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Academic year: 2021

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論文内容要旨

成人期注意欠如多動性障害患者における不安,抑うつ症状

昭和学士会雑誌 第76巻 第6号(平成28年12月掲載予定)

内科系精神医学専攻 佐賀信之

注意欠如多動性障害(ADHD)は,不注意・多動衝動性を主症状とする障 害である.かつて子供に生ずる問題行動と思われていたが,近年は先天的 な脳の機能的・器質的な原因によって引き起こされる発達障害の一つであ り,成人にも見られる障害であると概念が新たになった.本研究では成人 の ADHD患者に焦点をあて,主症状以外に随伴する症状について調査し た.

本研究では,2014 年 4 月より 2015 年 3月までの 1年間に昭和大学附 属烏山病院を初診し,DSM-IV-TRの診断基準によって診断された成人期 ADHD患者54名(男性30名,女性24名,平均年齢29.4±7.9歳)を対象 とした.うつ病など他の精神障害の診断を受けているものは被験者 54名 中4名であった.被験者らに知的な遅れはなく平均 15年の高等教育を受 けていた.全被験者に対し,次の評価尺度を施行した.抑うつ症状につい ては,SDS(Self-rating Depression Scale)を,不安症状についてはSTAI

(State Trait Anxiety Inventory),ADHD 症状の程度については,

CAARS-S(The Conners' Adult ADHD Rating Scales),自閉症スペクトラ ム障害の症状の程度についてはAQ(Autism-Spectrum Quotient),知的機 能についてはJART(Japanese Adult Reading Test-25)で評価を行った.

その結果,被験者らの抑うつ症状は日本人の神経症圏における抑うつの度 合いと同程度であった.不安症状は,STAI の段階Ⅳに相当する高い不安 であった.自閉症的傾向は健常人より有意に高かった.項目間の相関を

Spearman の相関係数を用いて解析を行うと,ADHD 症状と抑うつ症状

の間には,弱いが有意な正の相関がみられた.ADHD 症状と不安症状の 間には,中程度の有意な正の相関がみられた.本研究の被験者の多くは気 分障害や不安障害の診断をうけていないが,それでも,被験者が有する不 安症状や抑うつ症状の程度は,健康人のそれと比して高いものであった.

さらに ADHD症状が強い場合,不安症状や抑うつ症状が強くなる可能性 があることが示唆された.

ADHD 患者が中核症状由来の困難に加え,抑うつ感や不安感に苛まれ

(2)

ることは,総合的な障害の程度を上げてしまう可能性がある.今回の知見 は患者の障害の度合いを適切に評価し,診断する為に有用と思われる.ま た,障害レベルの自閉症的困難の存在の可能性が今回の研究により示唆さ

れ, ADHD患者の障害理解ならびに適切な支援・治療方法を検討する上

でも意味があると考える.(1099字)

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