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東北医科薬科大学 審査学位論文(博士)

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(1)

東北医科薬科大学

審査学位論文(博士)

氏名(本籍)

ウノ タカシ

宇野 尭(北海道)

学位の種類 博士(薬学)

学位記番号 博薬学第 18 号

学位授与の日付 令和 3 年 3 月 10 日

学位授与の要件 学位規則第4条1項該当

学位論文題名 Biofilm

形成

Staphylococcus aureus

に対する

in vitro rifampicin

併用 療法の殺菌および耐性に関する研究

論文審査委員

主査 教 授 村 井 ユリ子

副査 教 授 柴 田 信 之

副査 教 授 藤 村 茂

(2)

Biofilm 形成 Staphylococcus aureus に対する

in vitro rifampicin 併用療法の殺菌および耐性に関する研究

東北医科薬科大学大学院薬学研究科 薬学専攻博士課程 臨床感染症学教室

宇野 尭

(3)

1

目次

略語表 ・・・・・ 3

序論 ・・・・・ 5

第一章:Staphylococcus aureus の in vitro biofilm 形成モデルに対する各種抗菌薬 の抗菌力について 第一節 緒言 ・・・・・ 8

第二節 材料と方法 ・・・・・11

第三節 結果 ・・・・・16

第四節 考察 ・・・・・24

第五節 小括 ・・・・・27

第二章: Biofilm 形成 Staphylococcus aureus に対する rifampicin をベースとした併 用投与の殺菌効果と rifampicin 耐性抑制について 第一節 緒言 ・・・・・28

第二節 材料と方法 ・・・・・30

第三節 結果 ・・・・・33

第四節 考察 ・・・・・43

第五節 小括 ・・・・・46

(4)

2

第三章:Rifampicin 耐性 S. aureus 株の rifampicin 曝露による biofilm 形成の変化 とその関連因子について

第一節 緒言 ・・・・・47

第二節 材料と方法 ・・・・・49

第三節 結果 ・・・・・52

第四節 考察 ・・・・・59

第五節 小括 ・・・・・61

総括 ・・・・・62

謝辞 ・・・・・65

引用文献 ・・・・・66

論文目録 ・・・・・79

(5)

3

略語表

以下の略語を本文および図表中で使用した。

CAM … clarithromycin CEZ … cefazolin

CFU … colony forming unit

CLSI … Clinical and Laboratory Standard Institute CV … crystal violet

eDNA … extracellular DNA

MBEC … minimum biofilm eradication concentration MHA … Mueller-Hinton agar

MIC … minimum inhibitory concentration

MRSA … Methicillin-resistant Staphylococcus aureus MS … methicillin susceptible

MSSA … Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus PBS … phosphate buffered saline

PIA … polysaccharide intercellular adhesin PJI … prosthetic joint infection

PK/PD … pharmacokinetics/pharmacodynamics POT … PCR-based open reading flame typing RCA … exposed with rifampicin plus clarithromycin RCE … exposed with rifampicin plus cefazolin RFP … rifampicin

RV … exposed with rifampicin plus vancomycin

(6)

4

SEM … scanning electron microscope

TSBG … tryptic soy broth with 1% glucose

VCM … vancomycin

(7)

5

序論

化膿性脊椎炎や骨髄炎など整形外科領域の感染症の治療に抗菌化学療法が行

われる場合、その治療期間が 3 か月以上と長期化する

1)

。これは、骨および近傍 組織における血流が少ないため、抗菌薬の移行濃度が低いことがあげられるが、

人工股関節置換術や人工膝関節置換術などの術後にみられる人工関節周囲感染

症 (periprosthetic joint infection: PJI) では、デバイス表面上の細菌が biofilm を形 成するため治療が遷延する。日本環境感染学会が 2012 年から 2019 年までに実 施した手術部位感染サーベイランスでは、PJI 患者の起因菌として biofilm を形 成することが知られる staphylococci が 73 – 78%と最も多かった

2)

。Biofilm は

1978 年に Antonie van Leeuwenhoek により世界で初めて歯垢から発見されたが、

これは細菌が生態系におけるストレスから自身を守るために菌体周囲に形成す

るマトリックスであり、その主成分は多糖体である

3)

。 Biofilm の役割は、一般 に抗菌薬や消毒薬が菌体内に入る前の段階で取り込みを阻止し、菌体の生存を

維持させることである。したがって、PJI のように biofilm 形成菌によるデバイ ス関連感染の治療では、biofilm への対応も考慮しなければならない。米国感染

症学会が公表した PJI の診療ガイドライン

4)

では、PJI の治療は人工関節再置換 術などの外科的治療と内科的な抗菌化学療法が行われる。 PJI において biofilm 形

成を伴う staphylococci が分離された場合、biofilm への浸透性が高いと考えられ

(8)

6

ている rifampicin (RFP) の併用療法が行われている。日本においても、日本感染

症学会・日本化学療法学会が発行している JAID/JSC 感染症治療ガイドで 2019 版から RFP の併用投与について記載された

5)

RFP は、日本において主に肺結核に対して長年使用されてきた。その適応菌種 は、Mycobacterium tuberculosis であるため

6)

、本来 staphylococci に対しては不 適切使用となる。結核の治療では、RFP が単剤で使用された場合、早期に RFP 耐性を獲得するため、他の抗結核菌薬と併用投与が行われている

7)

。すなわち、

RFP は結核菌と同様に他の菌種に対しても容易に耐性化する可能性がある。そ

のため biofilm 形成 staphylococci に対する RFP と他の抗菌薬との併用療法は、

RFP 耐性化の抑制が目的となっている。しかしながら、こうした RFP 併用療法 における治療成績の有効率は 76%であったとする一方で、RFP 投与の有無で治 療効果に差が無かった報告など、一定のエビデンスが得られていない

8-10)

。さら

に RFP は Cytochrome P450 (CYP) をはじめとする肝薬物代謝酵素、P 糖タンパ

ク質を誘導する作用があり、臨床においては、他の医薬品との相互作用や副作用 に十分注意を払う必要があるため、漫然と投与されるべきではない。

本研究では staphylococci のうち分離頻度が最も高い Staphylococcus aureus を用

いた biofilm 形成菌に対する RFP 併用療法と RFP 耐性に焦点をあて、以下の検

討を行った。第一章では、S. aureus の in vitro biofilm 形成モデルを作成し、単剤

(9)

7

で抗菌薬を曝露させた際の殺菌力について検討した。第二章では、同様のモデル

を使用し、RFP と他抗菌薬の併用で曝露させた場合の殺菌効果と RFP 耐性抑制

効果について検討した。 第三章は、 RFP 耐性 S. aureus への RFP 曝露による biofilm

形成量の変化とその関連因子について解析した。

(10)

8

第一章

Staphylococcus aureusin vitro biofilm 形成モデルに対する 各種抗菌薬の抗菌力について

第一節 緒言

Staphylococcus aureus は、皮膚常在菌であることから主に手術後の創部感染を

引き起こすことが知られているが、近年、インプラント等医療用デバイス表面に も容易に感染巣を作る

11)

ことが明らかになり、整形外科領域における人工関節

等のデバイス表面に付着し、そこから菌の集合体である biofilm を形成すること が問題になっている。Biofilm は、自身からの分泌もしくは環境に存在するタン

パク質、多糖体および extracellular DNA (eDNA) などの小分子が細胞外マトリッ クスに埋め込まれており

3, 12-14)

、この biofilm を形成した S. aureus は、抗菌薬の 透過性を減弱させるため抗菌薬の有効性が低い。Ceri H et al.

15)

S. aureus の浮 遊菌に対する抗菌薬の最小発育阻止濃度 (MIC) と biofilm 形成状態の菌に対す

る最小 biofilm 根絶濃度 (MBEC) を比較したところ、MBEC 値は MIC 値の 100

– 1000 倍であったと報告している。また、S. aureus による人工関節感染症 (PJI:

prosthetic joint infection) 患者を対象とした抗菌薬単剤での治療は、寛解率が 63 –

(11)

9

65%であり、3 割以上が治療失敗もしくは再発している

16, 17)

日本感染症学会・日本化学療法学会が発行している JAID/JSC 感染症治療ガイ

ド 2019

5)

において、biofilm が形成されていると想定される術後骨髄炎の治療

は、抗菌薬の骨組織濃度を確保するため、経口抗菌薬による初回投与は推奨され

ず、基本的に 6 週間以上の経静脈投与が推奨されている。しかしながら、多くの 抗菌薬は、骨組織への移行性が悪く、デバイス表面の biofilm 形成菌を殺菌でき る濃度に到達しない可能性がある

18, 19)

Rifampicin (RFP) は、 biofilm への優れた透過性

20)

が報告されていることから、

biofilm 形成 S. aureus に対する殺菌効果が期待されている。Biofilm 形成の

methicillin-resistant S. aureus (MRSA) を用いた in vitro PK/PD モデルに対する殺菌 効果の検討において、Daptomycin (10 mg/kg) と RFP (600 mg) の併用により、対 象菌株は検出限界まで減少したが、これら両薬剤の投与量は適応外となってい る

21)

。このように比較的高濃度の抗菌薬における検討はされているものの、骨

組織濃度での biofilm 形成 S. aureus に対する殺菌効果の報告は少ない。

第一章では、biofilm に対する効果が期待される RFP、S. aureus 骨髄炎治療の

第一選択薬である cefazolin (CEZ) 、MRSA 感染症だけでなく S. aureus 感染症

のペニシリンアレルギー患者で選択されることがある vancomycin (VCM)

19)

さらに抗 biofilm 効果が期待されている clarithromycin (CAM)

22)

の計 4 薬剤を

(12)

10

用いて、S. aureus の in vitro biofilm 形成モデルに対する骨組織濃度での殺菌効

果を検討した。

(13)

11

第二節 材料と方法

2.1. 使用菌株と抗菌薬

使用菌株は、東北地方の総合病院 16 施設より臨床分離された S. aureus 292 株 のうち、異なる施設から分離された 9 株を選択した (Table 1) 。さらに、標準株 として S. aureus ATCC 29213 株を用いた。臨床分離された S. aureus 9 株の検体由 来は、膿、喀痰、耳漏などであった。

使用抗菌薬は cefazolin (CEZ: Sigma-Aldrich Co., LLC, Tokyo) 、 vancomycin

(VCM: Shionogi Co., Ltd. Osaka) 、clarithromycin (CAM: Taisho Pharmaceutical Co.,

Ltd. Tokyo) 、rifampicin (RFP: WAKO, Osaka) を用いた。

(14)

12

Table 1 Origin of Staphylococcus aureus used in this study

(15)

13

2.2. 抗菌薬感受性試験

S. aureus に対する CEZ、 VCM、 CAM および RFP の MIC を Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) に準拠し、微量液体希釈法

23)

で決定した。CLSI M100- S22 のブレイクポイント

24)

に従い、各薬剤の MIC が CEZ: ≧32 µg/mL、VCM:

≧16 µg/mL、 CAM: ≧8 µg/mL、 RFP: ≧4 µg/mL を示した場合にそれぞれ耐性と 判断した。

2.3. PCR-based Open Reading Flame typing (POT) 法による遺伝子型の決定

使用菌株の遺伝子型を PCR-based Open Reading Flame typing (POT) 法を用いて 解析した。すなわち、菌株を識別可能な複数の Open Reading Flame を、マルチプ レックス PCR 法によって増幅した。各々の菌株から DNA を抽出し、 Cica geneus

®

Staph POT kit (Kanto Chemical Co., Inc. Tokyo) に添付されたプライマーミックス

を用いて 94℃15 秒、60℃3 分を 30 サイクルの PCR を実施した。その後、4%ア

ガロースゲルを用いて 100V、 60 分間の電気泳動を行い、確認された増幅バンド

パターンから POT 値を算出した。

(16)

14

2.4. in vitro biofilm 形成モデルの作製

被検菌株は、Mueller-Hinton agar (MHA: Eiken, Tokyo) に塗抹後 37℃、24 時間 培 養 し た 。 発 育 し た コ ロ ニ ー を 1% glucose 含 有 Tryptic soy broth (Becton, Dickinson and Company, Tokyo) (TSBG) 10 mL に接種し、 菌液濃度が 1× 10

8

CFU/mL となるよう調整した。 この培養液中に滅菌処理された内径 4.0 mm、 外径 10.0 mm、

厚さ 0.8 mm のステンレスワッシャー (Ohsato Co., Ltd. Tokyo) を配置し 37℃、

48 時間振とう培養することにより、biofilm 形成モデルを作製した。

2.5. 走査型電子顕微鏡 (SEM) を用いた biofilm の確認

形成された biofilm を走査型電子顕微鏡 VE-8800 (SEM: Keyence, Osaka) を用 いて確認した。 すなわち、 biofilm 形成菌が増殖したワッシャーを PBS で洗浄し、

2.5%グルタルアルデヒドにより 24 時間室温で固定後、エタノール (50%、 75%、

99.5%) にて各々10 分間浸漬することにより脱水処理した。サンプルはマグネ

トロンスパッター (Keyence) を使用し、金でスパッターコーティング

25)

した後

に、加速電圧 10 kV で SEM を使用して観察した。

(17)

15

2.6. Biofilm 形成 S. aureus に対する各抗菌薬の曝露による殺菌力の検討

Biofilm 形成モデルは、 1 株に対し 7 枚作成し 24 時間ごと新たに各抗菌薬含有

TSBG に配置後、37℃で計 120 時間培養した。生菌数は、0 時間および 24 時間 ごとにワッシャーを 1 枚ずつ取り出し、それぞれ 3 回洗浄後 PBS 1 mL にて 50 回揉みこみ、biofilm 形成 S. aureus を懸濁させた後に測定された

26)

。この時、

10

2

CFU/mL を検出限界とした。抗菌薬の濃度は、各薬剤を常用量投与時の骨組

織濃度を参考に、それぞれ CEZ: 20 µg/mL

27)

、VCM: 7 µg/mL

28)

、CAM: 1 µg/mL

25)

、RFP: 1 µg/mL

29)

とした。さらに、検出限界以下を示した培養液中に生残株

が認められるか検討するため、抗菌薬曝露後のワッシャーを抗菌薬フリーの

MHA 上に配置し、 37℃、 48 時間培養した。菌の発育が認められなかった場合を

殺菌と定義した。発育が認められた場合、そのコロニーを回収し各々の株に対す

る CEZ、 VCM および CAM の MIC 値を測定した。 RFP は、耐性化を確認するた

め 24 時間後から 120 時間後まで 24 時間毎に MIC 値を測定した。

(18)

16

第三節 結果

3.1. 使用菌株の遺伝子型及び抗菌薬感受性

S. aureus の臨床分離株 9 株の POT 法によるアガロースゲル電気泳動の結果を

Fig. 1 に示した。これらの株の遺伝子パターンはすべて異なっていた。これらの

株に対する CEZ、VCM、CAM および RFP の MIC 値の範囲は、それぞれ 0.5 – 1

µg/mL、0.5 – 1 µg/mL、0.25 – 1 µg/mL、0.0078 – 0.0156 µg/mL であり、9 株すべ

て各抗菌薬に対して、感受性を示した (Table 2) 。同様に、ATCC 29213 株の各

抗菌薬の MIC 値は CEZ: 0.5 µg/mL、VCM: 1 µg/mL、CAM: 0.25 µg/mL および

RFP: 0.0078 µg/mL であった。

(19)

17

M: size maker, P: positive control, 2: MS-2, 4: MS-4, 5: MS-5, 10: MS-10, 14: MS-14, 17: MS-17, 18: MS-18, 19: MS-19, 20: MS-20, A: ATCC29213.

Fig 1. Gene pattern of Staphylococcus aureus by POT method

Table 2 MICs and POT number of antibiotics for Staphylococcus aureus

CEZ: cefazolin, VCM: vancomycin, CAM: clarithromycin, RFP: rifampicin.

(20)

18

3.2. Biofilm 形成 S. aureus に対する殺菌効果

SEM により、ステンレスワッシャー上の biofilm 形成 S. aureus が確認された (Fig. 2)。Biofilm 形成 S. aureus に対して CEZ を曝露させた場合、4 株は 72 時間 で検出限界以下となったが、 6 株は生残した (Fig. 3A)。同様に、 VCM、CAM お よび RFP の曝露はそれぞれ 3 株、2 株、4 株が 96 時間までで検出限界以下とな り 7 株、8 株および 6 株が生残した (Fig. 3B – D)。

Magnification: 3000×

Fig. 2 SEM image of biofilm formed MS-5 strain on the washer

5 µm

(21)

19

(A) CEZ

(B) VCM

(C) CAM

(D) RFP

(22)

20

Fig. 3 Changes of bacterial count exposure to single antibiotic

The vertical axis shows the bacterial counts after exposure of Staphylococcus aureus that formed biofilm for a certain period of time to cefazolin (A), vancomycin (B), clarithromycin (C), rifampicin (D). Solid line ● : MS-2, Solid line ▲ : MS-4, Solid line

■ : MS-5, Solid line ◆ : MS-10, Solid line × : MS-14, Botted line 〇 : MS-17, Botted

line △ : MS-18, Botted line □ : MS-19, Botted line ◇ : MS-20, Botted line × :

ATCC29213 strain. The detection limit is lesser than 10

2

CFU/mL.

(23)

21

CEZ 曝露後に検出限界以下となった 4 株は、48 時間抗菌薬フリー培地で培養 後、増殖を認めなかったため殺菌されたと判断された (Table 3)。同様に VCM、

CAM で検出限界以下となった全ての株は、増殖せず殺菌された。RFP 曝露で検 出限界以下となった株のうち MS-14 株は、抗菌薬フリー培地で増殖を確認した ため生残したと判断された。

Table 3 Sterilize effect of exposure to each antimicrobial agent

F: failed, S: sterilized.

CEZ: cefazolin, VCM: vancomycin, CAM: clarithromycin, RFP: rifampicin.

(24)

22

3.3. 各抗菌薬曝露後の抗菌薬感受性

CEZ 曝露 120 時間後の MIC 値の範囲は 0.5 – 1 µg/mL であり、すべて感受性を 保持していた (Table 4)。同様に VCM および CAM の MIC 値の範囲は、それぞ

れ 1 µg/mL および 0.25 – 0.5 µg/mL であり、いずれも感受性が確認された。一方、

RFP 曝露で生残した計 7 株は、全て 24 時間から 120 時間まで MIC > 128 µg/mL を示し、耐性を獲得した (Table 5)。

Table 4 MICs after exposure to each antimicrobial agent

CEZ: cefazolin, VCM: vancomycin, CAM: clarithromycin.

(25)

23

Table 5 MICs after 24 – 120 hours exposure to rifampicin

RFP: rifampicin.

(26)

24

第四節 考察

PJI などのデバイス関連感染症に関する治療では、デバイス抜去による外科的 処置のほか、biofilm 形成菌に対する抗菌薬治療など様々な方法が検討されてい る。しかしながら、biofilm 形成菌に対する抗菌薬の殺菌効果を示したこれまで の報告

30)

は、常用量を遙かに超えた用量 (100 – 500 倍) が用いられており、実 際の治療を反映していない場合が多かった。そこで第一章では、骨組織濃度の

CEZ、VCM、CAM および RFP の殺菌効果を検討した。

今回の検討では、 biofilm 形成 S. aureus に対する抗菌薬単剤での曝露によって 殺菌されない株が CEZ、VCM、CAM および RFP でそれぞれ 4 株、7 株、8 株お よび 7 株認められた。CEZ は、S. aureus の浮遊菌に対して殺菌効果を示すが、

biofilm 形成 S. aureus に対する殺菌効果は 60% (6/10 株) にとどまった。 β-ラクタ ム系薬は、 biofilm に対する透過性が低いことが報告されている

30)

。また、骨組 織は循環血液量が少ないことから抗菌薬が届きにくく

31)

、そのため整形外科領 域での抗菌薬療法は骨組織への薬物移行性が鍵となる。つまり、今回の検討では、

CEZ が十分な骨組織濃度に達していない可能性があり、骨組織感染症に対する CEZ の使用は、biofilm 形成 S. aureus の殺菌に不十分であったと考えられた。

In vitro の検討で、100 µg/mL の VCM は biofilm 形成 S. aureus に対して菌数の

(27)

25

減少を認めなかったことが報告されている

32)

。今回我々が示した骨組織濃度を

想定した 7 µg/mL の検討では、70% (7/10) の株が殺菌されなかった。VCM は β-

ラクタム系と同様に biofilm の透過性が低く

30, 33)

、biofilm 形成菌に対して殺菌 効果を得るためには高濃度を必要とされるため、骨組織内では十分な濃度に達 しないと考えられた。

一方、CAM は、高濃度 (100 µg/mL) であれば抗 biofilm 効果を示すが、それ よりも低濃度の場合は殺菌効果が得られないことが報告されている

34)

。今回実

施した骨組織濃度 (1 µg/mL) の CAM では、十分に殺菌されず、効果が期待でき ない可能性が示唆された。Fujimura S et al.

25)

は、CAM を 1 µg/mL の濃度で 72 時間曝露したが biofilm 形成 S. aureus を死滅させることができなかった。今回 我々は 120 時間曝露させたが、同様の傾向が示された。以上より CEZ、VCM お よび CAM はいずれも biofilm 形成 S. aureus に対して、常用量では殺菌効果が得 られないことが示唆された。

RFP に関して、ヒト骨芽細胞内の S. aureus に対して RFP 曝露が生菌数を顕著 に減少させたと報告

35)

されているが、 今回の検討において RFP の曝露は、 biofilm

形成 S. aureus に対し 70% (7/10 株) が殺菌されなかった。さらに、これらの 7 株

はすべて、曝露 24 時間で MIC が > 128 µg/mL の高度耐性を獲得していたこと

が確認された。この RFP 単独曝露での耐性化は、既知の報告

36-38)

でも同様の傾

(28)

26

向を示しており、これが今回 70%の株で殺菌されなかった原因であると考えら れた。

今回検討した 4 薬剤の各々単剤の曝露では、S. aureus 浮遊菌に対して殺菌効

果を示すが、biofilm 形成菌に対しては殺菌しにくいうえ、特に RFP は耐性を獲

得しやすいことが明らかになった。そのため、biofilm 形成 S. aureus 感染症に対

する新規治療法の開発が急務である。特に RFP を単剤投与は、耐性を獲得しや

すいため、併用療法が必要であると考えられた。

(29)

27

第五節 小括

デバイス関連感染症では、S. aureus は多くの場合 biofilm を形成する。今回示 された結果より、整形外科領域におけるデバイス関連感染症に対する常用量の

CEZ、 VCM、 CAM および RFP では、いずれも単剤の投与において殺菌効果が十 分に得られない可能性が示唆された。特に RFP の単剤曝露では 10 株中 7 株が殺 菌されず、24 時間で耐性を獲得していることが明らかとなった。以上により、

術後骨髄炎など整形外科領域の biofilm 形成 S. aureus 感染症に対する抗菌薬の単

剤投与は、治療効果が得られない可能性が示唆された。

(30)

28

第二章

Biofilm 形成 Staphylococcus aureus に対する rifampicin をベースとした 併用投与の殺菌効果と rifampicin 耐性抑制について

第一節 緒言

人工関節周囲感染症 (PJI: prosthetic joint infection) など、biofilm を形成した

S. aureus 感染症の治療は、抗菌薬の併用による薬物療法が実施されている。米

国感染症学会が公表した PJI の診療ガイドライン

4)

では、人工関節を温存する 場合、biofilm への浸透効果が期待される rifampicin (RFP) をベースに nafcillin、

cefazolin (CEZ) または ceftriaxone のいずれかを併用投与することが推奨されて

おり、その投与期間は、人工膝関節感染症の治療では 3 ヶ月、人工股関節感染

症では 6 ヶ月となっている。一方、人工関節再置換術を行った場合、同様の抗

菌薬併用投与を 3 ヶ月間行うことが推奨されている。RFP を含む併用療法の治

療効果を検討した臨床試験において、RFP 併用により 76%が奏功したとする報

8)

がある一方、25%に再発が見られたとの報告

9)

や、併用群と非併用群で治

療成績に差が見られなかったとする報告

10)

がある。このほか、2018 年に英国

の 29 施設で行われた検討では、S. aureus の菌血症患者に対し、標準治療群と

(31)

29

標準治療+RFP 併用群における治療効果、再発率、死亡数は両群間において差

が無く、むしろ RFP 併用群の方が有害事象と薬物相互作用の発生率が高いこと が報告された

39)

RFP と他の抗菌薬を併用する目的には、RFP 耐性化の抑制がある。S. aureus 感染症治療に対し RFP を単剤で使用している南アフリカおよび中国では、RFP

耐性率が 52.8 – 63%および 94.3%を示し、近年問題になっている

40-42)

。第一章

では、RFP の in vitro 単剤曝露で 70% (7/10) の株が 24 時間後に耐性化すること を示した。こうした RFP の耐性を抑制するため RFP の併用療法が行われる。

このように RFP 併用による biofilm 形成菌に対する殺菌効果および RFP 耐性

抑制効果は明らかになっていない。第二章では RFP をベースとした各抗菌薬と

の併用による殺菌効果および RFP 耐性抑制効果について検討した。

(32)

30

第二節 材料と方法

2.1. Biofilm 形成 S. aureus に対する RFP と各抗菌薬の併用曝露による殺菌力

S. aureusin vitro biofilm 形成モデルに対し、曝露した抗菌薬の組み合わせは RFP + CEZ (RCE) 、RFP + vancomycin (VCM) (RV) および RFP + clarithromycin

(CAM) (RCA) の 3 パターンである。抗菌薬の濃度は、各薬剤の常用量投与時に

おける骨組織濃度を参考にそれぞれ CEZ: 20 µg/mL

27)

、VCM: 7 µg /mL

28)

、 CAM: 1 µg /mL

25)

、RFP: 1 µg /mL

29)

とした。使用菌株は第一章と同様の親株 10 株であり、これらに上記 3 パターンの併用曝露後の計 30 株を対象とした。 In vitro biofilm 形成モデルは、併用曝露 24 時間毎 (0、24、48、72、96、120 時間) に 1 枚ずつ取り出し、PBS 1000 µL に懸濁後、第一章に準じて 30 株の生菌数を測定 した。培養は 1% glucose 含有 Tryptic soy broth (TSBG) を用いて 37℃で行った。

菌数が 10

2

CFU/mL を下回った時、検出限界以下と判断した。検出限界以下を示

した株のうち、biofilm 形成モデル上に生菌を認めるか検討するため、抗菌薬曝

露 120 時間後の biofilm 形成モデルを抗菌薬フリーの Mueller-Hinton agar (MHA)

上に配置し、37℃、48 時間培養した。このとき菌の発育が認められなかった場

合を殺菌と定義した。他方、発育が認められた場合、その時点でのコロニーを回

(33)

31

収し各々の株に対する CEZ、VCM、CAM および RFP の MIC 値を測定した。S.

aureus に対する CEZ、VCM、CAM および RFP の MIC を Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) に準拠した微量液体希釈法

23)

で決定した。CLSI M100- S22 のブレイクポイント

24)

に従い、各薬剤の MIC が CEZ: ≧32 µg/mL、VCM:

≧16 µg/mL、 CAM: ≧8 µg/mL、RFP: ≧4 µg/mL を示した場合、それぞれ耐性と 判断した。

2.2. rpoB 遺伝子の塩基配列解析

RFP 耐性が確認された株の rpoB 遺伝子変異を解析した。rpoB の PCR および DNA sequence の primer

43)

は、rpoB-Fw (5’-ACCGTCGTTTACGTTCTGTA-3’)、

rpoB-Rv (5’-TCAGTGATAGCATGTGTATC-3’) を 使 用 し た 。 増 幅 産 物 は

FastGene

TM

Gel/PCR Extraction Kit に よ っ て 精 製 し 、 DNA シ ー ク エ ン ス は

Genomelab GeXP を用いた Dye Terminator Cycle Sequencing method によって決定

された。

(34)

32

2.3. RFP 耐性株の biofilm 形成量の測定

2.1. で得られた RFP 耐性株とその親株の biofilm 形成量を比較するため、RFP

耐性株と親株をそれぞれ McFarland no. 0.5 となるように TSBG で調製し、 96-well

plate に接種後 37℃、48 時間振とう培養した。その後、培地を除去した 96-well

plate を PBS により 3 回洗浄し、 続いて 0.1% (w/v) Crystal violet (CV: WAKO, Osaka)

水溶液 100 μL/well 添加後、 5 分間染色した。 CV 水溶液を除去した後、 Milli-Q 水

で 3 回洗浄し、 biofilm を染色した残存 CV は 30%に調製した酢酸 (WAKO) 溶液 にて抽出された。 この抽出液の CV 量を 595 nm の吸光度 (Microplate Reader Model 680: Bio-Rad, CA) にて定量することにより biofilm 形成量を決定した。

2.4. 統計解析

2.3.で測定されたそれぞれの biofilm は、Student’s t-test を用いて統計解析を行

った。 RFP 耐性株群とその親株群の両群間において、 P < 0.05 を有意差ありと判

断した。

(35)

33

第三節 結果

3.1. Biofilm 形成 S. aureus に対する殺菌効果

RFP + CEZ で曝露された株は、24 時間後に biofilm の破壊が確認された (Fig.

1)。同様に、RFP + VCM または RFP + CAM の曝露においても biofilm が破壊さ

れた。

(36)

34

(A) MS-18 Wild Type (B) rifampicin and cefazolin

(C) rifampicin and vancomycin (D) rifampicin and clarithromycin

Magnification: 3000×

Fig. 1 SEM image of biofilm of MS-18 strain on the washer

Biofilm formed (A) MS-18 strain and (B) MS-18 strain after exposure to rifampicin and cefazolin or (C) MS-18 strain after exposure to rifampicin and vancomycin or (D) MS- 18 strain after exposure to rifampicin and clarithromycin for 24 hours.

5 µm 5 µm

5 µm 5 µm

(37)

35

各併用による殺菌効果は、RFP + CEZ では 96 時間後にすべての株の生菌数が 検出限界以下を示した。同様に、RFP + VCM および RFP + CAM では、72 時間 後に各々100%と 90%の株が検出限界以下になった (Fig. 2)。RFP + CAM の 1 株

(MS-20RCA) は、24 時間曝露後に菌数が 10

2

CFU/mL 程度まで減少したものの、

その後 10

4

CFU/mL 程度に増加した (Fig. 2-C)。すなわち、この 1 株を除く 29 株 が検出限界以下を示した。これら 29 株のうち 8 株は、抗菌薬フリー培地で 48 時 間培養後、再増殖がみられた。これら 8 株の併用薬の内訳は、 4 株が RFP + CEZ、

2 株が RFP + VCM、のこり 2 株が RFP + CAM であった (Table 1)。すなわち、併 用曝露にて再増殖が認められた株は上記の 8 株に加え、曝露 24 時間以降に再増

殖した MS-20RCA 株 1 株の合計 9 株であった。

(38)

36

(A) RFP + CEZ

(B) RFP + VCM

(C) RFP + CAM

Fig. 2 Changes of bacterial count exposure to antibiotic combined rifampicin The vertical axis shows the bacterial counts after exposure of Staphylococcus aureus that formed biofilm for a certain period of time to rifampicin + cefazolin (A), rifampicin + vancomycin (B), and rifampicin + clarithromycin (C). Solid line ●: MS-2, Solid line

▲: MS-4, Solid line ■: MS-5, Solid line ◆: MS-10, Solid line ×: MS-14, Botted line

〇: MS-17, Botted line △: MS-18, Botted line □: MS-19, Botted line ◇: MS-20,

Botted line ×: ATCC29213 strain. The detection limit is lesser than 10

2

CFU/mL.

(39)

37

Table 1 Sterilize effect of exposure to rifampicin and other antimicrobial agent

F: failed, S: sterilized.

CEZ: cefazolin, VCM: vancomycin, CAM: clarithromycin, RFP: rifampicin.

(40)

38

3.2. RFP 併用曝露により再増殖した株の抗菌薬感受性

RFP 併用曝露により再増殖が認められた 9 株における RFP の MIC は、全て

> 128 µg/mL の耐性を示した (Table 2)。このとき CEZ、 VCM および CAM の MIC の変動は 1 管程度あり、全て感受性を保持していた。

Table 2 Changes in MIC of strains before and after the combined exposure to rifampicin and other antimicrobial agent

*Strains were survived by combination with rifampicin.

CEZ: cefazolin, VCM: vancomycin, CAM: clarithromycin, RFP: rifampicin.

(41)

39

3.3. RFP 耐性株における rpoB 遺伝子解析

RFP 耐性を獲得した 9 株 (Table 2) は、 それぞれ rpoB の点変異が確認された。

最も多く確認された RpoB のアミノ酸変異は His481>Tyr であり MS-14RCE、

-18RCE、 -18RV、 -18RCA の 4 株でみられた。次いで MS-2RCE、 -2RV、 -2RCA の 3 株で、すべて Ile527>His の変異が確認され、MS-19RCE、-20RCA の 2 株は、

それぞれ Ser486>Leu、 Ser486>Phe の変異が確認された (Table 3)。これらのうち、

Ile527>His と Ser486>Phe は今回新たに確認された変異点であった。

(42)

40

Table 3 rpoB mutation after combined exposure to rifampicin

* Strains were survived by combination with rifampicin.

RCE: exposed with rifampicin + cefazolin, RV: exposed with rifampicin + vancomycin,

RCA: exposed with rifampicin + clarithromycin.

(43)

41

3.4. Biofilm 形成量の比較

RFP 耐性の 9 株 (MS-2RCE、 -2RV、 -2RCA、 -14RCE、 -18RCE、 -18RV、 -18RCA、

-19RCE、-20RCA) とその親株 5 株 (MS-2、-14、-18、-19、-20) の biofilm 形成 量をそれぞれ比較した。 MS-2 および MS-19 について親株の biofilm 形成量は 0.54

± 0.04 と 0.55 ± 0.02 であり、その RFP 耐性株である MS-2 RFP-R および MS-19 RFP-R は、0.93 ± 0.06 と 0.64 ± 0.04 とそれぞれ有意に上昇した (P < 0.05) (Fig.

3) 。しかしながら、これら 2 株を除く 3 株 (MS-14、-18、-20) は RFP の耐性獲

得後に、biofilm 形成量の差を認めなかった (P = 0.361、0.385、0.266) 。

(44)

42

Fig. 3 Comparison of biofilm formation amounts between RFP-resistant strains and their parental strains

Black bars: parental strains, White bars: RFP-resistant strains. WT: wild type, RFP-R:

rifampicin-resistance. MS-2 RFP-R: average value of MS-2RCE, -2RV, -2RCA. MS-18 RFP-R: average value of MS-18 RCE, -18RV, -18RCA.

: P < 0.05.

n=6

(45)

43

第四節 考察

PJI は人工関節置換術後の代表的な合併症の一つであり、その原因菌として S.

aureus やコアグラーゼ陰性 staphylococci (CNS) が 60%以上を占める

44, 45)

。こ

れらの staphylococci はデバイス上に biofilm を形成し抗菌薬に抵抗性を示すこと

から殺菌されにくい。第二章では、 biofilm 形成 S. aureus に対し RFP をベースと

した CEZ、VCM および CAM を併用投与した場合の殺菌効果を検討した。

被検菌株 30 株中 MS-20RCA の 1 株を除き、全ての株の菌数は 10

2

CFU/mL 以

下を示した。しかしながら、この 1 株を含む計 9 株は完全に殺菌されなかった。

これら 9 株は CEZ、VCM および CAM の感受性を保持していたものの、RFP に

対し高度耐性 (MIC: > 128 µg/mL) を獲得した。RFP は、rpoB 遺伝子によってコ

ードされている細菌 DNA 依存性 RNA polymerase の β-subunit への結合を介し、

転写を阻害することで殺菌効果を示す

46, 47)

。この rpoB 遺伝子の変異は、RNA

polymerase β-subunit のアミノ酸残基を変化させ、RFP との結合親和性を低下さ

せることで RFP に対し耐性を示すと考えられている

48)

。今回 RFP の耐性を獲

得した 9 株は、いずれも rpoB に一ヶ所の変異点を有していた。このうち

His481>Tyr 変異は、既知の rpoB 変異点であり、MIC が高値 (32 – 1024 µg/mL)

を示すことが報告されている

43, 48-52)

。このほか、 Ser486>Leu 変異では、 RFP の

(46)

44

高度耐性 (MIC: 512 – 1024 µg/mL) を示す

49-51)

。一方、3 つ全ての併用パターン

で RFP 耐性を認めた MS-2 株の Ile527>His および RFP + CAM 曝露後に耐性化し

た MS-20RCA 株の Ser486>Phe は、今回新たに見つかった変異であった。今回、

486 番目の Ser に複数の異なるアミノ酸変異が確認されたことから、この場所の 変異は RFP 高度耐性のコアとなる可能性が考えられた。

一般に細菌は薬剤耐性を獲得することにより、biofilm 形成量を増加させると

考えられている

53-55)

。 今回の検討においても、 親株より RFP 耐性獲得株の biofilm 形成量が高い傾向を示した。その理由は未解明であるが biofilm には菌の密着保 持能を高める作用があり、耐性獲得により増殖能が低下

56)

した菌が相互に生命 維持を保つためではないかと考えられた。 この傾向は細菌の個体差

57, 58)

があり、

今後さらなる検討が必要である。

今回我々は、RFP と CEZ の併用により、10 株中 4 株が RFP 耐性を獲得し殺 菌されなかったことを示した。この組み合わせは、 3 つの併用パターンの中で耐 性化が最も多くみられた併用であった。Kaplan JB et al.

59)

は、biofilm 形成 S.

aureus に対し sub-MIC の β-ラクタム系薬曝露が、細胞壁破壊により biofilm の構

成成分である extracellular DNA (eDNA) を増加させ、 biofilm 形成を促進させると

報告した。このため CEZ の併用は、biofilm 産生量を上昇させ、抗菌薬の抵抗性

を増した可能性がある。これらのことから、biofilm 形成 S. aureus に対する RFP

(47)

45

と CEZ の併用曝露は、β-ラクタム系による biofilm 形成の誘導効果に加え、RFP の耐性化が biofilm 形成を助長させたことから、殺菌効果が得られなかった可能 性が考えられた。一方、RFP と CAM 曝露では、10 株中 3 株が殺菌されなかっ た。CAM を含む併用曝露について、DAP と CAM の併用で完全に殺菌できなか ったことが in vitro

21)

および in vivo

60)

で報告されている。しかしながら、既報 告では CAM の併用による S. aureus の biofilm 破壊効果が示されている

25)

。 CAM は、緑膿菌が形成する biofilm の構成成分のひとつであるグリコカリックスを減 少させる効果

22)

が知られている。S. aureus の biofilm にも同成分が含まれるこ とから、抗 biofilm 効果期待されるが、これに関してはさらなる検討が必要であ る。今回検討した biofilm 形成 S. aureus に対する RFP と他の抗菌薬曝露では、

RFP と VCM の併用投与が最も有効であったが、どの組み合わせにおいても RFP

の耐性化を完全に抑制できなかった。 RFP 併用投与により、 20 – 40%の株で RFP

耐性化が起こり、さらにこれらは biofilm 形成量を増加させることが明らかにな

った。これらのことから、RFP の併用は臨床で避けるべきである。

(48)

46

第五節 小括

Biofilm 形成 S. aureus に対する RFP 併用投与は、60 – 80%の株を 10

2

CFU/mL 以下の菌数まで減少させた。しかしながら、どの組み合わせでも完全に殺菌され

ず、rpoB 変異による RFP の高度耐性化と biofilm 形成量の増加が認められた。

このことから、RFP をベースとした抗菌薬の組み合わせにおいて、RFP 耐性化 を完全に抑制することは困難であると結論付けた。したがって、PJI などの

biofilm 形成 S. aureus 感染症に対する RFP の併用療法では、一部に RFP 耐性株

が選択され、治療失敗もしくは再発をもたらす危険性がある。

(49)

47

第三章

Rifampicin 耐性 S. aureus 株の

rifampicin 曝露による biofilm 形成の変化とその関連因子について

第一節 緒言

細菌の biofilm 量は飢餓状態、 pH、クォーラムセンシングなどによって調節さ

れる

61-64)

。このほか最近では薬剤排出ポンプの関与が指摘されている

65)

。薬剤

排出ポンプは、 biofilm 形成に必要な構成成分を菌体外へ排出させることにより、

biofilm 形成を促進させる重要な役割を果たす。例えば、Pseudomonas aeruginosa

などのグラム陰性菌において biofilm の形成により薬剤排出ポンプの mRNA 発 現量を 2.5 倍上昇させたとの報告がある

66)

。さらにこの薬剤排出ポンプ欠損株

が、 biofilm 形成量を減少させたことも確認されている

67)

。基本的に薬剤排出ポ

ンプはグラム陽性菌および陰性菌の双方が保有している機能であり、その本質

は菌体内に入った抗菌薬や消毒薬による影響を免れるために、細菌にとって有

害なこうした物質を菌体外へ排出することにある。しかしながら、同時に多糖体

やタンパク質なども排出され、それが biofilm の構成成分として形成量に影響を

与えている。代表的な薬剤排出ポンプとして、P. aeruginosa では MexAB-OprM

(50)

48

が知られており、これは主に β-ラクタム系抗菌薬の排出に加え、アミノグリコ シド系薬やキノロン系薬を排出する

68)

グラム陰性菌が形成する biofilm の形態は、糖タンパク質や多糖体などで構成 されるグリコカリックスであるが、 S. aureus などのグラム陽性菌では、菌体同士 が細胞外タンパク質、多糖類細胞間アドヘシン (PIA)、extracellular DNA (eDNA)

などを利用して菌体同士を接着させる。 S. aureus の薬剤排出ポンプには、 NorA、

NorB、 NorC および MdeA などが報告されており、この NorA、 NorB、 NorC は主

にキノロン系薬、MdeA ではベンザルコニウム塩化物の排出に関与する

69)

。グ

ラム陽性菌の薬剤排出ポンプも biofilm 形成に影響を与えると考えられているが、

S. aureus のどのポンプが関与しているのか解明されていない。

第二章では、 S. aureus の biofilm 形成モデルに対して、 rifampicin (RFP) 併用曝

露で 30%の株が早期に耐性化した。これらの株には耐性獲得と同時に biofilm 形

成量が上昇する株と不変の株が存在した。第三章では、RFP 曝露による biofilm

形成 RFP 耐性 S. aureus の biofilm 形成に薬剤排出ポンプの与える影響と RFP 耐

性獲得時間について検討した。

(51)

49

第二節 材料と方法

2.1. S. aureusbiofilm 形成と定量

菌株は MS-2 株、 MS-18 株の親株と、第二章で RFP と CEZ 曝露により RFP 耐

性化し biofilm 形成上昇群の MS-2RCE 株と不変群の MS-18RCE 株を使用し、既

報告

32)

に従って 96-well plate に biofilm を形成させた。すなわち、各親株は

McFarland no. 0.5 となるよう 1% glucose 含有 Tryptic soy broth (TSBG)で調製し、

96-well plate に 100 µL 接種後 37℃、48 時間振とう培養し、plate 底部に biofilm を形成させた。 RFP 耐性株は、それぞれ TSBG および RFP (1 μg/mL) 含有 TSBG を用い、 上記と同様の方法で biofilm 形成をおこなった。 Plate 内の培地を除去後、

PBS で 3 回洗浄し、0.1% (w/v) Crystal violet (CV) で 5 分間染色した。CV を廃棄

したうえで残存色素を抽出し、 Microplate Reader Model 680 (Bio-Rad)を用いた 595

nm の吸光度により biofilm 形成量を決定した。

(52)

50

2.2. RNA 抽出および qRT-PCR

全ての株の biofilm 形成株から RNA を抽出するため、細胞培養ディッシュ (VIOLAMO, Osaka, JAPAN) を用い、2.1. と同様に biofilm を形成させた。各 biofilm 形成菌の Total RNA は、TRI Reagent

TM

LS (Molecular Research Center, Inc., Cincinnati, OH) にて抽出した。mRNA 発現レベルは、iTaq Universal SYBR Green One-Step Kit (Bio-Rad) を用いた CFX Connect Real-Time System (Bio-Rad) にて決 定した。解析した遺伝子は、 S. aureus の薬剤排出ポンプをコードしている 4 遺伝 子 (norA、 norB、 norC および mdeA) とした。使用 primer を以下に示す

70-72)

: norA- Fw (5’-ATCGGTTTAGTAATACCAGTCTTGC-3’) 、norA-Rv (5’-GCGATATAATGA TTTGAGATAACGC-3’) 、norB-Fw (5’-AGCGCGTTGTCTATCTTTCC-3’) 、norB- Rv (5’-GCAGGTGGTCTTGCTGATAA-3’) 、 norC-Fw (5’-AATGGGTTCTAAGCG ACCAA-3’) 、 norC-Rv (5’-ATACCTGAAGCAACGCCAAC-3’) 、 mdeA-Fw (5’-GTT TATGCGATTCGAATGGTTGGT-3’) 、 mdeA-Rv (5’-AATTAATGCAGCTGTTCCG ATAGA-3’) 、 gyrB-Fw (5’-CAAATGATCACAGCATTTGGTACAG-3’) 、gyrB-Rv (5’-CGGCATCAGTCATAATGACGA-3’) 。Target gene の mRNA の相対発現量は、

ΔΔCT 法を用いて gyrB の発現量に対して標準化し、各親株に対する倍数として

示した。本検討では既報告

73)

に準じ norA、 norB、 norC および mdeA の発現量が

(53)

51

2 倍以上を示した場合に上昇と判断した。

2.3. S. aureus の菌数測定と rifampicin の薬剤感受性試験

使用菌株は、第二章で RFP と CEZ、VCM、CAM をそれぞれ併用曝露させ、

すべての組み合わせで殺菌されなかった MS-2 株と MS-18 株の親株計 2 株とし た。各菌株を RFP (1 μg/mL) 含有 TSB に 1×10

9

CFU/mL となるよう接種し、 37℃

で培養した。培養時間は 0、 4、 8、12、 24 時間とし、各時間経過後の菌液を回収 した後、菌数および RFP の MIC を測定した。RFP の MIC は微量液体希釈法

23)

で決定し、MIC: ≧4 µg/mL を示した場合を耐性と判断した

24)

統計解析

2.1. で測定された biofilm 量は、Student’s t-test にて解析され、P < 0.05 を有意

差ありと判断した。

(54)

52

第三節 結果

3.1. RFP 含有培地の有無による RFP 耐性 S. aureusbiofilm 形成量の比較

MS-2RCE 株の biofilm 形成量は、その親株と比較して約 1.4 倍であった (P <

0.05) (Fig. 1)。さらに RFP 含有培地では 2.1 倍まで上昇した (P < 0.05)。一方、

MS-18 株では RFP の有無に関わらず、 RFP 耐性化による biofilm 形成量の差を認

めなかった。

(55)

53

Fig. 1 Amount of biofilm formed under each medium

The vertical axis shows the amount of biofilm. White bar: wild type cultured in TSBG, Gray bar: rifampicin-resistant strain cultured in TSBG, Black bar: rifampicin-resistant strain cultured in TSBG exposed to rifampicin. RCE: strain that acquired resistance by exposure to rifampicin and cefazolin. TSBG: Tryptic soy broth with 1% glucose.

P <

0.05.

(56)

54

3.2. RFP 含有培地の有無による rifampicin 耐性 S. aureus における薬剤排出ポン プ関連遺伝子の mRNA 発現量

3.1. において、 biofilm 形成量が上昇した MS-2RCE 株は、親株と比較し 2 倍以

上の mRNA 発現量上昇は確認されなかった (Fig. 2A)。RFP 含有培地における

mRNA 発現量は norA、norC がそれぞれ 3.2 倍と 4.2 倍上昇した。一方、biofilm

形成量に差を認めなかった MS-18RCE 株で norA の mRNA 発現量が親株の 3.1

倍上昇し、 RFP 存在下では norAnorB で各々8.3 倍、 3.0 倍を示した (Fig. 2B)。

(57)

55

(A) MS-2RCE strain

(B) MS-18RCE strain

Fig. 2 Relative expression of mRNA in rifampicin-resistant S. aureus

The expression in (A) MS-2RCE and (B) MS-18RCE is presented as a ratio compared

with wild type. White bar: strain cultured in TSBG, Black bar: strain cultured in TSBG

exposed to rifampicin. RCE: strain that acquired resistance by exposure to rifampicin and

cefazolin. TSBG: Tryptic soy broth with 1% glucose.

P < 0.05.

(58)

56

3.3. Rifampicin 曝露による S. aureus の菌数変化と rifampicin 耐性化率

MS-2 株の菌数は、RFP 曝露後 12 時間まで減少傾向を示したが、その後上昇 に転じた (Fig. 3)。 MS-18 株においても、 MS-2 株と同様の傾向が示された。これ ら親株の RFP 耐性化率は、8 時間培養後に各々約 70%、約 60%に増加し、24 時

間後で 100%となった。各時間における RFP の MIC を Table 1 に示した。両株と

も RFP 耐性化率が 50%を超えた 8 時間後に > 128 µg/mL を示し、RFP の耐性を

獲得した。この耐性は 24 時間後まで保持された。

(59)

57

(A) MS-2 strain

(B) MS-18 strain

Fig. 3 Changes in bacterial count and rate of rifampicin resistant bacteria

The left vertical axis indicates the surviving bacterial counts, the right vertical axis is the

resistance rate, and the horizontal axis in hours. The line graph shows the change in

bacteria count, and the bar graph shows the rate of rifampicin resistance.

(60)

58

Table 1 MICs after 0-24 hours exposure to rifampicin

RFP: rifampicin.

(61)

59

第四節 考察

第二章において、我々は S. aureus の RFP 耐性獲得により biofilm 形成量が上 昇する株と変化しない株の 2 群に分かれることを明らかにした。第三章では、

これら biofilm 形成量上昇群と不変群より各々1 株 (MS2-RCE、 MS-18RCE) 選択

し、この差異について検討した。

Biofilm 形成は複数のメカニズムによって調節されるが、このうち薬剤排出ポ

ンプの関与が最も注目される

74)

。薬剤排出ポンプは、一般に抗菌薬の曝露によ り高発現し、菌体内に入った抗菌薬を能動的に排出する。これらの中には、

biofilm の構成成分である多糖体やタンパク質、eDNA を菌体外へ放出するポン

プがあり、これらの成分を利用して biofilm を形成する

61)

今回、 S. aureus の薬剤排出ポンプをコードする遺伝子 (norA、 norB、 norC およ

mdeA) の mRNA 発現量を確認したところ、MS-2RCE 株は、親株に比してど

の遺伝子も 2 倍以上の上昇は確認されなかった。しかしながら、RFP 含有培地 で曝露させた場合、biofilm 形成量が上昇し norA および norC の mRNA 発現量 がそれぞれ 3.2 倍、 4.2 倍を示した。 norA、 norB、および norC は、 Major facilitator

superfamily (MFS) に属する薬剤排出ポンプをコードする遺伝子であり、主にキ

ノロン耐性に関与する

75)

。しかしながら、He et al.

72)

の検討では、S. aureus の

(62)

60

norC の発現上昇が biofilm 形成量を増加させており、本検討でも RFP の曝露に

より MS-2RCE 株の norC の発現レベル上昇と、biofilm 形成量の増加は関係して

いた。一方、biofilm 形成量不変群の MS-18RCE 株では、norA の mRNA 発現が 8.5 倍上昇した。しかしながら norA、 norB の発現レベルが上昇したものの biofilm 形成は促進されなかった。これらのことから、RFP 耐性 S. aureus が RFP 曝露に

よって biofilm 形成量を上昇させる要因の一つに、 norC の発現上昇が関与してい

る可能性が考えられた。

RFP 耐性を獲得した S. aureus は、biofilm 形成が増強されデバイス表面を長期 間汚染し続けると考えられることから、 RFP の併用投与は、その耐性化に十分注 意しなければならない。 MS-2 株、 MS-18 株の RFP 耐性獲得までに要した時間に ついて検討したところ、8 時間で RFP 耐性のコロニーが検出され、24 時間後に すべてのコロニーが耐性を示した。今回の検討で、全ての S. aureus が RFP 曝露 で早期に耐性を獲得する訳ではないものの、臨床分離株の 55%が RFP の使用に より早期耐性化した。S. aureus 感染症に対し RFP の使用を検討する際は、投与 前に RFP 併用曝露による耐性獲得の有無を検査で確認することが重要である。

そのため、チェッカーボード法を改良した早期検査方法の開発が臨床では必要

である。

(63)

61

第五節 小括

RFP 耐性 S. aureus へのさらなる RFP 曝露により、 biofilm 形成量が上昇する株 が存在した。 そのメカニズムには norC の発現上昇が関係していると考えられた。

臨床ではこうした株は治療開始前に検出されなければならない。特に、 biofilm 形

S. aureus による PJI の治療では、RFP 併用療法を行う前に、薬剤感受性試験

の段階で RFP と他の抗菌薬の併用における RFP 耐性化リスクを確認する必要が

ある。

(64)

62

総括

S. aureus のデバイス関連感染症は、biofilm を形成するため治療の有効性が低

い。特に、骨近傍のデバイス結合部位において十分な抗菌薬濃度が得られにくい

PJI では、併用療法が実施されている。こうした biofilm 形成 S. aureus 感染症の 治療成績の向上を目的として、 RFP が併用されることがあるが、治療効果に関す るエビデンスは一貫していない。また、 RFP の使用に伴う耐性化が懸念される。

そこで、本研究では in vitro biofilm 形成モデルを用い、RFP の殺菌効果および耐 性獲得に関する検討を行った。

第一章では、S. aureus による PJI を想定した biofilm 形成モデルを作成し、各 抗菌薬 (CEZ、VCM、CAM および RFP) を常用量単回投与後の骨組織移行濃度 の最高値で単剤曝露させ、各々殺菌効果を評価した。CEZ、VCM および CAM ではそれぞれ 40%、70%および 80%の株が完全に殺菌されなかった。また RFP

は 70%の株が殺菌されなかったのに加え、その生残株は全て MIC: > 128 µg/mL

の高度耐性を獲得した。Biofilm 形成 S. aureus に対し、抗菌薬の単剤曝露で殺菌 することは難しく、特に RFP では耐性を獲得しやすいことから、併用投与の必 要性が示唆された。

第二章では同じ biofilm 形成モデルで RFP をベースとした各抗菌薬 (CEZ、

(65)

63

VCM および CAM) との併用による殺菌効果および RFP 耐性抑制効果について

検討した。RFP を含む併用曝露では 30%の株が殺菌されず、これらの生残株は すべて 24 時間で RFP の高度耐性 (MIC: > 128 µg/mL) を獲得した。この結果か ら、PJI に対対する RFP の併用投与は RFP 耐性を獲得させ、治療が完遂できな い可能性が示唆された。 さらに、 我々は本章で得られた RFP 耐性株の中に biofilm 形成量が上昇した株と不変の株が存在することを明らかにした。

第三章は、前述の biofilm 形成量上昇株と不変株に対し、臨床における長期投 与を想定し、RFP 曝露し続けた場合の biofilm 形成量を確認した。その結果、上

昇株の biofilm 形成量は更に上昇し続け、そのメカニズムとして S. aureus の薬

剤排出ポンプの 1 つである NorC をコードしている norC の発現上昇が関係して いる可能性を示した。

PJI の治療を想定した in vitro モデルに対し、RFP をベースとした抗菌薬の組 み合わせでは、biofilm 形成 S. aureus を完全に殺菌することは難しいと考えられ た。しかしながら、新しい抗菌薬が開発されない現状で、今ある抗菌薬を組み合 わせて使用することは難治性感染症の治療として重要であると考える。RFP は 耐性化しやすいだけでなく、CYP などの薬物代謝酵素を誘導する作用を有する ことから、PJI の治療において極力 RFP を使用しない併用療法が望まれる。

以上より、本研究において biofilm 形成 S. aureus による汚染モデルに対する

(66)

64

RFP の併用曝露では、完全な殺菌が困難であることを示した。すなわち、被検菌 株 10 株中 5 株が in vitro 併用療法により早期に RFP 耐性を獲得し、 さらに biofilm 形成量も増加することを確認した。新しい抗菌薬が開発されない現状において、

既存抗菌薬を組み合わせた難治性感染症の治療法は必要である。Biofilm 形成 S.

aureus による PJI の抗菌化学療法では、起因菌が RFP 耐性を獲得しやすい株か

否か確認することが必要であり、細菌検査において併用薬負荷試験などの新た

な検査法を開発し、抗菌薬適正使用に取り組むことが重要である。

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謝辞

本研究を行うにあたり、終始御懇篤なる御指導、御鞭撻賜りました東北医科 薬科大学大学院薬学研究科 臨床感染症学教室 教授 藤村 茂 先生に 心より感謝申し上げます。

本論文を御精読いただき、有益なる御助言賜りました、東北医科薬科大学

大 学 院 薬 学 研 究 科 臨 床 薬 剤 学 教 室 教 授 村 井 ユ リ 子 先 生 、 感染生体防御学教室 教授 柴田 信之 先生に厚く御礼申し上げます。

本研究を進めるにあたり、種々の御助言、御指導賜りました東北医科薬科大学

大 学 院 薬 学 研 究 科 臨 床 感 染 症 学 教 室 助 教 河 村 真 人 先 生 、 助教 佐藤 匠 先生、古川 恵美子 先生(現 研究支援課)に感謝致します。

本研究で使用した菌株を分与いただきました東北文化学園大学 医療福祉 学部 抗感染症薬開発研究部門 特任教授 渡辺 彰 博士 に感謝致します。

本研究に対し、終始ご支援賜りました東北医科薬科大学 理事長・学長 高柳 元明 博士に深謝申し上げます。

最後に、本研究を行うにあたり終始激励ならびに支援してくださいました

東北医科薬科大学病院のスタッフの方々、家族、友人をはじめとする皆様に

心より感謝申し上げます。

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66

引用文献

1) Spellberg B, Lipsky BA. Systemic antibiotic therapy for chronic osteomyelitis in adults.

Clin Infect Dis. 54: 393-407. (2012)

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http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/jhais_ssi- surveillance2019.pdf [Accessed 18 October 2020]

3) Donlan RM, Costerton JW. Biofilms: survival mechanisms of clinically relevant microorganisms. Clin Microbiol Rev. 15: 167-193. (2002)

4) Osmon DR, Berbari EF, Berendt AR, Lew D, Zimmerli W, Steckelberg JM, Rao N, Hanssen A, Wilson WR; Infectious Diseases Society of America. Diagnosis and management of prosthetic joint infection: clinical practice guidelines by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 56: e1-e25. (2013)

5) 青木 信樹, 荒川 創一, 尾内 一信, 大西 健児, 金子 明寛, 清田 浩, 舘田 一 博, 保富 宗城, 松下 和彦, 三笠 桂一, 三鴨 廣繁, 望月 清文, 渡辺 晋一.

JAID/JSC 感染症治療ガイド 2019. 日本感染症学会・日本化学療法学会. (2019)

6) 第一三共株式会社:リファジン

®

カプセル 150 mg 医薬品インタビューフォー

ム. 改訂第 15 版 (2019 年 2 月改訂)

Table 1 Origin of Staphylococcus aureus used in this study
Table 2 MICs and POT number of antibiotics for Staphylococcus aureus
Fig. 2 SEM image of biofilm formed MS-5 strain on the washer
Table 3 Sterilize effect of exposure to each antimicrobial agent
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参照

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