• 検索結果がありません。

L 且

ドキュメント内 情報会計の基礎 (ページ 119-125)

このように保有損益を認識し通常の売買損益と分離して示すことは経営の業 績評価にも重要性をもち,さらに経営者は棚卸資産の保有量や購入の時期およ び数量等の意思決定にも有用である。

棚卸資産についてのうえのような意思決定の如何は,価格変動にともなって 企業の財政状態に重要な意味をもつことになりひいては企業利益に影響を及ぼ し企業が危険に直面する原因ともなることがある。したがって財務諸表の利用 者が価格変動にともなう棚卸資産の問題をどのように取り扱うかに焦点を合わ せなければならない。たとえば価格が底値であるとか,あるいは供給量が減少 すると見込まれる場合には経営者は投機的に棚卸資産を買い増したり,価格上 昇の際には取替価格よりもむしろ低い価格で棚卸資産を得ることができれば投 資者にとっては重大な意味をもつことになる。

一般目的のための単一の財務諸表を支持している委員会の多数派は,取替原 価が棚卸資産測定の基準であると考え,取替原価で棚卸資産を測定した財務諸 表と同時に歴史的原価による測定値をも報告することを主張する。ただし保有 損益があまりあらわれない企業の場合には取替原価を採る必要はなく歴史的原 価が採られる

J

この取替原価の発想、は

1 9 5 7

年の

AAA

の会計基準によっているものである。

18)  AAA: ibid. Supplementary Statement NO.2. p.705 

すなわち売上原価 costsof goods soldの測定はつぎの3つの関連ある目的を 達成すべきものである19)とする。

1)  当該期間に顧客に引渡された生産品および役務をカレントな条件で報 告する。

2 )  

期末において存在する棚卸資産をカレン卜な条件で報告する。

3)  価格変動による利得あるいは損失(保有損益〉を区分明示する。

このようにして作成された財務諸表は収益に対する費用がカレントな価値で 表示され,また棚卸資産もカレントな価値で表示されるから企業比較に有用で ある。

取替原価は元来,長い期間にわたって低価法の一部として用いられてきたが,

ただその価格が客観性を有することがその必要条件である20)商企業における 取替原価の決定は最新の送り状の価格を用いることによって容易に行われる が,工企業の場合はその決定が困難である。前者の場合は棚卸資産の価格決 定日の仕入先からの仕入価格を調べることも必要であろうし,またその仕入価 格に慣行としての仕入割引,引取費等の項目について加減が行われることも必 要であろう。後者の場合は,たとえば原材料の棚卸資産についての取替原価の 決定は商品の場合と同様に容易に行われるが,製品,仕掛品の場合には事情が異なる。

この場合には原価要素の取替原価を先ず決定することが必要である。直接費を 構成する原材料費はうえに述べた方法によればよい。また労務費については当 期の賃率を適用すればかなり正確に決定される。製造間接費については,その 各要素の価格変動に影響を及ぼす価格変動指数によって歴史的原価をaカレント なものにする方法が適当で、あろう。実務的にはカレントな標準原価を採れば多 くの場合には満足すべきものが得られる。

棚卸資産の測定について委員会は長期的展望に立ってその客観性を考慮して L 、るが,その公開表示については少なくともつぎの

4

項目について満足きれな 19)  AAA: “~ccounting and Reporting Standards for Corporate Financial Statements" 

1957. Revision. The Accounting Review Oct. 1957中島省吾訳・

r

AAA会計原則』

中 央 経 済 社 昭 和42年 138頁。

20)  AAA: ibid. Supplementary Statement.No.2. p.710. 

ければならないとしている

3 1 }

(1)  棚卸資産は主要な範囲によって区分されなければならない。そして 先入先出法や最新の利用可能な標準原価等の測定方法の注釈もなされなければ ならない。

(2)  可能な場合は物量的数量が明示公聞きれなければならない。このよ うにすれば価格と数量の分析が容易に行われる。

(3)  後入先出法は受け入れ難L、。しかしながらこの方法が採用された場 合は取替原価による表示を行わなければならない。

(4)  評価性引当金あるL、は利益性引当金として棚卸資産に対する引当金が 用いられる場合にはその設定,分類,期中の変化および期末の修正の表示を行 わなければならない。

特 に (2 )において価格を数量分析の観点から物量的数量表示を勧告してい るのは会計情報として金額的表示のみならず非金額的情報も意思決定の重要な 要因と考えられるからである。

棚卸資産の測定の基礎として取替原価が他の測定基準よりも優位にあること を補足報告書第

2

号は主張するのであるが,取替原価を測定基準とした場合の 最大のメリットは純損益中に含まれる保有損益の認識である。そこでつぎに問 題となるのは,この保有損益が実現されたものであるか,あるいは未実現のも のであるかについてであるア そのいずれであるにしても保有損益は財務諸表 に報告されなければならないことについては

1 9 5 7

年の

AAA

の会計基準で明ら かにされている。この保有損益の実現・末実現の判断は実現概念に依存してい る。

すでに第

2

章で触れたように

1 9 5 7

年の

AAA

の会計基準では実現の意味を会 計的認識が確定的,客観的であることとしているが,これによると棚卸資産を 低価法で測定することは確定的,客観的であるとする。低価法は元来,棚卸資 産の陳腐化,劣性化および価格変動による損失の認識に適用されているが,前

2

者の陳腐化と劣性化による損失と後者の価格変動による損失とは厳密に区分

21)  AAA: ibid. Supplementary Statement. No.2. pp.710‑711  22)  AAA: ibid.  Supplementary Statement. No.2. pp.708ι710. 

されなければならない。けだしそれらは損失発生の原因が著しく異なるからで ある。今こ与で問題となるのは低価法において価格変動から生ずる保有損益は,

これが発生する期間において示されるべきであり, このようにすることによっ て費用・収益の正しい期間対応がなされると考えるのである。

このことから委員会の

3

人の委員たるファーミン

P e t e rA . F i r m i n

,ヘップ ワース

SamuelR.Hepworth

, ウィクソン

R u f u sWixon

は取替原価は保有損 益を実現したものとして充分に確定的であり,かつ客観的であると考えている。

さらに彼等は期末において棚卸資産の取替原価が取得原価とは異なっているこ とを客観的に示しているならば期間損益や財政状態への影響を示すものは報告 されなければならないとする。他方ホングレン

C h a r l e sT

.

Horngren

,マウツ R.K.

Mautz

,およびズラトコヴィッチ

C h a r l e sT . Z l a t k o v i c h

3

人は販売の時 点までは保有損益は実現されないと考えるが, この保有損益が重大であり,か っその測定が確実に行われる場合にはこれを認めるとし、う柔軟な態度をとって いる。けだしこれは伝統会計における実現概念が会計の保守主義によって固め られているが,

1 9 5 7

年の会計基準において実現概念が拡大解釈され,伝統会計 からの離脱をはかっていること等を考えると保有損益も販売の時点を待つこと なく拡大された実現概念によって実現されるものと考えるからであろう。しか し一般的にし、って実現とは販売の時点においてこれを把握することになってお り,これが客観性,検証性の基準となっている。したがって期末の棚卸資産に 関する保有損益を一般目的の財務諸表に計上するのは中開発表としては有用で あるが, これを最終的発表とすることはできなし、。先きのファーミン等の見解 は市場価格が存在することに客観的テストを見出し,必ずしも実際の取引の存 在を必要としないとする。けだし実際に販売の時点まで保有損益を認めなけれ ば期間損益を正しく把握し得ないからである。したがって財務諸表の利用者に 保有損益が重大な意味をもつならば,そのような会計情報はそれが発生した期 間に報告され,操業損益から区別される必要がある。これを要するに保有損益 を実現損益とみる見解は,第

1

には伝統会計における実現概念は企業活動の結 果たる損益の認識ないし測定の基準としては不適当であること,第

2

vこは市場 に当該財貨の価格が存在するだけで充分に客観性を備えていると考えるのであ

る。

このように実現の問題については見解が分かれているが,

1 9 5 7

年の

AAA

の 会計基準が脱伝統会計をメルクマールとしているところから考えると,この対 立はなくなり保有損益は実現されたものとして公表財貨諸表に注記の形で表示 されることになろう。

V 結 び

アメリカ会計学の発展途上において原価主義にもとづく会計理論を確立した べ一トン. リトルトンは,会計が貨幣的価格を用いるのはそれが各種の対象物 や用役を同質的に表現するうえに便利な公分母であり, また交換取引の交渉の 結果を表現する通常の型であるからにすぎない。重要なのは「貨幣」でも「価 格」でもなく「用役」すなわち交換された場合にはその企業にさらに他の用役 の 潜 在 を 与 え る よ う な も の こ そ が 会 計 の 背 後 に あ る 重 要 な 要 件 で あ る と す る?この発想は資産を用役潜在分であるとし,その表現形態としては価格総計 price‑ag志向gateをとっている。この価格総計としての原価をとるゆえんは,彼 等においては原価と費用とを区別し,生産のため取得されたもの(=資産)で 経営活動のなかにおいて末だ売上原価や費用として扱われるに至っていない ものを資産と呼ぶ。したがって資産の本質を用役潜在分とLL、ながら,実は具 体的には価格総計として資産の価値を決定しようとする。これは計算構造の側 面とその客観性を重視するとL、う両側面から派生する思考である。これに対し て経済学的側面からこれをとらえようとする立場は24)資産を具体的,物的存在 ではなく将来において期待し得るサービスであるとする。この発想は経済活動 のなかにおけるサービスの有用性の観点からこれをとらえようとするものであ

1 9 5 7

年の会計基準でし、うサービスポテンシヤルズの考え方である。この資 産観をぺ一トン・リトルトンにおいては会計理論の基礎としているが,計算構 23)  W.A.Paton and A.C.Littleton: An Introduction 10 CoゆorateAccωmting Standards. 

American Accounting Association 1940. p.13. 

24)  こ の 立 場 は キ ャ ニ ン グ の 経 済 学 的 側 面 か ら の 会 計 へ の ア プ ロ チである。 ].B. Canning: The  Economics  01 Accountancy  : A Critical  Analysis 01  Accounting 

Theoη1. Ronald Press 1929. 

ドキュメント内 情報会計の基礎 (ページ 119-125)

関連したドキュメント