学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2016 年 10 月 26 日(水)
報告番号:甲 第 1701 号 氏名: 森 麻子
論文審査
担当者 主査 教授 伊藤 正裕 印
副査 教授 長尾 俊孝 印
副査 教授 河島 尚志 印 審査論文の題目:
HLA-G expression is regulated by miR-365 in trophoblasts under hypoxic conditions
(低酸素曝露によりトロホブラストにおける
miR-365
はHLA-G
の発現を抑制する)著 者:
Asako Mori, Hirotaka Nishi, Toru Sasaki, Yuzo Nagamitsu, Rie Kawaguchi, Aikou Okamoto, Masahiko Kuroda, Keiichi Isaka
掲載誌: Placenta 45, 37-41, 2016 論文要旨
妊娠初期の低酸素状態は胎盤トロホブラストの成長や分化に関連し、妊娠高血圧症、胚子発育不全、
流産などの原因になっている。本実験では低酸素下で培養した胎盤トロホブラスト細胞株群においてコ ントロール群(正常の酸素濃度下での培養細胞)と比較してmiR-365の発現が有意に亢進することを見 出し、さらにmiR-365の発現亢進がトロホブラストにのみに限局するHLA-Gの発現を抑制することがわ かった。HLA-Gは胎盤の分化・成長およびNK細胞を介した免疫抑制・免疫寛容に働くことが知られて おり、低酸素状態によるHLA-G の発現低下が様々な妊娠合併症を引き起こす可能性が示唆された。
審査過程
1. 低酸素状態が培養細胞の生存率に与える影響について適切な回答がなされた。
2. 胎盤トロホブラスト株を2種類解析した意義に関して適切な回答がなされた。
3. miRNAの発現においてマイクロアレイによる解析とreal-time RT-PCRによる解析の結果の相違につ いて適切な回答がなされた。
4. 本研究の臨床応用(診断応用、治療応用)について適当な回答がなされた。
5. トロホブラストの遊走能とHLA-Gとの関連について適当な回答がなされた。
6. 低酸素状態が引き起こす妊娠合併症のさまざまな病態について適当な回答がなされた。
7. miR-365のHLA-Gの発現抑制以外の機能に関して適当な回答がなされた。
価値判定
本研究は、妊娠初期における胎盤の虚血、低酸素状態が引き起こすトロホブラストの変化について、
培養トロホブラスト株を用いた分子生物学的解析により、低酸素状態が培養トロホブラストの miR-365 の発現亢進を惹起し、さらにそれが培養トロホブラストのHLA-Gの発現抑制を誘導することを初めて見 出した。HLA-Gが胎盤の分化・成長・免疫寛容に関与していることよりmiR-365 によるHLA-Gの発現 の制御がさまざまな妊娠合併症の制御に重要な役割を果たしている可能性を本研究は示したことにな る。よって学位論文としての価値を認める。