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ドキュメント内 修士学位論文 (ページ 49-65)

180%1」

170%

140%

130%

120%

1…

10%

      28 29

■2年生 g3年生 04年生

 図6−2が示すように、設問28は全員の中で誤答者が一人しかない。しかも、「×」と 判断した上で、「長いの川」との訂正があった。調査された学習者には形容詞が「の」を 介さない直接名詞を修飾するということが知識として理解できていることが分かる。

 しかし、同じ形容詞が修飾部であってもかなり差がある。次の設問29の結果を見ると、

設問29の誤答率が設問28よりはるかに高い。その理由として、学習者はあまり見当たら ない語彙「何もない」に対する認識が不足という可能性が考えられる。もう一つ考えられ る理由は「の」の挿入により、文全体が音韻的に落ち着くからであろう。簡単に言うと、

「何もないの町」は「何もない町」より言いやすいと学習者が感じている。その「の」の 挿入による音韻的な落ち着きで誤用を見落としたという可能性がある。「の」の挿入誤用

と音韻的な落ち着きとの関係についてまた検討する必要がある。

 設問30と設問31で2年生の誤答率は3年生、4年生よりも低いことがわかる。設問30 の誤用「大きいの車」に対し、

6.2.3修飾部が動詞の場合 設間32

設問33 設問34 設問35

私は北京大學を卒業したの学生です。

これは先輩からもらった資料です。

今目見る映画は面白いですよ。

これは作ったことがあるの料理です。

図6−3 修飾部が動詞の誤答率

iOO% ・

90%」

80% r 70% ・

60%

50%

4◎%

30%

20%

10%

0%

32       33 34       35

■2年生

■3年生 業4年生

 全体的に見ると、形容詞より動詞のほうが誤答率高い。

 設問33で4年生は2年生より誤答率も高い。原因を探るため間違っている箇所の訂正 を見ると、ほとんどの学生が「まらった」を「いただいた」と訂正した。「×」と判断し た理由は丁寧さにあることが見える。習熟度が上がるにつれ、学習者は社会言語的な面で も正確を求めることが分かった。

 設問34で、全員の誤答率は低くて、各学年それぞれ65%,44%,50%である。一見に 簡単な女なのに、誤用率が多いのはなぜだろう。間違っている箇所の訂正を見ると、この 問題を「X」と判断した学生はほとんど「今目見る映画」を「今目見た映画」に訂正した。

 事前に「の」の使用についての調査ということを教えていなかったため、その結果にな った。本調査の調査意図とずれたため、設問33,34は考察の対照から省くことにする。

 設問35基本的な動詞の連体修飾形は問題ないが、ちょっと複雑な文型での動詞の連体 修飾形は誤用が多くなる可能性がある。さらに、KYコーパスの中でも「作ったことがあ るの料理」「人気があるの番組」「食べ物がたくさんあるの家」といった「〜があるの」の ような誤用が多くみられた。この点について、今後の課題としてまた考察する

6.2.4 ユニット

 「ほう」や「ため」のような文法項目について、追田では、学習者が「〜のほう」「〜

のこと・〜のもの」、奥野では「〜のとき」「〜のために」「〜のほう」「〜のような」とい った特定の語彙と「の」が一固まり1で処理されるたあ、形容詞や動詞による連体修飾に もそれが用いられるという言語処理ストラテジーが「の」の挿入使用と関わっている可能 性を示唆した。

設問36 設問37 設問38 設問39

アニメを学ぶのために、日本へ来ました。

大学に合格するために、毎日勉強しています。

本を読むより、寝るのほうがいい。2 教科書の内容が難しいのほうがいいです。

1迫田(!999)では、これを「ユニット形成のストラテジー」、奥野(2001)では「固まり」

と呼んでいる。

2設問38と設問39は対になっている考察項目の中で唯一両方が違う例文を設定した項目 である。予備調査の際、うっかり二つの誤用文を書いた。結果から見ると、上級学習者で

も間違えた人は何人いるので、本調査で問題文をそのままにした。

図6−4

100% 三

 90% ・  80% 1  70% 1  60% ヰ  5◎% 川

 40% ヰ 30%

20%

ユ0%

O%

修飾部がユニットの誤用率

36       37 38       39

舳舳…………㎜…………川……前一

 02年生1

・・年生1

 一年生1

図6−4から見ると、結果はいくつか意外なところがあった。

 ①4間の中で、3年生の誤答率が一番高いこと  ②設問38で、4年生は2年生より誤答率も高い。

 ③4年生の設問38の誤答率が32%に対し、同じく考察項月の設問39の誤答率が6%で、

  両者に大きな差があること。

 さらに、設問3.3)は中国語「姐姐喜次的是生的花,我喜炊白的」を日本語に訳すとい う問題である。(答えは「姉は赤い花が好きで、私は白い2が好きです。」実は標準な答え はないが、文が通じれば正しいと判定する。)そもそも準対助詞としての「の」を考察す るために設定した問題だったが、意外にこのようにr私は白いのほうが好きです」と書い た学生が4名もいた。

 学習者が近隣の語と助詞との「ユニット形成」(迫田2001)によって助詞を選択してい る可能性を指摘している。しかし、同じ言語処理ストラテジーが使っているとしても、思 考のプロセスが違うと考えられる。「ため」や「ほう」という名詞はいわゆる形式名詞で ある。「ため」は目的や原因を表す文法で、「ほう」は二つのうちの一つを表し、具体的な 意味を持ってない。そこから、「ほう」は「ため」よりもっと抽象的な言葉で言えるだろ

う。

形容詞十「ほう」における「の」の挿入について、もうひとつ考えられる理由としてあげ られるのは準体助詞「の」との混用であると思われる。

まずは名詞十「ほう」を見てみよう

例:

 買い物なら 渋谷  買い物なら・渋谷  買い物なら 渋谷

の  ほう

がいい。

がし、い。(準体助詞  rの」の後にくるべき名詞を省略する)

がいい。

次に、形容詞十「ほう」を見てみる。

例:

 科書なら難しい教科書  科書なら難しい  の

 科書なら難しい教科書  のほう

*教科書なら 難しい の   のほう

がいい。

がし、い。(準体助詞 教科書を代用)

がいい。

がし、い。(rの」の連続は嫌われるため、一つは省略した)

 そうすると、誤用の「教科書なら難しいのほうがいい」が産出した可能性も考えられる  のではないだろうか。日本語の格助詞である「の」の用法や意味が多いため、学習者に とっては文法規則が理解しても実際の運用場面でも困難である。上級になっても「形容詞

/動詞十の十ほう」といった誤用の産出もよく出てくることからその困難さが見えるので

はないか。

6.3「の」の挿入誤用に対する総合考察

 KYコーパスによる調査とアンケート調査による調査の結果を総合的にみると、「の」の 脱落と違って、文法規則を理解したにもかかわらず誤用が生じる。学習者の「知識」と「運 用」の間にギャップがあるということが明らかになった。動詞や形容詞はrの」を介さず に名詞を修飾するということは知識として理解できているのに、実際の言語運用場面では

「の」挿入誤用が多く見られる。

 さらに、習得過程におき考えれば、中級の学習者は一番誤用が多いことが見られた。連 体助詞としての「の」の導入は学習の早い段階から始まったため、初級の学習者でも形容 詞や動詞と「の」の接続の文法規則。即時性が要求される会話の中で、上級レベルでも「の」

の挿入誤用が出てくる。それだけではなく、十分な思考の時間を与え、紙でのテストにし てもうまくできているとは言えない。「の」の挿入誤用は日本語学習者特に中国語話者に とっては、なかなか完壁に克服できない問題である。そこで、実際の教育現場で「の」の 使用に関する指導は期待されている。

おわりに

7.1日本語教育における「の」の扱い

 次に、実際に日本語教育の現場で使用されている教科書から「の」に関わる用法がどの ように記述されているのかを見てみる。以下は調査した大学で利用されているテキスト

(『みんなの日本語』『新編目本語』)から調べた「の」の提出状況である。

表 7−1教科書における「の」の提出課

形式 例文

みん

の(所有) 先生のかぱんをお持ちしました。 2 2

の(内容説明) 私は歴史の本が好きです。 2 1

の(位置基準) 私の会社は銀行の隣にあります。 10 3

の(作成者) 私はゴッホの絵が好きです。 × 2

の(同格) まもなく部長の大谷が参ります。 ×

X

の(格助詞のうしろ

i名詞句内))

大阪への旅行は楽しかった。

X

6(下)

の(体言相当) この服は彼のだ。 2 1(下)

の(名詞修飾の主

黶j

雨の降る目は運転が難しい。 ×

X

〜の(名詞化) 星が光っているのが見えます。 38 1(下)

〜の↑ パーティに行くの。↑

X

3(下)

〜のか パーティに行くのか。 × ×

〜のだ(理由) 「どうして学校を休んだですか」「熱があったんで キ」

26 12

〜のだ(解釈) 道が濡れている。ゆうべ雨が降ったんだ。 × ×

〜のだ(帰結、言い キえ)

彼は漢字をやく2千手知っている。新聞を辞書なし ナ読めるんだ。

X .

X

〜のだ(発見) この傘はこんなところにあったんだ。 × ×

〜のために 子供のために歌を歌う。 42 4(下)

〜ので(理由) 忙しいので、帰ります。 39 7(下)

〜ので(前提情報) すぐ返しますので、貸してください。 49 9(下)

〜ので(終助詞的) すぐ返しますので。

X

グ(下)

〜のですか パーティに行くのですか。 26 ×

〜のところ 授業が終わったら、私のところに来てください。 46 4(下)

〜のに(目的) この道具は蟹を食べるのに使います。一 42 6(下)

〜のに(事実的) 雨が降っていたのに、行きました。 45 3(下)

〜のに(終助詞的) 今日は日曜目なのに。 × 3(下)

〜のは.、.だ(強調

¥文)

このパソコンを買ったのは秋葉原です。 38 15(下)

〜のほうが...より i比較)

この本のほうがあの本より面白い。 12 13

(数字は提出課を表す。(下)は第二冊で提出すること)

ドキュメント内 修士学位論文 (ページ 49-65)

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