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氏名 川嶋

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 川嶋

カ ワ シ マ

大介

ダ イ ス ケ

所 属 理工学研究科 機械工学専攻 学 位 の 種 類

博士(工学)

学 位 記 番 号

理工博 第

234

号 学位授与の日付 平成

29

3

25

日 課程・論文の別 学位規則第4条第

1

項該当

学 位 論 文 題 名 近赤外分光イメージング法による微細流路内水溶液の反応拡散現象 の可視化と分析

論 文 審 査 委 員 主査 准教授 角田 直人 委員 教 授 首藤 登志夫 委員 准教授 小方 聡

【論文の内容の要旨】

近年,化学合成や分析の効率化,高性能なエネルギー機器開発のため,微細流路を利 用した小型熱流体デバイスが注目されており,現象の解明から応用に至るまで多くの研究 が精力的に行われている.微細流路を用いる利点は,試料の微量化,比表面積の増加によ る反応効率や熱伝達率の向上に加え,複数の液体試料を層流状態で流し,液液界面を容易 に形成,観察できることである.液液界面では拡散法則に従う物質輸送と律速された化学 反応が進行するため,これらの反応拡散現象を計測制御することはデバイスの設計と実用 において極めて重要である.反応拡散現象はマクロ的には濃度分布の変化として表れるた め,現象分析のためには濃度イメージング技術が必要であり,特に反応系では多成分の濃 度の同時イメージング技術が必要となる.しかし,屈折率,偏光,蛍光,ラマン分光など を利用した従来の光学的手法では,原理的に物質種を区別できない場合や,空間走査が必 要なため過渡的な変化を追従できない場合があり,目的とする同時測定の実現は困難であ る.

本研究では,微細流路内の水溶液を対象にした新たな多成分濃度の同時イメージング法

を提案し,物質拡散や化学反応の可視化実験により測定手法としての確立を目指す.測定

原理は近赤外域における溶質分子・イオンが介在したときの水分子の振動分光特性に基づ

いており,蛍光物質を必要としない非侵襲測定手法である.本論文では先ず,各種水溶液

の吸収分光データから同時イメージングに必要な波長を選定し,吸光度から濃度への変換

モデルを構築する.また,特定波長における吸光度は温度に依存するため,温度について

も濃度との同時イメージングが可能であることを示す.本手法を用いて,微細流路内の反

応拡散現象を可視化し,提案する測定手法の精度や有効性を議論するとともに微細流路内

(2)

の水溶液の輸送現象解析を行う.特に,液液界面における相互拡散と界面不安定性を調査 し,微細流路を利用した化学反応時における輸送特性の解明を目的とする.

本論文は以下6章から構成される.

第1章「緒論」では,本研究に関わる背景として微細流路を用いた分析やデバイスの応 用例を取り上げるとともに,マイクロ領域を対象とした測定手法の現状と近年の研究の展 開と問題点を述べた.また,本研究が提案するイメージング法の基盤となる近赤外分光法 を概論し,これを応用した既存の計測・可視化技術を紹介するとともに課題を明らかにす る.以上を踏まえ,本研究の位置づけと目的を記した.

第2章「水溶液の近赤外吸収分光測定」では,近赤外分光イメージング法の基盤となる 各種水溶液の吸収分光特性についてまとめた.代表的な電解質および非電解質の水溶液の 吸収スペクトルをフーリエ変換赤外分光光度計により測定し,溶質種,濃度,および温度 が及ぼす影響を調査した.その結果,

H

OH

をイオンや官能基として有する場合,吸光 度が濃度に依存しない等吸収点が現れることを明らかにした.等吸収点は,酸性とアルカ リ性の違いや,糖類やアルコール類のような化合物の種類,および温度によって変動した ことから,等吸収波長は多成分測定において成分固有の感度波長とともに不可欠であるこ とを示した.また,得られた吸収分光データから測定に必要な波長を選定する手法を検討 した.多成分濃度を測定するため,先に挙げた等吸収点とともに他の波長を選定し,濃度 測定を行うために多変量解析を利用することで濃度測定の検量モデルを作成した.スペク トルの

PLS

回帰から回帰係数の大きな波長を選択し,重回帰分析と併用することで最適な 検量モデルを求めた.さらに,濃度イメージングを実現するためにマルチバンドイメージ ングシステムの開発を行った.複数の干渉フィルタとステッピングモーターを利用したバ ンドスイッチングシステムと近赤外カメラにより近赤外域の多波長イメージングシステム を構築した.

第3章「多成分水溶液の相互拡散と化学反応の分析」では,第2章で構築したイメージ ングシステムを用いて濃度測定実験を行い,異なる電解質成分の水溶液,特に中和反応に 関わる水溶液種が拡散するときに生じる溶質間の相互拡散現象を解析した結果をまとめる.

各溶質の拡散による濃度分布の過渡的変化を測定した結果,初期は各溶質の拡散係数に従 って拡散していくが,徐々に拡散係数が変化し,拡散係数の大きな溶質の拡散係数が減少 し,逆に拡散係数の小さな溶質は増加し,やがて収束した.しかし,各々の拡散係数の収 束値は一致しないことが確認された.さらに,化学反応が生じる場合,生成物と反応物と の相互拡散係数がことなるために生成物の拡散に偏りが生じることを明らかにした.

第4章「溶液間相互作用によって誘起される不安定拡散」では,溶液間の相互拡散係数

の差異や密度差によって局所的な密度勾配によって生じる不安定な拡散現象について調査

(3)

した.密度勾配すなわち発生する浮力の影響は拡散や化学反応によってポテンシャルが減 少し,不安定性を緩和する働きがあることを実験により明らかにした.また,第3章で明 らかとなった溶質間の相互拡散係数の不一致により実際の拡散速度に差が生まれることで,

局所的に密度が不連続となる部分が生じ不安定化する要因となることがあり,パターン化 された対流拡散を生むことを明らかにした.

第5章「結論」では,本研究で得られた成果を総括し,今後の課題や展望についてまと

めた.

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 近赤外光吸収スペクトルは、試料液体を石英ガラ スセルに入れ、紫外可視近赤分光光度計(Perkin  Elmer 製、LAMDA750)により計測した。石英ガ ラスセルは、876nm