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機械的刺激に対する骨および骨系細胞の応答に関す る実験的研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

機械的刺激に対する骨および骨系細胞の応答に関す る実験的研究

蔵田, 耕作

Graduate School of Engineering, Kyushu University

https://doi.org/10.11501/3180274

出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

-《oaoRno一O『内Oコ沖『O一勺一ω斥

回一co O苔コ 050コ ポ一一og

osv、ωnω一。

3揖

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M

。ω 2@a 玄白白@3S

(3)

機械的刺激に対する

骨および骨系細胞の応答に関する 実験的研究

平成12年12月

蔵田 耕作

(4)

目次

第1章 緒論

l.1 はじめに.

1.2 研究背景.

1.2.1 生体骨組織の構造.

1.2.2 生体骨組織の構成成分.

1.2.3 骨組織のリモデリング機構.

1.2.4 機械的刺激に対する骨組織の適応に関する従来の研究.

lユ5 機械的刺激に対する骨系細胞の応答に関する従来の研究.

1.3 研究の目的と本論文の構成

唱t 1i qL q/]

Fhu ハU Fhd qL ハU 唱i 唱i 門/- qJ

第2章 骨粗緊症モデルラット長管骨の適応モデリング

2.1 緒言.

2.2 対象および方法.

2.2.1 対象.

2.2.2 方法.

2.3 結果.

2.4 考察.

2.5 結言.

ミJqdRURUFHJnh

u

3 ny'1

3 3 3 3 3 3

4

第3章 ラット尾椎形態リモデリングの非侵襲計測と二次元応力解析 42

3.1 緒言. • • • . • . . . • . • • • • • • • . • . . . • . • 42 3.2 対象および方法. • • • . • • • • • • . • . • . • • . • . . • . . • 43 3.2.1 対象. . • . • • • • • . . . . • • • • . • . . • • • • . • . 43

3.2.2 マイクロCTによる骨形態の経時計測と機械的刺激の負荷. . . • • . 44

3.2.3 剛体バネモデルおよび二次元有限要素モデルによる応力解析. . . . 46

3.3 結果. . . . • • . . . . . . . 48 3.4 考察. • • • . • • • . . . . . . . . • . . • . . • . . . • . . • 52 3.5 結言. . . . • . . . . . . 56

.‘,A

(5)

第4章 ラット尾椎形態リモデリングの三次元応力解析

4.1 緒言.

4.2 対象および方法.

4.2.1 対象.

4.2.2 機械的刺激の負荷.

4.2.3 形態計測と応力解析.

4.3 結果.

4.4 考察.

4.5 結言.

守J 寸l ny ny nuJ Ay -- aq nhU 5 F3 F3

「3 FD

「D にU 74 74

6.4.2 結果.

6.4.3 考察.

6.5 結言.

103 111 114

第7章 結論 115

参考文献 118

関連論文および発表 134

第5章 機械的刺激に対する単離破骨細胞の応答

5.1 緒言

5.2 対象および、方法. .

5.2.1 破骨細胞の単離

5.2.2 培養基質と機械的刺激の負荷装置.

5.2.3 破骨細胞の播種と伸張負荷. .

5.2.4 マーカータンパク質のmRNA発現の定量.

5.2.5 骨吸収寵の形態計測.

5.3 結果.

5.4 考察.

5.5 結言.

7 7 8 8 9 0 1 2 3 5 9 7 7 7 7 7 8

8

8 8 8 8

謝辞 140

第6章 超微小押込み試験による骨組織の局所的物性評価

6.1 緒言.

6.2 超微小押込み試験の原理

6.3 骨組織に対する超微小押込み試験の適用.

6.3.1 対象および方法.

6.3.1.1 家兎皮質骨に対する適用. .

6.3.1.2 機械的刺激を与えたラット尾椎に対する適用.

6.3.2 結果.

6.3.3 考察.

6.4 硬組織薄切切片の硬さおよびヤング率の評価.

6.4.1 対象および方法

6.4.1.1 接線係数と硬さおよびヤング率の相関.

6.4.1.2 家兎皮質骨における硬さおよびヤング率の計測.

6.4.1.3 ラット尾椎における硬さおよびヤング率の計測.

nu nu t- qJ つJ qJ A斗A

「3 7s Qd ny ny -- qJ 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 0 0

-aA4EEA

ー11 - -111島

(6)

第1章 緒論

1 .1

はじめに

骨は,重力に抗した姿勢の保持や運動機能の維持を行うに不可欠な支持組織である.

同時に, 生体内のカルシウムの99%以上を含有する貯蔵庫として働き, 体液のホメオ スタシス(Homeostasis) を維持する機能を持つ. 形態と力学的強度を維持しながら, さ らに細胞外液中のCa2+を一定濃度に保つために,一方では骨を添加して強度の保持が,

他方では骨を破壊して Ca2+ の供給が, 生涯を通して行われている. つまり, 骨は静的 な構造物ではなく, 常に吸収と形成を行っている動的な組織である. このような骨の 再構築をリモデリング(Remodeling) と呼んでいる. 骨リモデリングは, ホルモン (Hormone),サイトカイン(Cytokine) に加えて力学的負荷(機械的刺激)が関与する複雑 な機構によって調節される. 近年, 骨吸収や骨形成に関与する細胞, これらの細胞に 作用するホルモン, サイトカイン等の機能が次々と明らかにされ, 骨代謝の平衡維持 機構の解明が進んでいる. 一方, 機械的刺激の作用に関しては, 力学的負荷の増加が 骨量増加を, 力学的負荷の減少は骨量減少をもたらすことは臨床的によく知られてい るが, その機構については不明な点が非常に多い. 本論文では, inνiνo動物モデル実 験系, X線マイクロCT(X-ray microcomputed tomography)による非侵襲形態計測, CT画 像をベースとした有限要素モデル(Finite element model, FE model)による応力解析, in νitro細胞培養実験系, 局所的な機械的物性計測法等を確立および利用して, 機械的刺 激に対する骨組織の応答について実験的研究を行う. これらの研究を通して, 骨リモ デリングのメカニズムについて工学的・ 力学的視点から検討する.

本章では, 本研究の背景として, 骨組織の構造と構成成分, リモデリング機構につ いての基礎知識をまとめた後,機械的刺激に対する骨組織および骨系細胞の応答に関 する過去の研究を概説する. さらに, 本研究の目的と第2章以降の本論文の構成につ いて述べる.

(7)

1.2

研究背景

1.2.1

生体骨組織の構造

骨は,骨質(Bone matrix),関節軟骨(Articular cartilage),骨膜(Periosteum),骨髄(Maπow) の4組織からなり, さらに 血管, 神経が豊富に分布する.

上腕骨(Humerus)や大腿骨(Femur)のような 長管状の骨 ,すなわち長管骨(Long bone) は, 骨幹 (Diaphysis), 骨幹端(Metaphysis), 骨端(Epiphysis) に分けられる(図1.1). 骨 端は長管骨の両端にある最も横径の大きい部分であり, 硝子軟骨 (Hyaline cartilage) か らなる関節軟骨で覆われている.関節軟骨の下には軟骨 下骨(Subchondralbone)があり,

さらに 海綿骨 (Cancellous bone, Spongy bone)の骨梁(Trabeculめからなる 網目構造へと 移行する. 骨幹は皮質骨(Cortical bone)(または綴密骨 (Compact bone)) に 囲まれた中空 円筒状構造物で , 内部は骨 髄によって満たされた骨髄腔を形成している. 皮質骨 およ び海綿骨は, 骨の主体をなす 骨質である. 両者は明瞭な 境界を持たずに移行しており,

それらの骨量割合は部位によって異なる. 例えば , 骨幹部の骨髄腔では海綿骨 がほと んど存在しな い. 骨の長軸方向への成長は, 骨端 成長軟骨板(Epiphyseal growth plate) で行われる. 成長軟骨板では, 骨

端側から骨幹部へ向かつて長軸方 向に配列した軟骨細胞が柱状構造 をなしており, 血管侵入等を伴っ て軟骨基質が次第に石灰化 されて

いく. これらの基質は, さらに 骨 リモデリングによって成熟した骨 梁へと改変される. 成人して骨 成 長が止まると, 成長軟骨板は閉じ てしま い , 板状に横走する 骨梁に なる. この骨化して残った成長軟

骨 板の痕は骨端線(Epiphyseal line)

と呼ばれる. 骨幹端は骨端と骨幹

との境界をなす部分であり, 成長 軟骨 板より骨 幹側の領域を指す が, 骨幹部 との境界は明瞭ではな

主と して骨 の表層を取り囲む 皮 質骨は, 多数の層板構造からなる 非常に硬い組織である(図1.2)・ 大

Articular cartilage

Epiphysis 7

Metaphysis

Diaphysis

Metaphysis Diaphysis

i

Epiphyseal line Cancellous bone

Cortical bone Periosteum

Endosteum Marrow

Fig.l.l Structure of a long bone (femur).

- 2 -

型日甫乳類の骨 幹部 皮質骨は3つの層, つまり外 層, 中間層 , 内層からなっている. 骨 膜に面した外層と骨髄に面した内 層は皮質骨全体を同心円状に取り囲むような層板骨 (Circumferential lamellar bone)であり, それぞれ骨膜性骨 (Periosteal bone), 内 骨膜性骨 (Endosteal bone)と言われている.中間層では血管の通る2つの管系が発達している. 1 つは骨 長軸と平行に走行するノ\ノtース管(Haversian canal), もう 1 つはハパース管と垂 直方向に走行し ハパース管同士を連絡させているフォルクマン 管(Volkmann's canal)で、

ある. 中間層では, このハパース管を 中心にして骨層板(Lamella) と 呼ばれる間質と 骨 細胞(Osteocyte)とによる層板構造が形成されており(図1.3), これを骨単位( オステオ ン, Osteon)またはハパース系(Haversian system)と呼ぶ. オステオンの聞には, リモデ リングの結果取り残 されたオステオンの断片である介在層板(lnterstitial lamella)が存在 する. 各層板には多数の骨小腔(Osteocytic lacuna)とそれに連続する細い骨小管(Bone canaliculus) が認められる. 骨小腔の中には骨細胞が存在 している. これらは骨小管の 中に細胞質突起を伸ばして網状構造を形成し, ギャッフ。結合(Gap junction)を介した細 胞間情報伝達を行っている.

一方, 海綿骨は, 骨 内側面に枝分かれした骨梁(ある いは骨小束事, 骨小柱)の三次元

Endosteal Periosteal layer

Lamel1a

Haversian canal Volkmann's canal

Fig.l.2 Structural organization of cortical bone.

- 3 -

(8)

網目構造を形成しており, 骨髄腔内で互いに連結している. この骨梁間の髄腔には血 管が分布し, その周囲で造血が行われている. 海綿骨の網目状の配列は力学的に対応 し得る構造をしており, 基本的には 外力に抗することができるような配向をとって いる と考えられている. 海綿骨はハパース系を持たないので, 骨基質内の骨細胞は骨 小管を通して物質交換を行う. 海綿骨骨梁を組織切片として観察すると, 表面から三 日月状に層となった微小領域が認められる(図1.4)・ これは骨吸収が行われた部位に新 しく層板骨が形成されたもので 骨リモデリングの結果として観察される構造である.

皮質骨のオステオンに相当し, パケット(Packet)と呼ばれる.

骨質は骨膜(Periosteum)と呼ばれる結合組織で覆われている.外層はコラーゲン線維 (Collagen fiber)と線維芽細胞(Fibroblast)からなり, 内層には多分化能を有する細胞が 存在する. この細胞は, 骨成長や骨修復時に分化して骨芽細胞(Osteoblast)となり, 骨 の付加的形成を担う. 骨膜 には血管, 神経が豊富に分布しており, これらはフオルク マン管を介して骨質中へ入る.この骨膜 は関節面,靭帯や膿の付着部には存在しない.

方, 髄腔側は, 骨芽細胞 等の連結体で覆われている. 生理的状態では皮質骨内側に 膜 性線維は存在しないが 骨折時等には骨形成能を有する線維性の細胞が分化・増殖 し, 膜性となる. これを骨内膜 (Endosteum)と呼ぶ.

1.2.2

生体骨組織の構成成分

骨は, 骨芽細胞(Osteoblast), 骨細胞(Osteocyte) , 破骨細胞(Osteoclast)等の細胞成分 と細胞聞を埋める細胞外基質(Extracellular matrix)から構成されている(図1.5). さらに 細胞外基質は , 有機性基質であるコラーゲン線維(あるいは謬原線維 ), その他の多糖 類(Polysaccharide)および非コラーゲン性タンパク(Non-collagenous protein), 無機成分 のハイドロキシアパタイト(Hydroxyapatite)からできている(図卜6).

骨芽細胞は骨基質形成や石灰化に直接関与する細胞で, 多分化能を持つ未分化問葉 系幹細胞(Mesenchymal stem cell)に由来すると考えられている. 未分化問葉系幹細胞は 骨形成タンパク質(Bone morphogenetic protein, BMP), レチノイン酸(Retinoic acid), デ キサメ夕、ノン(Dexamethasone)等の働きによって骨芽細胞系細胞への分化の振り分けを 受け, 前骨芽細胞(Preosteob las t)を経て骨芽細胞となる. 骨芽細胞は分化の段階に応じ

Osteocyte σb nし e , •• 且咽・・EA

園n帽箇.,EAm 園L

Fig.l.3 Optical micrograph of a lamellar bone (Left) and schematic representation of an osteon (Right).

Osteocytic lacuna Extracellular matrix

Bone cana1iculus

Fig.1.5 Schematic representation ofbone cells and matrix.

r Cell components (Osteoblast, Osteocyte, Osteoclast)

Bone

I Collagen f加 í Prot叫lycan

L Extracellular matrix

Ground substance

Polysaccharide

L Hydroxyapatite L Other non-collagenous proteins Fig.l.4 Optical micrograph of a廿abecular bone (Left) and schematic representation

of a packet (Right). Fig.l.6 Component substances ofbone tissue.

- 4 - - 5 -

(9)

て, 1型コラーゲン(Type 1 collagen), オステオポンチン(Osteopontin), 骨シアロタンパ ク質(Bone sialoprotein, BSP), オステオネクチン(Osteonectin), デコリン(Decorin), バ イグリカン(Biglycan) 等の骨基質タンパク質やTGF-ß(Transforming growth factor-ß),

IGF-I , -II(Insuhn-like growth factor-I, -II), FGF(Fibroblast growth factor), BMP 等のサイ トカインを合成・分泌する. これらの合成は, 骨芽細胞の分化段階やホルモン等の液 性因子によって調節されている. さらに骨芽細胞は, 骨基質の石灰化に関しでも重要 な働きを担っている. つまり, 分化によって細胞極性が明瞭になった骨芽細胞は, 基 質タンパク質を産生して未石灰化骨(類骨(Osteoid))を形成しながら, 同時に骨基質側 へ基質小胞(Matrix vesicle)を分泌する. 基質小胞内ではリン酸とカル シウムが濃縮し てハイドロキシアパタイト結晶が形成される. 石灰化球となった結晶が基質小胞の膜 を壊して小胞外へ出ると,近接して局在するコラーゲ、ン細線維(Collagen filament)へ石 灰化が波及し, 連続した石灰化基質が形成されるようになる. これを基質小胞性石灰

化と呼ぶ. 以後, 骨芽細胞による添加的な骨基質形成と石灰化前線での石灰化が続い ていく. 骨形成を盛んに行っている骨芽細胞は方形あるいは球形状であり, 血管側細 胞膜における強いアル カリホスファターゼ(Alkaline phosphatase)活性の局在,発達した ゴルジ体(Golgi body) や粗面小胞体(Rough-surfaced endoplasmic reticulum) の存在で特 徴づけられる. 一方, 骨基質形成を終えた骨芽細胞は次第に肩平化し, 休止期骨芽細 胞(Bone lining cell)となって骨表面を被覆する. あるいは, 骨基質中に埋め込まれて骨 細胞となる.

骨細胞は, 骨芽細胞が自ら分泌した骨基質中に埋め込まれたもので, 骨中に骨小腔 を形成してこの中に存在する(図1.5). 形態学的に形成型骨細胞, 吸収型骨細胞, 変性 型骨細胞の3種類に分けられている.多数の細い細胞質突起を基質中に伸ばし,ギャッ プ結合を介して骨細胞同士あるいは骨表面の骨芽細胞と連結した細胞性ネットワーク を形成する. 細胞質突起の中にはアクチン(Actin) の微細線維が局在しており, 突起の 収縮や物質輸送 細胞内シグナル 伝達に関与していると思われている. 骨細胞は, 力 学的負荷によって骨基質の変形が生じた際の骨小管内の液流や静水圧等を検知可能な 位置に存在しており, 細胞質突起による三次元ネットワークによってこのシグナルを 他の細胞に伝達し得る構造を有している. さらに 三次元ネットワークは, それ自体 の変形をひずみとして検知するのにも好都合な構造である. このようなことから, 骨 細胞は機械的刺激の受容伝達細胞であると見なされている. 一方, 基質に埋め込まれ た骨細胞が再び破骨細胞によって掘り出されること 骨吸収の最中に破骨細胞に取り 込まれて変性・消化される場合があること, 骨細胞と破骨細胞の聞に細胞膜の裏打ち 構造を介した細胞間接着構造 が観察されることなどから, 骨細胞と破骨細胞の問には なんらかの情報伝達があると考えられている. さらに, 骨細胞は, 骨芽細胞とともに 骨細胞性骨溶解(Osteocytíc osteolysis) と呼ばれる骨溶出を行うことが指摘される(Rao

et al. 1981)なと骨基質の支持や機械的刺激の受容伝達細胞としての機能だけでなく,

骨吸収の調節機構にも関与するとして注目されている.

破骨細胞は, 2 ""数十個の,時には100個以上の核を有する多核の巨細胞で, 石灰化 した骨基質の破壊・吸収を担う. 破骨細胞は造血幹細胞(Hematopoietic stem cell) に由 来すると考えられている.この幹細胞が頼粒球・マクロファージ系の芽球(Granulocyte­

macrophage colony-forming unit, GM-CFU)を経て破骨細胞前駆細胞(Osteoclast progenitor) に分化した後,前破骨細胞(PreosteocIast)へと分化して類骨層を持たない石灰化基質表 面に定着し, さらに多核化されて形成されると言われている. この破骨細胞への分化

には, 骨芽細胞/間質細胞(Stromal cell) との直接接触が必須であることが最近明らか になった(Jimi et al. 1996b)・骨芽細胞/間質細胞は,活性型ビタミンD3( 1,25 dihydoroxy­

vitamin D, 1,25(OHhD3), 副甲状腺ホルモン(Parathyroid horrnone, PTH), プロスタグラ ンジンE2(Prostaglandin E2), IL-ll (Interleukin-ll)等の骨吸収因子の刺激によって細胞膜 表面に破骨細胞分化因子(Osteoclast differentiation factor, ODF,あるいは, TNF-related activation-induced cytokine(TRANC E), Receptor activator of NF-KB ligand( RANKL),

Osteoprotegerin lígand(OPGL),以下孔生NKL)を発現する. 一方,破骨細胞前駆細胞は細 胞膜表面に膜レセプタRANK(Receptor activator of NF-KB)を発現しており, これは RANKL受容体である(Anderson et al. 1997; Wong et al. 1997; Yasuda et al. 1998). つま り,破骨細胞前駆細胞のRANKは,骨芽細胞/間質細胞との直接接触によってRANKL からのシグナルを受け,これによって単核の前破骨細胞へと分化する(図1.7). さらに,

1.1竺但!!È.D�1 I PTH 1

! IL-l 1 RANK

γA

o

n ρしw ob

o

rA nY 6EL 03

a c o

戸iM 6EL P3 G EE-v

OPG

+ーー Activated osteoclast

Fig.l.7 Osteoclastogenesis mediated by RANKL-RANK binding.

- 6 - ー7 -

(10)

単核前破骨細胞の融合にも RANKL-RANKによる分化制御機構が関与していると言わ れている. 破骨細胞の分化・活性化の促進あるいは抑制には, このような骨芽細胞/

間質細胞との直接接触の他に, カルシトニン(Calcitonin), マ クロファージコロニー刺 激因子(Macrophage colony stimulating factor, M-CSF), INF-'Y(Inte巾ron-y), TNF-ß(Tumor necrosis factor-ß), IL-6, IL-ll等の体液性ホルモンおよびサイトカインが直接的あるい は間接的に関与している. 分化した破骨細胞は偽足様の細胞突起を出した複雑な外形 をしており(図1.8), 明瞭な細胞極性を示す. 細胞質には強い酸ホスファターゼ(Acid

phosphatase, ACP), 酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(Tartrate-resistant acid phosphatase,

TRAP)活性が認められる.破骨細胞ではアクチン,タリン(Talin),ピンクリン(Vinculin) 等 の 細 胞 骨格と連鎖 したインテグ リ ン

(Integrin)等のアンカータンパク質が, 細胞 膜を通って細胞外へ伸び、ている. 骨吸収を l骨 行うとき, このインテグリンは, 骨基質中 のオステオポンチン,フィブロネクチン等 の RGD(Arginine-Glycine-Aspartic acid) 配列 を介して骨基質と強く接着する. 骨吸収 は, アクチン線維の発達した明帯(Clear zone)で骨表面を取り囲み,その内部に複雑 な細胞質突起よりなる波状縁 ( R u f f l e d

border) を形成して行われる(図1.9). 破骨 細胞に吸収されつつある骨表面は不規則に

⑮ ⑮

Fig.l.8 Optical micrograph of an osteoclast with TRAP staining.

ø

Fig.l.9 Schematic diagram of osteoc1astic bone reso中tion, ion transport, and cell adhesion.

- 8 -

へこんでおり,これはハウシップ禽(Howship lacuna)と呼ばれる. 波状縁の細胞膜には wの輸送に関与する液胞型 H+/K七ATPaseが局在しており, このプロトンポンプによっ て分泌されるwは波状縁下のハウシップ寵内を pH4'"'-' 5程度の酸性に保っている. 骨 の無機成分は, この酸によって溶解される. 一方, 有機基質の分解には, 破骨細胞に よって分泌されるリソソーム酵素(Lysosomal enzyme)が関与している. 中でもシステ インプロテアーゼ(Cysteine protease) のひとつであるカテプシンK(CathepsinK )は, コ ラーゲンを酸性下において小断片に分解することができるとして注目されている. 酸 や酵素によって破壊された骨基質は, エンドサイトーシス(Endocytosis)によって破骨 細胞内に取り込まれ, トランスサイトーシス(Transcytosis)という形で小胞輸送されて 細胞外へ放出される(Hal1een et al. 1999; 2000)・

骨の有機性基質のひとつであるコラーゲンは 骨芽細胞や線維芽細胞によってプロ コラーゲン(Procollagen)として合成される. 末端のテロペプチド(Telopeptide)が細胞外 で切断され,トロポコラーゲン(Tropocollagen)となり,凝集・架橋形成によってコラー ゲン線維となる. トロポコラーゲンは,3本のらせんα-ペプチド鎖から構成されてい る直径1.5nm, 長さ30nmの棒状タンパク質である. 電子顕微鏡レベルでは直径50 '"'-'

1 00nmのコラーゲン細線維(Collagen filament)が観察される. ここでは, トロポコラー ゲンが線維方向にずれて配列するために生じる周期的横縞(周期67nm)が認められる.

細線維は架橋されて集まり,光学顕微鏡で観察される直径2�lOμm程度のコラーゲン 原線維(Collagen fibril) となる. さらにこれらは太いコラーゲン線維 (Collagen fiber) と なるが, 骨組織においては無定形質や無機質で覆われているために線維形態を観察で きない. コラーゲンは骨の有機成分の約90%を占め, その大部分は皮膚や健と同じ遺 伝子によって作られる I型コラーゲンである. しかしながら 軟組織のコラーゲンと 違った翻訳後修飾を受けるため, 硬組織のコラーゲン線維は分子間架橋の種類や方向 性が軟組織のものとは異なっている. このコラーゲンは, 無機塩であるリン酸カルシ ウム, 炭酸カルシウム, リン酸マグネシウムなどの沈着の場として働く. 幼若な骨基 質のコラーゲン線維は比較的に疎で, 不規則に交叉して配向している. このような骨 は叢状骨(Woven bone)あるいは繊維性骨(Fibrous bone)と呼ばれ, ヒトでは主に骨の発 生の途中にだけ現れる. 一方, 成熟した骨のコラーゲン線維は高度に組織化された配 列を示し, 密である. 層板骨のハパース系では, コラーゲン線維は長軸に対して斜め の傾きをなして走行し, しかも隣接する骨層板では線維の方向が交差している(図 1.2). このような構造によって, 骨は, 引張り,圧縮, ねじり等の複雑な荷重に対して 高い機械的強度を示すことができる.

骨有機成分の残りの約10%は,糖タンパク等の非コラーゲン性タンパク質で占めら れている. オステオカルシン, オステオネクチン オステオポンチン, 骨シアロタン パク質等のタンパク質やTGF-ß, BMP等の増殖因子が含まれている. さらに,グリコ

- 9 -

ー ヨ

(11)

サミノグリカン(Glycosaminoglycan)糖鎖の共有結合からなるデコリン, パイグリカン 等のプロテオグリカン(Proteoglycan)が存在する.これらのタンパク質は単に構造タン パク質として骨基質を支持するのみならず 先述のようにサイトカインと呼ばれる生 理活性物質として細胞の分化・機能調節や骨リモデリング等に関係しており, 骨動態、

に対して非常に重要な働きを担っている.

骨形成の過程においてはじめに形成されるのは, 上述のコラーゲン線維および非コ ラーゲンタンパク質等からなる有機基質 つまり類骨である. これにリン酸カルシウ ムが沈着して石灰化骨が形成される. 骨の無機成分であるリン酸とカルシウムは, 石 灰化を通してハイドロキシアパタイト(Cal0(P04)6(OH)2)と呼ばれる複雑かつ微細な結 晶構造をとって骨に貯蔵される.結晶の大きさは20nm X 3"-' 7nmと小さく, これに対 して重量あたりの表面積(比表面積 )は非常に大きい. アパタイト構造は,原子配置に ゆとりがあるために元素置換を生じやすい. このため, Mg2+, Na+, C O/-, H Pol-等 の異種イオンを置換し, 同時に多くの格子欠陥を含んでいる. このような大きな比表 面積および格子内組成の不均一性は, アパタイトの反応性を高めている. 骨組織を構 成するアパタイトは単なる結晶構造物ではなく, 生理的に, あるいは病的過程によっ て強い影響を受けながら組成や物性を変化させている.

M脱I凶ymal討em cell

F ig.l.12 Linkage of cell functions in bone remodeling.

1.2.3

骨組織のリモデリング機構

大型R甫乳動物の皮質骨や海綿骨では 外力に応じて形態を変化させるため, さらに 血中Ca2+イオン濃度維持(Calclum homeostasis)のために, 破骨細胞による骨吸収と骨 芽細胞による骨形成とが繰り返されている.生涯を通して行われているこの骨の作り 替え, 骨の再構成のととを骨リモデリングと呼ぶ. 骨の形態や強度を維持するには骨 の吸収と形成とが動的平衡を保つ必要があり,このような機能的共役はカップリング (Coupling)と呼ばれる. 骨粗影症(Osteoporosis)等の骨量減少は, 両者のアンカップリ ング、(UncoupIing)によって発生する.骨リモデリングでは,骨吸収が先行し,吸収され た部位に続いて骨形成が起こるという代謝様式をとる. このリモデリングを行ってい る骨組織と細胞群との最小単位を BMU(Bone multicellular unit)と呼ぶ. 皮質骨ではオ ステオン(ハパース系)(図l.10), 海綿骨ではパケット(図l.11)がとれに相当する.

Fig.l.10 Schematic representation of haversian remode1ing.

Fig.l.l l Schematic representation of surface remodelíng of trabecula.

方, ある部位では骨吸収のみを生じ, ある部位では骨形成のみを生じて, リモデリン グのようには骨吸収から骨形成へのカップリングが起こらない代謝様式がある.これ はリモデリングと区別して骨モデリング(Modeling) と呼ばれ, 主に成長期に観察され る.

BM Uにおける骨リモデリングは,組織学的にいくつかの相に分けて考えることがで きる(図l.12). 骨吸収や骨形成が行われていない骨表面は, 扇平な休止期骨芽細胞に よって覆われている(休止相). PTH, 1,25(OHhD3, IL- l 1 等の骨吸収促進因子が作用 すると,休止期骨芽細胞は活性化されて方形を呈する(活性化相). これらの骨吸収促 進因子の受容体は破骨細胞ではなく骨芽細胞に存在する. 次いで、 骨芽細胞から破骨 細胞前駆細胞へのシグナル伝達により, 破骨細胞の分化・遊走が行われる. 先述した ように, この破骨細胞の分化や活性化には, 骨芽細胞と破骨細胞前駆細胞あるいは前 破骨細胞との直接接触を介したRANK.L-RANKによる制御機構が関与している. 骨吸 収では, 破骨細胞による無機基質の溶解に先立つて まず骨芽細胞が産生・分泌する 中性コラゲナーゼによって類骨の分解が行われる. この中性コラゲナーゼの産生を促 進させるPTH やプロスタグランジンによって, 同時に骨芽細胞は形態変化させられ,

骨表面には細胞に覆われていない部分が生じる. つまり, 骨吸収を行う場が作り出さ れる. 次いで, 破骨細胞による骨基質の吸収が始まる(吸収相). 骨吸収機能の調節に も先のRANKL-RANKによる制御機構が関与しており, 骨吸収活性を冗進させるとい

ハU4EE--

-11 -

(12)

う知見が得られている. 同様に, IL-lは破骨細胞に存在するレセフタによって受容さ れ, アポトーシス (Apoptosis)の抑制や骨吸収の活性化に作用する. 反対に, 破骨細胞 の分化とともに発現するカルシトニンレセプタによって全身性のホルモンであるカル シトニンが受容されると,骨吸収は強力に抑制される. このように,破骨細胞の分化・

活性化の促進あるいは抑制には, 骨芽細胞/間質細胞との直接接触の他に, ホルモン およびサイトカインが直接的あるいは間接的に関与している. 骨吸収の停止に関して は,破骨細胞内の細胞骨格タンパク質の解離や破骨細胞のアポトーシス等が原因であ るとする仮説があるが 知見は非常に少ない. 骨細胞の細胞質突起との接触によって 破骨細胞の収縮やアポトーシスが起こること,破骨細胞近傍に存在する骨細胞は破骨 細胞の運動能に大きな影響を与えることから 骨吸収によって露呈した骨細胞が骨吸 収停止に関与しているという指摘もある. 骨吸収停止後,単核マクロファージ (Mono­

nuc1ear phagocyte)が出現する時期(逆転相)を経て, 骨吸収部位では前骨芽細胞が増殖 する. 前骨芽細胞の遊走や分化には, 骨吸収によって基質から放出されたり, 骨吸収 部位に露呈させられたりしたTGF-ß, IGF-I, -II, BMP等の因子が関与していると言わ れている. TGF-ß, IGF-I, -IIは, 骨形成が行われたときに骨芽細胞によって分泌され たもので, 骨基質中ではいくつかのタンパク質と結合した不活性型で存在する. 骨吸 収によって結合タンパク質から切り離されると これらは活性化して骨芽細胞に作用 する. TGF-ß は前骨芽細胞や骨芽細胞の増殖, オステオポンチンやオステオカルシン の産生促進に作用し,IGFは骨芽細胞の増殖やコラーゲン合成を促進する.TGF-ßスー パーファミリーであるBMPについては多くの遺伝子がクローニングされているが,こ の中でBMP-2は未分化問葉系細胞から骨芽細胞への分化決定に関与していると言われ ている. このようにして分化した骨芽細胞は類骨形成と石灰化を行う(形成相). 骨形 成が完了すると, 骨表面は再び肩平な休止期骨芽細胞に覆われて休止相に入る.

以上のように, 骨リモデリングは多くの細胞 ホルモン, サイトカインが関与する 非常に複雑な現象である. さらに 通常のリモデリングでは骨吸収量と骨形成量はほ ぼ等しく, 吸収と形成の巧妙なカップリングによって骨量の維持が行われている. こ のカップリングのためには,破骨細胞と骨芽細胞との間の情報伝達が不可欠であると 考えられる. 先にも述べたが, 骨吸収に関しては, PTH, 1,25(OH)2D3' IL・11等の骨吸 収促進因子の受容体が骨芽細胞に存在しており これらの因子の作用によって骨芽細 胞に発現したRANKL が 破骨細胞系細胞のRANKで受容されて情報伝達が行われる ということが明らかになった. 一方, 骨形成に関しては, 骨芽細胞によって産生され 骨基質中に埋め込まれていたTGF-ß や IGF が, 骨吸収によって活性化されて骨芽細胞 に作用するというメカニズムが考えられている . 骨芽細胞は, いったん基質中に蓄積 されるサイトカインの他に, 分泌後に遊離して自らの活性を調節するオートクライン (Autocrine, 自己分泌 )・ パラクライン (Paracrine, 傍分泌)因子を多く産生する. 先の

ー12 -

IGF-Iはオートクライン・パラクライン因子としても作用する. 脂肪酸誘導体であるプ ロスタグランジン E2は骨芽細胞によって産生され,骨芽細胞の増殖・分化のいずれに 対しても促進と抑制の二相性の作用を示す. さらに, パラクライン的作用によって破 骨細胞の形成を直接抑制する一方,間接的に破骨細胞の形成を促進することになる間 質細胞に対して作用することによってRANKLを発現させることが指摘されている.こ のようにオートクライン ・ パラクライン的に作用するフロスタグランジンは, リモデ リングに大きく関与するシグナル伝達系として注目されている.

ホルモンやサイトカイン等の液性因子に加えて 細胞聞の接着や細胞-基質問の接着 が骨系細胞の機能調節に大きく作用している. 骨芽細胞系細胞同士の接着装置にはア ドヘレンス結合 (Adherens junction)とギャップ結合 (Gap junction), タイト結合 (Focal tight junction)が同定されている (図1.13)・ いずれも単に力学的な結合にとどまらず細 胞間情報伝達をも担っていると考えられており 特にギャッフ。結合はCa2+等のイオン や低分子量物質を透過させることが可能である. 骨芽細胞ー基質問の接着には,基質中 コラーゲンの D GEA(Aspartic acid- Glycine-Gluta mic acid-Arginine)配列, フィブロネク チンやオステオポンチン等のRGD(Arginine-G lycine-Aspartic acid)配列を介したインテ グリン (Integrin)による強固な接着とヘパラン硫酸フロテオグリカン (Heparan sulfate proteoglycan, HSPG)を介した電荷による弱い接着がある. 接着部位の細胞内ドメイ/

は細胞骨格へ連結しているため, 接着のシグナルは細胞骨格へ伝達されて, 細胞分化 や機能発現に対して重要な役割を果たすと思われる. 一方, 破骨細胞が多核化される 際の破骨細胞同士の認識については,細胞膜癒合に関する膜タンパク質の関与が指摘 されているが明らかではない. 破骨細胞.基質問では,明帯の細胞膜を通って細胞外へ 伸びているインテグリンが, 基質中のオステオポンチン, フィブロネク チン等の RGD( Argini ne-G lycine-Aspar-

tic acid)配列を介して基質と 接着している(図1.14). さら に, 破骨細胞において形態 学的に認められる指状突起 部では, 1型コラーゲンや フィブロネクチン等のリガ ンドを有する接着因子CD44 が局在することが知られて いる. これが CD44 - モエシ ンーアクチンフィラメント機 構を形作り, 細胞骨格や細 胞極性の形成に対して作用

Preosteo blast

Fig.l.13 Cell-cel1 and cel1-matrix adhesions of osteoblast­

like cells.

ー13-

「 ー ー竺 ーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーー

(13)

しているのではないかと指摘されている. 骨芽細胞系細胞と破骨細胞系細胞の細胞間 相互作用では, RANKL-RANKによる制御機構の他に 細胞膜の接着分子と細胞間に 存在する細胞外基質を介した接着機構が考えられている(図1.15)・ この機構では, 細 胞同土が異なる接着分子を発現していても リガンドとなる細胞外基質が共通してい れば異種細胞聞の接着が可能となる. ヘパラン硫酸プロテオグリカンは, フィブロネ クチン等の接着タンパク質やFGF等のサイトカインを保持することによって破骨細胞 系細胞ー骨芽細胞系細胞聞の相互作用を可能にすると指摘されている.

骨リモデリングでは, ホルモンやサイトカイン 細胞間の相互作用によって細胞分 化・機能の促進あるいは抑制を受け, 骨吸収および骨形成が調節されている. しかし ながら, 長期臥床や微小重力下での生活は骨量を減少させることから, 正常な骨リモ

@

⑮ @

Fig.L14 Cell-ma仕ix adhesions of osteoclast

Osteoclast

轡 信審

⑮ 争

⑮ 健診 @

Fig.l.15 Osteoclast-osteoblast interactions through HSPG.

- 14 -

デリングには, これらに加えて機械的刺激の受容が不可欠なのは明らかである. 先に 述べたように, 骨細胞が基質内に形成する細胞質突起の三次元ネットワークは, 基質 の変形,骨小腔内の液流,静水圧等を感知するのに合理的な構造と見なされている.一 方, 骨芽細胞系細胞や破骨細胞系細胞は, 細胞膜を通って細胞外へ伸び、ているインテ グリンを介して骨基質と強固に接着している. つまり 基質の変形はインテグリンに よって細胞骨格に伝達され, 細胞骨格の再構築を惹起させるシグナルとなり得る. さ らに, 基質の変形や細胞外液(Extracellular fluid)の液流によって, 細胞のイオンチャネ ル(Ion channel)が開閉して細胞機能を変化させるとも言われている. 機械的刺激の受 容は, 細胞の増殖・分化, タンパク質や液性因子の産生・分泌に変化をもたらし, 結 果として骨リモデリングに影響を与えていることが考えられる. しかしながら, 脅が いかなる種類の機械的刺激をどのように受容して骨リモデリングに反映させるのか,

そのメカニズムについては明らかになっていない.

機械的刺激による骨形態や骨量の変化, 機械的刺激が組織や細胞に受容伝達される 分子機構等を解明するために,動物を用いたzn νiνo実験や培養細胞を用いたin vitro実 験が行われてきた. 以降に, これまでに行われた研究について概説する.

1.2.4

機械的刺激に対する骨組織の適応に関する従来の研究

骨の構造を力学的な視点から考察したのは, スイスの Culmannであると言われてい る. 19世紀の半ば, Culmannは, 解剖学者Von Meyerが描いたヒト大腿骨海綿骨のス ケッチを見て, 骨頭部分の骨梁構造が 主応力の作用方向によって形状が決まる Culmann 's craneと呼ばれるクレーンの構造と類似していることに気付いた. この CulmannとVon Meyerの研究によって, 海綿骨骨梁の構造は, 大腿骨が荷重を受けた ときに生じる主応力の作用方向(Trajectory) と一致しているということが指摘された (Cu]mann 1866; Meyer 1867). 一方, Wolffは, 膨大な臨床例をもとにして, 外傷, 疾 病, 生活パターンの変化等によって骨の機械的ストレス環境が変化した場合, 新しい 環境に合わせて骨梁構造も再構築されるという骨の変形法則を提案した (Wolff 1870;

1986). これは, 骨の機能が変化すれば形態もそれに応じて変化するという経験則であ り, ウルフの法則(Wol百's law)と呼ばれている. さらに, Rouxは, 生体が外力に対し て機能的に適応する(Functional adaptation)という概念を一般化するとともに, 生体が 最大の効果を最小の材料やエネルギで達成するという最大-最小の法則 (Maximum

minimum law)を提案した(Roux1885)・ この仮説によれば,骨では最大の強度を最少の 材料で実現しているということになる. しかしながら Wolffや Rouxの仮説を証明す るための実験方法や装置がその時代になかったために, さらにこれらの仮説が一見し て非常に妥当であるように捉えられたため, およそ100年にもわたって再検証が行わ

- 15 -

ーーーョ

(14)

れることがなかった. 1950年代になってようやく , 光弾性モデルを利用した実験を 行ったPauwelsによって 骨梁の配向と主応力の作用方向との関係に再検討が加えられ た(Pauwe]s 1954; 1980).

機械的ストレス環境と骨構造との関係についての研究は,以上のように骨の構造を 力学的に解釈することから始まった. Pauwels以降,現在までこのような研究は続けら れており, 最近では, マイク口C T等の非侵襲計測機器で骨梁の三次元構造を計測し,

これをもとにした三次元応力解析からウルフの法則の検証が行われるまでになった (Van Ríetbergen et a1. 1999)・ その一方で,動物モデルを用いることによって 生体骨の機 械的ストレス環境に対して積極的な変化を与え,このときの骨の応答 を調査するとい う研究アプローチもとられている . このようなm νivo実験系による研究では, 歯列矯

正力を与えたときの歯槽骨の応答(Waldo 1953; Martinez and Johnson 1987)(図1.16),

運動や過負荷(Overload)の影響(Shaw et a1. 1987; Jee et al. 1991; Bourrin et a1. 1992;

Yeh et al. 1993),神経切断や固定によって 作り出された廃用(Disuse)の影響(Li and

Jee 1991; Bagi et a1. 1993; Chow et a1. 1996) を調べることが多かった. これは, 生体 骨に対して外部から定量的な機械的刺激 を与えることが困難であったという理由 による . 例えば, Jee et a1.(1991)は, ラッ ト右後 肢 をゴムバンドで 不 動 化 (Immobilization)することによって左後肢 に対して過負荷を与えるような動物モデ ルを作製し ,負荷の増大による骨外径の 拡大促進, 骨髄腔径の拡大抑制を報告し ている . さらにBagi et a1.(1993)は, 同様 の動物モデルにおいて不動化された後肢 を対象とした形態計測を行い , 不動に よって骨膜面での骨形成速度の減少およ び骨内膜面での骨減少が生じることを示 した. この結果, 髄腔の拡大と 皮質骨の 非薄化が認められた.一方,Mo町re)

佃d Wronski(198 1)はラツト尾部をワイヤ

Fig.l.16 Diagram of tooth movement.

で吊り下げて後肢の免荷を行う尾部懸垂 Fig.l.17 Diagram of rat tail suspension model.

- 16 -

モデル(図1.17)を開発した. この実験系は, 宇宙での微小重力環境を地上で模擬する 簡便なzn νivoモデ、ルとして利用されている(Simske et a1. 1992; Bourrin et a1. 1995; Zhang et a1. 1995).

その後, 生体骨に対して外部から定量的な機械的刺激を与えることが可能な動物モ デルがいくつか確立されるにおよび, 機械的刺激の大きさ・周期・時間等のパラメー タの相違と骨形態変化との関係を検討した研究が行われるようになった. 長管骨骨幹 に挿入した2本のピンを介して負荷を行うモデル(Rubin and Lanyon 1984), 皮膚の上 から腔骨(Tibia)に対して曲げを与えるモデル(Tumer et a1. 1991), 尺骨(Ulna)の両端を 皮膚の上からパッドで挟み軸荷重を与えるモデ、ル(Torrance et a1. 1994; Hil1am and Skerry

1995), ラット尾椎に挿入した 2本のピンを介して負荷を行うモデル(Chambers et a1.

1 9 9 3 ) , シリ ンダを有するデバイスを骨にインプ ラントして負荷を与えるモデル (Goldstein et a1. 1991)等の動物モデルが開発された.

Rubin and Lanyon(1984)は, 鶏(Rooster, Avian)あるいは七面鳥(Turkey)の尺骨を外科 的に両骨端で切断し , 切断端にステンレススチールキャップをかぶせた後,キャップ と骨を貫いてピンを挿入するという動物モデルを開発した(図1.18). 機械的刺激の負 荷は,周囲から孤立させられたこの尺骨に

対して 行われた.彼らのグループはこのモ デルを利用して , 機械的刺激の負荷形態・

大きさ・回数・周期 ・ ひずみ分布等のパラ メータと骨形成・吸収との関係について多

くの 調査を行った(Rubin and Lanyon 1987)・ Fig.l.18 Diagram of mechanical loading to 例えば, 525N( 皮質骨表面ピークひずみ ulna shaft.

2000μE)の圧縮荷重を, 100cycles/day, 1Hz

の動荷重 , あるいは静荷重として 8週間負荷したとき , 動荷重と 静荷重の影響の差異 について検討した. 無負荷では皮質骨内膜側での骨吸収および皮質骨内部の空孔の増 加を, 静荷重では廃用時に見られるような皮質骨内径の拡大および皮質骨内部の空孔 の増加というリモデリングを, 動荷重では骨膜表面での骨形成をそれぞれ 報告した (Lanyon and Rubin 1984). この結果, 静荷重は骨形成を誘導する刺激(Osteoregulatory stimulus)として認識はされないということを指摘した. さらに , 刺激回数の影響に関 する実験(Rubin and Lanyon 1984)では, 生理的な活動時に見られる ひずみ量 2050μεを 生じさせる負荷では,わずか 4cyclesの刺激で骨量が維持され , 36cyclesの刺激では新 生骨形成が増 加した. この反応は 360, 1800cyclesと回数を増しでも同程度であること を報告した. 同時に ,ひずみの大きさの影響について 調べるために 行われた100cycles/

dayの一定回数負荷実験(Rubin and Lanyon 1985)では, 1000μεを生じる荷重によって 骨 断面積が維持され ,1000"""'4000μの範囲ではひず、み量に正比例した断面積増加を生

ー17 -

(15)

じることを示した. とれらの研究の中で, 皮質骨骨膜面に観察された新生骨はwoven boneであった. 一般に,woven boneは骨折治癒過程や炎症部位に認められる骨である.

そこで, この新生骨が病的に形成されたものなのかあるいはモデリング, リモデリン グ過程の一段階として形成されたものなのかを検討するために,2000μ,100cycles/day の機械的刺激を16週間にわたって負荷する実験が行われた(Rubin et a1. 1995). この結 果,woven boneは機械的ストレス環境の急変に対する適応現象として生じたものであ ること, 一旦適応が完了すれば成熟した lamellar boneにリモデリングされていくこと を示した.

Rubinらの動物モデルは観血的な外科処置を施しており,出血の影響や観察対象骨そ のものにピンを挿入する影響など機械的刺激以外の因子を含むことが避けられない.

さらに, 骨幹を切断して周囲から骨を孤立させるという方法を採用しているために,

このモデルによって正常(Intact)な生体内で、の骨動態を再現することができているのか どうか疑問が残る.

この一方で, 外科処置を全く施さず骨に対して非観血的に機械的刺激を与える動物 モデルが提案された. Turner et a1.(19 9 1)は, ラット腔骨に対して皮膚の上からパッド を押し当て四点曲げを与える動物モデルを開発した(図1.19)・ 彼らは刺激回数を変化 させて37N, 2Hzの曲げ負荷を与えたとき, 刺

激に対する適応現象として,高ひずみ部位にお いてwoven boneの形成が認められることを指 摘した.このとき腔骨表面に生じる最大ひずみ は,骨断面形状をもとに純粋曲げを仮定した計 算を行って, 1000-- 3000μと見積もられた. さ らに, 27 "-' 64Nの範囲で荷重を変化させて

emur

36cycles/day, 2Hzの曲げを負荷する実験から, Fig.l.19 Diagram of four-point bending 骨膜側ではwoven boneが支配的に形成されて for rat tibia.

おり,その形成量はひずみの大きさに無関係で

あること, 骨内膜側では 1050με以上のひず、みにさらされた部位で lamellar boneが形成 され,その形成速度はひずみ量に正比例することを報告した(Turner et a1. 1994; Forwood

and Turner 1995). とれらの研究によれば, woven boneの形成は一旦関値を超えると最 大限にまで誘導される応答(All-or-nothing response) であり, lamellar boneの形成はひず み量 1050μ を閥値として発動される.

同様に外科処置を全く施さないモデルとして, 手根骨(Ca中us) と肘頭(Olecranon)聞 をパッドで挟み, 軟部組織の上からラット尺骨に軸圧縮荷重を与えるモデルが開発さ れた(To汀如ce et a1. 1994; Hillam and Skerry 1995)(図1.20). Hillam and Skeπy( 1995) は,

若齢ラットの尺骨に 4000 -- 4500με のひずみを生じさせる機械的刺激を負荷し, 若齢

ー18-

ラットでは尺骨骨内膜面の骨吸収によって 成熟ラットの骨形状へのモデ、リングが行わ れなければならないが, この負荷によって 正常な骨吸収が妨げられ骨形成が観察され たと報告した. さらに, Mosley et a1.(1997) は,骨表面に与えるひずみ量を 500"-'4000μ の範囲で変化させ, 1200cycles/day, 2Hzの

Carpus

Humerus Radius

Ulna Soft pad

Fig.l. 20 Diagram ofaxial loading to ulna.

機械的刺激を成長期のラットに対して与える実験を行った. その結果, 2000με程度の 生理的ひずみ範囲の刺激を与えたときは骨形成の減少によって 生理的ひずみよりも 大きな4000μの刺激で、は新生骨形成を増加させることによって,成長期の尺骨の形態 が形成されることを指摘した.

皮膚の上から非観血的に機械的刺激を与えることが可能なこれらのモデルはいずれ も外科処置を一切必要としない. さらに荷重負荷時以外の日常活動を妨げることがな いために, 骨の応答は機械的刺激のみによって誘導されたものと考えることが可能で ある. しかしながら, これらの動物モデルでは ひずみ量と負荷荷重との関係は, 骨 形態観察を行う個体とは別の個体においてひずみゲージを用いて予め計測しておくと いう方法, あるいは機械的刺激負荷後の個体の骨断面形状をもとにして梁の曲げ問題 として計算するという方法によって求められている. このために, 個体によって違い が大きい軟部組織を介しての間接的な負荷では, 予め計測あるいは計算されたひずみ 量と実際に骨表面に発生するひずみ量との聞に大きな差が生じる.これらの理由から,

骨のひずみ量と骨の応答とを定量的に結びつけるには困難が伴う.

上記の3タイプの動物モデルを用いた研究では その対象が皮質骨形態の力学応答 に限られる. 一方, 三次元的な網目構造を有する海綿骨は非常に活発な骨代謝回転を 示し, はじめて Culmannが指摘したように 外部からの力に対して合理的な形態をな している. 荷重支持や衝撃的荷重の分散等の重要な力学的機能を担っていると考えら れており, 海綿骨の骨梁構造と機械的ストレス環境との関係については非常に興味が 持たれている. 海綿骨に対して機械的刺激を与えることが可能な実験系のひとつに,

Chambers et a1.(1993)によって開発されたラッ トの尾椎(Caudal vertebra) を用いた動物モデ ルがある(図1.21). 観察対象とする第8尾椎 の両隣の椎体に 2本のステンレス鋼製ピンを 挿入して機械的刺激を負荷するモデルであ る. 彼らは, このモデルにおいて大きさ・回

数等の条件を変化させた圧縮荷重を負荷し, Fig.l. 21 Diagram of mechanical loading to 骨動態を定量した(Chow et a1. 1993).例えば, rat caudal vertebra.

- 19 -

(16)

150N( 皮質骨表面ピークひずみ750μE),

3 '""-' 300cycles の負荷を1度行った場合,

刺激回数と骨形成量との聞に高い相闘 が認められた. 荷重の大きさを変化さ せた実験群においては, 15N, 50Nの負 荷と比較して150N負荷で の骨形成量の

C二コ

Fig.l.22 Diagram of asymmetrical compressive 激増を報告した. 形態計測から明らか loading to rat caudal vertebra. O ' _ ._- ---0

になった骨形成量の増加は, 石灰化速 度の増加よりもむしろ骨形成が行われ ている骨表面積の増加によるものであ るとの考察から 機械的刺激が骨芽細 胞のリクルートメント(Recruitment) を

促進するように作用すると指摘した.

さらにMente et al.(1999)は, このラット 尾椎を用いた動物モデルを応用し, 尾 椎体を轡曲させるような静荷重をピン

に与えることによって尾椎の機械的ス Fig.l.23 Diagram of compressive loading to the トレス環境を変化させる研究を行った( trabecular bone of distal femoral metaphysis.

図1.22). この静荷重負荷は尾椎のくび

れ角度を増加させたが その後 響曲を逆向きに修正するような静荷重を与えること によって尾椎形態は矯正された. この結果から 彼らは機械的刺激の負荷がヒト椎体 の変形等を治療する方法としても将来有望であると示唆した.

同様に海綿骨の力学応答を対象として, Goldstein et al.(1991)は, イヌ大腿骨遠位骨 幹端を切断して海綿骨を露出させ, ここに水圧で駆動可能なシリンダをインプラント するという動物モデルを開発した(図1.23)・ 海綿骨と接触する部分は形状を違えた多 孔質のプレートで このプレートによって定量的な機械的刺激が与えられた. 彼らは この動物モデルを利用して, プレートに向かつて配向する骨梁が増加すること, 骨梁 の連結性が減少すること(Goldstein et al. 1991),骨梁の形態変化がプレートの形状に依 存すること(Guldberg et al. 1997) 等の知見を報告している.

以上の多くの研究では, 骨リモデリングに関与する機械的刺激パラメータの検討,

つまり, 機械的刺激の負荷形態 応力やひずみの大き さ・変化速度・分布・履歴, 刺 激の回数, ひずみエネルギ密度等の因子の中で, いずれが骨形成・骨吸収を促進させ る信号として作用するのかについて検討が行われてきた. その結果, 機械的刺激とし て重要なのは骨組織のひずみ( 変形) であること(Lanyon 1984; Frost 1987; Sun et al.

1995), 1000 '" 2000μ程度のひず、み量が骨形成と骨吸収の応答を分ける関値であるこ

- 20-

と(Rubin and Lanyon 1985; Turner et al. 1994) が指 摘されている. しかしながら, 組織レベルのひず みが細胞レベルでどのように受容されるのかにつ いては未だ明白でなく,多くのメカニズムが提案 されている(第1.2.5項参照). さらに, 骨形成と 骨吸収の関値となるひずみ量は,皮質骨表面に生 じるひずみで 代表した値であり,皮質骨内や骨梁 表面での力学状態、までは考慮されていない.骨膜 表面での骨代謝様式と皮質骨内(ハパース系) あ るいは骨梁表面で の骨代謝様式の差違についても 検討されなければならない.

成熟した骨組織の力学応答研究に加えて,最近

Tibia

Fig. 1.24 Diagram of compressive loading to the tissue entering through the ingrowth holes.

では,未分化問葉組織(Undifferentiated mesenchymal tissue)に対して機械的刺激を与え,

刺激と組織分化の関係をin νivo実験系で検討する研究も行われている. Tägil and Aspenberg( 1999)は,骨を誘導するための開口部を有した骨誘導チェンバーをラット腔 骨近位骨幹端にインフラントし, 中に誘導された組織にピストンで圧縮負荷を与える 実験系を開発した(図1.24). 4N の荷重を3秒負荷, 3秒除荷, 40cycles/day の条件で 7 週間与えたとき, ピストン下に軟骨組織層 その下方に軟骨下骨層が認められた. 骨 格形成期の未分化問葉組織や骨折治癒過程で現れる仮骨(Callus)は機械的ストレス環境 に応じて異なる組織へと分化すると言われている(Carter et al. 1988; 1998; Wong and Carter 1990; Claes and Heigele 1999). 例えば, Carter et al.( 1988) は, 応力が比較的小さいとき には骨組織へ, 高いせん断応力下では線維様組織へ, 高い静水圧下では軟骨組織へ 分化するというモデルを示している. このような検討は, 生体由来の細胞から組織や 臓器を再生する生体組織工学(Tissue engineering)を視野に入れたものであり.今後の研 究が期待される.

皮質骨や海綿骨に機械的刺激を負荷した多くの研究では, 骨の応答に対して形態学 的な評価が行われている. つまり 適当な染色を施した薄切切片を作製して光学顕微 鏡で組織観察する方法, テトラサイクリン(Tetracycline), カルセイン(Calcein)等の蛍 光マーカーによって骨に二重標識を施し骨動態を計測する方法, 軟 X線撮影像によっ て骨形態を計測する方法等が用いられてきた. 骨の力学応答研究に限らないが, 近年 では,X線マイクロCT 等の非侵襲計測機器を利用した骨形態計測も有用な方法として 利用されている(Feldkamp et al. 1989; Kuhn et al. 1990; Goldstein et al. 1991; Odgaad 1997).

一方, 形態学的評価にとどまらず, in vivo動物モデルにおいて機械的刺激が受容伝達 される分子機構を解明することを目指した研究が盛んである(Le組et al. 1995; Sun et al.

1995; Zhang et al. 1995; J agger et al. 1996). 例えば, ラット尾椎に軸荷重を与える実験

ー21 -

(17)

系では, 海綿骨の骨形成部位においてI型コラーゲンやオステオカルシンの mRNA発 現を認めるとともに, 骨細胞ではIGF-I のm RNA発現が冗進していた(Lean et a1. 1995)・

この結果は,骨細胞が機械的刺激の受容細胞として働き IGF を介した情報伝達を行っ ていることを示唆するものである. タンパク質の産生や mRNA 発現の変化をin situ hybridization やin s itu RT-PCR(Reverse transcription - Polymerase chain reaction)で評価す るこのような研究は, 骨組織内部における細胞の応答を明らかにするものである. こ れまで行われてきた骨形態のマクロな変化および骨組織の力学状態の評価に加えて,

細胞レベルでの応答を関連づけることによって 骨組織の力学応答メカニズムに関し て新たな知見が得られると期待される.

1.2.5

機械的刺激に対する骨系細胞の応答に関する従来の研究

実験動物の骨に対して機械的刺激を負荷するin vivo実験系を用いた研究が行われる 一方, 培養細胞を用いた inνitro実験系において,機械的刺激が骨系細胞に受容伝達さ れるメカニズム,骨系細胞の機能に与える影響を解明しようという研究が盛んである.

現在のところ, 骨基質中あるいは骨表面に存在する細胞が生体内でいかなる機械的ス トレス環境にさらされるのか明白でないために, 多種多様な実験系において様々な条 件の機械的刺激が負荷されている. その結果は細胞レベル, 分子レベルで詳細に解析 され, 機械的刺激によって産生・分泌が促進あるいは抑制される分子が多数発見され た. 機械的刺激の受容伝達メカニズムについても それぞれ多く提案されている.

骨系細胞を用いた実験に限ると,連続的静水圧(Ozawa et a1. 1990; Imamura et a1. 1990伐;

Ru由I巾bin et a叫1. 1997)あるいは問欠的静水圧(Ro閃elof:白sen et al 1996; Klein

の付与,細胞あるいは細胞膜の伸張(σYeh and Ro“da如n 1984引;Haおse句ga仰wa et al. 1985; Binderman et a1. 1988; Brighton et a1. 1992刈Tang et a1. 1993; Duncan and Hruska 1994; Harter et a1. 1995;

Mikuni- Takagaki et a1. 1996; Rawlinson et a1. 1996; Zaman et a1. 1997; Yoshikawa et a1. 1997;

Fermor et a1. 1998; Meazzini et al . 1998; Hara et al . 1999; Miyauchi et a1. 2000),流体による せん断応力付与(Williams et a1. 1994; Hung et a1. 1996; Sakai et a1. 1998),高重力(Lange et al . 1994, N emoto et a1. 1999)あるいは微小重力下(Burger and Klein-Nulend 1998; Carmeliet and Bouillon 1999; Hughes-Fulford and Gilbertson 1999; Ingber 1999; Marie et a1. 2000)での 培養, 磁場(Fitzsirnmons et a1. 1994; 1995; Mcleod and Collazo 2000), 電場(Binderman et al. 1985; Ozawa et a1. 1989; Zhuang et a1. 1997)あるいは超音波(Naruse et a1. 2000) の付与

等が報告されている. 多くの実験では, 樹立株が確立されている骨芽細胞様細胞(Os­

teoblast- Iike cell)の力学応答を対象としており, 細胞増殖, 骨基質タンパク質や液性因 子の産生等の骨形成に関わる機能を評価している. さらに近年, 機械的刺激を受容伝 達する細胞(Mechanosensor, Mechanoreceptor)として注目される骨細胞に関する研究が

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盛んに行われるようになった. 一方, 骨吸収を担う 破骨細胞に関しては未だ樹立株が確立されていない ために, 骨髄細胞(Marrow cell)の初代培養系や間質 細胞との共存培養系を用いた報告が散見されるのみ である (lmamura et a1. 1990; Rubin et aI . 1997)・

静水圧負荷を行う実験系では, チェンパー内にお いて培養細胞に対する連続的あるいは間欠的な加圧,

減圧が行われる(図1 .25). 装置が単純であり, 空間 的に均質な刺激を与えることが容易であるために,

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... .

細胞の力学応答研究にしばしば利用されてきた. 機 Fig. 1.25 Diagram of hydrostatic 械的刺激の負荷に際して細胞との直接接触がないの pressure applied to cells .

で物質交換が妨げられず, さらに細胞と基質の嬢着

状態によらない負荷が可能であるという利点を有する. 気相を介した負荷ではO2•

CO2の分 圧変化によって培養液の組成も変化してしまうため, 液相( 培養液)に対して 直接圧力を与える方法が用いられることもある. 例えば. Ozawa et a1.( 1990)は, 歯科 矯正時に圧迫側歯槽骨に生じる圧力と同程度の連続的静水圧を骨芽細胞様細胞MC3T3・

E1 に対して負荷し,アルカリホスファターゼ活性の允進やプロスタグランジンE2産生 の増加を報告した. さらに, 同じ研究グループの Imamura et a1.(1990)は, 同様の連続 的静水圧をラット骨髄由来細胞に負荷する実験系において, 破骨細胞の分化や骨吸収 能の変化を調査した. その結果, 静水圧負荷によってプロスタグランジン E2 産生や TRAP陽性細胞の増加が認められた. これらの実験から,静水圧がプロスタグランジン E2産生のメカニズムを介して新しい破骨細胞を誘導し骨吸収を増加させるという仮説 を提案した. 一方• Klein-Nulend et al.(1997)は, マウス頭蓋冠(Calvaria)由来の骨細胞 および骨芽細胞様細胞MC3T3-Elに対して間欠的静水圧を負荷したとき, オステオポ ンチン産生の増加を報告した. オステオポンチンはインテグリンを介した細胞接着と 深く関わっていることから オステオポンチン産生の増加は細胞接着の増加に対する 応答であると推察した.

細胞あるいは細胞膜への伸張負荷の多くは,培養基質を変形させることによって行

われている. フレート状の基質に対して曲げを与えることによる表面の伸張, シリ コーンゴム等のフレキシブルな基質に張力を与えることによる伸張が代表的な手法で ある. 前者の手法に関しては, プラスチック等の基質を三点曲げあるいは四点曲げす る方法が一般的である(Owan et a1. 1997; Zaman et al . 1997)(図1 .26). Owan et a1.( 1997) は, プラスチック基質を四点曲げしたとき, 骨芽細胞様細胞MC3T3-E1 におけるオス テオポンチンmR1ぜA発現の変化を調査した. このような基質の曲げでは, 培養液との 相対運動によって細胞には流体せん断が生じる. 彼らは基質の厚みを変えることに

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参照

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