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井上大 論文内容の要旨

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Academic year: 2022

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井上大 論文内容の要旨

主 論 文

Mitochonic acid-5 ameliorates chlorhexidine gluconate-induced peritoneal fibrosis in mice

Mitochonic acid-5はクロルヘキシジングルコン酸塩誘発性マウス腹膜線維化を

軽減する

著者名;井上大、鳥越健太、鳥越未来、牟田久美子、小畑陽子、

鈴木健弘、鈴木千登世、阿部高明、小路武彦、迎寛、西野友哉 Medical Molecular Morphology, in press

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:西野友哉教授)

緒 言

腹膜線維化は長期間の腹膜透析による重要な合併症の一つであり、コラーゲンの 蓄積・筋線維芽細胞の増殖・炎症細胞の浸潤に起因している。その機序にミトコン ドリア機能異常による酸化ストレス増大の関与が報告されている。インドール-3-酢 酸誘導体である Mitochonic acid-5 (MA-5) は、新たに同定されたミトコンドリア機能 改善薬であり、ミトコンドリア病や腎臓病モデルにおける治療効果が報告されてい る。しかし、MA-5 が腹膜線維化に対して有効であるかは明らかになっていない。そ こで、本研究では MA-5のクロルヘキシジングルコン酸 (CG) 誘発性マウス腹膜線維 化モデルに対する効果を検討した。

対象と方法

10週齢雄C57BL/6マウスを用い、コントロール群・MA-5群・CG群・CG + MA-5 群の各群に分けた。コントロール群・MA-5群には15%エタノールを、CG群・CG + MA-5 群には CG を 3 週間隔日腹腔内投与した。また、コントロール群・CG 群には 蒸留水を、MA-5群・CG + MA-5群にはMA-5を連日経口投与した。採取した腹膜組

織で Masson’s trichrome 染色を行い、壁側腹膜の線維性肥厚を評価した。また、線維

化 (type III collagen、transforming growth factor-β [TGF-β] 、α-smooth muscle actin [α- SMA] ) 、 炎 症 (F4/80、monochemotactic protein-1 [MCP1] ) 、 酸 化 ス ト レ ス (4- hydroxynonenal [4-HNE] ) 、 ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 (ATP5a1、uncoupling protein 2

[UCP2] ) に関連するマーカーについてそれぞれ免疫組織化学的に検討した。200倍あ

るいは400倍で5視野を無作為に選択し、type III collagenについては1視野あたりの 陽性面積を、TGF-β・α-SMA・F4/80・MCP1・4-HNEについては1視野あたりの陽性 細胞数を、ATP5a1・UCP2 については 1 視野における全細胞中の陽性細胞率を比較

(2)

した。さらに、4-HNE・UCP2 の蛍光二重染色を行い、構成細胞における酸化ストレ スとミトコンドリア機能の関連について検討した。

結 果

CG群と比較して、CG + MA-5群では壁側腹膜の線維性肥厚が抑制された。また、

MA-5 の投与により type III collagen 陽性面積、TGF-β・α-SMA・F4/80・MCP1・4- HNE 陽性細胞数の増加は有意に抑制され、ATP5a1・UCP2 陽性細胞率の減少は有意 に回復した。蛍光二重染色では、MA-5投与により4-HNE陽性・UCP2陰性細胞が減 少し、4-HNE陰性・UCP2陽性細胞が増加していた。

考 察

MA-5の投与により CG誘発性腹膜線維化は抑制され、α-SMA陽性筋線維芽細胞や

F4/80 陽性マクロファージは減少し、それらの誘導に関わるサイトカイン (TGF-β・

MCP1) の発現も減少していた。また酸化ストレスの抑制とミトコンドリア機能の改

善を認めた。

これまでの研究で、MA-5はミトコンドリア内膜蛋白質である mitofilinに結合し、

ATP 合成酵素のオリゴマー化・スーパーコンプレックスの形成、クリスタの構造変 化を誘導することで、効率的な ATP 合成を促進し、活性酸素種の過剰産生を抑制す ることが報告されている。本研究では、MA-5 によるミトコンドリアの形態学的変化 は確認できていないものの、MA-5 の投与により腹膜構成細胞におけるミトコンドリ ア機能が回復し、酸化ストレスを軽減したと考えられた。また、酸化ストレスは炎 症応答のトリガーであり、MA-5 投与による酸化ストレスの軽減が CGによる腹膜の 炎症とそれに伴う線維化誘導因子の抑制につながったのではないかと考えられた。

以上の結果から、CG 誘発性マウス腹膜線維化モデルにおいて、MA-5 はミトコン ドリア機能の回復・酸化ストレスの軽減を介して腹膜へのマクロファージ浸潤を抑 制し、腹膜線維化を軽減する機序が示唆された。MA-5 は腹膜線維化に対する新たな 治療薬として期待される。

参照

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