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(1)

麻布大学雑誌 第

28

巻 2016

90

【背景および目的】

Oxytropis sp.(オヤマノエンドウ属)などの毒草に含まれるアルカロイド Swainsonine(以下 SW)は家畜に神

経症状を伴う中毒を引き起こすことが知られている(1)。本物質は,ライソゾームおよびゴルジ装置内の

α -

ンノシダーゼ阻害による糖代謝異常を介してライソゾーム内にオリゴ糖の蓄積・細胞の空胞化を起こす。また,

肺癌,メラノーマ,胃癌,大腸癌およびグリオーマにおいて,SWによる

in vivo

および

in vitro

両者での癌細胞 増殖抑制効果が報告されている(2)。SWによる

α -

マンノシダーゼ阻害により,細胞内小器官の膜の異常,さ らにはオートファジー障害(オートファゴソームとリソソームの膜の融合障害)が起こり,結果として,内呼 吸により生理的に損傷されたミトコンドリアのオートファジーによる品質管理(マイトファジー)不全(図

1),

それに引き続く活性酸素種産生・シトクロムおよびミトコンドリア

DNA

の放出が,細胞傷害の発生機序として 推察されている。本研究では培養癌細胞系(イヌ肝細胞癌由来腫瘍細胞株)を

SW

のバイオアッセイ系として用 い,SWによる癌細胞傷害像を観察することで,SW曝露による癌細胞増殖抑制機序およびマイトファジー障害 による細胞死のメカニズムの解析をすることを目的とした。

【材料および方法】

イヌ肝細胞癌由来腫瘍細胞株(№

95-112:ヨーキー 雌 11

才 肝臓細胞癌腫瘍塊をヌードマウスに移植し,生 着後に初代培養し細胞株を樹立),腎尿細管上皮由来細胞(ICRマウス 雌

5

週齢の腎を初代培養後の継代数

2

代目の細胞)をウシ胎子血清(ニチレイ,東京,日本)10%加

Minimum Essential Medium(MEM)を培養液と

して用い,5%

CO

2

,37℃のインキュベーターで培養した。各培養細胞を用い,SW

未添加群および

SW

添加群

(500 µ g/ml)を作製し,1,3,6

時間曝露を行い,細胞傷害像を光学および電子顕微鏡により観察した。また,

免疫染色およびウエスタンブロット解析(抗

LC3

抗体:オートファジーマーカー,Bioss Inc)(Lamp1:ライソ

36

回麻布環境科学研究会 一般学術講演

4

植物由来アルカロイド Swainsonineの癌細胞増殖抑制効果:

マイトファジー異常の関与

○深沢 敬亮,中村 ひかる,藤田 純平,納谷 裕子,荻原 喜久美,島田 章則 麻布大学 生命・環境科学部 病理学研究室

図 1 マイトファジー(損傷したミトコンドリアのクリアランス)の模式図

(2)

36

回麻布環境科学研究会講演要旨

91

ゾームマーカー,Bioss Inc)(CoxⅣ:ミトコンドリア内膜蛋白マーカー

,Cell Signaling Technology)を行った。

細胞傷害への活性酸素種の関与の確認のため免疫染色(抗

8-

ニトログアノシン抗体:活性酸素種傷害

DNA

マー カー,COSMO BIO CO LTD,抗

Superoxide dismutase(SOD)抗体:活性酸素種分解酵素マーカー,Santa Cruz Biotechnoligy Inc)を実施した。異常ミトコンドリアを検出する目的で,JC-1 Mitochondrial Membrane Potential Assay Kit (JC-1)(Cayman Chemical Company)を用いた解析を実施した。

【結果および考察】

1.

光学顕微鏡観察の結果,イヌ肝細胞癌由来腫瘍細胞および腎尿細管上皮由来細胞いずれにおいても

SW

の曝 露時間に依存して細胞数の減少および細胞質内の空胞の増加が観察されたことから,SWが細胞傷害を引き 起こすことが示唆された。

2.

オートファジーマーカー

LC3

を用いた蛍光抗体法では,SWの曝露時間に依存して

LC3

陽性顆粒数の細胞質 内の増加が認められた。また,電子顕微鏡による観察では,オートファゴソームとリソソームの膜融合障害 を示唆する像が観察された。これらの結果から,SWが初期のオートファジーの亢進およびその後のオート ファジーの停滞を引き起こすことが示唆された。

3. JC-1

解析の結果,SWの曝露時間に依存して正常ミトコンドリアの減少および異常ミトコンドリアの増加が

観察された。また免疫染色の結果,

8-

ニトログアノシンおよび

SOD

の陽性顆粒の増加が認められたことから,

SW

による細胞傷害に活性酸素種が関与することが示唆された。

以上の結果から,

Swainsonine

による細胞傷害には,オートファゴソームとリソソームの膜融合障害によるオー トファジー障害を背景とした,損傷ミトコンドリアのクリアランス異常(マイトファジー障害)・活性酸素が関 与していることが示唆された(図

2)。

【参照文献】

1. Takeda S et al. Cerebellar ataxia suspected to be caused by oxytropis glabra poisoning in western mongolian goats. J Vet Med Sci. 2014 76:839-846.

2. Li Z et al. Swainsonine activates mitochondria-mediated apoptotic pathway in human lung cancer A549 cells and retards the growth of lung cancer xenografts. Int J Biol Sci. 2012 8: 394-405.

図 2 肝細胞癌由来腫瘍細胞における SW 曝露によるマイトファジー障害の模式図

図 2 肝細胞癌由来腫瘍細胞における SW 曝露によるマイトファジー障害の模式図

参照

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