専 攻
審 査 委 員
論 文 題 目
(資源循環学専攻長 (副専攻長
学位論文審査の結果の要旨
氏 名 MARUBODEE RUSAMA 資源循環学専攻
(マルボデ、ィー・ノレサマ)
主 査 教 授 松 田 陽 介 高
リ 査 教 授 後 藤 正 和 高
リ 査 教 授 取 出 伸 夫
副 査 国立研究開発法人農業生物資源研究所遺伝資源セ;;;i
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ャ多 様 性 活 用 研 究 ユ ニ ッ ト 長 友 岡 憲 彦 高JI 査 名 古 屋 大 学 教 授 江 原 宏
Detection of Azuki Bean Wild Relatives Having Different Salt Tolerance Mechanism and Construction of Molecular Linkage Map of Tuber Cowpea (異なる耐塩性機構を持つアズキ近縁野生系統の発見とアカササゲ分子連鎖地図 の作成)
(論文審査の結果の要旨)
本審査では,学外から植物分子生物学,作物学の専門家を審査委員と Lて迎え,提出された博士論 文の内容について,当該分野における学術的な意義と論文の完成度を精査した。
塩害は作物生産を妨げる最も重要な問題の一つである。世界中で100カ国以上,総面積にして9億3 千万ヘクタールが塩害の問題を抱えており,耐塩性遺伝子を有する植物の育種は重要な課題であ
る。ササゲ属植物の中には塩害や乾燥といった環境ストレスに抵抗性の高いものがある。アカササ ゲ (Vignavexillata)は,ササゲの近縁の多年生草本で,地下部にイモを着生し,それが食用・薬用 に利用される特異な種であり,また,耐塩性の種内変異が大きくと考えられ,育種素材として有望 と期待されている。そこで本研究では,耐塩性作物の導入によって問題土壌が広がる生産性の低い 地域の農業生産振興に寄与することを目指し,ササゲ属植物における耐塩性を適切に評価する方法 を検討するとともに,新品種育成に向けた分子連鎖地図の作成に当たった。研究成果は以下のよう に要約される。
まず,一連の研究を水耕栽培によって進めるに当たって,ササゲ属の異なる3種の作物,ササゲ,
リョクトウ,アズキを用いて至適な水耕栽培の条件を検討するため,水耕液への通気の有無が植物体 の成長に及ぼす影響について調査した。その結果,いずれの種も通気が無い条件で良好な成長がみら れた。これは,一般にダイズ等のマメ科作物では通気を必要とするのとは逆の傾向であり,ササゲ属 植物の根系が高い環境適応性を有していることを示す結果と考えられた。 l次スクリーニングは土耕 条件で行い, 2次 ス ク リ ー ニ ン グ は 水 耕 栽 培 で 行 っ た 。 そ し て , ヒ ナ ア ズ キ (v.riukiuensis)の T吋inbaka',ヒメツルアズキ (v.nakashimae)のUkushima'はアズキ耐塩性系統の素材として,選ぶ ことができた。これらの2系統は,異なる耐塩性メカニズ、ムを有しており, Ukushima'は葉部へのNa+
氏 名 MARUBODEE RUSAMA 蓄 積 を 低 く 抑 え て い た の 対 し て , マojinbaka'は 各 部 位 い ず れ もNa+を蓄積していた。加えて,
Ukushima' c!::,、特に Tojinbaka'は福島の塩害圃場でタイズ品種 Tachinagaha'が生育できないような条 件でも,良好な生育を示した。これらの結果は,異なる2つの耐塩性メカニズムを導入してアズキ の耐塩性品種を開発する上で、極めて重要な知見で、ある。
続いて,アカササゲ (V vexillatα,)耐塩性の遺伝子研究を行うため,スクリーニングを重ね耐塩 性と評価された'Vl'系統と感受性と評価された'Vア系統を選び,それらからの交雑F2群集団300個 体 を育成した。それらを供試し, (1) 150mM NaClの水耕栽培でシュート(根から切‑り離した地上部) から発根成長したF2のしおれスコア (
r
シュートしおれスコアJ) , (2) 200mM NaClの水耕栽培で、単葉(根・茎から切り離した葉)から発根成長したF2の し お れ ス コ ア (
r
葉しおれスコアJ) , (3) 250mM NaClの溶液を潅水した土壌で発芽したF3実 生 の し お れ ス コ ア (r
実生しおれスコアJ)をもって,耐塩性を評価した。しおれスコアは,目視で1(影響なし)から9(完全な枯死)までの5 段階に分け,表現型として用いた。
次の段階として,上記雑種集団から耐塩性遺伝子解析を行うために,アズキ,ササゲ,インゲン から作成した1336の単純反復配列 (simplesequence repeat: SSR)マーカーを用いて遺伝子両親間の 多型解析を伺った。 874のSSRマーカー (65.4%)でDNA増幅がみられ, 84のSSRでは両親聞に多 型が認められた。そしてそれらのうちの82の多型SSRを用いることにより,全体で510.5cM, 2つの マーカ一位置の平均距離としては平均7.2cM (最短1.4cM~最長 15.7 cM) となる, 11リンケージグ ループ連鎖群の分子連鎖地図を作成することができた。さらに,詳細な連鎖地図を作成するため,
Restriction site associated DNA (RAD)マーカーを作成し, SSRマーカーとRADマーカーの両方を用い て連鎖地図作成に取り組んだ。結果として, 84のSSRマーカーと475のRADマーカーを合わせた559 マーカーを活用することにより,平均マーカ一間距離が1.8cM(1 .4~2.4 cM) となる973.9cMの長
さに及ぶ11リンケージグループ連鎖群からなる高密度分子連鎖地図を作り上げることができた。
このように,本提出論文は,ササゲ属のアズキ近縁野生植物の中から耐塩性の強い系統群を見い だし,そのメカニズ、ムを解明した上で,耐塩性アズキ育種への道筋を立て,さらに将来の有望作物 として期待されるアカササゲ (v.vexillata)の耐塩性系統育種に向けた分子連鎖地図の作成に成功 したものである。本種を対象としてSSRマーカーとRADマーカーの両方を用いた分子連鎖地図の作 製はこれが初となるものであり,効率的育種に結びつく貴重な成果といえる。
本審査委員会は,提出論文の研究が綿密に計画されておりであり,実験手法は的確で,示された 結果は貴重な知見で、あって質が高く,学術的に意義が深いことを認め,博士の学位に相応しいもの
であると判断した。