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凍土方式遮水壁大規模整備実証事業

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Academic year: 2022

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凍土方式遮水壁大規模整備実証事業

鹿島建設(株) 正会員 淺村 忠文 正会員 ○阿部 功 正会員 山本 正嗣 正会員 江崎 太一 正会員 木田 博光 正会員 深田 敦宏 正会員 吉田 輝

1.凍土方式による陸側遮水壁の目的

福島第一原子力発電所の 1~4 号機の原子炉建屋群では,地下水の流れ込みによりサブドレン稼働開始(2015 年 9 月)前は 1 日に約 300 トン,現状は約 200 トンの新たな汚染水が発生している.汚染水は,回収し浄化処 理した後,冷却水として一部再利用されているが,増加分はタンクを増設し,貯留し続けている.凍土方式に よる陸側遮水壁(以下,“陸側遮水壁”と呼ぶ)は,

汚染水増加を抑制する対策のひとつとして採用さ れた.建屋周りを凍土方式の遮水壁(深さ約 30m,

全長約 1,500m)で取り囲み,山(西)から海(東)

へ流れる地下水を迂回させて建屋に近づけないこ とにより,汚染水増加を大幅に低減することを目 的としている(図-1).

2.陸側遮水壁の特長 (1)陸側遮水壁の造成方法

陸側遮水壁では,凍結管を地中に約 1m 間隔で鉛直に設置し,ブラインと呼ばれる約-30℃の冷却液(塩化カ ルシウム 30%水溶液)を循環させ,管周りの土を凍らせ太く成長させることで連続した壁を形成する.凍結 管は内外管とそれを保護する保護管の三重構造とした.ブラインは凍結内管の中を下降し,凍結外管の中をド

図-4 凍土方式による陸側遮水壁の特長 図-2 凍土壁の造成イメージ

図-3 凍結管の構造断面図

キーワード 凍土遮水壁,凍結工法,地下水流,福島第一原子力発電所,汚染水処理対策,被ばく低減対策 連絡先 〒107-8388 東京都港区元赤坂 1-3-1 鹿島建設株式会社 TEL03-5544-1111(代)

造成前 造成後

図-1 陸側遮水壁の造成と地下水の流れイメージ

●高い遮水性

凍土が融けないかぎり遮水機能を 維持できる.

●長期健全性

凍土は,地震時にひび割れが入 っても再固結する自己修復性があ る.凍土造成完成後に電源が消失 しても数ヶ月は完全融解しないた め,遮水性を維持できる.

●優れた施工性

コンパクトな構造かつ施工設備の ため,多数存在する地下埋設物へ の対策が可能で,地上での他の廃 炉作業との競合が最小限で済む.

●少ない二次廃棄物

遮水壁全てを掘削し遮水材に置 換する工法と異なり,凍結管のみの 設置のため,施工に伴う汚染土壌 や汚染水の発生が極めて少ない.

(2)

ーナツ断面状に上昇する.また,三重構造とするこ と で管を,保護管内に収めた三重管構造とするこ とで長期運用期間中に必要に応じた凍結管の交換

を可能にしている.保護管は,削孔管の底部をパ ッカーにて閉塞し,地中に残置している(図-2,3).

(2)陸側遮水壁の特長

陸側遮水壁の施工においては,昼夜進められる 他の廃炉作業との競合や,地上設備,地中埋設物 をはじめとする様々な制約条件がある.これに対 応する陸側遮水壁の工法・構造として,図-4に挙 げる特長を有する凍土方式が採用された.

3.計画概要

陸側遮水壁は「凍土方式の壁により建屋に地下 水を近づけない」,海側遮水壁は「鋼管矢板方式の 壁により汚染水を海へ流出させない」ことを目的 に計画され,互いの端部を連結することとした.

建屋内への地下水の主な流入源は地層最上部の中 粒砂岩層と呼ばれる透水層である.陸側遮水壁は,

その外周と下部からの地下水流入を抑制するため,

第 4 泥質部と呼ばれる難透水層に 1m 以上根入れし ている.ブラインを冷却する凍結プラントは海抜 (O.P.)35m の高台に配置している(図-5).事業の 概要と施工数量を表-1に示す.

4.施工手順

陸側遮水壁における地下の凍結管と地上のブ ライン配管の施工は,以下の手順にて実施した.

(1)準備工(写真-1①,②)

作業環境の整備としてがれきの撤去・除染及び 放射線遮蔽を行うとともに,深度 2m までの試掘を 行い埋設物の位置を確認する.

(2)削孔(写真-1③)

ボーリングマシンでケーシング削孔を行う.ケ ーシングは凍結管の保護管として残置し,下端を 閉塞する.

(3)凍結管施工(写真-1④,⑤)

ケーシング内に凍結管を建て込む.凍結管の継 ぎ足しは作業員の放射線被爆軽減と施工の確実性 を考慮し自動溶接機を使用する.凍結管の地上部 分を断熱材で保護する.並行してブライン配管架 台を設置する.

(4)ブライン配管の設置と接続(写真-1⑥)

ブライン送り・戻りの各ブライン配管(ヘッダー管)を設置し,凍結管と接続する.ヘッダー管は主ブライ ン配管から分岐する枝管となっており,1 本当たり凍結管 30 本程度を受け持っている.

事業名: 平成 25 年度「汚染水処理対策事業

(凍土方式遮水壁大規模整備実証事業)」

(国の補助事業)

補助金交付者 : 経済産業省 資源エネルギー庁 共同事業者 : 東京電力(株),鹿島建設(株) 工期(補助事業期間) : 2013 年 10 月~2016 年 3 月

主要数量:

・凍結管 1,568 本,測温管 359 本

・冷凍機 30 台

・水位観測井戸 82 孔(陸側遮水壁沿いの内外に配置し,

水位差により遮水効果を確認するためもの)

・注水井戸 33 孔(陸側遮水壁沿いの内側に配置し,建屋 周辺地下水位を建屋内滞留水水位より高く保持するた めの補助手段)

表-1 事業概要および主要数量 図-5 関連設備配置図(平面・断面)

T.P.:東京湾平均海面 O.P.:小名浜港工事基準面

(3)

(5)ブライン充填(写真-1⑦)

凍結管及びブライン配管にブライン(塩化カルシ ウム水溶液)を充填する.

5.埋設物への対応

建屋周りの地下には,配管,ケーブル等の多くの埋設 物が存在している.陸側遮水壁と埋設物が交差する箇 所については,埋設物管理図と試掘等の現地調査によ り,埋設物の位置,寸法,構造形式,内部状況を確認し,

凍結管 1,568 本の配置パターン(単列,複列,貫通)を 決定した(図-6).

写真-1 凍結管とブライン配管の施工手順 図-6 埋設物規模に応じた凍結管配置パターン

②複列施工(21箇所,118本)

中規模埋設物の両脇に複数の凍結 管を設置し,埋設物上下の地盤にも凍 土壁を造成.

③貫通施工(51箇所,138本)

大規模埋設物の頂版と底版に凍結 管を貫通させて設置し,埋設物上下の 地盤に凍土壁を造成.

①単列施工(1,312本)

約1m間隔で凍結管を設置し,小規 模埋設物の上下の地盤にも凍土壁を 造成.

削孔機

埋設物

がれき

凍結外管 全自動溶接機

④凍結管の自動溶接と建て込み

凍結管 ブライン配管架台

⑤凍結管の断熱材巻き,

ブライン配管架台の設置

⑦ブライン配管と凍結管へのブライン充填 凍結管

⑥ブライン配管の設置,凍結管とのつなぎ込み

②埋設物調査(地表より2m深さ の試掘,内部調査)

①がれき撤去,除染,遮へい

ブライン配管

③削孔機による保護管削孔

(4)

6.被ばく低減対策,線量管理 (1)被ばく低減対策

作業時間は施工箇所の空間線量に応じて 1 日あたり 3~4 時間とした.被ばく低減対策としては,除染(線源となる がれき撤去,汚染土壌のすき取り)や,遮へい物(砕石,敷き鉄板,コンクリート板・鉄板・鉛フェンス)の設置を行った

(写真-2).鉛フェンスは,手作業で迅速に設置できるようにした簡易遮へい壁で,単管柵に,3mm 厚の鉛シートを貼 り付けた合板を固定したものである(写真-3).

被ばく低減のため,工場や構外で予め組み立てたプレキャスト材を多用し,現場での作業時間の短縮を図っ た.例としては,現場搬入前にブライン配管周りの断熱材を継ぎ手部以外のほとんどを巻いておき,現場内で の断熱材作業を継ぎ手部のみとして作業時間を短縮している(写真-4).

(2)被ばく線量管理

被ばく線量については,作業員と職員全員の毎日の線量データを独自のシステムで集計管理した.このシス テムにより個人ごとの累積線量の推移を予測することができ,当事業の上限線量

40mSv/年(法定 50mSv/年)

を遵守できた.また,上限線量到達日を把握し,低線量作業箇所への配置換え等を必要に応じて行った.

7.陸側遮水壁を支える技術 (1)4 つの実証試験による事前検証

本事業に先立ち,陸側遮水壁の成立性を検証するため,経済産業省 資源エネルギー庁の委託事業として,

実証試験業務(フィージビリティ・スタディ)を鹿島建設(株)にて実施した.これにより大規模凍土遮水壁の 成立性を事前検証すると共に,得られた知見を本事業の陸側遮水壁工事に反映した(表-2).このうち実証試 験①では前述の三重管構造凍結管の交換デモによる作業性の確認(写真-5),光ファイバー方式測温管の性能 確認など,長期の維持管理を見据えた新技術を積極的に試行し,本事業に展開している.

従来,地盤凍結工事で使用する温度センサーは電気式温度計(白金抵抗体)が一般的であるが,陸側遮水壁 では測定点数が約 1 万点と膨大となるため,計測ケーブルの取り回しの煩雑さやケーブルの腐食による断線リ スクを考慮し,ケーブル自体で測温する光ファイバー式温度センサーを全面的に採用した(写真-6).陸側遮 水壁全体に約 5m ピッチで配置した測温管において,光ファイバーにより地中温度を深度 1m ピッチで計測し,

地盤の凍結状況を監視している(図-9).

《対策前》

・空間線量: 1.0~2.0mSv/h

・線源: 地表と左側建屋

《対策後》

・空間線量: 0.2~0.3mSv/h

・対策: 表土すき取りと砕石敷き,

建屋側にコンクリートL型擁壁

L型擁壁

《対策前》

・空間線量: 1.0~1.2mSv/h

・線源: 左側法面と右側建屋

《対策後》

・空間線量: 0.3~0.5mSv/h

・対策: 構台上に鋼製覆工板

200mm厚,両側にコンクリート板

150mm厚と鉄板22mm 線源の法面 線源の

原子炉建屋方向

削孔機 線源の建屋

上段:鉄板 下段:コンクリート板

覆工板

写真-2 遮へい対策効果の例

鉛フェンス

写真-3 遮へいの例(重機置き場周りの鉛フェンス)

ワンタッチジョイント

断熱材50mm厚,保護鋼板

継手部(配管突合せ部)

写真-4 配管継手部

(5)

(2)凍結プラント

凍結プラントには 30 台の冷凍機があり,その能力は 1 台あたり 約 70 冷凍トン(0℃の水 70 トンを 24 時間で氷にできる能力)で ある(写真-7).本プラントは自動運転を基本としており,凍結 管へ送り出すブライン(冷却液)の温度が平均約-30℃になるよう に冷凍機の ON/OFF 設定を行っている.

(3)地下水流の影響を考慮した凍結予測解析

陸側遮水壁は山から海方向への地下水流を広範囲に遮る形で構 築することから,凍土の形成に及ぼす地下水流の影響が無視でき ない.このため,地下水流を考慮した精密な凍結シミュレーショ ン技術である 3 次元熱-水連成 FEM 解析を駆使して,凍結管の間隔 や配置の事前解析検討を行い,凍土造成計画に反映した(図-7).

実証試験①(現地)

小規模凍土方式遮水壁の造成

実証試験④(現地)

注水井戸の特性 10×10×深さ 26m の凍土壁を陸側

遮水壁現地近傍に造成し,遮水効果 等を確認

現地近傍の 50×15m の敷地内に,

注水井戸 3 孔と地下水位観測井戸 10 孔を設置し,注水特性(注水箇所 数と注水量に応じた地下水の拡散 効果)を確認

実証試験②(モックアップ)

埋設物貫通削孔と水密性

実証試験③(モックアップ)

地下水流速に対する凍結 幅 3.4×高さ 2.1×奥行 2.1m の模擬

鉄筋コンクリートトレンチにて,多重管 と先端固化での貫通削孔を行い,模 擬滞留水の漏洩がないことを確認

地下水流向を鉛直下向きとした 3

×2×2m の模擬地盤供試体にて,

流速に応じた凍結の可否を確認

8.凍土造成状況と現状

陸側遮水壁の凍土造成は,2015 年 4 月 30 日から 8 月 21 日まで,山側(海側遮水壁に向かう 2 ヵ所の分岐 部を両端とする建屋の北,西,南側の 3 辺)の 18 ヵ所で試験凍結を行い凍結設備の動作確認を行ったうえで,

2016 年 3 月 31 日に海側(山側以外の区間)の全体と山側の一部で本凍結を開始した.2016 年 6 月 6 日には凍

注水井戸 孔径φ450mm

3 孔

地下水位観測井戸 孔径φ50mm 10 孔

写真-7 凍結プラント建屋内の冷凍機 表-2 4 つの実証試験

写真-6 光ファイバー設置状況(陸側遮水壁)

《凍結開始直後》

凍土造成途中では建屋方向に 地下水が流れている

《凍結開始数ヶ月後》

建屋に向かう地下水が,陸側遮 水壁により迂回している

図-7 解析例

(凍土の造成過程と地下水流速コンター)

写真-5 凍結管交換デモ(実証試験①)

冷凍機 光ファイバー

(6)

結範囲を山側の 95%までに拡大し(図-8),7 月上旬現在,凍結運転を継続中である.地中温度は図-9 に示 すように着実に低下している.

末尾ながら,当工事にご尽力いただいた関係者の方々に心より御礼申し上げます.

図-9 代表地点における地中温度の低下状況

参考文献

1) 江崎,他: 凍土方式による遮水技術に関するフィージビリティ・スタディ事業(その 1~11),土木学会 第 70 回年次学術講演会,第Ⅲ部門,pp.529~550,2015 年 9 月

2) 佐々木,他: 凍土方式遮水壁大規模整備実証事業(その 1~8),土木学会第 71 回年次学術講演会,第Ⅲ 部門,2016 年 9 月

凍結開始時(2016年

3

31

日) 現状(2016年

6

6

日以降)

図-8 陸側遮水壁の凍結運転状況

青線:中粒砂岩層平均 赤線:互層部平均 丸数字地点:2016331日凍結開始 角数字地点:201666日凍結開始

参照

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