人員配置に着目した業務継続計画策定に関する一考察
パシフィックコンサルタンツ(株) 正会員 ○阿部康紀 パシフィックコンサルタンツ(株) 正会員 桑原正人 パシフィックコンサルタンツ(株) 正会員 高西春二 パシフィックコンサルタンツ(株) 正会員 森下 祐
1.はじめに
本論文は、国土交通省の事務所レベルの業務継続計画
(以降、BCPと称す)を策定するにあたり、災害時に おいて最も重要な資源である人員に着目し、災害時にお ける対応を円滑に実施するための対策について検討を 行ったものである。具体的には、業務を継続するにあた り必要な人員数と参集できる人員を整理し、不足人数を 明らかにした上で、災害復旧業務の優先順位付け、
CCTV
による情報収集の実施、一般業務の目標復旧時期 の見直しを行った。また今後の課題として、人員の支援 方策について整理した。2.BCPの意義
BCPは、災害時において、自らも被災し、資源(人、
モノ、情報、ライフライン)が限られる条件下において、
災害時対応を円滑に行うために、平常時から資源の確保 に努めるともに、業務に優先順位をつけて限られた資源 を有効に配分することで、効率的に実施することを目的 としている。BCPを策定することで、限られた資源を 有効に活用し、災害時対応を職員が過度に疲弊すること なく円滑に実施できるようになることが期待される。
3.前提条件の整理
3-1
直下型地震対象とする地震は、事務所庁舎が最も被害が大きくな る直下型地震を想定した。事務所庁舎で震度
6
強、所管 する出張所建屋でも震度6
程度発生すると仮定する。た だし、事務所庁舎並びに出張所建屋は、震災後も倒壊せ ず、必要な執務環境を有していると仮定する。3-2
被害状況発災後のライフライン(水道、電気、ガス、交通機関)の想 定被害状況を表
1
に示す。表
1 想定被害状況
項目 復旧までの時間
水道 事務所周辺が復旧するまでに
3
日要する 電気 事務所周辺が復旧するまでに3
日要する ガス 復旧までに1
週間以上要する交通機関 発災後全て停止。復旧までに
3
日要する3-3
一般業務と災害対策業務z
一般業務とは、平常時において課・出張所単位で実施 している業務である。z 災害対策業務とは災害後に新規に発生する業務であ
る。災害対策部運営計画に示される業務である。3-4
平常時と災害時の組織体制以下に、平常時と災害時の組織編成と災害時における 班の主な業務内容を示す。
図
2 平常時と災害時の組織編成
3-5
参集人員数の整理公共交通機関が全て停止し、徒歩により参集するもの と仮定した。参集時間は、職員の住所と勤務先の直線距 離を移動速度
3m/s
で割って求めた。図
3 参集人員の整理
キーワード 業務継続計画、目標復旧時間、災害時対応、防災計画、人員配置
連絡先 広島県広島市中区大手町2丁目
1
番1
号広島商中日生ビル8F、TEL:082-504-1039、FAX:082-504-1043 (課・出張所)
平常時経理課
8
人 調査課14
人工務課1
5
人 管理課12人 出張所A7人 出張所B9人 用地課5
人 総務課8
人災害時(班)
調査班
10
人工務班
16
人 管理班15
人 現地対策班A11人 現地対策班B9人総務班
17
人 庁舎点検、対外窓口、食料の確保、宿泊の確保等 被害情報の収集整 理、本局に報告
被害情報の収集と 報告、緊急復旧の 実施
状況把握、災害復 旧の設計・実施 状況把握、緊急復 旧の設計・実施
時間 必要人員
参集人員
通常時の 人数
1週間
1日
3日5日
●必要人員 ベース作成、ヒアリング
●参集人員 アンケートにより把握 不足人数B
発災
不足人数B 中国地方整備局、他 事務所からの支援
不足人数A 優先業務の見直し
不足人数A
●必要人員(見直し後)
ヒアリング等により優先業務 の見直し
図
1 BCP
の概念図10 13
32
78
100
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
発災後~1時間 1~3時間 3~6時間 6~12時間 12時間~1日間
参集率%
主な業務内容
不足人数A 優先業務の見直し
不足人数B
整備局、他事務所からの支援
(今後の課題)
必要人員の設定 ヒアリング等により把握
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
‑259‑
Ⅳ‑130
4.目標復旧時間と必要人員の整理
4-1
整理の方法一般業務と災害対策業務の目標復旧時間と業務を継続・
開始するために必要な人員を職員へのアンケートにより把 握した。目標復旧時間とは、業務を再開しなければ、国民 生活に支障を及ぼす時期であり、これまでに業務を復旧し なければならない。なお、災害対策業務は、発災後直後か ら実施し、一般業務は
2
日目から再開する。また、必要な人員は、以下の表のように分類して与えた。
表
2
人員の経験の分類 人員の分類 内 容職務経験有り 自らの判断で業務を進めることができる 者として係長クラス以上と定義した 事務所・職務
経験有り 職務経験に加えて、
1
年以上、事務所に 在籍した経験がある者。経験無し 係長クラスの下で指示を仰ぎながら業務 に携わる者。
表
3
目標復旧時間と必要人員(例:用地課、一般業務)職 務
・ 事 務 所 経 験 者 ( 人)
職 務 経 験 有( 人) 経 験 無 ( 人)
職 務
・ 事 務 所 経 験 者 ( 人)
職 務 経 験 有( 人) 経 験 無 ( 人)
職 務
・ 事 務 所 経 験 者 ( 人)
職 務 経 験 有( 人) 経 験 無 ( 人)
職 務
・ 事 務 所 経 験 者 ( 人)
職 務 経 験 有( 人) 経 験 無 ( 人)
職 務
・ 事 務 所 経 験 者 ( 人)
職 務 経 験 有( 人) 経 験 無 ( 人)
課長 各課調整、業務統括等 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0
建設専 門官
国分地区の収用関係全般、裁判関係
1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 関係者の安否確認
0 1 0 対象地の状況確認
代執行に係る市との調整・協議
代替工場の斡旋、裁判関係等
境界確定、用地交渉
調査、報告の取りまとめ(予算関係除く)
国分地区における補償金の支払い、供託
用地交渉等
0 0 0 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 1 1 0 1 1
専門員 1 0
用地課
合計
1 0 用地係
長 0 1
2~3 4~7 8~14 15~30 1 日
間 日 間
所掌業務
発災からの目標復旧時間
日 間
日 間
ヶ
月 以 上
課(出張 所)名 係名
0 1
0 0 1 0
0 0 1
1
4-2
必要人員と人員の整理事務所全体と管理班と工務班の必要人員と参集人員を示す。
0 20 40 60 80 100 120 140
発災後~1時間 1時間~3時間 3時間~6時間 6時間~12時間 12時間~1日間 2日間~3日間 4日間~7日間 8日間~14日間 15日間~30日間 1ヶ月以上
経過時間
人数
事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験なし
事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験なし
災害対策業務 一般業務
参集人員78名
図
4-1
必要人員と参集人員の経時変化(例:事務所全体)0 5 10 15 20 25 30
発災後~1時間 1時間~3時間 3時間~6時間 6時間~12時間 12時間~1日間 2日間~3日間 4日間~7日間 8日間~14日間 15日間~30日間 1ヶ月以上
経過時間
人数
事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験無し 事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験無し 災害対策業務
一般業務
参集人員15人
図
4-2
必要人員と参集人員の経時変化(例:管理班)0 5 10 15 20 25 30 35
発災後~1時間 1時間~3時間 3時間~6時間 6時間~12時間 12時間~1日間 2日間~3日間 4日間~7日間 8日間~14日間 15日間~30日間 1ヶ月以上
経過時間
人数
事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験無し 事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験無し 災害対策業務
一般業務
参集人員16人
図
4-3 必要人員と参集人員の経時変化(例:工務班)
5.結論
業務継続に必要な人員を積み上げて不足人員を明らかに するともに、人員が少ない中(発災後~6時間)での災害時 対応と一般業務の目標復旧時間を見直した。
① 災害対策業務に優先順位を付けて実施する(表
4)。
② 6 時間目から、限られた人員で情報収集を始めるため に、
CCTV
を利用して概略の情報収集を行う。詳細な 現地状況の把握は人員が集まってから実施する。③ 一般業務の目標復旧時間を先送りする。この際、職員 とのヒアリングを通して職員自ら判断させた。
表
4 発災後の活動内容
経過時間 項 目
参集人員の把握(安否確認を含む)
要員配置
庁舎等の安全点検
1
時間 電源・情報処理・通信施設等の点検3
時間 予備発動機の動作確認6
時間 情報収集開始(CCTVによる概略把握)0 20 40 60 80 100 120 140
発災後~1時間 1時間~3時間 3時間~6時間 6時間~12時間 12時間~1日間 2日間~3日間 4日間~7日間 8日間~14日間 15日間~30日間 1ヶ月以上
経過時間
人数
事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験なし
事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験なし
災害対策業務 一般業務
参集人員78名
図
5-1 必要人員と参集人員の経時変化(例:事務所全体)
0 5 10 15 20 25 30
発災後~1時間 1時間~3時間 3時間~6時間 6時間~12時間 12時間~1日間 2日間~3日間 4日間~7日間 8日間~14日間 15日間~30日間 1ヶ月以上
経過時間
人数
事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験無し 事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験無し 災害対策業務
一般業務
参集人員15人
図
5-2 必要人員と参集人員の経時変化(例:管理班)
0 5 10 15 20 25 30 35
発災後~1時間 1時間~3時間 3時間~6時間 6時間~12時間 12時間~1日間 2日間~3日間 4日間~7日間 8日間~14日間 15日間~30日間 1ヶ月以上
経過時間
人数
事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験無し 事務所・職務経験有り 職務経験有り 経験無し 災害対策業務
一般業務
参集人員16人
図
5-3 必要人員と参集人員の経時変化(例:工務班)
6.今後の課題
z
人員確保の方策として、本局及び被害の少ない事務所、TEC- FORCE
等からの支援、協定先との連携等について検討する必要がある。
z
必要人員は、1
日目の勤務時間を24
時間、2
日目以降を9:00~24:00
と想定している。2日目以降も班によっては徹夜が連続することが予想される。そこで、必要人員 は、交代を考慮して2倍程度みておくことが必要である。
z
人員補充は、単に人員数を確保するのでなく、災害対策 業務内容に応じて、職務経験の有無や事務所経験の有無 を勘案して、データベース化しておく必要がある。一般業務の目標復旧時間の先送り
CCTV
等による被害状況把握目標復旧時間と必 要人員の整理
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)