86-7・1 緒言
第7章 気相成長法で作製された
いる。 また、 最近の機能材料の小型化に伴い、 デバイス中に数個の結晶、 すな わち数個の結晶粒界しか含まれないような材料が開発されつつあり、 材料中の 粒界性格を識別し、 諸特性との関連についての情報が必要になってきた。 した がって、 セラミックスにおいても多結晶材料の結晶方位分布や粒界性格分布を
明らかにすることが重要である。 また、 気相成長法等で材料を作製する際には、
結晶成長が どのようにして起こるかも重要である。 これらの知見は、 数個の粗 大結晶粒で構成されるデバイスの作製などにも有効であり、 粒界制御による新 機能材料の発展に大きく貢献すると考えられる。
そこで本研究では、 気相成長法によって作製された高純度SiC多結晶につい てその結晶成長過程や粒界性格分布について検討した。 また、 共有結合性の強 い SiCと第6章で述べたアルミニウムとの比較を行い、 結合性の違いによる結 晶成長の違いについても考察を行った。
7・2 実験方法
7・2・1 試料
本研究では、 グラファイト基板上に気相成長させた SiC(東芝セラミックス (株)製)を用いた。 この SiCは半導体シリコン(Si)のエピタキシャル成長用サセプ タとして用いら れており、 炉内に温度勾配を付けることによってグラファイト 基板上に SiC粉末を蒸着させる Lely法を応用した製法で作製された。 一部の 試料については炉内に長時間保持することによって結晶粒を粗大化させた。 し たがって、 グラファイト基板上に約200μmのSiC層が存在する試料と約2mm の SiC層が存在する試料の2種類を結晶成長過程の解析に用いた。 これらの試 料の中から、 粗大化させた試料に関しては観察面が基板と平行な試料と垂直な
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-試料 (結晶成長方向と平行な -試料 )の2種類を所定の大きさに切り出した。また、
成長させていない試料では基板と垂直に切り出した試料を用いた。 SEM-EBSP 測定用 に観察 面を機械研磨により鏡面仕上げした後、 これにより導入された表 面加工層の除去を目的として村上試薬 (H20 : NaOH : K3Fe(CN )6 = 10 : 1 : 1)
によるエッチングを行った。 エッチングは試薬を約1000Cに加熱し、 その中に 試料を入 れ、 数秒間保持する方法で行った。
7-2-2 結晶方位解析と粒界性格解析
SEM-EBSP解析では、走査電子線ステップを粗大化させた試料では2 ""'-' 5μm、
粗大化させていない試料では1μm とした。 各試料とも約10万点以上の測定を 行い 、 IQ(ImageQuality)マッ プや色付けした標準ステレオ三角形に基づく IPF(Inverse Po le Fi gu re)マッフを作成し、 検討を行った。 また、 粒界性格解
析 は IQマッ フや測 定点聞の方位差か ら 結 晶粒を認識し 、 そ の 中 で CI (C onfidence Index)値が高いEuler角をその結晶のEu ler角と定義した。 隣
接する 結晶粒同士の粒界性格 を自作のプログラムを用いて解析し、 対応粒界と ランダム粒界の識別を行った。 本章では、 ランダム粒界はZ値が 27以上の粒
界と定義した。
7聞3 結果および考察
文I 7-1に粗大化させた試料の (a), (b)基板平行面と (c)成長方向平行面の光 必顕微鏡像および(d)成長方向の模式図を示す。 結晶粒径は基板直上で約150""'-' 2 00μm程度である が、基板から1.0""'-'1.5mm 成長 した領域では、粒径 が約2mm
もの粗大粒が観察された。 また、 図7・1(c)中の矢印で示したように粗大粒側に
この試料を は気相成長法によってある特定の面に積層した形跡が確認できた。
までの領域とそれ以上の領域でそれぞれ粉末 基板から約 1mm
粉末状に砕き、
X線回折法により結晶構造の同定を行った結果、 基板直上では立方品系のやSiC、
粗大化するにつれて六方晶系のα-SiC が存在することが確認された。 以下、 SiC 約2mmの試料を組大粒試料と表記する。
層が約200μmの試料を微細粒試料、
の核生成とその成長過程を検討した。
これら両試料の結晶方位分布から、 SiC
初期の結晶成長との相関を明らかにするためにβ 粒界性格に関しては、
また、
SiC に着目して解析を行った。
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a
。c
Fine grains ß-SiC
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Substrate 500μm
粗大粒試料の光学顕微鏡像とその模式図
(a), (b)基板平行面(c)成長方向平行面(d)成長方向模式図
図7-1
-90
-微細粒試料の結晶方位分布
7事3-1
図 7・2に微細粒試料の成長方向平行面IQ(Image Quality)マップを示す。 成 長方向は図の矢印方向である。 基板から離れるにつれて結晶粒が粗大化してい ることが確認されたが、 この試料 では最大でも粒径は約100μm程度であった。
2本の 平行な線で固まれた領域が確認さ 粒内には双品境界と考えられるような
図7・3に測定面法線方向IPF(Inverse Pole Figure)マップと成長 れた。 また、
いずれの IPF マップにおいても特定の結晶方位に揃 マップを示す。
方向 IPF
各結晶粒はランダムに核生成した後に成長することが明らかに う傾向はなく、
同O羽詰お司君』P20
なった。
100μm
微細粒試料のIQマップ 図7・2
100μm
微細粒試料のIPFマップ (a)測定面法線方向(b)成長方向平行 方向
図7-3
7・3-2 粗大粒試料の結晶方位分布
図7-4 に粗大粒試料基板直上の基板平行面 IQ マップと測定面法線方向 IPF マップを示す。基板直上では結晶粒はほぼ等軸粒になっており、粒径は約150μm
となっ ている。 この領域に おいても図7-2で示されたような双晶と考えられる
領域が確認された。 図7-4(b)は、 成長方向の結晶方位を示している。 この領域 では<110>方向に 結晶粒が配向している結晶が観察されるが、 他の方位に配向 している結晶 もあり、 この段階では特別な配向性はなく、 基板にランダムに核
生成した結晶が成長したものと考えられる。
150μm
図7-4 粗大粒試料基板平行面のSEM・EBSP解析結果 (a) IQマップ(b)測定面法線方向IPFマップ
-92
-文I 7-5 に組大粒試料の成長方向平行面の(a)IQマップ、(b)測定面法線方向IPF 成長するにつれ 7・5(a)より、
マップを示す。 主〈
マップおよび(c)成長方向 IPF
双品のない異常に大きな結晶粒へ変化す て双晶境界 を含む結晶粒が粗大化し、
、lj 'hu r'E、、
の境界と判断した。
とα-SiC この双晶の有無がβSiC
ることが分か った。
この方向では結晶方 IPF マップを示しているが、
の測定面法線方向の はß-SiC
マッフで (c)の結晶成長方向のIPF
しかし、
位に特別な配向性は見られない。
との境界近傍で同系の色(緑色)に色づ の結晶粒はα-SiC
粗大化したやSiC は 、
成長方 7・3(b)の色付けした標準ステレオ三角形に基づくと 、
向が<110>近傍に配向していることが明らかになった。
図 けられ て おり、
ロO否。勾句ぷSoho
500μm
粗大粒試料の成長方向平行面のSEM-EBSP解析結果
(a) IQマップ(b) 測定面法線方向IPFマップ(c)成長方向IPFマップ 支I 7-5
7-3・3 粒界性格分布
気相成長させたSiC は、 成長しやすい結晶面が表面に現れると、 その方位に
優先的に原子が吸着し、 結晶成長していく。 実際に図 7・l(c)の成長方向平行面 の光学顕微鏡写真から、 矢印で示したように粗大 粒にある特定の面に原子が積 層していることを示す線が確認された。 また、 α-SiC の組大粒は特異な形状を しており、 相変態する際にß-SiC の粒界が何らかの影響を与え ていると考えら れる。 したがって、 やSiC側の粒界性格分布を明らかにすることは、 結晶粒の 粗大化と日→α相変態における粒界性格の効果についての知見を得るために重要 である。
図7-6に微細 粒試料の成長方向平行面、 図7-7に粗大粒試料の(a)基板平行面 と(b)成長方向平行面の粒界性格分布をIQマッフ上に 示した。 粒界の色分けは I.; 27以下の低I.;値対応粒界とランダム粒界で分類している。 また、 低Z値対 応粒界の中でも代表的な双晶の方位関係にあるI.;3対応粒界とI.;9対応粒界お
よびI.;27対応粒界はさらに分類して示した。
1;3 29 く227
図7-6 微細粒試料成長方向平行面の粒界性格分布
-
94-2;3 2;9
500μm
2;27 <2;27 Random
図7-7 粗大粒試料の粒界性格分布(a)基板平行面(b) 成長方向平行面
各試料の粒界性格分布より、 同じ結晶粒内に観察された平行な界面はほぼ全 てが,Z3対応方位関係を有しており、 粒内には高密度の双晶が導入されている ことが明らかになった。 また、 図7-6 と図7-7(a)より、 基板直上の粒界性格分 布は低,z値粒界とランダム粒界が混在する組織になっており、 ランダムな核生 成と結晶成長が起きたことを支持する結果であった。 図7・7(b)は、 組大粒試料 の成長方向平行面の粒界性格分布を示しており、 基板側は図7-6、 図7・7(a)と
同様に低Z値粒界とランダム粒界が混在した組織になっていた。 さらに、 同図 か ら成長方向に平行な面が低,z値粒界となることも明らかになった。 粒界性格 解析の結果、 これらの結晶粒は,Z3 、 9および27対応粒界で構成される特異な 組織となっていた。
一般に、 SiC は積層欠陥エネルギーが低いために双晶を形成しやすい特徴を 持つ。 また、 双晶方位関係にある.63対応粒界はエネルギーが低く、 安定構造
をもっと考えられる。 したが って、 炉内に長時間保持することによって安定構 造に なり、 L3対応粒界の存在頻度が高くなったのであろう。 また、 L3、 9 お
よび27対応粒界には、 幾何学的に以下の関係が成り立つ。
L3 + L3 → L9 (7・1)
L3 + L9 → L27 (7-2)
実際に図7 -7 を見ると、 粒界3重点において式(7-1)と(7 ・2)の関係にある粒 界が存在していた。 すなわち、 双品によって生じるL3対応粒界同士が交わっ てL9対応粒界が、 L3 とL9対応粒界が交わってL27 対応粒界が形成される ことによって、 L3対応粒界だけでなくL9 と27対応粒界の存在頻度が高くな ったのであろう。 しかし、 この3種類の粒界を有する結晶粒だけでは試料全体 を埋め尽くすことはできないので、 構造緩和の役割も担うランダム粒界がβSiC の粗大粒聞に形成されたと考えられる。
また、 9→α相変態に関しでも粒界の影響を受けた結果が得られた。 図7・7( b) の四角で囲んだ領域のようにα-SiCの成長はやSiCの L3やL27対応粒界近傍 では起きずに、 矢印で示したランダム粒界の先端から成長していた。 すなわち、
α-SiCはやSiCのランダム粒界近傍で核を形成し、 その結晶粒が成長していく と考えられる。 Hallin ら(102)は、 CVD法によるα-SiCのエピタキシャル成長に おいて、 単結晶基板に欠陥が存在するとエピタキシャル成長せずに、 ß-SiCが 核生成し成長することを報告している。 本研究で見出された相変態は、 9・SiC のランダム粒界が欠陥の役割 を有し、 その領域でα-SiCが核生成 ・ 成長する過 程により起こったと示唆される。
7-3-4 気相成長SiCの結晶成長過程
本研究で用いた試料は基板の温度が低く蒸着源が高温であるため、 9・SiCの
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