−44−
周辺を拘束した三層積層板の振動減衰特性
遠藤 紘・淡路政夫*
VibrationDampingPropertiesofThreeLayeredPlate
atFixedConditionarounditsPlate
HiroshiENDoandMaSaoAwAJI*
(2003年12月12日受理)
Inthispaper,vibrationdampingpropertiesofconstrainedtypewhichhasthreelayered platefromsteelsheet/visco‑elasticmaterial/steelsheetwerestudiedonfixedandfreecondi‑
tionsaroundtheplateoftestsample. Thelossfactorofconstrainedtypegenerallyhasbeen consideredtobeaffectedtheoreticallyandexperimentallybyvisco‑elasticpropertiesofmid‑
layerandconfigurationofeachlayer. Furthermorevibrationdampingpropertiesarecon Sideredtobeaffectedalsovibrationmodeandshapeoftestsample・ Itcouldobtainhigherloss factorandlowercomplianceincomparisontofixedconditionthanfreecondition.
Therefore, itwasclarifiedtocontrollbyaroundtheplatethatvibratingdampingeffectis exserentlargeeffect.
を抑え, その機能を損ねることなく振動を低減する ことができると考えられる。しかし,三層積層板の 振動減衰特性は,温度,周波数に依存するコア材料 の粘弾性特性により変化しやすいことや,各層の材 料の構成厚さによる影響を大きく受けることはすで に明らかになっている。これまでの三層積層板の振 動減衰性能(損失係数)の測定は, はり状試験片を 用いてその曲げ振動における損失係数を温度を変え て測定し,温度依存性や温度変化による共振周波数 の変化とモード変化による共振周波数の変化から周 波数の影響を求めてきた。さらに, はり状試験片の 長さを変えて損失係数を測定することによりモード の影響を受けることが明らかになっている。はり状 試験片によるこれらの結果から三層積層板を実際に 機械構造部材に適用する場合に得られる振動低減効 果や最適な利用方法は何ら明らかにされていない。
そこで,本研究では三層積層板の平板について,
実用的使用条件である周辺拘束による振動特性への 温度依存性,周波数依存性, モード依存性,拘束条 件の影響などについて実験的に調べ,ハードディス クドライブケースなどの小型軽量の電子機器の構成 部材に使用するための三層積層板の最適設計と最適 な利用方法を明らかにすることを目的として行った。
緒言 1.
近年, 自動車,鉄道車両,産業機械から家電,情 報通信機器など多くの機械において,高速化,軽量 化の動向が強まっている。その結果,機械の振動 騒音が増加し, その機能の低下や制御精度が不安定 になることなどから,振動の抑制をはかることは,
重要な技術的課題となってきている。振動や騒音を 低減する方法は既に多くの方法が提案され実用的に も用いられているが,軽量化・高速化と振動・騒音 の低減は相反する場合が多く,重量の増加や本来の 機能を損ねるなど実用的に解決すべき問題が多い。
そこで,著しい重量の増加や本来の機能の低下をさ せることなく振動を低減し騒音も抑制する方法とし て構造部材自身に振動減衰性能(制振性能)を付与 させる技術もいろいろ開発されてきた。それらの中 で拘束型制振材料の一種である「粘弾性材料をコア 材料とし,表裏に等厚の薄鋼板を用い,表裏の鋼板 の厚さに対してコア層の粘弾性材料層の厚さを極め て薄くした三層積層板」は制振鋼板として大きな振 動減衰性能を有する材料である。このような制振鋼 板を構造部材として用いることにより,重量の増加
秋田高専専攻科学生
−45−
周辺を拘束した三l曽積l曽板の振動減衰特性
2. 研究目的と振動減衰のメカニズム ベル(振動レベル)を調べ,損失係数と振動レベル の関連を明らかにし,最適な三層積層板の設計と使 用条件を見出すことを目的とした。
2. 1 三層積層板の振動減衰性能
粘弾性材料を剛性材(金属板など)ではさんだ三 層積層板は曲げ振動の際,図1に示すような変形を 繰り返す。その時に上下の板は曲げ変形をし, その 際粘弾性材料は上下の板で拘束されているので上部 の板の下面と下部の板の上面との間では伸びに差が 牛じることになる。その伸びの差によって粘弾性材 料にせん断変形が生ずる。このように曲げ振動に伴 う粘弾性材料のせん断変形により,振動エネルギー を熱エネルギーに変換し, その結果として三唱積l普 板に振動減衰が生じる。一般的に振動減衰特性は損 失係数刀で表され, 1自由度モデルにおいて損失係 数万は, 1サイクルの振動エネルギーをEとし, 1 サイクル中に消費されるエネルギーを△Eとすると 次式で定義される。
3研究方法
3.1 実験に用いたサンプル
実験に用いた試験片は, ステンレス鋼板を表裏の 材料とし, ともに厚さ0.51nm, 中間層の粘弾性材 料は厚さ0.04mmのものを使用した。制振鋼鈑の損 失係数の測定法としては, JIS(GO602)の「制振 鋼鈑の振動減衰特性試験方法」に提示されているが,
そこでは試験片の幅は10〜25mm, 長さは250mm の「はり状」を推奨している。 しかし,本研究はハー ドディスクケースなどの小型電子機器への適用を目 標とするものであるので, 図2のように長さ150 mm, 1&100mmの平板の試験片を用いた。また試 験片の拘束・支持条件の影響を明らかにするため試 験片の周辺をアルミ製L型アングル材で図3のよ うに拘束したものと周辺自由支持の場合と比較検討 した。
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図2試験片(三層積層板)
図1 三層積層板の構造と制振機構
− 2.2本研究の目的
本研究の目的は, ハードディスクドライブケース に三層積層板を適用し, その振動をより低減するこ とである。そのため三層積層板のハードディスクド ライブケースと同等のサイズの三層積層板を用いて,
実用的使用条件である周辺拘束による振動特性への 影響について実験的に調べ, その振動低減に最適な 条件を明らかにすることを目的とした。
三層積層板について, これまでは「はり状試験片」
を用いてその損失係数をできるだけ大きくすること を最大の課題としてきたが,本研究では, ハードディ スクドライブケースの振動低減をはかることが課題 であり,損失係数を高くする条件を見出すとともに,
振動の変位(振幅)を小さくすることが必要である と考えた。そのために,伝達関数のコンブライアン スの周波数応答曲線すなわち加振力(F)に対する 変位(X)のX/Fの周波数応答曲線の共振ピークレ
=コノ
図3試験片周辺拘束図
表1 試験片仕様
・試験片寸法形状 幅: 100mm 長さ: 150mm
・粘弾性材料
材質:ブチルゴム系粘弾性物質 厚さ : 0.04mm
・上而及び下而の板 材質:ステンレス鋼板 厚さ:0.5mm
・周辺拘束材
材質: アルミ製L型アングル材 厚さ : 1mm
一丑0
遠藤紘・淡路政夫
3.2実験装置について
制振特性の測定に用いた実験装置の構成を図4に 示す。損失係数の測定は,試験片の中央部をインピー ダンスヘッドに固定し, インピーダンスヘッドを介 して加振器で加振する中央支持一中央加振法を用い た。 このときの加振力Fと加速度AからFFTア ナライザーによって伝達関数A/Fの周波数応答を 求め, さらにその実数部(リアルパート)から損失 係数万を求めた。さらにFFTアナライザーによっ て伝達関数A/Fを積分しコンブ・ライアンスを求め た。また損失係数の温度依存性との関係を明らかに する必要があるので試験片を恒温│曾に入れ,温度を
‑10℃から50・Cまで変化させて損失係数刀を測定し た。
3.4振動モードについて
これまで三層積層板のはり状試験片の研究でその 損失係数は振動モードの影響を受けることが明らか にされてきた。そこで本研究では平板状の試験片で はモードの影響がどのように及ぼすのか明らかにす るため周辺拘束, 非拘束の場合の振動モードを FEMLABを用いて計算で求めた。また,本実験で は中央支持一中央加振法を用いたので中央部が共振 しているモードを周波数の低いl順から1次, 2次,
3次モードとした。図5は周辺非拘束の各モード形 状,図6は周辺拘束の各モード形状である。
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3次モード
図5非拘束におけるモード形状 図4実験装置
3.3測定方法
損失係数〃の算出方法としては,定常加振法によっ て得られた加振力Fとその応答加速度AからFFT アナライザーによって伝達関数A/Fの周波数応答 とその実数部(リアルパート)を求め, この実数部 から求めた。FFTアナライザーによって得られた 伝達関数の周波数応答では複数の共振点が現れ,両 端自由支持における共振曲線の周波数がFEMLAB の結果に近い値を低い順に1次モード, 2次モード,
3次モードとした。 (この場合反共振モードは無視 した)また, これらの伝達関数の実数部は,共振周 波数近傍に二つの極値が現れ, この極値をそれぞれ f,, fI,とし, (3.1)式より損失係数を算出した。
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(2+ハュ 3次モード
図6周辺拘束におけるモード形状
−47−
周辺を拘束した三層積層板の振動減衰特性 4研究結果
‑‑‑回. ‐三層鯛東)
→一一重層〔非拘窯)
02『
I
一
4.1 モード次数と周辺拘束による影響
粘弾性材料を用いている三層積層板の損失係数は 温度で大きく変化することはよく知られているが,
その他モード次数や拘束条件によっても変化するこ とが予想される。そこで本節では,周辺の拘束条件 を変えることにより同一の共振モードで周波数の異 なる条件で損失係数を測定し, モード次数,周辺拘 束の影響について検討する。図7,8はそれぞれ周 辺非拘束,拘束のもとで,モード次数の影響を明ら かにするためにモード次数別に損失係数と温度の関 係を示した図である。これらの図から明らかなよう
に拘束条件にかかわらず, 1次モードが最も低く2 次, 3次モードが高い損失係数を示している。また 2次, 3次モードはほぼ同一のレベルを示している ことがわかる。さらに,両者とも20。Cから50℃で損 失係数が大きくなり, 30℃近傍でピークとなること がわかる。図9, 10, 11は拘束条件を変え, モード 次数別に損失係数と温度との関係を示したものであ
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図9損失係数と温度の関係(1次)
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図10損失係数と温度の関係
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図7損失係数と温度の関係(非拘束)
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温度(℃)
図11 損失係数と温度の関係(3次)
60 ロ製5
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る。これらの図より,周辺を拘束した方が損失係数 のピーク近傍おいていずれのモードでも損失係数が 高くなっていることがわかる。
。
函0
犯 ロ 29 4D
悪魔〈℃) 4.2損失係数と相対曲げ剛性の温度変化
粘弾性材料を用いている三層積層板は損失係数だ けでなく曲げ剛性も温度で大きく変化することは知 図8損失係数と温度の関係(拘束)
−48−
遠藤紘・淡路政夫
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温度(℃)
図12剛性と損失係数の温度変化(非拘束, 1次) 図15剛性と損失係数の温度変化(拘束, 1次)
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図16剛性と損失係数の温度変化(拘束, 2次)
温度(℃)
図13剛性と損失係数の温度変化(非拘束, 2次)
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︵幻三特︶匙起壷遥租夜理 0864201
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証冷索簿ご51jOOOO
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−20 0 20 40 60
温度(℃)
図14剛性と損失係数の温度変化(非拘束, 3次)
−20 0 20 40 60
温度(℃)
図17剛性と損失係数の温度変化(拘束, 3次)
られている。振動特性を明らかにするためには曲げ 剛性の影響を明確にすることが必要であり,相対曲 げ剛性の温度依存性を測定した結果について検討し,
さらに損失係数との関係を比較検討する。ここで,
ヤング率をE,断面二次モーメントをI,固有振動
数をf・とすると曲げ剛性はEIで表すことができ,
曲げ剛性はEIocfrfで表すことが出来る。そこでff を相対曲げ剛性とし検討することにする。
図12, 13, 14は周辺非拘束,図15, 16; 17は周辺拘 束における相対曲げ剛性と損失係数の温度変化を測 定した結果でそれぞれ1次, 2次, 3次モードを示 す。これらの図より,周辺拘束,非拘束のどのモー ドにおいても同様の傾向を示していることがわかる。
また損失係数カ:30・C近傍でピークとなっているのに 対して,曲げ剛性は低温時で最も高い値となり温度 が上昇するとともに低下し,特に損失係数のピーク
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周辺を拘束した三層積層板の振動減衰特性
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図21 損失係数とコンプライアンスの関係(1次)
図18 コンブライアンスと温度の関係(1次)
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図22損失係数とコンプライアンスの関係(2次) 図19 コンブライアンスと温度の関係(2次)
80 80
▽ 』勺へ、=…〃
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コンブライアンスと濡度の関係(3次)
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損失係数刀
‑20
図23損失係数とコンプライアンスの関係(3次)
図20
近傍で相対曲げ剛性が急激に低下していることがわ かる。
な変化をするか明確にすることを目的に, コンブラ イアンスの周辺拘束の影響について, モード別に温 度を変えて測定した結果をもとに検討する。
図18, 19, 20は周辺非拘束及び拘束におけるコン ブライアンスと温度の関係を測定した結果でそれぞ れ1次, 2次,3次モードを示す。図18,19,20より 20〜40℃付近で拘束,非拘束に関わらずコンブライ アンスの値が低下し, 20℃近傍で最小値を示してい 4.3 コンブライアンスと拘束条件の影響
三層積層板の振動低減を考えるうえで損失係数を 高めるだけでなく三層積層板の変位(振幅)つまり コンブライアンスを低減させることも必要だと考え た。そこで,本節ではコンブライアンスがどのよう
遠藤紘・淡路政夫
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温度(℃)
コンブライアンスと損失係数の温度変化 (非拘束, 1次)
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図28 コンブライアンスと損失係数の温度変化
(拘束, 2次)
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コンブライアンスと損失係数の温度変化 (非拘束, 2次)
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コンブライアンスと損失係数の温度変化 (非拘束, 3次)
図26 図29
板の損失係数の値は20℃ではピークにならないのに 対して, コンブライアンスの値は最小になっている。
これは三層積層板は低温の方が剛性が高いためでは ないかと考えられる。
る。また,拘束したほうがどのモード次数でも各温 度でコンブライアンスの値が小さくなることがわか る。また,次数が上がるにつれコンブライアンスの 値が低下していることがわかる。これは拘束による 曲げ剛性の変化によるものと推定される。三層積層
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周辺を拘束した三層積層板の振動減衰特性
かになった。はじめ周辺を拘束することは三層積層 板のせん断変形を妨げ損失係数の低下につながって しまうと考えたが,むしろ周辺拘束の方が非拘束よ り高い損失係数を得ることが出来た。これは周辺を ビスで固定する程度では三層積層板のせん断変形を 妨げる程ではないと考えられる。また拘束と非拘束 とではモード形状が全く異なり,拘束したモードは 三次元的に変化し, より多くのせん断変形を起こし たのではないかと考えられる。コンブライアンスや 相対曲げ剛性なども三層積層板の場合拘束条件に関 係なく同様な傾向を示し, さらに拘束した方が非拘 束の場合より損失係数は高く, コンブライアンスは 低い値となることが明らかになった。三層積層板の 損失係数のピーク温度は30℃近傍なのに対しコンブ ライアンスの最小値は20℃近傍となっている。ここ で損失係数のピークよりコンブライアンスの最小値 が10。C程低温側に以降しているのは,損失係数は30
℃近傍でピークになるのに対し相対曲げ岡I性は低温 側の方が高く, この両者のバランスよりコンブ°ライ
アンスの最小値が20・C近傍に現れているのだと推定 される。
また同一の損失係数でピーク温度を境に低温側と 高温側の二つのコンブライアンスが存在することが 明らかになり,低温側の方が小さいコンブライアン スをとることがわかった。これは先ほど述べたよう に低温側の方が相対曲げ剛性が高いためだと推定さ れる。
周辺を拘束することは機械構造部材の重量の著し い増加を抑えて効果的に制振処理が可能でそれによっ て振動を効率よく抑制することができると考えられ る。
4.4損失係数とコンブライアンスの関係
粘弾性材料を用いた三層積層板は損失係数, コン プライアンス共に温度によって大きく変化する。そ こで,損失係数とコンブライアンスの間にどのよう な関係があるかを明確にすることが振動低減を考え るうえで最も重要な事項と考え,検討する。
図21,22,23は周辺非拘束,拘束の場合のコンブ°
ライアンスと損失係数の関係でそれぞれ1次, 2次,
3次モードを示す。また,損失係数の性質をわかり やすくするため損失係数のピーク温度を境に低温側,
高温側と分けて示す。
これらの図より,拘束条件, モード次数に関わら ず,損失係数の増加とともにコンブライアンスは低 下し損失係数のピーク値でコンブライアンスは最小 となる。損失係数のピーク温度からさらに温度を上 昇させると損失係数は低下していきコンブライアン スは上昇していくのがわかる。この曲線を見てみる と,同一の損失係数に対して二つのコンブライアン スを持ち,低温側つまり剛性の高い方がコンブライ アンスが低くなっていることがわかる。
1次モードはさほど拘束条件による影響は無いよ うに見えるが2次, 3次と次数が上がるにつれ拘束 と非拘束の差が大きくなっていることがわかる。
図24, 25,26は周辺非拘束におけるコンブライア ンス,損失係数の温度変化を測定した結果でそれぞ れ1次, 2次, 3次モードを示す。図27,28,29は周 辺拘束におけるコンブライアンスと損失係数の温度 変化を測定した結果でそれぞれ1次,2次, 3次モー ドを示す。拘束条件に関係なく1次, 2次, 3次と 次数があがるにつれコンブライアンスの値が小さく
なることがわかる。損失係数とコンブライアンスの 曲線の形状が逆転されているように見える。2次,
3次モードではコンプライアンスのピークが20℃付 近にきている。損失係数のピークは30・C付近なので ここで10℃のずれが生じていることがわかる。これ は研究結果4.2, 4.4で述べたように損失係数と剛性 の関係によるものだと考えられる。
6. 結論
粘弾性材料を中間層とする三層積層板を小型軽量 な電子機器の構成部材に使用するため,振動減衰特 性について,周辺拘束の影響を温度,周波数,振動 モードなどの観点から実験的に研究した。その結果,
次のような結論が得られた。
1.損失係数は,板においても周辺の拘束条件によ らず1次モードでは高次モードに比べ小さい。
また, コンブライアンスは損失係数とは逆の傾 向を示す。
2.周辺を拘束した場合,せん断変形(ずり変形)
を妨げ,高い損失係数が得られないのではない かと考えていたが,むしろ周辺を拘束した方が 剛性および損失係数が高く, コンブライアンス 5. 考察
これまで制振鋼板の特性はほとんど損失係数によっ て議論されてきた。 しかし本研究では,損失係数だ けでなくコンブライアンスとともに温度,振動モー ド,周辺拘束による影響を調査し,小型製品への適 用の最適化をはかることにした。本実験の結果から,
三層積層板の周辺拘束したものも従来の非拘束の三 層積層板同様大きな損失係数が得られることが明ら
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遠藤紘・淡路政夫
は低くなり,振動低減効果が大きくなることが 判明した。
3. l司じ損失係数でもピーク温度を境に二つのコン ブライアンスを持ち,低温側つまり高剛性側の 方がコンブ°ライアンスが低い。
4.振動の低減を考える場合損失係数だけでなく曲 げ剛性とのバランスを考える必要があるといえ る。
3.遠藤紘鉄と鋼Vol.81 (1995),No.6p679 4.石川, 加川モーダル解析入門オーム社
(1989)p32
5.田口,遠藤東北支部米沢地方講演会講演論文 集, 日本機械学会(1999)
6.打川,遠藤東北支部岩手地方講演会講演論文 集, 日本機械学会(2001)
7.佐々木,遠藤東北支部岩手地方講演会講演論 文集, 日本機械学会(2001)
8.成田,遠藤東北支部八戸地方講演会講演論文 集, 日本機械学会(2002)
9.淡路,遠藤東北支部第39期秋季講演会講演論 参考文献
1. 日本規格協会発行JISGO602 (1993)
2.出羽宏視日本接着学会誌vol.29No.1 (1993) 文集, 日本機械学会(2003)