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笠井幸絵 論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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笠井幸絵 論文内容の要旨

主 論 文

Programmed death 1 ligand (PD-L1) in solid cancers after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation: a retrospective analysis by the

Nagasaki Transplant Group

同種造血幹細胞移植後の二次癌における PD-L1 発現の検討

笠井幸絵、糸永英弘、新野大介、三好寛明、加藤丈晴、今西大介、藤岡真知子、

古本嵩文、佐藤信也、澤山靖、田口潤、今泉芳孝、波多智子、吉田真一郎、

森内幸美、大島孝一、宮﨑泰司

International Journal of Hematology・112 巻 4 号 524-534 2020 年

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線医療科学専攻

(主任指導教員:宮﨑泰司教授)

緒 言

同種造血幹細胞移植(同種移植)は通常の化学療法で治すことができない血液疾患 に治癒をもたらしうる治療である。同種移植後の重要な長期合併症として、同種移植 後の二次癌があり、これは長期予後に関わる重要な合併症である。同種移植後に成立 するドナー由来の免疫系が宿主組織を攻撃する慢性移植片対宿主病(慢性 GVHD)が二 次癌の発症リスク因子として報告されているが、その詳細な病態は不明である。

一般的に癌の発症には免疫逃避機構が関与しており、PD-L1(programmed cell death 1 ligand)は癌細胞が発現する重要な免疫調節分子である。本研究では同種移植後の 二次癌発症の病態についての知見を深めるため、PD-L1 発現を中心とした二次癌の免 疫病態を病理学的に検討した。

対象と方法

長崎県内で 1990 年-2017 年に同種移植を受けた 16 歳以上の患者 530 人を対象とし て、二次癌発症のリスク因子について検討した。また、対象患者 530 人のうち二次癌 を発症した症例については二次癌組織の PD-L1 発現、HPV/EBV 感染、癌周囲の免疫細 胞の浸潤を評価し、慢性 GVHD との関連を含めた臨床病理学的特徴について検討を行 った。

結 果

1. 二次癌と慢性 GVHD の疫学的な関係

同種移植後 10 年での二次癌累積発症率は 3.3%であり、移植から発症までの期間中

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央値は 3,487 日であった。多変量解析で慢性 GVHD 罹患歴は二次癌発症の独立したリ スク因子であった(P=0.019)

2. 二次癌の PD-L1 陽性率

患者 530 人中、15 人が二次癌を発症した。そのうち 3 人に異時性重複癌を認め、合 計で 18 例の二次癌を認めた。二次癌 18 例の発生臓器は、口腔癌と肺癌が 4 例で最も 多く、次に皮膚癌 2 例、食道癌 2 例が続いた。組織型では扁平上皮癌 9 例と腺癌 7 例 が多数を占めた。異時性重複癌 3 例はそれぞれ口腔癌と肺癌、前立腺癌と皮膚癌、皮 膚癌と口腔癌であった。

18 例中 8 例において、二次癌発症時に活動性の慢性 GVHD を認めた。二次癌におけ る PD-L1 陽性率は、癌細胞の 1%未満は 5 例、1-5%は 1 例、5-10%は 2 例、10%以上 は 10 例であり、二次癌発症時に活動性慢性 GVHD を認めた症例では、PD-L1 陽性率は 有意に高値であった(P=0.020)。移植時の患者年齢、性別、ドナー種別、移植片の 種類、前処置、GVHD 予防、抗胸腺細胞グロブリンの使用、二次癌の病期と二次癌組織 の PD-L1 陽性率には有意な関連は認められなかった。

慢性 GVHD 標的臓器と二次癌発生臓器の関連を検討したところ、慢性 GVHD 標的臓器 に発生した二次癌では PD-L1 陽性率がいずれも 30%以上(30-80%)であり、慢性 GVHD 標的臓器以外に発生した二次癌の PD-L1 陽性率はいずれも 5%以上(8-40%)であっ た。

頭頚部癌 5 例において PD-L1 陽性率 30%以上の症例は p16 陽性であり、PD-L1 陽性 率 5%以下の症例は p16 陰性であった。18 例中 14 例で EBER-ISH を施行したが、全例 陰性であった。

3. 二次癌周囲の免疫細胞

二次癌発症時に活動性慢性 GVHD を合併していた症例は癌周囲の PD-L1 陽性マクロ ファージ数が有意に高値であった。癌周囲のリンパ球専有面積比率、PD-1 陽性リンパ 球数、CD68 陽性マクロファージ数については、それぞれ二次癌発症時の慢性 GVHD の 有無との関連を認めなかった。

考 察

既報と同様に慢性 GVHD 罹患歴が同種移植後の二次癌発症のリスク因子であった。

これにより、本研究のコホートを対象として二次癌の病理学的検討を行う妥当性を確 認できた。

そして病理学的検討の結果、二次癌発症時に活動性の慢性 GVHD を合併していた症 例では PD-L1 陽性率は有意に高値であった。これにより、慢性 GVHD を基盤として発 症する同種移植後の二次癌に PD-L1 が関与している可能性が示された。

活動性慢性 GVHD 合併例における二次癌で PD-L1 陽性率が高値であった機序につい ては、(1)慢性 GVHD 標的臓器では PD-L1 陽性率が高いことが報告されており、PD-L1 陽性率が高い組織を発生母地として二次癌が生じた可能性、(2)慢性 GVHD 症例の頭 頸部癌では HPV 感染率が高いことが示されており、移植後の頭頸部癌では HPV 感染の 結果として PD-L1 陽性率が高くなった可能性、(3)癌組織や GVHD 標的臓器の周囲に 存在するマクロファージの PD-L1 陽性率が高いことが示されており、慢性 GVHD 症例 において PD-L1 発現を促すような液性因子(インターフェロンなど)の関与、が考え られた。

(備考)※日本語に限る。2000 字以内で記述。A4 版。

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