論文内容要旨
急性期病棟における仙骨用多層シリコンフォーム材の有効性
―褥瘡ハイリスク患者の仙骨部褥瘡予防―
昭和学士会雑誌(第80巻 第1号 2020年2月)
外科系形成外科学 赤嶺周亮
褥瘡は患者QOLのためだけでなく,医療経済的にも重要であり,発生予防のためにこれ まで様々な取り組みが行われてきている。なかでも近年,創傷被覆材の発達や褥瘡発生 のメカニズムの研究に伴い,予防目的での創傷被覆材の貼付が行われており,その有効 性が報告されている。今回,当施設内で褥瘡発生率の高い呼吸器病棟において,褥瘡ハ イリスク患者に近年発売となった仙骨用多層シリコンフォーム材(Mepilex® Border
Protect仙骨用,以下Mepilex)を用い,従来の予防策と比較して仙骨褥瘡発生予防に
対する有用性を検討した。当施設呼吸器病棟において2017年4月から2019年3月まで の2年間で、障害高齢者の日常生活自立度B・Cかつ仙骨部に病的骨突出のある褥瘡ハ イリスク患者を抽出し,日本褥瘡学会の「褥瘡予防について」に準じた褥瘡予防策(リ スクアセスメント,4時間ごとの体位変換,体圧分散マットレスの使用,撥水クリーム やポリウレタンフィルの使用,栄養管理)を講じた上,Mepilex を貼付した 73 名と,
貼付しなかった69 名とを対象患者として比較検討した。褥瘡発生に関しては医師(形 成外科医,皮膚科医,リハビリテーション科医),認定看護師,栄養士,薬剤師から構 成される褥瘡対策委員により評価を行った。患者背景に有意差はなく,Mepilexを貼付 された群では2名(2.7%)に仙骨部褥瘡が発生し、従来の褥瘡予防のみの群では15名
(21.7%)に仙骨部褥瘡が発生し、有意な差を認めた(p<0.05)。これまで重症患者や ICU患者に対して使用されその有効性を示す報告はあったが,急性期病棟や緩和病棟で の有効性を示す報告は少なかった。本研究では急性期病棟においても多層シリコンフォ ーム材が褥瘡予防に有効であることが示唆された。その要因としては、従来のドレッシ ング材と比較して臀裂部に合わせた形状となっており仙骨部から臀部にかけての密着 性が高く剥がれにくいことや,5層構造による圧迫・せん断力・摩擦の軽減,微気候(
マイクロクライメット)の調整などが考えられる。海外ではシリコンフォーム材の予防 貼付に関するコスト面の評価はこれまで報告されており,その多くでコスト削減につな がるとされている。本邦では多層シリコンフォーム材の予防貼付に対してコスト評価を 行っている研究は無く,現在予防目的の被覆材貼付は保険適応とされていない。今後は 実際に臨床で広く使用されるためにも費用対効果に関して検討を行っていく必要があ る。また,予防貼付を行う患者基準やフォーム材交換頻度など明確な使用基準の確立や
,他社製品の多層シリコンフォーム材との比較検討も今後の課題である。