近畿大学仁学部研究報告 Na39,2005年,pp.l15‑124 Research Reports of the School of Engineering,
Kinki University Na39, 2005, pp.l15・124
脂 質 高 分 子 膜 を 基 礎 と し た 味 覚 セ ン サ の 開 発
石 井 昭 治 安 , 椿 原 啓 士 会
Development o f t h e t a s t e sensor based on l i p i d polymer membranes
Shohji ISHII* , Hiroshi TSUBAKIHARA * *
Synopsis
The experimental study of taste sensing has been carried out with the measurements of electric potential difference, admittance and optical transmittance. The substances with different taste qualities were solved in the 10mM KCl aqueous solution. The electric potential difference has been measured between two detecting electrodes immersed in the 10mM KCl (containing taste substances) and 1M KCl solutions isolated by lipid/polymer membrane. Resulting from the increase in the ion concentration of the 10mM KCl solution with increasing taste substances added, the output shows different patterns for the different substances. The electric potential measurement, therefore, has sensitivities to electrolytes such as sour and salty substances and insensitivities to non‑electrolytes such as sweet substances. For improve the sensitivity to sweet taste substances, the measurement of the admittance and optical transmittance of the taste‑substance‑added 10mM KCl solution. The addition of the sweet substances such as glucose and sucrose decrease the admittance and increase the transmittance of about 950nm band. It should be indicated that the sweet substances adsorb the ions in the solution and break up the hydrogen bonds localized at 950nm band. We could make an improvement of the taste sensing system by the combination of these different measurements.
Keywords:
lipid polymer membrane, the response electric potential1.緒言
味覚は,五感の中で嘆覚を含め主観的要素であり,あい
まいな感覚である.五感を再現することを目的としている センサは,人の感性を定量化することを目指すものである.
*近畿大学大朝涜工業技制糊究科 対近畿大学工学部電子情報工学科
Graduate Sch
, ∞
lofIndus位ia1Technology,回nkiUniversityDepar凶entofElectronic Engineering and Compu飴rSciena, School of Engineering
,
Kin恒University115
科学技術の発展に伴い,センサは視覚・聴覚・触覚といっ た,単一の物理量を捉えるものから,味覚ヰ嘆覚を含めた 総合的情報を捉えるものへと要求が高まってきている.な ぜなら,人聞が味を感じるということは複雑で,舌の味細 胞で感じる味以外に,口の中に広がる風味や歯ごたえ,喉 越しなどの食味の感覚だけでなく,食事環境,食習慣,心 身の状態が関係するからである.しかし,おいしさやまず さの主体は化学感覚に由来する基本味である,塩味,酸味,
苦味,旨味,甘味となろう.まず,生体系における味受容 1)は,塩味は塩によって引き起こされる味であり,アルカ リ金属の塩で代表される.これの味の強さは主として陽イ オンによるが,陰イオンも影響することがある.酸味は,
プロトンが生体膜に結合することによって引き起こされ るが,陰イオンの種類にも影響を受ける.苦味は,生体膜 の疎水的部位に吸着して,味束Ij激を引き起こすものと考え られている.旨味は生体膜の受容サイトに陽イオンが遺品 し,細胞内を脱分極せる.甘味は,甘味受容体と甘味物質 が持つプロトン供与基とプロトン受容基との間で水素結 合が起こることによって甘味刺激が引き起こされると考 えられている.
近年,細胞の生体膜の構成成分である脂質を利用した人 工味覚センサが開発された.現在の膜電位型味覚センサは 5基本味の識別が可能とされ,人の味覚に近い応答を示す とされていた2) しかし膜電位測定では,疎水性を有した 味物質やイオン性の小さい味物質に対する感度が低いこ とに問題点がある2)
本苛
f
究では,代表的な脂質材料で、あるジオクチノレフォス フェート(∞p)とトリオクチルアンモニウムクロライドσ
伽)を用いて脂質高分子膜を作梨し,脂質高分子膜を 用いた味覚センサ製作の可能性を追求するとともに,脂質 高分子膜で、は判定し難い味覚について明らかにし,その解 決策についても検討することを試みた.2 .
実験 2.1車蝦法ポリ塩化ピニル (PVC)何防備薬工業(株))80伽gを溶 媒であるテトラヒドロフラン(百JF)(C4
H s 0 =
72. 11,和光純 薬工業(株))18mlに溶解させ,超音波洗浄器((株)アー ンスト・ハンセン, E凶ASON1C)を用いて1時間超音波処 理を行った.その溶液を,一日常温で放置した後,脂質と 可塑剤であるジオクチルフェニルフォスフォネート (∞pp) (Si伊a‑Aldrich社)1.伽Ilを混合し, 30分放置し た.脂質瀦夜をシャーレに移し,室温より50C程度高いホ ットプレートで3時間放置し乾燥させ,製膜した.形状は,透明且つ柔らかなフィルム状で膜厚約 200μmである.添 加脂質としては負荷電膜材料であるジオクチノレフォスフ
ェート (oop) (Cu
J I
3504P=322.42,和光純薬工業(株))O .
4ml と正荷電膜材料であるトリオクチルメチルアンモニウム クロライド(T'側 )(C~Cl倖404.16,和光純薬工業(株)) 0.269mlを使用した.製膜後は,定温貯蔵庫(陀1‑101(C), アズワン(株))に20'tで保存し,測定に供した.2 . 2 .
センサヘッドの製作センサヘッドの素材にはアクリル板を用いた.内液の液溜 めとして,Fig. 1のアクリルブ、ロック(30X25X8mm)の一方 にドリルで、直径8mm,長さ5聞の空洞を作製し,他方に直 径3mmの穴を開けた.直径8mmの穴を開けた側には,アク リル板(130X 25 X 2mm)接着し,内液用液溜めとした直径 0.8mmの銀線を塩化処理し,釣塩化銀電極を取り付けた.
銀線の塩化処理は,直径0.8mmの銀線を電極とし,飽和KCl 齢夜に浸して直流電流を通電することによって作製した.
通電条件は,電圧1.5V, 5分間で+極側の銀線に塩化銀が 析出した.同様の手順で数本の銀/塩化銀線を作製の後,
それらを飽和KCl溶液に浸し,それぞれの電位差が5mV以 下になるものを釣塩倣賭極として実験に供した.
電極からの導線を絶縁するため,導線はアクリル板で、囲 み,水が入らないような構造とした.このように作梨した 釣塩化銀電極を備えた内液用液溜めに濃度1MのKCl水溶 液を注入し,直径30mの穴を百FにPVCを1%溶解した溶 液を接着剤として脂質高分子膜で内液を密封した.
脂質高分子膜
外液nOmMKC軒味物質)
肉液(tMKCI溶液) 銀/塩化銀線 Fig.1 センサヘッド断面図
2.3.応答電位測定
味物質を混入し溶解する.外液としては, 1伽IMKCl水溶 液を用いた.外液にセンサヘッドと銀/塩化銀参照、電極仇
E
テクノグラス(株))を挿入しセンサヘッドによる内液電 位と参照電極による外液電位の差を応答電位として測定 した(Fig.2).電位測定には,デジタル電圧計(Protec608, hung chang社)を用い,測定データをパソコンに取り込ん だ.測定に入る前に,センサヘッドの事前動作チェックを 次の手.11慎で行った.
①基準液にセンサヘッドを入れ脂質高分子膜の応答が
脂質高分子膜を基礎とした味覚センサの開発 117
安定するよう
3 0
分浸ける(前処理).②3 0
分後の基準値を 測定する.③塩化ナトリウム( N a C l = 5
8.4 4
,和光純薬工業 (株))を用い,N a C l
濃度変化ω.1
mM" ‑ ' l M )
に伴う脂質高 分子駒芯答チェックを行う.④チェック後,前述の基準液 にセンサヘッドを1時間‑‑‑‑‑1. 5時間浸し②の測定値付近 に戻ることを確認する(後処理).この事前動作チェック に合格したセンサヘッドを味覚センサとして使用した本研究では,
T a b l e . 1
に示した味物質を使用し,0 . 0 1 1
訓‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 1 M
の濃度範囲で応答電位を測定した.百
. b l e . l
本研究で用いた添加味物質味物質 附ヰ
塩味 KCl. NaCl 醗味 Hl, CCitric Acid. Acetic Acid 苦昧 Quinine, Caffei.ne 旨昧 脳G,Disodium Su畑 皿 ぬ
百昧 Glucose, Sucrose, Sa∞h,arin S池 田
巴/サヘッド
外 濠(1伽u(c防信擁噂網開 御 国t重 蹄
Fig.2応答電位測定
3.結 果
内液に
1 M K C l
,外液に1
伽M K C l
水溶液を用いた時の電位 差を基準簡立(OV)として,外液に味物質を混合,溶解した 時の電位差から基準電位を差し引し、た値をその味物質混 入時の応答電位とした. 5基本味のセンシング関値は,塩 味3
mM,酸味O . l
mM,苦味O . l
mM,旨味0 . 3
mM,人工甘味料 1酬となり,各種味物質ともその応答電位は濃度の対数に ほぼ比例した.塩味物質として
N a C l
,K C l
を外液にO . l " ‑ ' l o o
OmM混入し た 時 の 閃P膜( C )
,T O M A
膜( T )
の応答電立をF i g . 3
に示す.両脂質高分子膜共,センシング関値はほぼ3mMであり,味
物質濃度の対数に比例する特性を示した.応答電位の変化 についても両脂質高分子膜共ほぼ同じであり 10倍の濃度 変化に対して約
ωmV
の応答電位の変化を示した.酸味物質を外液に
0 . 0 1‑ ‑ ‑ ‑ ‑
100mM混入した時の∞P膜,T
側A
膜の応答電位をF i g . 4
に示す.∞P膜の酸味物質に対 するセンシング関値はO . l
mMとなり, 10倍濃度変化に対し て約 3伽Vの応答電位変化を示した.しかし, T制A膜は酸 味 物 質 に 対 し て 応 答 し 難 く 酢 酸( A c e t i c A c i d :
佃3側 倖6 0 . 0 5
,和光純薬工業(株:))に対しては高濃 度に混入しても応答電位は認められなかった.クエン酸( C i t r i c A c i d :
Hi飢1I2 C ( O H )( C
∞IH)印2
伽H = 1 9 2 . 1 2
,和光純 薬工業(株) ),塩酸( H y d r o c h l o r i cA c i d : H C l = 3 6 . 4 6
,和 光純薬工業(株) )で、は多少の反応があったものの,セン シング関値は3mM, 10倍の濃度変化に対してはクエン酸で 約 2OmV,塩酸で約 30mVで、あった.苦味物質を外液に
0 . 0 1
‑‑‑‑‑10伽M混入した時の∞P膜,T
側A
膜の応答電位をF i g . 5
に示す.キニーネ塩酸塩二水和 物(Qui n i n eH y d r o c h l o r i d e D i h y d r a t e : C : J I 2 4 N 2 0 2
・H C l
・ 2~0=396.9 1
,和光純薬工業(株) )については,O . l
mM低 濃 度 か ら ∞P膜 で1 0
倍の濃度変化に対して応答電位が 7伽Vという高い応答電位変化が生じた.しかし, T'側 膜 に対しては,センシング関値が 1伽1M,変化量は 10倍の濃 度 変 化 に 対 し て 50mV と な っ た . カ フ ェ イ ン( C a f f e i n e : C J I l o N P 2 = 1 9 4 . 1 9
,和光純薬工業(株))に対して は,∞P膜, TOfI且膜共ほとんど反応しなかった.旨味物質を外液に
0 . 1 . ‑ . . . . ‑ 1
∞白nM混入した時の∞P膜,T
制A
膜の応答電位をF i g . 6
に示す.L ( + )
ーグルタミン酸ナトリウムー水和物(So
d i u mH y d r o g e n L ( + )
‑Gl u t a m a t e M o n o h y d r a t e :
郎G:剛 院H ( N H 2 )
叫C H 2 C
∞N a
・H 2 0
,和光純薬 工業(株) )について,D O P
膜のセンシング関値は1
白酬で あり,濃度の1 0
倍増加に対してほぼ 50mVの応答電位の増 加を示した.T C
胸膜は,旨味物質に対してその濃度を増加しでもほとんど応答しなかった.
甘味物質を外液に
0 . 1 " " 1 0 0
伽M 混入した時の∞P膜,T
制A
膜の応答電位をF i g .
7に示す.天然甘味料であるスクロース
( S u c r o s e: C 1 ! l 2 2 0 l l = 3 4 2 . 3 0
,和光純薬工業(株) ) ,D ( + )
ーグ、ルコース( D( + )
‑Gl u c o s e : C J l I 2 0 6 = 1 8 0 . 1 6
,和光純薬 工業(株:) )に対しては,閃P膜, T棚A膜共応答電位変化 が 認 め ら れ な か っ た . 人 工 甘 味 料 で あ る サ ッ カ リ ン( S a c c h a r i n S o d i u m :
C1H4Nna03S ・ 2~0=241.1 9
,和光純薬工 業(株) )では,閃P膜が 10mM近傍より応答電位変化を示 し,高濃度1 M
では約 50mVとなった. TOMA膜は,低濃度1
mM近傍より応答電位変化を示し,高濃度1 M
で 同E
答 電 位 は高く約一2 5
0mV
となった.3
∞
5
、旬E
E
, 2叩事 a
E
国a‑3
∞
3
∞
>
2∞
、ε J
百 1
∞
.~
zo
za
~-1 ∞ z o a ~-2∞
α
0.1
‑3
∞
0.01
300
> "
200、E J
.!!! 100
H z ぢe
o
a e~-1 叩
。
a師
~-200
‑300 0.01
3叩
'、主"ー、
i
2凹aEE ‑m f冊
‑3叩 0.1
+ NaCI (C)
o NaCI (T)
・
KCI(C)OKCI (T)
。 。 f ち 売 ‑ O ‑ O
10 100 C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
F i g . 3
塩味物質の応答電位相生+ HCI (C) o HCI (T)
• Citric Acid (C) ,:'/Citric Acid (T)
・
AceticAcid (C) 0 Acetic Acid (T)Q
色 合 ~ ~ S G
0.1 10 C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
F i g . 4
酸味物質の応答電位相生• quinine (C)
。
quinine(1).CB仔eine(C)
• •
Oca栴ine(T)
•
。 ろ 売 。 O O
0.1 10 C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
F i g . 5
苦味物質の応答電位相生+MSG (C) OMSG (T)
• disodium succinBte(C) o disodium succinBte(T)
o 0 の 内 需
10
∞
C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
日g.6 旨味物質の応答電位特性
e g
• 9
• 8
• O 守人
1000
1
∞
1叩
1加。
3
∞
+suc間 関(C) o sucrose (T)
• glucose (C) ,'/glucose (T)
• sacchBrin sodium (C) 口斑ccharinsodium (T)
J O~
fう四 •
口 事口思 思 • 1 ?
口 口 口
0.1 10 1
∞
1∞ o
C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
F i g . 7
甘味物質の応答電位相生4.検 討
∞Pは親水基にリン酸を有しており水協夜中では,
W
を 電離して膜は負に帯電する.T O M A
は水溶液中で親水基から clーを電離して正に帯電する.F i g . 3 ' " ' ‑ ' F i g . 7
に示すように 脂質膜は,味物質とその濃度に対して特有の変化を示した.3で示した5基本味のセンシング闘値は,人間の味覚認知 闘値に近く,また人間は味を対数倍に感じると言われてい る2) このことから,脂質高分子膜味覚センサは,人間の 感覚を数値化するのに極めて好都合である.
塩味物質
N a
Clを水溶液中に溶解するとN a +
とCl‑に解離 する.濃度増加に伴いD O P
膜は電離した『より電離度の高 いN a +
の作用により町は閃P
の親水基に再結合することに なりD O P
膜の表面負電荷密度は低下し,界面電位は上がる と考えられる.基準液の場合での応答電位をo v
としてい るので,∞P膜の応答電位は相対的に正の方向に増加する.一方, T側A膜の場合は,
N a
Clの濃度増加に伴い TOMAから 輔佐したClーが水溶液中のCl濃度の増加により親水基に再 結合し,T O M A
膜においても膜の表面正電荷密度は低下する.基準液の応答電位を
o v
とするため,界面電位の低下によ りT O M A
膜の応答電位は負に変化する.酸味物質である酢酸,クエン酸,塩酸はKCl水翻夜中で 電離して町濃度を増大させる.すでに述べたように,
D O P
膜は町を輔佐し,負に荷電している.水溶液中の
w
濃度の 増加は,閃Pの『の電離を妨iず,膜表面の負電荷密度を減 少させる.基準状態での応答電位をo v
とすると,∞Pは正 の応答電位を示し,酸味物質の増加に伴って応答電位を増 大させることになる.塩酸は,水瀦夜中でw
とCl‑に電離 するためN a
Clにおいて述べたと同様,水協夜中のCl‑の濃 度が増加するに従い,T O M A
の電離は少なくなりT O M A
膜表 面の正電荷密度は低下する.酸味物質の中でも特に塩酸に おいて,T O M A
膜の応答電位の低下が著しい原因となってい る.有機酸で、ある酢酸やクエン酸は,その負イオンが Clー よりも電離度が低く,水溶液中の負イオン量が増加するか らとしりて必ずしもT O M A
の表面正電荷密度に影響すると脂質高分子膜を基礎とした味覚センサの開発 119
は言えない.Fig.4に示すように,その応答電位はクエン 酸ではごくわずか,酢酸ではほとんど変化していない.
苦味物質では,カフェインのように非イオン性の物質に 対しては閃
P
,T O M A
膜共,応答電位の変化は認められなか った.応答電位がD O P
,T
側Aの電離状態によって形成され ていることから当然のことと言える.キニーネは,水瀦夜 中で正のキニーネイオンとc r
に解離する.キニーネイオ ンは有機正イオンであり,t r
と比べ電高肢が高いとは言え ないにもかかわらず,∞P膜は低濃度からその応答電位を 増加させた.このことは,単なるイオン即むではなく負に 帯電したD O P
膜に正のキニーネイオンが吸着したためでは ないかと考えている.旨味物質であるMSGは,水瀦夜中で、Na+とグルタミン酸 イオンに角調合する.水協夜中のNa"j,濃度の増加に従い,NaCl において述べたように∞
P
の電離が少なくなりD O P
膜表面 の負電荷密度は低下する.一方,T O M A
膜は応答電位の変化 は認められなかった.グルタミン酸イオンは有機負イオン であり,c r
と比べ電離度が低いためTC胞の表面正電荷密 度に影響せず,また負イオンが大きいためT側Aに馴染み 難く吸着も生じないのではないかと考えている.天然甘味物質であるスクロースやグルコースは,水樹夜中 に溶解しても電離せず,界面電位に影響を及ぼさないため 応答電位の変化は認められなかった.カフェインと同様に,
非イオン性の物質に対して
D O P
膜,T O M A
膜は無即芯である.人工甘味物質サッカリンにおいては,水溶;夜中で、Na+とサ ッカリンイオンに解離する.∞P膜は,先に述べたように 応答電位は正に変化させる.
T O M A
膜は,濃度中のサッカリンイオンが疎水性を持っているため脂質膜に吸着すると 考えられ,応答電位をさらに負に変化させる.
5.まとめ
『を電離し,自身は負に帯電するDOP,Cl‑を電離し,正 に帯電する
T O M A
を脂質とし,ポリ塩化ピニルを掛オとす る脂質高分子膜による味覚センサの可能性iこついて実験,検討した結果,以下のことが明らかになった.
1) 水に溶解し,イオンとなる味覚物質に対しては良い 応答を示した.塩味,酸味,旨味等はその濃度依存性 に特有の応答特性を有し,十分な味判別の可能性が推 定できる.
2) 苦味では,イオンとなるキニーネは高い応答を示す ものの,イオン性の小さいカフェインについては応答 し難いことが明らかになった.
3) 甘味についても人工甘噺斗であるイオン性を有す るサッカリンは応答電位が高く測定されるものの,電 離しない天然甘味料のスクロース,グルコースでは応 答電位は測定できないことが判った.
脂質高分子膜を用いた応答電位測定による味覚センサ は,その感度,味覚による応答電位パターンの違し、から有 効な味覚センサのーっとして挙げることができる.しかし,
苦味,甘味のように同じ味覚に分類されるもので、あっても,
イオン性の違いにより応答電位パターンが大きく変化す る点,また味覚の基本である甘味が測定できないことは脂 質高分子膜が味覚センサとして重大な欠点を有している
と言える.
6 .
その他の味覚センサ 6.1アドミタンス味覚センサ脂質高分子膜が味物質の場合,溶解によるイオン濃度に 応答することにより味覚センサとして動作するのであれ ば味物質を混入した溶液のアドミタンスを直接測定する ことによっても味覚センサを作製することができると考 えられる.
6.1.1実験方法
アドミタンス測定用センサは,脂質高分子膜味覚センサ のセンサヘッドを改造し,電圧端子として塩化処理した銀 /塩化銀線と電流端子として白金(Pt)線を備えた2電極セン サを用いた.対極~::~.w.塩化銀参照電極と白金電極(ピー・
エー・エス(株))を使用し,それぞれを電圧,電流端子 と し た .
4 1 9
2A 5H z . 1 3
lV1Hz
回、日正PEDANCE ANALYZER (HEWLEIT PACKARD
社)を用いて,味 物質濃度を変化させたときのアドミタンス変化を測定し た(Fig.8).銀 / 塩 惜 蹴 震 語
P韓
動塩{回融
Fig.8 4端子測定図
6.1.2実験結果
Fig.9にKClの濃度の味物質を混入した10ml¥狂CCl水溶 液のアドミタンスの周波数依存性を示す.
IOE+02
ー‑.01'"
n, ...
, ...
‑, ...
ー‑‑30(祖国凶,...
・
e1 .0E+Ol 1.0E+OQ 1.0E‑01
~ 1.0E一位
〉 1.0E‑03 1.0E‑04 1.0E‑05
1.0E‑OB
0.01 10 100 frequBncy ( kHz )
1000 ∞00
。
1日g.9 KCl水溶液のアドミタンス周波数相生
低周波側で若干流れ易く,アドミタンスの上昇が見られ る原因は不明だが,高周波側でのアドミタンスの上昇は水 溶液の直流抵抗成分に並列に接続するキャパシタンス成 分である.すべての測定値において周波数が1kHz近傍で のアドミタンスは周波数依存性はなく,安定に水溶;夜の導 電率を与えていると考えられるので,以下の議論ではその 値をもって水瀦夜のアドミタンスとした横軸に味物質の 濃度の対数をとり,縦軸をアドミタンスの対数で表現した.
結果を Fig.10'"" 14に示す.応答電位ときわめてよく似た 表現となり味覚関値,比例的応答が表現されている.
塩味物質を0.1'""1000mM混入した時のアドミタンス値 の変化を Fig.10に示す.水、断夜のセンシング関値はほぼ 1mMであり,味物質濃度の対数に比例する特性を示した.
アドミタンス変化はNaC,l KCl共ほぼ同じであり 1桁の 濃度変化に対して約0.8桁のアドミタンスの変化を示した.
酸味物質を0.01'""100mM混入した時のアドミタンスを Fig.llに示す.センシング関値は0.3mMとなり, 1桁の 濃度変化に対して塩酸では約0.7桁rクエン酸は約0.25桁, 酢酸は約0.06桁の変化を示した.
苦味物質を0.01'""100mM混入した時のアドミタンスを Fig.12に示す.キニーネ水溶液のセンシング関値はほぼ 3mMとなり, 1桁の濃度変化に対して約0.5桁の変化を示
したカフェイン水樹夜にはほとんど反応しなかった.
旨味物質を0.1'""1000mM混入した時のアドミタンスを Fig.13に示す.水溶
i
夜のセンシング関値はほぼ3mMとなり
, 1桁の濃度変化に対して MSG,コハク酸ナトリウム はどちらも約0.7桁程度の変化を示した.
甘味物質を 0.1'""1000mM混入した時のアドミタンスを Fig.14に示す.サッカリン水
i
容液のセンシング、関値はほぼ 3mMとなり,1桁の濃度変化に対して約0.7桁の変化を示 した天烈t
甘味物質で、あるグルコース,スクロース水翻夜 のセンシング関値はほぼ300mMとなり,濃度の増加に伴 い,従来の味物質とは逆にアドミタンスは低下した.t.OE+OO
t.OE‑Ot
...... t.OE‑02
、ω
, .
,
>‑t.OE‑03
t.OE‑04
t.OE‑05
+KCI DNaCI
口
ロ ロ
白白
白白
1
∞ o
1.0E+OO
日g.10塩味物質のアドミタンス特性(周波数1kHz)
1.0E‑01
,...1.0E‑02 ω 、
, .
,
>‑1.0E‑03
1.0E‑04
1.OE‑05 0.01
0.1 10 100
C 0 n c e n t r a t i 0 n ( mM )
• Citric Acid口HCI 血AceticAcid
ー
口 ‑
a
口 2 h
‑ ‑
円富
市幽
囚幽
日g.l1酸味物質のアドミタンス特性(1kH
d
0.1 10 100 C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
1.0E+
∞
1.0E‑01
......1.0E‑02 ω 、 . . .
,
>‑1.0E‑03
1.0E‑04
1.0E‑05 0.01
+quinine 口ca仔eine
口 口 口 口 口 合 型
Fig.12 苦味物質のアドミタンス特性(1kH
d
0.1 10 C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
1.0E+00 1.0E‑01
,...1.0E一目
、的
旬
,
>‑1.0E‑03 1.0E‑04 1.0E‑05
+MSG 口DisodiumSuccinate
白 口 口
o ~ } }
日g.13 旨味物質のアドミタンス特性(1kH
d
0.1 10 100 C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
100
1000
脂質高分子膜を基礎とした味覚センサの開発 121
1.0E+
∞
1.0E‑01 +glucose
・
sucrose 6. saccharin sodium,,",1.0E‑02
、
ω J>‑1.0E‑03
Q i A ‑
・ A ‑
1.0E‑04
m 。 G
1.0E‑05
0.1 10 100 C 0 n c e n t r a t i 0 n ( mM ) 日
g . 1 4
甘味物質のアドミタンス特性Ukl
王6
6 .
1.3
検討5基本味のアドミタンス味覚センサのセンシング関値は,
塩味
l
mM,酸味0 . 3
mM,苦味3
mM,旨味3
mM,甘味 (天然甘味300mM,人工甘味 3mM)となり,脂質高分 子膜味覚センサと比べて関値は若干低くなった.塩味物質である
NaCl
とKCl
は,水溶液中でほぼ完全に Na+とC
,"lK+とC
l"に電離する.イオン濃度の増加に従い,アドミタンスは増加した.
酸味物質である
HCH
ま,水樹夜中でH+
とCU
こ割台する.NaCl
水繍夜と同様HCl
濃度の増加に伴し、イオン濃度増 加し,電荷移動が起こり易くアドミタンスは高くなる.ク エン酸と酢酸は,水瀦夜中でE とクエン酸負イオン,H+
と酢酸負イオンに4輔佐する.アドミタンスがあまり増加し なかったのはそれらの電離度が低し、からである.
非イオン性物質で、あるカフェインは,水撤夜中で電離し ないためアドミタンスの変化は認、め刈られなかった.キニー ネは,水溶液中で、キニーネ正イオンと Cl"に電離する.キ ニーネは脂質高分子膜の応答電位で、は濃度変化に対し塩 味酸味,に比べ大きな変化を示しているにもかカわらず,
アドミタンスにおいては闘値,変化率共大きくはならなか った.5章で検討したようにDOP膜に対して高い感度を 示したのはキニーネイオンの吸着に拠るものと考えられ る.アドミタンス測定では吸着の効果はなく関値,感度共 低くなったと考えられる.
旨味物質である
MSG
とコハク酸ナトリウムは,水瀦夜 中でNa+とグルタミン酸イオン Na+とコハク酸イオンに 電荷台ずる.両物質共,外液のNa+濃度の増加に従い,アド ミタンスの変化は増加した.電融支はNaCl
水瀦夜iこは劣 るものの,そのアドミタンスの変化はNaCl
に次ぐものと なった.人工甘味物質サッカリンは,水溶;夜中でNa+とサッカリ ンイオンに電離するため濃度増加に伴いアドミタンスは 増加する.しかし,天然甘味物質であるスクロースやグ、ル
コースはその他の味物質とは違い,濃度の増加に伴いその アドミタンスは減少した.もともと味物質混入のために
1 0 mMK C l
を用いている天然甘味物質は水樹夜中のK+あ るいはC
l"イオンを吸着する性質があるのではなし、かと考 えている.スクロースやグルコースに取り込まれたK+
ある いはC
l"イオンは相対的に重くなり動き難くなることによ りアドミタンスの値を減少させたのではないかと考えら れる.1000
6 . 2
赤外光味覚センサ1 0 mMK C l
水溶?夜に味物質を混入,溶解してセンサを構 成するという条件下で,赤外域の光による吸光度の変化を 用いたセンサの可能性について追究した.6 . 2 . 1
実験結果分光測定用石英セルに試料溶液を入れ,分光光度計
(UV'3100PC
,島津製作所(株))を用いて測定した.F i g . 1 5
に車塩水の近赤外吸収スペクトルを示す.5.0E+00 戸
、4.0E+叩
f 帽
'‑'3.0E+00
0 o c 320E+00
0
a 腕
c:Cl.0E+00 O.OE+OO
800 1300 1800 Wave length ( nm )
Fig
. 1 5
純水の近赤外スベクトノレ 23加950nm
近傍にわずかの吸収が認められるが,これは,水分子聞の水素結合により光の吸収現象が起こっている ためと言われている 5,6,7).水分子集合体による光吸収が生 じた波長
950nm
付近で,天然甘嚇壮合成甘味料の混入 により光透過量の増大,すなわち吸光度の低下が認められ た.脂質高分子膜味覚センサで基準液として使用した
1 0 mMK C l
水溶液に5
基本味を混入し,波長8 0 0 ' "
1300nm
で吸収スベクトルを測定した.KCl
水溶液の測定 結果をF i g . 1 6
に示す.水の光吸収が生じた波長
950nm
付近で5
基本味の混入 により光透晶量が増し,吸光度の低下が認められた.波長950nm
における味物質濃度に対する吸光度の変化をF i g . 1 7 " ‑ ' 2 1
に示す.脂質高分子膜やアドミタンス味覚セン サの場合と同様に,横軸を味物質濃度の対数に,また縦軸 を吸光度変化の対数として整理し図示した.3.0E‑02 ....... 1.0E‑02 f 帽 ) ー1.0E‑02
世 G E
喜一3.0E‑02
0 .0 師
〈ー5.0E‑02
ー一且3"
ln制 Sn制
‑1伽 制
‑30π制
‑1田π制
‑3∞111M
‑
・1回XlrT制
‑7.0E‑02
800 900 飢)() 11
∞
12∞
13∞
Wave Length ( nm )
Fig.16 KCI水溶液の近赤外スベクトル
塩味物質を測定試料容器に 0.1"'1000m M混入した時 (参照試料はlOmMKCI水溶紛の吸光度変化をFig.17に示 す.NaC ,l KCI水溶液共,吸光度の変化は認められなか った.
酸味物質を測定制斗容器に0.01'"100m M混入した時の 吸光度変化をFig.18に示す.塩酸,酢酸水樹夜共,吸光度 の変化は認められなかった.クエン酸の光吸収のセンシン グ関値はほぼ 30m Mであり,味物質濃度の対数に比例す る特性を示した吸光度はほんのわずかだけ変化した
苦味物質を測定制斗容器に0.01"'100m M混入した時の 吸光度変化をFig.19に示す.キニーネ,カフェイン水溶液 共,吸光度の変化は認められなった.
旨味物質を測定制ヰ容器に0.1'"1000m M混入した時の 吸光度変化をFig.20に示す.MSG,コハク酸ナトリウム 水招請夜共,光吸収のセンシング闘値はほぼ3伽nMであり,
濃度の対数に比例する特性を示した.1桁の濃度変化に対 してMSG,コハク酸ナトリウム共約0.1桁の吸光度の変 化を示した.
甘味物質を測定制斗容器に0.1'"1000m M混入した時の吸 光度変化をFig.21に示す.天然甘味物質のスクロースとグ ルコース水樹夜,人工甘味物質のサッカリン水持論夜共,光 吸収のセンシング関値は 10m Mであり,濃度の対数に比 例する特性を示した.1桁の濃度変化に対してスクロース 協約0.1桁,グルコースは約0.08桁,サッカリンは約0.1 桁の吸光度の変化を示した
1.0E+01 1.OE+OO
世gl.OE‑01
咽
~1.0E-02 師
.0
可帽11.0E‑03 1.0E‑04 1.0E‑05
0.1
• NaCI 口KCI
口 出 円 凪 口 凪 口
・
10 100 C 0 n c e n t r a t i 0 n ( m M )
日g.17塩味物質の吸光度変化(波長95伽m)
1000
1.0E+01 1.0E+OO
~1.0E-01
E 咽
~1.帥 0E-02
.0 咽
可1.0E‑03 1.0E‑04 1.0E‑05
0.01
o Citric Acid 口AceticAcid A HCI
圏 直 直 ー ー ー =
0.1 10
C 0 n c e n t r a i 0 n ( m M )
日g.18酸味物質の吸光度変化(波長95伽m)
1.0E+01
+caffeine 口quinine
3
a z• E
,
sE411.0E‑02
白
} } 口 v u
•
1.0E‑04 1.0E‑05
0.01 0.1 10 C 0 n c e n t r 8 t i 0 n ( m M )
Fig.19 苦味物質の吸光度変化(波長95伽 皿 )
1.0E+01
+MSG 口DisodiumSuccinate 1.0E+OO
;1旺
口
白可
,l.0E‑03
口 口 }
1.0E‑04
以
• } •
1.0E‑05
0.1 10 1
∞
C 0 n c e n t r 8 t i 0 n ( m M )
Fig.20 旨味物質の吸光度変化(波長95伽m)
1.0E+01
+sucro
碍 ・
glucose ,:/saccharin sodium勺5211 01日 1
.OE‑03
2 ‑ m a 合
1.OE‑04 1.0E‑05
0.1 10 100
C 0 n c e n t r 8 t i 0 n ( m M )
Fig.21 甘味物質の吸光度変化(波長95伽m)
100
100
1000
1000
脂質高分子膜を基礎とした味覚センサの開発 123
6.2.2検討
5基本味について脂質高分子膜やアドミタンス味覚セン サで用いたのと同じ味物質を用いて,赤外光味覚センサの 可能性について実験した.塩味,酸味,苦味についてはク エン酸で、若干の変化が認、められるものの, 95伽m光の吸 光度はほとんど変化しなかった.それに対し,旨味,甘味
については十分な応答を示すことが判った.
旨味物質であるMSGとコハク酸ナトリウム水翻夜は,
濃度の増加に従い,光遺品量は増し,吸光度の変化は正の 方向に相対的に変化した.つまり
MSG
,コハク酸ナトリウム共に吸光度を低下させる.
甘味物質であるスクロース,グルコース,サッカリン水溶 液は,濃度の増加に従い,光透過量は増し,吸光度の変化 は正の方向に相対的に変化した.甘味物質はイオン'性,非 イオン性にかかわらず吸光度を同程度,低下をさせた.甘 味物質は,プロトン供与基とプロトン受容基の電気的に相 反する基が隣接している構造を持っていると言われてい る吟.水分子集合体は,平均的に2‑‑‑‑‑3個の水分子と結合し ているが微弱結合のため微量のエネルギーが加わると別 離し水分子と再結合が行われると言われている
ω .
水溶 液中に甘味物質が添加されることにより水分子間の水素 結合が甘味物質により切断され水分子関再結合が妨げら れるためと推察した.脂質高分子膜味覚センサの応答電位 で、認められなかった天然甘味物質は水溶液の光透過量を 分析することにより,人間の感覚に近い応答を定量的に測 定できると考えられる.また,人工甘味物質も同程度の吸 光度の変化をすることから赤外光味覚センサは甘いという感覚をセンシングできる可能性があると言える.
6.3まとめ
脂質高分子膜味覚センサを補うものとして,アドミタン ス味覚センサ,赤外光味覚センサについて考察し,以下の 結論を得た.
1) アドミタンス測定は,脂質高分子膜における応答電 位のように正負のイオンを分離して測定することは できないものの,明白にイオン濃度に呼応したアドミ タンス変化を示した.
2) アドミタンス味覚センサは,吸着等の影響を受けず,
キニーネにおいて見られた即P膜の異常に高い応答電 位のような振る舞いは認、められなかった.
3) 脂質高分子膜ではセンシングできなかった天然甘 味物質では,添加によるアドミタンスの減少が確認さ れ,天然甘味物質に対するイオンの吸着が原因ではな し、かと推定された.
4) アドミタンス味覚センサは,甘味物質に対して感度 を持つとは言え,人工甘味物質ではアドミタンスの上
昇,天然甘味物質ではアドミタンスの低下となり,人 工と天然甘味物質を区別することになる.
5) 赤外光味覚センサは,イオンに対してほとんど即芯 せず湿味,酸味,苦味についてはセンサとして機能し ないことが判った.
6) 一方旨味,甘味に対しては良好な応答を示し,また 人工甘味物質,天然甘味物質でほぼ同様の応答特性と なったことから人間の感覚に近いセンサとしての応 用の可有旨性があることが判った.
7.結論
脂質高分子膜を用いた味覚センサについて,その応答原 理を明らかにし 5基本味に対するセンシング、機能につい て検討した.さらに,脂質高分子膜味覚センサでは対応で きない味覚について,アドミタンス味覚センサ,赤外光味 覚センサを考案し,考察を進めた結果,以下の儲命を得た.
1)脂質高分子膜味覚センサは,水に溶解しイオンとな る味物質に対しては良い応答を示した.塩味,酸味,
旨味等はその濃度依存性に特有の応答特性を有し,十 分な味判別の可能性が推定できる.
a
苦味では,イオンとなるキニーネは高い応答を示す ものの,イオン性の小さいカフェインについては応答 し難いことが明らかになった.3) 甘味についても人工甘味料であるイオン性を有する サッカリンは応答電位が高く測定されるものの,電離
しない天然甘味料のスクロース,グルコースで、は応答 電位は測定できないことが判った.
4) アドミタンス味覚センサは,脂質高分子膜における 応答電位のように正負のイオンを分離して測定する
ことはできないものの,明白にイオン濃度に呼応した アドミタンス変化を示した.
5) アドミタンス味覚センサは,吸着等の影響を受けず,
キニーネにおいて見られた
DOP
膜の異常に高い応答 電位のような振る舞いは認、められなかった.ω
脂質高分子膜で、はセンシング、で、きなかった天然甘味 物質では,添加によるアドミタンスの減少が確認され,天然甘味物質に対するイオンの吸着が原因ではない かと推定された.
7) アドミタンス味覚センサは,甘味物質に対して感度 を持っとは言え,人工甘味物質ではアドミタンスの上 昇,天然甘味物質ではアドミタンスの低下となり,人 工と天然甘味物質を区別することになる.
8) 赤外光味覚センサは,イオンに対してほとんど反応 せず温味,酸味,苦味についてはセンサとして機能し ないことが判った.
9) 一方旨味,甘味に対しては良好な応答を示しまた 人工甘味物質,天然甘味物質でほぼ同様の応答特性と なったことから人間の感覚に近いセンサとしての応 用の可能性があることが判った.
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