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宮川用水国営1号幹線水路内のタイワンシジミの生息状況

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宮川用水国営

1 号幹線水路内のタイワンシジミの生息状況

岡島賢治

西村元輝

**

長岡誠也

伊藤良栄

近藤雅秋

* * 三重大学大学院生物資源学研究科,〒514-8507 三重県津市栗真町屋町 1577 ** 三重大学生物資源学部,〒514-8507 三重県津市栗真町屋町 1577 要 旨 三重県の宮川用水末端の給水栓においてタイワンシジミによる閉塞問題が拡大している.本研究では,この閉塞問題 対策として宮川用水土地改良区が行っている国営1 号幹線水路明星 1 号排泥工の排泥操作の記録より,管内のタイワン シジミの排出状況を検討した.その結果,タイワンシジミは流速が早くなる代掻き,田植え期と中干し後の時期に移動 している状況が明らかとなった.また,明星1 号排泥工付近の内径 2,000mm の管内調査より,タイワンシジミは継手部 の段差などを生息の場としている状況が確認できた.管内調査で採取したタイワンシジミの生息調査より,12 月のパイ プライン内の継手部に存在する90%以上のタイワンシジミが 6,000 個体/m2程度の高密度で生息していた.また,掃流計 算から,継手部では殻長20mm 以上のタイワンシジミが複数年度生息している可能性が高いことが分かった. キーワード:タイワンシジミ,閉塞問題,排泥操作,管内調査,形態分析

1. はじめに

中国,台湾原産のタイワンシジミ(Corbicula fluminea)は, 畜養や混入により新天地に侵入し,分布域を拡大する能力 が高く,日本国内においても,1980 年代後半よりその生息 が報告されるようになり(池上,2009),現在も分布域の拡 大が報告されている(園原・吉田,2005).タイワンシジミ は雌雄同体で,自家受精による繁殖も可能である.卵胎生 であり,幼生は足を出してはい回れる状態の幼貝になるま で保育嚢内で成長してから,体外に放出される(古丸, 2002).このように高い繁殖力を持つタイワンシジミによっ て,アメリカでは発電や上水用のパイプの閉塞や農業用水 の流速低下などの悪影響が報告されており,経済的な損失 も大きく,ペスト種の1 種とされている(Lucy et al., 2012). 一方で,日本国内では未だタイワンシジミが産業に影響を 与えた報告事例は少ない状況にある.しかし,2013 年ころ から三重県の宮川用水で末端の給水栓においてタイワンシ ジミによる閉塞が拡大している(農林水産省東海農政局農 村振興部農村環境課・ニック環境システム,2015). 宮川用水土地改良区は,タイワンシジミによる末端の給 水栓での閉塞問題に対し2016 年から毎週 35 か所の排泥工 や調圧水槽において,排泥操作によるタイワンシジミの排 出作業を行い,問題の軽減を図っている.また,2016 年 12 月6 日から 17 日まで,2012 年の通水以来初めての落水を 伴う国営1 号幹線水路の施設機能診断および施設管理状況 調査が行われた. 本研究では,まず,宮川用水土地改良区が行っている35 か所の排泥操作のうちの1 つである明星 1 号排泥工の排泥 操作の記録より,管内のタイワンシジミの排出状況を報告 する.次に,2016 年 12 月 7 日の管内調査に合わせて,明 星1 号排泥工付近で管内のタイワンシジミ生息調査を行っ た.その結果をもとに,国営1 号幹線水路パイプライン内 のタイワンシジミの生息状況および貝形態,体積,質量, 比重について分析した.日本国内のタイワンシジミの研究 事例は少なく,その多くは近縁のマシジミとの判別による 分布状況の報告である.通年通水しているパイプラインの 内部での生息状況を研究した事例はない.また,貝の形態 についても池上(2009)において殻高と殻長の比が報告さ れているにすぎない.さらに,生物学的に質量は一般に乾 燥質量で議論されるため,世界的にも生貝の比重は報告さ れた研究事例はない.加えて,本研究では,得られた比重 により,宮川用水国営1 号幹線水路内で移動するタイワン シジミの大きさについても掃流計算で試算した.

2. 調査地および調査点

宮川用水は,宮川総合開発事業の中の農業用水事業とし て建設された.多気郡大台町の宮川中流の粟生頭首工で取 水し,多気郡大台町,多気町,明和町,度会郡玉城町,伊勢 市の農地に配水されている.2012 年に完了した国営宮川用 水第二期農業水利事業では,斎宮調整池の新設と導水路お よび幹線水路の更新が行われた(農林水産省東海農政局宮 川用水第二期農業水利事業所・宮川用水土地改良区,2013). 粟生頭首工から伸びる幹線水路の概要図をFig. 1 に示す. Fig. 1 中破線は開水路(暗渠)で,実線はクローズドタイプ のパイプラインになっている.幹線水路には斎宮調整池を

(2)

経由する国営1 号幹線水路と斎宮調整池を経由しない国営 2 号幹線水路がある.調査地は,Fig. 1 に黒点で示した三重 県多気郡明和町明星地区にある国営1 号幹線水路の明星 1 号排泥工付近とした.調査地付近のパイプラインは内径 2,000mm,有効長 6,000mm,受口部内径 2,113.5mm,受口部 長さ330mm の FRPM 管である.斎宮調整池からの取水口 には,8mm メッシュの鋼製の防塵ネットが設置されてお り,国営1 号幹線水路への流入水の全量がこのメッシュを 通過している. 明星1 号排泥工付近の平面図および縦断面図を Fig. 2 に 示す.Fig. 2 で上下の平面図は A 点で接続されており,西 側が上流,東側が下流となっている.調査区間内の水路勾 配(i)は,下流に向かって下がり勾配をマイナスとなるよ うに示した.明星1 号排泥工は,流下方向に向けて緩く下 る水路床勾配の後,急激に水路床勾配が立ち上がる逆サイ ホン状構造の最も低い位置の水路底部に設置されている. Fig. 1 宮川用水幹線水路概要図 Layout of main channels in Miyagawa irrigation channel

明星1号排泥工 5,000 m 粟生頭首工 宮川 斎宮調整池 国営1号幹線水路 国営2号幹線水路 開水路 パイプライン Fig. 2 調査地の平面図および縦断面図 Plan view and longitudinal section view of the investigation area 10.00 15.00 20.00 100 m 明星3号空気弁工 継手1 継手2 i= -0.002236 DL(m) i= -0.017142 i= 0.197280 i= -0.001482 A A 明星1号排泥工 100 m 10.00 15.00 20.00 DL(m) 継手1 継手2 明星1号排泥工 屈曲部 明星3号空気弁工 ※ 矢印はFig. 6撮影方向

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明星1 号排泥工は,宮川用水土地改良区の職員により, タイワンシジミ排出のための排泥操作が行われている地点 である.排泥操作は,2016 年 3 月 24 日より,毎週金曜日 を基本として,12 月の施設機能診断および施設管理状況調 査期間の2 回,年末の 1 回を除き毎週行われた.排泥操作 は排出水が透明になってから2,3 分間行われ,目合い 3mm 程度の網でタイワンシジミを採取している.宮川用水土地 改良区では,採取したタイワンシジミの「大きさ」,「数」, 「生死割合」を目視により定性的に-1,0,1 の 3 段階で記録 し,写真を撮影している.定性的な「大きさ」の-1,0,1 は, およそ4~10mm,およそ 7~17mm,およそ 15~25mm であ る.定性的な「数」の-1,0,1 は,およそ 1~200 個体,お よそ100~1,000 個体,およそ 500~数千個体である.また, 排泥操作日の国営1 号幹線水路内管内の流量も日単位で記 録されており,パイプラインの内径より平均流速も計算で きる.

3. 明星 1 号排泥工の排泥操作

本研究では,2016 年 3 月 24 日~2017 年 2 月 24 日の記録 を宮川用水土地改良区より提供いただいた.排泥操作によ るタイワンシジミの排出状況を検討するために,以下の手 順で記録データを加工した.まず,記録データの貝の「大 きさ」および貝の「数」の指数である-1,0,1 を 1,2,3 と した.次に,排泥操作により排出される貝の量の指数とし て,「体積指数」を「大きさ」と「数」の指数の積とみなし, 1~9 の指数で表した.このとき,タイワンシジミが確認で きなかった排泥操作については,体積指数を0 とした.ま た,「生死割合」の-1,0,1 を生貝割合 20%,50%,80%と みなして,体積指数中の生貝と死貝の割合を計算した.参 考として,体積指数9,生貝割合 80%となった 2016 年 7 月 22 日の排泥操作により採取されたタイワンシジミを Fig. 3 に示す.生貝は口を閉じているのに対し,死貝は口を開く 傾向にあるため,生死の判別は比較的容易である.タイワ ンシジミの殻の色には,黄色型と緑色型のものがあった. 本研究では,二枚貝研究者の古丸 明氏に同定を依頼し, すべてタイワンシジミであると同定いただいた. 以上のデータ加工の結果をFig. 4 に示す.Fig. 4 は,体積 指数(0~9)を第 1 軸にとり,棒グラフとして棒の黒塗り を生貝体積指数,白塗りを死貝体積指数として表している. また,流速を第2 軸にとり,折れ線グラフで表している. 横軸は排泥操作日として,各月初めの排泥操作日を記した. Fig. 4 より,体積指数は流速に大きく影響を受けること が分かる.流速が上昇すると高い生貝割合の体積指数が増 加し,排泥操作によりパイプラインから排出される生貝が 増加する傾向にあることが分かる.また,流速が早い状況 が続くと,体積指数もある程度高い状態で維持されるが死 貝の割合も若干増加する傾向にある.さらに,流速が低下 すると体積指数が減少し,同時に死貝の割合も増加する傾 向にある.以上のことから,タイワンシジミは流速が早く なる代掻き,田植え期(4 月上旬~6 月上旬)と中干し後(7 月)の時期に流れに乗って移動すると考えられる. ただし,宮川用水土地改良区による「大きさ」,「数」,「生 死割合」の指数は,目視による定性的な値であるため定量 的な評価はできず,Fig. 4 のグラフは排泥操作によるタイ ワンシジミ排出状況の傾向を表すものと考える必要があ る.

4. パイプライン内部のタイワンシジミ調査

4.1 パイプライン内部の生息状況 2016 年 12 月 7 日に明星 1 号排泥工付近で管内タイワン シジミ調査を行った.調査直前11 月 25 日の明星 1 号排泥 工の排泥操作は,体積指数1 であった.撮影された排出タ イワンシジミの写真判読から,生貝7 個体,貝殻 24 個と排 出されるタイワンシジミも非常に数が少なかった. 調査は,Fig. 2 中の明星 3 号空気弁工からパイプライン に侵入し,明星1 号排泥工までの約 300m 区間で行った. (2016 年 7 月 22 日宮川用水土地改良区撮影) Fig. 3 排泥操作で採取されたタイワンシジミ Asian clam which was gathered in sludge discharge

Fig. 4 明星 1 号排泥工タイワンシジミ排出状況図 Situation of Asian clam discharge at Myojyo No.1 blow off

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 平均流速( ms -1) 体積指数 生貝体積指数 死貝体積指数 流速 4/ 1 5/ 6 6/ 2 7/ 1 8/ 5 9/ 2 10 /7 11 /7 12 /1 6 1/ 5 2/ 3

(4)

パイプの継手部はパイプ厚さ40mm の段差があり,挿し口 内径から漸縮しながら約 300mm でパイプ内径に至る継手 の窪みが存在する. Fig. 5 に継手 1 の写真を示す.写真下部が上流側となり パイプ厚さ40mm の段差があり,タイワンシジミが堆積し ている状況が確認できる.調査区間において,パイプライ ン内のすべての継手においてタイワンシジミの生息が確認 できた.また,調査区間内には,1 か所屈曲部があった.こ の屈曲部の管底部を下流側から撮った写真がFig. 6 である. 屈曲部における写真撮影箇所はFig. 2 中の撮影箇所となり, 矢印が撮影方向を示している.Fig. 6 の右側が屈曲内側に なる.屈曲内側の管底部で壁面に付着したコケの中で殻長 10mm 以下のタイワンシジミが生息していることが確認で きた.Fig. 6 中で管底に見える粒状のものがタイワンシジ ミである.以上のように,タイワンシジミは継手部の窪み などパイプライン内で流速が遅くなる部分を生息場として いることが分かった.また,11 月 25 日の排泥操作による 排出量は少なかったが,12 月 7 日の調査では排泥工付近に 多量のタイワンシジミが堆積している様子が確認できた. しかし,再注水後初となる12 月 16 日の明星 1 号排泥工の 排泥操作での体積指数は1 で,生貝 6 個体,貝殻 5 個とご く少量のタイワンシジミしか採取できなかった.注水によ り排泥工付近のタイワンシジミがフラッシュされたと考え られるが,排泥操作によりパイプ内のタイワンシジミがど の領域まで排出されるかは,今後の研究が求められる. 調査中,Fig. 2 中の継手 1,継手 2,明星 1 号排泥工付近 (以下,排泥工)の3 か所でタイワインシジミのサンプルを 採取した.継手 1,継手 2 では継手の窪みに存在するすべ てのタイワンシジミを採取した.排泥工においては,多量 のタイワンシジミが堆積しており,そのうち約5L 程度の底 泥とタイワンシジミを採取した. 4.2 採取したタイワンシジミの計測法 継手1,継手 2,排泥工で採取したタイワンシジミは,生 死割合の把握と貝の形態分析および比重等を計測した. 採取日に,ヘドロ状の細粒分を洗い流した後,ふるい分 け試験を行った.このとき,タイワンシジミの生死割合, 生貝比重等の計測のため,質量は炉乾燥せずに水分をふき 取った程度の生貝質量での計測を行った.計測した天秤は エー・アンド・デイGF8000(秤量 8,100g,最小表示 0.1g) を用いた.なお,目開き19mm のふるいにおいては,残留 したタイワンシジミの向きを変えたところすべてのタイワ ンシジミがふるいを通過した. 生死割合計測では,目開き2mm のふるいを通過した材料 以下でのタイワンシジミの判別が困難であったことから, 目開き2 mm,4.75 mm,9.5 mm 残留分の材料を判別対象と した.目開き2mm 残留以上の大きさの材料は生貝死貝の区 別はあるがすべてタイワンシジミであった.目開き2mm の ふるいを通過した材料は砂と貝殻片が大半を占め,残りは わずかな植物の残滓であった.生死割合では個体数を計測 した.死貝は貝殻となっているが,砕けて貝殻片となって いる場合は貝殻片をおよそ貝1 個分となるよう集めて 1 個 と計上した.形態および比重の計測では,殻長が 20mm, 15mm,8mm,6mm,4mm 程度の生貝を選択し,殻長,殻 高,殻幅,質量,体積を計測した.殻長,殻高,殻幅はFig. 7 に示すような位置で,ノギスを使用して計測した.質量お よび体積は,殻長 20mm,15mm 程度については,GF8000 秤量を用い,殻長8mm,6mm,4mm 程度はアズワン ASP413 (秤量410g,最小表示 0.001g)を用いた.体積の計測は水中 でタイワンシジミを静止させ,増加した質量より求めた. 4.3 ふるい分け試験の分析結果と考察 ふるい分け試験に用いたそれぞれの試料はタイワンシジ ミと底泥からなり,その重量は,継手1 で 2,054.4g,継手 2 で1,049.8g,排泥工で 1,611.5g であった.ふるい分け試験で は,目開き2mm 以上の粒径の試料はすべてタイワンシジミ (2016 年 12 月 7 日著者撮影) Fig. 5 継手の縦断模式図と生息しているタイワンシジミ Longitudinal section of a pipe fitting, showing the occurrence of Asian clams in a notch where the pipe joins the pipe fitting

継手の窪み (約300mm) 流下方向 流下方向 撮影 方向 タイワンシジミ 段差 (40mm) (2016 年 12 月 7 日著者撮影) Fig. 6 屈曲部内側パイプ底に生息するタイワンシジミ

Asian clam inhabiting in-corner bottom of the pipeline

Fig. 7 貝の長さ計測位置 Measurement positions of lengths of Asian clam

殻長(L) 殻長(L)

殻高

H) 殻幅

(5)

となり,目開き2mm を通過した試料は主に底泥でシジミを 判別することは難しかった.ふるい分け試験の結果を粒径 加積曲線にまとめたものをFig. 8 に記した.排泥工の粒径 加積曲線のみ違う傾向を示し,継手1 および継手 2 はほぼ 同じ粒度分布を示した.継手1,2 がほぼ同じ粒度分布を示 したことから,この結果は調査区間の継手に堆積する堆積 物の一般的な状況を表している可能性が高い.排泥工のタ イワンシジミでは,質量の90%以上が目開き 4.75mm 残留 以上の大きさであった.一方,継手1,2 とも質量の 25%を 砂および貝殻片とわずかな植物残滓が占めていた.このた め,排泥工付近では,タイワンシジミが流されて堆積した のに対して,継手では窪みに堆積した砂を生息場としてタ イワンシジミが生息している可能性がある. Fig. 9 に,目開き 2 mm,4.75 mm,9.5 mm 残留分のタイ ワンシジミの個体数の生死割合を縦軸とした粒径加積曲線 の形で表した.それぞれの調査点における目開き2mm ふる いに残留したタイワンシジミの個体数は,継手 1 で 2,260 (生貝2,070,死貝 190),継手 2 で 2,023(生貝 1,899,死貝 124),排泥工で 4,818(生貝 3,751,死貝 1,067)であった. Fig. 9 より,継手 1,2 の生貝割合はいずれも 90%を超え, 生死割合でも継手1,2 はほぼ同じ傾向を示した.一方,排 泥工では,生貝割合は80%弱であり,継手よりも低くなっ た.また,すべての調査点で,目開き9.5mm 残留分のタイ ワンシジミの死貝は,全体の1%以下となり,成長した貝の ほとんどが生きていた.また,生貝では目開き4.75~9.5mm のタイワンシジミが,継手 1,2 では約 70%,排泥工でも 45%と最も多かった.斎宮調整池から 1 号幹線水路への取 水口には 8mm メッシュの金網による除塵が行われている が,パイプライン内に生息していた多くのタイワンシジミ はこれを通過できると考えられる.また,継手の窪みが約 300mm の継手でタイワンシジミが確認できた面積は,生息 していた底部の幅が約1.2m であったことから,約 1/3m2 考えられ,生きた貝の生息密度はおよそ6,000 個体/m2とな る.かなり高密度であるが,Lucy et al.(2012)は,水路で 2,255~16,688 個体/m2のタイワンシジミの生息密度の記録 を報告しており,タイワンシジミの環境適応力の高さを示 している. 次に,パイプライン内のタイワンシジミの成長について 考察する.タイワンシジミの成長についての日本における 研究事例はなく,平野・藤原(1987)が,タイワンシジミと 判別が難しい近縁種である日本在来のマシジミを育成し, 殻長の成長曲線を描いている.平野・藤原(1987)のデー タでは,マシジミは初めの3 か月で約 8mm となり,1 年で 約16mm 成長していた.この成長曲線は,殻長(mm)を y, 月数をx とした式(1)に示す対数関数の近似式で表すと,R2 値0.976 となりよく一致した. y=5.72ln(x)+2.6 (1) そこで,生息場である継手1,2 で採取した殻長 20mm 以上の生貝についてはすべて長さの計測を行い,継手1, 2 の殻長 20mm 以上の生貝の年齢を近似式より逆算した結 果をFig. 10 に示す.Fig. 10 より,継手 1,2 の殻長 20mm 以上の生貝はどちらの継手においても同様の分布で存在 し,最長4 年を超えて生息していたと考えられる. 2016 年 12 月の調査時に 4 年を超えるタイワンシジミの生息が確認 された.このことは,2012 年に終了した国営宮川用水第二 期農業水利事業直後にパイプラインに侵入し,生息し続け ていたと考えられる.以上より,パイプラインの継手は, タイワンシジミの生息の場であるとともに,繁殖場となっ Fig. 8 タイワンシジミの粒径加積曲線 Cumulative size distribution of Asian clam in the pipeline 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0.1 1 10 100 通 過 質量百 分率( % ) 粒径(mm) 継手1 継手2 排泥工 Fig. 9 タイワンシジミの生死割合加積曲線 Cumulative rate of survival and death of Asian clam in the pipeline

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 10 100 生 貝 ・死貝 百分率 ( % ) 粒径(mm) 継手1(生貝) 継手1(死貝) 継手2(生貝) 継手2(死貝) 排泥工(生貝) 排泥工(死貝) Fig. 10 殻長 20mm 以上のタイワンシジミの年齢曲線 Age curve of Asian clam over 20mm of shell length 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 20 21 22 23 24 25 26 年齢 殻長(mm) 継手1 継手2

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ている可能性も高い. 4.4 形態および比重の分析結果と考察 継手 1,継手 2,排泥工で採取したタイワンシジミのう ち,殻長が4~10mm(57 個体),10~14mm(欠測), 14~ 20mm(56 個体),20mm 以上(68 個体)の生貝の殻長,殻 高,殻幅を計測した.なお,計測の過程で誤って10~14mm を廃棄し欠測したが,他の殻長範囲での相関が高かったた め,ここで目的としている分析には問題ないと考えた.結 果をFig. 11 に示す.近似直線の切片は 0 とした.Fig. 11 よ り,タイワンシジミの殻高-殻長比(H/L)も,殻幅-殻長 比(W/L)も殻長によらずそれぞれ線形近似に高い相関があ ることが分かった.タイワンシジミのH/L は,観測場所に より大きく異なり,Wang et al.(2014)は中国湖南省の 3 サ イトで0.94~0.97,Kamburska et al.(2013)はイタリア北部

で0.96 と報告している一方で,De Vaate and Hulea(2000)

はルーマニアで0.88,池上(2009)は日本の熊本で中央値

0.82~0.83 と報告している.既往の研究のように H/L から

タイワンシジミの同定は難しく,本研究でも国営1 号幹線

水路明星1 号排泥工で採取されたタイワンシジミの H/L が

0.845 であったと記すにとどめる.W/L に関しては,H/L よ

り文献は少ないが,Kamburska et al.(2013)は 0.61,De Vaate

and Hulea(2000)は 0.625 と報告している.明星 1 号排泥 工で採取されたタイワンシジミは文献値より若干小さく 0.558 となった. 次に,形態を計測した生貝の体積と質量を計測した結果 をFig. 12 に示す.殻高,殻幅が殻長に比例したことから, 体積・質量は長さの次元である殻長の3 乗に比例すると考 えた.体積と質量それぞれ平均二乗誤差(RMSE)が最も小 さくなる係数を求め,そのR2値を付記した.それぞれ,殻 長の3 乗の近似曲線と高い相関を示した.質量については, 乾燥質量で計測した文献が多く,生貝質量で計測したため 文献値との比較はできなかった.質量と体積の結果をもと に,水に対する比重を求めた.質量と体積がともに殻長の 3 乗となる近似曲線と相関が高いため,比重は殻長によら ずほぼ等しく平均値1.37,標準偏差 0.190 となった.

5. 管内を移動するタイワンシジミの平均殻長試算

得られたタイワンシジミの比重を用いて掃流計算で国営 1 号幹線水路内におけるタイワンシジミの移動を検討した. 流れにおける砂の移動の指標としては,平滑面で広範な実 験を行ったShields の実験から得られた Shields 数が使用さ れることが多い.ただし,タイワンシジミは砂よりも低比 重で形状も扁平であるため,砂を対象としたShields 数だけ で二枚貝の移動を議論するには問題もある.しかし,二枚 貝の移動を流体力学的に分析する方法は十分に研究されて おらず,現在のところ最も信頼できる指標と言える(水産 庁,2008). 本研究では,4 章においてタイワインシジミの平均的な 比重1.37 を得ている.そこで,対象とする底面を砂ではな くFRPM 管の底部(滑面)と想定し,2 章に示した明星 1 号 排泥工での排泥操作日の平均流速から国営1 号幹線水路内 において,通水期間中に水平で滑らかな底部を移動するタ イワンシジミの平均殻長を以下の方法で計算した. 定常流におけるタイワンシジミの運動開始は,無次元の 壁面せん断応力である Shields 数 θ が無次元の限界せん断 応力θcrより大きくなった場合に起こるとする.このとき, Shields 数 θ は以下の式で与えられる. θ=τ0 /{(ρs-ρw)gD50} (2) ここで,τ0は壁面せん断応力(N/m2),ρsはタイワンシジ ミの密度(kg/m3),ρwは水の密度(kg/m3),g は重力加速度 (m/s2),D50はタイワンシジミの平均殻長(m)である.こ のとき,壁面せん断応力τ0は摩擦損失係数f と平均流速 U (m/s)を用いて以下のように表せる. τ0=f U2ρw/ 8 (3) 管路において摩擦損失係数 f は,マニングの粗度係数 n と管の直径d を用いて以下のように表される. Fig. 11 殻長-殻高関係および殻長-殻幅関係 Relationship between shell length and height, and between shell length and width of Asian clam

y = 0.845x R² = 0.995 y = 0.558x R² = 0.980 0 5 10 15 20 25 0 5 10 15 20 25 30 殻 高 ・殻幅 ( mm ) 殻長(mm) 殻高 殻幅 Fig. 12 殻長-質量,殻長-体積関係

Relationship between shell length and weight, and between shell length and volume of Asian clam

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 0 5 10 15 20 25 30 体積( cm 3) 質量 ( g) 殻長(mm) 質量 体積 y=0.000260x3 R2=0.981 y=0.000183x3 R2=0.968

(7)

f = 8 g n2/ ( d / 4 )1 / 3 4 ) 本研究では,水の密度を1,000kg/m3,平均流速U を排泥 操作日の国営1 号幹線水路内の平均流速(m/s),土地改良 事業計画設計基準設計「水路工」(農林水産省農村振興局, 2001)より,FRPM 管のマニングの粗度係数 n を 0.012 と し,(2)~(4)式を用いて,Shields 数 θ を求めた. 一方,無次元の限界せん断応力θcrは,Shields の実験結果 に比較的近い値となるSoulsby(1997)の簡便式を用いた. θcr =0.3/(1+1.2D*+0.055{1-exp(-0.02D*)} (5) ここで,D*は無次元粒径で以下の式で与えられる. D*=D 5 0/{(ρs/ρw-1)g/ν2}1 /3 (6) ここで,ν は水の動粘性係数で,本研究では 1.00×10-6 (m2/s)とした. (5)式で求められる θcrについて,タイワンシジミの平均 殻長D50を1mm から 30mm まで 1mm 毎に代入して計算し た.同様の平均殻長D50において明星1 号排泥工での排泥 操作日の平均流速のθ を(2)式から計算した.検討する平 均流速においてθ > θcrを満たす移動するタイワンシジミの 平均殻長D50の最大値を求めた. 国営1 号幹線水路の平均流速とその平均流速において移 動するタイワンシジミの平均殻長 D50の最大値を比較した グラフをFig. 13 に示す.移動するタイワンシジミの平均殻D50は,平均流速の関数であるため両者には高い相関が みられる.水平で滑らかな底部においては,最大通水量 4.5m3/s,平均流速 1.44m/s となる 8 月上旬に,平均殻長 D50=18mm のタイワンシジミまで移動できる結果となった. 2016 年 12 月 7 日の管内調査における排泥工で採取したタ イワンシジミが流れによって移動してきたタイワンシジミ と考えると,排泥工で採取したタイワンシジミの生貝3,751 個体のうち,殻長20mm 以上の個体は 19 個体と 0.5%であ った.一方,継手における殻長20mm 以上の生貝の個体数 割合は継手1 で 1.2%,継手 2 で 1.3%と排泥工と比較して 倍以上の割合となった.よって,国営1 号幹線水路の最大 流速1.44m/s では,殻長 20mm 以上に成長したタイワンシ ジミは流されにくく,継手などで生息し続けている可能性 が高いことが示唆される.また,流速が0.16m/s 以下となる 11 月 7 日以降は,流れによって移動するタイワンシジミの 平均殻長D50=0mm となった.11 月 7 日以降の排泥操作で は,殻長10mm 程度以下の小さめの生貝が 10 個体以下しか 排出されなかった.移動するタイワンシジミの平均殻長 D50=0mm となる時期は,排泥工まで流れによって移動する タイワンシジミが少なく,排泥操作によるタイワンシジミ の排出効果が低くなる時期といえる. 本研究では,Shields 数を用いてタイワンシジミの生貝の 移動傾向を試算したが,今後,水理実験等を行うことで流 れによるタイワンシジミの移動特性がより明らかとなると 考えられる.また,パイプラインにおけるタイワンシジミ の被害は死貝の殻もその要因となることから,タイワンシ ジミの殻の移動特性の研究も検討される必要がある.

6. まとめ

本研究では,宮川用水土地改良区が行っている明星1 号 排泥工の排泥操作の記録より,管内のタイワンシジミの移 動状況を検討した.その結果,タイワンシジミは流速が早 くなる代掻き,田植え期と中干し後の時期に流れに乗って 移動すると考えられる.排泥操作によるタイワンシジミの 排出は,早い流速のときにその効果が高くなるといえる. また, 管内調査より,タイワンシジミは継手部の窪みな どに堆積した砂を生息の場としており,流速が遅くなる管 屈曲部では壁面のコケの中でもタイワンシジミの生息が確 認できた.管内調査で採取したタイワンシジミの形態分析 より,12 月のパイプライン内の継手部に存在する 90%以上 のタイワンシジミが生きていた.継手部では6,000 個体/m2 程度の高密度で生息していた.また,継手部ではタイワン シジミが複数年度生息している可能性が高い.さらに,国 営1 号幹線水路内のタイワンシジミの殻長-殻高関係,殻 長-殻幅関係を明らかにし,生貝の比重が殻長によらず 1.37 程度であることが分かった. Shields 数による流れによって移動するタイワンシジミの 殻長の試算を行った結果,国営1 号幹線水路では最大流速 のとき,平均殻長D50=18mm のタイワンシジミまで移動で きることが分かった.このことから,殻長20mm を超える タイワンシジミは最大流速の時期も流れによって移動しに くいと考えられる.流れによって移動するタイワンシジミ の平均殻長がD50=0mm となる時期は,排泥操作によるタイ ワンシジミの排出効果が低くなる時期といえる. 今後,開水路および模型パイプラインなどの水理実験に Fig. 13 調査期間における流れによって移動するタイワンシ ジミの平均殻長

Average shell length of Asian clams dislodged by water flow during the study period

0.00 0.40 0.80 1.20 1.60 0 5 10 15 20 平均流速( ms -1) 移動 タ イワ ン シ ジ ミ の 平均 殻長 (mm ) 4/ 1 5/ 6 6/ 2 7/ 1 8/ 5 9/2 10/7 11/7 12 /1 6 1/ 5 2/ 3 平均殻長 平均流速

(8)

より,排泥操作によるタイワンシジミの排出領域,生貝, 死貝の移動特性などを明らかにしていくことで,給水栓に おける閉塞問題の解決につながると考えられる. 謝辞:本研究は,宮川用水土地改良区に多大なご協力をいただきま した. 引用文献

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Inhabiting Situation of the Asian Clam (Corbicula fluminea)

in the No.1 Main Channel of Miyagawa Irrigation Network

OKAJIMA Kenji*, NISHIMURA Motoki**, NAGAOKA Seiya*, ITO Ryoei* and KONDO Masaaki*

* Graduate School of Bioresources, Mie University, 1577 Machiya-cho, Kurima, Tsu, Mie 514-8507, JAPAN ** Fuculty of Bioresources, Mie University, 1577 Machiya-cho, Kurima, Tsu, Mie 514-8507, JAPAN

Abstract

The terminal pipelines of the Miyagawa Irrigation Network in Mie prefecture are increasingly being clogged due to the accumulation of Asian clams. To counteract this clogging, the Miyagawa Land Improvement District conducts sludge discharge operations at 35 points along the pipeline. In this study, we examined the transport of Asian clams using sludge discharge data from Myojo Sludge Discharge Point No.1, located on Main Channel No. 1. Asian clams were dislodged during times of high water velocity, such as during the rice planting season and the period after the mid-summer drainage. In addition, our survey of pipelines with an inner diameter of 2,000 mm suggests that Asian clams inhabit sediments that accumulate in the notch that occurs where a pipe joins a pipe fitting. According to our study of Asian clams collected in such notches during in-pipe surveys in December 2016, more than 90% of the Asian clams occurred in high-density aggregations of approximately 6,000 individuals m–2. In addition, our numerical calculations of bed load transport indicate that there is a high probability that Asian clams with a shell length of 20 mm or greater may inhabit a pipe fitting for multiple years.

Fig. 4  明星 1 号排泥工タイワンシジミ排出状況図  Situation of Asian clam discharge at Myojyo No.1 blow off
Fig. 7  貝の長さ計測位置  Measurement positions of lengths of Asian clam

参照

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