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(1)

修士学位論文

題名....艘話簸謝あ.珪護雛蝉

.上丘撮二の。.久詮昂..........。.......、

頁エ〜w頁

指導教員 タ辻/いフ〉ゲ1

平成2十年  /月  /O 目提出

人文科学研究科  人肉斧ナ学 専攻

学修番号  /o86ケ/o6

ふ り が な

氏 名 棉担

(2)

所属:  人文科学研究科人間科学専攻日木語教育学教室 学修番号:10865106

氏名: 楊地

中国語母語話者の日本語習得過程における「の」の誤用

要旨

 本研究は中国語母語話者の日本語習得過程における「の」の誤用の様相を探ろうとす るものである。そこで、中国語母語話者の日本語習得過程における「の」の誤用を、KY コーパスによる考察と誤用訂正テストを通して追究した。「の」の挿入誤用だけではなく、

「の」の脱落誤用も視野に入れた。

その結果として、「の」の誤用に関して多くのことが明らかになった。

1)「の」の挿入誤用について

①上級での個人差が大きい。「の」の挿入誤用を全然犯さない学習者もいれば、品詞によ  らず「の」の挿入誤用を犯す学習者もいる

②動詞であっても形容詞であっても、最も「の」の挿入誤用が見られるのは非過去の肯  定形である。

③中国語で1音節の形容詞が連体修飾構造における「の」の挿入誤用を犯しやすい傾向  が見られた。

④理解レベルと運用レベルの間にずれがある。

2)「の」の脱落誤用について

①名詞:日本語の「名詞1+の十名詞2」と中国語とずれがある場合、特に中国語で「複  合名詞」として認識された名詞はよく「の」を脱落する。

②副詞:その難点は日木語にある。副詞が連体修飾節になるとき、明確な接続規貝1」がな  いため、学習者にとっては習得しにくい項目である。

③助詞:助詞十「の」は「の」の付加により連用修飾から連体修飾への転換と考えられ  る。それについての文法知識がたりないため、学習者は間違いを犯しやすい。

④準体助詞としての「の」:体言の後ろに来る日本語の「の」と中国語の「的」の文法機  能が同じため、中国語話者にとっては習得しやすい。一方、狭義の準体助詞としての  「の」の脱落誤用を起こしやすい。

(3)

中国語母語話者の日本語習得過程における「の」の誤用

目次

1.はじめに.......

 1.1研究の動機...

 1.2本研究の研究対象及び用語の扱い.....

2.先行研究....

 2.!「の」の挿入誤用に関する先行研究..

  2.1.2中国語話者に関する研究..

  2.1.3先行研究における問題点..

 2.2 「の」の脱落誤用に関する先行研究.

  2.2.1名詞句における「の」の......

  2.2.2先行研究で触れない点.......

3.日本語の「の」と中国語の「的」の対照研究...

 3.1 日本語の「の」と中国語のr的」における用法相違.

  3.1.1 日本語の「の」の用法....

  3.1.2 中国語の「的」の用法....

 3.2連体助詞としての日本語の「の」と中国語の「的」

  3.2.1 目中両言語における連体修飾構造.

 3.3接続から見た日本語の連体修飾構造....

  3.3.1連体修飾部が名詞の場合....

  3.3.2助詞と「の」の接続..

   3.3.2.1格助詞...

   3.3.3.2 副助詞....

   3.3.3.3接続助詞..

 3.4準体助詞としての日本語の「の」と中国語の「的」...

4.調査概要.......

 4.1調査の目的..

 4.2 KYコーパスによる調査.....

  4.2.1調査の対象..........

  4.2.2調査の方法と目的...

 4.3 アンケート調査........

  4.3.1調査の対象........

  4.3.2調査の構成と目的.

1 1 2 3 3 6 7 7 7 8 9 9 9 10 11 11 11 12 14 14 16 17 17 20 20 21 21 21 21 21 22

(4)

5.「の」の脱落誤用についての考察...

 5.1全体的傾向...

 5.2 品詞別による考察...

  5.2.1修飾部が名詞の場合......

  5.2.2 準体助詞としての「の」

  5.2.3修飾部が副詞の場合......

  5.2.4修飾部が助詞の場合......

   5.2.4.1格助詞.....

   5.2.4.2 副助詞と接続助詞.....

6.「の」の挿入誤用についての考察....

 6.1KYコーパスに関する考察..      .....

  6.1.1全体的考察....

  6.1.2動詞による連体修飾節の特徴...

  6.1.3形容詞による連体修飾節の特徴.

 6.2 アンケート調査に関する考察.

  6.2.1全体図...

  6.2.2修飾部が形容詞の場合..  .....

  6.2.3修飾部が動詞の場合.....

  6,2.4 ユニット.

 6.3「の」の挿入誤用に対する総合考察...

7.おわり......

 7.1日本語教育における「g」の扱い.....

 7.2日本語教育への提言..

 7,3まとめと今後の課題.................

謝辞............

参考文献................................

     24      24      25      26      29      30      34      34      35      37      37      37      38      40      44      44      45     ..45      47      49    ...50

....    50

     51      52      54      55 添付資料

(5)

中国語母語話者の日本語習得過程における「の」の誤用

1.はじめに  1.1研究の動機

 日本語の「の」には連体助詞や準体助詞や終助詞まで、さまざまな用法を持っている。

例えば:

「私の母」  (格助詞 連体修飾)

「私の持っている本」(格助詞 連体修飾節の主格)

「新しいのを取って」(準体助詞 代名詞用法)

「彼が入ったのは見た」(準体助詞 従属節の名詞化)

「頭が痛いのだ」(準体助詞 説明判断の文末表現)

r買うの買わないの」(並立助詞 列挙)

「これでいいの」(終助詞)

 など、それぞれ用法が違う。他の格助詞と比べ、抽象的な面が強いことも特徴のひとつ であろう。その全体像ぽ複雑で、外国人学習者にとってはもっと習得しにくい文法項目と 思われる。さらに、中国語の助詞「的」と日本語の「の」は用法上相違点が多い。そのた め、中国語を母語とする日本語学習者(以下は中国語話者と省略する)にとって、「の」の 習得はいっそう複雑になっている。特に、両者の微妙に異なる部分に常に負の転移として 誤用を産出してしまう。

 中国語話者の「の」の使用実態を明らかにしたいため、そこで本研究では、中国語話者 の日本語習得過程における「の」の誤用に焦点を当て考察するものである。そして、考察 対象は中国語の「的」の用法と関連性がある連体修飾助詞としての「の」と準体助詞とし ての「め」に絞ることにする。

(6)

1.2本研究の研究対象及び用語の扱い

連体修飾助詞としての「の」に関わる誤用と言うと。次の例が挙げられる

例:

*休みときは一番楽しいのとき

 そのような誤用は、日本語学習者の連体修飾構造において頻繁に見られる誤用である。

先行研究では、この「楽しいのとき」のような「形容詞」が「名詞」を修飾する際に「の」

が必要としないところに「の」を挿入したことを「の」の過剰使用1と呼ぶが、筆者は「過 剰」といった言葉は量を表すもので、学習者は「の」を過量に挿入したわけないため、本 研究では、「の」の挿入による誤用(以下は「の」の挿入誤用)と呼ぶことにする。一方、

「名詞」が「名詞」を修飾する際に必要な「の」が脱落している場合は「の」の脱落であ る。前と対応するために、本研究では、「の」の脱落による誤用(以下は「の」の脱落誤用)

と呼ぶことにする。

 さらに本稿では、準体助詞としての「の」を使うべきところを使わない場合、例えば「*

時間のたつは早い」といった誤用2も「の」の脱落誤用に含まれる。

1この現象を「の」の過剰生成、または「の」の付加と呼ぶ研究者がおり、本研究では全て 同義として使用する。

(7)

2.先行研究

2.1「の」の挿入誤用に関する先行研究

 「の」の挿入誤用は日本語を第二言語(L2)としての学習者の言語に見られることは従 来から多く指摘されているが、その多くは中国人母語話者の典型的誤用であり、母語の干 渉であると説明されることが多かった(奥野2003;小山2003)。しかし、連体修飾構造に おける「の」の挿入誤用や脱落誤用は、中国語以外の言語を母語に持っL2学習者にも観察 され、中国語からの影響だけではこの現象を説明できない。また、このよう1234な「の」の 挿入誤用の現象は、日本語を母語(L1)としての幼児の言語発達にも見られた(永野1960;

横山1990等)。日本語のL1習得過程にもL2習得過程に出現することから普遍的な発達過 程の可能性が主張されている(白畑1993a;1993b;1994)。一方、L2習得においては学習 者のL1からし2への言語転移1の側面も指摘されている(迫田1999;奥野2000;2001;2002;

2003;2005)

 さらに、多様な属性を持っL2学習者に対して行った研究もおおい。これまでの研究で被 調査者となった日本語学習者には成人目本語学習者(白畑1994;迫田1999;奥野2001)や 韓国語を母語とする幼児(白畑1993a)、教室環境学習者(白畑1994;迫田1999;奥野2001)

や自然環境学習者(斉藤2002)等、多様な学習者に「の」の挿入誤用が観察されている。

次はL2成人を対象とした研究に絞って見てみる。

2.1.1L2成人教室環境学習者に関する先行研究

 L2成人の連体修飾構造の習得に関しては、教室内習得者を対象にした研究がほとんどで あり、教育現場と一番関連性が高いためここで詳細に取り上げる。取り上げた主な先行研 究は表2−1でまとめる。

1母語やそれ以外にこれまで学習した言語と、目標言語の類似点及び相違点から、学習者の 意識的・無意識的な判断により、目標言語の運用上や習得の過程上に現れる影響のこと(奥

畢予2003b)

(8)

表2−1 「の」の誤用について主な研究. L2成人・教室環境

研究者 被調査者 レベル 調査方法 結果

白畑 タイとマレー ゼロと初級 縦断調査(来日後 ①出現順序「N+の十N」.レ「IA+の十N」一〉

(1993a シアの成人2 18ヶ月)・ ュ話資料 「Vの十N」  (L1と同様)へ

,1994) (自然会話十誘導 ②母語に関わらず「の」の過剰使用が見られる

質問)

追日ヨ 英語・中国語・ 初級中級・ 横断調査 ①母語に関らずrの」の過剰使用が見られる。

(1999) 韓国語母語話 上級・超級 発話資料(KYコー ②どの母語話者も中級レベルに「の」の過剰使

者の成人計60 (各5名) パスから分析) 用が多いが、上級レベルでは、rの」の過剰使

用は中国語母語話者に多く見られる。

③母語に関らずIAの連体修飾構造にrの」の 過剰使用が多い。

④誤用と正用が同時に観察される。

⑤超級レベルでは「の」の過剰使用が消滅

⑥特定の名詞句パターンで誤用が多い。

奥野 英・中・仏・独・ 初級から上 縦断調査 ①中国語話者は他の母語話者に比べrの」の過

(2001) 西語母語の成 縦断的な2時点(来 剰使用が多い

人計20名 目直後と10ヵ月 ②中国語話者は、中級レベルで見られなかった 後)で収集した発 のに上級レベルの段階になって「の」の過剰使 話資料 用が出現する現象が多く見られる。

③「の」の過剰使用には、「〜のほう」、「〜の こと」のように特定の語彙と「の」を固まりで 処理する学習ストラテジーとの関わりの可能 性を示唆。

奥野 英・中・韓国語 上級 横断調査 1)より

(2000, 母語の成人計 1)I発話調査 ①中国語話者に「の」の過剰使用が多い

2003) 30名 2)的処理を求める ②r感じ」やrところ」などの抽象語彙rの」

文法性判断テスト を一固まりで捉えている傾向ある。

3)訂正テスト ③Vによる修飾が他の品詞と比べ多い 2)より

④動詞による修飾の場合の「の」の過剰使用に は、中国語の負の転移と、韓国語の正の転移の 可能性が高い

3)より

(9)

⑤文法的な知識には、母語による差はない

桜木 英・中・仏・独・ 中上級 横断調査 ①母語に関わらずrの」の過剰使用が観察され

(2002) 西・ベトナム語 (SPOTに カードを使用した た。

・ポルトガル語 よってさら 実験誘出法 ②レベルの低い学習者の方がrの」の過剰使用

・ベンガル語・ にレベル分 の出現が多い。

パラオ語 け) ③全体でIAの連体修飾においてrの」の過剰

計31名 使用が多いが、レベルの低い学生は複数の品詞

にわたって観察される

④「もの」「こと」「ほう」「とき」などの特定 の被修飾名詞が「の」とひと固まりになってい る可能性は低い。

 先行研究から示唆された中国語話有の「の」の挿入誤用における特徴として、以下のこ とがわかる。

①「の」の挿入誤用は他の母語の学習者より数が多い。

②中級レベルで見られなかったのに上級レベルの段階になって「の」の挿入誤用が出現す  る現象が多く見られる。

③上級レベルになっても「の」の挿入誤用が消滅できない。

④修飾部の品詞に関わらず「の」の挿入誤用が見られる。

⑤動詞による修飾の場合の「の」の過剰使用には、中国語の負の転移の可能性が高い。

 中国語話者のその特徴があるのはなぜだろう。先行研究から見ると、①④⑤の原因はよ  く中国語の助詞「的」にあると指摘されている。

 ここで特に興味深いのは②③である。つまり、中国語話者にとっては「の」の挿入誤用 はなかなか克服できない問題となっている。このような上級における中国語話者の「の」

の挿入誤用は、「過程的転移」(山岡:1997)で説明するのもある(奥野:2005)。「過程的 転移」とは、「第二言語習得における自然な発達過程の中で、学習者の母語に相当する段階 がある場合、その学習者は、そのような形式が母語にない学習者よりもその段階に長くと

どまる」というものである。そのため、他の母語学習者と比べ、中国語話者は「の」の挿 入誤用に影響が二番大きいのは母語のr的」であると言えよう。

(10)

 この言語転移の様相はどうなっているのかを解明するために、中国語話者に焦点を置き、

日本語習得過程において「の」の使用実態を考察必要がある。まずは、中国語話者を対象 とする先行研究を見てみる。

2.1.2中国語話者に関する研究

 従来の中国語話者に関する調査研究では、名詞修飾を習得する際に、修飾語品詞(イ形 容詞・ナ形容詞・動詞)に関わらず、「の」の挿入誤用は多く観察されている。これは中国語 の助詞「的」の影響によるものだと指摘されている(張2002;秦・丸田2006)。また、「の」

の過剰使用の種類では、修飾語がイ形容詞の誤用が一番多いことが明らかとなっている(迫 田1999;秦・丸田2006)

 張(2002)は、学習者の誤用体系をなしており、その体系を支える要素には類推といっ た「一般的認知能力」と「母語の知識」があると述べた上で、前述のような連体修飾構造 における「の」の挿入誤用を中国語の「的」の悪影響だとしている。

 中国語母語話者は上級になっても誤用が残るが、上級を併せた縦断研究でも明らかにな った。また、中国語母語話者の場合、他の母語話者と比べ、修飾部の品詞が「イ形容詞」

か「ナ形容詞」か「動詞」かに関わらず「の」の過剰使用をする傾向が見られた。それは、

中国語の修飾部と被修飾部の間ではほとんどの場合必要である「的」が作用した結果であ ると考え られ、中国語の言語転移である可能性が高いこと奥野(2008)を指摘した。

 しかし、「的」の悪影響があるとしても、どこまで、どういう形式で影響しているのかに ついてはまだ明らかにされていない。「的」の影響について詳しく研究したのは秦・丸田

(2006.2007)がある。秦(2006)では、中国語で名詞の修飾語が1音節形容詞(的」なし)

と2音節形容詞(「的」あり)の「の」の誤用率(「の」の過剰使用率)に有意差が見られ たと述べ、つまり、中国語で名詞の修飾語が1音節形容詞の場合より、2音節形容詞のほう

「的」の影響が大きいことが窺えたと指摘した。しかし、筆者よく耳にした誤用は「小さ い」「新しい」「大きい」といった形容詞のような気がした。こういった形容詞は中国語で 言うと普通一音節形容詞であるが。この点について、さらに考察する必要がある。

 中国語の動詞は形容詞と異なって、名詞を修飾するとき「的」を使わなければならない。

そうすると、 動詞十的十名詞 の場合は日本語で話すとすべて「〜十の十名詞」に言い換え ることはあり得るだろう。しかし、国立国語研究所作成データベースから抽出した「外国 人分散地域 会話データ」データベースを見たところ、以下のような例もあった。

  例  (3)*遊ぶの場所     人気のある場所     (4)*樽を作るの仕事    ご飯を作ってる妻

(11)

例(3)の場合は被修飾語が同じであ、って、修飾部である動詞が違う 例(4)の場合は修飾する動詞が同じで、動詞のアスペクトが違う

 実は例(3)(4)の文は中国語でいう場合すべて「的」が必要が、学習者が「の」を挿入 したりしなかったりしている。では、この「の」の挿入誤用が。あった形容詞或いは動詞に は特徴は何か、共通点はあるのかにっいて詳細な質的分析が必要と考える

2.1.3先行研究における問題点

 先行研究の結果から、「の」の挿入誤用ついては、今まで様々な角度から研究されてきた。

連体修飾のL1習得過程とL2習得過程に出現する共通の現象になっておる。また、「の」の 挿入誤用の要因として、L1習得過程とL2習得過程に見られた共通点から示された「格助 詞」の過剰般化や、ある特定の語と結びつく学習者の言語処理のストラテジー、そして言 語転移の可能一性が示唆されていることが明らかとなった(追田1999;奥野2005)。

 しかし、まだ触れていない点も多く存在していると思われる。先行研究が触れない点と して以下三つが挙げられる。

①学習者の「の」の挿入誤用 の具体的な内容はまだ不明である。母語の「的」はどこまで  どう影響しているのかについてはほとんど触れない。

②修飾部の品詞の差はどうなっているのか。品詞における言語転移に関して詳細に分析す  る必要がある

③「の」を教育の現場でどう指導すれば誤用を減らすのかについての指摘もなかった。

2.2 rの」の脱落誤用に関する先行研究 2.2.1名詞句におけるTの」の脱落

 これまで「の」の挿入誤用に関しては、多くの研究で取り上げられており、

それに対して「の」の脱落はほとんど取り上げられてこなからた。先行研究として一」(2002)

と奥野・金(2001)を取り上げる。

 両方とも「N!+N2」という名詞句における「の」の脱落現象についてめ研究である。張

(2002)は、「の」の過剰使用と同様に、日本語の「N1+N2」構造における「の」の脱落も 母語の影響だと述べている。

 奥野・金(2001)では漢字圏学習者である韓国語母語者と中国語母語話者に対して、「の」

の脱落を考察した。文法性判断テストを実施した結果、「の」の脱落における言語転移の様 相として、母語の漢語複合語に関する知識が影響している可能性を指摘した。また、「の」

「的」「」の「一致」「任意」「不二致」から分析した結果、中国母語話者の誤用判断では 母語との一致度によって正答率が高くなる結果が示された。

(12)

2.2.2先行研究で触れない点

 以上取り上げた先行研究は連体修飾節で名詞が修飾部になるとき「の」の脱落を考察し たものである。しかしながら、「名詞1+の十名詞2」の場合だけではなく、「寺村誤用デー タ」5から見ると、以下のような「の」の脱落誤用も多く見られる。

  例:

       (1)日本へ留学は楽しみしています  「中国9作文1」

       (2)大好きなは漫画です       「台湾8 自由作文5」

 例(1)は助詞による連体修飾構造で、「で」や「へ」等の連用格助詞は名詞を修飾する 際に、直接名詞を修飾しない。連体助詞「の」を介さなければならない。

 例(2)は準体助詞としての「の」が脱落したのである。

 このような誤用は日本語学習過程においてどんな特徴を持っているのか或いはすぐ直せ るのかという疑問を湧いてきた。しかし筆者の知る限りで、こういった「の」の脱落に関 する研究はまだされていない。「の」の習得過程の一部分として考察必要があると思う。

 そこで、本研究の目的は、先行研究を踏まえ、「の」の脱落誤用も視野に入れ、中国語話 者の日本語習得過程における「の」の誤用について詳しく考察する。

5寺村秀夫(!990)r日本語学習者の日本語誤用例集」(科学研究費特別推進研究「日本語の 普遍性と個別性に関する理論的及び実証的研究」,分担研究「外国人学習者の日本語誤用例 集、整理及び分析」資料。執筆者は延べ339人,執筆者の国籍は20か国にわたり,コーパ スサイズは約420KB.http://cookie.1ang.nagoya−u.ac.jp/pub/で公開されている。

(13)

3日本語の「の」と中国語の「的」1の対照研究

3.1 日本語の「の」と中国語の「的」のにおける用法相違

 本章では目中両言語の対照研究を行うので、両言語の文法的な現象を説明するのにまず 用語の統一が必要となる。本稿では主として、日本の国語学の用語を用いる。それに、文 法事項の分類は学校文法を使うことにする。日本語の用語に対応する中国語の用語に関し ては、従来の一般的な解釈に従う。当然、中国語と日本語は系統の違う言語であるため、

同一の用語でカバーし切れないものがある。しかし、対照研究を行うために、ここではあ えて一方の用語を使うことにした。中国語においての指示対象が不明確な場合は、その都 度説明を加える。

 日本語の「の」と中国語の「的」は意味的、統語的な共通点が観察できる。以下、まず 両者の用法について簡単にまとめる。

3.1.1 日本語の「の」の用法

(1)連体助詞としての「の」。

 例:①あれは私のカメラです。

   ②電車の切符

(2)準体助詞としての「の」。

  ①小さい机ぽあなたの。

  ②彼が日本にいたのは知っています。

(3)連体修飾節の主格としてのrの」。

  ①私の好きな作家は夏目漱石です。

1三つの「de」

 中国語(標準語)では「de」という発音で、実質の意味はなく、構文的関係しか示さない文法的な手段 として使われているものに、現在では三つの漢字を当てている。「的」、「地」、「得」である。例えは:

 (1)他的姐姐是老師。/彼のお姉さんは先生だ。

 (2)他慢慢地吃。/彼はゆっくり食べている。

 (3)他睡得恨晩。/彼は寝るのが遅い。

以上の例のように、(1)の「的」は前の語(他)と後の語(姐姐)が連体関係にあることを表し、(2)の

「地」は前の語(慢慢)が後の動詞(吃)や形容詞などから構成する述語を修飾するものであることを表 し、そして、(3)の「得」は後の語(晩)が前の述語となるもの(睡)を補充することを表す。従来、「的」

は連体修飾のマーカー、r地」は連用修飾のマーカー、r得」は補語のマーカーと言われてきた。

(14)

(4)説明判断の文末表現としての「の」。

  ①佐藤さんもう結婚したのだ。

(5)終助詞としての「の」。

  ①明日来ないの。

3.1.2中国語の「的」の用法

 以上述べたように、「の」の用法として連体助詞、準体助詞、終助詞が上げられる。中国 語では「的」は呼び方すべて「構造助詞」であるが、その実際の用例を見ると、実に「連 体助詞」、「準体助詞」2、「終助詞」としての用法も備えている。

(1)連体助詞としての「的」

例:①今天的菜単/今日のメニュー   ②美面的景色/美しい景色

  ③地傲的蛋糠/彼女が作ったケーキ

(2)準体助詞としての「的」

例:①送介辛包是化的/このカバンは彼のです。

  ②述有史便宜的円/もうちょっと安いのがないですか。

  ③他正在看的是漫画/彼今読んでいるのは小説です。

 (3)終助詞としての「的」。

   A確認、断定を表し、「的」を用いなくてもいい。

  例:①他要走的。/彼は出かける。

    ②我永返不合忘杞祢的。/私はいつまでもあなたを忘れたりしない。

   B既に発生したことを表し、「的」を用いないと意味が変わる。

  例:①我ヲ干卒去的。/私が車で行った。

    ②他昨天到的。/彼は昨日着いた。

 本稿では、連体助詞としての「の」と準体助詞としての「の」だけを研究の対象として、

詳しく考察していく。

2準体助詞の「の」に対応する中国語の「的」はまだ独立した文法単位としての地位は確立されていないた め、ここでは、日本語の用語を借用する。

(15)

 3.2連体助詞としての日本語の「の」と中国語の「的」

 3.2.1 目中両言語における連体修飾構造

 語順類型論の観点から見ると、日本語の基本的な語順はSOVであり、中国語の基本的な 語順はSVOである。しかし、日本語の多くの言語現象は、語順以外に中国語と変わらない。

特に連体修飾構造の場合を見ると、共通しているところがある。以下、表3−1で目中両言 語における連体修飾節の特徴を簡単にまとめた。

表3−1 目中両言語における連体修飾節の特徴F 、   ■         一 ,  H  − H  , I       Ψ  ,一  I  ■   一   F■ ■I り1■ I I ,  ■f   1

日本語 中国語

基本語順 SOV SVO

連体修飾節の位置 前置(修飾部十被修飾部) 前置 連体修飾節の標識 なし(修飾部が名詞の場合:の)

連体助詞の有無 あり(の) あり (的)

3.3接続か一迪ゥた日本語の連体修飾構造

 格助詞「の」は、様々な語に付いて連体修飾語として機能する。その接続関係を品詞の 種類から分類すると、次の表3−2で示された品詞は全て名詞を修飾して名詞句を作る。特 に修飾部の名詞、形容詞、形容動詞、動詞が名詞を修飾する場合の連体修飾構造は明らか にされてきた(大関2)。そのため、本章ではこの点についてはふれない。しかし、連体詞、

数詞、副詞、助詞による連体修飾構造に関する研究やその連体構造修飾における習得に言 及している研究はほとんどみられない。そこで、本研究では詳しく分析することにする。

まず以下は連体修飾構造における「の」の必要性を表3−2でまとめた。

 しかし、実際の運用の場合で、学習者にとっては日本語連体構造の習得において、以下 の品詞は問題となっている。

①名詞:名詞が修飾部になると、被修飾部との意味関係が多い。そのため、日本語学習   者にとっては習得しにくい項目になる。特に同じ漢字圏の中国語話者や韓国人学習者   にとっては、母語とずれがあるところに間違いを招きしすいと推測できる。

②副詞:副詞は全部「の」を介して名詞を修飾するのではない。

③助詞:助詞にも「格助詞」「副助詞」「終助詞」などがある。全部「の」を入れて連体   修飾構造になるわけではないため、同様に見てはいけない。

(16)

表 3−2連体修飾構造における「の」の必要性

連体修飾構造 「の」の必要性

名詞1+名詞2 遅刻の理由 △3 形容詞名詞十名詞 美しい女性 X

形容動詞十名詞 静かな町 X

動詞十名詞 東京へ行く電車 X 連体詞十名詞 あらゆること X

数詞十名詞 一匹のウサギ   O

副詞十名詞 たくさんの本   一

助詞十名詞 母への手紙  ■

(「の」が必要の場合:○  不必要の場合:× 両方可の場合:△)

 以上述べたように、「の」の付加により連体修飾節になるケースがかなり多い。副詞は文 法性が複雑で「の」との連続が規則性ないから、本稿では触れないことにする。次に名詞

と助詞が修飾部になる際の状況を詳しく分析する。

 ①中国語と対照しながら修飾部が名詞の場合を考察する。

 ②中国語に日本語の助詞と相応するものないため、日本語の助詞と「の」の接続を考察   する。

3.3.1連体修飾部が名詞の場合

 水野(1993)は両言語とも体言が体言を修飾するとき、その連体修飾関係を示すのに助 詞を使い、またその助詞で結ばれる二つの体言の剛Fはいろいろな意味関係が考えられる

と述べた。さらに、「の」と「的」の用法が比較的共通しているのは、名詞が名詞を修飾す る場合と、名詞句であることを表す場合であると指摘した。しかし、中国語は孤立語的な 言語であるために、意味がはっきりしているときは、助詞の「的」を省略することができ るが、膠着語的な傾向の強い日本語としては、名詞が連体修飾部になるとき、「の」が義務 的に付けられる。さらに、寺村(1991)は、「の」によって結び付けられたN1とN2の名詞 の意味関係は多様で、従来、いろいろな分類がなされており、その意味関係をきれいに分 類することはきりがなく、あまりにも難しいことであると述べた。そのため、「の」と「白句」

3 r名詞1+名詞2」の場合、全部rの」が必要であるとは言えない。rの」を使わないと複合名詞になる のは一般である。複合名詞について本研究は触れないため、ここで名詞が修飾部になるとき、全部「の」

を必要とすることになる。

(17)

の用法が比較的共通しているにしても、実際の使用もかなりずれがある

 本研究は張(2009)と寺村(1991)の分類を参考にしながら、日本語で「の」を使うケ ースで、中国語の「的」を①使用するかどうか②省略可能かどうか、という二つの方面か

ら目中両言語の「N1+N2」における相違を見る。

表3−3 目中両言語「N1+N2」における相違

意味・用法 例(目) 有無 例(中) 有無

所有者 N1が固有名詞 山本さんの財布 山本的銭包

時間時期 昨日の台風 昨天的台風

主体か対象 テレビの修理 屯祝机的修理

存在場所 東京のビル 末京的天楼

所属 N1が固有名詞 林さんの会社 O一 林先生的公司

N1が人称代名詞 私の会社 我(的)公司

定指示 鈴木さんの目 O 鈴木的眼晴

整体と

舶ェ 定指示ではない カメラのレンズ 相机(的)鏡共

原産地 フランスの化粧

@品

法国(的)化汝品

出身地 日本の先生 日本的老師

基準 時間 休みの時 休息(的)吋侯

空間 会社の中 公司(的)里面 方向 椅子の上 椅子(的)上面

数量 二匹のウサギ 丙只克子 X

素材 金の指輪 金戒指」 X

同格 友達の山田 月月友山田 X

順序. 3番目の駅 第三靖 X

種類 梅の花 梅花 X

(使用の場合:○ 不使用の場合:X 両方可の場合:△)

(18)

3.3.2助詞と「の」の接続

 助詞とrの」の接続はrの」による連用から連体への転換と考えられる。例えばr朝6 から営業する」という「名詞十格助詞十用言」の用言を名詞化すると、「朝6時からの営業」

となる。こういった転換は動詞文を名詞文にするのはよく使われている。

 助詞は「格助詞」「副助詞」「係助詞」「接続助詞」「間投助詞」「終助詞」に分けられる。

それぞれ「の」との接続が違う上、さらに、同じ「格助詞」であっても「の」の付加によ り連体関係に転換できる格助詞とできない格助詞がある。そのため、別々細かい考察する 必要がある。以下、「の」が後続することができる「格助詞」「副助詞」「接続助詞」を詳し い考察する。

 3.3.2.1格助詞

 文語では「が、の、を、に、へ、と、より、から、にて、して」、口語では「が、の、を、

に、へ、と、より、から、で」などが格助詞に含まれる。寺村(1981)によると、日本語 では、「が」「を」「に」以外の格助詞(連用助詞)を連体に使うためにがいる。「の」の付 加により連体関係に転換できる連用格は、へ格、デ格、マテ格、カラ格、ト格の5つであ

る。実は、 以上の5つの格助詞の深層にある意味用法により、連体関係への転換ができな いこともある。以下、黄(2010)の内容を参照しながら、「の」の付加により連体関係転換 できるか否かを表で簡単にまとめる。

表3−4へ格と「の」の接続

意味用法 転換可

①方向 南へ出発する 南への出発

②場所一終点 東大寺へ集合した 東大寺への集合

③相手 政府へ請願する 政府への請願

④時 ちょうど寝たところ

ヨ、客が来た。

凍O ちょうど寝たところへの来客

(19)

表3−5 デ格と「の」の接続

意味用法 転換可

①場所 学校で勉強する 学校での勉強

②範囲規定 世界で一番高い山 O 世界での一番高い山

③数量限定 10回で治癒する 10回での治癒

④手段、道具 タクシーで帰宅する タクシ』での帰宅

⑤原因、理由 癌で死亡した 癌での死亡

⑥目的 出張で上京する O 出張での上京

⑦様態 一人で散歩する 一人での散歩

⑧根拠 自分の考えで判断する 自分の考えての判断

⑨動きの主体 その事件は警察で捜査しています。 ×

⑩時一限定 成長の過程で一時的に現れる現象

ナす。

X

⑪材料 この机は木でできています。 X

⑫構成要素 大審院は五人の判事で組織される。 X

表3−6 カラ格と「の」の接続

意味用法 転換可

①場所一始点 羽田空港から出発する 羽田空港からの出発

②場所一経過 空から侵入する 空からの侵入

③出どころ 民友社から出た人々 民友社からの人々

④時一始点 朝6時から営業する 朝6時からの営業

⑤根拠 具体的な事実から推定する 具体的な事実からの推定

⑥材料 米から作ったお酒 米からのお酒

⑦原因、理由 たばこの火の不始末から火 魔ェ起こった。

たばこの火の不始末から フ火事

⑧範囲既定 統計データから分析する 統計データからの分析

⑨動きの主体 医師側から説明する 医師側からの説明

⑩順序 左から選択する 左からの選択

⑪始状態 千メードつから千五百、二千 ニ高度が増える。

X

(20)

表3−7 マテ格と「の」の接続 意味用法

①場所一終点

②時一終点

③相手

大阪まで出張する 4月まで放映する 校務主任まで申し出る。

転換可

大阪までの出張 4月までの放映

表3−8 ト格と「の」の接続

意味用法 転換可

①相手 保証人と相談する 保証人との相談

②内容規定 民法に「<略>」と規定している。 民法に「<略>」との規 閧ェある。

③比較の基準 昔の白本語と相違する 昔の日本語との相違

④終状態 先生となる X

表3−9 ヨリ格と「の」の接続

意味用法 転換可

①動き の主体 医師より説明する 医師よりの説明

②時一始点 幼時より教えを受けた ×

③場所一始点 渋谷駅より出発する X

④比較の基準 二層は初層より縮小した。 ×

3.3.3.2 副助詞

 文語では「すら、さへ、のみ、ばかり、まで、など、し」、口語では「さえ、でも、しか、

きり、だけ、ばかり、ほど、くらい、など、まで」などが副助詞に含まれる。

 連体助詞「の」が後続するか否かという実験から、副助詞が「の」による連用修飾が連 体修飾への転換ができるかどうかを明らかにした。以下の表3−10でまとめる。

(21)

表3−10 副助詞と「の」の接続

「の」が後続する可 「の」が後続する不可

だけ ばかり など ほど くらい のみ きり で ま さえ すら しか        も で

3.3.3.3接続助詞

 文語では「ぱ、とも、と、ど、ども、が、に、を、もの、を(ものの、ものから)、て、

して、つつ、ながら、で」口語では「ば、と、ても、が、のに、けれど、ので、から、て、

ながら」などが接続助詞に含まれる。

 連体助詞「の」が後続するか否かという実験から、接続助詞が「の」による連用修飾が 連体修飾への転換ができるかどうかを明らかにした。以下の表3−11でまとめる。

表3−11接続助詞と「の」の接続

「の」が後続する可 「の」が後続する不可

ば たり なが まで て か ど と て が の を の して つつ けれ

     ら  らももにで  ど

3.4準体助詞としての日本語の「の」と中国語の「的」

 日本語における「の」も中国語における「的」もともに連体助詞・準体助詞としての用法 を持つ。その文法的な機能においては、相違するものがある。以下目本語の文と中国語の 文を比較して見ると、体言の後に来る「の」や「的」と用言の後に来る「の」や「的」に おける機能それぞれの相違点が一目瞭然である。(同じ下線で表すものは両玄の中で相応す

るものである。)

(22)

例:

①その カバン Q史エ、赤いカバン は  私   のカバンです。

②その カバン ρ史工、(赤い   のa ) 坦          カバン

      (名詞の代用)

私   のbです。

   のカバン

 (後に来るべき名詞が省略)

③那些  包 里面,生的包 是  我内包。

④班些  包_  里亜, (生的a)

(後に来るべき名詞を内包)

是  我  的b。

     のカバン

    (後に来るべき名詞が省略)

 以上の例を品詞から見ると、日本語における「の」と中国語における「的」の相違点は 二つに分けて考えられる。

1)文法的な機能が同じであるのは体言の後に来る「のb」と「的b」である。「のb」や「的 互」を使用してrのb」やr的b」の後ろに来る名詞を省略している。

2)文法的な機能が違うのは用言の後に来る「のa」と「的a」である。

 例①と例②が示すように、日本語では、用言の後に来る「のa」は「のa」の後に来る名   詞を代用する。つまり前に出てきた名詞をそのまま繰り返さないで名詞を置き換えて、

  名詞の代わりをする。

 例③と例④が示すように、中国語では用言の後に来る「的一a」は後に来るべき名詞を内包 する。つまり、準体助詞のr的」で構成されるr〜的」そのものは名詞的なものである。

例:

⑤大  用

(大きい)

(使う)

大的 用的

(大きいもの)

(使うもの)

(23)

 上記の例で分かるように、体言の後に来る「の」/「的」は同じく「のb」や「的b」の 使用で「のb」や「的b」の後ろに来るべき名詞が省略している。中国語では用言の後に来

る「的a」は「的a」の後に来る名詞を内包する。このプロセスによって、「〜的」は名詞的 な性質が持つようになる。一方、日本語では、用言の後に来るrのa」はそのまま名詞的な ものとして使われており、実質名詞の代用として機能している。

 以上では、連体修飾助詞としての日本語の「の」と中国語の「的」と準体助詞としての

「の」と「的」を簡単に分析した。日本語の「の」と中国語の「的」は、いずれも複雑な 用法をもっているため、その意味や機能についての究明されていないものが数多く残され ている一。日本語学習者にとっては、「の」の用法が多いゆえ、使い分けが困難であることは 考えられる。特に中国語話者は母語の影響で、「の」についての習得や使用はいっそう難し

くなる。「の」を挿入したり脱落させたりする誤用を頻繁に犯す。本研究では、上記で行っ た質的分析を踏まえつつ、中国語話者の日本語習得過程における「の」の使用実態を探り たいと思う。

(24)

4.調査概要

4.1調査の目的

 以上の先行研究を踏まえ、日本語の「の」と中国語の「的」の対照研究から見られた両 者の相違による出やすい誤用を推測しながら、調査アンケートを作成する。今度の調査は 二つの調査をわけて、「の」の使用実態を探りたい。

1〉KYコーパスによる調査:名詞修飾部に注目して分析し、「の」の挿入誤用における修飾  部の特徴及び誤用の要因を具体的に検討する。

①動詞と形容詞における「の」の挿入誤用のそれぞれの特徴

②形容詞の連体修飾:誤用が多く見られる形容詞は中国語の一音節形容詞なのか二音節   形容詞なのかを明らかにする。

③動詞:テンスや活用形と誤用産出に関係あるかどうかを明らかにする。

2〉アンケートによる調査:正誤判定テストを通して、学習者が有する「の」の用法に関  する言語知識を確認する。

1)「の」の脱落誤用:接続からみる、「の」の脱落を起こす可能な場合。

 ①連体修飾助詞としての「の」:接続規則が指導されない場合。

  名詞:中国語とのずれがある場合誤用しやすいと推測する。

  副詞:接続規則は明確されないため、誤用しやすいと推測する。

  助詞:助詞十「の」により連体修飾への転換。接続規則は明確されないため、一誤用し   やすいと推測する。

 ②準体助詞としての「の」

   日本語の「の」と中国語の「的」は準体助詞用法におけるずれ、特に用言の後に  来る「の」が「狭義の準体助詞」の場合脱落しやすいと予測できる。

2)「の」の挿入誤用:

  紙での誤用テストと会話データのKYコーパスと相まって、「の」の挿入誤用を全面  的に考察する。

(25)

4.2 KYコーパスによる調査 4.2.1調査の対象

 本研究で分析対象としたデータは、OPIデータの文字化資料(KYコーパス)1である。KY コーパスは英語、韓国語、中国語話者各30名、計90名のデータからなるが、本研究では そのうち中国語母語話者25名分を対象とした。レベル分けは初級5名、中級10名、上級 16名である。(超級はほぼ日本語話者と同じ発話能力で、「の」の過剰挿入誤用が見られな いので、調査対象から省くことにした。)

 以下で学習者に付けられている番号は、始めのCは母語が中国語であること、二つ目の ローマ字は0PIにおける判定結果(初級N、中級I、上級A)を表す。また三つ目にローマ 字が付いている場合はサブレベルを表し、各レベルの中で下がL、中がM、上がHとなって いる。たとえばC工M02なら母語が中国語、中級の中レベルであることを示し、最後の2桁 の数字は同じ母語、同じレベルの被験者の識別番号である。

4.2.2調査の方法と目的

 調査方法はまずKYコーパスから、形容詞と動詞による連体修飾節を抽出し、それに基づ いて可能な限りその「の」の挿入誤用について質的に考察する。その「の」の挿入誤用に かかわる連体修飾節の修飾部の特徴をみる。

4.3 アンケート調査 4.3.1調査の対象

 調査対象は、筆者の出身校の曲阜師範大学の日本語学科の学生、二年生37名、三年生27 名、四年生34名の計98名である。日本語レベルは調査時に日本語能力試験2級合格者20 名、1級合格者29名おり、」その他の学生も日本語能力試験1・2級準備中であり、本調査の 調査文に使用されている語彙を、すべて理解するに十分なレベルであった。

 調査は2011年10月に実施した。

1「KYコーパス」とは文部省科学研究費補助金・基盤研究『第二言語としての日本語の習得 に関する総合研究』(研究代表者カッケンブッシュ寛子)において鎌田修氏と山内博之氏が 中心となって行った0PIの文字化資料を指す。

(26)

4.3.2調査の構成と目的

 本論文のアンケート調査は誤用訂正テストと目中両言語の翻訳問題に分けて実施した。

誤用訂正テストは問題文の下線部分の文法性を正誤で判断させ、また誤りがあったら間違 っている箇所を正しく訂正するよう指示した。翻訳問題は日本語と中国語の相互翻訳とい

う形式で行われた。

 本論文の調査項目は連体修飾を表す「の」の使い方に基づき、修飾語で表す品詞の種類 によって構成するものである。「の」の脱落誤用に関するのは①「名詞十名詞」の場合 ② 修飾語が副詞の場合 ③修飾語が助詞の場合 ④準体助詞の四つのカテゴリである。さら

に、「の」挿入誤用に関するのはそれぞれ修飾部が⑤「形容詞」⑥「動詞」⑦「ユニット」

の三つのカテゴリに分けた。その中、品詞が名詞である場合は張(2009)の分類によって 作った問題文である。また、姫野(1993)で出た誤用文を抜け出し、また中級以上のテキ ストから取り出した助詞の修飾構造から、日本語学習者が間違いやすい項目を推測して問 題文を作った。実際のアンケートを実施したとき、項目をバラバラにして、15分以内で解 答するように求めた。調査の正確性を確保するために、同じ考察項目の正用と誤用が対に

して設問した。見やすいため、以下のように箇条で簡単に表示する。

 調査目的として、学習者が有する「の」による連体修飾に関する言語知識を確認する。

「の」の脱落による誤用:

鮒冊

o訟∴1

②副詞十の十名詞:4)5)6)7)

③助詞十の十名詞: 格助詞

接続助詞:

副助詞:

で 8)9)

と 1O)11)

たり 12)13)

ながら 14)15)

ばかり !6)17)

ほど 18)19)

④準体助詞: 名詞化:20)21)22)23)

代用:24)25)26)27)

(27)

二、「の」の挿入による誤用:

  ⑤形容詞十名詞:  28)29)30)31)

  ⑥動詞十名詞:   32)33)34)35)

  ⑦ユニット: 「のため」36)37)

      rのほう」38)39)

2.3)、2.4):中国語において普通に「的」を入れないが、学習者が日本語で話すとき「の」

  の挿入誤用が出た例。逆に中国語に記させ、「的」があるかどうかを見る。

3.3):準体助詞の使用

3.4):即時性テストでよく出る誤用例を日本語に記させ、時間的余裕が与えられる場合、

         「形容詞十の十名詞」の誤用が出て来るかどうか。

(28)

5「の」の脱落誤用についての考察 5.1全体的傾向

 図5−1 rの」の脱落誤用の誤答率の全体図

100%

90%

80%

70%

60%

50%

40%

30%

20%

10%

 0%

1  2  3    5  6    8  9 101112131415161718192021222324252627 名詞   副詞   格助詞  接続助詞  副助詞 準体助詞名準体助詞代

■2年生

■3年生 菱4年生

 各調査項目の誤用率を学年ごとに示すと、図5−1のとおりである。結果を概観すると、

次のようなことが見える。

(1)全体の誤答率が0%に達するのは問題27しかない。

(2)修飾語が名詞である場合は、名詞と名詞間の意味関係による把握の状況も違ってく

 る。

(3)修飾語が副詞である場合は、結果から見ると一番混乱している。

(4)修飾語が助詞である場合は、全体的に弱いが、特に副助詞の場合、あまり使いこな  していないことがわかる。

(5)準体助詞の場合は、全体的によく把握しているが、問題による各学年の違いがかな  りある。

参照

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