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環境由来 Mycobacterium lentiflavum に対する コバス TaqMan MAI 偽陽性反応の検討

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Academic year: 2021

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平成25年 3 月20日

環境由来 Mycobacterium lentiflavum に対する コバス TaqMan MAI 偽陽性反応の検討

1)近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部,2)結核予防会結核研究所抗酸菌レファレンス部,

3)近畿大学医学部附属病院安全管理部感染対策室,4)近畿大学医学部臨床検査医学

戸田 宏文

1)

山口 逸弘

1)

鹿住 祐子

2)

中江 健市

1)

上硲 俊法

1)4)

吉田耕一郎

3)

(平成 24 年 11 月 22 日受付)

(平成 25 年 1 月 25 日受理)

Key words : Mycobacterium lentiflavum,Mycobacterium intracellulare, COBAS TaqMan MAI

抗酸菌感染症における PCR などの遺伝子増幅検査 は,検査室診断法の重要なツールのひとつである1).な かでも体外診断薬医薬品として認可されMycobacte- rium aviumMycobacterium intracellulareを区 別 し て 検出することができるのは,コバス TaqMan MAI(ロ シュ・ダイアグノ ス テ ィ ツ ク ス 社)(以 下 TaqMan 法)のみである.

2011 年 12 月中頃から 2012 年 5 月にかけて近畿大 学医学部附属病院の外来から提出された喀痰から Mycobacteria Growth Indicator Tube(MGIT)で 培 養日数 26〜42 日で陽性となる検体が相次いだ.これ らの陽性患者について検討を行った結果,採痰室の水 道水からの抗酸菌混入が考えられ,水道水の抗酸菌培 養を行ったところ,同様のMycobacteriumsp.が検出 された.今回,採痰室水道水を介した偽アウトブレイ ク事例で検出されたMycobacteriumsp.に対して菌種 同定を試み,TaqMan 法でM. intracellulare陽性を示 したが,後のシークエンス解析によりMycobacterium lentiflavumと同定され,TaqMan 法のM. intracellulare 陽性が偽陽性と考えられた事例を経験したので報告す る.

対象および方法

今回の検討には,本事例で得られたMycobacterium sp. 3 株(患 者 由 来 2 株,環 境 由 来 1 株)を 用 い た.

MGIT 陽性培養液については,結核菌群同定試薬キャ ピリア TB(日本ベクトン&ディッキンソン社)(以

下キャピリア TB)を行い,得られた菌株からは DDH マイコバクテリア 極東 (極東製薬工業)(以下 DDH 法)にて菌種同定を行った.アンプリコア法,ならび に TaqMan 法による測定は,MGIT 陽性培養液,菌 株の各々について行った.測定サンプルの調整は,

MGIT 陽性培養液は培養液 2mL を 3,000G で 20 分間 遠心し,その遠心沈渣を滅菌蒸留水で 100 倍希釈した ものを用いた.菌株は McFarland No. 0.5 に調製した 菌液を滅菌蒸留水で 100 倍希釈したものを用いた.詳 細な菌種同定は,結核予防会結核研究所抗酸菌レファ レンス部に依頼し,16S rRNA 遺伝子(以下 16S rRNA 法),DNA 依存性 RNA ポリメラーゼβサブユニット 遺伝子(以下rpoB法),および 65kDa heat shock pro- tein 遺伝子(以下hsp65法)のシークエンス解析2)を 行った.

3 検体の MGIT 陽性培養液のキャピリア TB は陰性 を示し,菌株の DDH 法は同定不能であった.MGIT 陽性培養液,菌株の各々のアンプリコア法,ならびに TaqMan 法の成績を Table 1に示す.アンプリコア法 ではM. aviumM. intracellulareともに陰性を示した が,TaqMan 法ではM. intracellulare陽性を示した.一 方,シークエンス解析では,3 検体とも 16S rRNA 法,

rpoB法,およびhsp65法のいずれも基準株M. lentifla- vumATCC 51985 とそれぞれ 100%,100%,および 99% の相同性が認められた.

今回,環境からの偽アウトブレイク事例で検出され たM. lentiflavumが TaqMan 法 でM. intracellulare陽 性を示した事例を経験した.偽陽性の原因については,

別刷請求先:(〒589―8511)大阪府大阪狭山市大野東 377―2 近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部

戸田 宏文

(2)

戸田 宏文 他 216

感染症学雑誌 第87巻 第 2 号 Table 1 The results of specimens with COBAS Amplicor and COBAS TaqMan MAI

Sample no. specimens

COBAS Amplicor COBAS TaqMan MAI

Abs at 660 (nm)  detected  of target

Ct value

detected of target

MAV MIN IC MAV MIN IC

K11M322 MGIT 0.010 0.005 3.361 negative 31.7 37.4 Mycobacterium intracellulare isolate 0.008 0.004 3.94 negative 33.6 36.0 Mycobacterium intracellulare K12M013 MGIT 0.008 0.005 3.662 negative 34.1 36.8 Mycobacterium intracellulare isolate 0.008 0.003 3.663 negative 34.5 37.1 Mycobacterium intracellulare K12Mwater MGIT 0.008 0.011 3.487 negative 31.4 36.8 Mycobacterium intracellulare

isolate NT NT NT NT 37.3 36.3 Mycobacterium intracellulare

MAV: Mycobacterium avium, MIN: Mycobacterium intracellulare, Abs: Absorbance, IC: Internal control, Ct: Critical threshold, NT: no test

増幅産物の検出方法が異なるアンプリコア法では陰性 を示したことから,M. avium,およびM. intracellulare のそれぞれを識別する特異的な蛍光標識 DNA プロー ブの設計に問題があった可能性がある.なお,Lot 間 の反応性の差異については,本事例は数カ月におよぶ 偽アウトブレイク事例の検討の際に確認できた現象で あり,異なる Lot でも同様の現象を確認した.TaqMan 法の基礎的検討の特異度試験ではM. avium,および M. intracellulareのみに陽性反応を示し,他のMycobac-

terium属との交差反応は認められていないが,この中

M. lentiflavumは 含 ま れ て お ら ず,M. lentiflavum との反応性については明確になっていない3).病院検

査室でのMycobacterium属の遺伝子増幅検査は,検体

からの測定だけでなく,発育菌からの菌種同定に用い られる場合がある.特に MGIT 陽性培養液からの測 定については,迅速な報告が可能であるが,集落所見 と遺伝子増幅検査成績の妥当性の評価ができない欠点 があり,本事例においても MGIT 陽性培養液からの 成績はすべてM. intracellulareとして報告が行われて いた.後日,M. lentiflavumの集落観察を行ったが,培 養 20 日間程度の 7H11 寒天培地では乳白色から薄黄 色の R 型集落を形成し,III 群非発色菌群と類似した 集落であった.培養 30 日以上経過すると黄色の着色 が明瞭になり,II 群暗発色菌群と確認することが可能 であった.一方,小川培地による発育集落の観察では,

培養 20 日間程度でも黄色の着色を確認することが可 能であり,III 群非発色菌群との鑑別には小川培地が 適していた.M. lentiflavumの菌種同定は,生化学的 検査や発育温度試験等の従来法では困難であり,さら に DDH 法の対象菌種にも含まれていないことから,

病院検査室での同定は困難である.最終的な菌種同定 は,遺伝子学的検査による塩基配列の解析が必要であ り,本事例においても 16S rRNA,rpoB,およびhsp65 の 3 領域のシークエンス解析により菌種を決定した.

臨床検体からのM. lentiflavumの分離状況に関する報 告はなく,本邦における分離状況は不明である.長野

らは DDH 法を行った 636 株中,14 株(2.2%)がM.

lentiflavumであったと報告している.このうち 7 株は

DDH 法で他菌種として同定されていた4).DDH 法の 誤同定や TaqMan 法による偽陽性が解決されない場 合,M. lentiflavumは他菌種やM. intracellulareとして 報告され,分離状況は過小評価されると考えられる.

近年,分子生物学的解析手法の進歩に伴い,新種の Mycobacterium属の報告が相次いでおり,M. lentifla- vumも 1996 年に Springer らにより提唱された新菌種 である5).現在,上市されているMycobacterium属を 対象とした遺伝子増幅検査試薬については,これらの 新菌種に対する評価は十分に行われておらず,今後の 検討が必要であると考える.

利益相反自己申告:申告すべきものなし 文 献

1)Ikegame S, Sakoda Y, Fujino N, Taguchi K, Kawasaki M, Kajiki A:Clinical Evaluation of COBAS TaqMan PCR for the Detection ofMy- cobacterium tuberculosis and M. avium Complex.

Tuberculosis Research and Treatment 2012;

2012:1―5.

2)鹿住祐子,前田伸司,菅原 勇:rpoB 遺伝子と 16SrRNA 解析による抗酸菌同定の試み.結核 2006;81:551―8.

3)田口直子,玉造 滋:TaqMan PCR 法を用いた M. tuberculosis,M. avium,M. intracellulare検出 試薬の基礎評価.医学と薬学 2009;62:121―

7.

4)長野 誠,市村禎宏,伊藤伸子,富井貴之,鹿

住祐子,武井勝明,他:16S rRNA 遺伝子および ITS-1 領域をターゲットとした Invader 法による 23 菌種の抗酸 菌 の 同 定―臨 床 分 離 株 を 用 い た DDH 法との比較検討―.結核 2008;83(7):

487―96.

5)Springer B, Wu WK, Bodmer T, Haase G, Pfyffer GE, Kroppenstedt RM,et al.:Isolation and characterization of a unique group of slowly growing mycobacteria:description of Mycobac- terium lentiflavum sp. nov. J. Clin. Microbiol 1996;1100―7.

(3)

M. lentiflavumに対するコバス TaqMan MAI の偽陽性反応 217

平成25年 3 月20日

An Investigation of Misidentification ofMycobacterium lentiflavumasMycobacterium intracellulare by the COBAS TaqMan MAI Test

Hirofumi TODA1), Toshihiro YAMAGUCHI1), Yuko KAZUMI2), Kenichi NAKAE1), Toshinori KAMISAKO1)4)& Koichiro YOSHIDA3)

1)Department of Clinical Laboratory, Kinki University Hospital,

2)Department of Mycobacteria references & Research, Research Institute of Tuberculosis, Japan Anti-Tuberculosis Association,

3)Department of Medical Safety Administration, Division of Infection Control and Prevention, Kinki University Hospital,

4)Department of Clinical Laboratory Medicine, Kinki University Faculty of Medicine

〔J.J.A. Inf. D. 87:215〜217, 2013〕

参照

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