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博 士 論 文 概 要

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院 先進理工学研究科. 博 士 論 文 概 要. 論. 文. 題. 目. 医療機器ソフトウェアの間接的危害と安全対策 に関する研究 Study on Indirect Harms and Safety Measures of Medical Device Software. 申. 請. 者. 北脇. 涼太. Ryota. KITAWAKI. 共同先端生命医科学専攻 先端治療機器設計・開発評価研究. 2016 年 12 月.

(2) 現在ソフトウェアは多くの医療機器に使われている。その一つの典型的な形態 として、ソフトウェアは医療機器に組み込まれ、ハードウェアの制御をするとい う役割で使用されてきた。ソフトウェアで制御されるハードウェアは人体との直 接的な接触や介入に使用されるため、人体に直接的な危害を与える恐れがある。 実 際 、 最 も 深 刻 な 結 果 と な っ た 例 と し て 、 1985 年 か ら 1987 年 に か け て 、 放 射 線 治療器のソフトウェア不具合による過剰照射により 6 人が重症または死亡すると いう事故が発生したことが報告されている。ソフトウェアにおける安全性の問題 は 現 在 で も 続 い て お り 、 米 国 食 品 医 薬 品 局 ( F D A ) に よ れ ば 、 2 0 11 年 度 の 1 年 間 における医療機器リコールの原因のトップはソフトウェア設計にあるという。 ソ フ ト ウ ェ ア の も う 一 つ の 形 態 で あ る 「 医 療 機 器 プ ロ グ ラ ム 」( S o f t w a r e a s a medical device、 SaMD) に 関 し て は 、 2013 年 、 International Medical Device Regulators Forum (IMDRF) は 「 医 療 機 器 プ ロ グ ラ ム 」 を 「 一 つ 以 上 の 医 療 目 的 で使われることを意図されたソフトウェアであり、その目的をハードウェア医療 機 器 の 一 部 と し て で は な く 単 独 で 達 成 す る も の 」 と 定 義 し た 。 同 じ く 2013 年 に は 、日 本 に お い て も 薬 事 法 の 改 正 が 行 わ れ 、 「 医 療 機 器 プ ロ グ ラ ム 」が 医 療 機 器 と し て 扱 わ れ る よ う に な っ た 。 SaMD は そ の 定 義 か ら 、 ハ ー ド ウ ェ ア 制 御 を し な い た め 、「 医 療 機 器 組 み 込 み ソ フ ト ウ ェ ア 」( 以 下 、 N o n - S a M D と す る ) が 呈 す る よ う な 直 接 的 危 害 は 引 き 起 こ し 得 な い 。欧 州 の 医 療 機 器 市 販 後 監 視 の ガ イ ダ ン ス は 、 「危害は、意思決定の結果や、機器から提供される情報や結果に基づいて行われ た、あるいは行われなかったアクションの結果として起こり得る」としており、 こ の よ う な 危 害 を「 直 接 的 危 害 」と 対 比 し て「 間 接 的 危 害 」と 定 義 し て お り 、S a M D は体外診断薬とともに「間接的危害」を引き起こしうるとしている。たとえば、 電子カルテの患者名の取り違いに起因する電子画像の誤診断、薬剤の誤処方など が そ の 典 型 例 で あ る 。2014 年 に は 、IMDRF か ら SaMD の リ ス ク の 考 え 方 も 発 表 された。しかしながら、各国の規制やガイドラインにおいて、間接的危害の扱い は明確にされておらず、その安全性の実態も明らかにされてきていない。 そ こ で 、 本 論 文 は 「 医 療 機 器 ソ フ ト ウ ェ ア 」( 以 下 S a M D お よ び N o n - S a M D を 総称してこのように呼ぶ)に関する規制の現状を把握し、間接的危害の実態を明 らかにし、安全対策における現状を整理し、その課題を明らかにすることを目的 とする。 本論文は以下の 5 章で構成される。 第 1 章は、用語の定義、背景、製品例、研究対象を示した上で本論文の目的を 述べ、目的に対応した本論文の構成を示している。そして本論文の意義、概要を まとめている。 第 2 章 は 、 日 本 ・ 米 国 ・ 欧 州 に お け る 医 療 機 器 法 規 制 、 IMDRF の SaMD ガ イ ダンスを対象に、医療機器の定義、ソフトウェアの扱い、間接的危害への言及を 調 査 し 、 ま た 、 そ れ ら を 時 系 列 に 整 理 し た 。 SaMD の 形 態 の 医 療 機 器 と し て の 扱 No.1.

(3) い は 、 米 国 が 世 界 に 先 駆 け 1 9 8 0 年 代 後 半 か ら 、欧 州 は 2 0 0 7 年 の 法 改 正 後 、 日 本 は 2013 年 の 法 改 正 後 か ら で あ っ た 。 間 接 的 危 害 の 言 及 は 、 1989 年 の FDA が 先 駆 け と な っ て お り 、 欧 州 が 2013 年 か ら 、 日 本 で は 現 在 で も 明 確 に は 触 れ ら れ て い な い こ と が 分 か っ た 。2 0 1 4 年 に は I M D R F は 間 接 的 危 害 を 考 慮 し た S a M D の リ スクフレームワークを示していた。しかしながら、最も早くに間接的危害に言及 し た 米 国 FDA は 、 2013 年 、 間 接 的 危 害 を 最 も 考 慮 す べ き 医 療 機 器 ソ フ ト ウ ェ ア の 機 能 の 一 つ で あ る 臨 床 意 思 決 定 支 援 ( Clinical decision support 、 CDS) 機 能 についての安全性に関するガイダンスは別途公表するとしたが、現在まで公表せ ずにいる。以上を整理すると、医療機器ソフトウェアに関する間接的危害に関し ては米国においても検討段階にあり、日本においてはまだ明確な言及がされてい ないことから、世界的に引き続き検討段階にあると考察した。 このような状況の中、間接的危害に着目して、実際の市販後の安全性を分析す ることは、間接的危害のリスクフレームワークやその安全対策をさらに検討・実 施していく上で必要なことだと考えられるが、そのような分析はほとんどされて いない。そこで第 3 章では、米国における医療機器リコールのデータを用いて、 ソ フ ト ウ ェ ア 起 因 の リ コ ー ル の 状 況 を 分 析 し 、間 接 的 危 害 の 実 態 の 把 握 を 試 み た 。 2009 年 か ら 2014 年 の 米 国 に お け る 医 療 機 器 の リ コ ー ル 全 6,393 件 の う ち 、 FDA が ソ フ ト ウ ェ ア 起 因 と し た リ コ ー ル は 、 10-15%で 推 移 し て お り 、 リ コ ー ル 原 因 の 第 2 位 と な っ て い た 。こ の ソ フ ト ウ ェ ア 起 因 リ コ ー ル 712 件 を 対 象 に 、各 リ コ ー ル 製 品 が SaMD か Non-SaMD か に 分 類 す る と と も に 、 間 接 的 危 害 の 実 態 把握のために 4 つの故障モードを定義し、各リコールに対して分類を行った。こ こ で 4 つ の 故 障 モ ー ド と は 、 ハ ー ド ウ ェ ア 制 御 に 関 す る も の ( G r o u p 1 )、 情 報 に 関 係 す る も の ( G r o u p 2 )、 デ ー タ に 関 係 す る も の ( G r o u p 3 )、 そ の 他 ( G r o u p 4 ) で あ る 。 そ の 結 果 、 間 接 的 危 害 に 繋 が り 得 る Group 2 が 408 件 ( 57%) で 全 体 の 第 1 位 の 原 因 で あ り 、 直 接 的 危 害 に 繋 が り 得 る Group 1 の 122 件 ( 17%) を 上 回 っ て い た 。 Group 2 の 408 件 中 387 件 ( 95%) は 、 健 康 被 害 が あ り 得 る と さ れ る リ コ ー ル ク ラ ス II に 分 類 さ れ て お り 、6 件( 1%)は 、重 篤 な 健 康 被 害 が あ り 得 る と さ れ る リ コ ー ル ク ラ ス I と 分 類 さ れ て い た 。6 件 の う ち 4 件 は N o n - S a M D に て 、 2 件 は SaMD に て 起 き て い た 。 こ こ で 明 ら か に な っ た 事 実 か ら 、 情 報 提 示 機 能 の 安全性について今後さらに理解を深めていくことが重要であること、および安全 対策が課題であることが示唆された。 第 4 章 で は 最 初 に 、第 2 章 で 特 定 さ れ た 医 療 機 器 法 規 制 お よ び 国 際 規 格 を 元 に 、 現行の安全対策を整理した。次に、医療機器を含む全産業・分野における一般的 な ソ フ ト ウ ェ ア に 関 す る 安 全 対 策 を 把 握 す る 目 的 で 、I n s t i t u t e o f E l e c t r i c a l a n d Electronic Engineers (IEEE) に よ っ て ま と め ら れ た ソ フ ト ウ ェ ア エ ン ジ ニ ア リ ン グ 知 識 体 系 ( Software Engineering Body of Knowledge, SWEBOK) と 日 本 科 学技術連盟(日科技連)によってまとめられたソフトウェア品質知識体系 No.2.

(4) ( Software Quality Body of Knowledge, SQuBOK) に お け る 安 全 対 策 を 整 理 し た 。 そ し て 現 行 の 医 療 機 器 に お け る 安 全 対 策 に 対 し て SWEBOK・ SQuBOK を 基 準とした比較分析を行った。その結果、現在の医療機器ソフトウェアの安全対策 には、全体として不足している面があることが示唆された。その中で、比較的充 実している安全対策としては日米欧ともリスクマネジメントや伝統的なソフトウ ェアエンジニアリングであると示唆された。逆に比較的不足している安全対策と しては、具体的なセーフティ技法であることが分かった。現在の医療機器ソフト ウェアの安全対策の特徴として、安全対策におけるソフトウェアエンジニアリン グにおいてはライフサイクルプロセスが重視されており、出来上がってからの試 験だけでは品質保証はできず、開発ライフサイクルプロセス全体の管理が品質保 証に不可欠という通説が医療機器産業含め普遍的になっていると考察した。 第 5 章で は、本論 文の全 体的 考察 を 行った 。第 3 章で 明らか にさ れた 市 販後実 態 に 加 え 、 2005 年 か ら 2009 年 に か け て 輸 液 ポ ン プ に 関 し 56,000 件 の 有 害 事 象 報 告 と 7 1 0 件 の 死 亡 事 故 が 起 き た と い う 2 つ の 市 販 後 実 態 が 、第 4 章 で 特 定 さ れ た現在の医療機器ソフトウェア安全対策が取られた後にも起き続けていることが、 第 2 章の歴史的経緯の調査結果を利用して明らかに された。このことも現在の安 全対策の不足を、第 4 章の分析とは独立に示唆するものと考えられた。この問題 を 受 け 、F D A は プ ロ セ ス 重 視 の 対 策 だ け で は 直 接 的 な 安 全 性 の 保 障 と し て は 不 足 とし、輸液ポンプに関して第 4 章で特定された他産業分野においては採用済みの 安 全 技 法 の い く つ か( S a f e t y c a s e の 活 用 等 )を 医 療 機 器 産 業 に 初 め て 導 入 す る な どの安全対策を実施し始めていた。医療機器の発展や普及に伴う市販後安全状況 の変化に応じ、医療機器産業に対し、他のセーフティ・クリティカルな産業分野 (航空・宇宙・化学プラント、原子力発電所等)で有効性が実証されているセー フティ技法を導入することは、医療機器ソフトウェアの安全性向上に役立つ対応 だと考察した。第 5 章ではさらに、間接的危害の安全対策についても考察した。 間接的危害においては直接的危害の場合以上に、使用現場や使用者といった S o c i o - t e c h n i c a l な 面 の 影 響 が 大 き い 。安 全 性 が シ ス テ ム 創 発 特 性 の 一 つ で あ る こ とをよく認識し、システムとしての安全対策が、ソフトウェアの安全対策に加え て重要になること、また使用者側の安全対策も不可欠であることを考察した。第 5 章の最後には、本論文の成果・意義・限界についてまとめた。 医療機器ソフトウェアの発展に伴い、情報出力機能も高度になることが考えら れる。情報出力機能に付随する間接的危害の安全対策を考える上で、本論文の成 果は、医療機器レギュラトリーサイエンスの一つとして貢献するものと考えられ る。. No.3.

(5) No.1. 早稲田大学 氏 名. 北脇涼太. 博士(生命医科学). 学位申請. 研究業績書. 印 (2016 年 12 月現在). 種 類 別. 題名、. 発表・発行掲載誌名、. 発表・発行年月、. 連名者(申請者含む). 1) ○論文 Ryota KITAWAKI, Mitsuo UMEZU, Kiyotaka IWASAKI, Hiroshi KASANUKI. Analysis of Medical Device Recalls owing to Output Information from Software. Regulatory Science of Medical Products. Vol. 6 (3), p281-293, 2016 2) 講演. 北脇 涼太, 梅津 光生, 岩﨑 清隆. 米国における医療機器ソフトウェアのリコールの分 析. 第 5 回レギュラトリーサイエンス学会学術大会, 2015 年 9 月, 東京.

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参照

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