I 固定資産の多元的測定の要請
伝統会計においては期間損益の決定が会計の基本的機能であると認識されて きた。けだし損益の測定値は多くの目的に利用されるからである。しかしなが ら利益を中心とする会計的測定にもつぎの
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つの型が存在することを看過する ことはできない。第1
は会計における利益測定を経済学的利益と密接に関連付 けようとするアプローチ,第2
はAAA
の1 9 5 7
年の会計基準およびそれに対す る補足報告書やASOBAT
によって代表されるような利益および財務資料の 多元的測定を主張するアプローチ,第3
は種々の目的をもっ人々のために必要 な利益を測定することは不可能であるから,期間損益の測定に代えてキャッシュフローやファンドフローのような他の測定に会計の機能を見出そうとするア プローチHである。われわれは単に期間損益の測定だけを会計の機能と認めるに とどまらず,進んで意思決定に必要な情報をより多く与える用具として会計機 能をとらえ,会計における多元的測定の立場を採る。
このように会計における多元的測定の立場を採るとき,重要問題の1つは測 定の統一的立場を明確にすることである。けだしばらばらの測定尺度で各種の 会計的測定を施したのでは統一性がなく,その結果としての財務諸表は有用な 情報とはなり得ないからである。そもそもアメリカ会計学会を支配してきた取 得原価主義に代って,それを含む多元的測定に変らしめた外的要因は,第
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次 大戦後の貨幣価値の変動であった。しかし単に貨幣価値の変動のみであれば,貨幣価値水準の指数による修正(=修正原価主義)によればよいのであるが,
この貨幣価値の変動とともに内的要因として経済構造の急激な変動から生ずる 需給の著しい変化,さらに技術革新による固定設備の新旧交替の背景に照らし て,異なる目的に対しては異なる測定尺度を用いることが合目的であると考え 1 ) R.F.Salmonson:晶sicFinancial Accounting Theoη'. Wadsworth Pub. 1969. p.69.
られる。取得原価主義の固い枠にしばりつげた会計情報は企業経営に関する意 思決定には不適当であるという観点から
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年の会計基準では会計的認識およ び測定の対象としての資産について従来の考え方を一変させ,その意味で画期 的な構想、を描いたが,具体的な資産の認識や測定に関してむしろ問題を後に残 してきた。2)すなわち1 9 5 7
年の会計基準は資産の認識および測定に関して将来の 潜在用役の予想価格総計を基本として現在価値を測定するとし、う立場を採るの であるが,貨幣資産については予想現在収入割引額とし非貨幣資産については,原則的には取得原価主義を採るという一見して矛盾した測定方法によってい る。そこで
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年のAAA
の会計基準の構想に沿いながらこのような矛盾の克服 と,取得原価主義からカレントコストベーシスへの移行過程を1 9 6 4
年のAAA
の補足報告書第1
号却を中心にして固定資産に限定して考察し,あわせて固定資 産という用役潜在の費用化の手段たる減価償却についてカレントヴァリュー基 準を検討する。I I 基 礎 的 考 察
(1) 基礎的考察の前提として委員会は,
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年の会計基準の考え方を踏 襲してつぎのように言う。すなわち r投資家が投資に関する意思決定をするの に際して公表財務諸表を使用し,また経営管理を実施する際にもそれを使用す ることが最も重要であると考えなければならないf
とする。これは財務諸表が 単に一般に公表されることを目的とするだけではなく,広く投資に関する意思 決定などに有用でなければならず,そのためには従来から固執されてきた種々 の原則をカレントなものに改変する必要があることを示すものといえよう。こ のような基本的な考え方から財務諸表の任務はつぎの2
つとなるF
a) 当期利益の測定と報告は,将来の収益の予測の基礎とならなければな らない。当期利益はこれを分析すると, (i)通常の営業活動の成果, (ii)資
2) この点についての根拠は第2章で指摘した。
3) AAA: Accounting for Land, Buildings and Equipment" Supplementary State‑ ment No.1. The Acco明~tingReview July 1964.
4 ) AAA: Supplementary Statement N 0.1. p.693. 5) AAA: Supplementary Statement No.1. pp.693~6θ4
産の異常損失および発見.(iii)保有利得および損失であり,これらを別々に表 示した方が将来の予測には便利である。
b) 財政状態の報告は資産構成と資本構成を明示するものでなければなら ない。このような情報は企業の安定性と財務政策の健全性の判断に有用であり,
経営者の管理責任と企業利益を得る場合の資産利用の大きさを示す。さらに流 動比率,固定比率,資本利益率等の財務比率を算定する場合に重要である。
( 2 ) 財務諸表に計上される項目の測定値の基礎として客観的証拠を必要 とする。これは会計数値(=測定値)の客観性が高ければそれだけ意思決定が 正確になる。したがって補足報告書第
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号で r検証力の限度は財務諸表の利用 者が, この財務諸表は公平に作成されているものとの確信をもって考えるよう でなければならないf
としているのは,資産の測定に関しての客観性を強調す るのであるが,伝統会計における客観性認識のメルクマールでトある歴史的取引 をあわせ強調していないところは伝統的会計思考とは異なる。けだしこれは 1957年の会計基準における実現概念による幅広い会計認識から派生したものと 考えることができょう。(3) 資産は企業目的に奉仕する経済的資源であり,将来の企業活動に有 用なサービスポテンシャルズの総計であるとし、う1957年の会計基準の考え方を 踏襲する。すなわち,貨幣資産についての経済的価値
e c o n o m i cv a l u e
は将来 の現金流入の割引価値t h ed i s c o u n t e d v a l u e o f f u t u r e c a s h
f10 wで測定し得る が,非貨幣資産の場合はうえのごとき思考方法では解釈され得ない。そこで,「サービスポテンシャルズの近似的測定方法として同ーの潜在用役あるいは同 等の潜在用役を獲得するカレントコストを用いることによって測定する。J7)こ の非貨幣資産については. 1957年の会計基準では将来の現金流入割引価値にか えて新しい意味における歴史的原価を用いたが,補足報告書第
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号ではカレン トコストを用いようとする。この思考転換は画期的であり,会計の過去回顧的 性格を現在あるいは未来指向的性格に変える一転機であるといえる。歴史的原価が会計測定の尺度として用いられるのは,それを取得したという 事実に高い客観性を認めるからであるが,取得後のある一定の時においてそれ
6). 7) AAA: Supplementary Statement No.l. pp.693~694.
が果たして客観性の高いものであるかどうかについては疑問がある。そこで歴 史的原価以外に高い証明力があり,客観的証拠 verifiable,objective evidence を具備した測定基準が得られれば伝統的に固執してきた歴史的原価主義に拘泥 する必要はない。そこで伝統会計における実現の概念、を広く解釈すること叫によ り,カレントコストに客観性を認めようとする。このカレントコスト基準によっ て資産の測定をする立場はすでにエドワーズ・ベルによって思考され,またそ の後彼等の影響としてスプラウズやムーニッツもエドワーズ・ベルの立場を支 持しながら保有損益と操業損益を峻別し,貨幣水準の変動に関してもカレント な会計処理をなすべきことを主張していることはすでに先きに述べたとおりで ある。
1 1 1 測定方法
統一された測定方法によって得られた会計情報は,異なった目的をもっ人々 には必ずしも有用とはならない。したがってそれぞれの場合に適する測定方法 は情報の利用者および情報の利用目的によって選択されなければならない。剖補 足報告書第
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号では基礎的考察において非貨幣資産についてはカレントコスト によってこれを測定する立場を採った。そこでつぎに問題となるのは, このカレントコストによる測定の具体的方法である。
(1) 取得日における評価 valuationat acquisition date.
一般的にいって資産の価格は取得日の購入価格とする。けだしそれは r資産 取得日におけるサービスポテンシャルズの価値は少なくとも購入価格と同じ大 きさであると考えられる。もしそうでなければ資産は購入きれなしし,さらに 大抵の場合,購入価格は資産に化体されたサービスポテンシャルズについて客 観性を有しているからである。たとえ割引現金流入概念、で測定されて,サービ スポテンシャルズの価値が購入価格と異なったものであるとしても,このよう な相違を示す客観的証拠はなし、J10)と。
8) AAA: Accounting and Reporting Standards for Corporate Financial Statements"
1957. Revision.実現概念の拡張解釈は第2章で扱っている。
9 ) Eldon S.Hendriksen: ibid.水 田 監 訳 : 前 掲 書 上 巻 272頁。 10) AAA: Supplementary Statement No.l. p.694.