学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日2016年3月23日(水)
報告番号:甲 第 1689 号 氏名: 依藤 麻紀子
論文審査
担当者 主査 教授 伊藤 正裕 印
副査 教授 小西 眞人 印
副査 教授 横須賀 忠 印
審査論文の題目:
Limited efficacy of COX-2 inhibitors on nerve growth factor and metalloproteinases expressions in
human synovial fibroblasts (ヒト関節滑膜細胞における選択的COX-2阻害剤の神経成長因子と細
胞外基質分解酵素発現に対する効果)
著 者: Makiko Yorifuji, Yasunobu Sawaji, Kenji Endo, Taiichi Kosaka, Kengo Yamamoto
掲載誌: Journal of Orthopaedic Science (in press, 2016) 論文要旨:
本論文は、変形性関節症(OA)の病態形成における選択的COX-2阻害薬の効果に関して、OA患者より 滑膜細胞を単離・培養し、各種サイトカインの発現や産生を解析したものである。その結果、COX-2阻 害剤が、滑膜細胞のPGE2産生を抑制し、アグリカンを分解する細胞外基質分解酵素であるADAMTSの 発現を抑制したのに対して、疼痛発現に関与する神経成長因子(NGF)およびコラーゲンを分解するMMP の発現を促進させたことが明らかとなった。また、選択的COX-2 阻害剤によるNGFおよびMMPの遺 伝子群の発現調節は、PGE2およびEP4アゴニストの添加により逆に制御されたことが分かった。
審査過程:
1.COX-2阻害剤のPGE2への影響の実験の条件設定に関して適切に回答した。
2.IL-1添加による各種サイトカインへの遺伝子発現と産生へ影響とOA におけるサイトカインネット ワークに関して適切に回答した。
3.COX-2およびその阻害剤の急性OAおよび慢性OAにおける関わり方に関して適切に回答した。
4.OAにおけるマクロファージの関与とその解析の必要性に関して適切に回答した。
5.OA患者と健常人の滑膜の組織学的機能学的比較に関して適切に回答した。
6.急性OAおよび慢性OAの関節の痛みを感じる部位(滑膜、骨膜、靭帯、軟骨下骨)に関して適切 に回答した。
7.関節痛の神経生理学的メカニズムに関して適切に回答した。
価値判定:
本研究は、変形性関節症において、選択的COX-2阻害剤が、早期における疼痛および関節組織破壊に対 する抑制効果がある一方、慢性期における疼痛とコラーゲン分解に対する抑制効果は期待できないこと を明らかとした。また、疼痛刺激を引き起こすPGE2が神経成長因子およびコラーゲン分解を惹起する細 胞外基質外分解酵素の発現をnegative feedback的に抑制することも明らかとし、今後の変形性関節症治 療のあり方に対して重要な知見をもたらした。よって学位論文としての価値を認める。