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第3章 ブラジル産トウモロコシの拡大過程

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著者 清水 純一

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

シリーズタイトル 研究双書 

シリーズ番号 596

雑誌名 変容する途上国のトウモロコシ需給 市場の統合と

分離 

ページ 97‑132

発行年 2011

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00042264

(2)

ブラジル産トウモロコシの拡大過程 

清 水 純 一

はじめに 

 ブラジルは,現在,世界第

3

位のトウモロコシ輸出国である。しかし,ブ ラジルが恒常的にトウモロコシを輸出するようになったのは,比較的最近の

2001年以降である。それ以前は,ブラジルのトウモロコシ需要は,国内家畜

の飼料用に限定され,輸出産品になるとは考えられていなかった。それが,

なぜ輸出国に転換したのか。今後とも安定的に輸出できるだけの余力がある のか。これを需要と供給の両面から検討するのが本稿の課題である

 本稿の構成であるが,最初にブラジル農業におけるトウモロコシの位置づ けをし,全体としてのトウモロコシ需給を概観する。次に,この背景にある 生産と消費の要因を個々に分析する。とくに生産に関しては,増産の要因を 収穫面積と単収の貢献に分けて分析する。消費の面では,国内トウモロコシ 消費の約

8

割を占める鶏肉と豚肉の産業の動向に焦点を絞ることにする。最 後に,今後の輸出余力について,ブラジル農務省(Ministério da Agricultura, Pecuária e Abastecimento: MAPA)の予測結果も紹介しつつ考察した後,農地拡 大の展望,および物流インフラの整備状況など,生産や輸出における制約条 件を検討する。

(3)

1

節 ブラジル農業の概況とトウモロコシ

1 .ブラジル経済に占める農業の位置

 ブラジルでは農業と畜産と合わせて「農牧業」(agropecuária)と呼んでいる。

2009年に農牧業自体が

GDPに占める割合は6.17%に過ぎなかった

。しかし,

これに農産加工業,流通業,投入財産業を加えた,いわゆるアグリビジネス 全体でみると,GDPの23.1%に達し,ブラジル経済にとって農牧業が大き な比重を占めていることがわかる。

 これを貿易でみた場合,農林水産物貿易の貢献度はさらに大きくなる。最 近でみると,2003〜2010年の

8

年間の貿易収支は一貫して黒字である。しか し,貿易収支を農林水産物と非農林水産物に分けてみると,非農林水産物の 貿易収支が黒字だったのは2005年と2006年の

2

年だけで,残りの年は赤字で ある。つまり,非農林水産物貿易の赤字を農林水産物貿易の黒字で補填して,

全体の貿易収支が黒字になるという構造になっている

。このように,GDP

に占める割合以上に農牧業はブラジル経済にとって大きな意味をもっている。

2 .ブラジル農業とトウモロコシ

 まず,ブラジルの穀物(grão)生産における生産量と作付面積の現状を食 料供給公社(Comapanhia Nacional de Abastecimento: Conab)の統計で見てみよ う

。穀物の作付面積は2009/10年度で延べ約4739万ヘクタールある。「延べ」

というのは,フェジョン豆は年

3

回,トウモロコシと落花生は年

2

回作付け されるためである。構成をみると,大豆が2347万ヘクタールで全体の49.5%,

トウモロコシが1297万ヘクタールで27.4%とこの

2

品目で全体の

4

分の

3

以 上を占めている。それ以外は構成比がかなり下がり,フェジョン豆361万ヘ クタール(7.6%,構成比,以下同様)

,コメ276万ヘクタール

(5.8%)

,小麦

(4)

243万ヘクタール

(5.1%)という順になっている。

 穀物生産量合計は

1

億4920万トンである。作付面積同様,生産量でも大豆 とトウモロコシの割合が大きく,大豆が6869万トン(46%)

,トウモロコシ

が5597万トン(37.5%)とこの両者で全生産量の83.5%を占めている。次に 多いのがコメであり,1166万トン(籾ベース)の生産量(7.8%)がある。コ メはブラジル人の主食といってもよく,アジアを除けば最大のコメ生産国で ある。

 このように,トウモロコシは,穀物の作付面積と生産量に占める割合では,

大豆に次ぐ地位を占めている。次に,穀物だけではなく,畜産物などその他 の品目を加えた,農林水産物貿易全体のなかで位置づけてみることにする。

 2010年の農林水産物貿易黒字額615億ドルの構成をみると,黒字に最も貢 献しているのは,大豆関連製品(大豆,大豆ミール,大豆油)の165億ドルで あり,全黒字額の26.7%を占めている

。大豆関連製品の黒字額のうち,大

豆が66%で残りが加工品である。次いで砂糖・アルコールの127億ドル(20.6

%)

,食肉の120億ドル

(19.5%)である。トウモロコシ関連製品(トウモロコ シ,コーンミール,コーン油)は17億ドルで,全体の2.8%を占めるに過ぎない。

大豆と異なり,トウモロコシ関連製品の黒字額の98%をトウモロコシが占め,

加工品の割合は極めて小さい。このように,農林水産物貿易の黒字額に限っ ていえば,トウモロコシの比重はまだ小さいことがわかる。

2

節 トウモロコシ需給と貿易の推移

 長期的なトウモロコシの国内生産と消費の関係を図

1

でみると,21世紀に 入るまでは生産と消費がほぼ均衡していたことがわかる。

 1990年代前半までは,生産が急拡大したが,養鶏・養豚業界の飼料用需要 も拡大して,生産の増加を吸収した。さらに,1990年代後半には,国内消費 量が生産量を上回り,100万トン以上の輸入をしている。

(5)

 ところが,2001年以降,生産量が国内消費量を上回る年が続くようになり,

需給関係に基本的な変化が起きている。

 この点をもう少し詳しくみるため,1999/2000年度以降の需給状況を表

1

に示した。これからあきらかなように,輸出は2000年代に入ってから急増し た。1999/2000年度にはわずか7000トンであったものが,翌年の2000/01年度 には約563万トンへと急拡大している。この年に急に輸出が拡大した背景に は,ブラジルにとって有利となる条件が

3

つ重なったことがある。

 第

1

に,2000/01年度の生産量は4229万トンであり,1999/2000年度の3164 万トンから1065万トン(対前年比34%)増加する豊作であった。この時,収 穫面積は1276万ヘクタールから1297万ヘクタールへと21万ヘクタール(1.6

%)しか増加しなかったのに対し,ヘクタールあたりの平均単収は2.48トン から3.26トンへ31.5%上昇したことが大幅な増産につながった。

 ところが,消費量は3448万トンから3614万トンへと166万トン(4.8%)の 増加に留まったため,国内で供給過剰になった。その結果,国内価格が輸出 価格を下回り,トウモロコシを輸出する誘因が高まった。

図1 トウモロコシの生産と消費の推移

(出所)USDA, Foreign Agricultural Service, PSD Online。

0 10 20 30 40 50 60 70

1960/61 1962/63 1964/65 1966/67 1968/69 1970/71 1972/73 1974/75 1976/77 1978/79 1980/81 1982/83 1984/85 1986/87 1988/89 1990/91 1992/93 1994/95 1996/97 1998/99 2000/01 2002/03 2004/05 2006/07 2008/09 2010/11

食用その他の消費量 飼料用消費量 生産量 (100万トン)

(6)

 第

2

に,ブラジルの通貨レアル(R$)が米国ドル(US$)に対して切り下 げられたことがある。レアルは1999年

1

月に変動相場制に移行した。その結 果,変動相場制へ移行する前年(1998年)の対ドルレート(R$/US$)平均が

1.16であったのに対し,2001年の平均レートは2.35と51%も切り下げられて

いたことが輸出に有利に働いた

 第

3

に,2000年

9

月に,米国で食用が認められていない遺伝子組み換えト ウモロコシであるスターリンクの混入問題が発生したことがある。当時,ブ ラジルは遺伝子組み換えトウモロコシの作付けを行っていなかったため,世 界からブラジルに対して,スターリンク・フリーのトウモロコシ需要が高ま った。この時,日本も歴史上初めてブラジルからトウモロコシを輸入してい る。

 このように,この年度の輸出はいくつかの幸運な条件が重なったことや,

国内需要の伸びが大きく,大豆と作付地が競合することにより生産量の変動 があるため,当時専門家でもブラジルの輸出は一時的なものとみなしていた

 実際には,2001/02年度以降も輸出は継続し,かつ,一貫して輸入量を上

表1 トウモロコシ需給表

(1,000トン)

年度 期首在庫 生産 輸入 供給 消費 輸出 期末在庫 在庫率(%) 自給率

(%)

1999/00  4,666 31,641 1,771 38,078 34,480    7  3,591 38.0  91.8 2000/01  3,591 42,289  624 46,504 36,136  5,629  4,740 17.4 117.0 2001/02  4,740 35,281  345 40,365 36,410  2,747  1,208  7.3  96.9 2002/03  1,208 47,411  801 49,420 37,300  3,566  8,554 66.3 127.1 2003/04  8,554 42,129  331 51,013 38,180  5,031  7,802  3.9 110.3 2004/05  7,802 35,007  597 43,405 39,200  1,070  3,135  7.7  89.3 2005/06  3,135 42,515  956 46,606 39,830  3,938  2,839 30.5 106.7 2006/07  2,839 51,370 1,096 55,304 41,830 10,934  2,541 38.6 122.8 2007/08  2,541 58,652  808 62,001 44,288  6,400 11,313 31.8 132.4 2008/09 11,313 51,004 1,133 63,450 44,279  7,765 11,405 10.0 115.2 2009/10 11,405 55,968  500 67,873 46,200 10,500 11,173  4.4 121.1 2010/11 11,173 52,723  400 64,296 47,000  9,000  8,296  3.6 112.2

(出所)Conab資料より筆者作成。

(注)2010/11年度はConabの予測。

(7)

回っている。しかし,輸出量そのものは変動している。また,2001/02年度 と2004/05年度は自給率が100%を下回っており,在庫を取り崩している。た だし,2005/06年度以降は自給率が常に100%を上回っており,需給でみると 安定した輸出余力が維持されている。大豆との作付競合も,後に述べるよう に,大豆の裏作としての第

2

作の生産量の拡大により解決された。以上の点 から,ブラジルは2005/06年度以降,トウモロコシの安定的な輸出国に転換 したといっても良いであろう。販路に輸出という選択肢が加わった結果,こ れ以降,国内価格が,対ドル為替レートとシカゴ商品取引所(Chicago Board

of Trade: CBOT)の価格変動の影響を受けるようになった。

 それでは,どのような地域・国と貿易しているのか,直近

5

年間について 貿易相手国を見てみることにする。

 表

2

は主要な輸出先を示したものである。輸出先の順位は年によって変動 があるが,地域別にみると主要な輸出先は中東,ヨーロッパ,東南アジアで ある。中東ではイラン向けが最も多いものの,近年サウジアラビアとモロッ コへの輸出が増加しているのが注目される。ヨーロッパではスペイン向けが 多く,東南アジアでは韓国向けが中心であったが,2009〜2010年には日本に も相当量輸出されている。

 ところで,ブラジルは21世紀にトウモロコシの輸出国に転換したと述べた が,輸出をしているのと同時に,1990年代同様,輸入も行っている。例えば,

2010年には1082万トンを輸出するのと同時に46万トンを輸入している。その

うち44万トンがパラグアイからの輸入である。

 ブラジルには輸出余力があるのにもかかわらず,パラグアイから輸入もし ているのは,主として,南部における飼料需要を満たすためである。南部は ブラジル有数のトウモロコシ生産地域であるが,養鶏・養豚産業が集中して 立地しているため,トウモロコシの端境期には,地域内でトウモロコシの供 給が不足する場合がある。その場合,供給過剰地域であり,ブラジル第

2

の 生産地である中西部から輸送した場合,後述するように,穀物の輸送を主に トラック輸送に頼っているため,輸送費用が高くついてしまう。したがって,

(8)

表2 トウモロコシ輸出相手国 (トン 地 域国 名20062007200820092010累計累計構成比 (%) 中東イラン1,770,3372,723,790468,9631,767,3871,490,6448,221,121 20.60 サウジアラビア11,49394,741345,910651,035815,6501,918,8294.81 モロッコ00172,947417,867958,5941,549,4083.88 ヨーロッパスペイン773,8842,920,532995,432210,495819,3565,719,699 14.33 オランダ91,159679,218814,72232,602324,4861,942,1874.87 イタリア9,000557,767321,4952,00014,501904,7632.27 ポルトガル90,741766,849399,77515405,3971,662,7774.17 東南アジア韓国799,606660,079319,229582,977190,6042,552,4956.40 日本2154,14214269,438606,623930,2382.33 北朝鮮110,84717,500015,0000143,3470.36 南米チリ9,990059,530108,7550178,2750.45 パラグアイ6,45810,34812,3764,5539,58643,3210.11 アルゼンチン1757832,7811,8033,0348,5760.02 北米米国1,1111,7533,1702,4163,06311,5130.03 その274,6722,445,9522,516,3183,446,1185,177,36313,860,423 34.73 合 計3,938,00110,933,4546,432,6627,781,89910,818,90139,904,917100.00 (出所) Conab資料より筆者作成

(9)

中西部から運ぶよりも南部地方の隣国パラグアイから輸入したほうが価格が 安くなるためである。

3

節 トウモロコシ生産の拡大過程

1 .面積と単収の貢献

 ブラジルの国土面積は851万平方キロメートルで世界第

5

位,日本の約23 倍もあり,南米大陸の47%を占めている。当然営まれている農業も地域ごと に多様である。

 ここで,後の説明で必要となる地域区分を説明しておくことにする。ブラ ジルは連邦共和制のもと,図

2

のように26の州と首都ブラジリアがある連邦 直轄区から構成されている。ブラジルではさらにこれを大きく

5

地域に分け,

各種統計もこの地域別に集計される場合が多い。しかし,これは行政上の区 分を意味しているものではない。

 ブラジルのトウモロコシ生産には日本でいう二毛作における表作にあたる

「第 1

作」(primeira safra)(あるいは「夏作」[safra de verão])と呼ばれるものと,

裏作にあたる「第

2

作」(segunda safra)(あるいは「冬作」[safra de inverno])

がある。

 第

1

作は

8 〜12月に作付けされ,収穫は翌年の 1 〜 6

月に行われる。これ は主として南部で作付けされ,大豆作の競合作目になる。第

2

作は

1 〜 3

月 上旬に作付けされ,その年の

7

月下旬〜

9

月に収穫される。こちらは中西部 が中心で早生の大豆の裏作として作付けされる

 第

1

作は量の違いはあるが,すべての州で生産されている。これに対して 第

2

作は比較的最近生産量が増えてきたものであり,生産量統計に表れてく るのは10の州・連邦直轄区に過ぎず,第

1

作に比べて地域的な偏りがある。

 第

1

作,第

2

作合計して最も生産量が多い南部は,アルゼンチン,パラグ

(10)

アイ,ウルグアイに接しており,気候も温暖でトウモロコシ以外でも大豆,

肉牛など,現在ブラジル農業の基幹をなしている作目が最初に展開された歴 史の古い産地である。

 これに対して,第

2

位の生産量を誇る中西部は,1970年代以降開発が進ん だ新興産地であり,現在ブラジルで農業生産が最も活発に展開されている地 域である。中西部には図

2

の網がけ部分が示す,セラード(cerrado)と呼ば れるアフリカのサバンナに似た植生が広範囲に分布している。セラードは総 面積が約

2

億ヘクタールあるが,土壌酸性度が高く,カリウムとリン成分が 不足しているため,過去には不毛の土地とみなされていた。しかし,土地が

図2 セラードの分布と穀物の搬出経路

(出所)筆者作成。

(注)(1)網掛け部分がセラード。

(2)MTなどはブラジルで使用されている各州の公式な略称。

(3)実線の矢印がトラック,点線の矢印が河川(アマゾン川)による搬出経路。

(11)

平坦で,土壌の物理性が良く,雨量も年間1400〜1600ミリメートルと比較的 多いため,石灰などの投入による土壌改良さえ行えば,極めて農業に適して いることがあきらかになり,1970年代以降急速に農業開発が進み,ブラジル 最大の農業地帯に変貌した

 南東部ではサンパウロ州(SP)と中西部寄りの部分にセラードが分布して いるミナスジェライス州(MG)でトウモロコシが生産されている。

 北部にはアマゾン熱帯雨林,北東部には国土の10%弱を占めるカーチンガ

(caatinga)と呼ばれる有刺灌木林が半乾燥地帯に広がっているため,いずれ もトウモロコシ生産に適した地域ではない。

 以上のように,トウモロコシ生産で重要なのは南部,中西部,南東部であ り,この

3

地域で全生産量の90%を占める(2009/10年度)

 次に,第

1

作と第

2

作別の統計が得られる最初の年度である1979/80年度 から,直近の2009/10年度までの30年間のブラジルにおけるトウモロコシ生 産拡大の過程をConabの統計を使って分析してみることにする。

 まず,生産量は図

3

のように,30年の分析期間に1944万トンから5597万ト ンへと2.9倍に増加している。1990年代以前は生産量のほとんどが第

1

作に よるものであったが,1990年代後半から第

2

作の生産量が伸び始めた。近年 は第

1

作の生産量が伸び悩んでいるのに対し,第

2

作の生産量が増加するこ とによって全体の生産量が増加している。これにともない,当初は

1 %にも

満たず,1990年代後半にやっと10%台になった全生産量に占める第

2

作の割 合は39%にまで達しており,「裏作」の域を超えた存在になっている。

 生産量がこのように大幅な増加を示しているのに対し,図

4

のように収穫 面積にはほとんど変化がなく,同期間に1167万ヘクタールから1297万ヘクタ ールへと11%増加したに過ぎない。しかも第

1

作の面積は33%減少しており,

この部分を第

2

作の増加(36%増)で補う形になっている。この結果,第

2

作の作付面積割合は40%に達している。

 したがって,生産量の増加は単収の上昇によってもたらされたと考えられ る。図

5

は全体の平均,第

1

作,第

2

作別の単収の変化を示したものである。

(12)

図3 トウモロコシ生産量の推移

(出所)Conab資料より筆者作成。

0 10 20 30 40 50 60 70

1979/80 1981/82 1983/84 1985/86 1987/88 1989/90 1991/92 1993/94 1995/96 1997/98 1999/00 2001/02 2003/04 2005/06 2007/08 2009/10

第 2 作 第 1 作 (100万トン)

図4 トウモロコシ収穫面積の推移

(出所)Conab資料より筆者作成。

0 2 4 6 8 10 12 14 16

1979/80 1981/82 1983/84 1985/86 1987/88 1989/90 1991/92 1993/94 1995/96 1997/98 1999/00 2001/02 2003/04 2005/06 2007/08 2009/10

第 2 作 第 1 作 (100万ha)

(13)

 いずれも上昇しているが,1990年代初頭までは第

2

作の生産が少なく,第

1

作の生産量に占める割合が95%以上であったため,全体の平均と第

1

作の 単収のグラフはほぼ重なっている。それ以降は第

2

作の収穫面積と単収が急 激に上昇した。

 それぞれの単収の伸び率を計算した結果では,1979/80〜2008/09年度の間 の平均単収の伸び率は3.16%である

。また,第 1

作が3.27%なのに対し,

2

作は6.66%と第

1

作よりも高い伸び率を示している。この結果,ヘクタ ールあたりの単収は1979/80年度は第

1

1.68トン,第 2

0.54トンと 3

倍 以上あった格差が,2009/10年度には第

1

4.41トン,第 2

4.18トンとほ

ぼ同水準にまで縮小している。

 単収の増加した要因として,農牧研究公社トウモロコシ・ソルガム研究所

(Embrapa Milho e Sorgo)は,単収の高い単交雑のハイブリッド種子[用語解

図5 トウモロコシ単収の推移

(出所)Conab資料より筆者作成。

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000

1979/80 1981/82 1983/84 1985/86 1987/88 1989/90 1991/92 1993/94 1995/96 1997/98 1999/00 2001/02 2003/04 2005/06 2007/08 2009/10

第 1 作 第 2 作 平均 (kg/ha)

(14)

説]の普及,肥料・農薬投入量の増加

,栽植密度の上昇,不耕起栽培

[用 語解説]の普及や輪作による土壌改良の効果を指摘している。種子に関して 敷衍すれば,2000年以降,販売された種子のうち,ハイブリッド種子(単交 雑,複交雑,三系交雑)[用語解説]の割合は

9

割前後で推移している。しかし,

内訳をみると,2000/01年度には全体の30%であった単交雑の割合が2010/11 年度には49%に上昇している。また,種子販売会社やブラジル種子協会

(Abrasem)が,農務省が気候や土壌条件によりゾーニングした地域別に,最 適な種子の販売を行うようになった点も高く評価されている。

 ただし,単収の伸び率が高いといっても,平均単収の水準自体は2009/10 年度でヘクタールあたり4.32トンであり,8.44トンの隣国アルゼンチンや

10.34トンの米国とは大きな格差があり,ブラジル産トウモロコシの価格競

争力を低下させている

 ブラジル産トウモロコシの平均単収水準が低い理由のひとつとして,生産 量に占める販売量の割合が低いことが考えられる。ブラジル地理統計院(In- stituto Brasileiro de Geografia e Estatística: IBGE)の実施した,2006年農牧業セ ンサスの結果によれば,この割合は69.9%であり,大豆の97.6%と比較して,

商品化率が低い

。生産されたトウモロコシをすべて販売している農場の平

均単収が4.34トンであるのに対し,主として自家消費用として生産している 農場の平均単収は2.93トンと,32.5%も生産性が低い。販売を専門とする 農場の単収がアルゼンチンや米国よりも低いことに変わりはないが,自家消 費用の生産が主の農場は,販売を目的とする農場に比べ,単収を上昇させる 誘因に乏しいので,全体の平均値をいっそう引き下げている。

 また,害虫による被害が大きい点も単収の低下要因のひとつである。これ に対する有力な対応策が,害虫抵抗性の遺伝子組み換え種子(GM種子)で ある。しかし,ブラジルでは,遺伝子組み換え作物に関する規制の骨格を形 成する,バイオセキュリティ法の制定が2005年と遅れたため,トウモロコシ のGM種子が解禁されたのは2008/09年度であった。序章にあるように,米 国では1996年から商業的生産が始まっているので,10年以上のタイムラグが

(15)

単収水準の差に影響している。ただし,GM種子が解禁された翌年度の

2009/10年度にはすでに第 1

作の35%,第

2

作の42%がGM種子になってお り,今後ともその割合は上昇するものと思われ,今後の単収増加に寄与する ものと期待できる。

 では,収穫面積と単収のいずれが生産量拡大に貢献したのであろうか。表

3

は生産量増加の要因を単収と面積,さらに第

1

作と第

2

作に分けて寄与率 を計算したものである

。期間は1989/90〜2009/10年度の20年間である。こ

の計算結果によれば,全体としての収穫面積が減っているために面積要因が マイナス5.5%となり,単収要因が105.5%とそれを補っている。

 第

1

作と第

2

作別の生産量では第

1

作の寄与率が36.6%なのに対し,第

2

作が63.4%と近年生産量が増加している第

2

作の貢献が大きくなっている。

 さらに,第

1

作,第

2

作別に単収要因と面積要因を見てみると,第

1

作の 場合,収穫面積が減少しているため面積要因の寄与率はマイナスであり,単 収の大幅な上昇によって増加している。これに対し,第

2

作の場合は単収と 面積双方がプラスに貢献しており,面積の寄与率が単収よりも若干上回って いる。

 今まで述べてきたように,第

1

作中心の南部と第

2

作が中心の中西部とい うように,ブラジルには

2

つの季節によって異なるトウモロコシ産地が形成 されつつある。

 第

2

作が面積,単収とも増加していることを反映して,その主産地である 中西部の全体の生産量に占めるシェアも上昇している。1979/80年度には11

%であった中西部のシェアは次第に上昇し,1990年代半ば以降20%台になり,

表3 生産量増加の要因分析

(%)

1 2 合 計

単収要因  77.4 28.1 105.5

面積要因 ‑40.8 35.3  ‑5.5

合 計  36.6 63.4 100.0

(出所)Conab資料により筆者計算。

(16)

2009/10年度には30%に達している。南部のシェアは同時期に55%から41%

へと下落している。

 第

1

作と第

2

作の違いを反映して,南部と中西部では作付けのインセンテ ィブが異なるものになっている。南部では米国のコーンベルト地帯の農家の ように,前年度の大豆とトウモロコシの相対価格を考慮して次年度の作付け を決定している。つまり,土地利用に関して大豆とトウモロコシは代替関係 にある。これに対して,中西部では連作障害を避ける意味で,マメ科である 早生の大豆の収穫後にイネ科のトウモロコシを植えている。したがって,大 豆との相対価格は南部ほど重視されていない。むしろ,大豆の作付けが増加 するとトウモロコシの作付けも増加するという補完関係がある。以上のこと から,この

2

つの地域の農家行動は分けて考える必要がある。

2 .価格支持政策の効果

 ここまでは,生産量増加の要因として,単収と収穫面積に着目してきたが,

これ以外に生産量の維持・拡大に貢献した大きな要因として政府の価格支持 政策がある。

 ブラジルには1945年に発足した,歴史が古い最低価格保証制度(Política de Garantia de Preços Mínimos: PGPM)がある。ただし,この制度が本格的に活用 され始めたのは軍事政権下(1964〜1985年)においてである。PGPMは年を 経るにつれてさまざまな政策手段が開発された。しかし,基本は政府が定め た最低保証価格を市場価格が下回った場合に,政府が最低保証価格水準を農 家に対して保証するということにつきる。

 最低保証価格は作目別,地域別に定められている。2009/10年度にこの制 度が適用された作目は33あり,それぞれ夏作,夏作種子用,冬作,冬作種子 用,採取農産物に分類され,さらに地域ごとに分かれた価格が毎年定められ ている。

 トウモロコシに現在適用されているPGPMのおもな制度としては,連邦

(17)

政府買上制度(AGF)

,民間業者生産物購入価格プレミアム

(PEP)

,生産者

売渡価格プレミアム(PEPRO)

,政府買い取りオプション契約

(COV)があ る

 AGFは市場価格が最低保証価格を下回ったときに,政府が農家や農協か ら生産物を最低保証価格で直接買上げる制度である。PEPとPEPROはとも に一種の不足払い制度であり,Conabが市場価格と最低保証価格との差(プ レミアム)を支給する制度である。PEPの場合は政府がプレミアムを販売業 者に支払うのに対し,PEPROは農家に直接支払う点が異なる。COVは農家 がプレミアムを払って政府に売る権利(プットオプション)を獲得する制度 である。この権利は当然ながら行使するかどうかは農家の自由である。

 これらの制度は,国内価格が低迷した2009〜2010年に積極的に発動された。

この時期に国内価格が低迷した背景には,対外的要因として,2008年

8

月に ピークに達したシカゴ価格が,ほぼ価格高騰を開始する以前の水準にまで低 下してきたことと,対ドル為替レートでレアル高が進行したことが同時に起 こったことが挙げられる

。これに加えて,中西部では豊作による供給過剰

という問題が生じた。以下,中西部と南部,それぞれ最大の生産州である,

マットグロッソ州(MT)とパラナ州(PR)における月別の平均市場価格と 最低保証価格との関係を見てみよう

 まず,マットグロッソ州の平均市場価格は,2009年

2

月以降,州の最低保 証価格を下回るようになった。これは,先に述べた対外的要因のほかに,

2009年産が722万トンと,前年に続き 2

年連続700万トン台という豊作であっ

たためである。この結果,2010年

2

月には州内の市場価格が60キログラムあ たり7.49レアルとなり,当時の最低保証価格13.98レアルの53%の水準にまで 下落した。しかも,2010年産はそれを上回る820万トンの豊作であったため,

州内で供給過剰となり,結局,州内の市場価格は2010年の11月まで,21カ月 間最低保証価格を下回った。

 パラナ州の場合は,消費地までの距離が近いことを反映して,平均市場価 格と最低保証価格はともにマットグロッソ州よりも高い。パラナ州では,

(18)

2009年 7

月から2010年10月まで15カ月間最低保証価格を下回った。しかし,

その期間はマットグロッソ州より短い。また,市場価格が最低価格と最も乖 離したのは2010年

4

月の13.82レアルで最低保証価格17.46レアルの79%水準 であり,マットグロッソ州より乖離率も小さい。

 このように,市場価格が最低保証価格を長期間下回ったため,PGPMの 諸政策手段が発動された。図

6

のように,価格が低迷した2008/09年度と

2009/10年度産のトウモロコシに関しては,

価格支持政策の対象数量が増加し,

生産量に占める対象数量割合は2007/08年度の4.9%から2008/09年度は20%台 へ急上昇した。政策手段としてはPEPが多く,2009/10年度の対象数量1209 万トンのうち1105万トンと

9

割以上を占める。

 とくに第

2

作の中心地である中西部は消費地からの距離が遠いので輸送費 が高く,農家の受取価格は南部よりも低くなるため,PGPMの対象となり やすい。

図6 価格支持対象数量の推移

(出所)ブラジル農務省,Sumário Exectivo Milho(2010年10月)より筆者作成。

0 10 20 30 40 50 60

2005/06 2006/07 2007/08 2008/09 2009/10 0 5 10 15 20 25 30

生産量 価格支持対象量 価格支持対象割合(右軸)

(100万トン) (%)

(19)

 実際,2010年のPEPの対象となったトウモロコシを産地別にみると,中 西部のマットグロッソ州が62%,ゴイアス州(GO)

・連邦直轄区

(DF)が13

%,マットグロッソドスル州

(MS)が6

%と合計で81%を占めている。つ

まり,価格支持対象量の74%が中西部を対象にしていることになる

 このPGPMの存在が,中西部では第

2

作の生産を下支えする効果を発揮 している。例えば,中西部の作付面積は,2009年の価格低下を受けて,その 年の秋に作付けする2009/10年度第

1

作の面積は2008/09年度に比較して減少 した。しかし,翌年の2010年初頭に作付けする,第

2

作の面積増加分が第

1

作の減少を上回り,結果として作付面積合計が増加している。この傾向は

2010/11年度も継続している。2010年も価格低下が継続したにもかかわらず,

2010/11年度の第 1

作の作付面積はさらに減少し,逆に第

2

作の面積は増加

している。南部でも2009/10年度に第

2

作の作付面積が減少した以外は同様 の傾向がみられる。

 以上のように,第

1

作の場合は,価格の低下が土地利用で競合する大豆へ の作付けシフトにつながるのに対して,第

2

作の場合は,政府の価格支持政 策により,価格の低下が直接,作付面積の減少にはつながらない。

4

節 トウモロコシ需要の推移

1 .国内消費量の構成

 表

4

は近年のトウモロコシ国内消費量の部門別推移を記したものである。

2009/10年度は予測値なので,参考にとどめ,2003/04〜2008/09年度の 5

年間 の推移を見てみることにする。まず,国内消費量の合計は,この

5

年間で

3951万トンから4373万トンへと11%増加した。次に,部門別の伸び率をみる

と,家畜飼料用が38%と最も高く,合計の伸び率を大きく上回っている。さ らに,家畜飼料のなかでは,養豚が50%,養鶏が40%といずれも高い伸び率

(20)

なのに対し,養牛は26%と相対的に低い伸び率になっている。

 家畜飼料用以外では,工業用も14%と合計の伸び率を若干上回っている。

これに対して,食用と減耗量・種子用は50%以上の減少を示している。

 この結果,家畜飼料用が全体に占める割合は,2003/04年度の69%から,

次第に上昇し,2005/06年度以降は86%以上で推移している。これから,畜 産業界の動向がトウモロコシ需要を考えるうえで重要であることがわかる。

 工業用の割合は,この期間,10〜11%で推移している。なお,この「工業 用」にはバイオエタノールの原料としての消費量は含まれていない。ブラジ ルの場合,米国と異なり,バイオエタノールの原料はすべてサトウキビであ り,トウモロコシは使用されていない。そのため,バイオ燃料の需要動向は トウモロコシの需給に影響しない。

 家畜飼料用と工業用以外は,合計しても,2005/06年度以降は

3 %未満で

推移しており,全体のトウモロコシ消費量に影響を与えるものではない。

 次に,飼料用トウモロコシの需要構成を,さらに細かく部門別にみたもの が表

5

である。2009年の場合,最大の消費部門はブロイラーであり,飼料用 トウモロコシ全消費量3537万トンの50%を占めている。次が養豚の29%であ り,ブロイラーと合わせて全消費量の約

8

割を占めている。これに対し,肉

表4 トウモロコシ国内消費量の内訳

(1,000トン)

2003/04 2004/05 2005/06 2006/07 2007/08 2008/09 2009/10 家畜飼料

養鶏 15,427 16,162 20,022 20,846 21,655 21,631 22,994 養豚 8,471 8,852 11,097 12,429 12,972 12,668 13,169 養牛 1,911 2,198 2,479 2,374 2,427 2,406 2,414

その他 1,550 1,581 660 673 1,081 1,081 1,096

飼料計 27,359 28,793 34,258 36,322 38,135 37,786 39,673

工業用 4,152 4,256 4,159 4,369 4,888 4,728 4,812

食用 1,530 1,568 700 705 760 756 756

減耗量・種子用 1,660 1,429 310 432 476 458 453

その他 4,809 4,132

合計 39,510 40,178 39,427 41,828 44,259 43,728 45,694

(出所)abiMILHO(ブラジルトウモロコシ工業協会)。

(注)2009/10年度は予測値。

(21)

表5 飼料用トウモロコシ消費量の部門別構成(2009年) 養鶏 養豚養牛 その合計 ブロイラー採卵鶏小計乳牛肉牛小計 消費量トン)17,534,9462,935,38020,470,32610,357,5611,447,921713,3082,161,2292,385,82735,374,943 飼料消費量合計トン)27,820,0074,820,00532,640,01215,330,0004,420,1282,360,0006,780,1283,611,00158,361,141 (%)49.68.357.929.34.12.06.16.7100.0 コシ割合(%)63.060.962.767.632.830.231.966.160.6 (出所)Sindirações(全国飼料工業組合);Boletim Trimestral, Maio 2010。

(22)

牛のシェアはわずか

2 %である。

 このことから,飼料用トウモロコシ需要の動向を決定しているのは,ブロ イラーと豚肉に対する消費需要であることがわかる。以下,この両者の消費 について見てみることにする。

2 .食肉消費の推移

 まず,ブラジルの

1

人あたり食肉消費量の推移をみると,図

7

のように,

牛肉,鶏肉,豚肉のすべてが増加しているものの,鶏肉消費量の増加が目覚 ましく,1979年には豚肉を抜き,2008年以降は牛肉の消費量をも上回ってい る。

 表

5

で示したように,飼料に占めるトウモロコシの割合が小さい牛肉から その割合が大きい鶏肉への需要のシフトが続けば,その派生需要としてのト ウモロコシ需要も伸びていくはずである。また,鶏肉同様,飼料に占めるト ウモロコシの割合が大きい豚肉の動向も重要である。以下,図

7

で用いた USDAの資料により,簡単にブラジルにおける鶏肉と豚肉の需給の推移をみ

図7 1人あたり年間食肉消費の推移

(出所)USDA, Foreing Agricultural Service, PSD Onlineより作成。

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

1960 1962 1964 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010

(kg)

牛肉 鶏肉

豚肉

(23)

ることにする。

 まず,鶏肉に関していえば,1980代以前は生産量が消費量を若干上回る程 度で需給がほぼ均衡しており,輸出量も10万トン未満であった。しかし,

1980年代になってから恒常的に自給率が110%を上回るようになり,輸出量

も1980年代には20万トン台だったものが,1990年代末には70万トン以上にと 漸増していった。

 さらに,2000〜2010年の10年間には,消費量が511万トンから807万トンへ と58%の大幅な増加を示したものの,生産量が598万トンから1142万トンへ

91%増加し,消費量を上回るペースで拡大したため,自給率も2008年以降は 140%を上回っている。この結果,輸出余力が拡大し,輸出量が87万トンか

ら335万トンへとわずか10年で3.9倍に増加し,世界最大の鶏肉輸出国になっ ている。主たる輸出先は,サウジアラビア,日本,香港である。

 豚肉の場合,1990年代半ばまでは需給均衡の状態であった。それ以降,生 産量の増加が消費量の増加を上回り,自給率は2000年に110%に達した。鶏 肉同様,2000年以降の10年間で輸出余力が一段と高まっている。

 消費量は2000年の183万トンから2010年の255万トンへ39%増加した。しか し,生産量が同時期に201万トンから317万トンへ58%増加したため,自給率 も120%以上に上昇した。これと平行して輸出量も増加し,16万トンから63 万トンへと3.9倍に増加した。現在では世界第

4

位の豚肉輸出国である。

 主たる輸出先はロシア,香港で,この両国で全輸出量の過半を占める。

EU,米国,日本,韓国などの主要先進国には輸出されていない。これは一 部の地域で口蹄疫が発生しているため,これらの国がブラジルからの生鮮豚 肉の輸入を認めていないためである。このことが近年輸出が伸び悩んでいる 一因となっている。しかし,2010年11月に米国が南部のサンタカタリーナ州

(SC)をワクチン非接種の口蹄疫清浄地域として認定した。ほかの国も米国 に追随した場合には生鮮豚肉の輸出が拡大する可能性があり,養豚業界にお けるトウモロコシの将来需要を考えるうえで注視していく必要がある。

(24)

3 .食肉加工産業の立地と企業再編の動き

 トウモロコシの主産地の変化に呼応して,それを飼料原料とする鶏肉加工 業の工場立地にも変化が生じている。植木[2007:

90‑91]は1970年代にブ

ラジルで鶏肉加工業がサンタカタリーナ州を中心とする南部に集中的に立地 したことを第

1

の波,1990年代から始まった南部から中西部への工場移転を 第

2

の波と呼んでいる。第

2

の波が起きたのは,中西部で第

2

作を中心とす るトウモロコシ生産が増加するにしたがい,飼料の産地近くに立地して,安 い労働力を生かしつつ,インテグレーションを強化し,コストダウンを計ろ うという鶏肉加工業者の思惑があったためである。ただし,依然として工場 数でいえば南部が中心で,中西部への進出は実験的な意味合いが強い。

 これは豚肉産業も同様で,今後の新規投資は中西部で行うとしながらも,

先に述べた口蹄疫の問題があり,現在は主要先進国でブラジル豚肉輸入が解 禁されるか様子をみている段階である

 これとは別に,最近注目されるのが業界内の合併・吸収による食肉加工産 業再編の動きである。まず,ブラジル国内鶏肉パッカー

1

位のペルジゴン

(Perdigão)社と

2

位のサジア(Sadia)社が2009年

5

月18日に合併調印を行っ た。新会社名はブラジル・フーズ(Brasil Foods)とし,世界最大の鶏肉パッ カーが誕生することになった。ブラジル・フーズの規模は2007年における世 界の屠鳥数シェア32%,鶏肉輸出数量シェアの46%にも達する

 さらに,この動きに対抗するように,すでに牛肉加工で世界最大手になっ ているブラジルJBSが,2009年

9

月16日,米国鶏肉加工最大手で経営危機 にあるピルグリムズ・プライド(Pilgrimʼs Pride)の買収と,ブラジル牛肉パ ッカー

3

位のベルチン(Bertin)との経営統合を発表した。この経営統合で は新会社と持ち株会社を設立し,持ち株会社が新会社の株式の60%を保有し,

残り40%は経済社会開発銀行(BNDES)と一般投資家に割り当てられる。さ らに,持ち株会社にはJBSが60%,ベルチンが

40%する出資する計画にな

(25)

っている。このピルグリムズ・プライドの買収により,牛肉加工に特化して いたJBSは鶏肉加工にも進出することになった。

 これらの合併には日本の公正取引委員会に相当する経済防衛行政審議会

(Conselho Administarativo de Defesa Econômica: CADE)の認可が必要であるが,

2010年12月現在,正式な許可は出ていない。予定通り実現すると世界の食肉

加工産業は寡占化が進むことになる。

 この一連の企業再編により,世界の食肉加工企業大手

5

社のうちブラジル が

2

社,米国が

2

社を占めることになる。ブラジル,米国が現在世界の食肉 加工を巡って覇権争いを繰り広げている様子がわかる

5

節 トウモロコシ輸出の将来展望

1 .需給予測の評価

 以上,現在までの需要と供給の動きをみてきた。最後に将来の見通しをブ ラジル農務省(MAPA)の輸出予測(MAPA[2010])を基に検討したのが表

6

である。

 基準年を2008/09年度とし,11年後の2019/20年度を予測した結果では,ト ウモロコシ消費量の増加は,基準年の23%にあたる1049万トンである。しか しながら,生産量の伸び率は37.6%で1915万トンの生産増になり,消費量の 増加を866万トン上回り,輸出量も562万トン増加する結果になっている。

 トウモロコシの需要側である食肉の生産量をみると,鶏肉・牛肉・豚肉の 合計が37.7%とトウモロコシ生産量とほぼ同率の伸びという結果になってい る。ただし,内訳では現在最大のトウモロコシ消費部門である,鶏肉生産の 伸び率が最も高くなっているため,飼料となるトウモロコシ消費量の伸びは これより大きくなるはずである。ところが,MAPA[2010]には予測手法と して,時系列解析を採用していると記述されているものの,用いた変数,パ

(26)

ラメータの推計結果も公表されていない

 そこで,トウモロコシと食肉の予測結果の間の整合性を,予測結果の数字 のみから,検証することにした。まず,表

5

にある,2009年の鶏肉,牛肉,

豚肉の食肉

3

部門の飼料用トウモロコシ消費量に,表

6

の農務省予測結果の 食肉生産の各部門の伸び率をそれぞれかけて,各部門の予測年における飼料 用トウモロコシ消費量とした

。これが表 6

の「筆者試算」のうち,「飼料 用消費」の部分である。この結果では,鶏肉,豚肉,牛肉

3

部門の生産用に 消費されるトウモロコシの合計は,2860万トンから1132万トン増え,3992万 トンになる。

 ここで,2009年に鶏肉,豚肉,牛肉の

3

部門がトウモロコシ飼料消費合計 に占める割合,飼料用トウモロコシ消費量が全トウモロコシ消費量に占める 割合,のいずれもが基準年と予測年で変化しないと仮定する

。その場合,

筆者試算による2019/20年度の飼料用トウモロコシ消費予測3992万トンを

0.81で割った結果の4928万トンが2019/20年度の飼料用トウモロコシの消費

表6 トウモロコシ需給の将来予測 単位 基準年

(2008/09) 予測年

(2019/20) 増分 伸び率

(%)

農務省予測結果 トウモロコシ 生産量 百万トン 50.97 70.12 19.15 37.6

作付面積 百万ヘクタール 14.14 14.73  0.59  4.2 単収 トン/ヘクタール  3.60  4.76  1.16 32.1 国内消費量 百万トン 45.70 56.19 10.49 23.0

輸出量 百万トン  7.00 12.62  5.62 80.3

食肉生産 鶏肉 百万トン 11.13 16.63  5.50 49.4

牛肉 百万トン  7.83  9.92  2.09 26.7

豚肉 百万トン  3.19  3.95  0.76 23.8

小計 百万トン 22.15 30.50  8.35 37.7

筆者試算 飼料用消費

鶏肉 百万トン 17.53 26.19  8.66 49.4

牛肉 百万トン  0.71  0.90  0.19 26.7

豚肉 百万トン 10.36 12.83  2.47 23.8

小計 百万トン 28.60 39.92 11.32 39.6

飼料用計 百万トン 37.79 49.28  11.5 30.4

国内消費量 百万トン 43.73 56.65  12.9 29.5

(出所)トウモロコシと食肉生産量はMAPA[2010]より筆者作成。飼料用トウモロコシ消費量 は筆者試算。

(27)

量になる。さらにこれを0.87で割ったのがトウモロコシ全体の国内消費量

5665万トンになる。

 これは農務省によるトウモロコシの国内消費量予測値5619万トンとほぼ変 わらず,トウモロコシと食肉生産量の予測結果の間で整合性がとれていると いえよう。

 次に,この結果と農林水産政策研究所[2011]の予測結果を比較してみよ う。農林水産政策研究所の予測では,2020年の生産量が7580万トン,国内消 費量6460万トン,純輸出量1150万トンという結果になっている。農務省の予 測は純輸出量ではないので,これと整合性をとるため,2020年の輸入量を

2009年と同程度の100万トンとすれば,輸出量は1250万トンになり,農務省

の予測1262万トンとほぼ同様の結果になる。これからも,農務省の予測結果 はある程度の信頼性があるとみなすことができる。

 以上の結果を総合すると,将来ブラジルにおいて食肉生産量が増加し,そ の派生需要として飼料用トウモロコシへの需要が増加するにしても,生産量 が需要の伸びを上回るため,輸出余力も拡大すると考えられ,ブラジルのト ウモロコシ輸出国としての地位は強化されるとみることができる。

 ただし,このためには,対ドル為替レートが過度にレアル高にならないと いうことが条件になる。

2 .農地拡大の可能性

 トウモロコシの生産拡大は単収の増加によることが大きいと述べてきた。

ただし,第

2

作の場合は中西部における大豆の裏作がメインであるので,大 豆の面積拡大余地があるのか否かも論点となる。

 農務省によるブラジル全土の土地利用状況をみると,全国土面積

8

億5100 万ヘクタールのうち,農業に利用できない保護すべき土地としてアマゾン熱 帯雨林

3

億6000万ヘクタールのほかに先住民(インディオ)の保護地5200万 ヘクタールがある。全体からこの

2

つとすでに市街地になっている面積や

(28)

湖・河川などの面積を除いた残りが

3

億8100万ヘクタールになり,これが農 業的利用のできる土地面積の上限とみなされている。

 このうち,牧草地が

2

億1000万ヘクタールある。実際に農作物の栽培に供 されているのは耕地4900万ヘクタールと永年作物地1500万ヘクタールの合計

6400万ヘクタールである。これ以外が 1

億100万ヘクタールある「農業的未

利用地」とよばれている部分である。この土地は,セラードを中心として現 在は農地として使用されていないものの,農地開発により本格的な機械化農 業に可能な面積を意味している。しかし,環境保全面での制約もあり,この 面積すべてが耕作可能になるわけではない

 これに関して,最近,世界自然保護基金(WWF)による新たな推計が発 表された(WWF-Brasil[2009])

。この推計は,⑴森林法による法定保留地割

合の制限を考慮に入れていること,⑵セラード以外では新規開拓をしないこ と,⑶劣化した牧草地から農地への転用がセラード内で30%,南部とサンパ ウロ州は20%,というように前提条件が明確に呈示されているなど,他の推 計に比較して議論しやすいものになっている。

 この結果によると,アマゾン熱帯雨林を除いて,全国で新たに7077万ヘク タールの土地が開発可能としている。そのうち,中西部を中心としたセラー ド地帯だけで5469万ヘクタールが新規に農地として開拓でき,残りは劣化し た牧草地からの転換ということになっている。

 この数字は法定保留地分を考慮していることもあり,

1

億ヘクタール以上 も新たに開発可能としている,米国農務省の推計(USDA[2003])からみる と過小であるが,最低でも現在の耕地面積を,

2

倍以上に拡大することが可 能であるとみることが出来る。この結果から,トウモロコシの増産に関して,

作付面積の制約はとくにないに等しい,とみることができる。

3 .物流インフラの制約

 本稿を通じて,ブラジルにおけるトウモロコシ生産の拡大可能性について

(29)

述べてきた。しかし,ブラジルにとって弱点がないわけではない。最大の問 題は輸送インフラの問題である。

 既述したように,現在ブラジルにおける穀物生産の中心地は南部から中西 部に移行している。しかし,中西部で生産された穀物は,そのほとんどが南 東部や南部の港から輸出されている。最も多いのが,図

2

の南東部に属する サンパウロ州(SP)サントス(Santos)港からの輸出である。その後に南部 のサンタカタリーナ州(SC)サンフランシスコ・ド・スル(São Francisco do Sul)港,同じ南部であるパラナ州(PR)パラナグア(Paranaguã)港が続いて いる。

 中西部の産地からこれらの港までは,遠いところで2000キロメートル以上 離れている場合も珍しくない。産地から港までの輸送手段のほとんどは,舗 装状態が悪い道路上を走るトラック輸送であるため,非常に輸送コストが高 く,いわゆる「ブラジルコスト」のひとつとなっている

。米国の場合は,

コーンベルトで生産された大豆ははしけ(バージ)でミシシッピ川を利用し てメキシコ湾に搬出するので,運送コストがブラジルよりもかなり低くなる。

 この輸送手段の差がブラジルの競争力にどのくらいの影響をおよぼしてい るのか,大豆を例に検証してみよう。トウモロコシではなく,大豆を取り上 げたのはデータが入手可能であることと,抱えている問題が同じであるから である。

 参考にしたのは米国農務省の資料(USDA[2009])である。ここで比較し ているのは2007年のブラジルのマットグロッソ州内の大豆主産地ソヒーゾ

(Sorriso)と米国アイオワ(Iowa)州ダベンポート(Davenport)から中国の上 海まで輸送した場合のコストである

 図

8

をみてあきらかのように,農場段階での価格は

1

トンあたりソヒーゾ が233.82ドルに対し,ダベンポートが285.74ドルとソヒーゾの方が52ドル安 い。ところが海上運賃は両者とも80ドル強で大差ないものの,河川とトラッ クを合計した国内運賃がブラジル98ドルに対し,米国34ドルと60ドル以上の 差があるため,上海に到着した段階での価格は,ソヒーゾが414.32ドルなの

(30)

に対して,ダベンポートが12.52ドル低い401.08ドルと逆転してしまっている。

 このように,輸送インフラの未整備のため,ブラジルの場合,農場段階で は安い生産費で価格競争力があるものの,国内運賃が高いため著しく輸出価 格の競争力を減殺している。これはトウモロコシの場合でも同様である。

 中西部から南部の港までの輸送インフラ整備がいつ完成するか不透明であ るため,この打開策として,近年はアマゾン川を使った新しい搬出ルートも 開発されている

。ひとつはマットグロッソ州の産地からホンドニア州のポ

ルト・ベーリョまで国道364号線(BR364)を使ってトラックで運び,アマゾ ン川の支流であるマデイラ川を使ってはしけで輸送して,アマゾン川主流の 大都市マナウスから200キロメートル下流にあるイタコアチアラ港から輸送 船に積み込んで,アマゾン川を5000キロメートル以上下って輸出するルート である。

 もうひとつはアマゾン川河口から1400キロメートル上流にあるサンタレン

(Santarém)港までトラック輸送して,そこからアマゾン川を使って搬出す 図8 大豆輸送費の比較(ブラジル対米国,2007年)

(出所)USDA[2009]より筆者作成。

233.82 285.74

97.67

0 23.89

82.83 81.36

10.09

414.32 401.08

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

ブラジル・マットグロッソ(ソヒーゾ) 米国・アイオワ(ダベンポート)

海上 河川 トラック 現地価格 (US$/トン)

(31)

るルートである。サンタレンまではマットグロッソ州の州都クイアバ

(Cuiabá)から通じている国道163号線(BR163)を全面舗装化する計画が進め られている。しかし,まだ未舗装部分が約1000キロメートルも残っており,

工事に莫大な費用がかかることから,いつ完全舗装化されるかの目処はたっ ていないのが現状である

。また,舗装工事そのものが森林破壊の原因にな

るということに加え,完成した道路が違法伐採木材の搬出経路になるのでは ないかという懸念があり,環境保護派からの批判も多く,このルートの開発 は想定したようには進んでいない。

むすび

 最後に今まで述べてきたことを要約するとともに,輸出の制約要因にも触 れてむすびに代えることにしたい。

 2001年以前はブラジルのトウモロコシは需給がほぼ均衡し,輸出はされて いなかった。それが2001年以降,恒常的に輸出するようになり,輸出国へと 転換した。

 基本的には生産の伸びが需要の伸びを上回ったためであるが,この生産拡 大には中西部で作付けが増加した第

2

作の単収増加の寄与が大きかった。こ れには,単交雑のハイブリッド種の普及や肥料投入の増加が貢献した。ブラ ジルの場合,GM種子の解禁による単収の伸びが期待されるうえ,米国と異 なり,面積拡大の余地もセラードが分布する中西部を中心に十分ある。

 国内需要をみると,飼料用を中心として順調に拡大している。飼料用トウ モロコシの主要な顧客は鶏肉・豚肉産業である。とくに鶏肉の場合,国内に おいて消費が順調に拡大していることが大きい。

 ただし,これからも国内需要が拡大していくのは確実ながら,生産量がそ れを上回って拡大すると見込まれ,今後ともトウモロコシの輸出量は拡大す るものとみなされる。

(32)

 一方,輸出の制約要因としては,貧弱な国内の輸送インフラの整備がどこ まで進むかが鍵となろう。また為替レートの動向にも影響を受け,輸出量が 変動するものと思われる。ブラジルのトウモロコシ産業は大豆のように,多 少の為替レートの変動とは関係無く輸出量を拡大できるほどの市場競争力を まだ持ち得ていないからである。

 外部的な要因としては米国のバイオエタノール政策の動向が大きい。これ により,米国の輸出余力が縮小することになれば,世界のトウモロコシ貿易 におけるブラジルの比重は今後も高まっていくことになろう。また,中国が 大豆と同様,トウモロコシに関しても恒常的な輸入国になるのか否かも大き な関心事項である。さらには,口蹄疫を理由に豚肉の生鮮肉の輸入を禁止し ている主要先進国の今後の動向も注目される。

[注]

⑴ ブラジルにおける穀物全体の需給動向については清水[2011]で分析を行 っている。

⑵ サンパウロ大学応用経済研究所(CEPEA-ESALQ/USP)の推計による。

⑶ 直近の2010年をみると,非農林水産物は413億ドルの貿易赤字であったもの の,農林水産物貿易が615億ドルという大幅な黒字を計上したため,結果とし て貿易収支が202億ドルの黒字になっている。

⑷ ポルトガル語のgrãoは英訳ではgrainだが,一般に油糧種子に分類されて いる大豆が含まれている。本稿では便宜上「穀物」という訳語をあてておく。

ブラジル農務省が穀物として集計しているのは15作物(綿花,落花生,コメ,

オート麦,キャノーラ,ライ麦,大麦,フェジョン豆(feijão),ヒマワリ,ト ウゴマ,トウモロコシ,大豆,ソルガム,小麦,ライ小麦)である。なお,

フェジョン豆というのは日本でいうインゲン豆やササゲに似た豆で,ブラジ ル料理には不可欠な食材である。

⑸ Conab,2010/11年度第5回作況調査結果(2011年2月)による。

⑹ 大豆ミール,大豆油については第2章の注2を参照。

⑺ Conabのホームページにある貿易統計(Saldo da Balança Agronegócio)によ る。

⑻ 為替レートは商業レート。統計はConjuntura Econômica,2010年12月号によ る。

⑼ 江藤[2002: 75]も「今後も輸出国としてのステータスを維持できるとは思

(33)

えません」と記述している。

⑽ しばしばmilho safrinhaとも呼ばれる。safrinhaとは日本語でいえば裏作に あたる言葉である。これを新しい品種と勘違いした翻訳をみたことがあるが,

品種の名前ではない。

⑾ これには日本のODAが先駆的な試みとして大いに貢献し,ブラジル政府か らも高く評価されている。セラードの概要,および開発の可能性に関しては,

ブラジル連邦共和国農務省・国際協力事業団[2002]を参照。

⑿ log(単収)=α+β*(タイムトレンド)の回帰式を推計して求めた。係数 のβが平均伸び率になる。

⒀ 全国平均のヘクタールあたり肥料投入量は1990年には108キログラムであっ たが2004年には291キログラムと2.7倍に増加している(MAPA e IICA[2007:

93])。

⒁ アルゼンチンと米国の単収はUSDA, Foreign Agricultural Service, PSD Online による。

⒂ 農牧業センサスの結果から筆者が計算。データはIBGEのホームページか ら入手可能。

⒃ 食用・飼料用トウモロコシを主として自家消費用として生産している農場 の販売比率は31.7%である。

⒄ Conabのデータを使用して,完全要因分析法(間接法)により計算。手法 に関しては沈[2001]を参照。

⒅ 各手法の詳しい内容について,制度の説明に関してはColombini[2008]

を,経済学的な意味についてはStefanelo[2007]をそれぞれ参照。英語の解 説としてはOECD[2009]がある。

⒆ 2009年1月〜2010年12月の24ヵ月間を対象に,シカゴ価格のレアル換算値 とマットグロッソ州とパラナ州の市場価格の相関係数を計算したところ,マ ットグロッソ州0.89,パラナ州0.85とともに高い値を示した。

⒇ 以下の価格データはAgrolinkのホームページから入手した。

 筆者が2010年12月にConabで行ったヒアリングによる。

 2010年12月,ブラジル豚肉加工・輸出業協会(abipecs)ペドロ・デ・カマ ルゴ・ネット(Pedro de Camargo Net)会長へのヒアリングによる。

「業界第一位と第二位の鶏肉パッカーが合併(ブラジル)」(『畜産の情報』

2009年6月号)。ただし,この記事中でブラジル・フーズをBrazil Foodsと標 記しているが,これは誤りである。最初のブラジルはポルトガル語(Brasil)

を採用している。

 Veja,2009年9月23日号。

 指数平滑法,ARIMAモデルなどをそれぞれの品目に適用し,推計結果のう ち,最もあてはまりの良いものを採用していると説明されている。

参照

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