論文内容要旨
腸管合併症リスクを考慮した腸管原発悪性リンパ腫の切除適応に関する 検討
日本腹部救急医学会雑誌 38 巻 7 号
専攻名 病理系 臨床病理診断学 藤井 智徳
内容要旨
本邦における消化管原発悪性リンパ腫は節外性悪性リンパ腫の約 40%、
全消化管悪性腫瘍の約 1-8%を占める。このうち腸管(小腸・大腸)原発 悪性リンパ腫は、胃悪性リンパ腫に比べ組織学的に穿孔しやすいとされ、
また穿孔例は予後不良との報告がある。胃悪性リンパ腫対する治療が確立 されている一方、腸管悪性リンパ腫の治療法については明確なガイドライ ンはなく、特に病変の切除については施設間でその方針に相違がみられる。
今回、腸管原発悪性リンパ腫における腸管合併症リスクと予後について 臨床病理学的特徴を検討し、腸管原発悪性リンパ腫の手術切除適応につい て検討した。
対象は 2001 年 1 月から 2015 年 12 月に、昭和大学病院群(昭和大学病 院、横浜市北部病院、藤が丘病院)で診断された腸管原発悪性リンパ腫 94 例のうち、臨床情報が解析可能な 85 例を対象として後方視的に検討し た。臨床症状として穿孔を来した症例が 19 例(22%)にみられ、生存期間 中央値は 15.0 ヶ月で非穿孔群に比べ有意に短く、全例で肉眼型が潰瘍を 伴う半周性以上の病変、組織型が High-grade (WHO 分類第 4 版)だった。
また、化学療法を施行した High-grade 群 20 例のうち 8 例(40%)に重篤 な腸管合併症が生じ、全例で半周性以上の病変だった。
これらの検討から、腸管原発悪性リンパ腫の経過において、消化管穿孔 は予後不良因子になりうることが示唆された。また、組織型が High-grade で、肉眼型が単発かつ半周性以上の場合、腸管合併症をきたすリスクが高 く、これに伴い悪性リンパ腫の基本治療である化学療法の導入・維持を困 難にしているものと考えられた。そのため、これらの組織型および肉眼型
かつ切除可能な症例は、標準的な化学療法に加え、腸管合併症リスク低減 を目的とした手術切除が有効であると考えられた。