の伝達は単に会計責任の解除の手段としてよりもむしろ情報利用 者の意思決定の手段と考えられる。情報利用者はそれぞれの目的に応じた情報 を要求するから会計情報も多元的となる。 1957年のA A A会計基準では従来の 会計原則の発展の流れに変化がみられ,その後の1966年のA A A基礎的会計理 論では会計を経済的情報の確認,測定および伝達のプロセスと考え,会計領域 の拡大にともなう会計の基本的構造を説L、ている。 われわれは1957年のA A A会計基準を伝統会計から情報会計への転換点と考 え, 1966年のA A A基礎的会計理論をそれの発展の契機と考える。このような 考えのもとに本書では第1
部で伝統会計から情報会計への移行の必然性とその 特性を模索し,第2
部では情報会計における測定論,特にカレントコスト基準 の必要性を説き,第3部では会計情報の伝達論として外部報告と内部報告の相本書が世に出るまでには多くの方々のお世話になった。近くは昭和
4
9
年度文 部省の情報処理関係内地研究員として,大阪大学教授経済学博士木内佳市先 生の会計学研究室において同先生から親しく教えを受け,滋賀大学教授 経済 学博士 小倉築一良広先生からは学生時代より不断の暖かい御指導をいただき晩 学の私を見守ってくださっている。こ与 に改めて両先生に感謝のまことを捧げ るとともに名古屋大学教授 経 営 学 博 士 故 土 岐 政 蔵 先 生 の 同 門 の 畏 友 滋 賀 大学教授 小林健吾先生からは何かにつけて多くの有益なアドパイスをいただ いている。また滋賀大学経済学部の教官各位に対しても日頃の御芳情を感謝し TこL。
、
昭和5
4
年2
月 清 水 哲 雄目 次
第1
部情報会計への道…....・
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第
1
章情報会計への動向……....・
H・-……
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I
会計目的観の変遷...・
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I
I
社会的力としての会計……...・
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I
I
I
財務会計と管理会計の融合...・
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I
V
会計への新しい接近法……...・
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V 結び...・
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H・..………・
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5
第
2
章
実現概念の拡張………...・
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2
7
I
取得原価主義と実現主義....・
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7
I
I
原価主義から時価主義への離脱...・
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9
I
I
I
資産概念の変貌………
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I
V
結
び
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第
3章情報会計の特性………...・
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I 伝統会計の役割とその限界……… .
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2
I
I
制度会計と情報会計………
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5
I
I
I
ASOBAT
による情報会計のとらえ方……...・
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I
V
結び………...・
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第
4
章会計領域の拡大...・
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I
会計思考の変化...・
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I
I
会計の基礎概念と領域の拡大…...・
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凹結び……...・
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7
第
2部会計測定論....・
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1
第
5
章
カレントコスト基準…
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I
会計の多元的測定………...・
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I
I
カレン卜コスト基準の濫暢…………...・
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4
I
I
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時価主義の見解...・
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時価主義の見解....・
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情報会計とカレントコスト基準…...・
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V
I
操業損益とカレントコスト...…...・
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4
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I
I
結び…………...・
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第6
章棚卸資産の多元的測定………...・
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I
棚卸資産の多元的測定の要請...・
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I
一般目的の財務諸表と歴史的原価………...・
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I
I
I
正味実現可能価格………...・
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1
1
I
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取替原価法と実現の問題…....・
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結び...・
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1
9
第
7
章
固定資産の多元的測定...・
H・..………..,・
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1
2
1
I
固定資産の多元的測定の要請………・
H・
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2
1
I
I
基礎的考察…....・
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2
凹測定方法...・
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4
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カレントヴァリューによる減価償却…………・
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と減価償却…………...・
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結び……....・
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"144
第
3
部会計伝達論・…....・
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第
8
章会計の外部報告機能……....・
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I
会計情報の外部伝達……...・
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会計情報の外部利用……...・
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I
I
外部利用者の予測活動と
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それに応ずる外部伝達の指針
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つの勧告……...・
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V
結び………...・
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2
第
9
章
会計情報の基準と外部報告会計-……
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6
4
I
会計情報基準の適用………...・
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4
I
I
現行会計実務の検討………...・
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0
I
I
I
財務諸表作成の
5
つの指針…...・
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V
結び…………...・
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H・-………
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9
第
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0
章
会計の内部報告機能……...・
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I
内部会計情報の必要性………...・
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I
I
管理会計の概念…・・・………....・
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計画と管理(統制)のための情報…...・
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会計基準の適用…………...・
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1
V
新しいモデルによる管理…...・
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I
結び・……・・
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第1
1
章まとめ...・
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7
第
1
章 情 報 会 計 へ の 動 向
I
会計目的観の変遷
1930年初頭までのアメリカの企業会計は債権者特に与信者である金融機関の 要請を中心として展開された。企業が金融機関に融資を申し入れると,金融機 関は申込先の信用状態を分析,調査するために各種の財務書類の提出をさせた が,それらの書類のうちで特に貸借対照表に大きな価値を見出した。けだし金 融機関の関心のまとは企業の債務支払能力の有無であり,それは企業財政の流 動性によって判定できると考えられていたからである。したがってその当時の アメリカ会計学の特徴は,企業財務の流動性の測定を頂点とし,貸借対照表を 中心左する銀行のための信用目的の会計であった。 株式会社形態の出現とともに数多くの株主は自己の出資額を最高限度とする 有 限 責 任 を 負 う の み で あ る が , 債 権 者 に と っ て は 企 業 の 財 産 だ け が 唯 一 の 担保である。したがって企業の財産の保全,具体的には財産の不当な社外流出 を防ぐことが要請される。すなわち株式会社の場合には株主のためのみならず 債権者のためにも配当可能利益を計算するための会計が要請されるゆえんであ る。けだしそれは人的結合である合名会社形態の場合や人的,物的結合である 合資会社形態の場合には,たとえ処分可能利益以上に企業の財産が社外に流出 し,いわゆる蛸配当となり,資本の喰いつぶし現象が起り,債権者が不測の損 害を蒙っても無限責任制度であるので債権者の損害額は無限責任社員の個人的 財産にまで及ぶが,株式会社の場合は有限責任制度であるから株主は自己の出 資額を最高限度としてしかその責任を負わない。したがって債権者にとっては 企業外へ流出する利益額が処分可能利益の範囲内のものかどうかに多大の関心 をもっているからである。 株式会社の規模が巨大となり,株式数とともに株主の数が増加すると所有と 経営の分離現象があらわれ,大部分の株主は蓬有株主a
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化 する。 1929年の大恐慌を転機として会計面で、は従来の債権者のための会計に対して投資家のための会計が特徴となってきた。けだし経済不況によって最も痛 手を蒙るのは経営に直接関係していない株主投資家であるからである。した がって投資家のための会計は具体的には収益性会計を指向する。
会計に関するこのような考え方は,アメリカでは
1
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3
3
年の有価証券法S
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3
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に よって制度的確立をみたのである。 アメリカ会計学会AAA
刊行の会計諸原則に限ってみれば,1
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はア メリカ公認会計士による監査が証券取引法上強制されることになった直後のこ とであり,その監査の基礎を確立しようとしたことがその動機の1
つである。1
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年の会計原則はその後1
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会計原則の特徴は投資家に対する財務情報提供のため の会計基準,いわゆる投資家のための会計基準で、ある。そして1
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年から1
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年の過程では,会計原則の精級化が行われてきたことにその特徴がある。これ はアメリカ会計学の動向をさぐれば,1
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3
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年前後までの低度の経済環境を第1
段階とし,その後第2
次大戦終了前後までの株式会社企業の規模の急速な拡大 を第2段階とすれば,第1段階は債権者のための会計であり,第2段階は投資 家のための会計とみることができょう。 ところが1
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年のA
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では従来の会計原則とはその性格が非常に 変ってきている。ここでは投資家のための会計基準は一応の基礎ではあるが, 会計の役割についての理解がかなり広くなってきている。すなわち伝統会計に 対する批判が行われ,具体的には取得原価主義ないし歴史的原価主義に対する 批判と,実現とL、う概念に対する考え方の変化である。さらにこの考え方は従 来の伝統的会計観よりも非常に経済学的,経済情報的性格を打ち出している。さらに
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Edwards and P
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Accounting for Land,
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2のAD
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scussion of Various Approaches to Inventory Measurementを公刊し,同年にTheRealization Conceptを発表した。かくして1966年のA Statement of Basic Accounting Theory によって1957年以来の新しL、会計観 の一応、の終止符を打った感がある。 スタンスによれば r最近の歴史の動きから将来予想されるものを推定するこ とは常に可能である。発展段階は常に首尾一貫性をもっており,突発的な変転 が起って過去の動きを全く新しい方向へ変えてしまうことはあまり考えられな い。将来は大体において最近の重要な出来事の投影であるJl)とするが, 1966年 の会計原則は演揮的アプローチによっているために1957年の会計原則とはその 内容に大きな変化があらわれる。
1
1
社会的力としての会計
現在の歴史の方向を確かめることによって将来の発展を予測することが可能 であるとスタンスは言ったが,新しい会計の社会的職能を認識するためには 現代の歴史的背景を知らなければならなL、。会計に関するこの趨勢の1
つは会 計の社会力 accountingsocial forceが次第に増大してL、く傾向である。ここ にいう会計の社会力とは会計が社会に占める役割を指し,経済環境の進歩とと もに会計の役割はますます重要かっ広汎になることを意味する。この会計の社 会力というスタンスの構想、は,今後の新しい会計理論や会計原則を打ち樹てる 場合その前提として意義がある。過去5
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年を省みると会計の将来がどの方向に 発展するかを予測するに際して考慮されなければならない基本的要因は,スタ ンスによれば2) (1) 主として科学的研究の所産にもとづく産業活動の偉大な発展および所有 の分散や,財務管理と財務報告のための会計に対する要求の増大である。すな わち過去半世紀に財務会計を発展させた要因は,科学的発展にもとづく技術革 1 ) Morton Backer : Modern Accounfing Theoη. Prentice.HaIl1955.Chapter21. "The Future of Accounting" by Maurice H. Stance p.583. 2) Maurice H. Stance : ibid. pp.584~586.新とそれによる新製品の出現およびそれにともなう新産業の創設である。これ らによって経済規模が拡大し,国民所得水準が上昇し,投資が盛んになって企 業会計では財務報告のための会計の要求が増大してきた。 (2) 産業における大量生産制度の発達によって原価計算と能率に重心をおく 生産性への挑戦である。すなわち大量生産が行われるに応じて原価管理のため の会計および原価計算が財務管理や財務報告から分化し,さらに予算統制が発 展し, コントローラー制度とともに経営の重要な要素となって経営計画や管理 職能が会計に入り込んできた。これは広義の会計が財務会計と管理会計への分 化現象を示すものである。 (3) 謀税と立法とを通じて企業の経営に加えられる政府の影響力が次第に増 大してL、く傾向がある。すなわち企業に対して加えられる公共的統制は過去半世 紀に急激に増大してきたが,反面これによって会計制度が急速に発達してきた。 課税所得の合理的決定のためにはその計算的基礎として,企業会計の現実的資 料が必要となり,また価格統制のためには原価計算を基礎としなければならな い。わが国の場合にも第
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次大戦中昭和1
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年に軍需品工場事業場検査令にも左 づいて陸軍軍需工場事業場原価計算要綱が生ま札その翌年には陸海軍軍需工場 事業場原価計算準則,昭和17年に原価計算規則および製造工業原価計算要綱が 制定されて企業統制をはかった。 このような過去の諸条件を克服したうえでつぎに来たるべき50年にはそれら はとのように変化するか。スタンスによれば3) (1) 産業の拡大は20世紀の前半よりも後半において一層著しいものとなる。 会計の職能の将来の発展を描写するに当って考慮しなければならない科学的背 景は充分に用意されている。原子力の発見とその利用,エレクトロニクスの発 達,産業のオートメーション化はすでに今日の問題であり, これに応じて生産 の尺度および企業の情報伝達の尺度としての会計はますますその科学的精密度 を増していかなければならない。(
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生産性への挑戦も将来ますますその必要性を増し,生産性の向上があっ 3) Maurice H. Stance : ibid.pp.586~587.てこそ国民所得は上昇する。この観点から生産性の会計的測定は会計技術の新 しい発展方向でなければならない。 (3) 企業経営に対する政府統制と,経済の計画化に対する要請も今後ますま す高められる。したがってこれに応ずる資料提供の技術としての会計の社会的 要請も高まる。 平井泰太郎教授は将来の会計職能としてつぎの
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項目をあげておられる九 (1) 成果決定の職能は経営の関係領域の拡大とともに所有主中心の成果考慮 から企業実体中心に変化する。これは企業規模の拡大が益々顕著になり,企業 を取り巻く人々がますます多くなるにつれて企業の公共性が増してくるからで ある。(
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総合の形に変化する。これは企業が1
つの会社というものではなく,技 術革新が進む結果技術的連鎖ができてくるから,系列会社やコンヒナートのよ うな総合した形で会計を考えなければ相互の連繋が取れなくなってくる。この 考え方はスタンスの第2のものに相当することになろう。(
3
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会計の予測や政策機能が入り込んでくる。すなわち原価計算,経営分析, 経営比較,予算統制, コントロールンステム等の経営管理の用具があらわれて きたが,これらが会計数値を使うことによって,種々の技術が会計に入り込み これらを総合的に駆使して将来の予測や政策を行うことになる。換言すれば会 計は後計算ではなく現在の「動き」を問題とし,未来を指向するものになる。 (4) 関係領域の全体を統ーして成果計算を考える。このことはスタンスの「会 計の社会力」に相当する考え方である。 ところで、会計の変化についての第1
の問題は技術の発展である。ここに技術 としての会計5)a
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がある。たとえ宇宙開の交通や通信 が行われる時代がきたとしても会計の諸特性は侵されないし,また会計技術の 適用も,どのような機械的頭脳の発明があっても以前に劣らない熟達を必要と する。さらに記録の問題や原則と判断とを適用する問題や,要約と報告の問題 はなお残るし,大衆の関心はむしろ増大する。このように考えると会計は現段 4) 平井泰太郎・』く田哲三 「明日の会員十を語るJF企業会計』第13巻第I号。5
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589~591階にあってつぎのことを必要とし,また間もなく見出すことは明らかである。 (1) 職業会計士によって普及され,熱心な研究によって常に新しく維持され る会計原則の総合的規定。 (2) たとえ科学的正確性をもたなし、にLても意図した目的に対して信頼する にたる表示を行うことを目標にした会計の真実性の実際の定義。 (3) 会計原則を補うものとしてここで定義したような会計の真実性を保証す ることを目的とした用語および表示方法の標準化と公開のための適当な必要条件 の設立。 これらのすべてが相当程度試みられて,はじめて会計に与えられた使命を充 分に果たすことができる。技術としての会計のあらゆる変化は一層大きな有用 性を確立するための予備的段階にすぎなL、。会社会計に関するすべての人々か ら信頼を得ることによって社会的力としての会計の範囲を拡大するための基礎 を築くことができる。 このような会計は測定および伝達の用具として企業の経営のみならず社会的 目的に役立つ社会力として発展することを指向している。こ与に第
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の問題と して社会的な力としての会計6)accountingas a socia! forceの存在価値がある。 すなわち会計が企業の私的用具であるのみならず,社会力として機能する段階 において最も重要なことは会計の一般原則を確立することである。そして会計 表示における信頼性,統一性および比較性を達成する条件は3つある。 (1) 会計原則を社会的に遵守されなければならない基準として確立するこ と。 (2) 望まれる会計の目的のために信頼し得る表示を作り出す会計の真実性の 定義を与えること。 (3) 会計の真実性を保証するために会計技術の標準化や会計的表示の方法, 要件の適正化をはかること。 これらの問題を解決する過程に社会力としての会計の潜在的重要性がある。 スタンスによれば,社会力としての会計の主要な職能は, 6) Maurice H. Stance : ibid. pp. 591~598.(1) 測定尺度としての会計……会計的測定によって生産性の増進に役立つ。 (2) 伝達の手段としての会計……経営実情の伝達。
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社会的用具としての会計……生産の成果の配分に関する計画および管理 のための用具を提供することである。 第1
の測定尺度としての会計については,生産能力の観点から活動の方向転 換を経営者に決定させるための会計の測定結果は,たとえそれが個々の範囲で は小さなものであるとしても,それぞれは全般的な生産に貢献する。したがっ て究極的には会計は産業の生産性を高め,生活水準を向上させる1
つのすぐれ たものとなる。第2
の伝達の手段としての会計については,過去1
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年間企業は 労働者と大衆とから信頼を受けなければならないと強く考えるようになってき た。今や従業員にも株主に与えるのと同ーの財務報告書を与えようとする会社 が多くなり,会社は忠実な受託者としての説明をする。この説明が口頭であれ, 文書であれそのような報告はつぎの2つの結果を生むことになる。 1つは労働 者は彼等が企業に参加しているとし、う事実を認めて彼等の自尊心を高める。2
つには誠実に提供されたこのような情報は誰が何を得ているかがわかり,所有 者が得る利益について誤った印象を与える危険をなくす。第3に社会的用具と しての会計については,会社は経済計画および経済方程式を均衡させるための 用具7
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である。このことは財の生産と分配とを最大限に達成しよ うとする場合の基本的問題は刺激であるとする。経済的報酬は何等かの方法で 努力,創意および危険に関係している。そこで成果に関係なく報酬を均等にす 7) 経済計画および経済方程式を均衡させるための会計とは,企業の生産物は個々の企業 にとって利潤の源泉であるが,国民経済全体からみれば全企業の総生産物の総計が国 民所得である。この国民所得は一部は個人の所得J:Lて消費され,また一部は貯蓄され て企業に再投資される。これらの所得.消費,貯蓄,投資の関係を明らかにするのが経 済方程式であり,これらの相互関係を計画的にハランスさせるのが経済計画である。こ のような計画とコントロ←んを達成するためには生産と消費に関する会計的測定すな わち,社会経済的な損益計算,貯蓄と投資に関する会計的測定および国民経済全体とL ての財産および資本計算に役立つ貸借対照表を作成しなければならない。(黒沢清・ 「会計の将来j r企業会計』第11巻第4号。)ることは,アウトプットを最も弱し、労働者の水準にまで落すことになるから許 されない。蓄積された資本には危険を負担する条件として,それに相応した利 益を受ける見込が与えられなければならない。経営者は経営を成功せしめる能 力に対して報酬を受けるべきであり,換言すればその達成度に応じて報酬が与 えられなければならない。 このような会計機能の将来の発展に関するスタンスの展望に従えば,経済的 事実の記録と調査のために欠くことのできない要素である測定機能は,経済的 生産物を社会の構成員の聞に配分する計画の手段として役立つことになり,会 計は社会的予算socialbudgetingすなわち,協定された社会的予算negotiated social budgetingとLづ社会的機能と結び付かなければならない。こ Lにおい て会計は私的会計であると同時に,社会経済的な測定用具としての社会会計に 発展するものでなければならない。
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財務会計と管理会計の融合
企業の内部・外部を問わず各種の利害関係者が企業会計によって作成され, 伝達される会計資料をそれぞれの意思決定のために利用するという点で財務会 計と管理会計の両者に同等の会計職能を認め,会計情報は益々経済的実態を如 実にあらわす情報の性質を備えることが要求されてくる。 このような考え方に立って,企業会計を1つの情報システムとして理解し, また会計理論も情報を提供するための 1つのシステムに包含しインテグレートし てとらえようとする考え方がある。 パッティロは財務会計と管理会計の両者を情報システムとして把握しようと する考え方に立ち,会計の構造をつぎのように考えている。すなわち「社会は 相互に依存し合い,それぞれの構成員が責任を分担し合っているものであり, 会計は財務的,経済的分野においてこのような社会的責任関係を取り扱うこと を目的とLて発達してきたものである。そして会計は経済的資源がどのような 状態にあるか,またどのように変化したかを公正に把握して, これを社会のす べての構成員に伝達する責任を負っている。このような社会の構成員としては 株主,経営者,債権者,顧客および一般大衆などがあるが,これらの人々に対源
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年以来今日まで検討され,最近に なってこれを組織的,包括的な形で取り扱ったのは AICPAの会計調査研究部Accounting Research Studyである。 この研究部では公準, 原則, 準則の形
成およびこれらに関する調査研究を目標としているが, このような方法での会 計の総合は不適当である。J8)けだし i会社の基礎となるその目的が研究され明 らかにされてから, この目的を達成するために最も適切な会計理論を打ち樹て ることヵ:て‘きるカミらである」叫としている。 それでは会計の目的とするものは何であるか。それをさぐる一方法として, 先ず会計の構造を眺めてみよう。図1-1 10)からわかることは i会計は根本的に は情報システムであり, その性格は経済学,統計学,法律学,政治学,社会学 8 ) 9 ) 10) James W. Pattillo ; The Foundation 01 Fi間 的!cialAccounting. Louisiana State University Press 1965.p.3. James W. Pattillo : ibid.p.6. James W. Pattillo : ibid.p.7.
12 第1 および道徳的態度によって決定されるものである。J11)しかもこのような情報シ ステムとしての企業会計はノミッティロによれば擬制的実体説fictionalentity theoryをとるか人的実体説personalenti ty theoryをとるか,あるいは基金説 fund entity theoryをとるかによって資産や利益の概念が異なってくる。ノζッ ティロがこのように3つに分けている実体説は一般的にはそのように呼ばな い。すなわち第1の擬制的実体説は企業実体説 businessentity theory第2の 人的実体説は所有主主体説proprietarytheoryである。人的実体説は歴史的に は最も古い考え方であるが,これは r企業の所有主の立場から会計記録と会計 報告が行われ,所有主の純資産networthを計算する会計であり,資産は所有 主の財産であり,負債は所有主の債務であり,利益は彼の所有権の増加分であ る。J12)しかし株式会社の興隆とともに所有と経営の分離現象が起り,そこに考 えられる立場が擬制的実体説である。この説では r資産や負債は企業そのもの に属し,利益は資産resourcesの増加分である。」問うえにのベた
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者が人間関 係を考慮しているのに対して,他方専ら経済的観点から会計をみようとする考 え方 基金説 がある。すなわち r基金とはある機能を果たすために集められ た用役潜在servicepotentialsの集合体であり,持分equityとはこの基金的資 産 fundassetsの使用に対する制約をあらわすものである。したがって収益は この基金的資産に対する増加を意味し,費用は用役潜在分が費やされることを意 味する。そしてそこには所得概念はない。けだし所得概念は人格と結びつく概 念であるからである。」凶 このように会計観を異にすることによって,それぞれ会計の目的も異なって くるが,パッティロの場合には情報システムの会計領域として財務会計と管理 会計を措定しているのみで, うえにのベた3つの会計観と 2つの会計領域との 関係は一応遮断されているように見受けられる。これは rどの立場をとっても 会計領域は同等であり,ただ目的が変化すれば,それによって会計構造の下位 のレヘルのものが影響を受けることを示している。J15)しかし財務会計,管理会 計の何れの領域においても会計を律するものは情報提供である。それでは, こ 11), 12) James W. Pattillo : ibid.p.6. 13)~ 15) James W. PattilJo : ibid.p.8.のような構造をもっ会計の目的は何であるか。「一般的に言えば,会計の目的は 会計行為の対象となる経済活動の目的と合致している。J16)これを歴史的にみる と r単純な個人企業の観点からは,企業主は自己の生計を維持するために,会 計は彼の経済活動と財政状態を把握するために記録職能を中心とした会計を目 的としたが,企業形態が会社企業となるにつれて,企業の債権者のための会計 に変り,つぎに投資家の出現とともに企業規模が大きくなるにつれて企業の公 共性が強まり,この段階では会計の目的は,経営者の社会的受託責任 steward-shipを果たすために報告機能を中心においた会計へ変化していった。J17)会計に おけるこのような発展は,経済環境の変化とともに近年においては,企業会計 の目的は,もはや企業内部の利潤の極大化をはかることよりはむしろ国民経済 の発展,技術革新,生産性の向上,雇傭の安定,公共的サービスの増進などの 企業に課されている社会的責任の遂行にあると考えられるようになった。した がって今日の企業は社会的制度としての企業であり,会計が提供する情報は企 業を取り巻く内外の人々によって社会的な立場から検討されることになる。 会計の目的はその対象となる経済行為の目的と合致しなければならないが, このことは会計そのものが目的であるという意味ではなく,会計は経済的テー タのうちの貨幣データのみならず,物量的データを収集し, これを情報化し社 会の構成員が企業に対する意思決定に資するようにするのがその任務である。 このような会計観に立ては財務会計と管理会計の区別はなく,両者はともに統 ーされた形における情報システムとして機能する。このように両者を統ーした 会計の目的は,社会の構成員が判断し,または行動を決定することを容易にす るために経済的データの収集,要約,解釈および伝達による情報の提供をする システムを作り出すことである。したがって,会計から得られるデータは,そ れが正しく解釈された場合は経営の意思決定に有用となる。すなわち r内部会 計に対しては,会計のデータによって経営活動の指針として,管理の評価の基 礎が与えられ,他方,企業の外部に対しては投資家や信用授与者は経営遂行の 評価に直接的な関心を示している。けだしこれらのグループは,企業活動に必 16) James W. Patti1lo : ibid.p.32. 17) James W. Patti1lo : ibid.p.33.
要な財を提供するからであるが,この環境の変化が会計活動に直接に影響を及 ぼすJ18)
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同時に会計理論の発達に直接的な衝撃となっている。I
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会計への新しい接近法
1.ベイヤーの接近法 AAA1966年の基礎的会計理論の思考に大きな影響を与えたものは一般情報 理論である。元来情報理論は通信工学における制御理論から生まれた情報科学 の基礎理論であり従来の伝統会計とは無縁のものであった。しかし会計制度を 経営情報システム managementinformation systemの一環とLてとり入れ, 会計に情報機能を負わせる傾向が生まれるに従って会計理論の分野が拡大して き7こ。 1966年のステートメントに先立ち,すでに情報に関する研究が行われている。それは Robert Beyerによる Profitability Accounting for Planning and Control1963である。すなわち, r1950年代の後半およひ1960年代の初期におい て1つの会計哲学と,それにかかる実践の制度をし火、表わすために収益性会計 profitability accountingとし、う語がますます用いられるようになった。この 会計哲学とは単一の統 a的会計機構によって財務会計の目的と,管理会計の目 的とを同時に充足させなければならない。それはあらゆる近代的な利益指向会 計技術 profit-orientedaccounting techniquesを単ーの意思決定をめざす経営 情報制度に統合しようとする複雑なシステムである。J19) ところでヘイヤーのし、う経営情報制度の一環をなす会計制度とは伺を指す か。彼によると企業会計の制度を次の
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部門に分けるf
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(1) 財務会計custodialor financial accountingこれは企業に信託された財 産の保全に関する会計制度であり,経営者以外の出資者,債権者,行政機関な どの企業外部者に対して企業が保有する財産に関する財務情報の提供をその職 181 Norton M. Bedford and PerryK.W., WyattA.R. : Advanced Accountinl?an organizational aρltroach.2nd. ed. Wiley1967.pp. 4 - 5. 19I Robert Beyer : ProfitabiliかAccountingfor Planninl?and Control.Ronald Press 1963.p. 4. 20) Robert Beyer : ibid.p. 17.能とする。 業績会計performanceaccountingこれは企業の各部門たとえば製造, 購買,販売などの職能を遂行する責任部門あるいは事業部等の組織単位に対し て設立された活動目標に,それぞれの組織単位の実績を比較して経営成績を量 的に評価する会計制度である。この業績会計は標準原価,予算統制等を用い て責任単位ごとに計画目標に対して実績を計量的に測定し,それぞれの経営成 績を判定しようとするところから責任会計 responsibilityaccountingともい (2) う。 意思決定会計 decisionaccountingこれは経営意思を決定する場合に, 特定の意思決定に最も役立ち得る形で計数的データを提供する職能である。会 計情報が最も役立つ意思決定の問題としては,製品の価格,最適在庫政策,代 替的生産方法の選択,利益計画,設備更新計画等がある。 これらの3つのものは区々に機能するものではなく, (3) 全般的情報システムの 財務会計の 要件 (損益) 売 上 期間によっ て記録 報告のための勘定分類 商事経費 期間によっ て割当 原 価 間 接 費 棚卸資産を 経て売上a七 に配賦 業績会計の要 件 (予算及び予 算差異分析)
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責任単位別 に予定売上 と実際売上 の比較 責 任 単 位 別 区 分ihl
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責任単位別│責任単位別 に予算原価│に予算経費 と実際原価│主実際経費 との比較 の比較 意 思 決 定 資 料 の 調 整 造 直接原価 二字│棚卸資産を 経て売上叫 に 割 当 総 括[
責任単位別 に標準原価 と実際原価 との比鞍 再調整 製 意思決定会計 の要件 (製品収益性 及び意思決定 原価) 製品lJJ売上l 得意先別売 上 地域別売上 の し れ 接 決 原 費 品 価 ・ 対 さ 悶 ・ 思 測 ・ 製 原 ・ に 測 動 ・ 意 予 ・ 定 定 上 ・ 品 子 変 ・ 営 の ・ 特 売 製 て た 費 経 定 価 固 L れ接 対さ聞 に測動 品予変 製てた費 標準製品原 価 固 定 費 会計機構に関する会計目的 図1-2それぞれの要素と結合し,統一的会計機構を樹立することが必要である。この
観点からベイヤーは統一的会計機構について図
1-2
21)のように示している。2. AAA1966年の接近法
A Statement of Basic Accounting Theory 1966の特徴とするところは,
(1) 伝統会計は現実の会計実務の中から一般に公正妥当と考えられる会計 原則を帰納的に引き出して理論構成をするが, ASOBATでは演緯的に会計の 進むべき方向を理論づけようと試みているo演樺的アプローチの長所は i前に あった理論から次々に完全な,総合された, しかも一貫した理論構造を打ち樹 てることが可能である。実践的アプローチは偶然性を含むに対して思考と方法 の一貫性は演揮的アプローチの大きな特性であるJ22)とされるが,逆に短所も ある。すなわち i演鐸的アプローチは時には誤りになるかも知れない原理や目 標にもとづいて論を進めることになり,もし仮定の設定が誤っていればそこか ら導かれる理論も誤りとなるJ23)としづ危険性を内包する。 (2) 財務会計と管理会計との相違を陰に陽に意識してきた従来の考え方に関 係なく基本的には会計を情報システムとして認識し,経営者の意思決定に役立つ情報 の提供にウエイトをおき,会計理論を一種の情報科学として位置付けようとする。 (3) このような会計理論の構造の背後には電子計算機の利用があることは注 目に値する。電子計算機の利用によって従来の複式簿記の機構による記録にか えて,単に取引の記録にとどまらず,多数の計算可能な会計データの測定や伝 達を可能にし,そのうえで多目的な復式価値表示による報告書multiplefinan. cial statementsの作成を容易にすると考えている。さらにこの構想が分析的研 究を通じて会計理論として体系化されるためには他の隣接科学が積極的に利 用されることが必要とされる。 このような斬新的な会計理論を構想するなかで,第
5
章の会計理論の拡張extension of accounting theory は iはるか将来にわたる会計の方向付けを
行っているものであり」制また iこのステートメントはA A Aから公刊された
21) Robert Beyer : ibid.p.18.
22), 23) R. F. Salmonson:品sicAccountiηg Theoη'.Wadsworth Pub.1969.p.7.
24) Charles T. Zlatkovich : "A New Accounting Theory Statement"The Journal 01
とはし、え,公式の見解となっているものでもない。j2S)さらに「会計学は今や移 り変りと変化の起る時代であり,会計が行われる環境,会計の方法,会計報告 についての期待はすべて変化している。
AAA
委員会作成の4
基準,指針,勧 告の体系は現在の会計学一缶統会計……筆書注 の批判を抑えるのに適当なも のであり,将来への橋渡しであるj26)としているが,このことは伝統会計から情 報会計へと目を向けることを意味する。ASOBAT
の第5
章の会計理論の拡張の官頭に,-技術の変化と人間の行動に 関する知識が進歩したために会計の範囲と方法は変化しつLあり,将来も変化 し続けることが予想されるj27)として将来の会計理論がどのような方向に拡張 されていくかを展望するのであるが,将来の会計に影響を及ぼすと考えられる 変化が現在起っている分野にはつぎのものがある。叫すなわち. a)意思決定 プロセスに関する知識。 b)人間の行動に関する知識。 c)電子計算機工 学とシステム設計。 d) 測定技術と情報理論である。このような諸分野の発 展につれて,会計の理論と実務は将来かなりの変化を余儀なくされようが, ど のような点について変化,拡張されるか。 (1) 会計制度の将来 第1
は会計の概念基礎 conceptualbases of accountingが拡張される。29) ( i ) 会計が何かを定義する場合に直面する問題は,財務会計と管理会計 の相違に関するものであるが.ASOBAT
では前に述べたように既成概念にと らわれることなく,両者に共通し,かつオベレーショナルにも有用な会計観を 展開する。すなわち,-会計は本質的には1つの情報制度である。もっと正確に いえば,会計は一般的情報理論を能率的な経済活動に適用することである。そ れは意思決定をする場合に,計数で示された情報を提供する一般的情報制度の 主要な部分を占めるものである。j30)の点についてはベッドフォードも,-近代会 25) Charles T. Zlatkovich : ibid. p. 31. 26) Charles T. Zlatkovich : ibid. p. 36. 27). 28) AAA: A Statem仰 t01品sicAccounting Theoη1966. p.63.以下 ASOBAT と よ ぶ 。 飯 野 利 夫 訳 基 礎 的 会 計 理 論 』 国 元 書 房 .1969年 91頁。 29). 30) ASOBAT p. 64.飯野利夫訳.前掲書.92頁。計は概念的基礎
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にもとづく広い情報システムであっ て手続き技術ではないJ31)といっている。(
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会計は情報の能率的な伝達にも関係しているから,報告書作成者の仮 定と,情報を受け取る人とが示す反応を調査することが必要である。このこと は将来の会計の研究は会計情報の行動面をも含むことを意味する。(
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)
会計は各種の活動に適用される測定プロセスの1
つである。そのプロ セスからアウトプットされるものは目的適合性,検証可能性,不偏性および 計量可能性の4
つの基準を満たさなければならないという点において,他の測 定方法からは区別されなければならない。 伝統会計におけるプロセスは,-記録,配分,解説の3つに大別され,さらに 記録は認識,測定,記録に3分され,解説は分析と報告とに 2分されている」紛 がASOBAT
では将来の会計は単に技術的なものであるに甘んじるものではなく, 経済的意思決定のために情報を提供する特殊な応用的情報組織であるとする。 第2
は将来の会計の範囲s
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が拡大する。33) 会計はそれが用いている方法ι
測定 Lている活動に関しては,他の情報組 織と区別されるものであるが,伝統会計においては複式簿記の機構や算術方式 および伝統的測定方法の範囲に限定されていた。しかし会計学に新しい測定方 法をとり入れるか,あるいは報告活動の概念を拡張するかの方法によって会計 の分野を拡張することができる。前者の場合には電子計算機の出現にともなう 測定方法の発展によって情報会計の能力は著しく増加する。同時に多数のデー タを迅速に処理することによって多目的な用途の情報を得ることができる。そ して経営規模の拡大とともに会計は,単に利益算定の用具であるにとどまらず, 進んで利用者にとっての意思決定のための多元的表示をするための報告書作成 の任務を負っている。多元的評価の方法は,たとえば歴史的取得原価,一般価 3DN
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1968.P
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32) 松本雅与j.「基礎的会計理論に関する報告書瞥見JW企業会計』第18巻第12号。 33) ASOBAT pp.64~65. 飯野利夫ぷ前掲書 pp. 93~94格水準を用いて取得原価を修正Lた購買力等価価値の推定額,再調達原価およ び売却時価などの測定値を同時に利用することになる。
ASOBAT
ではその第 1段階とLて,歴史的原価とカレントコストの2欄式報告書の作成を勧告Lて いるが,それ以前にもAICPA
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年にスプラウズ・ムーニッツによって複 数表示の報告書作成の提案を行っている。制またずっと後にはドックウィラー によっても実証的研究が行われている。町 複式の報告というのは,たとえば売上はつぎの3つの測定を含んでいる。 a) 利益目的との関連では収益,費用の数値で。 b) 将来の生産性あるいは販売可能性との関連では,従業員あるいは消費 者の満足程度を示す尺度で。 c) 売上高に含まれる国家的利益,それは法令によってどこか最低の水準 で維持されなければならなL、が,そのようなものを示すことも必要とされる。 うえの3つのものは別守に測定され, それらの結果は会計情報として意思決 定に利用される。第3は将来の会計情報の性質 natureof future accounting informationが変
化する。拙 将 来 の 会 計 の 範 囲 内 で は , 目 的 適 合 性 , 検 証 可 能 性 , 不 偏 性 , 計 量 可 能 性 の基準はもっと正確な意味を持つことになる。会計情報が行動や意思決定に適 合しなけれぽならないと考えるのは相対的なものであって,新しい会計測定方 法は会計情報の目的適合性の程度を高めることになるe もしこのような測定方 法の改善が生じれば,現在支持されている情報が将来は理論的に不適当になる かも知れない。そ1てさらに会計情報の利用者の要求は将来においては変化す るであろう。事実,大企業では利益獲得の動機だけがその目的ではなくなっ ているので, もL会計が多元的目的によって動機付けられている経済環境のな
34i AICPA: Robert T. Sprouse and Maurice Moonitz : "A Tentative Set of Broad
Accounting Principles for Business Enterprises" 1962.佐藤率一,新1!'i青光共訳・『会
計1::唱と会J十I原[WL中央経I奇社.r昭和37年 131氏。
35) Raymond C. Dockweiler : "The Practicability of Developing Multiple Financial
Statements : A Case Study" The Accounting Review Oct.1969. pp. 729-742.
かで,それぞれの目的に適合した情報を提供すべきであるならば,将来の会計 理論は内部・外部の利用者にとって現在は関連がないと考えられている情報も 関連があるものとして取り扱われるようになる。そしてさらに将来,情報が多 くの分野で完壁なものになってくると,伝統的な意思決定 それは人聞が行っ ているものであるがーは自動的に収集される情報にもとづいて機械が行うこと になる。しかしこのことは情報が検証可能なものについて起り得るだけであっ て,それ以外の場合には依然として人聞が意思決定を行わなければならない。 将来は情報の重要性が高まるのでデータを以前よりも検証性の高いものにする ことが必要である。証拠という考えは将来においては相対的意味しか持たない ことになる。たとえば地価についていうと,絶対的検証可能な証拠は販売価格で あるが,見積市価も適当なサンプリングによって決定できるし, このようなサ ンプリングによる価格決定は 1人の人の意見よりも検証性は高い。それは観 点をかえれば確率の問題でもある。 前にも述べたように,将来の会計理論は実務から帰納的に引き出されるもの ではなく, 目的を設定して演鐸的に理論を樹立することになる。そうなると統 計学,経営学, さらに測定理論に関係のある多くの社会科学の分野と会計理論 との関係が問題となる。 第