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高周波電界による大振幅イオン音波の非線形減衰 藤山 寛

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Academic year: 2021

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(1)

高周波電界による大振幅イオン音波の非線形減衰

藤山 寛 * ・高井 和成**

服部 修**・南部 充宏***

Nonlinear Damping of Large Amplitude Ion Acoustic  Wave caused by High Frequency Electric Field

by

  Hirosh FUJIYAMA* Kazunari TAKAI**

Osamu HATTORI**and Mitsuhiro NAMBU***

 It was studied the propagation characteristics of large amplitude ion acoustic wave under the high fre−

quency electric field by double plasma machine.

  Nonlinear damping process of the ion acoustic wave was observed and the results was compared with the ponderomotive force theory. The observed anomalous damping rate cannot be explained by the ponderomotive force and the possibility of new nolllinear mechanisms are suggested.

1. はじめに

 核融合プラズマの追加熱に種々の高周波波動(RF 波)を利用するRF加熱が有効であることが示される

一方で,・トカマク型装置の定常運転を目的としたRF

電流駆動のアイデアも実証され,大型装置でRFパ

ワーの高出力化が精力的に行われている。しかしなが

ら,加熱や電流駆動に有効なRF波が,プラズマの閉

じ込めを悪化させるという実験データが相ついで報告 されるに至って,その原因となる物理的機構の解明が 重要になってきている。

 RFによるプラズマ閉じ込めの悪化は,粒子損失の

観点からは微視的(運動論的)および巨視的(電磁流 体的)不安定性の成長に起因すると考えられている。

1)2)また,エネルギー損失の観点からは上記の不安 定性による高エネルギー荷電粒子生成とこの粒子群に 伴う不純物の増加ならびに輻射損失の増大が原因と見

られている。3)

 これらの粒子およびエネルギー損失の両方に共通し ていることは,これらが大振幅の高周波モードと低周 波モードの共存するプラズマ中で起こることである。

従って,ヒの問題は種々の静電的・電磁的波動が共存

する天体プラズマにも関連した重要性を持っている。

 簡単のためMaxwe11分半をしているプラズマ中に 電子プラズマ波とイオン音波が共存する場合を考え

る。このとき,両モードの振幅が増大するとお互いの 分散関係は他の波の電界によ1り修正を受け,

Ponderomotive力,4)パラメトリック効果5)および非 線形散逸力(プラズマ日曜ザー効果)6)などの非線形現 象により,両モード間にエネルギーのやりとりが始まる。

 本研究は上記の問題を解明するために,文部省宇宙 科学研究所において行われ,非線形イオン音波と高周 波電界の相互作用について実験的に検討したものであ る。本報告では高周波電界によって非線形イオン音波 が安定化されることを示し,この安定化が線形イオン

音波の安定化の原因とされるPonderomotive力では

説明できないことを示す。又,プラズマメーザーとの 関連についても考察する。

2. 実験装置および方法

 Fig.1に実験装置の概略図を示す。直径1mφ,長

さ1.5mの真空チェンバー内には電気的に絶縁され,永

久磁石で囲まれた2つの円筒型容器(ダブルプラズマ

昭和61年4月30日受理

  *電気工学科(Department of Electrical Engineering)

 **電気工学専攻(Graduate Student, Electrical Engineering)

 ***九州大学教養部(College of General Education, Kyushu University)

(2)

fll〜 VH

REF.

VH。OFF SET

DR工VER PLASMA TARGET PLAS}蹟

Vp

A P

F G

F A

7

Vdd Vhd Vdヒ Vhヒ

fL VL V LOFF 7

L空驚翫

トsエG.

Transm‡tter.

   ↑

Receiving Probe

        1「

fL Ref.

    f     II

Lock−in−Amp.

  or

D.B。Mixer Signaユ

Fig.1Experimental setup.

Y

Output

装置(DP装置);ドライバー部直径78.Ocmφ,長さ 63.Ocm,ターゲット部直径78. Ocmφ,長さ56.8cm)が

設置されており,その容器内でタングステンフィラメ

ントFと内壁との間の放電によりプラズマを生成す

る。このとき,試料ガスとしてアルゴンを使用し,チ

ェンバー内の圧力を2×10−4Torrに保つ。2っの容 器は負にバイアスされているメッシュグリッドGによ

って仕切られており,そこで電子ははね返され同時に

イオンは通り抜けるため容易に2つのプラズマにポテ

ンシャルの差を生じさせることができる。本実験では

このポテンシャルの差を低周波電界(周波数0.1<

砺i<0.6,ここて沸iはイオンプラズマ周波数)によっ て変調し,大振幅イオッ音波を励起させる一方,グリ ッドに高周波電圧を印加しその振幅翰(玲≦0.5V)

および周波数角(0.3≦企/fp,≦1.4,ここでん,は電子プ

ラズマ周波数)を変化させることにより高周波による イオン音波への影響を調べた。なお,測定には軸方向 に駆動する直径6.2mmφの円板プローブを使用し,そ こに負のバイデスを印加してイオンの密度変動を信号 として検出した。このときイオン音波の空間的減衰の 様子をロックインアンプあるいはダブルバランスドミ

キサを用いた干渉法により測定し,その結果をX−Y

レコーダに出力した。そのときの測定回路の概略図を Fig.2に示す。ここでロックインアンプの周波数特性 は最高150KH:。であり,ミキサのそれは150MH。であ る。このときミキサには高周波と低周波の両方の信号 が入力され,得られる干渉波形は両者の混合されたも

のとなる。

3. 実験結果および考察 3.1 イオン音波の非線形分散

Position  X X−Y Recorder

Fig.2Measuring apparatus for interference method.

 DP装置で大振幅イオン音波を励起し,同時にグリ

ッドに0.3≦西〃6,≦1.4の高周波電圧を印加して干渉 法によりイオン音波の空間的減衰を調べた。このとき イオン波励起周波数五=100KH,を与え,伝搬波形のグ リッドに最も近い1周期に対応する波数乃から求めら れた位相速度・p=ωL/んとイオン波励起電圧耽との関

係を示したのがFig.3である。これから耽が2Vを越 えるとバリスティックモードが,1V以下ではイオン

音波が励起され,その間で両者が混在していることが

わかる。さらに佐=1Vのとき,その伝搬波形はグ

リッド近傍においてバリ〜くティック的振舞を示すがす ぐに音波となって大振幅波の特徴である振幅振動を始

6

 8

(5

里  8 1㍗、

 5

 茗

暴3

2

1

0

fL営:LOO(kHz)

Ion Ballistic Speed

III1

C (T=1.9eV)

s  e

0       5       10      ApPli・d Voltage VL=VpP/2(V)

Fig.3ηP一佐characteristic of ion wave・

(3)

0,6

0,5 a

0.4

0.3

02

0.1

O

fH=100岬z) fpi零519(kHz)

VI王〒・・25(V) Te=1・9(eV)

      VL=1・5(V)

Initial k

  \

C s 、

Second Period

  、

、  First Period of  Amplitude Oscillation

0.5

0.4

0.3

1).2

0.1

0

//蜘 ㎞t

Theory(1inear ion

 aCOUStiC WaVe)

・ ._聴

ド{一州・・r一・」・・司・一

 0       0.5

         k/kDe

Fig.4Nonlinear dispersion of ion acoustic wave.

める。すなわちこの波形は2っの波数の異なる波の和 で表される。

Fig.4に示しているのはターゲットプラズマの密度ηe

=2.4×108cr 3,電子温度π儲1.9eVで現/Z=15の 場合に高周波(ノk佐,蟹0.7,玲=0.25vl印加状態で のイオン波の分散関係(非線形分散)である。五を大 きくしていくとすぐに位相シフト(波数kのシフト)

が現われるが,このとき同時に減衰率も大きくなって いる。Fig.5は義を変化させた場合のイオン波の減衰 率耐ん,を示す。ここで得られた実験値は線形イオン音

波の理論値と比べ1オーダも高い減衰率を示し,さら に∫/冷儲0.35で極大値を持つ。つまりこれは∫/ゐi=

0.35で位相速度が最大となる(Fig.4のInitia1んの変 化)ことと対応している。なお,このときの線形イオ

ン音波の分散関係式は次式より与えられる。

島一

n悟(暑)㌔p{一二(暑、+1〜kβ・

0

+3)}

(1)

 ここでん,とんiはそれぞれ波数の実部および虚部,ま たηi,κ,男,んDはそれぞれイオンの質量,ボルツマ ン定数,イオン温度,デバイ波数である。

0.5 f/fpi

1.0

Fig.5Spatial damping rate of nonlinear ion acoustic    wave.

を調べるため,種々の高周波の廟波数についてイオン 音波の伝搬波形を観測した。また,この伝搬波形より 波数の実部ん,と虚部んiを図式的に求めて,波の位相速 度と空間的減衰率を得た。

 Fig.1のDP装置のドライバープラズマに周波数ん

=100KH。,励起電圧FL=1.5Vのポテンシャル変動

を加えることにより,イオン音波が励起される。ドライ

§

§

§

fL=100(kH・l VL旨1・5(V)VII=0・25(V)

∫一  fH=170(MHz)

      165(MIIz)

160(MIIz)

140(MIIz)隅f

    e

120(MIIz)

100(MIIz)

3.2 高周波電界による大振幅イオン音波の減衰.

 大振幅の非線形イオン音波の高周波電界による変化

     Distance Z from Grid (cm)

Fig.61nterferometer output for the axial distance as a

  parameter of apPlied frequency.

(4)

バーとターゲットプラズマの境界に位置するグリッド、

に電子プラズマ周波数(ゐe=140MH、)の近傍の高周

波電圧(陥=0.25V)を加えて,イオン音波の空間

的伝搬波形の変化を調べた結果をFig.6に示す。

高周波の周波数企力稀,より大きい場合にイオン音波が 励起されにくいことがわかる。Fig.6の干渉波形の振.

幅を対数で縦軸にとり,グリットからの距離を1波長

を1目盛として横軸に示したものがFig.7である。.角 が高くなるにつれて,大振幅波特有の振幅振動の最初 の谷の位置がグリット近傍へ移行している。この谷の 部分では波長が短くなり,非線形効果による波の位相 シフト(Phase shift)が起こっている。.また,振幅振 動の周期(波数)は漁にほぼ比例して増加することも 明らかとなった。この傾向は波の振幅が増加す る際に

起こる結果7)とよく似ているが,本実験では高周波

を加えると振幅が逆に低下する傾向にあるめで,別の 効果と思われる。

 Fig.8に漁を変化させた場合のイオン音波の波数ん,/

んD。と減衰率んi/ん,の変化を示す。図中に矢印で高周波

.電界を加えない場合の波数と減衰率も示した。この図 より,高周波を加えた場合に生ずる位相シフト(この 場合波数シフト)に伴って位相速度が減少し,同時に 減衰率が増加することがわかる。西!囲,=0.8で減衰率 が最大(レh=0の場合の約5倍)となり,五1郁。≧1。2 ではもはや波は伝搬できなくなっている。

100

書 召 嵩 含 く

9

10−1

Phase Shift

Phase Shift

× 3 60(凹Hz)

● = 80(MHz)

▲=100(凱Hz)

圏 = 120(囲z)

o =160(MHz)

△.

o

10騨2

  0      5       10    Dlstance from Grid (wave Length/Div・)

3.3考察

3.3.1Ponderomotive力によるイオン音波の安定化  高周波電界がイオン音波の分散関係に影響を与える

非線形効果として1)Ponderomotive力2)Parametric 効果 3)プラズマメーザー効果などの諸機構が理論

的に示されている。このうち,2)のパラメトリック 効果については本質的に高周波から低周波への崩壊型

不安定性であり,3)のプラズマメーザー効果との結

合を考慮しない場合にはイオン音波の安定化には寄与

しないと考えられる。ここでは,単一粒子に対する Ponderomotive力の理論4)を用いて実験結果を説明

できるかどうかを考察する。

 Drift・Maxwe11分布

/8一・・( η2α2π:τ』)施・xpド(審・)2} (・)

をしているプラズマ中に,外部より一様な高周波電界

  Eo(t)=EoCOSΩt       (3)

を印加した場合の「 Cオン音波(ん,ω)の分散関係式

  ・一・・栂筈・(Ω)・・恥一・・  (・}

ここで

  α,=十keE o/(meΩ2)

秘一一

x一i曙絵

0.15

0.10

0,05

0

㌦/\・

●一● ●

一/ X

     

   ・/ ×x

  /  X

xイ

VII=0(V)

ぜ 副

0.3

0.2

0.1

Fig.7Variety of amplitude oscillation of ion acoustic   wave by applied frequency.

0

(5)

(6)

   0         0.5        LO

      F「rquency f/fp・

Fig.8Variety of real and imaginary wave number by

  applied frequency.

(5)

・・一 l一対農・p(ω27πi2κ271)

+謹3慧;ぞi

   Ω2一κ2Te1加e

9(Ω)=

  Ω2一ω品一κ2処1〃z,

(7)

(8}

で与えられる。ここてゾ8はα(電子eとイオンi)粒子 の分布関数,ηoは密度,・d。はドリフト速度である。

またε。はα粒子の誘電率を表す。これより,高周波電 界によるイオン音波の波長λの変化△λは

築撃(んDeαe ん)2

      1+(脈D,)2

      (9)

   】L一←3 (7γ箕){1十  (ん洗De)2} 2

となる。また,分散関係の三部より,イオン音波の成

長率ωiは

畿一望誌(禦)3/2{1+÷・3ψ(Ω)讐}

×[絵一訟(禦男)%

×{1−1(景+2)・竃ψ(Ω)警}

   ×・xp(箕32:τ12)]   (1・)

となる。空間的成長率んiはんi=ωiん9=ωi/c,を用いて(10)

式を書き直すと

  ん  ん2c2  1

傷一布欝{1+τ・含・(Ω)

   1   0de

×[

  (ん,/んD。)22ηTe

(  1

.1んDe)、}

6、(7ソ7b)

2(ん,/んDe)2・t、

×{・一÷(暑+2)・3ψ(Ω)

(  1 r1んDe)、}・exp(一翼一1)}

Table.1 Various values calculated by

    ponderomotive theory

(11)

fH

Ω1ωpe 〃PICs △〃λ(%)

雛r

ψ(Ω)

50MHz 0,357 0,986 一〇.97 一1.05×10ヨ 一〇.H5

100MHz 0,714 0,997 一〇.51 一9.70x10司 一〇.980

140MHz 1,000

、 0.998

一7.20 一1.71XlOヨ 一52.8

160MHz 1,143 0,999 十〇.35

一8,65XlO4

十4.42

となる。本実験ではグリッドに高周波電圧を加えてい るので,デバイ長程度まで電界がしみ出していると考 えられ,このとき玲=0.25Vを用いて, Eo=1.84Vl cmと評価できる。この値と本実験での各種パラメータ

を用いてTable.1の計算値が求められる。

 の(Ω)<0のとき高周波によるイオン音波の安定化

が起こる。4)その物理的機構はイオン音波の位相速

度低下に伴うイオンランダウ減衰効果の増大と理解さ れる。しかしながら,本実験の場合,理論的に得られ

た減衰率一んi/ん,は10−3のオーダーであり,実験値に比 べて2桁も小さい。これはPonderomotive力が効果

的になるにはかなり強い高周波電界を必要とすること

を意味している。本実験ではイオン音波の振幅に比べ て小さな高周波電界を印加しているだけであるので,

Ponderomotive力によるイオン音波の安定化は無視

できることが結論づけられる。

3.3.2 非線形散逸力(プラズマメーザー効果)によ

   るイオン音波の安定化

漁編,>1でイオン音波が安定化され,又,西の増

加に伴って非線形イオン音波の振幅振動の次数が大き

くなる本実験結果を説明するために,最近指摘された プラズマメーザー効果について考察する。

 南部らが指摘したプラズマメーザー効果は,低周波 波動に共鳴する電子に起因した高周波散逸力で高周波

波動が成長する効果である。6)結果として低周波波

動が安定化されるので,核融合プラズマの閉じ込めや

宇宙空間プラズマのAKR輻射機構として興味を持た

れている。南部によれば,非磁化プラズマ中のプラズ マメーザーによるイオン音波の減衰率は

倉一(亟んr)2婿夙

(12)

と与えられる。ここで礁=瑞!4πη興は高周波波動の エネルギーである。

ん,/んD。=0.126,聡=4×10−3とすると

んi/ん,=10−3

となり,肱を晩の値にとったとしても

んi/ん,=10−2

となり,実験値より1〜2オーダー小さい。本実験で

は,高周波のエネルギー既を直接測定していないの

で,これらの評価には誤差が含まれるが,非磁化プラ ズマ中ではプラズマメーザー効果は小さいと思われる。

(6)

4. おわりに

 ダブルプラズマ装置を用いて高周波電界下の大振幅 イオン音波の伝搬特性を調べ,異常に大きな非線形減

衰を観測した。この空間的減衰率はPonderomotive 力や非線形散逸力の理論で予想される値より1〜2桁

大きく,振幅振動とも関連していることがわかった。

 今後は,グリッド近傍の局所的な不均一高周波電界 を考慮した理論的検討を加えるとともに,高周波電界 により励起される高周波波動との関連について検討し ていく予定である。

 最後に,実験に際しお世話になった宇宙科学研究所 の中村助教授と実験を手伝っていただいた院生藤村幸 夫氏(現九州電力)に謝意を表する。

         参考文献

1)H.Fujiyama eta1;JPn. J. ApPl. Phys.,20,1715

  (1981)      、

2)R.McWilliams eta1;Phys. Rev. Lett.,50,

 836 (1983)

3)1.H. Hutchinson and S. E。 Kisse1;Phys. Fluids.,

 墨,310(1♀83)

4)S.Takamura etal;J.Phys. Soc. JPn.,31,

 925 (1971)

5)Yu.M.Aliev and V.P.Silin;Soviet

  Physics−JETP.,21601(1965)

6)M.Nambu;J.Phys. Soc. Jpn.,531594(1984)

7)N.Sato eta1;Phys.Rev. Lett.,20837(1968)

参照

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